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特開2022-46792組織特異的発現のための改変U6プロモーターシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046792
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】組織特異的発現のための改変U6プロモーターシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20220315BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220315BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20220315BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220315BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20220315BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20220315BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N7/01
C12N15/864 100Z
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N15/863 Z
C12N15/86 Z
A61K31/7105
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K48/00
A61P21/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022005011
(22)【出願日】2022-01-17
(62)【分割の表示】P 2018551837の分割
【原出願日】2017-03-31
(31)【優先権主張番号】62/317,524
(32)【優先日】2016-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.プルロニック
3.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】515289842
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート アット ネイションワイド チルドレンズ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スコット クエントン ハーパー
(57)【要約】
【課題】組織特異的発現のための改変U6プロモーターシステムの提供。
【解決手段】本発明は、RNA干渉に基づく遺伝子療法のための、マイクロRNA(miRNA)を発現させるための組織特異的プロモーターシステムに関する。これらのシステムでは、miRNAは、遺伝子発現を阻害するか、またはマイクロRNAを用いて、天然のmiRNA発現を置換する。本発明は、有害な過負荷を回避するために、低レベルでのmiRNAの組織特異的発現のための改変U6プロモーターシステムを提供する。改変U6プロモーターシステムは、その効力を弱める突然変異を含むU6プロモーター配列を含む核酸分子である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年4月2日に出願された米国仮出願第62/317,524号の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、RNA干渉に基づく遺伝子療法のための、マイクロRNA(miRNA)を発現させるための組織特異的プロモーターシステムに関する。これらのシステムでは、miRNAは、遺伝子発現を阻害するか、またはマイクロRNAを用いて天然のmiRNA発現を置換する。
【0003】
配列表の参照による組み込み
本出願は、開示の別個の部分として、コンピュータ可読形式の配列表(ファイル名:50393A_SeqListing.txt、1,684,397バイト、ASCIIテキストファイル)を含み、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
RNA干渉(RNAi)は、様々な疾患の治療のために検討されている、真核細胞における遺伝子調節のメカニズムである。RNAiは、マイクロRNA(miRNA)によって媒介される遺伝子発現の転写後制御を表す。天然のmiRNAは、同種のメッセンジャーRNA(mRNA)の3’非翻訳領域と配列相同性及び塩基対を共有する、小さな(21~25個のヌクレオチド)、ノンコーディングRNAであるが、コード領域の調節も起こり得る。miRNAとmRNAとの間の相互作用は、標的mRNAを分解し、及び/またはmRNAの翻訳を妨げるように、細胞遺伝子サイレンシング機構を導く。RNAi経路は、Duan(Ed.),Muscle Gene Therapy,Springer Science+Business Media,LLC(2010)の第7章第7.3節に要約されている。
【0005】
天然のRNAi経路についての理解が深まるにつれて、研究者らは、疾患を治療するための標的遺伝子の発現の調節に用いるための人工miRNAを設計してきた。上記Duanの第7.4節に記載されているように、人工miRNAはDNA発現カセットから転写されることができる。標的遺伝子に特異的なmiRNA配列は、細胞中のmiRNAのプロセシングを導くために必要とされる配列と共に転写される。アデノ随伴ウイルスなどのウイルスベクターは、筋肉にmiRNAを送達するために使用されてきた[Fechner et al.,J.Mol.Med.,86:987-997(2008)]。
【0006】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムの長さは、約4.7kbであり、145ヌクレオチドの逆位末端反復配列(ITR)を2つ含む。AAVには、複数の血清型が存在する。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は、既知である。例えば、AAV-1の完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_002077に提供されており、AAV-2の完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_001401及びSrivastava et al.,J.Virol.,45:555-564{1983)に提供されており、AAV-3の完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_1829に提供されており、AAV-4の完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_001829に提供されており、AAV-5ゲノムは、GenBank登録番号AF085716に提供されており、AAV-6の完全ゲノムは、GenBank登録番号NC_00 1862に提供されており、AAV-7及びAAV-8ゲノムの少なくとも一部は、それぞれ、GenBank登録番号AX753246及びAX753249に提供されており、AAV-9ゲノムは、Gao et al.,J.Virol.,78:6381-6388(2004)に提供されており、AAV-10ゲノムは、Mol.Ther.,13(1):67-76(2006)に提供されており、AAV-11ゲノムは、Virology,330(2):375-383(2004)に提供されている。AAVrh.74血清型のクローニングは、Rodino-Klapac et al.,Journal of Translational Medicine 5,45(2007)に記載されている。AAV-B1血清型の単離は、Choudhury et al.,Mol.Therap.24(7):1247-57,2016に記載されている。ウイルスDNA複製(rep)、カプシド形成/パッケージング、及び宿主細胞染色体組み込みを導くシス作用配列が、AAV ITR内に含まれる。3つのAAVプロモーター(相対的なマップ位置についてp5、p19、及びp40と命名される)は、rep及びcap遺伝子をコードする2つのAAV内部オープンリーディングフレームの発現を駆動する。単一のAAVイントロンの差異的スプライシング(ヌクレオチド2107及び2227における)と相まって、2つのrepプロモーター(p5及びp19)により、rep遺伝子から4つのrepタンパク質(rep78、rep68、rep52、及びrep40)が生成される。Repタンパク質は、最終的にウイルスゲノムの複製に関与する複数の酵素特性を有する。cap遺伝子は、p40プロモーターから発現され、3つのカプシドタンパク質VP1、VP2、及びVP3をコードする。選択的スプライシング及び非コンセンサス翻訳開始部位は、3つの関連するカプシドタンパク質の生成を担う。単一のコンセンサスポリアデニル化部位は、AAVゲノムのマップ位置95に位置する。AAVの生活環及び遺伝学は、Muzyczka,Current
Topics in Microbiology and Immunology,158:97-129(1992)において総説されている。
【0007】
AAVは、例えば、遺伝子療法において、外来DNAを細胞に送達するためのベクターとしてAAVを魅力的なものにする特有の特徴を有する。培養中の細胞のAAV感染は非細胞変性であり、ヒト及び他の動物の自然感染は無症状性かつ無症候性である。さらに、AAVは多くの哺乳動物細胞に感染し、インビボで多くの異なる組織を標的とする可能性をもつ。さらに、AAVは、分裂細胞及び非分裂細胞に徐々に形質導入し、本質的にそれらの細胞寿命の間、転写的に活性な核エピソーム(染色体外因子)として存続することができる。AAVプロウイルスゲノムは、プラスミドにクローニングされたDNAとして挿入され、組換えゲノムの構築を実現可能にする。さらに、AAV複製及びゲノムカプシド形成を指示するシグナルがAAVゲノムのITR内に含まれるため、(複製及び構造カプシドタンパク質、rep-capをコードする)ゲノムの内部約4.3kbの一部または全てが外来DNAで置換され得る。AAVベクターを作製するために、rep及びcapタンパク質はトランスで提供されてもよい。AAVの別の重要な特徴は、それが極めて安定かつ丈夫なウイルスであるということである。AAVは、アデノウイルスを不活性化するために使用される条件(56℃~65℃で数時間)に容易に耐えるため、AAVの低温保存はそれほど重要ではない。AAVは、凍結乾燥することさえできる。最後に、AAVに感染した細胞は、重複感染に耐性を示さない。
【0008】
C型肝炎ウイルス感染、筋ジストロフィー、神経変性疾患、末梢神経障害、慢性心不全及び心筋梗塞後リモデリング、ならびに癌などの多くの疾患を治療するために、miRNA阻害及びmiRNA置換を含むmiRNAに基づく療法が用いられてもよい。さらに、miRNA指向性の遺伝子発現調節は、ベクターペイロードがタンパク質コード遺伝子である伝統的な遺伝子療法アプローチを改善し得る。全身送達されたAAVベクターは、肝臓に優先的に形質導入し、肝臓活性プロモーターが使用される場合、その器官において高レベルの導入遺伝子の発現をもたらす。本明細書に詳細に記載されるように、肝臓特異的プロモーターが使用される場合、肝臓特異的miR-122結合部位の挿入は、肝臓における導入遺伝子の発現を低下させる。
