(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046823
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】マスター基地局、方法および集積回路
(51)【国際特許分類】
H04W 52/30 20090101AFI20220315BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20220315BHJP
H04W 76/15 20180101ALI20220315BHJP
【FI】
H04W52/30
H04W72/04 111
H04W76/15
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007981
(22)【出願日】2022-01-21
(62)【分割の表示】P 2020019540の分割
【原出願日】2014-09-04
(31)【優先権主張番号】13186442.3
(32)【優先日】2013-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】316002062
【氏名又は名称】サン パテント トラスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロアー ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】バス マリック プラティーク
(57)【要約】
【課題】UEがマスター基地局およびセカンダリ基地局の両方に接続されている状況において電力制御を効率的に実行すること。
【解決手段】マスター基地局は、マスター基地局およびセカンダリ基地局へのアップリンク送信用にUEによって使用される電力の電力分配比率を決定し、パラメータP
EMAX,MeNBおよびP
EMAX,SeNBを決定し、これらのパラメータを、電力制御に使用できるようにセカンダリ基地局/UEに送信する。さらに、マスター基地局は、UEによる支援を受けて電力分配比率の更新を実行し、すなわちUEは、セカンダリ基地局への第2の無線リンクにおけるパスロスに関する情報を、好ましくは、セカンダリ基地局への第2の無線リンクに関する仮想電力ヘッドルーム報告を送信することによって、マスター基地局に提供する。マスター基地局は、この仮想電力ヘッドルーム報告から、第2の無線リンクにおけるパスロスに関する情報を導く。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムにおいて電力ヘッドルーム報告の受信が可能なマスター基地局であって、前記マスター基地局は、第1の無線リンクを介してユーザ機器に接続可能であり、かつ、前記ユーザ機器は第2の無線リンクを介して少なくとも1つのセカンダリ基地局に接続可能であり、
前記ユーザ機器により計算された第1の電力ヘッドルーム報告を、前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告とともに、前記ユーザ機器から受信する受信部、
を備え、
前記第1の電力ヘッドルーム報告は、前記ユーザ機器と前記マスター基地局との間の前記第1の無線リンクの電力ヘッドルームを計算したものであり、
前記受信部は、前記ユーザ機器から前記マスター基地局への電力ヘッドルーム報告がトリガーされるたびに、常に、前記第1の電力ヘッドルーム報告を、セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告とともに、前記ユーザ機器から受信し、
前記セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告は、前記ユーザ機器により、前記セカンダリ基地局と接続可能な前記第2の無線リンクを対象に事前に設定される仮想アップリンクリソース割当てに基づいて、前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を計算したものである、
マスター基地局。
【請求項2】
前記ユーザ機器が前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを認識したとき、前記第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報を前記ユーザ機器が前記マスター基地局に提供し、
前記第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する前記情報が、
前記ユーザ機器と前記マスター基地局との間の前記第1の無線リンクの前記第1の電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクの前記セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクの前記セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値、
の形で、前記マスター基地局に提供される、
請求項1に記載のマスター基地局。
【請求項3】
前記ユーザ機器において、
前記第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが予測される時間長を前記ユーザ機器によって決定する処理と、
前記決定された時間長が所定の時間長を超える場合にのみ、前記第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報を前記ユーザ機器が前記マスター基地局に提供する前記処理、を制御する、
請求項2に記載のマスター基地局。
【請求項4】
前記第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する前記情報が、前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクの前記セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値の形で、前記マスター基地局に提供され、
前記所定の電力ヘッドルーム値は、前記第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが前記ユーザ機器によって予測される時間長に関する時間情報を符号化する所定の負の値である、
請求項2または3に記載のマスター基地局。
【請求項5】
前記ユーザ機器が前記ユーザ機器と前記マスター基地局との間の前記第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを認識したとき、前記第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報を前記ユーザ機器が前記セカンダリ基地局に提供し、
前記第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する前記情報が、
前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクの前記セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクの前記セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクの前記セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値、
の形で、前記セカンダリ基地局に提供される、
請求項1から4のいずれかに記載のマスター基地局。
【請求項6】
前記第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが予測される時間長を前記ユーザ機器によって決定する処理と、
前記決定した時間長が所定の時間長を超える場合にのみ、前記第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報を前記ユーザ機器が前記セカンダリ基地局に提供する前記処理、を制御する、
請求項5に記載のマスター基地局。
【請求項7】
前記第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する前記情報が、前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクの前記セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値の形で、前記セカンダリ基地局に提供され、
前記所定の電力ヘッドルーム値が、前記第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが前記ユーザ機器によって予測される時間長に関する時間情報を符号化する所定の負の値である、
請求項5または6に記載のマスター基地局。
【請求項8】
無線通信システムにおいて電力ヘッドルーム報告の受信が可能なマスター基地局により実行される方法であって、前記マスター基地局は、第1の無線リンクを介してユーザ機器に接続可能であり、かつ、前記ユーザ機器は第2の無線リンクを介して少なくとも1つのセカンダリ基地局に接続可能であり、
前記ユーザ機器により計算された第1の電力ヘッドルーム報告を、前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告とともに、前記ユーザ機器から受信する処理、
を含み、
前記第1の電力ヘッドルーム報告は、前記ユーザ機器と前記マスター基地局との間の前記第1の無線リンクの電力ヘッドルームを計算したものであり、
前記受信する処理では、前記ユーザ機器から前記マスター基地局への電力ヘッドルーム報告がトリガーされるたびに、常に、前記第1の電力ヘッドルーム報告を、セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告とともに、前記ユーザ機器から受信し、
前記セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告は、前記ユーザ機器により、前記セカンダリ基地局と接続可能な前記第2の無線リンクを対象に事前に設定される仮想アップリンクリソース割当てに基づいて、前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を計算したものである、
方法。
【請求項9】
無線通信システムにおいて電力ヘッドルーム報告の受信が可能なマスター基地局の処理を制御する集積回路であって、前記マスター基地局は、第1の無線リンクを介してユーザ機器に接続可能であり、かつ、前記ユーザ機器は第2の無線リンクを介して少なくとも1つのセカンダリ基地局に接続可能であり、前記処理は、
