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特開2022-46765銅ペースト、接合方法および接合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046765
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】銅ペースト、接合方法および接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20220315BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20220315BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20220315BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20220315BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20220315BHJP
   B22F 1/07 20220101ALI20220315BHJP
   B22F 1/16 20220101ALI20220315BHJP
【FI】
B22F1/00 L
B22F1/052
B22F1/14 600
B22F7/08 C
B22F9/00 B
B22F1/07
B22F1/16
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001819
(22)【出願日】2022-01-07
(62)【分割の表示】P 2020510704の分割
【原出願日】2019-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018065201
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】312016056
【氏名又は名称】ハリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中城 治之
(72)【発明者】
【氏名】小川 孝之
(72)【発明者】
【氏名】張 雅
(57)【要約】
【課題】無加圧接合に適用可能な銅ペーストを提供する。
【解決手段】銅ペーストは、金属粒子および分散媒を含む。金属粒子は、第一種粒子および第二種粒子を含む。第一種粒子は、平均粒子径が1~100μmであり、銅の加熱酸化物により形成されたファイバー状のナノ構造を表面に有する銅粒子である。第二種粒子は、平均粒子径が0.05~5μmの銅粒子である。第一種粒子の平均粒子径は第二種粒子の平均粒子径の2~550倍である。例えば、第一部材(1)と第二部材(2)との間に銅ペースト(5)を設けた積層体を、還元雰囲気下で加熱して銅ペーストを焼結することにより、第一部材と第二部材とを無加圧で接合できる。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一種粒子、および前記第一種粒子よりも平均粒子径が小さい第二種粒子を含む金属粒子と、分散媒とを含む銅ペーストであって、
前記第一種粒子は、平均粒子径が1~100μmであり、銅の加熱酸化物により形成されているファイバー状のナノ構造を表面に有する銅粒子であり、
前記第二種粒子は、平均粒子径が0.05~5μmである銅粒子であり、
前記第一種粒子の平均粒子径が前記第二種粒子の平均粒子径の2~550倍であり、
前記金属粒子の全量100質量部に対する銅粒子の含有量が、80質量部以上であり、
前記金属粒子の全量100質量部に対して、前記第一種粒子の含有量が20~95質量部、前記第二種粒子の含有量が5~80質量部である、銅ペースト。
【請求項2】
前記第一種粒子の平均粒子径が3~50μmであり、前記第二種粒子の平均粒子径が0.1~5μmである、請求項1に記載の銅ペースト。
【請求項3】
前記金属粒子100質量部に対して前記分散媒を5~100質量部含有する、請求項1または2に記載の銅ペースト。
【請求項4】
第一部材と第二部材との間に、請求項1~3のいずれか1項に記載の銅ペーストを設けた積層体を準備し、
前記積層体を還元性雰囲気下で加熱して前記銅ペーストを焼結する、接合方法。
【請求項5】
第一部材と第二部材との間に、請求項1~3のいずれか1項に記載の銅ペーストを設けた積層体を準備し、