miRNA発現の過負荷は、骨格筋、肝臓、及び他の器官において潜在的に毒性である。したがって、遺伝子療法中のmiRNAの高発現の毒性を回避する手段としてmiRNA発現を指示する、より弱いプロモーターの開発が必要とされている。例えば、減弱化されたU6システムが、肝臓におけるC型肝炎ウイルス(HCV)についてのAAV8媒介性RNAi治療のために開発された。このシステムは現在、AAVを用いたRNAi治療の最初の臨床試験において試験されている。要約すると、この試験を裏付ける前臨床データは、野生型(WT)U6プロモーターによって産生されたshRNAがHCVを効果的に破壊したが、マウス及びサルにおいて肝細胞毒性も引き起こしたことを示した。WT U6プロモーターの重要な残基を変異させることは、HCV破壊の効力を維持しながら、U6転写を弱め、16倍少ないshRNAを生じることにより、これを軽減した(Suhy et al.,Mol.Ther.20:1737-49,2012,Safety
and Efficacy Study of Single Doses of TT034 in Patients with Chronic Hepatitis C,clinicaltrial.gov,July 8,2013)。この例では、標的器官は肝臓であった。本発明は、肝臓を回避することを追い求めたものであり、したがって、遺伝子療法に使用され得る減弱化された骨格筋特異的U6プロモーターシステムを提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Duan(Ed.),Muscle Gene Therapy,Springer Science+Business Media,LLC(2010)
【非特許文献2】Fechner et al.,J.Mol.Med.,86:987-997(2008)
【非特許文献3】Srivastava et al.,J.Virol.,45:555-564{1983)
【非特許文献4】Gao et al.,J.Virol.,78:6381-6388(2004)
【非特許文献5】Mol.Ther.,13(1):67-76(2006)
【非特許文献6】Virology,330(2):375-383(2004)
【非特許文献7】Rodino-Klapac et al.,Journal of Translational Medicine 5,45(2007)
【非特許文献8】Choudhury et al.,Mol.Therap.24(7):1247-57,2016
【非特許文献9】Muzyczka,Current Topics in Microbiology and Immunology,158:97-129(1992)
【非特許文献10】Suhy et al.,Mol.Ther.20:1737-49,2012
【非特許文献11】Safety and Efficacy Study of Single Doses of TT034 in Patients with Chronic Hepatitis C,clinicaltrial.gov,July 8,2013
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、有害な過負荷を回避するために、低レベルでのmiRNAの組織特異的発現のための改変U6プロモーターシステムを提供する。改変U6プロモーターシステムは、その効力を弱める突然変異を含むU6プロモーター配列を含む核酸分子である。さらに、miRNAペイロードは、miRNA成熟ガイド鎖内の様々な位置に配置された非標的化miRNA結合配列を含む。例えば、本発明の核酸分子は、近位配列エレメント内の置換を有する改変U6プロモーターと、各々肝臓及び心臓におけるmiRNAの発現を非標的化するmiR-122及びmiR-208結合部位を含むmiRNA成熟ガイド鎖と、を有する。
【0011】
概念実証研究では、肝特異的なmiR-122標的配列を、ルシフェラーゼまたはLacZレポーター遺伝子を有するAAVベクターに挿入した。これらのベクターでは、遍在的に活性のあるU6プロモーターを用いて、両方の遺伝子の転写を駆動した。miR-122部位を欠くAAVベクターは、マウス肝臓において極めて高いレベルのルシフェラーゼまたはLacZ発現をもたらしたが、それぞれのコード遺伝子中にmiR-122結合部位を有するベクターによって送達された場合、同じ遺伝子の転写は、それぞれ50倍及び70倍、軽減された。このようなシステムは、マイクロRNA発現ベクターに用いられていない(参照PMID:21150938)。
【0012】
本発明は、改変U6プロモーター配列、少なくとも1つの非標的配列を含むmiRNA成熟ガイド鎖、及び5’末端に5~6つのチミジンを含む核酸分子を提供する。本発明の核酸分子は、少なくとも2つの非標的配列、少なくとも3つの非標的配列、少なくとも4つの非標的配列、少なくとも5つの非標的配列、またはそれ以上を含む。組織特異的miRNA結合部位に加えて、DNA核酸配列は、5’末端に5つのチミジンを含むか、または5’末端に6つのチミジンを含む、RNAポリメラーゼIIIの転写終結シグナルを含む。RNAに転写されると、これらのチミジンはウラシルとして転写物に付加される。
【0013】
「非標的配列」は、組織において阻害されることが望まれる任意の組織特異的miRNAの結合部位である。例えば、本発明は、非標的配列が任意の天然miRNA、例えば、miR-122、miR-208、miR-1、miR-206、miR-133、、miR-29a、miR-29b、またはmiR-29cの結合部位である核酸配列を提供する。
【0014】
本発明の核酸分子は、減弱化された改変U6プロモーターを含む。例えば、改変U6プロモーター配列は、近位配列エレメント(PSE)領域または遠位配列エレメント(DSE)に少なくとも置換、挿入または欠失を含む。例えば、改変U6プロモーター配列は、PSE配列中のヌクレオチド-66のシトシンのチミジンへの置換、ヌクレオチド-57のシトシンのチミジンへの置換、及びヌクレオチド-52のチミジンのシトシンへの置換を含む。
【0015】
本発明の核酸分子は、目的の遺伝子の発現を阻害し得る任意のmiRNA成熟ガイド鎖を含む。例えば、核酸分子は、miDUX4、miRN-92、miRNA-17、miRNA-18a、miRNA-19a、miRNA-20a、miRNA-19b-1、mi-RNA-26a、miRNA-122、miRNA-126、miRNA-335、let-7a及びlet-7b、miRNA-34(miR-34a)、miRNA-10b、miRNA-208、miRNA-499、miRNA-195、miRNA-29a、miRNA-29b、またはmiRNA-29cのmiRNA成熟ガイド鎖を含む。核酸分子は、配列番号10~10912として示されるmiRNA成熟ガイド鎖のいずれかを含む。本発明の核酸分子は、配列番号1(miDUX4-1; mi405)または配列番号2(miDUX-4-2; mi1155)の核酸配列を有するmiDUX4の成熟ガイド鎖を含む。
【0016】
本発明の核酸分子は、mir450(配列番号10973)、mi1155mi70(配列番号8482)、mi180(配列番号8372)、mi181(配列番号8371)、mi182(配列番号8370)、mi185(配列番号8367)、mi186(配列番号8366)、mi187(配列番号8365)、mi333(配列番号8219)、mi334(配列番号8218)、mi400(配列番号8152)、mi405(配列番号8147)、mi407(配列番号8145)、mi1155(配列番号7397)、mi1156(配列番号7396)、mi1157(配列番号7395)、mi1308(配列番号7108)、mi1309(配列番号7107)、mi1310(配列番号7106)、mi1420(配列番号6633)、mi1422(配列番号6631)、mi1431(配列番号6622)、mi1434(配列番号6619)、mi1444(配列番号6609)、mi1445(配列番号6608)、mi1485(配列番号6568)、mi1492(配列番号6561)、mi1493(配列番号6560)、mi1519((配列番号10971)、またはmi1520(配列番号10972)のヌクレオチド配列を含むmiRNAの成熟ガイド鎖を含む。これらの配列は、mi405及びmi1155の成熟ガイド鎖と同様に折り畳まれる。したがって、本発明は、mir-208結合部位配列(配列番号5または配列番号66)及び/またはmir-122結合部位配列(配列番号6または配列番号67)が表1の配列に示されたものと同様の位置で上記の成熟ガイド鎖のいずれかのループに挿入されてもよい核酸分子を提供する。
【0017】
例示的な一実施形態では、本発明の核酸分子は、近位配列エレメント内に置換を有する改変U6プロモーターと、成熟ガイド鎖のループ内あるいは成熟ガイド鎖の5’または3’末端にmiR-122及び/またはmiR-208結合部位を有するmiDUX4の成熟ガイド鎖と、5~6つのチミジンと、を有する。本発明の例示的な核酸分子は、miDUX4のmiRNA成熟ガイド鎖と、成熟ガイド鎖のループ内あるいは成熟ガイド鎖の5’または3’末端に挿入された少なくとも1つの非標的配列、例えば、miR-122(配列番号5)またはmiR-208(配列番号6)結合部位、例えば、配列番号10913~10968のいずれか1つとして示される核酸配列と、を含む。
【0018】
本発明は、配列番号1、2、または10913~10968のいずれか1つの核酸配列を含む核酸分子を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、本発明の核酸分子のいずれかを含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を提供する。AAVは、任意の血清型、例えば、AAV-B1、AAVrh.74、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、及びAAV-13であり得る。偽型rAAVの産生は、例えば、WO01/83692に開示されている。他の種類のrAAV変異体、例えば、カプシド変異を有するrAAVもまた企図される。例えば、Marsic et al.,Molecular Therapy,22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。本発明はまた、本発明のAAVのいずれかを含む組成物を提供する。さらに、本発明は、自己相補的AAVベクターである組換えAAVベクターを提供する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、本発明の核酸分子のいずれかを含むベクターと細胞とを接触させることを含む、細胞における遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。例えば、本発明は、本発明の核酸分子のいずれかを含む組換えAAVと細胞とを接触させることを含む、要求における遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。本発明の他の実施形態は、本発明の核酸分子を送達するために、他のベクターまたはプラスミドを、例えば、本発明の核酸分子を送達するために、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ウマ関連ウイルス、アルファウイルス、ポックスイルス、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、ワクシニアウイルスを、利用する。
【0021】
