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特開2022-46725ヒトLMNAを標的にするオリゴヌクレオチド類縁体
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  • 特開-ヒトLMNAを標的にするオリゴヌクレオチド類縁体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046725
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】ヒトLMNAを標的にするオリゴヌクレオチド類縁体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220315BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/712
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022000125
(22)【出願日】2022-01-04
(62)【分割の表示】P 2019508165の分割
【原出願日】2017-04-28
(31)【優先権主張番号】62/330,027
(32)【優先日】2016-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501237039
【氏名又は名称】サレプタ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(71)【出願人】
【識別番号】509303349
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ メリーランド
(71)【出願人】
【識別番号】518381802
【氏名又は名称】プロジェリア リサーチ ファウンデーション, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マイケル アール. エルドス
(72)【発明者】
【氏名】フランシス エス. コリンズ
(72)【発明者】
【氏名】カン カオ
(72)【発明者】
【氏名】リシャルド コール
(72)【発明者】
【氏名】リチャード キース ベストウィック
(72)【発明者】
【氏名】レスリー ビー. ゴードン
(57)【要約】
【課題】ヒトLMNAを標的にするオリゴヌクレオチド類縁体の提供。
【解決手段】プロジェリンをコードする1個以上の異常にスプライスされたLMNAmRNAアイソフォームの発現を低減する、LMNA標的化アンチセンスオリゴヌクレオチドが提供される。本開示は、本明細書に記載されているオリゴヌクレオチド及びそれを含有する組成物、ならびにオリゴヌクレオチドが、例えばLMNAプレmRNAのスプライシングを調節することにより突然変異LMNAタンパク質mRNAの発現を阻害する、インビトロにおける方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表に関する記述
本出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテクストフォーマットで提供されており、参照により本出願に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、120178_503WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。テキストファイルは、約6.5KBであり、2017年4月26日に作成され、EFSウエブを介して電子的に提出されている。
【0002】
本開示は、一般にヒトラミンA標的化アンチセンス化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
ハッチンソン・ギルフォード早老症候群(HGPS)は、早期の動脈硬化症及び血管平滑筋細胞(SMC)の変性によって特徴づけられる希少遺伝子障害である。HGPSは、罹患した小児において加速した早期老化として最も顕著に現れる。HGPSの小児は、発育遅延、脱毛症、皮下脂肪の損失及び骨の異常などの進行性症状を有する。平均寿命は12歳であり、最も一般的な死亡原因は、心筋梗塞または発作である。
【0004】
大部分のHGPSの症例は、ラミンA(LMNA)遺伝子における単一点突然変異によって引き起こされ、ラミンAの切断スプライシング突然変異体であるプロジェリン(progerin)の生成をもたらす。単一点突然変異は、ラミンA(LMNA)遺伝子のエクソン11におけるデノボサイレント置換(1824C>T、Gly608Gly)である。この置換は、潜在スプライスドナー部位を活性化し、50個のアミノ酸が内部欠失しているドミナントネガティブ突然変異ラミンAタンパク質の産生をもたらす。突然変異タンパク質は、プロジェリンと呼ばれ、核膜に蓄積して、特徴的な核小疱形成を引き起こす(Scaffidi and Misteli 2005;Cao,Blair et al.2011)。
【0005】
異常スプライシングは、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)、より特定的にはスプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)を使用して修正され得ることが知られている。SSOは、異常スプライシング部位を、その部位または部位の近くでハイブリッド形成することによって遮断し、それによって、細胞スプライシング機構による認識を防止する。例示的なSSOは、ヌクレアーゼに対して抵抗性があり、得られた二本鎖構造は、RNアーゼHによるRNA切断の可能性を排除する。SSOは、地中海貧血症及びデュシェンヌ型筋ジストロフィーではインビトロ及びインビボの両方においてスプライシングパターンを有効に修復することが示されている(Kinali,Arechavala-Gomeza et al.2009;Svasti,Suwanmanee et al.2009)。HGPSに関連するLMNAの異常スプライシングは、細胞培養物(Scaffidi and Misteli 2005)及び関連する動物モデル(Osorio,Navarro et al.2011)の両方において、活性化潜在スプライス部位に対して標的化された修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用する異常スプライシング事象の修正により、低減されることが示されている。
PCT公開第WO2013/086441号及び同第WO2013/086444号は、ヒトlmnaを標的にするアンチセンスオリゴマー及びヒトlmnaを標的にするオリゴヌクレオチド類縁体を使用する早老性ラミノパシーの治療方法を開示しているが、本開示のアンチセンスオリゴマー化合物及びその使用方法を開示していない。
HGPSにおけるLMNAの役割を考えると、LMNAプレmRNAのスプライシングを調節してプロジェリンの発現を排除するオリゴヌクレオチドが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/086441号
【特許文献2】国際公開第2013/086444号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Scaffidi,P.and T.Misteli(2005).“Reversal of the cellular phenotype in the premature aging disease Hutchinson-Gilford progeria syndrome.”Nat Med 11(4):440-5.
【非特許文献2】Cao,K.,C.D.Blair,et al.(2011).“Progerin and telomere dysfunction collaborate to trigger cellular senescence in normal human fibroblasts.”J Clin Invest.
【非特許文献3】Kinali,M.,V.Arechavala-Gomeza,et al.(2009).“Local restoration of dystrophin expression with the morpholino oligomer AVI-4658 in Duchenne muscular dystrophy:a single-blind,placebo-controlled,dose-escalation,proof-of-concept study.”Lancet Neurol 8(10):918-28.
【非特許文献4】Svasti,S.,T.Suwanmanee,et al.(2009).“RNA repair restores hemoglobin expression in IVS2-654 thalassemic mice.”Proc Natl Acad Sci U S A 106(4):1205-10.
【非特許文献5】Scaffidi,P.and T.Misteli(2005).“Reversal of the cellular phenotype in the premature aging disease Hutchinson-Gilford progeria syndrome.”Nat Med 11(4):440-5.
【非特許文献6】Osorio,F.G.,C.L.Navarro,et al.(2011).“Splicing-directed therapy in a new mouse model of human accelerated aging.”Sci Transl Med 3(106):106ra107.
【発明の概要】
【0008】
本開示の実施形態は、一般に、アンチセンスオリゴマー、その薬学的組成物及びLMNAプレmRNAの異常スプライシングを調節するそれらの使用方法に関する。1つの態様において、本開示は、核酸塩基が10~40個の修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドを特徴とする。修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドは、LMNAのプレmRNA内の標的領域に相補的な標的指向化配列を含む。
【0009】
特定の実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、式(I):
【化1】

の化合物、またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、各Nuは、一緒になって標的指向化配列を形成する核酸塩基であり、
Zは、8~38の整数であり、
Tは、
【化2】

から選択され、
Gは、細胞透過性ペプチド(「CPP」)、ならびに-C(O)(CHNH-CPP-R、-C(O)(CHNH-CPP-R、-C(O)(CHNHC(O)(CHNH-CPP-R、-C(O)CHNH-CPP-R及び
【化3】
から選択されるリンカー部分であり、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端のアミド結合によりリンカー分部に結合しており、Rは、アミド結合によりCPPアミノ末端に結合しており、Rは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択される。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。
【0010】
様々な態様において、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、式(II):
【化4】

の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、各Nuは、一緒になって標的指向化配列を形成する核酸塩基であり、
Zは、8~38の整数であり、
Gは、細胞透過性ペプチド(「CPP」)、ならびに-C(O)(CHNH-CPP-R、-C(O)(CHNH-CPP-R
-C(O)(CHNHC(O)(CHNH-CPP-R、-C(O)CHNH-CPP-R及び
【化5】

から選択されるリンカー部分であり、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端のアミド結合によりリンカー部分に結合しており、Rは、アミド結合によりCPPアミノ末端に結合しており、Rは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択される。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。
【0011】
いくつかの実施形態において、CPPは、配列番号5~21から選択される。いくつかの実施形態において、Gは、配列番号22~25から選択される。
【0012】
様々な実施形態において、G(式(I)及び(II)に列挙されている)は、
-C(O)CHNH-CPP及び式:
【化6】

から選択され、式中、CPPは、CPPカルボキシ末端のアミド結合によりリンカー分部に結合しており、Rは、アミド結合によりCPPアミノ末端に結合しており、CPP-Rは、
【化7】
、(-R-(FFR)-R)、
【化8】
、(-(RXR)-R)、または
【化9】
、(-R-R)から選択され、ここでRは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択される。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。
【0013】
いくつかの実施形態において、G(式(I)及び(II)に列挙されている)は、下記式:
【化10】

のものであり、式中、Rは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択され、Jは、4~9の整数である。特定の実施形態において、Jは6である。
【0014】
様々な実施形態において、CPP-R(式(I)及び(II)に列挙されている)は、下記式:
【化11】

のものであり、式中、Rは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択され、Jは、4~9の整数である。特定の実施形態において、CPPは、配列番号11である。様々な実施形態において、Jは6である。いくつかの実施形態においてRは、H及びアセチルから選択される。例えば、いくつかの実施形態において、RはHである。特定の実施形態において、Rはアセチルである。
【0015】
いくつかの実施形態において、Gは、配列番号22~25から選択される。特定の実施形態において、Gは配列番号25である。
【0016】
特定の実施形態において、Gは、オリゴマーの3’末端で本開示のアンチセンスオリゴマーに共有結合している-C(O)CHNH-R-Rであり、ここでRは、Rのアミノ末端をキャップするH、アセチル、ベンゾイルまたはステアロイルである。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。これらの非限定例において、CPP-Rは-R-Rであり、リンカーは-C(O)CHNH-(すなわち、グリシン)である。このG=-C(O)CHNH-R-Rの特定例も以下の構造:
【化12】

によって例示され、ここでRは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択される。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。
【0017】
様々な実施形態において、CPP-Rは-R-Rであり、これも以下の式:
【化13】

によって例示され、ここでRは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択される。特定の実施形態において、CPPは、配列番号11である。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。
【0018】
いくつかの実施形態において、CPP-Rは-(RXR)-Rであり、これも以下の式:
【化14】

によって例示される。
【0019】
様々な実施形態において、CPP-Rは-R-(FFR)-Rであり、これも以下の式:
【化15】

によって例示される。
【0020】
いくつかの実施形態において、例えば、式(I)及び式(II)のアンチセンスオリゴマーのいくつかの実施形態を含む、本開示のアンチセンスオリゴマーの標的指向化配列は、
a)配列番号3(CTGAGCCGCTGGCAGATGCCTTGTC)(ここで、Zは23である)及び
b)配列番号4(GAGGAGATGGGTCCACCCACCTGGG)(ここで、Zは23である)から選択される。
【0021】
本開示の別の態様では、ヒトLMNAに関連する疾患または状態などの疾患の治療方法が提供される。特定の実施形態において、本方法は、早老性ラミノパシー(例えば、HGPS)、老化に関連する状態、または心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症)などの早老性疾患または関連する状態の治療に使用される。
【0022】
追加的な態様において、本開示は、本開示のアンチセンスオリゴマーと薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。
【0023】
したがって更なる態様では、本開示は、他の実施形態において、本明細書に記載されているアンチセンスオリゴマーと薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物を投与することによる、早老性ラミノパシーの治療方法も提供する。
【0024】
本開示のこれら及び他の態様は、以下の発明を実施するための形態を参照することによって明白となる。このため、様々な参照が本明細書に記載されており、特定の背景情報、手順、化合物及び/または組成物が更に詳細に記載され、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
式(I):
【化52】
のアンチセンスオリゴマー化合物、またはその薬学的に許容される塩
[式中、各Nuは、一緒になって標的指向化配列を形成する核酸塩基であり、
Tは、
【化53】
から選択され、
Gは、細胞透過性ペプチド(「CPP」)、ならびに
-C(O)CHNH-CPP-R及び
【化54】
から選択されるリンカー部分であり、ここで、前記CPPは、CPPカルボキシ末端のアミド結合により前記リンカー部分に結合しており、Rは、アミド結合により前記CPPアミノ末端に結合しており、Rは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択され、前記CPPは、配列番号5~21から選択され、
前記標的指向化配列は、
a)配列番号3(CTGAGCCGCTGGCAGATGCCTTGTC)(ここで、Zは23である)及び
b)配列番号4(GAGGAGATGGGTCCACCCACCTGGG)(ここで、Zは23である)から選択される]。
(項目2)
Gが、配列番号24または25から選択される、項目1に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目3)
Tが
【化55】
である、項目1または2に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目4)
CPP-Rが、
【化56】

