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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046775
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】血栓摘出術用装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002663
(22)【出願日】2022-01-11
(62)【分割の表示】P 2019531818の分割
【原出願日】2018-01-02
(31)【優先権主張番号】62/442,470
(32)【優先日】2017-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/519,185
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519208144
【氏名又は名称】マグネト スロムベクトミィ ソリューションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】タフ、ユーファル
(72)【発明者】
【氏名】ステルン、ガル
(72)【発明者】
【氏名】オリオン、イザーク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被験者の身体から血栓を除去するための装置を提供する。
【解決手段】内側電極3と、内側電極の周りを包むように構成された外側電極26と、そして内側電極と外側電極の間に配置される不連続な電気絶縁カバー42と、を有し、内側電極は、外側電極の径方向において反対側で、電気絶縁カバーの中断部分に位置するように構成され、内側電極と外側電極の間に電圧が印加される時に、電流が内側電極と外側電極の間に中断部分を経由して流れる、ことを特徴とする装置。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体から血栓を除去するための装置であって、
内側電極と;
前記内側電極の周りを包むように構成された外側電極と;そして
前記内側電極と前記外側電極の間に配置される不連続な電気絶縁カバーと;
を有し、
前記内側電極は、前記外側電極の径方向において反対側で、前記電気絶縁カバーの中断部分に位置するように構成され、前記内側電極と前記外側電極の間に電圧が印加される時に、電流が前記内側電極と前記外側電極の間に前記中断部分を経由して流れる、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記電流は前記血栓に対し前記内側電極に付着するようにさせる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電流は前記血栓に対し溶解するようにさせる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記外側電極は螺旋を画定するように成形される、ことを特徴とする請求項1-3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記電気絶縁カバーは前記外側電極の近位部分と前記外側電極の遠位部分をカバーするが、しかし前記外側電極の中間部分をカバーしない、ことを特徴とする請求項1-4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記外側電極の前記中間部分の半径は前記外側電極の前記近位部分の半径より大きく、かつ前記外側電極の前記遠位部分の半径より大きい、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記内側電極が前記外側電極の中心を貫通する、ことを特徴とする請求項1-6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
カテーテルが前記外側電極の上から引き抜かれる時に、前記外側電極は捲縮位置から拡張するように構成される、ことを特徴とする請求項1-7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記内側電極が棒状である、ことを特徴とする請求項1-8のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医療機器の分野に関し、特に血栓摘出術、すなわち血管からの血栓(閉塞物)の除去のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願との相互参照)
本出願は、(i)2017年1月5日に出願された「血栓摘出術用装置」と題する米国暫定特許出願62/442,470(特許文献1)、および(ii)2017年6月14日に出願された「電気的血栓摘出術用装置」と題する米国暫定特許出願62/519,185(特許文献2)の恩恵を主張し、それらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。本出願はまた、本明細書と同日に出願された、「血栓摘出術用装置」という名称の米国特許出願(代理人整理番号1344-1003.2)にも関連する。
【0003】