本発明は、細胞におけるDUX4遺伝子の発現を阻害する方法であって、本発明の任意の核酸分子を含む組換えAAVまたは任意の組成物とその細胞を接触させることを含む、方法も提供する。例えば、本発明は、近位配列エレメント内に置換を有する改変U6プロモーターと、成熟ガイド鎖のループ内あるいは成熟ガイド鎖の5’または3’末端に挿入されたmiR-122及び/またはmiR-208結合部位を有するmiDUX4の成熟ガイド鎖と、5~6つのチミジンとを含む本発明の核酸分子を用いて実施されるか、あるいは本発明の核酸分子は、配列番号10913~10968のいずれか1つの核酸配列を含む。
【0022】
本発明は、細胞におけるDUX4遺伝子の発現を阻害するための医薬の調製のための、本発明の任意の核酸分子を含む組換えAAVまたは本発明の組成物の使用を提供する。医薬を調製するために利用されるAAVまたは組成物は、近位配列エレメント内に置換を有する改変U6プロモーターと、成熟ガイド鎖のループ内あるいは成熟ガイド鎖の5’または3’末端に挿入されたmiR-122及び/またはmiR-208結合部位を有するmiDUX4の成熟ガイド鎖と、5~6つのチミジンとを含む本発明の核酸分子を含むか、あるいは本発明の核酸分子は、配列番号10913~10968のいずれか1つの核酸配列を含む。
【0023】
本発明はまた、細胞におけるDUX4遺伝子の発現を阻害するための、本発明の任意の核酸分子を含む組換えAAVまたは本発明の組成物の使用のための組成物を提供する。医薬を調製するために利用されるAAVまたは組成物は、近位配列エレメント内に置換を有する改変U6プロモーターと、成熟ガイド鎖のループ内あるいは成熟ガイド鎖の5’または3’末端に挿入されたmiR-122及び/またはmiR-208結合部位を有するmiDUX4の成熟ガイド鎖と、5~6つのチミジンとを含む本発明の核酸分子を含むか、あるいは本発明の核酸分子は、配列番号10913~10968のいずれか1つの核酸配列を含む。
【0024】
本発明はさらに、DUX4 miRNAをコードするDNAをそれを必要とする動物の骨格筋に送達させる方法を提供し、この方法は、配列番号10913~10968のいずれか1つの核酸配列を含む組換えAAVを動物に投与することを含む。
【0025】
本発明はまた、DUX4 miDNAをコードする核酸分子をそれを必要とする動物の骨格筋に送達させるための、本発明の核酸配列を含む組換えAAVの使用を提供する。本発明は、DUX4 miDNAをコードする核酸分子をそれを必要とする動物の骨格筋に送達させるための、配列番号10913~10968のいずれか1つの核酸配列を含む組成物を提供する。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、本発明の任意の核酸分子または任意の組成物を含む組換えアデノ随伴ウイルスを投与することを含む、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーを治療する方法を提供する。例えば、本方法は、近位配列エレメント内の置換を有する改変U6プロモーターと、成熟ガイド鎖のループ内あるいは成熟ガイド鎖の5’または3’末端に挿入されたmiR-122及び/またはmiR-208結合部位を有するmiDUX4の成熟ガイド鎖と、及び5~6つのチミジンとを含む本発明の核酸分子か、あるいは配列番号10913~10968のいずれか1つの核酸配列を有する核酸分子を用いて、実施される。
【0027】
本発明の方法のいずれかにおいて、組換えAAVは、筋肉内注射、経皮輸送、または血流への注射によって投与される
【0028】
本発明は、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーを治療するための医薬の調製のための、本発明の任意の核酸分子を含む組換えAAVまたは本発明の組成物の使用を提供する。医薬を調製するために利用されるAAVまたは組成物は、近位配列エレメント内に置換を有する改変U6プロモーターと、成熟ガイド鎖のループ内あるいは成熟ガイド鎖の5’または3’末端に挿入されたmiR-122及び/またはmiR-208結合部位を有するmiDUX4の成熟ガイド鎖と、5~6つのチミジンとを含む本発明の核酸分子を含むか、あるいは配列番号10913~10968のいずれか1つの核酸配列を有する核酸分子を含む。
【0029】
本発明の用途のいずれにおいても、医薬は、筋肉内注射、経皮輸送、または血流への注射による投与のために製剤化される。
【0030】
本発明は、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーを治療するための、本発明の任意の核酸分子を含む組換えAAVまたは本発明の組成物の使用も提供する。医薬を調製するために利用されるAAVまたは組成物は、近位配列エレメント内に置換を有する改変U6プロモーターと、成熟ガイド鎖のループ内あるいは成熟ガイド鎖の5’または3’末端に挿入されたmiR-122及び/またはmiR-208結合部位を有するmiDUX4の成熟ガイド鎖と、5~6つのチミジンとを含む本発明の核酸分子を含むか、あるいは配列番号10913~10968のいずれか1つの核酸配列を有する核酸分子を含む。本発明の組成物は、筋肉内注射、経皮輸送、または血流への注射による投与のために製剤化される。
(発明を実施するための形態)
【0031】
本発明は、有害な過負荷を回避するために、低レベルでのmiRNAの組織特異的な特異的発現のための改変U6プロモーターシステムを提供する。改変U6プロモーターシステムは、改変U6プロモーター配列、成熟ガイド鎖配列内に挿入された非標的配列を有するmiRNAの成熟ガイド鎖を含む核酸分子である。例えば、肝臓特異的miR-122の結合部位及び/または心臓特異的miR-208の結合部位は、miRNAの成熟ガイド鎖のループ内あるいはmiRNAの成熟ガイド鎖の5’または3’末端に挿入されており、肝臓及び心臓においてmiRNAの発現を非標的化する。
【0032】
改変U6プロモーター
本発明は、改変U6プロモーターシステムを提供し、これは引き続き標的遺伝子のmiRNA誘導阻害をもたらすか、あるいは標的遺伝子の阻害をもたらし得るmiRNAの置換をもたらすか、あるいは転写下にあるmiRNAの置換をもたらしてもよい。野生型U6プロモーター(U6-1)は、配列番号3として示される。一方、PSE領域内に置換を有する減弱化されたU6プロモーターは、図1に示されるように配列番号4として示される。
【0033】
改変U6プロモーターシステムは、野生型U6プロモーター配列内に少なくとも1つの置換、少なくとも1つの挿入、少なくとも1つの欠失、またはそれらの組み合わせを含む改変U6プロモーターを含む核酸分子であり、この改変はプロモーター活性を弱めるものである。改変は、遠位配列エレメント(DSE)、近位配列エレメント(PSE)、またはTATAエレメントなどの1つまたは複数のエレメント内にあってもよい。例えば、改変は、PSEヌクレオチド配列における、置換、挿入、または欠失である。例示的な改変は、野生型U6-1プロモーターのPSEの、U6-2プロモーター、U6-7プロモーター、U6-8プロモーター、またはU6-9プロモーターのPSEヌクレオチド配列での置換であってもよい
【0034】
本発明の一実施形態では、核酸分子は、PSEまたはDSEヌクレオチド配列がプロモーターの活性を減弱化する置換を有するU6ヌクレオチド配列を含む。例えば、野生型U6プロモーター配列(配列番号3)は、PSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~10の置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~9つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~8つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~7つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~6つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~5つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~4つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~3つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に5~10の置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に5~9つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に5~8つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に5~7つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に5~6つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に4~8つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に4~6つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に3~6つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に3~9つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に2~4つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に2~3つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に3~4つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に3~5つの置換を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に4~5つの置換を、含む。一実施形態では、核酸分子は、PSEまたはDSEヌクレオチド配列内に、1つの置換、2つの置換、または3つの置換、4つの置換、5つの置換、6つの置換、7つの置換、8つの置換、9つの置換、または10の置換を含む。
【0035】
別の実施形態では、野生型U6プロモーター配列(配列番号3)は、PSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~10の挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~9つの挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~8つの挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~7つの挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~6つの挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~5つの挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~4つの挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~3つの挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に5~10の挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に4~8つの挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に6~9つの挿入を、PSEまたはDSEヌクレオチド配列内に2~4つの挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に2~3つの挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に3~4つの挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に3~5つの挿入を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に4~5つの挿入を、含む。一実施形態では、核酸分子は、PSEまたはDSEヌクレオチド配列内に、1つの挿入、2つの挿入、3つの挿入、4つの挿入、5つの挿入、6つの挿入、7つの挿入、8つの挿入、9つの挿入、または10の挿入を含む。