【化57】
及び
【化58】
から選択される、項目1~3のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目5)
前記CPP-R
【化59】
である、項目1~3のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目6)
がアセチルである、項目1~5のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目7)
前記標的指向化配列が、配列番号3(CTGAGCCGCTGGCAGATGCCTTGTC)であり、Zが23である、項目1~6のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目8)
前記標的指向化配列が、配列番号4(GAGGAGATGGGTCCACCCACCTGGG)であり、Zが23である、項目1~6のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目9)
式(III):
【化60】
のアンチセンスオリゴマー化合物またはその薬学的に許容される塩
[式中、各Nuは、一緒になって、
a)配列番号3(CTGAGCCGCTGGCAGATGCCTTGTC)(ここで、Zは23である)及び
b)配列番号4(GAGGAGATGGGTCCACCCACCTGGG)(ここで、Zは23である)から選択される標的指向化配列(5’から3’)を形成する核酸塩基である]。
(項目10)
前記標的配列が、配列番号3(CTGAGCCGCTGGCAGATGCCTTGTC)であり、Zが23である、項目9に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目11)
前記標的配列が、配列番号4(GAGGAGATGGGTCCACCCACCTGGG)であり、Zが23である、項目9に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目12)
前記アンチセンスオリゴマー化合物が、式(IV):
【化61】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、各Nuが、一緒になって、標的指向化配列(5’から3’)を形成する核酸塩基であり、前記標的指向化配列が、配列番号3(CTGAGCCGCTGGCAGATGCCTTGTC)であり、Zが23である、項目9に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目13)
前記アンチセンスオリゴマー化合物が、式(IV):
【化62】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、各Nuが、一緒になって、標的指向化配列(5’から3’)を形成する核酸塩基であり、前記標的指向化配列が、配列番号4(GAGGAGATGGGTCCACCCACCTGGG)であり、Zが23である、項目9に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目14)
【化63】
及び
【化64】
から選択される、アンチセンスオリゴマー化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目15)
前記アンチセンスオリゴマー化合物が、
【化65】
である、項目14に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目16)
前記アンチセンスオリゴマー化合物が、
【化66】
である、項目14に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目17)
【化67】
及び
【化68】
から選択される、アンチセンスオリゴマー化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目18)
前記アンチセンスオリゴマー化合物が、薬学的に許容される塩の0.6 HClである、項目1~17のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴマー化合物。
(項目19)
項目1~18のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴマー化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
(項目20)
ハッチンソン・ギルフォード早老症候群(HGPS)を、その必要性のある対象において治療する方法であって、項目1~18のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴマー化合物、または項目19に記載の薬学的に許容される組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】PPMO1(7mg/kg、20mg/kg、もしくは60mg/kg)、PPMO2(7mg/kg、20mg/kg、もしくは60mg/kg)、または生理食塩水対照により12週間治療されたマウスの心臓のラミンA及びプロジェリンのddPCR分析の結果を示す。
図2】PPMO1(7mg/kg、20mg/kg、もしくは60mg/kg)、PPMO2(7mg/kg、20mg/kg、もしくは60mg/kg)、または生理食塩水対照により12週間治療されたマウスの下行大動脈のラミンA及びプロジェリンのddPCR分析の結果を示す。
図3】PPMO1(7mg/kg、20mg/kg、もしくは60mg/kg)、PPMO2(7mg/kg、20mg/kg、もしくは60mg/kg)、または生理食塩水対照により12週間治療されたマウスの四頭筋のラミンA及びプロジェリンのddPCR分析の結果を示す。
図4】PPMO1(7mg/kg、20mg/kg、もしくは60mg/kg)、PPMO2(7mg/kg、20mg/kg、もしくは60mg/kg)、または生理食塩水対照により12週間治療されたマウスの肝臓のラミンA及びプロジェリンのddPCR分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、本明細書に記載されているオリゴヌクレオチド及びそれを含有する組成物、ならびにオリゴヌクレオチドが、例えばLMNAプレmRNAのスプライシングを調節することにより突然変異LMNAタンパク質mRNAの発現を阻害する、インビトロにおける方法に関する。
【0027】
定義
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術及び科学用語は、本開示が属する当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものに類似する、または同等である任意の方法及び材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、例示的な方法及び材料が記載される。本開示の目的において、以下の用語が下記に定義されている。
【0028】
冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法上の1つの、または1つを超える(すなわち、少なくとも1つの)目的語を指すために、本明細書において使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素(one element)または1つを超える要素(more than one element)を意味する。
【0029】
「約」とは、基準の数量(quantity)、レベル、値、数値、頻度、百分率、寸法、サイズ、量(amount)、重量、または長さに対して30%、25%、20%、25%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%まで変動する数量、レベル、値、数値、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量、または長さを意味する。
【0030】
「コード配列」は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与する任意の核酸配列を意味する。対照的に、「非コード配列」は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与しない任意の核酸配列を指す。
【0031】
本明細書の全体にわたって、文脈から要求されない限り、語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、記述されたステップもしくは要素、またはステップもしくは要素の群を含むことを示唆しており、任意の他のステップもしくは要素、またはステップもしくは要素の群を除外することを示唆していないことが理解される。
【0032】
「からなる」とは、語句「からなる」の後に続く全てのものを含み、それらに限定されることを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が要求される、または必須であること及び他の要素が存在し得ないことを示している。「実質的になる」とは、この語句の後に列挙されている任意の要素が含まれ、列挙された要素の本開示に特定された活性または作用に干渉または寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、語句「実質的になる」は、列挙された要素が要求される、または必須であること、しかし、他の要素が任意選択的であり、列挙された要素の活性または作用に物質的に影響を与えるか、与えないかによって存在し得る、または存在し得ないことを示している。
【0033】
用語「相補的」及び「相補性」は、塩基対合則によって関連するポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。例えば、配列「A-G-T]は、配列「T-C-A」に相補的である。相補性は「部分的」であってもよく、いくつかの核酸塩基のみが塩基対合則によってマッチしている。または、核酸間の「完全(complete)」もしくは「完全(total)」な相補性であってもよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリッド形成の効率及び強さに有意な影響を与える。完全(perfect)な相補性が多くの場合に望ましいが、いくつかの実施形態は、標的RNAに関して1個以上であるが、好ましくは6、5、4、3、2、または1個のミスマッチを含むことがあり得る。オリゴマー内の任意の位置での変異が含まれる。特定の実施形態において、オリゴマーの末端近くの配列における変異は、内部の変異より一般に好ましく、存在する場合、典型的には5’及び/または3’末端の約6、5、4、3、2、または1個のヌクレオチド内である。
【0034】
用語「細胞透過性ペプチド」または「CPP」は、交換可能に使用され、カチオン性細胞透過性ペプチドを指し、輸送ペプチド、担体ペプチド、またはペプチド伝達ドメイン(peptide transduction domain)とも呼ばれる。本明細書に示されているペプチドは、所定の細胞培養集団のうち30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%(中間の全ての整数を含む)の細胞内への細胞透過を誘導する能力を有し、全身投与によってインビボにおいて複数の組織内への巨大分子の転位を可能にする。
【0035】
用語「アンチセンスオリゴマー」、または「アンチセンス化合物」、または「アンチセンスオリゴヌクレオチド」、または「オリゴヌクレオチド」は、交換可能に使用され、塩基対合部分がワトソン・クリック塩基対合により核酸(典型的には、RNA)の標的配列とハイブリッド形成して、標的配列内に核酸:オリゴマーヘテロ二重鎖を形成することを可能にするサブユニット間連結により連結されている塩基対合部分を、それぞれ有する環状サブユニットの配列を指す。環状サブユニットは、リボースもしくは別のペントース糖、または特定の実施形態では、モルホリノ基(下記のモルホリノオリゴマーについての記載を参照すること)に基づいていてもよい。ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)及び2’-O-メチルオリゴヌクレオチド、ならびに当該技術に既知の他のアンチセンス作用物質も考慮される。
【0036】
そのようなアンチセンスオリゴマーを、mRNAの翻訳を遮断もしくは阻害するように、または天然のプレmRNAスプライスプロセシングを阻害するように、または標的mRNAの分解を誘導するように設計することができ、それがハイブリッド形成する標的配列に「向けられている」または「対して標的化されている」と言うことができる。特定の実施形態において、標的配列は、mRNAのAUG開始コドン、プレプロセスmRNAの3’もしくは5’スプライス部位、または分枝点を囲む、または含む領域である。標的配列は、エクソン内もしくはイントロン内、またはこれらの組み合わせにあり得る。スプライス部位の標的配列には、プレプロセスmRNAの正常なスプライス受容接合部から1~約25個の塩基対の下流に5’末端を有するmRNA配列が含まれ得る。スプライス部位の例示的な標的配列は、スプライス部位を含む、またはエクソンコード配列内に完全に含まれている、またはスプライス受容体もしくは供与部位に及ぶプレプロセスmRNAの任意の領域である。オリゴマーは、より一般的には、上記の記載された方法で標的の核酸に対して標的化される場合、本開示ではラミンAタンパク質をコードするヒトLMNA遺伝子プレmRNAなどの、生物学的に関連する標的に「対して標的化されている」と言われる。例示的な標的指向化配列には、配列番号3または4が含まれる。
【0037】
配列番号3または4の1つ以上を含む、から実質的になる、または、からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。配列番号3もしくは4のいずれか1つに80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%(中間の全ての整数を含む)の配列同一性もしくは配列相同性を有する変異オリゴマー含むアンチセンスオリゴマーの変異体及び/または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のヌクレオチドによってこれらの配列と異なっている変異体、好ましくは、細胞においてプロジェリン発現を調節する変異体も含まれる。適切な数の本明細書に記載されているカチオン性もしくは他の修飾連結、例えば、10個の非荷電連結毎に約4~5個など、2~5個の非荷電連結毎に約1個までを含む、及び/またはそれに結合している、これも本明細書に記載されている細胞透過性輸送ペプチドを含む、配列番号3または4のいずれか1つ以上のオリゴヌクレオチドも含まれる。
【0038】
「PMO+」は、以前に記載された(1-(4-(ω-グアニジノ-アルカノイル))-ピペラジノ)ホスフィニリデンオキシ連結(A2及びA3)(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開第WO2008/036127号を参照すること)である(1-ピペラジノ)ホスフィニリデンオキシを任意の数含む、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーを指す。
【0039】
「PMO-X」は、少なくとも1個の(B)連結、または本開示の末端修飾のうちの少なくとも1個を含む、本明細書に開示されている及びその全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開第WO2011/15408号及び米国特許公開第US2012/0065169号に開示されている、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーを指す。更に、本明細書において有用であるPMO-Xのホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーを、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2011年11月18日出願の米国特許仮出願第61/561,806号において見出すことができる。
【0040】
「ホスホロアミデート」基は、3個の結合酸素原子及び1個の結合窒素原子を有するリンを含み、一方、「ホスホロジアミデート」基は、2個の結合酸素原子及び2個の結合窒素原子を有するリンを含む。本明細書に記載されている、ならびに同時係属米国特許仮出願第61/349,783号及び米国特許出願第11/801,885号に記載されているオリゴマーの非荷電または修飾サブユニット間連結において、1個の窒素は主鎖に対して常にペンダントである。ホスホロジアミデート連結における2個目の窒素は、典型的にはモルホリノ環構造の環窒素である。
【0041】
「チオホスホロアミデート」または「チオホスホロジアミデート」連結は、それぞれホスホロアミデートまたはホスホロジアミデート連結であり、ここで1個の酸素原子、典型的には主鎖に対してペンダントである酸素は、硫黄に置き換えられている。
【0042】
「サブユニット間連結」は、2個のモルホリノサブユニットを接続する連結、例えば構造(I)を指す。
【0043】
「荷電」、「非荷電」、「カチオン性」及び「アニオン性」は、本明細書において使用されるとき、中性に近いpH、例えば、約6~8での化学部分の支配的な状態を指す。例えば、この用語は、生理学的pH、すなわち、約7.4での化学部分の支配的な状態を指すこともある。
【0044】
本明細書において使用されるとき、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」、「アンチセンスオリゴマー」、または「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類縁体の直鎖状配列を指し、これは、核塩基がワトソン・クリック塩基対合によりRNAの標的配列とハイブリッド形成して、標的配列内にオリゴマーRNAヘテロ二重鎖を形成することを可能にする。用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」、「修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド」、「アンチセンスオリゴマー」、「オリゴマー」、または「化合物」は、オリゴマーを指すために交換可能に使用され得る。環状サブユニットは、リボースもしくは別のペントース糖、または特定の実施形態では、モルホリノ基(下記のモルホリノオリゴマーについての記載を参照すること)に基づいていてもよい。
【0045】
用語「オリゴヌクレオチド類縁体」は、(i)修飾主鎖構造、例えば、天然のオリゴ-及びポリヌクレオチドに見出される標準的なホスホジエステル連結以外の主鎖、ならびに(ii)任意選択で修飾糖部分、例えば、リボースまたはデオキシリボース部分以外のモルホリノ部分を有する、オリゴヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチド類縁体は、ワトソン・クリック塩基対合による標準的なポリヌクレオチド塩基への水素結合が可能な塩基を支持し、ここで類縁体の主鎖は、オリゴヌクレオチド類縁体分子と、標準的なポリヌクレオチドの塩基との水素結合を配列特異的に可能にする方法で塩基を提示する(例えば、一本鎖RNAまたは一本鎖DNA)。例示的な類縁体は、実質的に非荷電のリン含有主鎖を有するものである。
【0046】
オリゴヌクレオチド類縁体の実質的に非荷電のリン含有主鎖は、大部分のサブユニット連結、例えば、50~100%、典型的には少なくとも60%~100%、または75%、または80%の連結が、非荷電であり、単一のリン原子を含有するものである。アンチセンスオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド類縁体は、約8~40個のサブユニット、典型的には約8~25個のサブユニット、好ましくは約12~25個のサブユニット(中間の全ての整数及び範囲を含む)を含有することができる。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、標的配列に対して正確な配列相補性、または下記に定義される近い相補性を有することができる。
【0047】
オリゴヌクレオチドの「サブユニット」は、プリンまたはピリミジン塩基対合部分を含む1個のヌクレオチド(または、ヌクレオチド類縁体)ユニットを指す。この用語は、結合したサブユニット間連結を伴う、または伴わないヌクレオチドユニットを指すことができるが、「荷電サブユニット」を指す場合、電荷は、典型的にはサブユニット間連結(例えば、ホスフェートもしくはホスホロチオエート連結、またはカチオン性連結)内に存在する。
【0048】
プリンまたはピリミジン塩基対合部分は、本明細書において単に「核塩基」、「塩基(base)」、または塩基(bases)」とも呼ばれ、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、チミン、またはイノシンであり得る。ピリジン-4-オン、ピリジン-2-オン、フェニル、プソイドウラシル、2,4,6-トリム115トキシベンゼン、3-メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5-アルキルシチジン(例えば、5-メチルシチジン)、5-アルキルウリジン(例えば、リボチミジン)、5-ハロウリジン(例えば、5-ブロモウリジン)、または6-アザピリミジンもしくは6-アルキルピリミジン(例えば、6-メチルウリジン)、プロピン、キューオシン、2-チオウリジン、4-チオウリジン、ワイブトシン(wybutosine)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、4-アセチルチジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5’-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、β-D-ガラクトシルキューオシン、1-メチルアデノシン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアノシン、3-メチルシチジン、2-メチルアデノシン、2-メチルグアノシン、N6-メチルアデノシン、7-メチルグアノシン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メチルカルボニルメチルウリジン、5-メチルオキシウリジン、5-メチル-2-チオウリジン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、β-D-マンノシルキューオシン、ウリジン-5-オキシ酢酸、2-チオシチジン、トレオニン誘導体及び他(Burgin et al.,1996,Biochemistry,35:14090;Uhlman & Peyman,supra)などの塩基も含まれる。本態様において「修飾塩基」とは、上記に例示されたアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)以外のヌクレオチド塩基を意味し、そのような塩基をアンチセンス分子の任意の位置に使用することができる。当業者は、オリゴマーの用途に応じてT及びUが交換可能であることを理解する。例えば、よりRNA様である2’-O-メチルアンチセンスオリゴマーなどの他のアンチセンス化学では、T塩基は、Uと示されることもある。
【0049】
用語「標的指向化配列」は、RNAゲノムの「標的配列」に相補的である(加えて、実質的に相補的の意味もある)オリゴマーまたはオリゴマー類縁体の配列である。アンチセンスオリゴマーの配列の全体または一部のみが、標的配列に相補的であり得る。例えば、20~30個の塩基を有するオリゴマーでは、約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29個が、標的領域に相補的な標的指向化配列であり得る。典型的には、標的指向化配列は、オリゴマーにおける近接塩基の形態であるが、代替的には、例えば、オリゴマーの反対側の末端から一緒に配置される場合、標的配列にわたる配列を構成する非近接配列の形態であり得る。
【0050】
「標的指向化配列」は、標的配列に対して「近い」または「実質的な」相補性を有し、依然として、本開示の目的に沿って機能し得る、すなわち、依然として「相補的」であり得る。好ましくは、本開示に用いられるオリゴマー類縁体化合物は、標的配列に対して10個のヌクレオチドのうち最大で1個のミスマッチ、好ましくは20個のうち最大で1個のミスマッチを有する。あるいは、用いられるアンチセンスオリゴマーは、本明細書において示されている例示的な標的指向化配列に少なくとも90%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0051】
本明細書において使用されるとき、用語「TEG」、「EG3」、または「トリエチレングリコ-ルテール」は、オリゴヌクレオチドの、例えば、3’末端または5’末端に抱合しているトリエチレングリコール部分を指す。例えば、いくつかの実施形態において、「TEG」は、下記式:
【化16】