前記積層体を還元性雰囲気下で加熱して前記銅ペーストを焼結することにより、前記第一部材と前記第二部材とを接合する、接合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅ペースト、ならびにそれを用いた接合方法および接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属や半導体等の接合には高融点鉛はんだが広く用いられていたが、環境規制等の観点から、鉛を含有しない接合材が求められている。低温接合が可能な材料として、銀等の金属ナノ粒子を用いる方法が知られている。ナノ粒子は、ナノサイズ効果により、融点よりも低い温度で融着するため、低温の無加圧接合が可能である。しかし、銀ナノ粒子は、材料コストが高価である上に、現状では十分な接合強度は得られていない。
【0003】
より安価な接合材料として、銅粒子を用いた検討がいくつか報告されている。特許文献1では、μmオーダーの粒子径を有する銅粒子を接合材として、その場(in situ)合成により銅粒子の表面を酸化させてナノ粒子を形成した後、還元性雰囲気下で加熱を行う接合方法が開示されている。特許文献2では、有機分子で表面を被覆することにより分散性を高めた被覆ナノ粒子とマイクロ粒子とを含む銅ペーストを用いて無加圧接合を行う方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-074598号公報
【特許文献2】特開2014-167145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2の方法では、接合強度が十分とはいえない。かかる課題に鑑み、本発明は、低温接合でも高い接合強度を実現可能な銅ペーストの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の銅ペーストは、金属粒子および分散媒を含む。金属粒子は、第一種粒子および第二種粒子を含む。第一種粒子は、平均粒子径が1~100μmであり、表面にナノ構造を有する銅粒子である。第二種粒子は、平均粒子径が0.05~5μmの銅粒子である。第一種粒子の平均粒子径D1は、第二種粒子の平均粒子径D2の2~550倍が好ましい。
【0007】
第一種粒子のナノ構造は、例えば銅の加熱酸化物により形成される。ナノ構造としては、凹凸形状、粒子形状、ファイバー形状等が挙げられる。
【0008】
接合対象の部材間に上記の銅ペーストを設けた積層体を準備し、この積層体を還元性雰囲気下で加熱することにより、銅ペーストが焼結され、部材間を接合できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の銅ペーストは低温無加圧接合に適用可能である。本発明の銅ペーストを用いることにより、強度の高い接合を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】銅粒子の走査型顕微鏡写真である。
図2】無加圧接合に用いられる積層体の構成例を示す断面図である。
図3】実施例1および比較例3の接合層断面の走査型顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[銅ペースト]
本発明の銅ペーストは、金属粒子および分散媒を含む。金属粒子は、第一種粒子および第二種粒子を含む。第一種粒子の平均粒子径D1は1~100μmであり、第二種粒子の平均粒子径D2は0.05~5μmである。第一種粒子の平均粒子径D1は第二種粒子の平均粒子径D2よりも大きい。D1はD2の2~550倍が好ましい。なお、本願明細書において平均粒子径とは、レーザー回折散乱法により測定した粒子径分布から求められる体積基準の累積中位径(D50)である。
【0012】
第一種粒子は表面にナノ構造を有する。加熱接合時には表面にナノ構造を有する第一種粒子が融着し、その隙間に、粒子径の小さい第二種粒子が充填されるため、接合材における空隙が少なく、高い接合強度を実現できる。
【0013】
<金属粒子>
(第一種粒子)
第一種粒子は、表面にナノ構造を有する平均粒子径1~100μmの銅粒子である。銅粒子表面のナノ構造としては、ナノサイズの凹凸、ナノ粒子、ナノファイバー等が挙げられる。例えば、粒子径が1~100μmの銅粒子を加熱酸化させることにより、表面に(亜)酸化銅のナノ構造を有する銅粒子が得られる。
【0014】
図1(A)は熱処理を行っていない湿式銅粉(三井金属鉱業製「1400YM」、平均粒子径4.2μm)の走査型顕微鏡(SEM)写真である。熱処理前の銅粉の表面は平滑であり、ナノ構造は形成されていない。
【0015】
図1(B1)は、大気下で、100℃で10分、150℃で10分、200℃で10分、250℃で10分、および300℃で10分順次加熱した湿式銅粉のSEM写真である。図1(B2)および図1(B3)は、300℃での加熱時間を、それぞれ30分および120分に変更して加熱処理を行った湿式銅粉のSEM写真である。図1(C1)は、大気下で、100℃で10分、150℃で10分、200℃で10分、250℃で10分、300℃で10分、350℃で10分、および400℃で10分順次加熱した湿式銅粉のSEM写真である。図1(C2)および図1(C3)は、400℃での加熱時間を、それぞれ30分および120分に変更して加熱処理を行った湿式銅粉のSEM写真である。