【0036】
別の実施形態では、野生型U6プロモーター配列(配列番号3)は、PSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~10の欠失を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~9つの欠失を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~8つの欠失を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~7つの欠失を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~6つの欠失を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~5つの欠失を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~4つの欠失を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に1~3つの欠失を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に2~4つの欠失を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に2~3つの欠失を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に3~4つの欠失を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に3~5つの欠失を、あるいはPSEまたはDSEヌクレオチド配列内に4~5つの欠失を、含む。一実施形態では、核酸分子は、PSEまたはDSEヌクレオチド配列内に、1つの欠失、2つの欠失、または3つの欠失、4つの欠失、5つの欠失、6つの欠失、7つの欠失、8つの欠失、9つの欠失、または10の欠失を含む。
【0037】
非標的miRNA配列発現
本発明のプロモーターシステムは、miRNAを非標的化するための結合部位が、miRNAの成熟ガイド鎖のループ内あるいはmiRNAの成熟ガイド鎖の5’または3’末端に挿入されている、miRNAの成熟ガイド鎖を含む核酸分子である。例えば、骨格筋におけるmiRNA配列の発現を促進し、肝臓及び心臓組織におけるmiRNAの発現を非標的化するために、核酸分子は、肝臓特異的miR-122の結合部位及び/または心臓特異的miR-208の結合部位が、成熟ガイド鎖のループ内またはmiRNAの成熟ガイド鎖の5’もしくは3’末端に挿入されている、miRNAの成熟ガイド鎖を含む。miRNA-122の結合部位のヌクレオチド配列は、配列番号5として示され、miRNA-208の結合部位のヌクレオチド配列は、配列番号6として示される。
【0038】
骨格筋におけるmiRNAの発現の非標的化が所望される場合、miR-1、miR-206、またはmiR-133の結合部位は、miRNAの成熟ガイド鎖のループ内に、あるいはmiRNAの成熟ガイド鎖の5’または3’末端に挿入される。
【0039】
骨格筋、肝臓、及び/または心臓以外の組織における発現の非標的化が所望される場合、異なるmiRNA転写物についての結合部位が、miRNAの成熟ガイド鎖内に挿入されてもよい。例えば、miR-142結合部位は、造血細胞における転写発現を非標的化するために使用されてもよい。miR-29a、miR-29b、及び/またはmiR-29cの結合部位は、正常組織におけるmiRNA発現を非標的化し、腫瘍組織におけるmiRNA発現を標的化するために使用されてもよい。
【0040】
組織中のmiRNA発現を非標的化するために使用されてもよいmiRNA結合配列は、本明細書では集合的に「非標的配列」と称される。本発明の核酸配列は、少なくとも1コピーの非標的配列、または少なくとも2コピーの非標的配列、または少なくとも3コピーの非標的配列、または少なくとも4コピーの非標的配列、または少なくとも5コピーの非標的配列を含む。本発明の核酸分子は、1~5コピーの非標的配列、または1~4コピーの非標的配列、または1~3コピーの非標的配列、または1~2コピーの非標的配列、または2~5コピーの非標的配列、2~4コピーの非標的配列、または2~3コピーの非標的配列、または3~5コピーの非標的配列、または3~4コピーの非標的配列、または4~5コピーの非標的配列を含む。
【0041】
非標的配列は、miRNAの成熟ガイド鎖のループ内に、あるいはmiRNAの成熟ガイド鎖の5’または3’末端に挿入されてもよい。非標的配列の挿入のための例示的な位置は、図4に示され、miDUX4の成熟ガイド鎖(mi405(配列番号10973)またはmi1155(配列番号10974)、及びmiR-122結合部位(配列番号5または配列番号66)あるいはmiR-208結合部位(配列番号6または配列番号67)を含む例示的な核酸は、以下の表1に提供される。
【0042】
ヒト及びマウスゲノムには、2つのmiR-208配列(miR-208a及びmiR-208b)が存在する。以下の例示的な配列において、5U(pol IIIプロモーター終結配列)の実行を回避するために、結合部位の単一塩基を「c」(太小文字の「c」)に突然変異させた。この変化はmir-208bについて完璧な結合部位を作り出すために含まれたが、mir-208aとはミスマッチを有し得る。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0043】
mi70(配列番号8482)、mi180(配列番号8372)、mi181(配列番号8371)、mi182(配列番号8370)、mi185(配列番号8367)、mi186(配列番号8366)、mi187(配列番号8365)、mi333(配列番号8219)、mi334(配列番号8218)、mi400(配列番号8152)、mi405(配列番号8147)、mi407(配列番号8145)、mi1155(配列番号7397)、mi1156(配列番号7396)、mi1157(配列番号7395)、mi1308(配列番号7108)、mi1309(配列番号7107)、mi1310(配列番号7106)、mi1420(配列番号6633)、mi1422(配列番号6631)、mi1431(配列番号6622)、mi1434(配列番号6619)、mi1444(配列番号6609)、mi1445(配列番号6608)、mi1485(配列番号6568)、mi1492(配列番号6561)、mi1493(配列番号6560)、mi1519((配列番号10971)、またはmi1520(配列番号10972)のヌクレオチド配列を含む、miRNAの成熟ガイド鎖。これらの配列は、mir405及びmir1155の成熟ガイド鎖と同様に折り畳まれ、mi405及びmi1155の成熟ガイド鎖と同様に折り畳まれる。したがって、本発明は、mir-208結合部位配列(配列番号5または配列番号66)、及び/またはmir-122結合部位配列(配列番号6または配列番号67)が表1の配列に示されたものと同様の位置で上記の成熟ガイド鎖のいずれかのループに挿入されてもよい核酸分子を提供する。
【0044】
目的のmiRNA
本発明の核酸分子は、組織特異的発現を有することが所望される任意のmiRNA転写配列の成熟ガイド鎖の配列を含み得る。例えば、一実施形態では、DUX4 miRNAの骨格発現が企図される。例示的なDUX4 miRNA配列は、国際特許出願第PCT/US2012/047999号(WO 2013/016352)及び米国特許公開第US2012/20225034号に記載されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
miDUX4の2つの例は、miDUX4-1(miDux405、配列番号1)及びmiDUX4-2(miDux1155、配列番号2)である。DUX4 miRNA、及びmiR-122、またはmiR-208のいずれかの結合部位を含む例示的なヌクレオチド配列は、表1及び配列番号10913~10968に提供される。
【0046】
以下のmiRNA、miR-122、miR-124、miR-142、miR-155、miR-21、miR-17-92、miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-20a、miR-19b-1、miR-26a、miR-126、miR-335、let-7ファミリー:let-7a及びlet-7b、miR-34(miR-34a)、miR-10b、miR-208、miR-499、miR-195、miR-29a、miR-29b、及びmiR-29cのいずれかは、本発明の核酸分子を用いて、発現されてもよい。これらのmiRNAのいずれも、所望の組織特異性及び所望の非標的化に応じて、異なる非標的配列と共に使用されてもよい。
【0047】
AAV
本発明の組換えAAVゲノムは、本発明の核酸分子、及び核酸分子に隣接する1つ以上のAAV ITRを含む。rAAVゲノム中のAAV DNAは、任意のAAV血清型に由来してもよく、その組換えウイルスは、AAV血清型、AAV-B1、AAVrh.74、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、及びAAV-13を含むが、これらに限定されない。偽型rAAVの産生は、例えば、WO01/83692に開示されている。他の種類のrAAV変異体、例えば、カプシド変異を有するrAAVもまた企図される。例えば、Marsic et al.,Molecular Therapy,22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。上記の背景技術の項で述べたように、種々のAAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は、当該技術分野で既知である。骨格筋特異的発現を促進するために、AAV1、AAV5、AAV6、AAV8、またはAAV9が使用されてもよい。
【0048】
自己相補的AAV(scAAV)ベクターもまた、本発明における使用のために企図される。scAAVベクターは、二量体としてパッケージングされた145塩基対のITRの2コピーに加えて2200塩基対の独特な導入遺伝子配列を含む約2500塩基対にベクターサイズを減少させることによって、作製される。scAAVは、発現のために二本鎖DNA鋳型へと再び折り畳まれる能力を有する。McCarthy,Mol.Therap.16(10):1648-1656,2008。
【0049】