の部分を含む。
【0052】
「アミノ酸サブユニット」または「アミノ酸残基」は、α-アミノ酸残基(-CO-CHR-NH-)、またはβ-もしくは他のアミノ酸残基(例えば、-CO-(CHCHR-NH-)を指すことができ、ここで、Rは側鎖(水素を含むことがある)であり、nは1~7、好ましくは1~4である。
【0053】
用語「天然に生じるアミノ酸」は、タンパク質の生合成に利用される20(L)-アミノ酸などの天然に見出されるタンパク質に存在するアミノ酸、ならびに4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、デスモシン、イソデスモシン、ホモシステイン、シトルリン及びオルニチンなどの他のものを指す。用語「非天然アミノ酸」は、天然に見出されるタンパク質に存在しないアミノ酸を指し、例には、ベータ-アラニン(β-Ala)、6-アミノヘキサン酸(Ahx)及び6-アミノペンタン酸が含まれる。「非天然アミノ酸」の追加的な例には、限定されることなく、(D)-アミノ酸、ノルロイシン、ノルバリン、p-フルオロフェニルアラニン、エチオニンなどが含まれ、これらは当業者に知られている。
【0054】
「有効量」または「治療有効量」は、望ましい治療効果(例えば、がん細胞を化学療法薬に対して感作すること)を生じるのに有効である単回用量または一連の用量の一部として哺乳類対象に投与される、アンチセンスオリゴマーなどの治療化合物の量を指す。アンチセンスオリゴマーでは、この効果は、選択された標的配列の翻訳または天然のスプライスプロセシングを阻害することによって典型的にもたらされる。LMNAmRNAに対して標的化された「有効量」も、プロジェリンの発現を調節するのに有効な量に関する。
【0055】
「増強する」もしくは「増強している」、または「増加する」もしくは「増加している」、または「刺激する」もしくは「刺激している」は、アンチセンス化合物なし、または対照化合物によって引き起こされる応答と比較して、より大きな生理学的応答(すなわち、下流効果)を細胞に生じる、または引き起こすアンチセンス化合物または組成物のうちの1つの能力を一般に指す。「増加された」または「増強された」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、アンチセンス化合物なし(作用物質の不在)または対照化合物により生じた量の1.1、1.2、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50倍、またはそれ以上(例えば、500、1000倍)(中間及び1を超える全ての整数及び小数点を含む)の増加が含まれ得る。
【0056】
用語「低減する」または「阻害する」は、一般に、本開示のアンチセンス化合物の1つ以上が、診断技術における日常的な技術に従って測定して、関連する生理学的または細胞応答を「減少する」能力に関する。関連する生理学的または細胞応答(インビボもしくはインビトロ)は、当業者には明白であり、例えば、mRNA及び/またはタンパク質レベルの測定によるプロジェリン発現の低減が含まれ得る。応答の「減少」は、アンチセンス化合物なし、または対照組成物により生じた応答と比較して「統計的に有意」なものであり、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%(中間の全ての整数を含む)の減少が含まれ得る。
【0057】
用語「標的配列」は、オリゴヌクレオチドまたはアンチセンス剤が向けられている標的RNAの一部、すなわち、オリゴヌクレオチドが、相補的配列のワトソン・クリック塩基対合によりハイブリッド形成する配列を指す。特定の実施形態において、標的配列は、イントロン及びエクソン標的配列の両方を含むプレmRNAの近接領域であり得る。特定の他の実施形態において、標的配列は、イントロまたはエクソン配列のいずれかによって独占的に構成される。
【0058】
用語「標的指向化配列」または「アンチセンス標的指向化配列」は、RNAゲノムの標的配列に相補的である(加えて、実質的に相補的でもある)オリゴヌクレオチドまたは他のアンチセンス剤の配列を指す。アンチセンス化合物の配列の全体または一部のみが、標的配列に相補的であり得る。例えば、20~30個の塩基を有するオリゴヌクレオチドでは、約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29個の塩基が、標的領域に相補的な標的指向化配列であり得る。典型的には、標的指向化配列は、近接塩基の形態であるが、代替的には、例えば、オリゴヌクレオチドの反対側の末端から一緒に配置される場合、標的配列にわたる配列を構成する非近接配列の形態である。
【0059】
標的及び標的指向化配列は、反平行立体配置でハイブリッド形成が生じるときに、互いに「相補的」であると記載される。標的指向化配列は、標的配列に対して「近い」または「実質的な」相補性を有し、依然として、本開示の目的に沿って機能し得る、すなわち、依然として機能的に「相補的」であり得る。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、標的配列に対して10個のヌクレオチドのうち最大で1個のミスマッチ、好ましくは20個のうち最大で1個のミスマッチを有し得る。あるいは、オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載されている例示的なアンチセンス標的指向化配列に少なくとも90%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有し得る。
【0060】
オリゴマーが、生理学的条件下において、45℃より実質的に高い、好ましくは少なくとも50℃、典型的には60℃~80℃、またはそれ以上のTmで標的とハイブリッド形成する場合、オリゴヌクレオチドは標的ポリヌクレオチドと「特異的にハイブリッド形成する」。そのようなハイブリッド形成は、好ましくは、厳密なハイブリッド形成条件に対応する。所定のイオン強度及びpHでは、Tmは、50%の標的配列が相補的ポリヌクレオチドとハイブリッド形成する温度である。ここでも、そのようなハイブリッド形成は、標的配列に対するアンチセンスオリゴマーの「近い」または「実質的な」相補性、ならびに正確な相補性によって生じ得る。
【0061】
「相同性」は、同一である、または保存的置換を構成するアミノ酸の数の百分率を指す。相同性は、GAPなどの配列比較プログラムを使用して決定され得る(Deveraux et al.,1984,Nucleic Acids Research 12,387-395)。この方法によって、本明細書に列挙されたものに類似した、または実質的に異なった長さの配列は、ギャップを整列に挿入することによって比較することができ、そのようなギャップは、例えば、GAPにより使用される比較アルゴリズムによって決定される。
【0062】
用語「配列同一性」、または例えば、「50%の同一性の配列」を含むことは、本明細書において使用されるとき、配列が比較ウィンドウにわたってヌクレオチド毎またはアミノ酸毎に同一である程度を指す。したがって、「配列同一性の百分率」は、2つの最適に整列された配列を比較ウィンドウにわたって比較すること、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys及びMet)が両方の配列に出現する位置の数を決定して、マッチした位置の数を生じること、比較ウィンドウ(すなわち、ウィンドウサイズ)においてマッチした位置の数を位置の総数で割ること、ならびに結果に100を掛けて、配列同一性の百分率を生じることによって、算出することができる。
【0063】
2個以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列関係性を記載するために使用される用語には、「基準配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の百分率」及び「実質的同一性」が含まれる。「基準配列」は、ヌクレオチド及びアミノ酸残基を含む、少なくとも8または10個であるが、頻繁には15~18個、多くの場合に少なくとも25個のモノマー単位の長さである。2個のポリヌクレオチドは、それぞれ、(1)2個のポリヌクレオチド間で類似している配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)及び(2)2個のポリヌクレオチド間で相違している配列を含むことがあるので、2個(または、それ以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、2個のポリヌクレオチドの配列を「比較ウィンドウ」にわたって比較し、配列類似性の局所領域を確認及び比較することによって実施される。「比較ウィンドウ」は、少なくとも6個、通常は約50~約100個、さらに通常には約100~150個の近接位置の概念的セグメントを指し、ここで配列は、2つの配列が最適に整列された後、同じ数の近接位置の基準配列と比較される。比較ウィンドウは、2つの配列が最適に整列されると、基準配列(付加または欠失を含まない)と比較して、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含むことがある。
【0064】
比較ウィンドウを整列するための配列の最適な整列は、アルゴリズムのコンピューター処理(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,575 Science Drive Madison,WI,USAのGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)によって、または選択された様々な方法のいずれかによって生成された(すなわち、比較ウィンドウにわたる相同性の最高の百分率によりもたらされる)検査及び最適な整列によって、実施することができる。例えば、Altschul
et al.,1997,Nucl.Acids Res.25:3389により開示されているBLASTファミリーのプログラムを参照することもできる。配列分析の詳細な考察は、Unit 19.3 of Ausubel et al.,“Current Protocols in Molecular Biology,”John Wiley & Sons Inc,1994-1998,Chapter 15において見出すことができる。
【0065】
「ヌクレアーゼ抵抗性」オリゴマー分子(オリゴマー)は、その主鎖が、体内の一般的な細胞外及び細胞内ヌクレアーゼによるヌクレアーゼ切断に実質的に抵抗性である、非ハイブリッド形成またはハイブリッド形成形態のものを指し、すなわち、オリゴマーは、オリゴマーが曝露される体内の正常なヌクレアーゼ条件下において、ヌクレアーゼ切断をほとんど、または全く示さない。
【0066】
作用物質は、作用物質が細胞膜を横断する受動拡散以外の機構によって細胞に入ることができる場合、「哺乳類細胞によって能動的に取り込まれる」。例えば作用物質は、例えば、ATP依存性輸送機構により哺乳類細胞膜を横断して作用物質を輸送することを指す「能動輸送」によって、または作用物質と輸送タンパク質との結合を必要とし、次に結合作用物質の膜通過を促進する輸送機構により細胞膜を横断して、アンチセンス剤を輸送することを指す「促進輸送」によって、輸送され得る。能動及び促進輸送の両方において、オリゴヌクレオチド類縁体は、好ましくは実質的に非荷電の主鎖を有し、下記に定義されている。
【0067】
「ヘテロ二重鎖」は、アンチセンスオリゴヌクレオチドと、標的RNAの相補的部分との二本鎖を指す。「ヌクレアーゼ抵抗性ヘテロ二重鎖」は、二本鎖RNA/RNAまたはRNA/DNA複合体を切断することができるRNアーゼHなどの細胞内及び細胞外ヌクレアーゼによるインビボ分解に対して、ヘテロ二重鎖が実質的に抵抗性であるように、アンチセンスオリゴマーと、その相補的標的との結合により形成されるヘテロ二重鎖を指す。
【0068】
本明細書において使用されるとき、用語「体液」は、尿、唾液、血漿、血液、脊髄液を含む対象から得た様々な種類の試料、または皮膚細胞もしくは皮膚組織片などの生体由来の他の試料を包含し、その中に懸濁している細胞もしくは細胞断片、または液体媒質及びその溶質を指すこともある。
【0069】
用語「相対量」は、比較が試験測定値と対照測定値との間で行われる場合に使用される。反応において複合体を形成する試薬の相対量は、対照被検物と反応する量と比較した、試験被検物と反応する量である。対照被検物を同じアッセイにおいて別々に処理することができる、または同じ試料の一部(例えば、組織切片における悪性域を囲む正常な組織)であり得る。
【0070】
個体または細胞の「治療」は、個体または細胞における疾患または病理の天然の経過を変更する手段として提供される任意の種類の介入である。治療には、例えば、薬学的組成物の投与が含まれるが、これに限定されず、これは予防的に、または病理事象が開始した後もしくは病原体に接触した後に実施することができる。治療は、疾患、または、本明細書に記載されている中でも特に炎症と関連する状態の症状または病理に対する任意の望ましい効果を含む。
【0071】
治療される疾患もしくは状態の進行速度を低減すること、その疾患もしくは状態の発症を遅延すること、またはその発症の重篤度を低減することに向けることができる、「予防的」治療も含まれる。「治療」または「予防」は、必ずしも疾患もしくは状態、またはその関連する症状の完全な消滅、治癒、または防止を示しているわけではない。
【0072】
野生型遺伝子または遺伝子産物は、個体群において最も頻繁に観察されるものであり、したがって、勝手に設計された「正常」または「野生型」形態の遺伝子である。
【0073】
LMNA標的指向化
例には、下記に考察される、配列番号1及び/または2を標的にするアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0074】
特定のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、野生型配列(配列番号1)を含むヒトLMNA遺伝子における及び/または配列番号2として示されているHGPS患者に見出される配列におけるエクソン11の1個以上の塩基に相補的である、標的指向化配列を含むことができる。これらの標的配列を下記の表1に示す。
【表1】
【0075】
例には、表1の配列番号1及び2の下線が付けられた(例えば、CAGGTGGGC/T)LMNAのエクソン11の潜在スプライス部位に相補的でもあるものを含む、LMNAのエクソン11(配列番号1または2)に完全に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0076】
特定の実施形態において、標的とアンチセンス標的指向化配列との相補性の程度は、安定した二重鎖を形成するのに十分なものである。アンチセンスオリゴマーと標的RNA配列との相補性領域は、8~11個の塩基の短さであるが、好ましくは12~15個またはそれ以上の塩基、例えば、12~20個の塩基、12~25個の塩基、または15~25個の塩基(これらの範囲の間の全ての整数及び範囲を含む)である。約14~15個の塩基のアンチセンスオリゴマーは、一般に、標的mRNAにおいて特有の相補的配列を有するのに十分な長さである。特定の実施形態では、相補的塩基の最小限の長さが、必要な結合Tmを達成するために必要なことがあり、下記に考察される。
【0077】
特定の実施形態では、40個の塩基の長さのオリゴマーが適していることがあり、少なくとも最小限の数の塩基、例えば10~12個の塩基が標的配列に相補的である。しかし一般に、細胞の促進または能動取り込みには、約30個未満の長さのオリゴマーが最適である。PMOオリゴマーでは、下記に更に記載されるが、結合安定性と取り込みとの最適な釣り合いは、一般に18~30個の塩基の長さで生じる。約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40個の塩基からなるアンチセンスオリゴマー(例えば、PNA、LNA、2’-OMe、MOE、PMO)が含まれ、そのうち少なくとも約6、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40個の近接及び/または非近接塩基が、配列番号1及び/または2の標的配列を含む本明細書に記載されている標的配列またはその変異体に相補的である。
【0078】
特定の実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、LMNAプレmRNA核酸標的配列に100%相補的であり得る、またはオリゴマーと標的配列の間で形成されたヘテロ二重鎖が、細胞ヌクレアーゼの作用及びインビボで生じ得る他の様式の分解もしくは置換に耐えるほど十分に安定している限り、例えば変異体に適応するためにミスマッチを含むことがあり得る。ヌクレアーゼによる切断に対して感受性が少ないオリゴマー主鎖が、下記に考察される。存在する場合、ミスマッチは、ハイブリッド二重鎖の中央よりも末端領域を不安定化させることが少ない。許容されるミスマッチの数は、オリゴマーの長さ、二重鎖におけるG:C塩基対の百分率及び二重鎖におけるミスマッチ(複数可)の位置に応じて、二重鎖の安定性について十分に理解されている原理に従って決まる。そのようなアンチセンスオリゴマーは、必ずしも標的配列に対して100%相補的である必要はないが、核酸標的の生体活性、例えばプロジェリンタンパク質(複数可)の発現が調節されるように、標的配列に安定して特異的に結合することが有効である。
【0079】
特定の実施形態において、PMOオリゴマーなどのオリゴマーのアンチセンス活性は、非荷電及びカチオン性ホスホロジアミデート連結の混合物を使用することによって増強され得る。オリゴマーにおけるカチオン性連結の総数は、1~10個(間の全ての整数を含む)に変わることがあり、オリゴマーの全体にわたって散在し得る。好ましくは、荷電連結の数は、少なくとも2個であり、主鎖連結全ての半分より少なく、例えば、2、3、4、5、6、7、または8個の陽荷電連結であり、好ましくは、それぞれの荷電連結は、少なくとも1、2、3、4、または5個の非荷電連結により主鎖に沿って隔てられている。
【0080】
ヒトLMNAプレmRNAを標的にする例示的なアンチセンス配列を、下記の表2に示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、これらの標的指向化配列の全て、または一部を含むことができる。
【表2】
【0081】
アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物
本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的には、(a)哺乳類細胞により能動的に取り込まれる能力を有し、(b)いったん取り込まれると、約45℃を超えるTmによって、標的RNAと二重鎖を形成する。特定の実施形態において、オリゴマー主鎖は、実質的に非荷電であってもよく、好ましくは細胞膜を横断する能動または促進輸送の基質として認識され得る。標的RNAと安定した二重鎖を形成するオリゴマーの能力は、標的に対するアンチセンスオリゴマー相補性の長さ及び程度、G:CとA:Tの塩基マッチの比、ならびに任意のミスマッチ塩基の位置を含む、オリゴマー主鎖の他の特徴にも関係し得る。細胞ヌクレアーゼに抵抗するアンチセンスオリゴマーの能力は、作用物質の存続及び細胞質への最終的な送達を促進することができる。
【0082】
アンチセンスオリゴマーには、様々なアンチセンス化学を用いることができる。オリゴマー化学の例には、限定されることなく、ホスホロアミデートモルホリノオリゴマー及びホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)、ホスホロチオエート修飾オリゴマー、2’-O-メチル修飾オリゴマー、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、ホスホロチオエートオリゴマー、2’O-MOE修飾オリゴマー、2’-フルオロ修飾オリゴマー、2’O,4’C-エチレン架橋核酸(ENA)、トリシクロ-DNA、トリシクロ-DNAホスホロチオエートヌクレオチド、2’-O-[2-(N-メチルカルバモイル)エチル]修飾オリゴマー、モルホリノオリゴマー、ペプチド抱合型ホスホロアミデートモルホリノオリゴマー(PPMO)、(i)モルホリノ環の窒素原子との共有結合がある及び(ii)(1,4-ピペラジン)-1-イル置換基または置換(1,4-ピペラジン)-1-イルとの第2の共有結合があるリン原子を有する、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMOplus)、ならびに(i)モルホリノ環の窒素原子との共有結合がある及び(ii)4-アミノピペリジン-1-イル(すなわち、APN)または4-アミノピペリジン-1-イルの誘導体の環窒素原子との第2の共有結合があるリン原子を有する、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO-X)の化学が含まれ、前述のいずれかの組み合わせが含まれる。一般にPNA及びLNA化学は短い標的指向化配列を利用することができ、それは、PMO及び2’O-Me修飾オリゴマーと比べて相対的に高い標的結合強さのためである。ホスホロチオエートと2’O-Me修飾化学を組み合わせて、2’O-Me-ホスホロチオエート主鎖を生成することができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開第WO2013/112053号及び同第WO2009/008725号を参照すること。
【0083】
いくつかの場合において、PMOなどのアンチセンスオリゴマーを細胞透過性ペプチド(CPP)に抱合させて、細胞内送達を促進することができる。ペプチド抱合型PMOはPPMOと呼ばれ、特定の実施形態は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開第WO2012/150960号に記載されているものを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているアンチセンスオリゴマーの、例えば3’末端に抱合または連結しているアルギニン豊富ペプチド配列を、使用することができる。特定の実施形態において、本明細書に記載されているアンチセンスオリゴマーの、例えば5’末端に抱合または連結しているアルギニン豊富ペプチド配列を、使用することができる。
【0084】
1.ペプチド核酸(PNA)
ペプチド核酸(PNA)は、主鎖がデオキシリボース主鎖と構造的に同形であり、ピリミジンまたはプリン塩基が結合しているN-(2-アミノエチル)グリシンユニットからなる、DNAの類縁体である。天然のピリミジン及びプリン塩基を含有するPNAは、ワトソン・クリック塩基対合則に従って相補的オリゴマーとハイブリッド形成し、塩基対認識に関してDNAを模倣する(Egholm,Buchardt et al.1993)。PNAの主鎖は、ホスホジエステル結合ではなくペプチド結合によって形成され、そのことがアンチセンス用途に好適にしている(下記の構造を参照すること)。主鎖は非荷電であり、通常より大きな熱安定性を示すPNA/DNAまたはPNA/RNA二重鎖をもたらす。PNAは、ヌクレアーゼまたはプロテアーゼによって認識されない。PNAの非限定例が下記に描写されている。
【化17】
【0085】
天然の構造に対する劇的な構造的変化にもかかわらず、PNAは、DNAまたはRNAにヘリックス形態で配列特異的に結合することができる。PNAの特徴には、相補的DNAまたはRNAへの高い結合親和性、単一塩基ミスマッチにより引き起こされる不安定化、ヌクレアーゼ及びプロテアーゼに対する抵抗性、塩濃度と無関係なDNAまたはRNAとのハイブリッド形成、及びホモプリンDNAとの三重鎖の形成が含まれる。PANAGENE(商標)は、独自のBts PNAモノマー(Bts:ベンゾチアゾール-2-スルホニル基)及び独自のオリゴマー化プロセスを開発した。Bts PNAモノマーを使用するPNAオリゴマー化は、脱保護、カップリング及びキャッピングの反復サイクルから構成される。PNAは、当該技術に既知の任意の技術を使用して合成的に産生され得る。例えば、米国特許第6,969,766号、同第7,211,668号、同第7,022,851号、同第7,125,994号、同第7,145,006号及び同第7,179,896号を参照すること。PNAの調製については、米国特許第5,539,082号、同第5,714,331号及び同第5,719,262号も参照すること。PNA化合物の更なる教示は、Nielsen et al.,Science,254:1497-1500,1991に見出すことができる。前述のものは、それぞれ、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0086】
2.ロックド核酸(LNA)
アンチセンスオリゴマー化合物は、「ロックド核酸」サブユニット(LNA)も含有することができる。「LNA」は架橋核酸(BNA)と呼ばれる修飾の部類のメンバーである。BNAは、リボース環の立体配置をC30エンド(ノーザン)糖の歪みにロックする共有結合的連結によって特徴づけられる。LNAでは、架橋は、2’-O位置と4’-C位置の間のメチレンから構成される。LNAは、主鎖の事前組織化(preorganization)及び塩基の積み重ねを増強して、ハイブリッド形成及び熱安定性を増加させる。
【0087】
LNAの構造は、例えば、Wengel,et al.,Chemical Communications(1998)455、Tetrahedron(1998)54:3607及びAccounts of Chem.Research(1999)32:301)、Obika,et al.,Tetrahedron Letters(1997)38:8735、(1998)39:5401及びBioorganic Medicinal Chemistry(2008)16:9230において見出すことができ、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。LNAの非限定例が下記に描写されている。
【化18】
【0088】
本開示の化合物は、1個以上のLNAを組み込むことができ、いくつかの場合では、化合物は、全体がLNAによって構成され得る。個別のLNAヌクレオシドサブユニットの合成方法及びオリゴマーへの組み込み方法は、例えば、米国特許第7,572,582号、同第7,569,575号、同第7,084,125号、同第7,060,809号、同第7,053,207号、同第7,034,133号、同第6,794,499号及び同第6,670,461号に記載されており、これらは、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。典型的なサブユニット間リンカーには、ホスホジエステル及びホスホロチオエート部分が含まれ、代替的には、非リン含有リンカーを用いてもよい。更なる実施形態には、LNA含有化合物が含まれ、それぞれのLNAサブユニットは、DNAサブユニットによって隔てられている。特定の化合物は、LNA及びDNAサブユニットから交互に構成され、サブユニット間リンカーはホスホロチオエートである。
【0089】
2’O,4’C-エチレン架橋核酸(ENA)は、BNAの部類の別のメンバーである。非限定例が下記に描写されている。
【化19】
【0090】
ENAオリゴマー及びこれらの調製は、Obika et al.,Tetrahedron Lett 38(50):8735に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示の化合物は、1個以上のENAサブユニットを組み込むことができる。
【0091】
3.ホスホロチオエート
「ホスホロチオエート」(または、S-オリゴ)は、正常なDNAの変異体であり、非架橋酸素の1個が硫黄に置き換えられている。ホスホロチオエートの非限定例が下記に描写されている。
【化20】
【0092】
ヌクレオチド間結合の硫化は、5’から3’及び3’から5’ DNA POL 1エキソヌクレアーゼ、ヌクレアーゼS1及びP1、RNアーゼ、血清ヌクレアーゼ、ならびにヘビ毒ホスホジエステラーゼを含む、エンド及びエキソヌクレアーゼの作用を低減する。ホスホロチオエートは、2つの主要な経路によって作製され、ホスホン酸水素に対する、二硫化炭素中の元素硫黄の溶液の作用、または二硫化テトラエチルチウラム(TETD)もしくは3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン1,1-ジオキシド(BDTD)のいずれかを用いる亜リン酸トリエステルの硫化方法である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Iyer et al.,J.Org.Chem.55,4693-4699,1990を参照すること)。後者の方法は、大部分の有機溶媒における元素硫黄の不溶性及び二硫化炭素の毒性の問題を回避している。またTETD及びBDTDの方法は、高い純度のホスホロチオエートを生じる。
【0093】
4.トリシクロ-DNA及びトリシクロホスホロチオエートヌクレオチド
トリシクロ-DNA(tc-DNA)は、拘束DNA類縁体の部類であり、それぞれのヌクレオチドが、シクロプロパン環の導入により修飾されて、主鎖の立体構造柔軟性を制限し、主鎖幾何学のねじれ角γを最適化する。ホモ塩基(homobasic)アデニン及びチミン含有tc-DNAは、並外れて安定したA-T塩基対を相補的RNAと形成する。トリシクロ-DNA及びこれらの合成は、PCT特許出願公開第WO2010/115993号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示の化合物は、1個以上のトリシクロ-DNAヌクレオチドを組み込むことができ、いくつかの場合では、化合物は、全体がトリシクロ-DNAヌクレオチドによって構成され得る。
【0094】
トリシクロ-ホスホロチオエートヌクレオチドは、ホスホロチオエートサブユニット間連結を有するトリシクロ-DNAヌクレオチドである。トリシクロ-ホスホロチオエートヌクレオチド及びこれらの合成は、PCT特許出願公開第WO2013/053928号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示の化合物は、1個以上のトリシクロ-DNAヌクレオチドを組み込むことができ、いくつかの場合では、化合物は、全体がトリシクロ-DNAヌクレオチドによって構成され得る。トリシクロ-DNA/トリシクロ-ホスホロチオエートヌクレオチドの非限定例が下記に描写されている。
【化21】
【0095】
5.2’O-メチル、2’O-MOE及び2’-Fオリゴマー
「2’O-Meオリゴマー」分子は、リボース分子の2’-OH残基にメチル基を担持する。2’-O-Me-RNAは、DNAと同じ(または、類似した)挙動を示すが、ヌクレアーゼ分解から保護されている。2’-O-Me-RNAを、更に安定化させるために、ホスホチオエートオリゴマー(PTO)と組み合わせることもできる。2’O-Meオリゴマー(ホスホジエステルまたはホスホチオエート)を、当該技術に日常的な技術によって合成することができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Yoo et al.,Nucleic Acids Res.32:2008-16,2004を参照すること)。2’O-Meオリゴマーの非限定例が下記に描写されている。
【化22】
【0096】
2’O-Meオリゴマーは、ホスホロチオエート連結を含むこともできる(2’O-Meホスホロチオエートオリゴマー)。2’O-メトキシエチルオリゴマー(2’-O MOE)は、2’O-Meオリゴマーのように、リボース分子の2’-OH残基にメトキシエチル基を担持し、Martin et al.,Helv.Chim.Acta,78,486-504,1995において考察されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。2’O-MOEヌクレオチドの非限定例が下記に描写されている。
【化23】
【0097】
前出のアルキル化2’OHリボース誘導体と対照的に、2’-フルオロオリゴマーは、2’OHの代わりに、2’位置にフルオロラジカルを有する。2’-Fオリゴマーの非限定例が下記に描写されている。
【化24】