【0016】
(B1)では、粒子表面に微細な凹凸が形成されており、(B2)および(B3)では、300℃での加熱時間が長くなるにしたがって、表面の凹凸が粒子状に成長していることが分かる。400℃で加熱を行った(C1)では、(B1)よりも微細な凹凸が形成されるとともに、微細なファイバー状のナノ構造が形成されている。(C2)および(C3)では、400℃での加熱時間が長くなるにしたがって、ナノファイバーが成長していることが分かる。
【0017】
銅の融点は1085℃であるが、銅粒子の表面に形成されたナノスケールの凹凸、粒子、ファイバー等のナノ構造は、ナノ粒子と同様に、サイズ効果による融点降下を示す。そのため、表面にナノ構造を有する第一種粒子は、銅の融点よりも低い温度(例えば300℃程度)で融着して金属接合を形成可能である。すなわち、第一種粒子はμmオーダーの粒子径を有しながら低温接合が可能である。また、ナノ構造は第一種粒子の表面に固定されているため、金属ナノ粒子にみられる凝集や偏在の問題が生じ難い。
【0018】
上述のように、μmオーダーの粒子径を有する銅粒子(以下「マイクロ銅粒子」と記載する場合がある)を加熱することにより、表面にナノ構造を形成できる。
【0019】
第一種粒子の原料となるマイクロ銅粒子の形状は特に限定されず、球状、塊状、針状、フレーク状等が挙げられる。中でも表面にナノ構造が形成されやすく、かつ粒子同士が融着した際の粒子間の空隙(ボイド)の体積を小さくできることから、マイクロ銅粒子の形状は、球状またはフレーク状が好ましい。なお「球状」とは完全な球だけでなく、アスペクト比が3以下の略球状を包含する。「フレーク状」とは、板状、鱗片状等の平板状の形状を包含する。
【0020】
マイクロ銅粒子の粒子径は、1~100μmが好ましい。加熱によるナノ構造の形成前後で銅粒子の粒子径はほとんど変化しないため、マイクロ銅粒子の粒子径は、第一種粒子の粒子径に略等しい。分散性を高めるとともにナノ構造の形成を容易とする観点から、マイクロ銅粒子の粒子径は、2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、3.5μm以上がさらに好ましく、4μm以上が特に好ましい。接合の際に粒子間の融着性を高めるとともにボイドを低減する観点から、マイクロ銅粒子の粒子径は、60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましく、30μm以下が特に好ましい。マイクロ銅粒子として市販の銅粉をそのまま用いてもよい。
【0021】
マイクロ銅粒子の粒子径を上記範囲とすることにより、第一種粒子の粒子径を1~100μmの範囲内とすることができる。第一種粒子の粒子径は、2~60μmが好ましく、3~50μmがより好ましく、3.5~40μmがさらに好ましく、4~30μmが特に好ましい。
【0022】
マイクロ銅粒子を酸化雰囲気下で加熱することにより、表面にナノ構造が形成される。酸化雰囲気とは、銅が酸化可能な酸素濃度雰囲気であり、大気下(酸素濃度約21%)でもよい。加熱温度は200~500℃が好ましい。加熱時間は加熱温度等に応じてマイクロ銅粒子の表面にナノ構造が形成されるように適宜決定すればよく、例えば、5~300分程度である。
【0023】
加熱によりマイクロ銅粒子の表面にナノ構造が形成される理由は定かではないが、銅と酸化銅(または亜酸化銅)の熱膨張係数の差が関連していると推定される。酸化雰囲気下でマイクロ銅粒子を加熱すると、銅粒子の表面が酸化されて酸化被膜が形成される。この状態でさらに加熱を行うと、粒子の表面から内部に向かって酸化が進行するとともに、温度上昇に伴って粒子表面の(亜)酸化銅および粒子のコア部分の銅がともに熱膨張する。銅は酸化銅よりも熱膨張係数が大きいため、温度上昇に伴って内部の銅が表面の酸化膜の結晶粒界を広げ、広がった粒界に沿って銅が表層に析出し、析出した時点で酸化雰囲気に暴露されることにより銅が酸化され、ナノ粒子やナノファイバーのようなナノ構造が形成されると考えられる。
【0024】
図1に示したように、加熱温度が高くなり、加熱時間が長くなるにしたがって、マイクロ銅粒子表面のナノ構造が成長する傾向がある。また、加熱温度の上昇に伴って、ファイバー状のナノ構造(ナノファイバー)が形成される傾向がみられる。第一種粒子の表面にナノファイバーが形成されている場合に、特に銅粒子の融着性が向上する傾向がある。ファイバー状のナノ構造を形成するためには、昇温速度を小さくする(例えば5℃/分以下)か、段階的に温度を上昇させて350℃以上に昇温し、350℃以上の温度で10分以上加熱を行うことが好ましい。緩やかに温度を上昇させることにより、粒子内部から表層への金属の析出速度が制御され、析出物がファイバー状に成長しやすくなると考えられる。
【0025】