本発明のDNAプラスミドは、本発明のrAAVゲノムを含む。DNAプラスミドは、感染性ウイルス粒子中にrAAVゲノムを構築するために、AAVのヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、E1欠損アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)による感染を許容できる細胞に導入される。パッケージングされるべきAAVゲノム、rep及びcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能が細胞に提供されるrAAV粒子を産生する技術は、当該技術分野で標準的である。rAAVの産生は、以下の構成成分、rAAVゲノム、rAAVゲノムから分離された(すなわち、その中には存在しない)AAVのrep及びcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能が単一細胞(本明細書中、パッケージング細胞と称される)内に存在することを必要とする。AAVのrep及びcap遺伝子は、組換えウイルスが由来し得る任意のAAV血清型に由来してもよく、AAV血清型AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、及びAAV-13を含むがこれらに限定されない、rAAVゲノムITRとは異なるAAV血清型に由来してもよい。偽型rAAVの産生は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO 01/83692に開示されている。
【0050】
パッケージング細胞を作製する方法は、AAV粒子産生に必要な全ての構成成分を安定に発現する細胞株を作製することである。例えば、AAVのrep及びcap遺伝子を欠くrAAVゲノム、rAAVゲノムから分離されたAAVのrep及びcap遺伝子、ならびにネオマイシン耐性遺伝子等の選択可能なマーカーを含むプラスミド(または複数のプラスミド)が、細胞のゲノムに組み込まれる。AAVゲノムは、GCテーリング(Samulski et al.,1982,Proc.Natl.Acad.S6.USA,79:2077-2081)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含む合成リンカーの付加(Laughlin et al.,1983,Gene,23:65-73)、または直接的な平滑末端ライゲーション(Senapathy & Carter,1984,J.Biol.Chem.,259:4661-4666)などの方法によって、バクテリアプラスミドに導入されている。次いで、パッケージング細胞株を、アデノウイルス等のヘルパーウイルスに感染させる。この方法の利点は、細胞が選択可能であり、rAAVの大規模な産生に好適であることである。好適な方法の他の例は、プラスミドではなくアデノウイルスまたはバキュロウイルスを用いて、rAAVゲノムならびに/またはrep及びcap遺伝子をパッケージング細胞内に導入する。
【0051】
rAAV産生の一般原則は、例えば、Carter,1992,Current Opinions in Biotechnology,1533-539、及びMuzyczka,1992,Curr.Topics in Microbial.and Immunol.,158:97-129)において総説されている。種々のアプローチが、Ratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072(1984)、Hermonat et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466(1984)、Tratschin et al.,Mo1.Cell.Biol.5:3251(1985)、McLaughlin et al.,J.Virol.,62:1963(1988)、及びLebkowski et al.,1988 Mol.Cell.Biol.,7:349(1988).Samulski
et al.(1989,J.Virol.,63:3822-3828)、米国特許第5,173,414号、WO 95/13365及び対応する米国特許第5,658,776号、WO 95/13392、WO 96/17947、PCT/US98/18600、WO 97/09441(PCT/US96/14423)、WO 97/08298(PCT/US96/13872)、WO 97/21825(PCT/US96/20777)、WO 97/06243(PCT/FR96/01064)、WO 99/11764、Perrin et al.(1995)Vaccine 13:1244-1250、Paul et al.(1993)Human Gene Therapy 4:609-615、Clark et al.(1996)Gene Therapy 3:1124-1132、米国特許第5,786,211号、同第5,871,982号、ならびに同第6,258,595号に記載されている。上記の文献は、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれ、特にrAAV産生に関連する文献のこれらのセクションが特に強調される。
【0052】
したがって、本発明は、感染性rAAVを産生するパッケージング細胞を提供する。一実施形態では、パッケージング細胞は、HeLa細胞、293細胞、及びPerC.6細胞(同種の293株)等の、安定して形質転換された癌細胞であってもよい。別の実施形態では、パッケージング細胞は、形質転換された癌細胞ではない細胞、例えば、低継代293細胞(アデノウイルスのE1で形質転換されたヒト胎児腎細胞)、MRC-5細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、WI-38細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、Vero細胞(サル腎細胞)、及びFRhL-2細胞(アカゲザル肺細胞)である。
【0053】
本発明の組換えAAV(すなわち、感染性カプシド化rAAV粒子)は、rAAVゲノムを含む。実施形態には、DUX4 miRNA hDux.mi405をコードする(配列番号1に示されるDNAによりコードされる)ゲノムを含む「AAV.miDUX4.405」と命名されたrAAV、及びDUX4 miRNA hDux.mi1155をコードする(配列番号2に示されるDNAによりコードされる)ゲノムを含む「AAV.miDUX4.1155」と命名されたrAAVが含まれるが、これらに限定されない。例示的な実施形態において、両方のrAAVのゲノムは、AAV rep及びcap DNAを欠いており、すなわち、ゲノムのITRの間にAAV repまたはcap DNAは存在しない。本発明の核酸分子を含むように構築されてもよいrAAVの例は、国際特許出願第PCT/US2012/047999号(WO 2013/016352)に示されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
rAAVは、当該技術分野における標準的な方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィーまたは塩化セシウム勾配によって精製されてもよい。ヘルパーウイルスからrAAVベクターを精製する方法は、当該分野で既知であり、例えば、Clark et al.,Hum.Gene Ther.,10(6):1031-1039(1999),Schenpp and Clark,Methods Mol.Med.,69 427-443(2002)、米国特許第6,566,118号、及びWO98/09657に記載されている。
【0055】
別の実施形態において、本発明は、本発明のrAAVを含む組成物を企図する。本発明の組成物は、薬学的に許容される担体中にrAAVを含む。組成物はまた、希釈剤及びアジュバント等の他の成分を含んでもよい。許容される担体、希釈剤、及びアジュバントは、レシピエントにとって非毒性であり、好ましくは、用いられる投与量及び濃度で不活性であり、リン酸塩、クエン酸塩、もしくは他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸等の抗酸化剤;低分子量ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジン等のアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトールもしくはソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/またはTween、プルロニック、もしくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0056】
本発明の方法において投与されるrAAVの力価は、例えば、特定のrAAV、投与様式、治療目標、個体、及び標的とされる細胞型(複数可)に依存して異なり、当該技術分野における標準的な方法によって決定され得る。rAAVの力価は、1ml当たり、約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×1010、約1×1011、約1×1012、1×1013~約1×1014、またはそれ以上のDNase耐性粒子(DRP)の範囲であってもよい。投与量は、ウイルスゲノム(vg)の単位で表されてもよい。
【0057】
インビボまたはインビトロで、rAAVを用いて標的細胞に形質導入する方法が、本発明によって企図される。インビボ方法は、本発明のrAAVを含む組成物の有効用量、または有効な複数用量を、それを必要とする動物(ヒトを含む)に投与する工程を含む。用量が障害/疾患の発症前に投与される場合、その投与は予防的である。用量が障害/疾患の発症後に投与される場合、投与は治療的である。本発明の実施形態では、有効用量は、治療される障害/疾患状態に関連する少なくとも1つの症状を緩和(排除または軽減)する用量であり、疾患/疾病状態への進行を遅らせ、または予防する用量であり、疾患/疾病状態の進行を遅らせ、または予防する用量であり、疾患の範囲を縮小する用量であり、疾患の寛解(部分的または完全な)をもたらす用量であり、及び/または生存を延長させる用量である。本発明の方法を用いた予防または治療のために企図される疾患の例は、FSHDである。
【0058】
併用療法もまた、本発明によって企図される。本明細書で使用される組み合わせには、同時治療及び逐次治療の両方が含まれる。本発明の方法と標準的な医療処置(例えば、コルチコステロイド)との組み合わせが、新規療法との組み合わせと同様に、具体的に企図される。
【0059】
有効用量の組成物の投与は、筋肉内、非経口、静脈内、経口、頬側、経鼻、経肺、頭蓋内、骨内、眼内、直腸、または膣を含むが、これらに限定されない当該技術分野において標準的な経路によるものであり得る。本発明のrAAVのAAV成分(特に、AAV ITR及びカプシドタンパク質)の投与経路(複数可)及び血清型(複数可)は、治療される感染及び/もしくは疾患の状態、ならびにDUX4 miRNAを発現する標的細胞/組織(複数可)を考慮して、当業者によって選択及び/または適合され得る。
【0060】
本発明は、本発明の組換えAAV及び組成物の有効量での局所投与及び全身投与を提供する。例えば、全身投与は、体全体が影響を受けるように循環系への投与である。全身投与には、胃腸管を通じた吸収等の経腸投与、及び注射、注入または移植による非経口投与が含まれる。
【0061】