前記ユーザ機器により計算された第1の電力ヘッドルーム報告を、前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告とともに、前記ユーザ機器から受信する処理、
を含み、
前記第1の電力ヘッドルーム報告は、前記ユーザ機器と前記マスター基地局との間の前記第1の無線リンクの電力ヘッドルームを計算したものであり、
前記受信する処理では、前記ユーザ機器から前記マスター基地局への電力ヘッドルーム報告がトリガーされるたびに、常に、前記第1の電力ヘッドルーム報告を、セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告とともに、前記ユーザ機器から受信し、
前記セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告は、前記ユーザ機器により、前記セカンダリ基地局と接続可能な前記第2の無線リンクを対象に事前に設定される仮想アップリンクリソース割当てに基づいて、前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を計算したものである、
集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスター基地局、方法および集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ロングタームエボリューション(LTE)
WCDMA(登録商標)無線アクセス技術をベースとする第3世代の移動通信システム(3G)は、世界中で広範な規模で配備されつつある。この技術を機能強化または発展・進化させる上での最初のステップとして、HSDPA(High-Speed Downlink Packet Access)と、エンハンストアップリンク(HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)とも称する)とが導入され、これにより、極めて競争力の高い無線アクセス技術が提供されている。
【0003】
ユーザからのますます増大する需要に対応し、新しい無線アクセス技術に対する競争力を確保する目的で、3GPPは、LTE(Long Term Evolution)と称される新しい移動通信システムを導入した。LTEは、今後10年間にわたり、データおよびメディアの高速伝送ならびに大容量の音声サポートに要求されるキャリアを提供するように設計されている。高いビットレートを提供する能力は、LTEにおける重要な方策である。
【0004】
LTE(ロングタームエボリューション)に関するwork item(WI)の仕様は、E-UTRA(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access(UTRA))およびE-UTRAN(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access Network(UTRAN))と称され、最終的にリリース8(LTEリリース8)として公開される。LTEシステムは、パケットベースの効率的な無線アクセスおよび無線アクセスネットワークであり、IPベースの全機能を低遅延かつ低コストで提供する。LTEでは、与えられたスペクトルを用いてフレキシブルなシステム配備を達成するために、スケーラブルな複数の送信帯域幅(例えば、1.4MHz、3.0MHz、5.0MHz、10.0MHz、15.0MHz、および20.0MHz)が指定されている。ダウンリンクには、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)をベースとする無線アクセスが採用されている。なぜなら、かかる無線アクセスは、低いシンボルレートのため本質的にマルチパス干渉(MPI:Multipath Interference)を受けにくく、また、サイクリックプレフィックス(CP)を使用しており、さらに、さまざまな送信帯域幅の構成に対応可能だからである。アップリンクには、SC-FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)をベースとする無線アクセスが採用されている。なぜなら、ユーザ機器(UE)の送信出力が限られていることを考えれば、ピークデータレートを向上させるよりも広いカバレッジエリアを提供することが優先されるからである。LTEリリース8/9では、数多くの主要なパケット無線アクセス技術(例えば、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)チャネル伝送技術)が採用され、高効率の制御シグナリング構造が達成されている。
【0005】
LTEのアーキテクチャ
図1は、LTEの全体的なアーキテクチャを示し、
図2は、E-UTRANのアーキテクチャをより詳細に示している。E-UTRANは、eNodeBから構成され、eNodeBは、UE向けの、E-UTRAのユーザプレーン(PDCP/RLC/MAC/PHY)および制御プレーン(RRC)のプロトコルを終端処理する。eNodeB(eNB)は、物理(PHY)レイヤ、メディアアクセス制御(MAC:Media Access Control)レイヤ、無線リンク制御(RLC:Radio Link Control)レイヤ、およびパケットデータ制御プロトコル(PDCP:Packet Data Control Protocol)レイヤ(これらのレイヤはユーザプレーンのヘッダ圧縮および暗号化の機能を含む)をホストする。eNBは、制御プレーンに対応する無線リソース制御(RRC:Radio Resource Control)機能も提供する。eNBは、無線リソース管理、アドミッション制御、スケジューリング、交渉によるアップリンクQoS(サービス品質)の実施、セル情報のブロードキャスト、ユーザプレーンデータおよび制御プレーンデータの暗号化/復号、ダウンリンク/アップリンクのユーザプレーンパケットヘッダの圧縮/復元など、多くの機能を実行する。複数のeNodeBは、X2インタフェースによって互いに接続されている。
【0006】
また、複数のeNodeBは、S1インタフェースによってEPC(Evolved Packet Core)、より具体的には、S1-MMEによってMME(Mobility Management Entity:移動管理エンティティ)、S1-Uによってサービングゲートウェイ(SGW:Serving Gateway)に接続されている。S1インタフェースは、MME/サービングゲートウェイとeNodeBとの間の多対多関係をサポートする。SGWは、ユーザデータパケットをルーティングして転送する一方で、eNodeB間のハンドオーバー時におけるユーザプレーンのモビリティアンカーとして機能し、さらに、LTEと別の3GPP技術との間のモビリティのためのアンカー(S4インタフェースを終端させ、2G/3GシステムとPDN GWとの間でトラフィックを中継する)として機能する。SGWは、アイドル状態のUEに対しては、ダウンリンクデータ経路を終端させ、そのUEへのダウンリンクデータが到着したときにページングをトリガーする。SGWは、UEのコンテキスト(例えばIPベアラサービスのパラメータ、ネットワーク内部ルーティング情報)を管理および格納する。さらに、SGWは、合法傍受(lawful interception)の場合にユーザトラフィックの複製を実行する。
【0007】
MMEは、LTEのアクセスネットワークの主要な制御ノードである。MMEは、アイドルモードのUEの追跡およびページング手順(再送信を含む)の役割を担う。MMEは、ベアラの有効化/無効化プロセスに関与し、さらには、最初のアタッチ時と、コアネットワーク(CN)ノードの再配置を伴うLTE内ハンドオーバー時とに、UEのSGWを選択する役割も担う。MMEは、(HSSと対話することによって)ユーザを認証する役割を担う。非アクセスレイヤ(NAS:Non-Access Stratum)シグナリングはMMEにおいて終端され、MMEは、一時的なIDを生成してUEに割り当てる役割も担う。MMEは、サービスプロバイダの公衆陸上移動網(PLMN:Public Land Mobile Network)に入るためのUEの認証をチェックし、UEのローミング制約を実施する。MMEは、NASシグナリングの暗号化/整合性保護においてネットワーク内の終端点であり、セキュリティキーの管理を行う。シグナリングの合法傍受も、MMEによってサポートされる。さらに、MMEは、LTEのアクセスネットワークと2G/3Gのアクセスネットワークとの間のモビリティのための制御プレーン機能を提供し、SGSNからのS3インタフェースを終端させる。さらに、MMEは、ローミングするUEのためのホームHSSに向かうS6aインタフェースを終端させる。
【0008】
LTEにおけるコンポーネントキャリアの構造
3GPP LTEシステムのダウンリンクコンポーネントキャリア(CC:Component Carrier)は、時間-周波数領域において、いわゆるサブフレームに分割される。3GPP LTEでは、
図3に示したように、各サブフレームが2つのダウンリンクスロットに分割されており、第1のダウンリンクスロットは、最初のいくつかのOFDMシンボルにおける制御チャネル領域(PDCCH領域)を含む。各サブフレームは、時間領域における特定の数のOFDMシンボルからなり(3GPP LTE(リリース8)では12個または14個のOFDMシンボル)、OFDMシンボルそれぞれが、コンポーネントキャリアの帯域幅全体を範囲としている。したがって、OFDMシンボルそれぞれは、
図4にも示したように、N
DL
RB*N
RB
sc本のそれぞれのサブキャリア上で送信される複数の変調シンボルからなる。
【0009】
例えば、3GPP LTE(ロングタームエボリューション)において使用される、例えばOFDMを採用するマルチキャリア通信システムを考えると、スケジューラによって割り当てることのできるリソースの最小単位は、1つの「リソースブロック」である。物理リソースブロック(PRB)は、
図4に例示的に示したように、時間領域におけるN
DL
symb個の連続するOFDMシンボル(例:7個のOFDMシンボル)と、周波数領域におけるN
RB
sc本の連続するサブキャリア(例:コンポーネントキャリアの12本のサブキャリア)として定義される。したがって、3GPP LTE(リリース8)においては、物理リソースブロックは、N
DL
symb*N
RB