2’-フルオロオリゴマーは、PCT特許出願公開第WO2004/043977号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示の化合物は、1個以上の2’O-メチル、2’O-MOE及び2’-Fサブユニットを組み込むことができ、本明細書に記載されているサブユニット間連結のいずれかを利用することができる。いくつかの場合、本開示の化合物は、全体が2’O-メチル、2’O-MOE、または2’-Fサブユニットから構成され得る。本開示の化合物の1つの実施形態は、全体が2’O-メチルサブユニットから構成される。
【0098】
6.2’-O-[2-(N-メチルカルバモイル)エチル]オリゴヌクレオチド(MCE) MCEは、本開示の化合物に有用な2’O修飾リボヌクレオシドの別の例である。ここで、2’OHは、2-(N-メチルカルバモイル)エチル部分に誘導体化されて、ヌクレアーゼ抵抗性を増加する。MCEオリゴマーの非限定例が以下に描写されている。
【化25】

MCE及びこれらの合成は、Yamada et al.,J.Org.Chem.,76(9):3042-53に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示の化合物は、1個以上のMCEサブユニットを組み込むことができる。
【0099】
7.立体特異的オリゴマー
立体特異的オリゴマーは、それぞれのリン含有連結の立体化学が、実質的に純粋な単一のオリゴマーが産生されるような合成方法によって固定されているものである。立体特異的オリゴマー非限定例が下記に描写されている。
【化26】
【0100】
上記の例において、オリゴマーのそれぞれのリンは、同じ立体化学を有する。追加的な例には、上記に記載されたオリゴマーが含まれる。例えば、LNA、ENA、トリシクロ-DNA、MCE、2’O-メチル、2’O-MOE、2’-F及びモルホリノに基づいたオリゴマーは、例えば、ホスホロチオエート、ホスホジエステル、ホスホロアミデート、ホスホロジアミデートなどの立体特異的リン含有ヌクレオシド間連結、または他のリン含有ヌクレオシド間連結によって調製され得る。立体特異的オリゴマー、調製方法、キラル制御合成、キラル設計及びそのようなオリゴマーの調製に使用されるキラル補助剤は、例えば、PCT出願公開第WO2015/107425号、同第WO2015/108048号、同第WO2015/108046号、同第WO2015/108047号、同第WO2012/039448号、同第WO2010/064146号、同第WO2011/034072号、同第WO2014/010250号、同第WO2014/012081号、同第WO2013/0127858号及び同第WO2011/005761号に詳述されており、これらは、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
8.モルホリノに基づいたオリゴマー
モルホリノに基づいたオリゴマーは、核塩基を支持するモルホリノサブユニットを含むオリゴマーを指し、リボースの代わりにモルホリン環を含有する。例示的なヌクレオシド間連結には、例えば、1個のモルホリノサブユニットのモルホリン環窒素を、隣接するモルホリノサブユニットの4’環外炭素に接合させるホスホロアミデートまたはホスホロジアミデートヌクレオシド間連結が含まれる。それぞれのモルホリノサブユニットは、塩基特異的水素結合によってオリゴヌクレオチドの塩基に結合するのに有効なプリンまたはピリミジン核塩基を含む。
【0102】
モルホリノに基づいたオリゴマー(アンチセンスオリゴマーを含む)及びこれらの合成は、例えば、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,185,444t号、同第5,521,063号、同第5,506,337号、米国特許出願第12/271,036号及び同第12/271,040号、PCT公開第WO2009/064471号及び同第WO2012/043730号、ならびにSummerton
et al.1997,Antisense and Nucleic Acid Drug Development,7:187-195に詳述されており、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。オリゴマー構造内において、リン酸基は、一般にオリゴマーの「ヌクレオシド間連結」を形成するものとして参照される。RNA及びDNAの天然に生じるヌクレオシド間連結は、3’から5’へのホスホジエステル連結である。「ホスホロアミデート」基は、3個の結合酸素原子及び1個の結合窒素原子を有するリンを含み、一方、「ホスホロジアミデート」基は、2個の結合酸素原子及び2個の結合窒素原子を有するリンを含む。本明細書に記載されているモルホリノに基づいたオリゴマーの非荷電またはカチオン性サブユニット間連結において、1個の窒素は主鎖に対して常にペンダントである。ホスホロジアミデート連結における2個目の窒素は、典型的にはモルホリン環構造の環窒素である。
【0103】
「PMO-X」は、(i)モルホリン環の窒素原子との共有結合及び(ii)4-アミノピペリジン-1-イル(すなわち、APN)または4-アミノピペリジン-1-イルの誘導体の環窒素との第2の共有結合があるリン酸原子を有する、ホスホロジアミデートモルホリノに基づいたオリゴマーを指す。例示的なPMO-Xオリゴマーは、PCT出願第PCT/US2011/38459号及びPCT公開第WO2013/074834号に開示されており、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。PMO-Xには、「PMO-apn」または「APN」が含まれ、少なくとも1個のヌクレオシド間連結を含むPMO-Xオリゴマーを指し、ここでリン原子は、モルホリノ基及び4-アミノピペリジン-イル(すなわち、APN)の環窒素に連結している。特定の実施形態において、表2に記載されている標的指向化配列を含むアンチセンスオリゴマーは、少なくとも1個のAPN含有連結またはAPN誘導体含有連結を含む。様々な実施形態は、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のAPN/APN誘導体含有連結を有するモルホリノに基づいたオリゴマーを含み、ここで残りの連結(100%未満の場合)は、非荷電連結であり、例えば、全ヌクレオシド間連結のうち、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40個は、APN/APN誘導体含有連結である。
【0104】
特定の実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、式(I):
【化27】