参照によりその開示内容が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0301594号(特許文献3)は、身体内の通路に導入し、身体から流体を抜き出し、または身体内に流体を導入でき、および血栓溶解および/または血栓摘出を実行するための電気信号を体内で印加するように構成される、電極を含むフレキシブルなカテーテル装置を記載している。ここでその電極の1つが血栓材料と接触してそれを除去するかまたは溶解するように設計されており、また電圧信号は単極性パルス電圧信号である。
【0004】
米国特許出願公開第2004/0073243号(特許文献4)は、血管から閉塞物を除去するための装置および方法を記載している。装置は折り畳まれた状態で配備され、その後体内で拡張される。次いで、装置は閉塞部と係合してこれを除去するように操作される。
【0005】
米国特許第6,855,143号(特許文献5)は、侵襲的組織成長による閉塞を受ける身体内の通路(body passage)において、開通性を維持するための電気的外科用装置および方法を記載している。装置は、その上に配置された少なくとも1つの活性電極を有するシャフトの遠位端に配置された電極支持体と、少なくとも1つの活性電極(active electrode)の近位にある少なくとも1つの戻り電極(return electrode)とを含む。一実施形態では、湾曲したワイヤループ部分をそれぞれ含む複数の活性電極が、電極支持体の遠位部分内に封止されている。
【0006】
米国特許第8,197,478号(特許文献6)は、電気的に誘発された血栓症のための装置および方法を記載している。外科用装置は第1の電極と第2の電極を含む。第1の電極は、患者の処置部位に隣接して、その近くに、またはその中に配置するためのものである。第2の電極は第1の電極に対して移動可能であり得る。電極が電源によって帯電されると、負に帯電した血液成分は、負に帯電した電極から反発しながら、正に帯電した電極に引き付けられる。隣接する電極間の電位により、血栓症が誘発される。負に帯電した血液および成分は、正に帯電した電極に隣接して血栓または凝血塊を形成する。外科用装置は、他の点では自然の血栓症のプロセスを誘発するために使用することができる。外科用装置が穿刺または切開などの処置部位で使用されるとき、血栓症は処置部位によって作られた開口部を密封することができる。
【0007】
米国特許出願公開第2002/0133111号(特許文献7)は、虚血性脳卒中を患っている患者の脳動脈から血栓塞栓を除去するためのマイクロカテーテルを記載している。マイクロカテーテルは、チャネルを詰まらせることなく血栓を抽出および乳化することが可能な、非常に小さい直径に縮小することができる抽出内腔を提供する。マイクロカテーテルは、カテーテルの抽出内腔の全長に沿って一連の間隔を空けたエネルギー印加機構を使用して、キャビテーションによって流体の流れを生じさせ、それによって同時に抽出内腔を通って引き込まれた塞栓物質を除去し、それにより内腔の閉塞を防止するために,順次圧力差を生じさせる。エネルギー送達のための好ましい機構は、(i)カテーテル壁内の光ファイバーに結合されたレーザー源および制御装置、または(ii)抽出内腔内のペアの電極に結合されたRf源である。各エネルギー放出器は、カテーテルの抽出チャネル内の流体媒体にエネルギーを印加することができ、そこでは、強いエネルギーパルスは、チャネル内で流体媒体を近位方向に流すように順次タイミングを合わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国暫定特許出願62/442,470
【特許文献2】米国暫定特許出願62/519,185
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0301594号
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0073243号
【特許文献5】米国特許第6,855,143号
【特許文献6】米国特許第8,197,478号
【特許文献7】米国特許出願公開第2002/0133111号
【発明の概要】
【0009】
本発明のいくつかの参考実施例によれば、被験者の身体から血栓を除去するための装置が提供される。その装置は、第1の電気陰性度を有する第1の導電性金属からなる第1の電極と、第1の電気陰性度よりも小さい第2の電気陰性度を有する第2の導電性金属からなる第2の電極と、そして第1の電極が血栓と接触している間でかつ、第2の電極が被験者の体内にある間に、第1の電極と第2の電極との間に正の単極性電圧を印加するように構成される電圧源と、を有する。
【0010】
いくつかの参考実施例では、第1の電極と第2の電極との間の距離は、3mm未満である。
いくつかの参考実施例では、その距離が0.7mm未満である。
いくつかの参考実施例では、装置はチューブをさらに含み、第2の電極がチューブの壁の少なくとも一部を画定するように成形される。
いくつかの参考実施例では、第1の電極がチューブの遠位端に配置されている。
いくつかの参考実施例では、第1の電極がチューブの内腔を通過する。
いくつかの参考実施例では、第2の電極がらせんを画定するように成形され、第1の電極が第2の電極を貫通する。
いくつかの参考実施例では、第1の電極と第2の電極とが互いに同軸である。
いくつかの参考実施例では、第1の電極の露出部分の長さが0.1~50mmである。
いくつかの参考実施例では、第1の電極の直径が、0.01~4mmである。