sc個のリソースエレメントからなり、時間領域における1スロットと、周波数領域における180kHzに対応する(ダウンリンクリソースグリッドに関するさらなる詳細については、例えば非特許文献1の6.2節を参照)(3GPPのウェブサイトにおいて入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0010】
1つのサブフレームは2つのスロットからなり、したがって、いわゆる「通常の」CP(サイクリックプレフィックス)が使用されているときにはサブフレームに14個のOFDMシンボルが存在し、いわゆる「拡張」CPが使用されているときにはサブフレームに12個のOFDMシンボルが存在する。専門用語として、以下では、サブフレーム全体にわたる、同一のNRB
sc本の連続するサブキャリアに等しい時間-周波数リソースを、「リソースブロックペア」、または同じ意味で「RBペア」または「PRBペア」と称する。
【0011】
用語「コンポーネントキャリア」は、周波数領域におけるいくつかのリソースブロックの組合せを意味する。LTEの将来のリリースにおいて、「コンポーネントキャリア」という用語はもはや使用されない。代わりに、この用語は「セル」に変更され、「セル」は、ダウンリンクリソースおよび任意でアップリンクリソースの組合せを意味する。ダウンリンクリソースのキャリア周波数とアップリンクリソースのキャリア周波数との連結(linking)は、ダウンリンクリソースで送信されるシステム情報に示される。コンポーネントキャリアの構造の同様の想定は、以降のリリースにも適用される。
【0012】
より広い帯域幅をサポートするためのLTE-Aにおけるキャリアアグリゲーション
World Radio communication Conference 2007(WRC-07)において、IMT-Advancedの周波数スペクトルが決定された。IMT-Advancedのための全体的な周波数スペクトルは決定されたが、実際に利用可能な周波数帯域幅は、地域または国によって異なる。しかしながら、利用可能な周波数スペクトルのアウトラインの決定に続いて、3GPP(3rd Generation Partnership Project)において無線インタフェースの標準化が開始された。3GPP TSG RAN #39会合では、「Further Advancements for E-UTRA (LTE-Advanced)」に関するStudy Itemの記述が承認された。このStudy Itemは、E-UTRAを進化・発展させるうえで(例えば、IMT-Advancedの要求条件を満たすために)考慮すべき技術要素をカバーしている。
【0013】
LTE-Advancedシステムがサポートできる帯域幅は100MHzであるが、LTEシステムは20MHzをサポートできるのみである。最近、無線スペクトルの不足によって無線ネットワークの発展が妨げられており、結果として、LTE-Advancedシステムのための十分に広いスペクトル帯域を確保することが困難である。したがって、より広い無線スペクトル帯域を得るための方法を見つけることが緊急課題であり、1つの可能な答えがキャリアアグリゲーション機能である。
【0014】
キャリアアグリゲーションにおいては、最大100MHzの広い送信帯域幅をサポートする目的で、2つ以上のコンポーネントキャリア(セル)がアグリゲート(結合)される。LTE-Advancedシステムでは、LTEシステムにおけるいくつかのセルをアグリゲートして、より広い1つのチャネルとし、このチャネルは、たとえLTEにおけるこれらのセルが異なる周波数帯域である場合でも100MHzに対して十分に広い。
【0015】
アグリゲートされるコンポーネントキャリアの数がアップリンクとダウンリンクとで少なくとも同じであるとき、すべてのコンポーネントキャリアをLTEリリース8/9互換として設定することができる。UEによってアグリゲートされるすべてのコンポーネントキャリアが必ずしもLTEリリース8/9互換でなくてよい。リリース8/9のUEがコンポーネントキャリアにキャンプオンする(camp on)ことを回避するため、既存のメカニズム(例:バーリング)を使用することができる。
【0016】
UEは、自身の能力に応じて1つまたは複数のコンポーネントキャリア(複数のサービングセルに対応する)を同時に受信または送信することができる。キャリアアグリゲーションのための受信能力もしくは送信能力またはその両方を備えた、LTE-Aリリース10のUEは、複数のサービングセル上で同時に受信する、もしくは送信する、またはその両方を行うことができ、これに対して、LTEリリース8/9のUEは、コンポーネントキャリアの構造がリリース8/9の仕様に従う場合、1つのみのサービングセル上で受信および送信を行うことができる。
【0017】
キャリアアグリゲーションは、連続するコンポーネントキャリアおよび不連続なコンポーネントキャリアの両方においてサポートされ、この場合、コンポーネントキャリアそれぞれは、3GPP LTE(リリース8/9)の計算方式を使用するとき周波数領域における最大110個のリソースブロックに制限される。
【0018】
3GPP LTE-A(リリース10)互換のUEは、同じeNodeB(基地局)から送信される(場合によってはアップリンクとダウンリンクとで異なる帯域幅)のさまざまな数のコンポーネントキャリアをアグリゲートするように、設定することが可能である。設定することのできるダウンリンクコンポーネントキャリアの数は、UEのダウンリンクのアグリゲーション能力に依存する。逆に、設定することのできるアップリンクコンポーネントキャリアの数は、UEのアップリンクのアグリゲーション能力に依存する。ダウンリンクコンポーネントキャリアよりもアップリンクコンポーネントキャリアが多くなるように移動端末を設定することはできない。
【0019】
一般的なTDD配備では、コンポーネントキャリアの数および各コンポーネントキャリアの帯域幅は、アップリンクとダウンリンクとで同じである。同じeNodeBから送信されるコンポーネントキャリアは、必ずしも同じカバレッジを提供する必要はない。
【0020】
連続的にアグリゲートされるコンポーネントキャリアの中心周波数の間隔は、300kHzの倍数である。これは、3GPP LTE(リリース8/9)の100kHzの周波数ラスタとの互換性を保つと同時に、15kHz間隔のサブキャリアの直交性を維持するためである。アグリゲーションのシナリオによっては、連続するコンポーネントキャリアの間に少数の使用されないサブキャリアを挿入することによって、n*300kHzの間隔あけを容易にすることができる。
【0021】
複数のキャリアをアグリゲートする影響は、MACレイヤに及ぶのみである。MACレイヤには、アップリンクおよびダウンリンクの両方において、アグリゲートされるコンポーネントキャリアごとに1つのHARQエンティティが要求される。コンポーネントキャリアあたりのトランスポートブロックは最大1個である(アップリンクにおけるSU-MIMOを使用しない場合)。トランスポートブロックおよびそのHARQ再送信(発生時)は、同じコンポーネントキャリアにマッピングする必要がある。
【0022】
図5および
図6は、それぞれ、ダウンリンクおよびアップリンクにおける、キャリアアグリゲーションが有効になっているレイヤ2構造を示している。
【0023】
キャリアアグリゲーションが設定されているとき、移動端末はネットワークとの1つのRRC接続のみを有する。RRC接続の確立/再確立時、1つのセルが、LTEリリース8/9と同様に、セキュリティ入力(1つのECGI、1つのPCI、および1つのARFCN)と、非アクセスレイヤ(NAS)モビリティ情報(例:TAI)とを提供する。RRC接続の確立/再確立の後、そのセルに対応するコンポーネントキャリアは、ダウンリンクプライマリセル(PCell)と称される。接続状態では、UEあたり常に1つのダウンリンクPCell(DL PCell)および1つのアップリンクPCell(UL PCell)が設定される。設定されているコンポーネントキャリアのセットの中のプライマリセル以外のセルを、セカンダリセル(SCell)と称し、SCellのキャリアは、ダウンリンクセカンダリコンポーネントキャリア(DL SCC)およびアップリンクセカンダリコンポーネントキャリア(UL SCC)である。ダウンリンクPCellおよびアップリンクPCellの特徴は以下のとおりである。
- SCellごとに、ダウンリンクリソースに加えてアップリンクリソースのUEによる使用を設定することができる。したがって、設定されるDL SCCの数はUL SCCの数よりも常に大きいかまたは等しく、アップリンクリソースのみを使用するようにSCellを設定することはできない。
- アップリンクPCellは、レイヤ1のアップリンク制御情報を送信するために使用される。
- ダウンリンクPCellは、SCellとは異なり非アクティブ化することはできない。
- UEの観点からは、各アップリンクリソースは1つのサービングセルのみに属す。
- 設定することのできるサービングセルの数は、UEのアグリゲーション能力に依存する。
- ダウンリンクPCellにおいてレイリーフェージング(RLF)が発生すると再確立がトリガーされるが、ダウンリンクSCellにRLFが発生しても再確立はトリガーされない。
- ダウンリンクPCellは、ハンドオーバーによって(すなわちセキュリティキー変更およびRACH手順)によって変更されうる。
- 非アクセスレイヤ情報はダウンリンクPCellから取得される。
- PCellは、ハンドオーバー手順(すなわちセキュリティキー変更およびRACH手順)によってのみ変更することができる。
- PCellは、PUCCHの送信に使用される。
【0024】
コンポーネントキャリアの設定および再設定は、RRCによって行うことができる。アクティブ化および非アクティブ化は、MAC制御エレメント(MAC CE)を介して行われる。さらにLTE内ハンドオーバー時には、RRCによって、ターゲットセルで使用するためのSCellを追加、削除、または再設定することができる。新しいSCellを追加するときには、SCellのシステム情報(送信/受信に必要である)を送るために専用のRRCシグナリングが使用される(LTEリリース8/9におけるハンドオーバー時と同様)。
【0025】
キャリアアグリゲーションを使用するようにUEが設定されているとき、アップリンクコンポーネントキャリアとダウンリンクコンポーネントキャリアの一対が常にアクティブである。この対のうちのダウンリンクコンポーネントキャリアは、「ダウンリンクアンカーキャリア」と称されることもある。同じことはアップリンクについてもあてはまる。
【0026】