特に、本発明のrAAVの実際の投与は、rAAV組換えベクターを動物の標的組織に輸送し得る任意の物理的方法を使用することによって達成されてもよい。本発明による投与には、筋肉、血流、及び/または肝臓への直接の注射が含まれるが、これらに限定されない。リン酸緩衝生理食塩水にrAAVを単に再懸濁することは、筋組織発現に有用なビヒクルを提供するのに十分であることが実証されており、rAAVと同時投与することができる担体または他の構成成分について既知の制限はない(ただし、DNAを分解する組成物は、rAAVを用いる通常の様式では回避されるべきである)。rAAVのカプシドタンパク質は、rAAVが、筋肉などの目的の特定の標的組織を標的とするように改変されてもよい。例えば、参照によりその開示内容が本明細書に組み込まれる、WO 02/053703を参照されたい。医薬組成物は、注射可能な製剤として、または経皮輸送によって筋肉に送達される局所製剤として調製されることができる。筋肉内注射及び経皮的輸送の両方のための多数の製剤が既に開発されており、本発明の実施に使用することができる。rAAVは、投与及び取り扱いを容易にするために、任意の薬学的に許容される担体とともに使用することができる。
【0062】
筋肉内注射の目的で、ゴマ油もしくはピーナッツ油等のアジュバント中、または水性プロピレングリコール中の溶液、ならびに滅菌水溶液が用いられ得る。そのような水溶液は、必要に応じて緩衝化することができ、液体希釈剤は、最初に生理食塩水またはグルコースで等張にすることができる。遊離酸(DNAが酸性リン酸基を含む)または薬理学的に許容される塩としてのrAAVの溶液は、ヒドロキシプロピルセルロース等の界面活性剤と水中で好適に混合して調製することができる。rAAVの分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、ならびに油中で調製することができる。通常の保存及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含む。これに関連して、用いられる滅菌水性媒体は全て、当業者に周知の標準的な技術によって容易に得ることができる。
【0063】
注射用途に好適な薬学的形態には、滅菌水溶液または分散液、及び滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、その形態は無菌でなければならず、容易に注射可能となる程度に流体でなければならない。それは製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合物、及び植物油を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合は必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用により、注射用組成物の長期吸収をもたらすことができる。
【0064】
滅菌注射溶液は、必要に応じて、必要な量のrAAVを、上記に列挙した種々の他の成分とともに適切な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌することにより調製される。一般に、分散液は、滅菌された活性成分を、塩基性分散媒体及び上記に列挙したものから必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製の方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、予め滅菌濾過した活性成分及び任意の追加の所望の成分の溶液からそれらの粉末が得られる。
【0065】
rAAVによる形質導入は、インビトロで行うこともできる。一実施形態では、所望の標的筋細胞が対象から取り出され、rAAVで形質導入され、対象に再導入される。代替的に、それらの細胞が対象において不適切な免疫応答を惹起しない場合、同一遺伝子型または異種の筋細胞を使用することができる。
【0066】
形質導入、及び形質導入された細胞を対象に再導入するための好適な方法は、当該技術分野において既知である。一実施形態では、例えば、適切な培地中で、rAAVを筋細胞と組み合わせ、サザンブロット及び/もしくはPCR等の従来の技術を用いて、または選択可能なマーカーを用いて、目的のDNAを有する細胞についてスクリーニングすることにより、細胞がインビトロで形質導入され得る。形質導入された細胞は、次いで、薬学的組成物中に製剤化されることができ、その組成物は、種々の技術によって、例えば、筋肉内、静脈内、皮下、及び腹腔内注射によって、または、例えば、カテーテルを使用して平滑筋及び心筋内に注射することによって、対象に導入することができる。
【0067】
本発明のrAAVによる細胞の形質導入は、DUX4 miRNAの持続的な発現をもたらす。したがって、本発明は、DUX4 miRNAを発現するrAAVを動物、好ましくはヒトに投与/送達する方法を提供する。これらの方法には、本発明の1つ以上のrAAVで組織(筋肉等の組織、肝臓及び脳等の器官、ならびに唾液腺等の腺を含むが、これらに限定されない)に形質導入することが含まれる。形質導入は、組織特異的制御エレメントを含む遺伝子カセットを用いて行われてもよい。例えば、本発明の一実施形態は、アクチン及びミオシン遺伝子ファミリーに由来するもの、例えば、myoD遺伝子ファミリーなどに由来するもの[Weintraub et al.,Science,251:761-766(1991)を参照のこと]、筋細胞特異的エンハンサー結合因子MEF-2に由来するもの[Cserjesi and Olson、Mol Cell Biol 11:4854-4862(1991)]、ヒト骨格アクチン遺伝子[Muscat et al.,Mol Cell Biol、7:4089-4099(1987)]、心筋アクチン遺伝子、筋クレアチンキナーゼ配列エレメント[Johnson et al.,Mol Cell Biol、9:3393-3399(1989)を参照のこと]、及びネズミクレアチンキナーゼエンハンサー(mCK)エレメントに由来する制御エレメント、骨格速筋トロポニンC遺伝子、遅筋心筋トロポニンC遺伝子、及び遅筋トロポニンI遺伝子:低酸素誘導性核因子(Semenza et al.,Proc Natl Acad Sci USA、88:5680-5684(1991))、グルココルチコイド応答エレメント(GRE)を含むステロイド誘導性エレメント及びプロモーター(Mader and White,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5603-5607(1993)を参照のこと)に由来する制御エレメント、ならびに他の制御エレメントを含むが、これに限定されない、筋肉特異的制御エレメントにより導かれる筋細胞及び筋組織に形質導入する方法を提供する。
【0068】
筋組織は、生命維持に不可欠な器官ではなく、かつ到達しやすいため、インビボでのDNA送達の魅力的な標的である。本発明は、形質導入された筋線維からのmiRNAの持続的な発現を企図する。
【0069】
「筋細胞」または「筋組織」とは、任意の種類の筋肉(例えば、消化管、膀胱、血管、または心組織からの骨格筋及び平滑筋)由来の細胞または細胞群を意味する。筋芽細胞、筋細胞、筋管、心筋細胞、及び心筋芽細胞等の、上記のような筋細胞は、分化または未分化であり得る。
【0070】
「形質導入」という用語は、レシピエント細胞によるDUX4 miRNAの発現をもたらす、本発明の複製欠損rAAVを介した、インビボまたはインビトロのいずれかでの、レシピエント細胞へのDUX4 miRNAの投与/送達を意味するように使用される。
【0071】
したがって、本発明は、DUX4 miRNAをコードするrAAVの有効用量(または本質的に同時に投与される用量、もしくは間隔をあけて投与される用量)を、それを必要とする患者に投与する方法を提供する。
【0072】
DUX4及び顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
筋ジストロフィー(MD)は、遺伝性疾患群である。この群は、運動及び呼吸を制御する骨格筋の進行性の衰弱及び変性によって特徴付けられる。いくつかの形態のMDは幼年期または小児期に発症するが、中年以降まで発症しないものもある。この障害は、筋力の低下(いくつかの形態のMDは心筋にも影響を及ぼす)の分布及び程度、発病年齢、進行速度、ならびに遺伝パターンに関して異なる。
【0073】
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)は、顔、肩、及び四肢の筋肉の進行性及び非対称性の衰弱を特徴とする、複合常染色体優性遺伝疾患である。症状は、成人期に典型的に起こり、ほとんどの患者は30才までに臨床的特徴を示す。患者の約5%が乳幼児または若年者として症状を発症し、彼らは概してより重症である。臨床症状は、軽度(ある程度限定的な筋力低下)から重度(車椅子依存)まで様々であり得る。歴史的に、FSHDは、3番目に一般的なMDに分類され、全世界で2万人あたり1人に発症している。しかしながら、最近のデータは、FSHDがヨーロッパで最も一般的なMDであることを示し、世界的な発生率が8,333人あたり1人にもなり得ることを示唆している。
【0074】
典型的なFSHDの症例(FSHD1A、これまでFSHDと称されてきた)は、ヒト染色体4q35上の3.3キロベース(kb)のD4Z4反復配列のコピー数を減少させるヘテロ接合性染色体欠失に関連している。簡潔に言えば、正常な個体は、両方の4q35対立遺伝子上に11~100個の縦列反復D4Z4のコピーを有するのに対し、FSHD患者は、1つの正常な対立遺伝子と、1~10個の反復配列を含む1つの収縮した対立遺伝子とを有する。加えて、FSHDに関連するD4Z4の収縮は、特定の疾患許容性染色体4q35バックグラウンド(4qAと呼ばれる)で起こらなければならない。重要なことに、FSHD関連欠失の結果として、遺伝子が完全に失われるか、または構造的に変異することはない。代わりに、FSHDに関連する遺伝的変化は、筋肉を損傷する毒性DUX4遺伝子の発現を引き起こす。FSHD2(FSHD1Bとしても知られている)は、FSHD1と表現型的に同一であり、DUX4の発現と関連し、4qA染色体バックグラウンドを必要とする。FSHD2は、D4Z4反復配列の収縮には関連していないが、代わりに、通常4qAでDUX4遺伝子座の抑制に関与するクロマチン調節因子であるSMCHD1遺伝子の突然変異によって引き起こされる。突然変異したSMCHD1タンパク質は、ヘテロクロマチンを4qA DUX4対立遺伝子に付加することに関与できず、それによってDUX4遺伝子の発現を可能にする。
【0075】
主要なFSHD病因モデルでは、D4Z4の収縮がDUX4遺伝子の発現を可能にするエピジェネティックな変化を引き起こすと提案されている。その結果、別様にサイレントなまたはほぼサイレントなDUX4遺伝子、及びそれが制御する遺伝子(複数可)の異常な過剰発現が、最終的にFSHDを引き起こす可能性がある。このモデルは、正常な4q35 D4Z4反復配列がヘテロクロマチン特性を有するのに対し、FSHDに関連するD4Z4反復配列は活発に転写されたユークロマチンをより多く示す特徴を含むことを示すデータと一致している。これらの転写許容性のエピジェネティック変化は、完全な一染色体性のD4Z4欠失(すなわち、反復配列がゼロ)がFSHDを引き起こさないという観察と合わせて、D4Z4反復配列が、FSHDの筋肉において異常に発現される、潜在的に筋障害性のオープンリーディングフレーム(ORF)を有するという仮説を裏付ける。この概念は、DUX4と呼ばれるD4Z4局在化ORFが最初に同定された1994年に最初に検討された。しかしながら、その遺伝子座は、発現していない偽遺伝子のいくつかの特徴を有しており、したがってDUX4はFSHD候補として即座に却下された。その後何年間も、FSHD関連遺伝子の探索は主にD4Z4反復配列以外に焦点を当てていたが、これらの研究から興味深い候補がいくつか出現したものの、FSHDの発症と決定的に関連付けられる単一遺伝子は存在しなかった。この遅い進展により、2007年にFSHD候補としてDUX4が再登場した。しかし、2010年の時点でも、研究者は、候補として他の遺伝子に注目し続けていた。例えば、FSHD領域遺伝子1(frg1)に注目している、Wuebbles et al.,Int.J.Clin.Exp.Pathol.,3(4):386-400(2010)を参照のこと。対照的に、Wallace et al.,Mol.Ther.,17(Suppl.1):S151(2009)、Wei et al.,Mol.Ther.,17(Suppl.1):S200(2009)、及び2010年8月19日のSciencexpress号のLemmersらの報告は、DUX4に注目している。Neguembor and Gabellini,Epigenomics,2(2):271-287(2010)は、FSHDに関する最近の総説論文である。