いくつかの参考実施例では、単極性電圧の振幅が、1~100Vである。
いくつかの参考実施例では、単極性電圧を印加する際に、電圧源が、第1の電極と第2の電極との間に、0.1~4mAの振幅を有する電流を流すように構成される。
いくつかの参考実施例では、第1の電極が直線の遠位端を有する。
いくつかの参考実施例では、膨張時に、血栓に対して第1の電極をセンタリングするように構成された、第1の電極の近位にあるバルーンをさらに備える。
【0011】
本発明のいくつかの参考実施例によれば、第1の電極が被験者の体内の血栓と接触している間でかつ、第2の電極が被験者の体内にある間に、第1の電気陰性度を有する第1の導電性金属からなる第1の電極と、第1の電気陰性度よりも小さい第2の電気陰性度を有する第2の導電性金属からなる第2の電極と、の間に正の単極性電圧を印加するステップとを有する方法が提供される。方法はさらに、その後、被験者の身体から血栓を除去するステップを有する。
【0012】
いくつかの参考実施例では、方法は単極性電圧を印加する前に、血栓が第1の電極の露出部分に近接して配置された電気絶縁体に少なくとも接触するまで、第1の電極を血栓を通過して前進させるステップをさらに含む。
いくつかの参考実施例では、方法は第1の電極と第2の電極との間のインピーダンスを測定するステップと、その測定されたインピーダンスに基づいて血栓が絶縁体と接触したことを確認するステップと、をさらに有する。
いくつかの参考実施例では、方法は、単極性電圧を印加する前に、第1の電極の全長が血栓に接触するまで血栓を通過して第1の電極を前進させるステップをさらに有する。
いくつかの参考実施例では、単極性電圧を印加するステップは、第1の電極の遠位先端と第2の電極の遠位先端との間の距離が1~100mmである間に、単極性電圧を印加するステッを有する。
いくつかの参考実施例では、電気絶縁体が第1の電極の露出部分に近接して配置され、方法は、単極性電圧を印加する前に、第2の電極を絶縁体の上に進めるステップをさらに有する。
【0013】
いくつかの参考実施例では、第2の電極が拡張可能であり、方法は、単極性電圧を印加する前に、第1の電極と捲縮位置にある第2の電極との両方を含むカテーテルを、血栓を通過して前進させるステップと、そしてその後、カテーテルを引き抜き、それにより第2の電極が捲縮位置から血栓内で拡張するステップと、をさらに有する。
いくつかの参考実施例では、方法は、血栓を第1の電極と接触させる前に、第1の電極の近位にあるバルーンを膨張させるステップによって、第1の電極を血栓に対してセンタリングするステップをさらに有する。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、被験者の身体から血栓を除去するための装置がさらに提供される。装置は、螺旋を画定するように成形された外側電極と、そして外側電極を貫通し、内側電極と外側電極との間に正の単極性電圧が印加されたときに血栓に付着するように構成される内側電極とを有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、外側電極が拡張可能である。
いくつかの実施形態では、装置は、正の単極性電圧を印加するように構成された電圧源をさらに備える。
いくつかの実施形態では、装置は、外側電極の近位部と外側電極の遠位部の両方を覆う電気絶縁カバーをさらに備える。
いくつかの実施形態では、内側電極が棒状である。
いくつかの実施形態では、内側電極が外側電極の中心を貫通する。
いくつかの実施形態では、内側電極と外側電極の中間部分との間の距離が、1~100mmである。
いくつかの実施形態では、その距離が2~30mmである。
いくつかの実施形態では、内側電極は、第1の電気陰性度を有する第1の導電性金属からなり、外側電極は、第1の電気陰性度よりも小さい第2の電気陰性度を有する第2の導電性金属からなる。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、捲縮された外側電極と、外側電極を貫通する内側電極と、の両方を含むカテーテルを被験者の身体内の血栓を通過して前進させるステップを有する方法がさらに提供される。方法はさらに、カテーテルを血栓を通過して前進させるステップに続いて、カテーテルを引き抜き、それにより外側電極が血栓内で拡張するステップを含む。方法はさらに、カテーテルを引き抜くステップに続いて、内側電極と外側電極との間に正の単極性電圧を印加し、それにより血栓が内側電極に付着するようになるステップを含む。方法はさらに、血栓が内側電極に付着するようになるステップに続いて、被験者の身体から内側電極および外側電極を引き抜くステップを含む。
いくつかの実施形態では、外側電極を引き抜くステップは、外側電極を使用して、血栓に機械的な力を加えるステップを有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、添付の図面を参照した実施形態の詳細な説明によりさらに完全に理解されよう:
図1】本発明のいくつかの参考実施例による、被験者の身体から血栓を除去するための装置の概略図である。
図2】本発明のいくつかの参考実施例による電極組立体の概略図である。
図3】本発明のいくつかの参考実施例による電極組立体の概略図である。
図4】本発明のいくつかの実施形態による電極組立体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(概要)