キャリアアグリゲーションが設定されているとき、同時に複数のコンポーネントキャリアについてUEをスケジューリングすることができるが、一度に行うことのできるランダムアクセス手順は最大で1つである。クロスキャリアスケジューリング(cross-carrier scheduling)では、あるコンポーネントキャリアのPDCCHによって別のコンポーネントキャリアのリソースをスケジューリングすることができる。この目的のため、それぞれのDCIフォーマットにコンポーネントキャリア識別フィールド(「CIF:Component carrier Identification Field」と称する)が導入されている。
【0027】
クロスキャリアスケジューリングが行われていないときには、アップリンクコンポーネントキャリアとダウンリンクコンポーネントキャリアとをリンクすることによって、グラントが適用されるアップリンクコンポーネントキャリアを識別することができる。アップリンクコンポーネントキャリアへのダウンリンクコンポーネントキャリアのリンクは、必ずしも1対1である必要はない。言い換えれば、同じアップリンクコンポーネントキャリアに複数のダウンリンクコンポーネントキャリアをリンクすることができる。一方で、1つのダウンリンクコンポーネントキャリアは、1つのアップリンクコンポーネントキャリアのみにリンクすることができる。
【0028】
LTEにおけるアップリンクアクセス方式
アップリンク送信においては、カバレッジを最大にするため、ユーザ端末による電力効率の高い送信が必要である。E-UTRAのアップリンク送信方式としては、シングルキャリア伝送と、動的な帯域幅割当てのFDMAとを組み合わせた方式が選択されている。シングルキャリア伝送が選択された主たる理由は、マルチキャリア信号(OFDMA)と比較して、ピーク対平均電力比(PAPR)が低く、これに対応して電力増幅器の効率が改善され、カバレッジの向上が見込まれるためである(与えられる端末ピーク電力に対してデータレートが高い)。NodeBは、各時間間隔において、ユーザデータを送信するための固有の時間/周波数リソースをユーザに割り当て、これによってセル内の直交性が確保される。アップリンクにおける直交アクセスによって、セル内干渉が排除されることでスペクトル効率が高まる。マルチパス伝搬に起因する干渉については、送信信号にサイクリックプレフィックスを挿入することにより基地局(NodeB)において対処する。
【0029】
データ送信に使用される基本的な物理リソースは、1つの時間間隔(例えば、0.5msのサブフレーム)にわたるサイズBWgrantの周波数リソースから構成される(符号化された情報ビットはこのリソースにマッピングされる)。なお、サブフレーム(送信時間間隔(TTI:Transmission Time Interval)とも称する)は、ユーザデータを送信するための最小の時間間隔である。しかしながら、サブフレームを連結することにより、1TTIよりも長い時間にわたる周波数リソースBWgrantをユーザに割り当てることも可能である。
【0030】
LTEにおけるアップリンクのスケジューリング方式
アップリンクの方式として、スケジューリング制御式の(すなわちeNBによって制御される)アクセスと、コンテンションベースのアクセスの両方を使用することができる。
【0031】
スケジューリング制御式アクセスの場合、アップリンクデータ送信用として、特定の時間長の特定の周波数リソース(すなわち時間/周波数リソース)が、UEに割り当てられる。しかしながら、コンテンションベースのアクセス用に、いくらかの時間/周波数リソースを割り当てることができる。コンテンションベースの時間/周波数リソースの範囲内では、UEは、最初にスケジューリングされることなく送信することができる。UEがコンテンションベースのアクセスを行う1つのシナリオは、例えばランダムアクセスであり、すなわち、UEがあるセルへ最初のアクセスを行うとき、またはアップリンクリソースを要求するため最初のアクセスを行うときである。
【0032】
スケジューリング制御式アクセスの場合、NodeBのスケジューラが、アップリンクデータ送信のための固有の周波数/時間リソースをユーザに割り当てる。より具体的には、スケジューラは以下を決定する。
- 送信を許可する(1つまたは複数の)UE
- 物理チャネルリソース(周波数)
- 移動端末が送信に使用するべきトランスポートフォーマット(変調・符号化方式(MCS))
【0033】
割当て情報は、L1/L2制御チャネルで送られるスケジューリンググラントを介してUEにシグナリングされる。以下では、説明を簡潔にするため、このチャネルをアップリンクグラントチャネルと称する。スケジューリンググラントメッセージは、情報として、周波数帯域のうちUEによる使用を許可する部分と、グラントの有効期間と、これから行うアップリンク送信にUEが使用しなければならないトランスポートフォーマットとを、少なくとも含んでいる。最も短い有効期間は、1サブフレームである。グラントメッセージには、選択される方式に応じて追加の情報も含めることができる。アップリンク共有チャネル(UL-SCH)で送信する権利を許可するグラントとしては、「各UEに対する」グラントのみが使用される(すなわち、「各UEにおける各無線ベアラに対する」グラントは存在しない)。したがってUEは、割り当てられたリソースを何らかの規則に従って無線ベアラの間で配分する必要がある。トランスポートフォーマットは、HSUPAの場合とは異なり、UE側では選択しない。eNBが、何らかの情報(例えば、報告されたスケジューリング情報およびQoS情報)に基づいてトランスポートフォーマットを決定し、UEは、選択されたトランスポートフォーマットに従わなければならない。HSUPAでは、NodeBが最大限のアップリンクリソースを割り当てて、UEは、それに応じてデータ送信用の実際のトランスポートフォーマットを選択する。
【0034】
無線リソースのスケジューリングは、サービス品質を決めるうえで、共有チャネルアクセスネットワークにおいて最も重要な機能であるため、効率的なQoS管理を可能にする目的で、LTEにおけるアップリンクスケジューリング方式が満たしているべき要件がいくつかある。
・ 優先順位の低いサービスのリソース不足を避けるべきである。
・ 個々の無線ベアラ/サービスにおいてQoSが明確に区別されるべきである。
・ どの無線ベアラ/サービスのデータが送信されるのかをeNBのスケジューラが識別できるように、アップリンク報告において、きめ細かいバッファ報告(例えば、無線ベアラごとの報告、または無線ベアラグループごとの報告)を可能にするべきである。
・ 異なるユーザのサービスの間でQoSを明確に区別できるようにするべきである。
・ 無線ベアラごとに最小限のビットレートを提供できるようにするべきである。
【0035】
上に挙げた条件から理解できるように、LTEのスケジューリング方式の1つの重要な側面は、事業者が、自身の総セル容量を、異なるQoSクラスの個々の無線ベアラの間で分配することを制御できるメカニズムを提供することである。無線ベアラのQoSクラスは、前述したようにサービングゲートウェイからeNBにシグナリングされる対応するSAEベアラのQoSプロファイルによって識別される。事業者は、自身の総セル容量のうちの特定の量を、特定のQoSクラスの無線ベアラに関連付けられる総トラフィックに割り当てることができる。クラスに基づくこの方法を採用する主たる目的は、パケットの処理を、パケットが属するQoSクラスに応じて区別できるようにすることである。
【0036】
DRX(Discontinuous Reception:不連続受信)
RRC_IDLEの場合にDRX機能を設定することができ、この場合、UEは、自身に固有なDRX値またはデフォルトのDRX値(defaultPagingCycle)のいずれかを使用する。デフォルト値は、システム情報の中でブロードキャストされ、値として、32個、64個、128個、および256個の無線フレームを有することができる。固有な値とデフォルト値の両方が利用可能である場合、UEは2つのうち短い方の値を選択する。UEは、DRXサイクルあたり1回のページング機会において起動する必要があり、ページング機会は1つのサブフレームである。
【0037】
「RRC_CONNECTED」の場合にもDRX機能を設定することができ、したがって、ダウンリンクチャネルを常に監視する必要はない。UEのバッテリが過大に消費されないようにする目的で、3GPP LTE(リリース8/9)および3GPP LTE-A(リリース10)では、不連続受信(DRX)というコンセプトが提供される。技術規格書である非特許文献2の第5.7章にはDRXについて説明されており、この文書は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0038】
UEのDRX挙動を定義するため以下のパラメータが利用可能であり、すなわち、移動ノードがアクティブであるオン期間と、移動ノードがDRXモードである期間である。
- オン期間:UEがDRXから起動した後、PDCCHを受信および監視する期間(単位:ダウンリンクサブフレーム)。UEは、PDCCHを正常に復号した場合、起動状態を維持し、インアクティビティタイマ(inactivity timer)を起動する。[1~200個のサブフレーム、16ステップ:1~6、10~60、80、100、200]
- DRXインアクティビティタイマ:UEが、PDCCHを最後に正常に復号してから、さらなるPDCCHを正常に復号するのを待機する期間(単位:ダウンリンクサブフレーム)。UEは、この期間の間にPDCCHを正常に復号できないとき、再びDRXに入る。UEは、最初の送信(すなわち再送信ではない)のみについてPDCCHを1回正常に復号した後に、インアクティビティタイマを再起動する。[1~2560個のサブフレーム、22ステップ、10予備:1~6、8、10~60、80、100~300、500、750、1280、1920、2560]
- DRX再送信タイマ:最初の利用可能な再送信時間の後にUEがダウンリンク再送信を予測する、連続するPDCCHサブフレームの数を指定する。[1~33個のサブフレーム、8ステップ:1、2、4、6、8、16、24、33]
- 短DRXサイクル:短DRXサイクルにおいてオン期間の後に非アクティブ期間が続く周期的な反復を指定する。このパラメータはオプションである。[2~640個のサブフレーム、16ステップ:2、5、8、10、16、20、32、40、64、80、128、160、256、320、512、640]
- 短DRXサイクルタイマ:DRXインアクティビティタイマが切れた後にUEが短DRXサイクルに従う、連続するサブフレームの数を指定する。このパラメータはオプションである。[1~16個のサブフレーム]