マイクロ銅粒子の表面に凹凸状または粒子状のナノ構造が形成されている場合、ナノ構造の粒子径は500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。マイクロ銅粒子の表面にナノファーバーが形成される場合、ファイバーの径は100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。ファイバーの長さは特に限定されないが、例えば10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。ナノ構造のサイズが上記範囲であれば、低温(例えば、200~500℃程度)での良好な接合性を担保できる。ナノ構造のサイズは、粒子のSEM像に基づいて実測される。
【0026】
(第二種粒子)
第二種粒子は、平均粒子径0.05~5μmの銅粒子である。第二種粒子は表面にナノ構造を有していてもよく、ナノ構造を有していなくてもよい。第二種粒子は、第一種粒子が融着した際の粒子間の隙間を埋めて、空隙の体積を小さくする作用を有する。そのため、第二種粒子としては第一種粒子よりも平均粒子径が小さい粒子が用いられる。
【0027】
融着した第一種粒子間の隙間を有効に埋めるために、第二種粒子の平均粒子径D2と第一種粒子の平均粒子径D1の比D1/D2は、2以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3以上がさらに好ましい。一方、接合時の粒界の比率を小さくして接合強度を確保する観点から、D1/D2は550以下が好ましく、300以下がより好ましく、100以下がさらに好ましく、50以下が特に好ましい。
【0028】
分散性を確保して凝集を抑制するとともに、接合時の粒界を減少させる観点から、第二種粒子の平均粒子径は0.07μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましい。
【0029】
第二種粒子は、400℃以下の温度範囲で融着性を有することが好ましい。第二種粒子が表面にナノ構造を有していない場合は、サイズ効果により融点を降下させるために、平均粒子径D2は4μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。第二種粒子が第一種粒子と同様に表面にナノ構造を有している場合は、ナノ構造により低温融着を実現可能であるため、第二種粒子の平均粒子径D2は、5μm以下であり、かつD1/D2の範囲が上記範囲であればよい。
【0030】
第二種粒子の形状は特に限定されず、球状、塊状、針状、フレーク状等が挙げられる。中でも、粒子同士が融着した際の粒子間の空隙の体積を小さくできることから、第二種粒子の形状は、球状またはフレーク状が好ましい。前述のように、第二種粒子は表面にナノ構造が形成されていてもよい。
【0031】
第二種粒子の形状は、第一種粒子の形状と同一でもよく異なっていてもよい。例えば、第一種粒子および第二種粒子がともに球状であってもよく、第一種粒子および第二種粒子がともにフレーク状であってもよく、第一種粒子がフレーク状、第二種粒子が球状であってもよく、第一種粒子が球状、第二種粒子がフレーク状であってもよい。
【0032】
第二種粒子として、平均粒子径が0.05~5μmの市販の銅粉をそのまま用いてもよい。また、市販の銅粉の加熱酸化により表面にナノ構造を形成したものを用いることもできる。
【0033】
(その他の金属粒子)
銅ペーストは、上記の第一種粒子および第二種粒子以外の金属粒子を含んでいてもよい。銅粒子以外の金属粒子としては、銅ナノ粒子、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金等の粒子が挙げられる。銅粒子以外の金属粒子の平均粒子径は、0.01~50μm程度が好ましい。金属粒子の全量100質量部に対する銅粒子以外の金属粒子の量は、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。換言すると、金属粒子の全量100質量部に対する銅粒子(表面に酸化物のナノ構造を有する銅粒子を含む)の含有量は、80質量部以上が好ましく、90質量部以上がより好ましく、95質量部以上がさらに好ましい。銅粒子の量が上記範囲であることにより、接合強度を確保することが容易となる。
【0034】
(第一種粒子および第二種粒子の含有量)
上述のように、第二種粒子は、融着した第一種粒子の隙間を埋める作用を有する。金属粒子中の第一種粒子および第二種粒子の含有量は、両者の粒子径の比D1/D2等に応じて、第二種粒子が上記作用を有するように設定すればよい。
【0035】
第一種粒子の含有量は、金属粒子全量100質量部に対して、20~95質量部が好ましく、30~90質量部がより好ましく、35~85質量部がさらに好ましく、40~80質量部が特に好ましい。第一種粒子の含有量が上記範囲内であれば、無加圧接合用銅ペーストを焼結した際に、第一種粒子同士の融着による高い接合強度と接続信頼性を実現できる。