本発明の実施形態は、身体通路内の2つの電極間に単極性電圧を印加することによって血管または他の身体通路から血栓を除去するための装置および方法を提供する。例えば、血栓と接触している第1の電極と、第1の電極に近接して配置されている第2の電極との間に、正の単極性電圧を印加することができる。正の電圧は、第1の電極に負に帯電した血栓を引き付け、それにより血栓が第1の電極に付着する。その後、血栓は、第1の電極を引き抜くことによって除去され得る。あるいは、負の単極性電圧を第1の電極と第2の電極との間に印加して血栓を溶解させることができる。その後、分解した血栓を被験者から除去することができる。
【0019】
有利なことに、電極は、印加された単極性電圧の効果を増大させるためなどに、それぞれ異なる電気陰性度を有する異なる導電性金属から作製されてもよい。例えば、血栓と血栓接触電極との間の引力を増大させるために、第1の血栓接触電極は第2の電極の電気陰性度よりも高い電気陰性度を有することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、血栓接触電極は、少なくとも第1の電極の露出部分に近接して配置された電気絶縁体に血栓が接触するまで血栓を通って前進する。これにより、血栓に近接する電極の露出表面積が減少または無くされ、したがって印加された単極性電圧の影響がさらに増大する。電極間のインピーダンスは電極が血栓によって覆われる程度に応じて変化するので、血栓が絶縁体に接触したことを確認するために第1の電極と第2の電極との間のインピーダンスを測定してもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、第2の電極はらせんを画定するように形作られ、第1の電極はらせんを貫通する。有利には、らせん状の第2の電極は、血栓と第1の電極との間の電気的引力を補完する機械的力を血栓に加えることによって、被験者から血栓を引き出すのを助ける。
【0022】
一般に、特許請求の範囲を含む本出願の文脈において、「単極性電圧」という用語は、たとえ信号が厳密に単極性でなくても、ほとんど単極性である任意の電圧信号を指すことがある。例えば、信号の各5分間隔の間に、その間隔の少なくとも80%の間正である電圧信号は、正の単極性電圧と呼ばれることがある。
【0023】
一般に、特許請求の範囲を含む本出願の文脈において、用語「血栓」は、血液、脂肪、コレステロール、プラーク、および/または体外由来の異物の任意の組み合わせを指すことができ、それは、電荷を有する可能性がある。
【0024】
(装置の説明)
本発明のいくつかの参考実施例による、被験者の身体から血栓を除去するための装置21の概略図である図1を最初に参照する。(図1は、米国特許出願公開第2011/0301594号(特許文献3)の図2に概ね対応しており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。)
【0025】
装置21は、近位端20pと遠位端20dとを有し、内腔20aを画定するように成形されたカテーテル20を備える。例えば標準的な血管造影カテーテル法を用いて、カテーテル20を被験者の血管系に導入した後、電極組立体23を内腔20aに通し、続いて以下に詳細に説明するように血管系から血栓を除去するために用いる。いくつかの参考実施例では、カテーテル20は、注射器(図示せず)またはこの目的に適した他の任意の装置を使用して、処置プロセス中に発生したあらゆる破片(例えば血栓片)を引き出すための近位側方ポート2をさらに含む。代替的に又は追加的に、カテーテル20の上を通過する第二のカテーテルが血栓の近位に配置され、その後そのような破片を吸引するために使用されてもよい。代替的または追加的に、電極組立体23の遠位端の近くに配置されたネットがそのような破片を捕獲し除去するために使用されてもよい。
【0026】
図1に示す特定の参考実施例では、電極組立体23は、一対の同軸電極、すなわち血栓に接触するために使用される第1の電極3、および第2の電極26を含む。第1の電極3は0.01~4mmなどの任意の適切な値の直径d1を有するワイヤからなる。第1の電極3は遠位端3dを含む。いくつかの参考実施例において、後続の図に示されるように、遠位端3dは直線である。あるいは、図1に示すように、遠位端3dは、真っ直ぐな遠位端に対して、曲がっていてもよく、または電極と血栓との間の接触面積を直線に比較して増大させる任意の他の適切な形状を有してもよい。例えば、遠位端3dの(または第1の電極全体の)表面は、血栓との接触に利用可能な表面積を増大させる複数の突起部または隆起部を含み得る。代替的または追加的に、電極が被験者の組織を損傷する可能性を減らすために、遠位端3d(または第1の電極全体)を湾曲させることができる。
【0027】
いくつかの参考実施例では、第1の電極3は、内腔20aを通ってカテーテルの近位端20pまで貫通する別のワイヤ5に、第1の電極の近位端において、接続点4で、接続される。他の参考実施例では、ワイヤ5の代わりに、第1の電極3がカテーテルの内腔を貫通してカテーテルの近位端まで延びる。
【0028】