の化合物、またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、各Nuは、一緒になって標的指向化配列を形成する核酸塩基であり、
Zは、8~38の整数であり、
Tは、
【化28】

から選択され、
Gは、細胞透過性ペプチド(「CPP」)及び連結部分である。
【0105】
いくつかの実施形態において、Gは、-C(O)(CHNH-CPP-R
-C(O)(CHNH-CPP-R、-C(O)(CHNHC(O)(CHNH-CPP-R
-C(O)CHNH-CPP-R及び
【化29】

から選択され、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端のアミド結合によりリンカー部分に結合しており、Rは、アミド結合によりCPPアミノ末端Rに結合している部分であり、Rは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択される。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。いくつかの実施形態において、CPPは、配列番号5~21から選択される。特定の実施形態において、Gは、配列番号22~25から選択される。いくつかの実施形態において、CPPは、配列番号11である。特定の実施形態において、Gは配列番号25である。
【0106】
特定の実施形態において、Gは、-C(O)CHNH-CPP-R及び
【化30】

から選択され、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端のアミド結合によりリンカー部分に結合しており、Rは、アミド結合によりCPPアミノ末端に結合しており、Rは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択され、CPPは、配列番号5~21から選択される。いくつかの実施形態において、CPPは、配列番号11である。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。
【0107】
いくつかの実施形態において、Tは
【化31】
である。
【0108】
様々な態様において、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、式(II):
【化32】

の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、各Nuは、一緒になって標的指向化配列を形成する核酸塩基であり、
Zは、8~38の整数であり、
Gは、細胞透過性ペプチド(「CPP」)及び連結部分である。
【0109】
いくつかの実施形態において、Gは、-C(O)(CHNH-CPP-R
-C(O)(CHNH-CPP-R、-C(O)(CHNHC(O)(CHNH-CPP-R
-C(O)CHNH-CPP-R及び
【化33】

から選択され、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端のアミド結合によりリンカー部分に結合しており、Rは、アミド結合によりCPPアミノ末端Rに結合している部分であり、Rは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択される。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。いくつかの実施形態において、CPPは、配列番号5~21から選択される。特定の実施形態において、Gは、配列番22~25から選択される。いくつかの実施形態において、CPPは、配列番号11である。特定の実施形態において、Gは配列番号25である。
【0110】
特定の実施形態において、Gは、-C(O)CHNH-CPP-R及び
【化34】

から選択され、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端のアミド結合によりリンカー部分に結合しており、Rは、アミド結合によりCPPアミノ末端に結合しており、Rは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択され、CPPは、配列番号5~21から選択される。いくつかの実施形態において、CPPは、配列番号11である。特定の実施形態において、Gは、配列番号24又は25から選択される。いくつかの実施形態において、Gは、配列番号25である。
【0111】
いくつかの実施形態において、例えば、式(I)及び式(II)のアンチセンスオリゴマーのいくつかの実施形態を含む、本開示のアンチセンスオリゴマーの標的指向化配列は、
a)配列番号3(CTGAGCCGCTGGCAGATGCCTTGTC)(ここで、Zは23である)及び
b)配列番号4(GAGGAGATGGGTCCACCCACCTGGG)(ここで、Zは23である)から選択される。
【0112】
ペプチド輸送体
PMOのCPP及びアルギニン豊富ペプチド抱合体(PPMO)
特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞透過性ペプチド(本明細書において「CPP」と呼ばれる)に抱合されている。いくつかの実施形態において、CPPは、アルギニン豊富ペプチドである。用語「アルギニン豊富」は、それぞれ場合により1個以上の非荷電疎水性残基によって隔てられている少なくとも2個、好ましくは2、3、4、5、6、7、または8個のアルギニン残基を有し、場合により約6~14個のアミノ酸残基を含有するCPPを指す。下記に説明されるように、CPPは、好ましくは、そのカルボキシ末端において、リンカー(1個以上のアミノ酸でもよい)を介してアンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端及び/または5’末端に連結しており、また好ましくは、そのアミノ末端において、置換基Rによってキャップされており、ここでRは、H、アセチル、ベンゾイル、またはステアロイルから選択される。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。
【表3-1】
【表3-2】
【0113】
CPP、これらの合成及びオリゴマーへの抱合方法は、米国特許出願第2012/0289457号、ならびにPCT特許出願公開第WO2004/097017号、同第WO2009/005793号及び同第WO2012/150960号に更に記載されており、これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0114】
様々な実施形態において、G(式(I)及び(II)に列挙されている)は、細胞透過性ペプチド(「CPP」)、ならびに-C(O)(CHNH-CPP-R、-C(O)(CHNH-CPP-R、-C(O)(CHNHC(O)(CHNH-CPP-R、-C(O)CHNH-CPP-R及び
【化35】

から選択されるリンカー部分であり、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端のアミド結合によりリンカー部分に結合しており、Rは、アミド結合によりCPPアミノ末端Rに結合している部分であり、Rは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択される。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。いくつかの実施形態において、CPPは、配列番号5~21を含む、または、から選択される。いくつかの実施形態において、Gは、配列番号22~25を含む、または、から選択される。いくつかの実施形態において、CPPは、配列番号11である。いくつかの実施形態において、Gは、配列番号25である。
【0115】
いくつかの実施形態において、G(式(I)及び(II)に列挙されている)は、下記式:
【化36】

のものであり、式中、Rは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択され、Jは、4~9の整数である。特定の実施形態において、Jは6である。
【0116】
様々な実施形態において、CPP-R(式(I)及び(II)に列挙されている)は、下記式:
【化37】

のものであり、式中、Rは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択され、Jは、4~9の整数である。特定の実施形態において、CPPは、配列番号11である。様々な実施形態において、Jは6である。いくつかの実施形態においてRは、H及びアセチルから選択される。例えば、いくつかの実施形態において、RはHである。特定の実施形態において、Rはアセチルである。
【0117】
いくつかの実施形態において、Gは、配列番号22~25を含む、または、から選択される。特定の実施形態において、Gは配列番号25である。
【0118】
例えば、式(I)及び式(II)のアンチセンスオリゴマーを含む、特定の実施形態において、Gは、オリゴマーの3’末端で本開示のアンチセンスオリゴマーに共有結合している-C(O)CHNH-R-Rであり、ここでRは、Rのアミノ末端をキャップするH、アセチル、ベンゾイルまたはステアロイルである。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。これらの非限定例において、CPPは-R-Rであり、リンカーは-C(O)CHNH-(すなわち、グリシン)である。このG=-C(O)CHNH-R-Rの特定例も以下の構造:
【化38】

によって例示され、ここでRは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択される。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。
【0119】
様々な実施形態において、CPP-Rは-R-Rであり、ここでCPPは配列番号11であり、これも以下の式:
【化39】

によって例示され、ここでRは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択される。特定の実施形態において、CPPは、配列番号11である。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。
【0120】
いくつかの実施形態において、CPP-Rは式-(RXR)-Rであり、ここでCPPは配列番号16であり、これも以下の式:
【化40】

により例示される。
【0121】
様々な実施形態において、CPP-Rは-R-(FFR)-Rであり、ここでCPPは配列番号21であり、これも以下の式:
【化41】

により例示される。
【0122】
様々な実施形態において、Gは、細胞透過性ペプチド(「CPP」)、ならびに-C(O)(CHNH-CPP-R、-C(O)(CHNH-CPP-R
-C(O)(CHNHC(O)(CHNH-CPP-R、-C(O)CHNH-CPP-R及び
【化42】

から選択され、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端のアミド結合によりリンカー部分に結合しており、Rは、アミド結合によりCPPアミノ末端に結合しており、Rは、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択され、CPP-Rは、
【化43】
、(-R-(FFR)-R)、
【化44】
、(-(RXR)-R)、または
【化45】
、(-R-R)から選択される。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。
【0123】
更に、いくつかの態様において、本開示のアンチセンスオリゴマーは、式(III):
【化46】

の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、各Nuは、一緒になって、
a)配列番号3(CTGAGCCGCTGGCAGATGCCTTGTC)(ここで、Zは23である)及び
b)配列番号4(GAGGAGATGGGTCCACCCACCTGGG)(ここで、Zは23である)から選択される標的指向化配列(5’から3’)を形成し、
は、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択される。
【0124】
いくつかの実施形態において、標的指向化配列は、配列番号3(CTGAGCCGCTGGCAGATGCCTTGTC)であり、Zは23である。特定の実施形態において、標的指向化配列は、配列番号4(GAGGAGATGGGTCCACCCACCTGGG)であり、Zは23である。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。
【0125】
例えば、式(III)のアンチセンスオリゴマーのいくつかの実施形態を含む、本開示のアンチセンスオリゴマーのいくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、式(IV):
【化47】

の化合物またはその薬学的に許容される塩であり得、
式中、各Nuは、一緒になって、
a)配列番号3(CTGAGCCGCTGGCAGATGCCTTGTC)(ここで、Zは23である)及び
b)配列番号4(GAGGAGATGGGTCCACCCACCTGGG)(ここで、Zは23である)から選択される標的指向化配列(5’から3’)を形成し、
は、H、アセチル、ベンゾイル及びステアロイルから選択される。
【0126】
いくつかの実施形態において、標的指向化配列は、配列番号3(CTGAGCCGCTGGCAGATGCCTTGTC)であり、Zは23である。特定の実施形態において、標的指向化配列は、配列番号4(GAGGAGATGGGTCCACCCACCTGGG)であり、Zは23である。いくつかの実施形態において、Rはアセチルである。
【0127】
いくつかの実施形態において、式(III)のアンチセンスオリゴマー化合物は、標的指向化配列が配列番号3(CTGAGCCGCTGGCAGATGCCTTGTC)であり、Zが23である式(IV)のものである。いくつかの実施形態において、式(III)のアンチセンスオリゴマー化合物は、標的指向化配列が配列番号4(GAGGAGATGGGTCCACCCACCTGGG)であり、Zが23である式(IV)のものである。
【0128】
いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、式(V)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、
【化48】
及び
【化49】

から選択される。
【0129】
いくつかの実施形態において、式(V)のアンチセンスオリゴマーは、式(Va)のものである。特定の実施形態において、式(V)のアンチセンスオリゴマーは、式(Vb)のものである。
【0130】
いくつかの実施形態において、例えば、式(III)、式(IV)、式(V)、式(Va)及び式(Vb)の化合物を含む本開示のアンチセンスオリゴマーは、薬学的に許容される塩である。特定の実施形態において、薬学的に許容される塩は、HCl(塩酸)塩である。例えば、いくつかの実施形態において、式(III)の化合物はHCl塩である。特定の実施形態において、式(III)の化合物は、0.6 HCl塩である。いくつかの実施形態において、式(IV)の化合物はHCl塩である。特定の実施形態において、式(IV)の化合物は、0.6 HCl塩である。いくつかの実施形態において、式(V)の化合物はHCl塩である。特定の実施形態において、式(V)の化合物は、0.6 HCl塩である。いくつかの実施形態において、式(Va)の化合物はHCl塩である。特定の実施形態において、式(Va)の化合物は、0.6 HCl塩である。いくつかの実施形態において、式(Vb)の化合物はHCl塩である。特定の実施形態において、式(Vb)の化合物は、0.6 HCl塩である。
【0131】
例えば、式(V)のアンチセンスオリゴマーのいくつかの実施形態を含む、本開示のアンチセンスオリゴマーのいくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、式(VI)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、
【化50】