- 長DRXサイクル開始オフセット:長DRXサイクルにおいてオン期間の後に非アクティブ期間が続く周期的な反復と、オン期間が開始するときのオフセット(単位:サブフレーム)を指定する(非特許文献2の第5.7節に定義されている式によって求められる)。[サイクル長10~2560個のサブフレーム、16ステップ:10、20、30、32、40、64、80、128、160、256、320、512、640、1024、1280、2048、2560。オフセットは[0~選択されたサイクルのサブフレーム長]の間の整数]
【0039】
UEが起動している合計期間は、「アクティブ時間」と称される。アクティブ時間には、DRXサイクルのオン期間と、インアクティビティタイマが切れていない間にUEが連続受信を行っている時間と、1 HRQ RTTの後にダウンリンク再送信を待機している間にUEが連続受信を行っている時間とが含まれる。同様に、アップリンクの場合、UEは、アップリンク再送信グラントを受信できるサブフレーム(すなわち最初のアップリンク送信の後、再送信の最大回数に達するまでの8ms毎)において起動している。上記に基づくと、最小アクティブ時間は、オン期間に等しい長さであり、最大アクティブ時間は未定義(無限大)である。
【0040】
DRXの動作は、電力を節約する目的で、(その時点で有効なDRXサイクルに従って)反復的に無線回路を非アクティブにする機会を移動端末に提供する。DRX期間中にUEが実際にDRX(すなわちアクティブではない)状態のままであるかは、UEによって決定することができる。例えば、UEは通常では周波数間測定を実行するが、この測定はオン期間の間に実施することができず、したがって、DRX機会の間の他の何らかの時間に実行する必要がある。
【0041】
DRXサイクルをパラメータ化するときには、バッテリの節約と遅延(レイテンシ)との間のトレードオフを伴う。例えば、ウェブブラウジングサービスの場合、ダウンロードされたウェブページをユーザが読んでいる間、UEがダウンリンクチャネルを連続的に受信することは、通常ではリソースの無駄である。長いDRX期間は、UEのバッテリの寿命を延ばすうえで有利である。これに対して、短いDRX期間は、データ伝送が再開されるときに(例えばユーザが別のウェブページを要求するときに)より高速に応答するうえで有利である。
【0042】
これらの矛盾する要件を満たすため、各UEに対して2つのDRXサイクル(短いサイクルと長いサイクル)を設定することができる。短DRXサイクルはオプションであり、すなわち長DRXサイクルのみが使用される。短DRXサイクル、長DRXサイクル、連続受信の間の遷移は、タイマによって、またはeNodeBからの明示的なコマンドによって制御される。短DRXサイクルは、ある意味、パケットが遅れて到着する場合における、UEが長DRXサイクルに入る前の確認期間とみなすことができる。UEが短DRXサイクルにある間にeNodeBにデータが到着する場合、そのデータを送信するためのスケジューリングが次のオン期間において行われ、次いでUEは連続受信を再開する。これに対して、短DRXサイクルの間にeNodeBにデータが到着しない場合、UEは、当面の間はパケット送信が終了したものと想定して長DRXサイクルに入る。
【0043】
UEは、アクティブ時間の間、PDCCHを監視し、SRS(Sounding Reference Signal)を報告し(設定されているとき)、CQI(チャネル品質情報)/PMI(Precoding Matrix Indicator)/RI(Rank Indicator)/PTI(Precoder Type Indication)をPUCCHで報告する。UEがアクティブ時間にないときには、トリガータイプ0のSRS(type-0-triggered SRS)およびCQI/PMI/RI/PTIをPUCCHで報告することはできない。UEに対してCQIマスキングが設定されている場合、PUCCHでのCQI/PMI/RI/PTIの報告は、オン期間に制限される。
【0044】
利用可能なDRX値は、ネットワークによって制御され、非DRXから開始してx秒までである。値xは、RRC_IDLEにおいて使用されるページングDRXと同じ長さとすることができる。測定要件および報告基準は、DRX間隔の長さに従って異なることがあり、すなわち長いDRX間隔では、要件をより緩和することができる(後からさらに詳しく説明する)。DRXが設定されているとき、UEは「アクティブ時間」の間にのみ周期的なCQI報告を送ることができる。RRCは、周期的なCQI報告がオン期間の間にのみ送られるように、周期的なCQI報告をさらに制約することができる。
【0045】
図7は、DRXの例を開示している。UEは、その時点で有効なサイクルに応じて長DRXサイクルまたは短DRXサイクルのいずれかの「オン期間」の間、スケジューリングメッセージ(PDCCH上のC-RNTI(Cell-Radio Network Temporary Identity)によって示される)がないかチェックする。「オン期間」の間にスケジューリングメッセージが受信されたときには、UEは、「インアクティビティタイマ」を起動し、インアクティビティタイマが作動している間、各サブフレームにおいてPDCCHを監視する。この期間中、UEは連続受信モードにあるものとみなすことができる。インアクティビティタイマが作動している間にスケジューリングメッセージが受信されると、UEはインアクティビティタイマを再起動し、インアクティビティタイマが切れたとき、UEは短DRXサイクルに移行し、「短DRXサイクルタイマ」を起動する。短DRXサイクルは、MAC制御エレメントによって開始することもできる。短DRXサイクルタイマが切れると、UEは長DRXサイクルに移行する。
【0046】
このDRX挙動に加えて、HARQ RTTの間にUEがスリープできるようにする目的で、「HARQラウンドトリップタイム(RTT)タイマ」が定義される。1つのHARQプロセスにおけるダウンリンクトランスポートブロックの復号に失敗すると、UEは、そのトランスポートブロックの次の再送信が、少なくとも「HARQ RTT」のサブフレームの後に行われるものと想定することができる。HARQ RTTタイマが作動している間、UEはPDCCHを監視する必要がない。HARQ RTTタイマが切れると、UEは通常どおりにPDCCHの受信を再開する。
【0047】
UEあたり1つのみのDRXサイクルが存在する。アグリゲートされたコンポーネントキャリアすべてがこのDRXパターンに従う。
【0048】
アップリンク電力制御
移動通信システムにおけるアップリンク送信電力制御は重要な目的を果たす。アップリンク送信電力制御は、要求されるサービス品質(QoS)が達成されるようにビットあたり十分なエネルギを送信する必要性と、システムの別のユーザとの干渉を最小限にし、かつ移動端末のバッテリ寿命を最大にする必要性との間でバランスをとる。この目的を達成する中で、電力制御(PC)の役割は、要求されるSINRを提供すると同時に、隣接セルに引き起こされる干渉を制御するうえで極めて重要となる。アップリンクにおける古典的な電力制御方式の発想では、すべてのユーザが同じSINRで受信する(完全な補償(full compensation)として知られている)。3GPPでは、これに代えて、LTEにおいて部分電力制御(FPC:Fractional Power Control)の使用を採用した。この新しい機能では、パスロスの大きいユーザは低いSINR要件で動作し、したがって多くの場合、隣接セルに引き起こされる干渉が小さい。
【0049】
LTEにおいては、PUSCH(Physical Uplink Shared Channel)、PUCCH(Physical Uplink Control Channel)、およびSRS(Sounding Reference Signal)について、詳細な電力制御式が指定されている(電力制御式に関するさらなる詳細については、例えば非特許文献3の5.1節を参照)(3GPPのウェブサイトにおいて入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)。これらのアップリンク信号それぞれの電力制御式は、同じ基本原理に従う。いずれの場合も、電力制御式は、2つの主項、すなわちeNodeBによってシグナリングされる静的パラメータまたは半静的パラメータから導かれる、開ループの基本動作点と、サブフレームごとに更新される動的オフセット(補正)、の合計と考えることができる。
【0050】
リソースブロックあたりの送信電力を決めるための、開ループの基本動作点は、セル間干渉やセル負荷など複数の要因に依存する。開ループの基本動作点は、さらに2つの要素として、半静的な基本レベルP0(セル内のすべてのUEの共通電力レベル(測定単位:dBm)とUEに固有なオフセットとからなる)と、開ループのパスロス補償の要素とに、分解することができる。リソースブロックあたりの電力の動的オフセットの部分は、さらに2つの要素として、変調・符号化方式(MCS)に依存する要素と、明示的な送信電力制御(TPC:Transmitter Power Control)コマンドとに、分解することができる。
【0051】
変調・符号化方式に依存する要素(LTE仕様ではΔTFと称し、TFは「トランスポートフォーマット」を表す)は、リソースブロックあたりの送信電力を、送信される情報のデータレートに従って適合させることができる。
【0052】
動的オフセットのもう1つの要素は、UEに固有な送信電力制御(TPC)コマンドである。このコマンドは、2種類のモード、すなわち、累積TPC(accumulative TPC)コマンド(PUSCH、PUCCH、およびSRSに対して利用できる)と、絶対TPCコマンド(PUSCHに対してのみ利用できる)とにおいて、動作することができる。PUSCHに対する、これら2つのモードの間の切替えは、UEごとにRRCシグナリングによって半静的に設定される(すなわち、モードを動的に変更することはできない)。累積TPCコマンドの場合、各TPCコマンドは、前のレベルを基準としたときの電力ステップをシグナリングする。
【0053】
電力ヘッドルームの報告
eNodeBが複数のUEに対してアップリンク送信リソースを適切にスケジューリングすることを支援する目的で、UEは、利用可能な電力ヘッドルームをeNodeBに報告できることが重要である。
【0054】
eNodeBは、UEが使用することのできる、サブフレームあたりのさらなるアップリンク帯域幅を、電力ヘッドルーム報告を使用して決定することができる。これは、リソースの無駄を回避する目的で、アップリンク送信リソースを使用することができないUEにリソースが割り当てられることを避ける役割を果たす。
【0055】