典型的には、電気絶縁材料が第1の電極を第2の電極から分離し、それにより第1の電極と第2の電極とは互いに電気的に絶縁される。例えば、電気絶縁層5iがワイヤ5を覆い、次に第2の電極26が電気絶縁層5iを覆ってもよい。例えば、図1に示すように、第2の電極26は、電気絶縁層5iの上に編み込まれた、または電気絶縁層5iの周りに巻き付けられた複数の導電性ストランド26sを含む多重ストランドのワイヤを含み得る。いくつかの参考実施例では、電気絶縁カバー20cは、第2の電極の大部分を覆い、第2の電極の遠位部分26dのみが露出されたままである。いくつかの参考実施例では、遠位部分26dは7~25mmの長さ、例えば約15mmの長さである。
【0029】
典型的には、電気絶縁層5iによって覆われていない第1の電極の部分である、第1の電極または第1の電極の露出部分は、0.1から150mmの間(例えば、5~25mmの間のような5~50mmの間)の長さL1を有する。あるいは、長さL1は他の任意の適切な値を有してもよい。第1の電極の遠位端は、第1の電極が通過する内腔へのいかなる損傷も防止するのを助けるために、典型的には鋭くない。
【0030】
ワイヤ5は、その近位端において、第1の端子3tで終わっている。同様に、第2の電極はその近位端で第2の端子26tで終わっている。第1の電極が血栓に接触すると、第1の端子3tおよび第2の端子26tを介して単極性電圧が電極間に印加される。第1の電極と第2の電極との間の正の単極性電圧は、負に帯電した血栓を第1の電極に付着させることによって血栓摘出術(すなわち血栓の除去)を容易にする。そのような正の電圧は、例えば、正の単極性電圧信号を第1の端子3tに印加しながら、第2の端子26tを接地することによって得ることができる。逆に、第1の電極と第2の電極との間の負の単極性電圧は血栓の溶解を促進する。そのような負電圧は、例えば、正の単極性電圧信号を第2の端子26tに印加しながら、第1の端子3tを接地することによって得ることができる。
【0031】
一般に、端子に印加される単極性電圧信号は、米国特許出願公開第2011/0301594号(特許文献3)に記載されている波形のうちのいずれかなど、任意の適切な波形を有することができ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。例えば、単極性電圧信号は、それぞれのパルスが例えば正弦波信号の正の半波として整形されているか、または台形形状を有する、一連のパルスを含む周期的信号であり得る。あるいは、単極性電圧信号は直流(DC)電圧信号であり得る。
【0032】
単極性電圧の振幅は任意の適切な値を有することができるが、この振幅は、典型的には0.1~100V、例えば1~100V、例えば1~50V、または4~40Vである。このような振幅は、有効である程度に大きいが、血栓付近の組織を傷つけない程度に小さい。例えば、米国特許出願公開第2011/0301594号(特許文献3)にその図1Dを参照して記載されているように、印加電圧信号の各台形パルスは、(i)基底レベル(0ボルト)から約40ボルトの振幅まで約5ミリ秒の期間にわたって、直線的に立ち上がり、(ii)約5ミリ秒の期間にわたって一定であり、次いで(iii)約5ミリ秒の期間にわたって基底レベルまで直線的に立ち下がることができる。次のパルスの開始前に、電圧は別の約5ミリ秒の期間、基底レベルに留まってもよい。一般に、印加された単極性電圧信号は、パルスである場合、直前の上記の例のように、0.1Hz~100MHzの間、例えば約50Hzのような任意の適切な周波数を有することができる。典型的には、単極性電圧は、0.1~4mA(例えば、1~3mA)の振幅を有する電流が第1の電極と第2の電極との間に流れるように印加される。
【0033】
いくつかの参考実施例では、単極性電圧を印加する電圧源は、例えば0.1~4mAの間に電流調整される。他の参考実施例では、電圧源は、例えば1~50Vの間に電圧調整される。典型的には、電圧が印加される持続時間は、第1の電極への血栓の付着を容易にするために1秒を超えるが、しかし患者への危険を防ぐために10分未満である。例えば、持続時間は5秒を超え5分未満、例えば10秒を超え2分未満であり得る。
【0034】
典型的には、単極性電圧は、第1の電極が血栓と接触している間で、かつ第2の電極が被験者の体内、例えばカテーテル内腔内にあるが、血栓と接触していない間に印加される。(上記にもかかわらず、いくつかの参考実施例では、例えば、図4を参照して以下に説明されるように、両方の電極が血栓に接触する可能性があることに留意されたい)。例えば、単極性電圧を印加する前に、電極組立体が前進させられ、それにより第1の電極が血栓を突き通してもよい(すなわち、血栓と接触して血栓を通過する)。あるいは、図3を参照して以下に説明するように、カテーテル内腔内に適切に配置された2つの電極を有するカテーテル20が血栓を通過して前進させられ、次いで第1の電極の上から引き抜かれ、それにより第1の電極が血栓内に位置してもよい。
【0035】
いくつかの場合には、単極性電圧の印加中にカテーテルの位置を可能な限り遠位に保ち、処置中に発生したあらゆる気泡または破片の収集を容易にすることが有利であり得る。従って、単極性電圧が印加されている間、第二電極、そして第一電極およびそれが接触している血栓さえも、カテーテル内腔内に部分的にまたは完全に含まれてもよい。例えば、上の段落で説明した電極組立体の前進に続いて、またはそれと同時に、カテーテルも前進させられてもよく、それにより第2の電極および/または第1の電極が、その後の単極性電圧の印加中カテーテル内腔に含まれる。
【0036】