【0036】
第二種粒子の含有量は、金属粒子全量100質量部に対して、5~80質量部が好ましく、10~70質量部がより好ましく、15~65質量部がさらに好ましく、20~60質量部が特に好ましい。第二種粒子の含有量が上記範囲内であれば、無加圧接合用銅ペーストを焼結した際に、融着した第一種粒子間の空隙に第二種粒子が効率的に充填されやすい。そのため、空隙率が減少し、接合強度の向上を図ることができる。また、第一種粒子表面のナノ構造は第二種粒子とも融着し、接合面積が増大する。そのため、第一種粒子のみを有する場合に比べて、接合強度が上昇する傾向がある。
【0037】
第一種粒子同士の融着を促進するとともに、第一種粒子間の隙間を第二種粒子により効率的に充填するためには、第二種粒子の量は、第一種粒子の量の0.05~5倍が好ましく、0.1~2倍がより好ましく、0.2~1.5倍がさらに好ましく、0.25~1.3倍が特に好ましい。
【0038】
<分散媒>
銅ペーストは、上記金属粒子を分散させるための分散媒(溶媒)を含む。分散媒は、金属粒子を分散可能であり、かつペーストの焼結時に揮発可能であれば特に限定されず、各種の水系溶媒や有機溶媒を使用できる。分散媒の沸点は、150~400℃程度が好ましい。沸点の異なる複数の溶媒を混合して分散媒として用いてもよい。
【0039】
分散媒の具体例としては、鎖状炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、鎖状アルコール、芳香族アルコール、脂環式アルコール、グリコールやトリオール等の多価アルコール、エーテル、グリコールエーテル、アミン、アミド、アルデヒド、ケトン等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、銅粒子の分散性に優れることから、分散媒としては、グリコールまたはグリコールエーテルが好ましく用いられる。グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(主に分子量が1000以下のもの)が挙げられる。グリコールエーテルとしては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテル類、およびそのエステル誘導体(例えばジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)が挙げられる。
【0041】
分散媒の量は、金属粒子を100質量部に対して、5~100質量部程度であり、7~70質量部程度が好ましい。分散媒の含有量が上記範囲内であれば、金属粒子を適切に分散可能であり、かつ銅ペーストの粘度を適切な範囲に調整できる。
【0042】
<添加剤>
銅ペーストには、必要に応じて、各種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤、イオントラップ剤等が挙げられる。
【0043】
後述のように、本発明の銅ペーストは、還元性雰囲気下で加熱することにより銅粒子の融着が促進される。銅の融着の促進等を目的として、銅ペーストには還元剤が含まれていてもよい。還元剤としては、硫化物、チオ硫酸塩、シュウ酸、ギ酸、アスコルビン酸、アルデヒド、ヒドラジンおよびその誘導体、ヒドロキシルアミンおよびその誘導体、ジチオスレイトール、ホスファイト、ヒドロホスファイト、亜リン酸およびその誘導体、リチウムアルミニウム水素化物、ジイソブチルアルミニウム水素化物、ホウ水素化ナトリウム等が挙げられる。
【0044】
銅ペーストには、ポリエステル系樹脂、ブロックドイソシアネート等のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、メラミン系樹脂、テルペン系樹脂等の樹脂成分が含まれていてもよい。これらの樹脂成分は、金属粒子のバインダーとして作用し得る。なお、本発明の銅ペーストは、第一種粒子よりも粒子径の小さい第二種粒子により、第一種粒子間の空隙を充填することが可能であるため、樹脂成分を含まない場合でも、高い接合性を実現可能である。特に、接合部に高い導電性が要求される場合には、銅ペーストは樹脂成分を実質的に含まないことが好ましい。銅ペーストにおける樹脂の含有量は、金属粒子100質量部に対して10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましく、1質量部以下が特に好ましい。
【0045】
<銅ペーストの調製>
上記の金属粒子および任意の添加剤と分散媒とを混合することにより、銅ペーストを調製できる。金属粒子は全量を一度に分散媒に分散させてもよく、金属粒子の一部を分散させた後に残部を添加してもよい。また、第二種粒子を分散させた後に、第一種粒子を添加してもよく、第一種粒子の分散液と第二種粒子の分散液とを混合してもよい。