電力ヘッドルーム報告の範囲は、+40~-23dBである(非特許文献4の9.1.8.4節を参照)(3GPPのウェブサイトにおいて入手可能であり、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)。範囲の負の部分は、UEが受信したアップリンクグラントによって、自身が利用できるよりも多くの送信電力が要求される場合に、電力の不足の程度をeNodeBにシグナリングすることができる。これにより基地局は、次のグラントのサイズを小さくすることができ、送信リソースが解放されて別のUEに割り当てられる。
【0056】
電力ヘッドルーム報告は、UEがアップリンク送信グラントを有するサブフレームにおいてのみ送ることができる。報告は、送られるサブフレームに関連する。したがって、ヘッドルーム報告は、直接的な測定ではなく予測である。UEは、報告が送信されるサブフレームの実際の送信電力ヘッドルームを直接測定することはできない。したがって、ヘッドルーム報告は、UEの電力増幅器出力の較正が十分に正確であることに依存する。
【0057】
電力ヘッドルーム報告をトリガーするための複数の基準として、以下が定義されている。
- 前回の電力ヘッドルーム報告以降に、推定されるパスロスが大きく変化した。
- 前回の電力ヘッドルーム報告から、設定されている以上の時間が経過した。
- 設定されている数を超える閉ループTPCコマンドがUEによって実行された。
【0058】
eNodeBは、これらのトリガーそれぞれを制御するパラメータを、システムの負荷状況と、スケジューリングアルゴリズムの要件とに応じて、設定することができる。具体的には、RRCが、2つのタイマ(電力ヘッドルーム報告の周期タイマ(periodicPHR-Timer)および電力ヘッドルーム報告の禁止タイマ(prohibitPHR-Timer))を設定し、測定されたダウンリンクパスロスの変化を示すdl-PathlossChangeをシグナリングして電力ヘッドルーム報告をトリガーすることによって、電力ヘッドルーム報告を制御する。
【0059】
電力ヘッドルーム報告は、MAC制御エレメントとして送られる。MAC制御エレメントは1オクテットからなり、上位の2ビットが予約されており、下位の6ビットが、上述した64dB値(1dB間隔)を表す。
図8は、リリース8の電力ヘッドルーム報告のMAC制御エレメントの構造を示している。
【0060】
サブフレームiにおけるUEの有効な電力ヘッドルームPH[dB]は、次式によって定義される(非特許文献3の5.1.1.2節を参照)。
PH(i)=PCMAX-{10log10(MPUSCH(i))+P0_PUSCH(j)+a(j)・PL+ΔTF(i)+f(i)} (式1)
電力ヘッドルームは、範囲[40;-23]dB(1dB間隔)の中の最も近い値に丸められる。PCMAXは、最大総UE送信電力(またはUEの最大総送信電力)であり、PCMAX_L~PCMAX_Hの所定の範囲内で、以下の制約に基づいてUEによって選択される値である。
PCMAX_L≦PCMAX≦PCMAX_H
PCMAX_L=min(PEMAX-ΔTC,PPowerClass-MPR-AMPR-ΔTC)
PCMAX_H=min(PEMAX,PPowerClass)
PEMAXはネットワークによってシグナリングされる値であり、MPR、AMPR(A-MPRとも表される)、およびΔTCは、ΔTC、MPR、およびA-MPR(追加最大電力低減:Additional Maximum Power Reduction、A-MPRとも表される)は、非特許文献5(3GPPのウェブサイトにおいて入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)の6.2節に定義されている。
【0061】
MPRは電力低減値(いわゆる最大電力低減)であり、さまざまな変調方式および送信帯域幅に関連付けられるACLR(Adjacent Channel Leakage Power Ratio:隣接チャネル漏洩電力比)を制御するために使用される。
【0062】
A-MPRは、追加最大電力低減である。この値は帯域に固有であり、ネットワークによって設定されるときに適用される。したがって、Pcmaxは、UEの実装に固有であり、したがってeNBには認識されていない。
【0063】
キャリアアグリゲーションにおけるアップリンク電力制御
LTE-Advanceにおけるアップリンク電力制御の1つの主要ポイントは、コンポーネントキャリアに固有なアップリンク電力制御がサポートされることであり、すなわち、ユーザに設定されているアップリンクコンポーネントキャリアごとに1つの独立した電力制御ループが存在する。さらには、コンポーネントキャリアごとに電力ヘッドルームが報告される。
【0064】
リリース10では、キャリアアグリゲーションの範囲内において、2種類の最大電力限度として、最大総UE送信電力と、コンポーネントキャリアに固有な最大送信電力とが存在する。RAN1は、#60bis会合において、コンポーネントキャリアごとに報告される電力ヘッドルーム報告が最大電力低減(MPR)を考慮することに合意した。言い換えれば、UEによって適用される電力低減は、コンポーネントキャリアに固有な最大送信電力PCMAX,c(cはコンポーネントキャリアを表す)において考慮される。すでに前述したように、MPR/A-MPRの目的は、信号の品質、スペクトル放射マスク、およびスプリアス放射に関する要件を満たすことができるように、移動端末が自身の最大送信電力を下げることを可能にすることである。
【0065】
すでに前述したように、値MPR/A-MPRの目的は、信号の品質、スペクトル放射マスク、およびスプリアス放射に関する要件を満たすことができるように、移動端末が自身の最大送信電力を下げることを可能にすることである。
【0066】
リリース10では、MPRおよびA-MPRに加えて、特に別のRAT(無線アクセス技術)での同時送信が行われるときに自身のLTE総出力電力を制限しなければならないマルチRAT端末を考慮する目的で、いわゆる電力管理MPR(P-MPRとも称する)が導入された。このような電力制限は、例えば、ユーザの身体中への無線エネルギの比吸収率(SAR)に関する規制や、同時無線送信の相互変調積(inter-modulation product)によって影響されうる帯域外放射要件から生じうる。P-MPRは、MPR/A-MPRと合計されず、なぜなら、後者の要因に対してUEの最大出力電力を低減することが、P-MPRを必要とする要件を満たすうえで役立つためである。
【0067】
したがってUEは、追加の電力管理MPR(P-MPR)を考慮して、自身の公称最大送信電力PCMAX(すなわちUEにおいて利用可能な最大送信電力)を以下の式に従って設定する。
PCMAX_L≦PCMAX≦PCMAX_H
PCMAX_L=MIN{PEMAX-ΔTC,PPowerClass-max(MPR+A-MPR,P-MPR)-ΔTC}
PCMAX_H=MIN{PEMAX,PPowerClass}
【0068】
キャリアアグリゲーションの場合、PCMAXはPCMAX,c(コンポーネントキャリアに固有な最大送信電力)となる。本質的には、サービングセルcに対して設定される最大出力電力は、次の範囲内で設定される。
PCMAX_L,c≦PCMAX,c≦PCMAX_H,c
【0069】
2つの異なるアグリゲーション方式が考慮され、一方の方式では、アグリゲートされるキャリアが同じ周波数帯域内であり、もう一方の方式では、異なる周波数帯域のキャリアがアグリゲートされる。
同一周波数帯域の連続的なキャリアアグリゲーションの場合:
PCMAX_L,c=MIN{PEMAX,c-ΔTC,c,PPowerClass-MAX(MPRc+A-MPRc+ΔTIB,c,P-MPRc)-ΔTC,c}
異周波数帯域のキャリアアグリゲーションの場合:
PCMAX_L,c=MIN{PEMAX,c-ΔTC,c,PPowerClass-MAX(MPRc+A-MPRc+ΔTIB,c,P-MPRc)-ΔTC,c}
PCMAX_H,c=MIN(PEMAX,c,PPowerClass)
PEMAX,cは、非特許文献6においてサービングセルcのIE P-Maxによって与えられる値である。
【0070】
異周波数帯域キャリアアグリゲーションの場合、MPRcおよびA-MPRcは、サービングセルcごとに適用される、すなわち、サービングセルごとに個別のMPRおよびA-MPRが存在する。同一周波数帯域の連続的なキャリアアグリゲーションの場合、MPRc=MPRであり、A-MPRc=A-MPRである。P-MPRcは、サービングセルcの電力管理の項である。同一周波数帯域の連続的なキャリアアグリゲーションの場合、UEの1つの電力管理項P-MPRが存在し、P-MPRc=P-MPRである。
【0071】
2つのアップリンクサービングセルを含むキャリアアグリゲーションの場合、設定される最大総出力電力PCMAXは、次の範囲内で設定される。
PCMAX_L_CA≦PCMAX≦PCMAX_H_CA
同一周波数帯域の連続的なキャリアアグリゲーションの場合:
PCMAX_L_CA=MIN{10・log10ΣpEMAX,c-ΔTC,PPowerClass-MAX(MPR+A-MPR+ΔTIB,c,P-MPR)-ΔTC}
PCMAX_H_CA=MIN{10・log10ΣpEMAX,c,PPowerClass}
式中、pEMAX,cは、RRCシグナリングによって与えられるPEMAX,cの線形値(linear value)である(詳細については参照によって本明細書に組み込まれている非特許文献6を参照)。
動作帯域ごとに最大で1つのサービングセルcを含む異周波数帯域キャリアアグリゲーションの場合:
PCMAX_L_CA=MIN{10・log10ΣMIN[pEMAX,c/(ΔtC,c),pPowerClass/(mprc・a-mprc・ΔtC,c・ΔtIB,c),pPowerClass/(p-mprc・ΔtC,c)],PPowerClass}
PCMAX_H_CA=MIN{10・log10ΣpEMAX,c,PPowerClass}
式中、pEMAX,cは、非特許文献6によって与えられるPEMAX,cの線形値である。MPRcおよびA-MPRcは、サービングセルcごとに適用され、それぞれ、非特許文献5(参照によって本明細書に組み込まれている)の6.2.3節および6.2.4節に規定されている。mprcはMPRcの線形値であり、a-mprcはA-MPRcの線形値である。P-MPRcは、サービングセルcの電力管理を考慮する。p-mprcはP-MPRcの線形値である。
【0072】
コンポーネントキャリアに固有な最大送信電力またはUEの最大総送信電力の定義に関するさらなる詳細は、非特許文献5(参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されている。
【0073】