及び
【化51】

から選択される。
【0132】
いくつかの実施形態において、式(VI)のアンチセンスオリゴマーは、式(VIa)のものである。特定の実施形態において、式(VI)のアンチセンスオリゴマーは、式(VIb)のものである。特定の実施形態において、式(V)のアンチセンスオリゴマー化合物は、式(VIa)のものである。いくつかの実施形態において、式(V)のアンチセンスオリゴマー化合物は、式(VIb)のものである。
【0133】
いくつかの実施形態において、例えば、式(VI)、式(VIa)及び式(VIb)の化合物を含む本開示のアンチセンスオリゴマーは、薬学的に許容される塩である。特定の実施形態において、薬学的に許容される塩は、HCl(塩酸)塩である。例えば、いくつかの実施形態において、式(VI)の化合物はHCl塩である。特定の実施形態において、式(VI)の化合物は、0.6 HCl塩である。いくつかの実施形態において、式(VIa)の化合物はHCl塩である。特定の実施形態において、式(VIa)の化合物は、0.6 HCl塩である。いくつかの実施形態において、式(VIb)の化合物はHCl塩である。特定の実施形態において、式(VIb)の化合物は0.6 HCl塩である。
【0134】
明確にするため、式(V)及び(VI)のアンチセンスオリゴマーの構造式は、5’から3’の連続的な構造式であり、構造式全体を凝縮形態で容易に例示するため、様々な例示において、「中断A」、「中断B」及び「中断C」と標識した中断を伴って本明細書に提示されている。当業者は、例えば、「中断A」の各表示が、これらの点から構造式の例示が続いていることを示すことを理解する。同じことが、式(V)及び(VI)のアンチセンスオリゴマーの構造式における「中断B」及び「中断C」の場合にもそれぞれ当てはまる。上記に記載された、または本明細書に使用されている例示の中断のうちで、式(V)及び(VI)のアンチセンスオリゴマーの構造式の実際の中断を示すことを意図するものはなく、当業者が実際の中断を意味すると理解することもない。
【0135】
使用方法及び薬学的製剤
本発明は、本明細書に記載されているアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそれを含有する薬学的組成物を対象に投与することによって、ラミノパシーなどの早老性疾患及び関連する疾患または状態を、必要性のある対象において治療する方法に関し、オリゴヌクレオチドは、LMNAプレmRNAのスプライシングを調節することによって、突然変異LMNAタンパク質mRNAの発現を阻害する。特定の態様において、例えば、これら及び関連する方法を、プロジェリン発現がHGPSなどの疾患に関連する臨床状況における早老性ラミノパシーの治療に適用することができる。これら及び関連する実施形態を、本発明の方法を他の治療と同時発生的に、または順次に実施することによって、早老性ラミノパシーを治療または低減する方法と組み合わせることもできる。
【0136】
本明細書に記載されている結果を、早老性ラミノパシーの範囲を超えて老化過程、ならびに関連する状態及び疾患に一般化することができる。これは、HGPSが多くの観点から正常な老化過程に緊密に関連するからである。HGPSは、有用な老化モデルとして認識され続けている(Fossel,J.Pediatr Endocrinol Metab 13 Suppl 6:1477-1481,2000)。例えば、とりわけ冠動脈の、アテローム性動脈硬化症との関連性が非常に強い。加えて、HGPSにおける脱毛症は、高齢の対象において見られるものに類似している。更に、何年も前にHayflick及び他により記載されたHGPSの主な細胞的特徴(Hayflick,N Engl J Med 295:1302-1308,1976)は、早期細胞老化である。HGPSの線維芽細胞における細胞分裂の限定された回数は、高齢者に由来する線維芽細胞において見られるものに類似している。このことは、HGPSの線維芽細胞における遺伝子発現パターンと、高齢者に由来するものとの類似性を示し、若年者に由来する線維芽細胞と区別されることを示した研究によって更に探求された(Ly et al.,Science 287:2486-2492,2000)。
【0137】
したがって、本明細書に記載されている早老性疾患または関連する状態を治療する方法は、HGPSなどの早老性ラミノパシー、または別の早老性疾患もしくは状態、老化関連状態、心血管疾患または状態(例えば、アテローム性動脈硬化症)などの治療を含み得ることが理解される。
【0138】
本発明の方法を使用する有効なインビボ治療レジメンは、オリゴヌクレオチドの持続期間、用量、頻度及び投与経路、ならびに治療されている対象の状態(すなわち、予防的な投与に対する現存状態に応答した投与)によって変わり得ることが理解される。したがって、そのようなインビボ療法は、治療されている特定の種類の疾患に適した検査によってモニターされること及び最適な治療結果を達成するために用量または治療レジメンの調整に対応することが、多くの場合に必要である。
【0139】
特定の実施形態において、本発明の方法は、本明細書に記載されているアンチセンスオリゴマーの治療送達に適した製剤または組成物を用いる。したがって、特定の実施形態において、本発明の方法は、1つ以上の薬学的に許容される担体(添加剤)及び/または希釈剤と一緒に処方された、治療有効量の本明細書に記載されている1つ以上のオリゴマーまたは作用物質を含む、薬学的に許容される組成物を用いる。本発明のオリゴマーを単独で投与することは可能であるが、化合物を薬学的製剤(組成物)として投与することが好ましい。
【0140】
核酸分子の送達方法は、例えば、Akhtar et al.,1992,Trends Cell Bio.,2:139、Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics,ed.Akhtar、Sullivan et al.のPCT出願公開第WO94/02595号に記載されている。これら及び他のプロトコールを、本発明の単離オリゴマーを含む実質的にあらゆる核酸分子の送達に利用することができる。
【0141】
下記に詳述されるように、本発明の方法に使用される薬学的組成物は、以下のように適合されたものを含む、固体または液体の形態で投与されるように特別に処方され得る。(1)経口投与、例えば、水薬(水性または非水性の液剤または懸濁剤)、錠剤、例えば、頬側、舌下及び全身吸収を目指したもの、巨丸薬、粉末剤、顆粒剤、舌に適用するペースト剤、(2)非経口投与、例えば、滅菌液剤もしくは懸濁剤、または持続放出製剤としての、例えば、皮下、筋肉内、静脈内もしくは硬膜外の注射、(3)局所適用、例えば、皮膚に適用されるクリーム剤、軟膏剤または制御放出パッチ剤もしくは噴霧剤、(4)膣内または直腸内、例えば、ペッサリー剤、クリーム剤またはフォーム剤、(5)舌下、(6)眼内、(7)経皮、あるいは(8)経鼻。
【0142】
語句「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で妥当な利益/危険比で釣り合っている、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴うことなくヒト及び動物の組織との接触に使用するのに適している、化合物、材料、組成物及び/または剤形を指すために、本明細書において用いられる。
【0143】
語句「薬学的に許容される担体」は、本明細書において使用されるとき、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、潤滑剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、カルシウムもしくは亜鉛、またはステアリン酸)、あるいは主題の化合物を1つの臓器または身体の一部から別の臓器または身体の一部へ運ぶ、または輸送することに関与する溶媒カプセル化材料などの、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があるという意味で「許容」されなければならず、患者に対して有害であってはならない。
【0144】
薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例には、限定されることなく以下が含まれる。(1)ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖、(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン、(3)セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのその誘導体、(4)粉末トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバター及び坐剤用ワックスなどの賦形剤、(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質無含有水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝溶液、(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/またはポリ無水物、ならびに(22)薬学的製剤に用いられる他の非毒性で適合性のある物質。
【0145】
本発明のアンチセンスオリゴマーとの処方に適した作用物質の追加的な非限定例には、PEG抱合核酸、リン脂質抱合核酸、核酸含有親油性部分、ホスホロチオエート、様々な組織への薬物の侵入を増強し得るP-糖タンパク質阻害剤(例えば、Pluronic P85)、埋入後の持続性放出送達のためのポリ(DL-ラクチド-コグリコリド)微小球(Emerich,DF et al.,1999,Cell Transplant,8,47-58)Alkermes,Inc Cambridge,Mass.などの生分解性ポリマー及び血液脳関門を横断して薬物を送達することができ、ニューロンへの取り込みを変更することができる、ポリブチルシアノアクリレート製のものなどの装填ナノ粒子(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry,23,941-949,1999)が含まれる。
【0146】
また本発明の方法は、ポリ(エチレングリコール)脂質を含有する表面修飾リポソーム(PEG修飾分枝及び非分枝もしくはこれらの組み合わせ、または長期循環性リポソームもしくはステルスリポソーム(stealth liposome))を含む組成物の使用を特徴とする。本発明のオリゴマーは、様々な分子量の共有結合PEG分子を含むこともできる。これらの製剤は、標的組織における薬物の蓄積を増加する方法を提供する。この部類の薬物担体は、単核球食細胞系(MPSまたはRES)によるオプソニン作用及び排除に抵抗し、それによって、長い血中循環時間を可能にし、カプセル化された薬物への組織曝露を増強する(Lasic et al.Chem.Rev.1995,95,2601-2627;Ishiwata et al.,Chem.Pharm.Bull.1995,43,1005-1011)。そのようなリポソームは、おそらく新生血管化標的組織における血管外漏出及び捕捉によって、腫瘍に選択的に蓄積されることが示されている(Lasic et al.,Science 1995,267,1275-1276;Oku et al.,1995,Biochim.Biophys.Acta,1238,86-90)。長期循環性リポソームは、特に、MPSの組織に蓄積することが知られている従来のカチオン性リポソームと比較して、DNA及びRNAの薬物動態及び薬力学を増強する(Liu et al.,J.Biol.Chem.1995,42,24864-24870、Choi et al.のPCT公開第WO96/10391号、Ansell et al.のPCT公開第WO96/10390号、Holland et al.のPCT公開第WO96/10392号)。長期循環性リポソームは、肝臓及び脾臓などの代謝的に積極的なMPS組織における蓄積を回避する能力に基づいて、カチオン性リポソームと比較して大きな程度でヌクレアーゼ分解から薬物を保護している可能性もある。
【0147】
更なる実施形態において、本発明の方法は、米国特許第6,692,911号、同第7,163,695号及び同第7,070,807号に記載されているような、送達用に調製されたオリゴマー組成物を含む。これに関して、1つの実施形態において、本発明は、米国特許第7,163,695号、同第7,070,807号及び同第6,692,911号に記載されている、リシン及びヒスチジン(HK)のコポリマーを含む組成物に、本発明のオリゴマーを単独で、あるいはPEG(例えば、分枝もしくは非分枝PEG、または両方の混合物)と組み合わせて、PEG及び標的指向化部分と組み合わせて、あるいは前述のいずれかと架橋剤との組み合わせにより提供する。特定の実施形態において、本発明は、グルコン酸修飾ポリヒスチジンまたはグルコニル化ポリヒスチジン/トランスフェリン-ポリリシンを含む組成物に、アンチセンスオリゴマーを提供する。当業者は、His及びLysに類似した特性を有するアミノ酸が組成物内で置換され得ることも認識する。
【0148】
特定の方法において、本明細書に記載されているオリゴマーは、アミノまたはアルキルアミノなどの塩基性官能基を含有することができ、したがって、薬学的に許容される塩を薬学的に許容される酸と形成することができる。用語「薬学的に許容される塩」は、この点において、本発明の化合物の比較的非毒性である無機及び有機酸付加塩を指す。これらの塩は、投与ビヒクルもしくは剤形製造過程においてその場で、または本発明の精製された化合物の遊離塩基形態を、適切な有機もしくは無機酸と別個に反応させ、そのように形成された塩を続く精製の際に単離することによって調整することができる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシレート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナプチル酸塩(napthylate)、メシレート、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩及びラウリルスルホン酸塩などが含まれる。(例えば、Berge et al.(1977)“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci 66:1-19を参照すること)。
【0149】
主題オリゴマーの薬学的に許容される塩には、従来の非毒性塩または化合物の第四級アンモニウム塩、例えば非毒性の有機または無機酸からのものが含まれる。例えば、そのような従来の非毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導されるもの及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などの有機酸から調製される塩が含まれる。
【0150】
特定の方法において、本発明のオリゴマーは1つ以上の酸性官能基を含有することができ、したがって、薬学的に許容される塩を薬学的に許容される塩基と形成することができる。用語「薬学的に許容される塩」は、これらの場合において、本発明の化合物の比較的非毒性である無機及び有機塩基付加塩を指す。これらの塩も同様に、投与ビヒクルもしくは剤形製造過程においてその場で、または精製された化合物の遊離酸形態を、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩などの適切な塩基と、アンモニアと、または薬学的に許容される有機第一級、二級もしくは三級アミンと別個に反応させることによって、調製することができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアルミニウムの塩などが含まれる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが含まれる。(例えば、Berge et al.,supraを参照すること)。
【0151】
ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、ならびに着色剤、遊離剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤及び芳香剤、防腐剤、ならびに酸化防止剤も組成物に存在することができる。
【0152】
薬学的に許容される酸化防止剤には、以下が含まれる。(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤、(2)パルミチン酸アスコルビン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなどの油溶性酸化防止剤及び(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤。
【0153】
本発明の方法に使用される製剤には、経口、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、直腸内、膣内及び/または非経口投与に適したものが含まれる。製剤は、単位剤形で都合良く存在することができ、薬学の技術において周知の任意の方法によって調製することができる。単一剤形を生じる担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される宿主、特定の投与様式に応じて変わる。単一剤形を生じる担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生じる化合物の量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、約0.1パーセントから約99パーセントの活性成分、好ましくは約5パーセントから約70パーセント、最も好ましくは約10パーセントから約30パーセントの範囲である。
【0154】
特定の実施形態において、本発明の方法に使用される製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、ミセル形成剤、例えば胆汁酸、ポリマー担体、例えばポリエステル及びポリ無水物、ならびに本発明のオリゴマーから選択される賦形剤を含む。特定の実施形態において、前述の製剤は、本発明のオリゴマーを経口により生物学的に利用可能にする。
【0155】
これらの製剤または組成物を調製する方法には、本発明のオリゴマーを、担体及び場合により1つ以上の補助成分と関連付けるステップを含む。一般に、製剤は、本発明の化合物を、液体担体もしくは微粉固体担体またはその両方と均一及び密接に関連付け、次に、必要であれば生成物を造形することによって、調製される。
【0156】
本発明に使用される、経口投与に適した製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(通常はスクロース及びアカシアまたはトラガカントである風味付け基剤を使用する)、粉末剤、顆粒剤、または液剤、または水性もしくは非水性液体中の懸濁剤、または水中油もしくは油中水液体乳剤、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤、またはパステル剤(ゼラチン及びグリセリン、またはスクロース及びアカシアなどの不活性基剤を使用する)、及び/または口内洗浄剤,などの形態であってもよく、それぞれ、所定量の
本発明の化合物を活性成分として含有し得る。本発明のオリゴマーを、巨丸剤、舐剤またはペースト剤として投与することもできる。
【0157】
本発明に使用される、経口投与用の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣剤、粉末剤、顆粒剤、トローチ剤など)において、活性成分を、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム及び/または以下の任意のものなどの、1つ以上の薬学的に許容される担体と混合することができる。(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及び/またはケイ酸などの充填剤または増量剤、(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/またはアカシアなどの結合剤、(3)グリセロールなどの保湿剤、(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤(5)パラフィンなどの溶解遅延剤(solution retarding agent)、(6)第四級アンモニウム化合物などの吸収加速剤、ならびにポリキサマー及びラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤、(7)例えばセチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール及び非イオン性界面活性剤などの湿潤剤、(8)カオリン及びベントナイト粘土などの吸収剤、(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸及びこれらの混合物などの潤滑剤、(10)着色剤、ならびに(11)クロスポビドンまたはエチルセルロースなどの制御放出剤。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合において、薬学的組成物は、緩衝剤を含むこともできる。類似した種類の固体組成物を、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤の使用によって、ソフト及びハードシェルゼラチンカプセル剤に充填剤として用いることもできる。
【0158】
錠剤は、場合により1つ以上の補助成分を用いて、圧縮または成形により作製することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)もしくは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤、または分散剤を使用して調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を、適切な機械において成形することによって、作製することができる。
【0159】
糖衣剤、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤などの、本発明により使用される薬学的組成物の錠剤及び他の固体剤形は、腸溶コーティング及び薬学的処方技術において周知の他のコーティングなどのコーティング及びシェルを用いて、場合により刻み目を入れる、または調製することができる。例えば、所望の放出プロファイルを提供するために様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソーム及び/または微小球を使用して、活性成分の緩徐または制御放出を提供するように、処方することもできる。急速放出のために処方することができ、例えば凍結乾燥することができる。例えば、細菌保持フィルターを介した濾過により、または滅菌水に溶解し得る滅菌固体組成物の形態の滅菌剤もしくは他のいくつかの滅菌注射用媒体を使用直前に組み込むことにより、滅菌することができる。これらの組成物は、場合により乳白剤を含有してもよく、活性成分(複数可)のみを、または活性成分(複数可)を優先的に、胃腸管の特定の部分に、場合により遅延的に放出する組成物であってもよい。使用することができる組成物の包埋の例には、ポリマー物質及びワックスが含まれる。活性成分は、適切な場合に1つ以上の上記記載の賦形剤を有するマイクロカプセル化形態でもあり得る。
【0160】
本発明の化合物の経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルション、液剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤が含まれる。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、水、またエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、麦芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物などの、他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤などの当該技術において一般的に使用される不活性希釈剤を含有することができる。
【0161】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、風味剤、着色剤、芳香剤及び防腐剤などの佐剤を含むこともできる。
【0162】
懸濁剤は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微晶質セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天及びトラガカント、ならびにこれらの混合物を懸濁化剤として含有することができる。
【0163】
直腸内または膣内投与用の製剤を、坐剤として提示することができ、これは、1つ以上の本発明の化合物を1つ以上の適切な非刺激賦形剤または担体と混合することによって調製することができ、例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリチレートを含み、室温で固体であるが、体温で液体であり、したがって直腸または膣腔の中で融解し、活性化合物を放出する。
【0164】
本明細書に提供されるオリゴマーの局所または経皮投与用の製剤または剤形には、粉末剤、噴霧剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤及び吸入剤が含まれる。活性オリゴマーを、滅菌条件下において、薬学的に許容される担体と、必要性がある場合は、任意の防腐剤、緩衝剤または噴射剤と混合することができる。軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤及びゲル剤は、本発明の活性化合物に加えて、動物及び植物脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、酸化亜鉛またはこれらの混合物などの賦形剤を含有することができる。
【0165】
粉末剤及び噴霧剤は、本発明のオリゴマーに加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有することができる、噴霧剤は、クロロフルオロ炭化水素、ならびにブタン及びプロパンなどの揮発性非置換炭化水素など、慣用の噴射剤を追加的に含有することができる。
【0166】
経皮パッチ剤は、本発明のオリゴマーの身体への制御送達を提供するという、追加的な利点を有する。そのような剤形は、オリゴマーを適切な媒体に溶解または分散することによって作製することができる。吸収促進剤を使用して、皮膚を横断する作用物質の流れを増加することもできる。そのような流れの速度は、当該技術において既知の他の方法のうち、律速膜を提供すること、またはポリマーマトリックスもしくはゲルに作用物質を分散することによって制御することができる。
【0167】
非経口投与に適した薬学的組成物は、1つ以上の本発明のオリゴマーを、1つ以上の薬学的に許容される滅菌等張水性もしくは非水性の液剤、分散剤、懸濁剤もしくは乳剤と組み合わせて、あるいは糖、アルコール、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、意図される受容者の血液に製剤を等張にする溶質、または懸濁化もしくは粘稠化剤を含有してもよい滅菌注射用液剤または分散剤に使用直前に再構成され得る、滅菌粉末と組み合わせて含むことができる。本発明の薬学的組成物に用いることができる適切な水性及び非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散剤の場合には必要な粒径を維持することにより及び界面活性剤の使用により維持することができる。
【0168】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などの佐剤を含有することもできる。主題オリゴマーへの微生物の作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって確実にすることができる。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含めることが、望ましいこともある。加えて、注射用の医薬品形態の延長吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの、吸収を遅延する作用物質を含めることによって生じることができる。
【0169】
いくつかの場合において、薬物の効果を延長させるため、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くさせることが望ましい。このことは、当該技術において既知の他の方法のうち、不十分な水溶性を有する結晶質または非晶質材料の水性懸濁液の使用によって達成することができる。次に薬物吸収の速度は、その溶解速度に左右され、次に結晶のサイズ及び結晶の形態によって左右され得る。あるいは、非経口投与薬物形態の遅延吸収は、薬物を油ビヒクルに溶解または懸濁することによって達成される。
【0170】
注射用デポー剤形態は、主題オリゴマーのマイクロカプセルマトリックスを、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーにより形成することによって作製され得る。オリゴマーとポリマーの比及び用いられる特定のポリマーの性質に応じて、オリゴマー放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が含まれる。注射用デポー製剤は、薬物を、身体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルションに閉じ込めることによって調製することもできる。
【0171】
本発明のオリゴマーが、医薬品としてヒトまたは動物に投与されるとき、そのまま、または例えば0.1~99%(より好ましくは、10~30%)の活性成分を薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する組成物として、与えることができる。
【0172】