【0076】
FSHDの病因におけるDUX4の役割は、以下のように説明することができる。第1に、D4Z4反復配列は同一のDUX4コード領域を含み、また、D4Z4反復配列は、いくつかの類似したマイクロRNAを含む、より小さいセンス及びアンチセンス転写物も有する。過剰発現されたDUX4転写物及び約50kDaの全長DUX4タンパク質は、FSHD患者からの生検及び細胞株で見出される。これらのデータは、FSHDの病因の転写抑制解除モデルと一致する。加えて、偽遺伝子とは異なり、縦列整列したD4Z4反復配列は、少なくとも11種の異なる胎盤哺乳動物種において保存されており(非胎盤動物にはD4Z4反復配列がない)、DUX4のORF内に生じる最大の配列保存であるため、D4Z4反復配列及びDUX4は機能的に重要である可能性が高い。第2に、過剰発現されたDUX4は、組織培養細胞、及びインビボで発達中の下等生物の胚性前駆体に対して毒性を示す。この毒性は、少なくとも部分的には、DUX4トランスフェクト細胞におけるカスパーゼ-3の活性化と、2細胞期でDUX4 mRNAを注入された発育停止アフリカツメガエル胚におけるTUNEL陽性核の存在とにより示される、アポトーシス促進性機序によって生じる。これらの知見は、カスパーゼ-3を含むいくつかのアポトーシス促進性タンパク質がFSHD患者の筋肉に存在することを示す研究と一致する。アポトーシスを刺激することに加えて、DUX4は、筋形成を負に制御し得る。ヒトDUX4は、潜在的にPAX3及び/またはPAX7を妨害することによってインビトロでマウスC2C12筋芽細胞の分化を阻害し、ゼブラフィッシュ胚またはアフリカツメガエル胚の前駆細胞に送達されると、発育停止及びいくつかの筋肉マーカーの染色低下を引き起こす。最後に、異常なDUX4機能は、FSHD患者の筋肉に見られる潜在的に重要な分子変化に直接関連する。具体的には、全長ヒトDUX4は、約50kDaの二重ホメオドメイン転写因子をコードし、DUX4標的は、FSHD患者の筋肉において上昇したレベルで見出され得る。これらのデータは、DUX4が、正常な筋肉の完全性を維持することと矛盾する多数の下流分子変化を触媒することを裏付ける。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】野生型U6-1プロモーター(配列番号3)、及びPSE領域内に変異を有する減弱化されたU6-1プロモーター(配列番号4)を示す。図1では、PSE領域に下線が引かれている。
【0078】
図2A】DUX4標的化miRNAの配列を示す。各パネルにおいて、上の配列はDNA鋳型を示し、そこから各々のmiRNAが転写される。上部パネルにおいて、DNA鋳型miDUX4.405(miDUX4-1またはmi405)は、配列番号1である。下部パネルでは、DNA鋳型miDUX4.1155(miDUX4-2;またはmi1155)は、配列番号2である。折り畳まれたmiRNA転写物は、ヘアピン構造として示される。miDUX4.405折り畳みmiRNAは、配列番号8である。miDUX4.1155折り畳みmiRNAは、配列番号9である。成熟miDUX4.405及びmiDUX4.1155配列は、宿主miRNAプロセシング機構(Drosha、DGCR8、Dicer、及びExportin-5を含む)による標的細胞におけるプロセシングに続いて生じる。灰色で網掛けされた配列は、各miRNAをU6T6ベクターにクローニングするために使用される制限部位を示す。CTCGAGはXhoI部位であり、ACTAGTはSpeI部位である(RNAでは、CUCGAG及びACUAGU、Uはウラシル塩基である)。赤色の配列は、最終的にDUX4標的mRNAの切断を触媒するのに役立つ成熟miRNAアンチセンスガイド鎖を示す。この配列も、この図のmiRNAヘアピン部分に下線が引かれている。灰色及び黒色の矢印は、それぞれDrosha及びDicerが触媒する切断部位を示す。番号13、35、53、及び75は、方向付けのために設けられている。位置35~53の間(及び両端を含む)の配列は、位置39のAを除いて天然のヒトmir-30a配列に由来し、Gが正常なmir-30a配列である。このヌクレオチドでは、in silico RNA折り畳みモデルに基づいて、miRNAループの折り畳みを促進するためにAに変更された。骨格の塩基(5’の位置13及び3’の位置75)もまた、mir-30a構造及び配列に由来し、ガイド鎖の一次配列に依存していくつかの改変を伴う。具体的には、13位のヌクレオチドは、13位と75位のヌクレオチド間で必要とされるミスマッチを容易にするのに役立つように変化し得る。この膨れた構造は、適切なDrosha切断を促進すると仮定される。
図2B】同上。
【0079】
図3】改変U6プロモーターシステムの一例を示す。パネルAは、miDUX4を発現するいくつかのtMCKシステムを示し、V5標識DUX4を過剰発現するヒト筋芽細胞においてそれらの機能が試験された。代表的なウェスタンは、U6.miDUX4に匹敵するレベルでサイレンシングされたDUX4タンパク質である、本発明の最良のtMCK.miDUX4(Var1)を示す。パネルBは、減弱化されたU6プロモーターmiDUX4の開発を示す。WT U6プロモーターは、高レベルのshRNA/miRNA発現を駆動し、一方、減弱化されたバージョン(wU6)は、標的遺伝子サイレンシングに有意な影響を及ぼさずに約16倍少ない転写物を産生する。ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼがDUX4配列を含み、miDUX4によってサイレンシングされ得るルシフェラーゼアッセイにおいて、miDUX4について同様の結果が観察された。
【0080】
図4】miDUX4を心臓及び肝臓で非標的化する戦略を示す。mir-122(肝臓)及びmir-208(心臓)のための完全な結合部位を図に示す。mir-122改変miDUX4がDUX4-ルシフェラーゼ標的に対して機能的であるという証拠、ならびに、mir-122を発現する肝臓細胞が、mir-122結合部位がmiDUX4配列に含まれる場合に、miDUX4サイレンシングを阻害し得るという証拠。
【0081】
図5】ヒトDUX4 DNA配列(配列番号7)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
配列
配列番号1(miDUX4.405またはmiDUX4-1)
【0083】
配列番号2(miDUX4.1155またはmiDUX4-2)
【0084】
配列番号10~10912、10971、10972、例示的miRNA成熟ガイド鎖ヌクレオチド配列
【0085】
配列番号3、野生型U6-1プロモーター
【0086】
配列番号4、PSE領域内に突然変異を有する、減弱化されたU6-1プロモーター
【0087】
配列番号5、miR-122(5’ TATTTAGTGTGAT AATGGTGTTT 3’)の結合部位
【0088】
配列番号6、miRNA-208(5’ ACGAGCcTTTT GCTCGTCTTAT 3’)の結合部位
【0089】
配列番号8、miDUX4.405(miDUX4-1)折り畳みmiRNA
【0090】
配列番号9、miDUX4.1155(miDUX4-2)折り畳みmiRNA
【0091】
配列番号7、DUX4遺伝子配列
【0092】
配列番号10913~10968、miDUX4の成熟ガイド鎖、及びmiR-122またはmiR-208の結合部位を含む、例示的な核酸配列(表1にも示される)
【0093】
配列番号10969、miR-122(5’ UAUUUAGU GUGAUAAUGGUGUUU 3’)の結合部位
【0094】
配列番号10970、miR-208(5’ ACGAGCcUUUU GCUCGUCUUAU 3’)の結合部位
【0095】
配列番号10973、miDUX4.405(miDUX4-1)成熟ガイド鎖ヌクレオチド配列
【0096】
配列番号10974、miDUX4.1155(miDUX4-2)成熟ガイド鎖ヌクレオチド配列
【0097】
本明細書中、成熟ガイド鎖配列がDNA配列として提示される場合、当業者は、このDNA配列がRNAへの転写のための鋳型として機能し、チミジン塩基がウリジン塩基に変換されることを理解するだろう。実施例
【実施例0098】
したがって、本発明の態様及び実施形態は、以下の実施例により説明される。実施例1は、肝臓及び心臓を非標的化した、減弱化されたプロモーターシステムを記載する。実施例2は、DUX4 miRNAのmiRNA発現の効果を測定するためのルシフェラーゼアッセイを記載する。実施例3は、DUX4 miRNAをコードするrAAVベクターを記載する。
【0099】
実施例1
肝臓及び心臓を非標的化した、減弱化されたU6プロモーターシステム
筋肉は、大過剰量のmiRNAベクターによる損傷を受けやすい。したがって、骨格筋特異的miRNA発現のための改変U6プロモーターシステムが開発された。野生型U6プロモーターを、図1に示されるような近位配列エレメントにおいて変異させた。この突然変異は、Suhy et al.,Mol.Therapy 20:1737-1749,2012に記載されているように、肝炎治療のためのHCV破壊の効力を維持しながら、U6転写を弱め、AAV8において16倍少ないshRNA転写を産生する。本実験では、ウミシイタケルシフェラーゼがDUX4配列を含むルシフェラーゼアッセイを用いて、miDUX4を駆動するこの減弱化されたU6(wU6)システムを含む核酸分子が、インビトロで有意なDUX4サイレンシングを達成した。(図3B)。
【0100】
しかしながら、提案された減弱化されたU6プロモーターシステムは広範に活性があるので、最高レベルの安全性を達成するために、このプロモーターシステムは、可能な限り骨格筋への発現に限定するように、さらに改変される。骨格筋特異的発現のための1つの選択肢は、AAV6ベクターを使用することであり、これは、AAV6ベクターが主に、血管送達後に骨格筋、肝臓、及び心臓に形質導入し、他の組織では有意に少ないためである。肝臓及び心臓における発現を避けるために、改変U6プロモーターシステムは、それらの組織においてmiDUX4を非標的化する。これを行うために、図4に示されるように、mir-122及びmir-208(肝臓及び心臓特異的天然マイクロRNA)の完全な結合部位が、miDUX4転写物内の様々な位置に組み込まれる。以下の実施例2に記載されるDUX4-ルシフェラーゼ標的を用いて、非標的化miDUX4転写物を、それぞれ肝臓及び心臓におけるmiR-122及びmiR-208RISC複合体によって破壊した。
【0101】
実施例2
DUX4 miRNAの発現の効果のためのルシフェラーゼアッセイ