リリース8/9とは異なり、LET-Aの場合、UEは、PUSCHとPUCCHの同時送信、マルチクラスタスケジューリング、および複数のコンポーネントキャリアでの同時送信にも対処しなければならず、これらの処理では、リリース8/9と比較して大きなMPR値が要求され、さらに、適用されるMPR値の変動が大きい。
【0074】
なお、eNBは、各コンポーネントキャリアに対してUEによって適用される電力低減を認識しておらず、なぜなら実際の電力低減は、割当てのタイプ、標準化されているMPR値、さらにはUEの実装に依存するためである。したがって、eNBは、UEがPHRを計算するときの基準となるコンポーネントキャリアに固有な最大送信電力を認識していない。リリース8/9においては、例えばUEの最大送信電力Pcmaxは、上述したように何らかの特定の範囲内とすることができる。
PCMAX_L≦PCMAX≦PCMAX_H
【0075】
コンポーネントキャリアの最大送信電力にUEによって適用される電力低減は、eNBによって認識されないため、リリース10においては、新規の電力ヘッドルームMAC制御エレメント(拡張電力ヘッドルームMAC制御エレメントとも称される)を導入することが合意された。リリース8/9における電力ヘッドルーム(PHR)MAC制御エレメントのフォーマットとの主たる違いとして、新規の電力ヘッドルームには、アクティブなアップリンクコンポーネントキャリアごとにリリース8/9の電力ヘッドルーム値が含まれ、したがって新規の電力ヘッドルームは可変サイズである。さらに、新規の電力ヘッドルームは、コンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム値のみならず、対応するPcmax,c(インデックスcを有するコンポーネントキャリアの最大送信電力)も報告する。PUSCHおよびPUCCHの同時送信を考慮する目的で、UEは、PCellについて、PUSCHのみの送信に関連するリリース8/9の電力ヘッドルーム値(タイプ1の電力ヘッドルームと称する)を報告し、UEがPUSCHおよびPUCCHの同時送信に対応するように構成されている場合、PUCCHおよびPUSCHの送信を考慮するさらなる電力ヘッドルーム値(タイプ2の電力ヘッドルームとも称する)を報告する。
【0076】
MPR/A-MPR電力低減によって、またはP-MPRを適用することに起因して、最大送信電力が低減されたかをeNB側で認識できるようにする目的で、拡張電力ヘッドルームMAC CEに1ビットのインジケータ(Pビットとも称する)が導入された。より詳細には、電力管理による電力バックオフ(P-MPR)が適用されていない場合に、対応する最大送信電力(PCMAX,c)が異なる値を持つならば、UEはP=1を設定する。本質的に、このPビットは、P-MPRによって影響されるPHR報告を、eNBにおけるMPR学習アルゴリズム(MPR-learning algorithm)から削除する目的で、eNBによって使用され、すなわちeNBは、特定のリソース割当てに対してUEが使用するMPR値を内部テーブルに格納する。
【0077】
図9に示した拡張電力ヘッドルームMAC制御エレメントに関するさらなる詳細については、例えば非特許文献2(3GPPのウェブサイトにおいて入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)の6.1.3.6a節を参照されたい。
【0078】
タイプ1の電力ヘッドルームは、実際にPUSCHが送信されないサブフレームについても報告することができる。この特殊なPHRは、仮想PHRとも称される。このような場合、上に示した電力ヘッドルーム報告の式における10log10(MPUSCH(i))およびΔTF,c(i)を0に設定する。パスロス(PL)の値、受信したTPCコマンドf(i)の値、およびコンポーネントキャリアに固有な他の定数(P0_PUSCH(j),a)の値は、たとえアップリンクデータ送信が行われない場合にも、アップリンクコンポーネントキャリアに対して決定することができる。
PHvirtual,c(i)=PCMAX,H,c-{P0_PUSCH(j)+a(j)+PLc+f(i)}
【0079】
この値は、最小限のリソース割当て(M=1)と、ΔTF,c(i)=0dBに関連付けられる変調・符号化方式とに対応するデフォルトの送信設定を想定したときの電力ヘッドルームとみなすことができる。
キャリアに固有な最大送信電力P~CMAX,c(i)は、以下を想定して計算される。
MPR=0dB
A-MPR=0dB
P-MPR=0dB
ΔTC=0dB
本質的に、P~CMAX,c(i)は、PCMAX_H,c=MIN{PEMAX,c,PPowerClass}に等しい。
【0080】
タイプ1の電力ヘッドルーム報告と同様に、タイプ2の電力ヘッドルームは、PUSCHのPUCCHの一方または両方が送信されないサブフレームについて報告することができる。この場合、最小限のリソース割当て(M=1)と、PUSCHについてはΔMCS=0dB、およびPUCCHについては0に設定されたh(nCQI,nHARQ,nSR),ΔF_PUCCH(F),ΔTxD(F’)を想定して、PUSCHもしくはPUCCHまたはその両方の仮想送信電力が計算される。電力ヘッドルームの計算に関するさらなる詳細については、参照によって本明細書に組み込まれている非特許文献3に記載されている。
【0081】
スモールセル
モバイルデータの爆発的な需要によって、移動体事業者が、より高い容量およびユーザ体感品質(QoE)の向上という難しい要求に応えていくために必要な方策が変わりつつある。現在、3G/3.5Gシステムよりも低いレイテンシかつ高い効率でのより高速なアクセスを提供する目的で、LTEを使用した第4世代の無線アクセスシステムが世界中の多くの事業者によって配備されつつある。それにもかかわらず、予測される今後のトラフィックの拡大は極めて大きく、特に、最大量のトラフィックが発生する高トラフィックエリア(ホットスポットエリア)においては、要求される容量に対処するため、ネットワークをさらに高密度化する必要性が大幅に高まる。ネットワークの高密度化(ネットワークノードの数を増やすことによって、ユーザ端末からネットワークノードまでの物理的距離を縮める)は、トラフィック容量を向上させて無線通信システムの達成可能なユーザデータ速度を高めるうえで鍵を握る方策である。
【0082】
ネットワークの高密度化は、マクロノードの配備を単純に高密度化することに加えて、既存のマクロノードレイヤ(macro-node layer)のカバレッジのもとで補助的な低電力ノード(low-power node)またはスモールセルを配備することによって、達成することができる。このように異なるタイプのノードを配備する場合、低電力ノードは、局所的に(例えば屋内および屋外のホットスポットエリアにおいて)、極めて高いトラフィック容量および極めて高いユーザスループットを提供する。その一方で、マクロレイヤは、カバレッジエリア全体にわたりサービスの可用性およびQoEを確保する。言い換えれば、低電力ノードを含むレイヤは、広いエリアをカバーするマクロレイヤとは対照的に、ローカルエリアアクセスを提供するとも言える。
【0083】
低電力ノードまたはスモールセルの設置と、異なるタイプのノードの配備は、LTEの最初のリリースから可能である。これに関連して、LTEの最近のリリース(すなわちリリース10/11)において、多数の解決策が規定されている。より具体的には、これらのリリースでは、異なるタイプのノードが配備されているときのレイヤ間干渉に対処するための追加の方策・機能が導入された。パフォーマンスをさらに最適化し、コストおよびエネルギの面で効率的な動作を提供するためには、スモールセルにさらなる機能強化が要求され、多くの場合、既存のマクロセルと情報をやりとりする、あるいはマクロセルを補助する必要がある。このような解決策は、LETリリース12以降のさらなる進化・発展において検討されるであろう。特に、低電力ノードと、異なるタイプのノードの配備に関連するさらなる機能強化は、新しいリリース12のStudy Item(SI)である「Study on Small Cell Enhancements for E-UTRA and E-UTRAN」のもとで考慮される。これらの検討作業のいくつかでは、低電力レイヤおよびデュアルレイヤコネクティビティをマクロレイヤがさまざまな形で支援するなど、マクロレイヤと低電力レイヤとの間のインターワーキングをさらに高いレベルで達成することに焦点が当てられる。デュアルコネクティビティは、デバイスがマクロレイヤおよび低電力レイヤの両方に同時に接続することを意味する。
【0084】
以下では、スモールセルの機能強化に関するこのStudy Itemにおいて想定されている、配備上のいくつかのシナリオについて説明する。以下のシナリオにおいては、非特許文献7において非理想的バックホール(non-ideal backhaul)として分類されているバックホール技術が想定される。
【0085】
理想的バックホール(すなわち、光ファイバを使用する専用ポイントツーポイント接続など、スループットが極めて高くレイテンシが極めて低いバックホール)と、非理想的バックホール(すなわち、xDSL、マイクロ波、その他のバックホール(例:中継)など、市場において広く使用されている一般的なバックホール)の両方を検討するべきである。この場合、パフォーマンスとコストのトレードオフを考慮するべきである。
【0086】
次の表は、事業者からの情報に基づく非理想的バックホールの分類を示している。
【表1】
【0087】
このStudy Itemでは、遠隔無線ヘッド(RRH:Remote Radio Head)を配備するために使用することのできるファイバアクセスは想定されていない。ホーム基地局(HeNB)は除外されないが、たとえホーム基地局の送信電力がピコ基地局(Pico eNB)の送信電力より低い場合でも、配備のシナリオおよび課題に関してピコ基地局と区別されない。以下の3つのシナリオが考慮されている。
【0088】
シナリオ1は、
図10に示してあり、同じキャリア周波数(同一周波数)のマクロセルとスモールセルとが非理想的バックホールを介して接続される配備シナリオである。ユーザは、屋外および屋内の両方に分布する。
【0089】
シナリオ2は、
図11および
図12に示してあり、異なるキャリア周波数(異周波数)のマクロセルとスモールセルとが非理想的バックホールを介して接続される配備シナリオである。ユーザは、屋外および屋内の両方に分布する。本質的に2つの異なるシナリオ2が存在し(本明細書においてはシナリオ2aおよびシナリオ2bと称する)、違いとして、シナリオ2bにおいてはスモールセルの屋内配備が考慮される。
【0090】
シナリオ3は、
図13に示してあり、1つまたは複数のキャリア周波数のスモールセルのみが非理想的バックホールリンクを介して接続される配備シナリオである。