典型的には、単極性電圧が印加されている間、電極のそれぞれの遠位先端は、2~100mm、例えば2~30mmの距離D1だけ互いに離間している。このような距離は、処置部位で血液を介して電極間の適切な導電性を促進し、一方で第2の電極が血栓と接触するのを防止するように、第2の電極を血栓から十分な距離に維持する。あるいは、距離D1は、1mm未満(この場合、第2の電極が血栓に接触し得る)、または100mmを超えてもよい。
【0037】
いくつかの参考実施例では、第1の電極と第2の電極との間の分離距離L2(すなわち、第1の電極の近位端と第2の電極の遠位端との間の距離)は、血栓が位置する、血管の周囲の組織を通過する電流の量を減らすために比較的小さい。例えば、(i)血管、および(ii)血管周囲組織の合計直径がD2であると仮定すると、血管および周囲組織の合計横断面面積A2はπ*(D2/2)であり、L2は、関係L2 *(1mm)≪A2を満たすことができ、ここで「≪」は「少なくとも一桁小さい」ことを意味する。(上記は、L2がmmで与えられ、A2がmmで与えられると仮定している。)いくつかの参考実施例では、L2はさらに小さく、L2はL2 *(1mm)≪A1の関係を満たし、ここでA1は血管の横断面面積である。
【0038】
一般に、製造の容易さはL2と共に増加する。したがって、製造を容易にするために、本発明の参考実施例は、L2を常にできる限り小さくするのではなく、典型的には血管寸法に従ってL2を設定する。言い換えれば、比較的大きな血管の場合、電極間にそのような小さな分離距離を有する必要はないかもしれないので、小さな血管と比較して、より大きな分離距離を使用することができる。本発明のいくつかの参考実施例では、特定の用途ごとに適切な分離距離の範囲を定義し、範囲の上限はA1/(1mm)より一桁小さく、範囲の下限はA1/(1 mm)より二桁小さい。
【0039】
例えば、神経血管用途では、比較的大きな血管は直径が約6mmであり得、その結果、血管は約30mmの断面積を有する。したがって、そのような用途では、距離L2は0.3mmから3mmの間であり得る。脳の中大脳動脈(MCA)のより遠位の部分におけるような小さな血管は、約7mmの断面積を有する。したがって、そのような用途では、L2は0.07mmから0.7mmの間であり得る。深部静脈血栓症、肺塞栓症、または冠状動脈閉塞症などの他の症状の処置に対しては、L2は、上述のように、血管直径(または断面積)に従って同様に設定されてもよい。
【0040】
典型的には、電極はそれぞれ異なる導電性金属でできている。典型的には、(第1の電極と第2の電極との間に正の電圧を印加することによって)血栓摘出術を実施するとき、第1の電極は第2の電極よりも高い電気陰性度を有する。例えば、第1の電極は金または白金からなり、第2の電極はチタンまたはステンレス鋼からなる。逆に、(第1の電極と第2の電極との間に負の電圧を印加することによって)血栓溶解を行うとき、第1の電極は典型的には第2の電極よりも低い電気陰性度を有する。
【0041】
(本明細書および特許請求の範囲の文脈において、電極は、ある特定の材料によって被覆されているだけでも、その特定の材料から「作られている」と見なすことができることに留意されたい。例えば、チタンから「作られている」電極は、チタン層で被覆された任意の適切な材料から構成されうる。)
【0042】
いくつかの参考実施例では、装置21は、X線イメージングを使用した装置の視覚化を容易にする放射線不透過性マーカーを含む。例えば、第2の電極がチタン、または一般に放射線不透過性ではない他の任意の材料で作製されている場合、1つ以上の放射線不透過性の金のリングまたはコーティングが第2の電極の一部を覆ってもよい。
【0043】
いくつかの参考実施例では、装置21は、第1の電極の近位に配置されたバルーンを含む。第1の電極が血栓に接触する前に、第1の電極を血栓に対してセンタリングするようにバルーンを膨張させる。次いで、第1の電極は血栓の中心を通過することができ、したがってその後に印加される単極性電圧の有効性が高まる。
【0044】
ここで、本発明のいくつかの参考実施例による電極組立体23の概略図である図2を参照する。
いくつかの参考実施例では、図2に示すように、電極組立体23は、(中空)チューブ28を含み、第2の電極26は、チューブ28の壁の一部を画定するように成形される。(チューブ28は代替的に「中空シャフト」と呼ばれる。)さらに示されるように、第1の電極3はチューブの遠位端に配置されてもよい。図1を参照して上述したように、第1の電極3は、任意の適切な直径および長さを有する(中空ではない)直線ワイヤから構成され得る。例えば、第1の電極の直径d1は0.01~4mmの間、および/または第1の電極の長さL1は0.1~50mmの間(例えば5~25mm)であり得る。いくつかの参考実施例では、示されるように、チューブ28の直径は第一の電極の直径と同じである。
【0045】
例えば、チューブ28は、任意の適切な導電性または非導電性材料で作られた近位部分34と、チューブ状の第2の電極26と電気絶縁体32からなる遠位部分36を有し、ここで絶縁体32は典型的にはチューブ状で、第二電極を第一電極から分離する。チューブの内腔を通過する第1のワイヤ5aは、その遠位端で第1の電極に接続されてもよい。同様に、やはりチューブの内腔を通過する第2のワイヤ5bは、その遠位端で第2の電極に接続されうる。そのような参考実施例では、電圧源46は、第1のワイヤ5aと第2のワイヤ5bとの間に単極性電圧を印加することによって電極間に単極性電圧を印加することができる。