【0046】
各成分の混合後に、撹拌処理を行ってもよい。また、各成分の混合前後に、分級操作により凝集物を除去してもよい。
【0047】
撹拌処理には、石川式攪拌機、シルバーソン攪拌機、キャビテーション攪拌機、自転公転式(遊星式)攪拌機、超薄膜高速回転式分散機、超音波分散機、ライカイ機、二軸混練機、ビーズミル、ボールミル、三本ロールミル、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、超高圧型分散機、薄層せん断分散機、湿式超微粒化装置、超音速式ジェットミル等の撹拌・混練装置を用いてもよい。
【0048】
分級操作は、ろ過、自然沈降、遠心分離を用いて行うことができる。ろ過用のフィルタとしては、水櫛、金属メッシュ、メタルフィルター、ナイロンメッシュが挙げられる。
【0049】
[銅ペーストを用いた接合]
上記の銅ペーストは、各種の配線や導電膜を形成するための導電性ペースト、複数の部材間を接合するための接合材等の用途に使用できる。特に、上記の銅ペーストは、還元性雰囲気下で焼結することにより高い接合性を実現可能であり、無加圧接合用ペーストとして好適に用いられる。
【0050】
無加圧接合では、第一部材と第二部材との間に銅ペーストを配置した積層体を準備し、第一部材の自重が作用する方向に銅ペーストおよび第二部材を配置した状態、または0.01MPa以下の圧力を付加した状態で、還元性雰囲気下において上記積層体の加熱が行われる。還元性雰囲気下での加熱により銅ペーストを焼結すると、金属粒子間の融着が進行して第一部材と第二部材が接合される。
【0051】
(積層体の準備)
図2は、第一部材1と第二部材2との間に銅ペースト5を配置した積層体10の構成例を示す断面図である。このような積層体は、例えば、第二部材2の所定領域に上記の銅ペースト5を設け、その上に第一部材1を配置することにより用意することができる。
【0052】
第一部材1および第二部材2は特に限定されず、各種の金属材料、半導体材料、セラミック材料または樹脂材料を用いることができる。第二部材の具体例としては、シリコン基板等の半導体基板;銅基板等の金属基板、リードフレーム、金属板貼付セラミックス基板(例えばDBC)、LEDパッケージ等の半導体素子搭載用基板、銅リボン、金属ブロック、端子等の給電用部材、放熱板、水冷板等が挙げられる。第一部材の具体例としては、ダイオード、整流器、サイリスタ、MOSゲートドライバ、パワースイッチ、パワーMOSFET、IGBT、ショットキーダイオード、ファーストリカバリダイオード等からなるパワーモジュール、発信機、増幅器、センサー、アナログ集積回路、半導体レーザー、LEDモジュール等が挙げられる。第一部材および第二部材は上記に限定されない。また、第一部材の例として上述したものを第二部材としてもよく、第二部材の例として上述したものを第一部材としてもよい。
【0053】
第一部材1および第二部材2は、銅ペースト5(接合材)と接する面に金属を含んでいてもよい。金属としては、銅、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金、鉛、錫、コバルト、マンガン、アルミニウム、ベリリウム、チタン、クロム、鉄、モリブデンおよびこれらの合金等が挙げられる。
【0054】
第二部材2上に接合材としての銅ペースト5を設ける方法としては、スクリーン印刷、転写印刷、オフセット印刷、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、ステンシル印刷、ソフトリソグラフ、ジェットプリント、ディスペンサー、コンマコート、スリットコート、ダイコート、グラビアコート、バーコート、プレーコート、スピンコート、電着塗装等の各種の塗布法を採用すればよい。
【0055】
銅ペースト5の厚み(分散媒を乾燥後の厚み、すなわち接合層の厚み)は、例えば1~1000μm程度である。接合層の厚みは、10μm以上、30μm以上、50μm以上、70μm以上または100μm以上であり得る。塗布厚みは、700μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下または200μm以下であり得る。
【0056】
第二部材上に設けられた無加圧接合用銅ペーストは、焼結時の流動やボイドの発生の抑制等を目的として、適宜乾燥させてもよい。乾燥時のガス雰囲気は大気中でもよく、無酸素雰囲気でもよく、還元性雰囲気でもよい。乾燥は、常温・常圧で実施してもよく、加熱や減圧により乾燥を促進してもよい。
【0057】
第二部材2上に設けられたペースト5上への第一部材1の配置には、チップマウンタやフリップチップボンダ等を用いてもよく、各種の冶具を用いて手作業で行ってもよい。
【0058】
(焼結)