上記に示されたように、本発明に使用される製剤または調合剤を、経口的、非経口的、局所的または直腸内に与えることができる。典型的には、それぞれの投与経路に適した形態で与えられる。例えば、錠剤またはカプセル剤の形態により、注射、注入または吸入による注射剤、吸入剤、眼用ローション剤、軟膏剤、坐剤などの投与により、ローション剤または軟膏剤により局所的に、坐剤により直腸内に投与される。
【0173】
語句「非経口投与」及び「非経口的に投与される」は、本明細書において使用されるとき、通常は注射による、経腸または局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管内、皮下、表皮下、関節内(intraarticulare)、嚢下、クモ膜下、脊髄内及び胸骨内への注射及び注入が、限定されることなく含まれる。
【0174】
語句「全身投与」、「全身的に投与される」、「末梢投与」及び「末梢的に投与される」は、本明細書において使用されるとき、患者の体系に進入し、それによって代謝及び他の同様のプロセスに付されるような、中枢神経系への直接的な投与以外の、化合物、薬物または他の材料の投与、例えば皮下投与を意味する。
【0175】
選択される投与経路にかかわりなく、適切な水和形態で使用することができる本発明に使用されるオリゴマー及び/または本発明の薬学的組成物は、当業者に既知の従来の方法により薬学的に許容される剤形に処方され得る。本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物及び投与様式において所望の治療応答を、患者に許容不能な毒性を有することなく達成するのに有効な活性成分の量を得るように変えることができる。
【0176】
選択される投与量レベルは、用いられる本発明の特定のオリゴマーまたはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時点、用いられる特定のオリゴマーの排出または代謝速度、吸収の速度及び程度、治療の持続期間、用いられる特定のオリゴマーと組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康及び以前の病歴、ならびに医療技術において周知の他の同様の要因を含む、様々な要因によって左右される。
【0177】
当該技術において通常の技能を有する医師または獣医師は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定及び処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物に用いられる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果に達成するために必要なものより低いレベルから始め、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加することができる。一般に、本発明の化合物の適切な1日用量は、治療効果を生じるために有効な最低用量である、化合物の量である。そのような有効用量は、一般に、上記に記載された要因に左右される。一般に、患者における本発明の化合物の経口、静脈内、側脳室内及び皮下用量は、指示される効果のために使用されるとき、1日あたり体重1キログラム毎で約0.0001~約100mgの範囲である。
【0178】
望ましい場合、活性化合物の有効1日用量を、1日を通して、場合により単位剤形により、適切な間隔を置いて投与される2、3、4、5、6回またはそれ以上の細分用量で投与することができる。特定の状況において、投薬は、1日あたり1回の投与である。特定の実施形態において、投薬は、所望の状態を治療するために、必要であれば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日毎、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週間毎、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月毎に1回以上の投与である。
【0179】
アンチセンス分子を、本明細書に記載され、かつ当該技術に知られている、リポソームによるカプセル化、イオン泳動、またはヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル及び生体接着性微小球などの他のビヒクルへの組み込みが含まれるが、これらに限定されない、当業者に既知の様々な方法によって細胞に投与することができる。特定の実施形態において、マイクロ乳化(microemulsification)技術を利用して、親油性(水不溶性)医薬品の生物学的利用能を改善することができる。例には、トリメトリン(Trimetrine)(Dordunoo,S.K.,et al.,Drug Development and Industrial Pharmacy,17(12),1685-1713,1991及びREV 5901(Sheen,P.C.,et al.,J Pharm Sci 80(7),712-714,1991)が含まれる。他の利益のうち、マイクロ乳化は、吸収を循環系ではなくリンパ系に優先的に向け、それによって肝臓を迂回し、肝胆道循環における化合物の破壊を防止することによって、増強された生物学的利用能を提供する。
【0180】
本発明の1つの態様において、製剤は、本明細書において提供されているオリゴマーから形成されるミセル及び少なくとも1つの両親媒性担体を含有し、ここでミセルは、約100nm未満の平均直径を有する。より好ましい実施形態は、約50nmnm未満の平均直径を有するミセルを提供し、さらにより好ましい実施形態は、約30nm未満、さらには約20nm未満の平均直径を有するミセルを提供する。
【0181】
全ての適切な両親媒性担体が考慮されるが、一般に現在好まれている担体は、一般に安全と認められる(Generally-Recognized-as-Safe)(GRAS)状態を有するもの、ならびに本発明の化合物を可溶化すること及び後の段階でその溶液が複合水相(例えば、ヒトの胃腸管内に見出されるもの)に接触したときにマイクロ乳化することの両方が可能であるものである。通常は、これらの要件を満たす両親媒性成分は、HLB(親水性親油性バランス)値の2~20を有し、これらの構造は、直鎖脂肪族ラジカルをC-6~C-20の範囲で含有する。例は、ポリエチレン-グリコール化脂肪グリセリド及びポリエチレングリコールである。
【0182】
両親媒性担体の例には、完全または部分的に硬化された様々な植物油から得られるものなど、飽和及び一価不飽和ポリエチレングリコール化脂肪酸グリセリドが含まれる。そのような油は、有利には、トリ-、ジ-及びモノ-脂肪酸グリセリド、ならびに対応する脂肪酸のジ-及びモノ-ポリエチレングリコールエステルからなり、特に好ましい脂肪酸組成物は、4~10%のカプリン酸、3~9%のカプリン酸、40~50%のラウリン酸、14~24%のミリスチン酸、4~14%のパルミチン酸及び5~15%のステアリン酸を含む。別の有用な部類の両親媒性担体には、飽和または一価不飽和脂肪酸(SPANシリーズ)または対応するエトキシル化類縁体(TWEENシリーズ)により、部分的にエステル化されたソルビタン及び/またはソルビトールが含まれる。
【0183】
Gelucireシリーズ、Labrafil、Labrasol、またはLauroglycol(全てGattefosse Corporation,Saint Priest,Franceにより製造及び販売されている)、PEG-モノ-オレエート、PEG-ジ-オレエート、PEG-モノ-ラウレート及びジ-ラウレート、Lecithin、Polysorbate 80など(米国及び世界中の多数の企業によって製造及び販売されている)を含む市販の両親媒性担体が、特に有用であり得る。
【0184】
特定の実施形態において、送達は、本発明の組成物を適切な宿主細胞に導入するために、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、微小球、脂質粒子、小胞などを使用して生じ得る。特に、本発明の組成物は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノ球体、ナノ粒子などのいずれかにカプセル化された送達のために処方され得る。処方及びそのような送達ビヒクルの使用は、既知の従来の技術を使用して実施することができる。
【0185】
本発明における使用に適した親水性ポリマーは、水易溶性であり、小胞形成脂質と共有結合することができ、毒性作用を有することなくインビボで耐容される(すなわち、生体適合性である)ものである。適切なポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(ポリラクチドとも呼ばれる)、ポリグリコール酸(ポリグリコリドとも呼ばる)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー、ならびにポリビニルアルコールが含まれる。特定の実施形態において、ポリマーは、約100もしくは120ダルトンから、約5,000もしくは10,000ダルトンまで、または約300ダルトンから約5,000ダルトンまでの分子量を有する。他の実施形態において、ポリマーは、約100~約5,000ダルトンの分子量を有する、または約300~約5,000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールである。特定の実施形態において、ポリマーは、750ダルトンのポリエチレングリコール(PEG(750))である。ポリマーは、その中の多数のモノマーによって定義されてもよく、本発明の好ましい実施形態は、少なくとも約3つのモノマーのポリマーを利用し、そのようなPEGポリマーは3つのモノマー(およそ、150ダルトン)からなる。
【0186】
本発明における使用に適切であり得る他の親水性ポリマーには、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピル メタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド及びヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体化セルロースが含まれる。
【0187】
特定の実施形態において、本発明に使用される製剤は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、アクリル酸及びメタクリル酸エステルのポリマー、ポリビニルポリマー、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びそのコポリマー、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、乳酸及びグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、多糖、タンパク質、ポリヒアルロン酸、ポリシアノアクリレート、ならびにこれらのブレンド、混合物、またはコポリマーからなる群から選択される生体適合性ポリマーを含む。
【0188】
シクロデキストリンは、ギリシャ文字のα、β、またはγによってそれぞれ指定されている、6、7、または8個のグルコース単位からなる環状オリゴ糖である。グルコース単位は、α-1,4-グルコシド結合によって連結されている。糖単位のいす形配座の結果、全ての二次ヒドロキシル基(C-2、C-3における)は、環の一方の側に位置し、C-6における全ての一次ヒドロキシル基は、他方の側に配置される。その結果、外面が親水性になり、シクロデキストリンを水溶性にする。対照的に、シクロデキストリンの空洞は、C-3及びC-5原子の水素によって、ならびにエーテル様酸素によって裏打ちされているので疎水性である。これらのマトリックスは、例えば、17α-エステラジオールなどのステロイド化合物を含む様々な比較的疎水性の化合物との錯体生成を可能にする(例えば、van Uden et al.Plant Cell Tiss.Org.Cult.38:1-3-113(1994)を参照すること)。錯体生成は、ファン・デル・ワールス相互作用及び水素結合形成によって実施される。シクロデキストリン化学の一般的総説には、Wenz,Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.,33:803-822(1994)を参照すること。
【0189】
シクロデキストリン誘導体の物理化学的特性は、置換の種類及び程度に強く左右される。例えば、これらの水における溶解度は、不溶性(例えば、トリアセチル-ベータ-シクロデキストリン)から147%の可溶性(w/v)(G-2-ベータ-シクロデキストリン)までの範囲である。加えて、これらは多くの有機溶媒において可溶性である。シクロデキストリンの特性は、これらの溶解度を増加または減少させることによって、様々な製剤構成成分の溶解度を制御することができる。
【0190】
多数のシクロデキストリン及びそれらの調製方法が記載されている。例えば、Parmeter(I),et al.(米国特許第3,453,259号)及びGramera,et al.(米国特許第3,459,731号)は、電気的に中性のシクロデキストリンを記載する。他の誘導体には、カチオン性の特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(II)、米国特許第3,453,257号]、不溶性架橋シクロデキストリン(Solms、米国特許第3,420,788号)及びアニオン性の特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(III)、米国特許第3,426,011号]が含まれる。アニオン性の特性を有するシクロデキストリンのうち、カルボン酸、亜リン酸、亜ホスフィン酸(phosphinous acid)、ホスホン酸、リン酸、チオリン酸、チオスルフィン酸及びスルホン酸は、親シクロデキストリンに付加されている[Parmeter(III),supraを参照すること]。更に、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体が、Stella,et al.(米国特許第5,134,127号)により記載されている。
【0191】
リポソームは、水性内部区画を封入している少なくとも1つの脂質二分子層膜からなる。リポソームを、膜の種類及びサイズにより特徴づけることができる。小型ユニラメラ(unilamellar)小胞(SUV)は、単一膜を有し、典型的には0.02~0.05μmの範囲の直径を有し、大型ユニラメラ小胞(LUVS)は、典型的には0.05μmより大きい。大型オリゴラメラ(oligolamellar)小胞及びマルチラメラ(multilamellar)小胞は、多数の、通常は同心円状の膜層を有し、典型的には0.1μmより大きい。いくつかの非同心円状膜、すなわち、大きな小胞の中に含有された小さな小胞をいくつか有するリポソームは、多胞体小胞と呼ばれる。
【0192】
本発明の方法の1つの態様は、本発明のオリゴマーを含有するリポソームを含む製剤を使用し、リポソーム膜は、リポソームに増加された担持能力を提供するように処方される。代替的にまたは追加的に、本発明の化合物は、リポソームのリポソーム二分子層内に含有され得る、または上に吸着され得る。本発明のオリゴマーは、脂質界面活性剤により凝集され、リポソームの内腔によって運ばれてもよく、これらの場合、リポソーム膜は、活性薬剤-界面活性剤凝集の破壊的作用に抵抗するように処方される。
【0193】
本発明の方法の1つの実施形態によると、リポソームの脂質二分子層は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖が脂質二分子層の内面から、リポソームによってカプセル化された内部空間の中に延び、脂質二分子層の外側から周囲環境に延びるように、PEGにより誘導体化された脂質を含有する。
【0194】
本発明のリポソーム内に含有された活性薬剤は、可溶化形態である。界面活性剤と活性薬剤の凝集体(例えば、目的の活性薬剤を含有するエマルションまたはミセル)は、本発明のリポソームの内部空間の中に閉じ込められていてもよい。界面活性剤は、活性薬剤を分散及び可溶化するように作用し、様々な長さの鎖(例えば、約C14~約C20)の生体適合性リゾホスファチジルコリン(LPC)が含まれるが、これらに限定されない任意の適切な脂肪族、脂環式、または芳香族界面活性剤から選択され得る。PEG脂質などのポリマー誘導体化脂質をミセル形成に利用することもでき、それは、これらがミセル/膜融合を阻害するからであり、界面活性剤分子へのポリマーの付加が、界面活性剤のCMCを減少し、ミセル形成を助けるからである。マイクロモル範囲のCMCを有する界面活性剤が好ましく、CMCの高い界面活性剤を利用して、本発明のリポソーム内に閉じ込められるミセルを調製することができる。
【0195】
本発明の方法に使用されるリポソームは、当該技術に既知の様々な技術のいずれかによって調製することができる。例えば、米国特許第4,235,871号、公開PCT出願第WO96/14057号、New RRC,Liposomes:A practical approach,IRL Press,Oxford(1990),pages
33-104、Lasic DD,Liposomes from physics to applications,Elsevier Science Publishers BV,Amsterdam,1993を参照すること。例えば、本発明のリポソームは、親水性ポリマーにより誘導体化された脂質を、リポソームに望ましい誘導体化脂質の最終モル率に対応する脂質濃度で、予め形成されたリポソームの中に拡散することによって、例えば、予め形成されたリポソームを、脂質グラフト化ポリマーから構成されるミセルに曝露することによって調製することができる。親水性ポリマーを含有するリポソームは、均質化、脂質領域水和(lipid-field hydration)、または押出技術によって形成することもでき、当該技術において知られている。
【0196】
別の例示的な処方手順では、最初に活性薬剤は、疎水性分子を容易に可溶化するリゾホスファチジルコリンまたは他の低CMC界面活性剤(ポリマーグラフト化脂質を含む)において、超音波処理によって分散される。次に、得られた活性薬剤ミセル懸濁液は、適切なモル率のポリマーグラフト化脂質またはコレステロールを含有する乾燥脂質試料の再水和に使用される。次に脂質と活性薬剤の懸濁液は、当該技術に既知の押出技術によってリポソームに形成され、得られたリポソームは、標準的なカラム分離により非カプセル化溶液から分離される。
【0197】
本発明の方法の1つの態様において、リポソームは、選択されたサイズ範囲内で実質的に均一なサイズを有するように調製される。1つの効果的なサイズ決定方法は、リポソームの水性懸濁液を、選択された均一孔径を有するポリカーボネート膜を通して押し出すことを伴い、膜の孔径は、この膜からの押し出しによって生成されたリポソームの最大サイズにほぼ対応している。例えば、米国特許第4,737,323号(1988年4月12日)を参照すること。特定の実施形態において、DharmaFECT(登録商標)及びLipofectamine(登録商標)などの試薬を利用して、ポリヌクレオチドまたはタンパク質を細胞の中に導入することができる。
【0198】
本発明の方法に使用される製剤の放出特徴は、カプセル化材料、カプセル化された薬物の濃度及び放出調節剤の存在によって左右される。例えば、放出は、pH依存的に、例えば、胃のような低いpHまたは腸のような高いpHでのみ放出するpH感受性コーティングの使用によって操作され得る。腸溶性コーティングを使用して、胃を通過した後まで放出が発生しないように予防することができる。異なる材料にカプセル化されたシアナミドの多重コーティングまたは混合物を使用して、胃における初期放出を得て、続いて腸において後期の放出を得ることができる。放出は、塩または孔形成剤を含めることによって操作することもでき、水の取り込み、またはカプセルからの分散による薬物の放出を増加することができる。薬物の溶解度を修飾する賦形剤を使用して、放出速度を制御することもできる。マトリックスの分解またはマトリクスからの放出を増強する作用物質を、組み込むこともできる。これらを、化合物に応じて、薬物に添加すること、別個の相(すなわち、微粒子)として添加すること、またはポリマー相において共溶解することができる。大部分の場合において、量は0.1~30パーセント(ポリマーのw/w)であるべきである。分解促進剤の種類には、硫酸アンモニウム及び塩化アンモニウムなどの無機塩、クエン酸、安息香酸及びアスコルビン酸などの有機酸、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛及び水酸化亜鉛などの無機塩基、硫酸カリウム、スペルミン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンなどの有機塩基、ならびにTween(登録商標)及びPluronic(登録商標)などの界面活性剤が含まれる。マトリックスに微細構造を加える孔形成剤(すなわち、無機塩及び糖などの水溶性化合物)が微粒子として添加される。範囲は、典型的には1~30パーセント(ポリマーのw/w)である
【0199】
取り込みは、消化管における粒子の滞留時間を変えることによって操作することもできる。これは、例えば、粘膜接着ポリマーを粒子にコーティングすることによって、またはカプセル化材料として選択することによって、達成することができる。例には、キトサン、セルロース、とりわけポリアクリレートなどの、遊離カルボキシル基を有する大部分のポリマーが含まれる(本明細書において使用されるとき、ポリアクリレートは、アクリレート基及び修飾アクリレート基を含むポリマー、例えばシアノアクリレート及びメタアクリレートを指す)。
【0200】
オリゴマーが外科または医療用の装置またはインプラントによって含有されるように処方することができる、または、から放出されるように調合することができる。特定の態様において、インプラントをオリゴマーでコーティングすること、そうでなければ処理することができる。例えば、ヒドロゲル、または生体適合性及び/または生分解性ポリマーなどの他のポリマーを使用して、インプラントを本発明の組成物でコーティングすることができる(すなわち、組成物は、ヒドロゲルまたは他のポリマーを使用して医療装置との使用に適合され得る)。医療装置を作用物質でコーティングするためのポリマー及びコポリマーは、当該技術において良く知られている。インプラントの例には、ステント、薬物溶出ステント、縫合糸、人工器管、血管カテーテル、透析カテーテル、血管移植片、人工心臓弁、心臓ペースメーカー、植込み型除細動器、静注用の針、ピン、スクリュー、プレート及び他の装置などの接骨及び骨形成装置、ならびに創傷治癒用の人工組織マトリックスが含まれるが、これらに限定されない。
【0201】
本明細書に提供される方法に加えて、本発明に使用されるオリゴマーは、ヒトまたは獣医学に使用される任意の好都合な方法における投与のために、他の医薬品と同様に処方され得る。アンチセンスオリゴマー及び対応する製剤を、炎症の治療において単独で、または他の治療戦略と組み合わせて投与することができる。
【0202】
本発明の方法によると、アンチセンスオリゴマーの送達経路には、経口及び非経口経路を含む様々な全身経路、例えば、静脈内、皮下、腹腔内及び筋肉内、ならびに吸入、経皮、経肺及び局所送達が含まれるが、これらに限定されない。適切な経路は、治療されている対象の状態に適したように、当業者によって決定され得る。例えば、皮膚の状態の治療におけるアンチセンスオリゴマーの適切な送達経路には、局所送達が含まれ得るが、呼吸状態(例えば、COPD)の治療におけるアンチセンスオリゴマーの送達には、吸入、経鼻または経肺送達が含まれ得る。オリゴマーを炎症性感染の部位に直接的に、または血流に送達することもできる。
【0203】
アンチセンスオリゴマーは、生理学的に許容される任意の従来のビヒクルによって投与され得る。そのような組成物には、当業者により用いられる標準的な薬学的に許容される様々な担体のいずれかが含まれ得る。例には、食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、水、水性エタノール、水中油エマルションまたはトリグリセリドエマルションなどのエマルション、錠剤及びカプセル剤が含まれるが、これらに限定されない。適切な生理学的に許容される担体の選択は、選択された投与様式によって変わる。
【0204】
いくつかの場合において、上記に示されたように、リポソームは、細胞へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの取り込みを促進するために用いることができる(例えば、Williams,S.A.,Leukemia 10(12):1980-1989,1996;Lappalainen et al.,Antiviral Res.23:119,1994;Uhlmann et al.,antisense oligonucleotides:a new therapeutic principle,Chemical Reviews,Volume 90,No.4,pages 544-584,1990;Gregoriadis,G.,Chapter 14,Liposomes,Drug Carriers in Biology and Medicine,pp.287-341,Academic Press,1979を参照すること)。ヒドロゲルをアンチセンスオリゴマーの投与のビヒクルとして使用することもでき、例えば、PCT出願公開第WO93/01286号またはPCT出願第US1992/005305号に記載されている。あるいは、オリゴヌクレオチドを微小球または微粒子によって投与することができる。(例えば、Wu,G.Y.and Wu,C.H.,J.Biol.Chem.262:4429-4432,1987を参照すること)。あるいは、アンチセンスオリゴマーと錯体生成したガス充填マイクロバブルの使用は、標的組織への送達を増強することができ、米国特許第6,245,747号に記載されている。
【0205】
持続放出組成物を使用することもできる。これらは、フィルムまたはマイクロカプセルなどの造形物品の形態に半透性マトリックスを含むことがある。
【0206】
特定の実施形態において、アンチセンス化合物は、アンチセンスオリゴマーの少なくとも200~400nMのピーク血中濃度をもたらすのに有効な量及び方法によって投与され得る。典型的には、アンチセンスオリゴマーの1つ以上の用量が、一般に定期的な間隔を置いて、約1~2週間にわたって投与される。経口投与に好ましい用量は、70kgあたり約1~100mgのオリゴマーである。いくつかの場合では、100mgを超えるオリゴマー/患者の用量が必要なこともある。静注投与では、好ましい用量は、70kgあたり約1mg~500mgのオリゴマーである。アンチセンスオリゴマーは、定期的な間隔を置いて、短い期間にわたって、例えば、2週間未満の間に毎日投与され得る。しかし、いくつかの場合において、オリゴマーは長期間にわたって断続的に投与される。投与は、抗生物質または他の治療処置の投与が後に続く、または同時に発生することがある。治療レジメンは、治療されている対象の免疫アッセイ、他の生化学試験及び生理学的検査の結果に基づいて、指示されるように(用量、頻度、経路などが)調整され得る。
【0207】
本出願に列挙されている全ての出版物及び特許出願は、それぞれ個別の出版物または特許出願が、特定的及び個別に参照として組み込まれるように指示されているかのように、参照として本明細書に組み込まれる。
【0208】
上記に記載された様々な実施形態を、提供された更なる実施形態と組み合わせることができる。2016年4月29日出願の米国特許仮出願第62/330,027号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。これら及び他の変更を、上記に詳述された記載を鑑みて実施形態にすることができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用されている用語は、明細書及び特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態の請求に限定されると解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が与えられているものの等価物の完全な範囲内の全ての可能な実施形態を含むと解釈されうべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示に制限されない。
【0209】
前述の開示は、理解の明確化の目的のために説明及び例により、いくらか詳細に記載されてきたが、特定の変更及び修正を添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく実施できることを、当業者は本開示の教示を鑑みて容易に理解する。以下の実施例は、例示のためだけに提供されており、制限するために提供されていない。当業者は、変更または修正して本質的に類似した結果を生じ得る、重要ではない様々なパラメーターを容易に認識する。
【0210】
配列表
【表4】
【実施例0211】
材料
1.HGPSマウスモデル ヒトBACクローンRP11-702H12(RPCI-11 Human BAC Library,BACPAC Resource Center at Children’s Hospital Oakland Research Institute,Oakland,CA)は、LMNA遺伝子(25.4kb)、ならびに3個の既知の他の遺伝子UBQLN4、MAPBPIP及びRAB25を含む染色体1qから164.4kbのゲノムDNAの挿入断片を含有する。BACクローンRP11-702H12のリコンビノジェニックターゲッティング(recombinogenic targeting)は、HGPS線維芽細胞株AG11498(Coriell Cell Repositories,NIAコレクション)のゲノムDNAにより生成されたG608G突然変異体を含有するシャトルフラグメント(shuttle fragment)によって実施した。HGPSのヒトBACG608G遺伝子導入マウスモデルは、全ての組織において、プロジェリンと呼ばれる突然変異ヒトLMNAタンパク質を発現する。マウスは、HGPS患者とほぼ同じ病理を提示する。ヘテロ接合状態において、マウスは、非応答性血管弾性を伴って、主幹動脈において血管平滑筋細胞(VSMC)の損失を実証している。ホモ接合状態では、マウスは、外膜の肥厚、全体的なリポジストロフィー、張り詰めた乾燥皮膚、薄毛、脊柱後弯、関節拘縮及び歩行制限を伴う、より進行性のVSMCの損失限定を示す。これらの導入遺伝子のコピーを2個有するマウスは、6~8月齢で早期に死亡している。
【0212】
2.PPMO
【表5】