【0046】
あるいは、チューブ壁の近位部34の代わりに、第2の電極26がチューブの近位端まで延びてもよい。そのような参考実施例では、第2のワイヤ5bは不要であり得る。むしろ、第1のワイヤ5aと第2の電極26との間に直接、または第1のワイヤ5aと第2の電極26に接続された外部ワイヤとの間に単極性電圧を印加することによって電極間に単極性電圧を印加することができる。
【0047】
一般に、電極のそれぞれの遠位先端間の距離D1は、任意の適切な値を有し得る。しかしながら、典型的には、距離D1は、図1を参照して上述したように、1~100mm、例えば2~30mmである。例えば、L1が15mmである場合、絶縁体32の長さは同様に15mmであり得、それによりD1は30mmである。同様に、分離距離L2(これは絶縁体32の長さに等しい)は比較的小さくてもよく、図1を参照して上述したように、血栓が含まれる血管の寸法に従って設定されてもよい。
【0048】
絶縁体32は、ポリイミド、シリコーン、ポリウレタン、ポリエチレン、またはテフロン(登録商標)などの任意の適切な生体適合性絶縁材料から作製され得る。いくつかの参考実施例では、絶縁体32は、のり、またはシアノアクリレート接着剤などの接着剤を含む。他の参考実施例では、絶縁体32の代わりに、(長さL2の)エアギャップが2つの電極を互いに分離する。
【0049】
ここで本発明の他の参考実施例による電極組立体23の概略図である図3を参照する。
図3では、図2と同様に、第2の電極26はチューブ状であり、第1の電極3と同軸であり、2つの電極は共通の長手方向軸27を共有している。しかし図3は、第1の電極3が第2の電極26の内腔を貫通する点で図2と異なっている。特に、第1の電極3はチューブ状絶縁体32の内腔を貫通し、次にチューブ状絶縁体32が第2の電極26の内腔を貫通する。したがって、絶縁体32は、第1の電極の露出部分に近接して配置され、そして次に第2の電極は絶縁体の露出部分に近接して配置される。
【0050】
いくつかの参考実施例では、第1の電極3、チューブ状絶縁体32、および第2の電極26は、互いに対して定位置に固定されている。他の参考実施例では、これらの要素のうちの少なくとも1つが他の要素に対して摺動可能である。例えば、第1の電極はチューブ状絶縁体内で摺動可能であり得、および/または第2の電極はチューブ状絶縁体の上で摺動可能であり得る。したがって、例えば、単極性電圧を印加する前に、電極のそれぞれの遠位先端の間の距離D1が所定の目標(図1を参照して前述したように、100mmまたは30mmなど)未満になるまで、および/または2つの電極間の距離(すなわち、絶縁体32の露出長)が所定の目標分離距離L2(3mmまたは0.7mmなど)未満になるまで、第2の電極を絶縁体上で前進させることができる。代替的または追加的に、単極性電圧を印加する前に、電極のそれぞれの遠位先端間の長さが所定の目標に達するまで、および/または2つの電極間の距離が所定の目標に達するまで、第1の電極を絶縁体の内腔を通過して進めてもよい。
【0051】
いくつかの参考実施例では、第2の電極26は、チューブ28の壁の遠位部分のみを画定するように成形され(すなわち、第2の電極はチューブ28の近位端まで延びない)、そしてしたがって図2のように電極組立体の近位端にワイヤを介して接続される。代替的に又は追加的に、第1の電極3は電極組立体の近位端まで延びていなくてもよい。むしろ、図2のように、絶縁体32の内腔を通過するワイヤが、第1の電極3を電極組立体の近位端に接続することができる。
【0052】
いくつかの参考実施例では、図3に示すように、第1の電極の露出部分は直線状である。他の参考実施例では、電極が被験者の組織を損傷する可能性を減らすために第1の電極の露出部分が湾曲している。
【0053】
図1を参照して上述したように、放射線不透過性マーカーは、電極組立体23上の任意の適切な位置に配置することができる。例えば、図3は、第2の電極の遠位部分が放射線不透過性材料のリングからなる放射線不透過性マーカー38を含む参考実施例を示している。
【0054】
いくつかの参考実施例では、チューブ28と同心の第2のチューブがチューブ28の内部または外部表面の周りに配置される。このような第2のチューブは放射線不透過性であり、したがって蛍光透視法による電極組立体の視認性を容易にし、および/または電極組立体に特定の機械的特性(例えば剛性)を付与する。
【0055】
ここで、図1~3をまとめて参照する。
典型的には、血栓摘出術または血栓溶解のために単極性電圧を印加する前に、少なくとも、第1の電極の露出部分に近接して配置された電気絶縁体(例えば絶縁体32)に血栓が接触するまで、第1の電極を血栓を通過して前進させる。例えば、第1の電極の全長(または第1の電極の露出部分の全長)が血栓に接触するまで、第1の電極を血栓を通過して前進させることができる。これは、血栓の近位にある第1の電極の露出部分を減少させるかまたは無くすことによって、印加電圧の影響を増大させる。第1の電極は、カテーテル20の内腔を通して電極組立体全体を遠位方向に押すことによって、血栓を通過して前進させることができる。あるいは、第1の電極が電極組立体に属する他の要素に対して摺動可能である参考実施例の場合、電極組立体の残りの部分を所定の位置に保持しながら、第1の電極を押すことができる。
【0056】