上記の積層体を加熱することにより、銅ペーストの焼結を行う。還元性雰囲気下で加熱を行うことにより、第一種粒子の表面に形成された(亜)酸化銅のナノ構造が還元されて銅のナノ構造が生成し、ナノ構造のサイズ効果により、低温での融着が進行する。第二種粒子が表面に酸化膜や(亜)酸化銅のナノ構造を有している場合は、第二種粒子も還元性雰囲気下で表面が還元され、融着が促進される。
【0059】
還元性雰囲気としては、水素やギ酸等の還元性ガスの存在雰囲気が挙げられる。還元性雰囲気ガスは、水素やギ酸等の還元性ガスと、窒素や希ガス等の不活性ガスとの混合ガスでもよい。ペーストが還元剤を含んでいる場合は、還元性ガスを用いる代わりに、酸化抑制雰囲気で加熱を行ってもよい。この場合は、加熱により還元剤が揮発して還元性雰囲気となる。酸化抑制雰囲気とは、窒素や希ガス等の不活性ガス雰囲気や真空下が挙げられる。
【0060】
加熱時の到達最高温度は、第一部材および第二部材への熱ダメージを抑制しつつ、分散媒の揮発および金属粒子の融着を促進する観点から、200~500℃が好ましく、230~450℃がより好ましく、250~400℃がさらに好ましい。
【0061】
上記の温度範囲での保持時間は、分散媒の揮発および金属粒子の融着を十分に進行させる観点から、1分以上が好ましく、5分以上がより好ましい。加熱の保持時間の上限は特に限定されないが、歩留まりや工程効率等の観点からは60分以下が好ましい。
【0062】
第一部材と第二部材とが銅ペーストの焼結体(接合材)を介して接合された接合体のダイシェア強度は、20MPa以上が好ましく、23MPa以上がより好ましく、25MPa以上がさらに好ましい。上記の銅ペーストを用いることにより、銅の融点以下の低温での無加圧接合により、高いシェア強度を実現できる。
【0063】
このような高い接合強度を実現できる推定要因として、相対的に粒子径の大きい第一種粒子が表面にナノ構造を有するために低温融着が可能であるとともに、相対的に粒子径の小さい第二種粒子が第一種粒子間の空隙に入り込んだ微細組織を構成し、各粒子間での焼結が進行するために、空隙が少なく緻密化された接合層が形成されることが挙げられる。銅ペーストを焼結後の接合層の断面における空隙率は、25%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましい。空隙率は接合断面のSEM観察像から算出できる(図3参照)。
【0064】
空隙が少ないことに加えて、マイクロ粒子を用いることにより、焼結時の体積収縮が小さく、接合層内の歪が抑制されることも、接合強度の向上に寄与していると考えられる。また、第二種粒子は、低温融着が可能であり、かつ凝集が生じ難い程度の粒子径を有しているため、第一種粒子表面のナノ構造と第二種粒子との融着および第二種粒子同士の融着が進行し、接合強度がさらに上昇すると考えられる。さらに、第一種粒子の平均粒子径D1と第二種粒子の平均粒子径D2の比D1/D2が所定範囲内であることにより、接合層内の粒界の割合が小さいことも、接合強度の上昇に寄与していると考えられる。
【0065】
本発明の接合方法は、各種の電子部品や半導体装置の製造に適用できる。すなわち、本発明の銅ペーストの焼結により複数の部品を接合した接合体は、電子部品または半導体装置等であり得る。本発明の接合体は、接合部が高いダイシェア強度を有し、接続信頼性に優れている。また、接合材が主に銅からなり、第一種粒子間の空隙に第二種粒子が充填されることにより空隙率が低いため、高い熱伝導率および電気伝導率も実現可能である。
【実施例0066】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。
【0067】
[銅粒子の準備]
下記A~Iの銅粉末の市販品を準備した。
A:太陽日酸製「Tn-Cu100」(平均粒子径0.1μmの球状銅粉)
B:三井金属鉱業製「1050YP」(平均粒子径0.9μmのフレーク状銅粉)
C:三井金属鉱業製「MAC03K」(平均粒子径3.0μmの球状銅粉)
D:三井金属鉱業製「MAC03KP」(平均粒子径4.0μmのフレーク状銅粉)
E:三井金属鉱業製「1400YM」(平均粒子径4.2μmの球状銅粉)
F:三井金属鉱業製「1400YP」(平均粒子径5.2μmのフレーク状銅粉)
G:三井金属鉱業製「MA-CF」(平均粒子径21.1μmのフレーク状銅粉)
H:CuLox製「Cu6500」(平均粒子径50μmの球状銅粉)
I:三井金属鉱業製「MACNS」(平均粒子径64μmの球状銅粉)
【0068】
[表面にナノファイバー構造を有する銅粒子の作製]
上記の粒子Eを大気下で撹拌しながら、100℃で10分、150℃で10分、200℃で10分、250℃で10分、300℃で10分、350℃に昇温して10分、400℃で30分加熱した。加熱後の粒子RをSEM観察したところ、凝集塊はほとんど確認されず、図1(C2)に示すように、表面にファイバー状のナノ構造が形成されていた。
【0069】
上記の粒子C,D,F,G,H,Iを用いて、粒子Rの作製と同様の条件で加熱を行い、表面にファイバー状のナノ構造を有する粒子P,Q,S,T,U,Vを作製した。