DUX4 miRNAの存在下で、DUX4標的配列の発現をアッセイした。リポフェクタミン2000トランスフェクションを、96ウェルの白壁アッセイプレート中の293細胞で行った。DUX4標的配列を含む20ngのウミシイタケ-ホタルのプラスミドと、実施例1のU6T6駆動miDux4.405またはmiDux4.1155ベクターを含む180ngの種々のDUX4 miRNAコード化ベクターとを用いて、140,000個の細胞をトランスフェクトした。24時間後にルシフェラーゼアッセイを実施した。
【0102】
培地を細胞から除去し、ウェル当たり20μlの溶解緩衝液を添加した。50μlのルシフェラーゼ基質を添加する前に、プレートをシェーカーに室温で15分間置いた。最初の読み取りは10分後に行われた。次に、50μlのStop and Gloルシフェラーゼ基質を加え、10分後に2回目の読み取りを行った。Renilla発現をfirefly発現で割ることにより、相対的発現を算出した。次いで、相対的発現を、eGFPを標的とする対照miRNAでトランスフェクトした細胞の発現に対して正規化した。DUX4 miRNA miDUX4.405及びmiDUX4.1155は、トランスフェクトされた細胞におけるルシフェラーゼタンパク質発現を減少させるのに最も有効であった。以下の実施例1に記載されるDUX4-ルシフェラーゼ標的を用いて、非標的化miDUX4転写物を、それぞれ肝臓及び心臓におけるmir-122及びmir-208RISC複合体によって破壊される。
【0103】
実施例3
DUX4マイクロRNAをコードするrAAVの産生
HEK293細胞における3つのプラスミド[pAdhelper、AAVヘルパー、及びmiDUX4を含むrAAVゲノム、以下に詳細に記載される]の同時トランスフェクションによりrAAVベクターを産生し、次いで、細胞を回収し、ベクター精製、力価測定、及び品質管理アッセイを行った。
【0104】
プラスミド:pAdhelperは、アデノウイルス遺伝子E2A、E4 ORF6、及びVA I/IIを含み、AAVヘルパープラスミドは、AAV rep2及びcap6を含み(例えば、AAV血清型6調製物については、カプシド遺伝子はcap6と呼ばれ得る)、rAAVプラスミドは、ベクターにパッケージングされる遺伝子エレメントに隣接するAAV逆位末端反復(ITR)配列を含む。AAV.miDUX4については、これには、CMV.eGFPレポーター遺伝子の上流にクローニングされるU6.miDUX4が含まれる。
【0105】
トランスフェクション:CaPOを使用して、4:4:1(1プレートあたり20μgのpAdヘルパー:20μgのAAVヘルパー:5ugのrAAVベクタープラスミド)の比で、293細胞(Corning 10-Stack)にプラスミドをトランスフェクトした。
【0106】
細胞採取:トランスフェクションの48時間後、細胞を回収し、5×10個の細胞/mlの密度で、20mM Tris(pH8.0)、1mM MgCl、及び150mM NaCl(T20M1N150)中に再懸濁した。細胞を4回の連続凍結/解凍サイクルによって溶解し、細胞溶解物の清澄化の前に、ベンゾナーゼヌクレアーゼ(AIC、ストック:250U/ul)を最終濃度90U/mlとなるように加えた。
【0107】
ベクター精製及び力価測定:清澄化した溶解物を、以前に記載されているように(Xiao,X et al.,J.Virol 72:2224-32)、イオジキサノール段階勾配精製に供した。40%イオジキサノール層(rAAVを含む)を無塩希釈緩衝液(pHは血清型に応じて異なる)で5倍に希釈し、Hi-Trap HP-Q/Sカラムに適用した。NaCl塩勾配で溶出して、ピーク1ml画分(典型的には3~5)をプールし、T20M1N200(pH8.0)で透析し、次いで、滅菌濾過し、0.001%のPluronic F68を補足した。ベクターは-80℃で保存される。精製されたウイルスを、以前に記載されたように[Schnepp and Clark,Methods Mol.Med.,69:427-443(2002)]、Q-PCRを用いて、vgについて力価測定した。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
改変U6プロモーター配列、少なくとも1つの非標的配列を含むmiRNAの成熟ガイド鎖、及び5’末端に5~6つのチミジンを含む、核酸分子。
(項目2)
前記非標的配列が、miRNA-122またはmiRNA 208の結合部位である、項目1に記載の核酸分子。
(項目3)
前記改変U6プロモーター配列が、近位配列エレメント(PSE)領域または遠位配列エレメント(DSE)に少なくとも置換、挿入または欠失を含む、項目1または2に記載の核酸分子。
(項目4)
前記改変U6プロモーター配列が、PSE配列中のヌクレオチド-66のシトシンのチミジンへの置換、ヌクレオチド-57のシトシンのチミジンへの置換、及びヌクレオチド-52のチミジンのシトシンへの置換を含む、項目1または2に記載の核酸分子。
(項目5)
前記miRNAの成熟ガイド鎖が、miDUX4、miRN92、miRNA-17、miRNA-18a、miRNA-19a、miRNA-20a、miRNA-19b-1、mi-RNA-26a、miRNA-126、miRNA-335、let-7a 及びlet-7b、miRNA-34、miR-34a、miRNA-10b、miRNA-208、miRNA-499、miRNA-195、miRNA-29a、miRNA-29b、またはmiRNA-29cである、項目1~4のいずれか1項に記載の核酸分子。
(項目6)
前記miRNAの成熟ガイド鎖が、配列番号8482、配列番号8372、配列番号8371、配列番号8370、配列番号8367、配列番号8366、配列番号8365、配列番号8219、配列番号8218、配列番号8152、配列番号8147、配列番号8145、配列番号7397、配列番号7396、配列番号7395、配列番号7108、配列番号7107、配列番号7106、配列番号6633、配列番号6631、配列番号6622、配列番号6619、配列番号6609、配列番号6608、配列番号6568、配列番号6561、配列番号6560、配列番号10971、または配列番号10972のヌクレオチド配列を含む、項目1~4のいずれか1項に記載の核酸分子。
(項目7)
前記miRNAの成熟ガイド鎖がmiDUX4である、項目1~4のいずれか1項に記載の核酸分子。
(項目8)
配列番号1、2、または10913~10968のいずれか1つの核酸配列を含む、項目1~4のいずれか1項に記載の核酸分子。
(項目9)
項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、ベクター。
(項目10)
前記ベクターが、プラスミド、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ウマ随伴ウイルス、アルファウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、またはワクシニアウイルスである、項目9に記載のベクター。
(項目11)
項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、組換えアデノ随伴ウイルス。
(項目12)
前記AAVが、AAV6、AAV rh.74、またはAAV-B1である、項目11に記載の組換えアデノ随伴ウイルス。
(項目13)
項目9もしくは10に記載のベクターまたは項目11もしくは12に記載の組換えアデノ随伴ウイルスを含む、組成物。
(項目14)
細胞内の遺伝子の発現を阻害する方法であって、項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルスまたは項目13に記載の組成物と前記細胞を接触させることを含む、方法。
(項目15)
細胞におけるDUX4遺伝子の発現を阻害する方法であって、項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルスまたは項目13に記載の組成物と前記細胞を接触させることを含む、方法。
(項目16)
DUX4 miRNAをコードするDNAをそれを必要とする動物の骨格筋に送達する方法であって、項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルスまたは項目13に記載の組成物を前記動物に投与することを含む、方法。
(項目17)
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーを治療する方法であって、項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルスまたは項目13に記載の組成物を投与することを含む、方法。
(項目18)
前記組換えアデノ随伴ウイルスが、筋肉内注射、経皮輸送、血流への注射、または肝臓への注射によって投与される、項目14~17のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
細胞内の遺伝子の発現を阻害するための医薬の調製のための、項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルスまたは項目13に記載の組成物の使用。
(項目20)
細胞内のDUX4遺伝子の発現を阻害するための医薬の調製のための、項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルスまたは項目13に記載の組成物の使用。
(項目21)
DUX4 miRNAをコードするDNAをそれを必要とする動物の骨格筋へ送達するための医薬の調製のための、項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルスまたは項目13に記載の組成物の使用。
(項目22)
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーを治療するための医薬の調製のための、項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルスまたは項目13に記載の組成物の使用。
(項目23)
前記医薬が、筋肉内注射、経皮輸送、または血流への注射のために製剤化される、項目19~22のいずれか1項に記載の使用。
(項目24)
細胞内の遺伝子の発現を阻害するための、項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルスまたは項目13に記載の組成物を含む、組成物。
(項目25)
細胞内のDUX4遺伝子の発現を阻害するための、項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルスまたは項目13に記載の組成物を含む、組成物。
(項目26)
DUX4 miRNAをコードするDNAをそれを必要とする動物の骨格筋へ送達するための、項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルスまたは項目13に記載の組成物を含む、組成物。
(項目27)
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーを治療するための、項目1~8のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルスまたは項目13に記載の組成物を含む、組成物。
(項目28)
前記組成物が、筋肉内注射、経皮輸送、または血流への注射のために製剤化される、項目24~27のいずれか1項に記載の組成物。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
【配列表】
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【外国語明細書】