「Gly」は、グリシンカルボキシルでアミド結合により3’末端モルホリノサブユニット環窒素に結合しており、かつペプチドのCPPカルボキシ末端でアミド結合によりグリシンNHにも結合しているグリシンリンカーを示す。「R」はアルギニンであり、「Ac」はアシルである。
【0213】
実施例1
LMNAを標的にするPPMOによる治療後のHGPSマウスのddPCR分析
Digital Droplet PCR(ddPCR)検査を実施して、PPMO1(配列番号3)及びPPMO2(配列番号4)による治療後のHGPS遺伝子導入マウスにおけるプロジェリン及び野生型LMNAの発現レベルを測定した。合計で37匹のマウスを以下の試験群に分けた。
【表6】
【0214】
マウスには、4週齢から開始して、12週間後に殺処分するまで、上記表のとおりに投薬した。標準的なTrizol手順(Ambion)を使用して、RNAを心臓、肝臓、四頭筋及び大動脈から抽出した。標準的なiScript(商標)cDNA合成手順(Bio-Rad)を使用して、0.5μgの全RNAからcDNAを調製し、ddPCRによりスプライス阻害について分析した。この実験の結果を図1-4に記載する。
【0215】
参考文献
Cao,K.,C.D.Blair,et al.(2011).“Progerin
and telomere dysfunction collaborate to
trigger cellular senescence in normal human fibroblasts.”J Clin Invest.
Egholm,M.,O.Buchardt,et al.(1993).“PNA hybridizes to complementary oligonucleotides obeying the Watson-Crick hydrogen-bonding rules.”Nature 365(6446):566-8.
Kinali,M.,V.Arechavala-Gomeza,et al.(2009).“Local restoration of dystrophin expression with the morpholino oligomer AVI-4658 in Duchenne muscular dystrophy:a single-blind,placebo-controlled,dose-escalation,proof-of-concept study.”Lancet Neurol 8(10):918-28.
Osorio,F.G.,C.L.Navarro,et al.(2011).“Splicing-directed therapy in a new mouse model of human accelerated aging.”Sci Transl Med 3(106):106ra107.
Scaffidi,P.and T.Misteli(2005).“Reversal of the cellular phenotype in the premature aging disease Hutchinson-Gilford progeria syndrome.”Nat Med 11(4):440-5.
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図1
図2
図3
図4
【配列表】
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【外国語明細書】