【0070】
[実施例1]
第一種粒子として粒子Rを50質量部、第二種粒子として粒子Bを50質量部、および分散媒としてトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFTG;沸点242.4℃)30質量部を混合した。減圧下で、撹拌機(クラボウ製「マゼルスター KK-V300」)を用いて、公転回転数1340rpm、自転回転数737rpmで2分間混合物を遊星撹拌して無加圧接合用銅ペーストを得た。
【0071】
[実施例2~9および比較例1~6]
金属粒子および溶媒の配合量を表1に示すように変更した(表1における配合の数値は質量部である)。それ以外は実施例1と同様にして、銅ペーストを得た。
【0072】
[評価]
(ダイシェア強度試験用試料の作製)
銅ペースト0.009gを、20mm×20mmの銅板(厚み1mm)上の中央に塗布し、その上に厚さ1mm、サイズ5×5mmのCuチップを接触させた後、10gの荷重でCuチップを軽く押し付けて積層体を形成した。
【0073】
この積層体を還元接合装置(アユミ工業製「RB-100」)の炉内に設置し、室温から130℃まで4分間で昇温した後、130℃で5分間保持して予備乾燥を行った。その後、130℃から300℃まで10分間で昇温した。実施例1~9、比較例1~3および比較例6の試料については、大気雰囲気で室温から300℃まで昇温を行った。比較例4および比較例5の試料については、窒素雰囲気で室温から300℃まで昇温を行った。300℃に昇温後、炉内にギ酸蒸気を導入してギ酸雰囲気とし、300℃で30分加熱を行った。炉内を窒素ガス置換して35℃以下まで冷却後、試料を取り出した。
【0074】
(ダイシェア強度の測定)
DS-100ロードセルを装着した万能型ボンドテスタ(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー製4000シリーズ)を用い、大気下にて、測定スピード1mm/分、測定高さ200μmの条件で、上記試料のダイシェア強度を測定した。
【0075】
実施例および比較例の銅ペーストの組成、銅ペースト中の金属粒子の平均粒子径の比D1/D2、および接合試料のダイシェア強度を表1に示す。なお、表1においては相対的に粒子径が大きい第一種粒子の含有量に下線を付している。実施例1および比較例3の試料については、断面のSEM観察を行い、図3(A)(B)のSEM写真から空隙率を算出した。
【0076】
【表1】
【0077】
ナノ構造を有していない銅粒子のみを用いた比較例1および比較例2では、接合試料のダイシェア強度が20MPa未満であった。表面にナノ構造を有するマイクロ銅粒子のみを用いた比較例3では、比較例1,2よりもさらにシェア強度が低下していた。図3(B)から求めた比較例3の接合断面の空隙率は30.4%であった。
【0078】
金属粒子として、表面にナノ構造を有するマイクロ粒子(第一種粒子)に加えて、第一種粒子よりも粒子径の小さい銅粒子(第二種粒子)を含む実施例1~9では、いずれもダイシェア強度が20MPa以上に上昇していた。図3(A)から求めた実施例1の接合断面の空隙率は11.5%であり、μmオーダーの粒子間の空隙が微細な粒子により充填されることにより、比較例3に比べて大幅に空隙率が低減していることが確認された。これらの結果から、加熱酸化により表面にナノ構造が形成されたマイクロ銅粒子と、相対的に粒子径の小さい銅粒子を用いることにより、マイクロ銅粒子間の空隙が相対的に粒子径の小さい粒子により充填されるとともに、金属粒子間の接合が強化されて、接合強度が上昇することが分かる。
【0079】
相対的に粒子径の小さい第二種粒子として表面にナノ構造を有するマイクロ銅粒子を用いた実施例8,9も、他の実施例と同様に高い接合強度を示した。一方、比較例4および比較例5では、比較例1および比較例2と同様に、粒子径の異なる2種類の銅粒子を用いたが、ダイシェア強度は比較例1~3よりもさらに低下していた。これらの結果から、実施例では、銅粒子の表面に形成されたナノ構造が、マイクロ粒子同士の融着を促進する作用を有するために、接合強度が上昇したのに対して、ナノ構造を有していないマイクロ粒子を用いた比較例4,5では、マイクロ粒子同士が融着しないために、接合強度が低下したと考えられる。
【0080】
表面にナノ構造を有し平均粒子径が64μmである粒子Vと、平均粒子径が0.1μmの粒子Aを用いた比較例6では、表面にナノ構造を有するマイクロ粒子と、小粒径の銅粒子とを併用しているにも関わらず、接合強度が不十分であった。比較例6では、2種類の粒子の粒子径のD1/D2が大きく、粒界の比率が高いために、接合強度が低下したと考えられる。この結果から、第一種粒子と第二種粒子の平均粒子径の比D1/D2を所定範囲とすることにより、高い接合性を実現できることが分かる。

図1
図2
図3