本明細書に記載の血栓摘出術または血栓溶解処置は、典型的には蛍光透視法の下で行われるが、蛍光透視法だけに基づいて、血栓が絶縁体に接触したことを確認することは困難であり得る。したがって、いくつかの参考実施例では、測定されたインピーダンスは、第1の電極が血栓対して近位で露出される程度を示すので、第1の電極が血栓を通って進むときの第1の電極と第2の電極との間のインピーダンスが測定される。(インピーダンスは、電極のより多くの部分が血栓に覆われると、増大する。)測定されたインピーダンスに基づいて、血栓が絶縁体に接触したことを確認することができる。
【0057】
いくつかの参考実施例では、インピーダンスを測定するために、処置のために印加される単極性電圧より低い電圧が電極間に印加され、次いで結果として生じる電流が測定される。インピーダンスは電圧を測定電流で割ったものである。(インピーダンスの実際の値は必ずしも重要ではないので、実際のインピーダンス値を計算することなく、電流を測定することによってインピーダンスを「測定」することができる。例えば、一旦電流が最小に達すると、インピーダンス値を計算しなくても血栓が絶縁体に接触していることが確認できる。)他の参考実施例では、電極間に低電流を流し、次に結果として生じる電圧を測定することによってインピーダンスを測定する。
【0058】
他の参考実施例では、カテーテル20を、2つの電極を収容しながら、血栓を通過して進める。続いて、カテーテルを第一電極の上から(そして選択肢として、第二電極の上から)引き抜き、それにより第一電極が血栓内に位置したままで残り、第二電極がそれに近接して位置する。その後、単極性電圧を印加する。
【0059】
ここで本発明の実施形態による電極組立体23の概略図である図4を参照する。
いくつかの実施形態では、第2の電極26は、第1の電極3の周りを包み、ここで半径方向の間隙が2つの電極を隔てる。例えば、第2の電極26はらせんを画定するように形作られ、そして典型的には棒状である第1の電極3が、第2の電極の長手方向軸に沿って第2の電極を貫通し得る。典型的には、そのような実施形態では、第2の電極の近位部分および遠位部分は、絶縁カバー42によって覆われ、それにより第2の電極の中央部分44だけが露出する。(中間部分44は、第2の電極の他の部分に対して最大半径を有する、第2の電極の部分を含む。)絶縁カバー42は、2つの電極間の望ましくない電気的接触を防止するのを助ける。(これらの実施形態では、第1の電極は「内側電極」と呼ばれることがあり、第2の電極は「外側電極」または「ステント」と呼ばれることがある。)
【0060】
典型的には、第1の電極は、第2の電極の中心を通過し、その結果、中間部分44の半径にほぼ等しい、第1の電極と中間部分44との間の距離D1は、1~100mmの間、例えば2~30mmの間である。あるいは、距離D1は他の任意の適切な値を有してもよい。
【0061】
典型的には、第二電極は拡張可能である。単極性電圧を印加する前に、第1の電極と捲縮位置の第2の電極との両方を含むカテーテル20(図1)を、血栓を通過して前進させる。その後、カテーテルを2つの電極の上から引き抜き、それにより第2の電極が捲縮位置から血栓内で拡張する。続いて、正の単極性電圧が第1の電極と第2の電極との間に印加され、血栓を第1の電極に付着させる。電圧の印加中、第1の電極は第2の電極から遠位に突出してもよい。あるいは、第1の電極の遠位端は、第2の電極の内側に留まり得る。
【0062】
単極性電圧の印加中および/または印加後に、電極組立体を引き抜く。電極組立体の引き抜き中、血栓内に配置されている第2の電極は、血栓と第1の電極との間の引力を補完する機械的力を血栓に加えることによって血栓を除去するのを助ける。
【0063】
図1~4を参照して上述した構成のいずれについても、負の単極性電圧が第1の電極と第2の電極との間に印加され、血栓を溶解させることができる。さらに他の実施形態では、単極性電圧の代わりに交流電圧を印加して熱凝固を引き起こすことができる。
【0064】
図1~4は、2つの電極が互いに同軸であり、(図3に明示されているように)その点でそれらは共通の長手方向軸を共有する実施形態を示すが、他の実施形態も本発明の範囲内である。例えば、米国特許出願公開第2011/0301594号(特許文献3)にその図1A図1Cを参照して記載されているように、2つの電極は、カテーテル20の別々の内腔を通過してもよく、またはカテーテル20の共通の内腔を通って(ただし、絶縁体によって分離されて)並んで通過してもよい。
【0065】
本明細書に記載のチューブおよびカテーテルのいずれも、少なくとも部分的に中実で、コイル状の、編組状、または網目状の壁を含み得ることに留意されたい。同様に、本明細書に記載の電極はいずれも、チューブ、コイル(一定または可変ピッチを有していてもよい)、編組、またはメッシュを画定するように成形することができる。
【0066】
当業者には明らかなように、本発明は、上記に具体的に示され説明されたものに限定されない。本発明の実施形態の範囲は、本明細書を読んだ当業者に想起される、前述の様々な特徴の組み合わせおよび部分的な組み合わせ、ならびに先行技術にはないそれらの変形形態および修正形態を含む。参照により本特許出願に組み込まれる文書は、本出願の不可分の部分と見なされるべきである。本明細書において明示的または黙示的になされる定義と参照文献の定義が矛盾する場合は、本明細書における定義が考慮されるべきである。
図1
図2
図3
図4