【0091】
配備シナリオごとに、さらに検討する必要のある異なる課題/問題が存在する。Study Itemの段階で、各配備シナリオにおけるこのような課題が認識され、非特許文献8に記載されている。これらの課題/問題に関するさらなる詳細については、この非特許文献8を参照されたい。
【0092】
非特許文献8の5節に記載されている認識された課題を解決する目的で、このStudy Itemでは、非特許文献7に規定されている要件に加えて、以下の設計目標が考慮されている。
モビリティ(移動性)の堅牢性(ロバスト性)に関して:
- RRC_CONNECTED状態のUEにおいては、スモールセルの配備によって達成されるモビリティのパフォーマンスは、マクロセルのみのネットワークにおけるモビリティのパフォーマンスに匹敵するべきである。
頻繁なハンドオーバーに起因するシグナリング負荷の増大に関して:
- 新しい解決策は、コアネットワークに向かうシグナリング負荷が過度に増大する結果とならないようにするべきである。しかしながら、スモールセルの機能強化に起因する追加のシグナリング負荷およびユーザプレーントラフィック負荷も考慮するべきである。
ユーザあたりのスループットおよびシステム容量の改善に関して:
- QoS要件を考慮しながら、理想的バックホールの配備の場合に近いユーザあたりのスループットおよびシステム容量を達成する目的で、マクロセルおよびスモールセルにまたがって無線リソースを利用することを目標とするべきである。
【0093】
デュアルコネクティビティ
3GPP RANワーキンググループにおいて現在検討されている問題に対する1つの有望な解決策は、いわゆる「デュアルコネクティビティ」のコンセプトである。用語「デュアルコネクティビティ」は、1つのUEが、非理想的バックホールを介して接続されている少なくとも2つの異なるネットワークノードによって提供される無線リソースを消費する動作を意味する。本質的には、UEは、マクロセル(マクロeNB)とスモールセル(セカンダリeNBまたはスモールeNB)の両方に接続される。さらに、UEのデュアルコネクティビティに関与する各eNBは、異なる役割を担うことができる。これらの役割は必ずしもeNBの電力クラスに依存せず、またUEごとに異なっていてよい。
【0094】
このStudy Itemは現時点では極めて初期段階にあるため、デュアルコネクティビティに関する詳細はまだ決定されていない。例えば、アーキテクチャがまだ合意されていない。したがって、現時点では多くの課題/細部(例えばプロトコルの機能強化)が依然として決まっていない。
図14は、デュアルコネクティビティの例示的なアーキテクチャを示している。ただしこのアーキテクチャは、1つの可能なオプションにすぎないことを理解されたい。本開示は、この特定のネットワーク/プロトコルのアーキテクチャに限定されず、さらに一般的に適用することができる。本明細書においては、アーキテクチャに関して以下を想定する。
- 各パケットを処理するセルをベアラレベルで決定し、制御プレーンとユーザプレーンを分割する。一例として、UEへのRRCシグナリングと、VoLTEなど高いQoSのデータは、マクロセルによって処理することができ、ベストエフォート型データはスモールセルが処理する。
- ベアラ間の結合は行わない。したがって、マクロセルとスモールセルとの間に共通のPDCPやRLCは要求されない。
- RANノード間の協調は緩い。
- スモールeNB(SeNB)はサービングゲートウェイ(S-GW)に接続しない(すなわちパケットはマクロeNB(MeNB)によって転送される)。
- スモールセルはコアネットワーク(CN)に透過的である。
【0095】
最後の2つの想定に関して、スモールeNBがサービングゲートウェイに直接接続する(すなわちS1-UはサービングゲートウェイとスモールeNBとの間である)ことも可能であることに留意されたい。ベアラのマッピング/分割に関して、本質的には以下の3つの異なるオプションが存在する。
- オプション1:S1-UがスモールeNBにおいても終端する(
図15Aに示した)。
- オプション2:S1-UがマクロeNBにおいて終端し、ベアラはRAN内で分割されない(
図15Bに示した)。
- オプション3:S1-UがマクロeNBにおいて終端し、ベアラはRAN内で分割される(
図15Cに示した)。
【0096】
図15A~
図15Cは、一例としてユーザプレーンデータのダウンリンク方向に関する3つのオプションを示している。説明を目的として、本出願においては主としてオプション2が想定されており、
図14もオプション2に基づいている。
【0097】
図15A~
図15Cに示したようにユーザプレーンデータの分割に関する検討に加えて、ユーザプレーンのアーキテクチャに関してさまざまな代替形態も検討されている。
【0098】
共通する認識として、S1-UインタフェースがマクロeNBにおいて終端するときには(
図15B、
図15C)、スモールeNBにおけるプロトコルスタックは、少なくともRLC(再)セグメンテーションをサポートしなければならない。この理由として、RLC(再)セグメンテーションは物理インタフェースに密接に関連する動作であり(例:MACレイヤがRLC PDUのサイズを示す)(上の説明を参照))、非理想的バックホールが使用されるときには、RLC PDUを送信するノードと同じノードにおいてRLC(再)セグメンテーションを行わなければならないためである。
【0099】
従来技術の電力制御の欠点
前のセクションで説明したように、スモールセルおよびデュアルコネクティビティは最近開発されたばかりであり、効率的なシステムを可能にするために対処する必要のあるいくつかの問題点が依然として存在する。
【0100】
上に説明したデュアルコネクティビティのシナリオでは、リリース12において、UEからマクロeNBおよびスモールeNBの両方への同時アップリンク送信(デュアル送信とも称される)がサポートされる。2つの独立したスケジューラ(一方はマクロeNBに属するスケジューラ、他方はスモールeNBに属するスケジューラ)が存在し、各スケジューラは、互いに独立してUEのアップリンク送信をスケジューリングする。より詳細には、一方のセルにおいてスケジューリングされたアップリンクリソース割当ては、他方のセルにおいて認識されない。言い換えれば、マクロeNBのスケジューラは、スモールeNBによって行われたアップリンクスケジューリングの決定を認識せず、逆も同様である。
【0101】
この理由のため、UEの電力が制限される(すなわち大きすぎる電力を伴う2つのアップリンク送信がスケジューリングされたときにUEの最大総送信電力を超える)確率が高まる。
【0102】
このことは
図16に示してあり、
図16は、2つのアップリンク送信(1つはマクロeNBへの送信、もう1つはスモールeNBへの送信)がUEに対してスケジューリングされて、電力が制限される状況を示している。図から明らかであるように、この同時のアップリンク送信では、UEの最大総送信電力を超え、このためUEは、2つのアップリンク送信に使用される合計電力がUEの最大総送信電力よりも低く維持されるように、これらのアップリンク送信に対して電力スケーリングを実行する。このような電力スケーリングにより、スケジューリングの効率およびパフォーマンスが低下する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0103】
【非特許文献1】3GPP TS 36.211, "Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Physical Channels and Modulation", version 8.9.0
【非特許文献2】3GPP TS 36.321, "Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Medium Access Control (MAC) protocol specification", version 10.0.0
【非特許文献3】3GPP TS 36.213, "Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Physical layer procedures", version 8.8.0
【非特許文献4】3GPP TS 36.133, "Requirements for support of radio resource management", version 8.7.0
【非特許文献5】3GPP TS 36.101, "Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); User Equipment (UE) radio transmission and reception", version 8.7.0
【非特許文献6】TS36.331
【非特許文献7】TR 36.932
【非特許文献8】TR 36.842
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0104】
本発明を制限することのない例示的な一実施形態は、移動局がマスター基地局およびセカンダリ基地局とのデュアルコネクティビティの状態にある移動通信システムにおいて、上述した従来技術の問題が回避される、電力制御の改良された方法を提供する。別の例示的な実施形態は、デュアルコネクティビティのシナリオの場合の改良された電力制御を支援するための電力ヘッドルーム報告方法を提供する。
【0105】
開示する実施形態のさらなる恩恵および利点は、本明細書および図面から明らかになるであろう。これらの恩恵および利点は、本明細書および図面に開示したさまざまな実施形態および特徴によって個別に提供することができ、これらの恩恵および利点の1つまたは複数を得るためにすべてを備える必要はない。
【課題を解決するための手段】
【0106】
一般的な一態様においては、本明細書に開示するマスター基地局は、無線通信システムにおいて電力ヘッドルーム報告の受信が可能なマスター基地局であって、前記マスター基地局は、第1の無線リンクを介してユーザ機器に接続可能であり、かつ、前記ユーザ機器は第2の無線リンクを介して少なくとも1つのセカンダリ基地局に接続可能であり、前記ユーザ機器により計算された第1の電力ヘッドルーム報告を、前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告とともに、前記ユーザ機器から受信する受信部、を備え、前記第1の電力ヘッドルーム報告は、前記ユーザ機器と前記マスター基地局との間の前記第1の無線リンクの電力ヘッドルームを計算したものであり、前記受信部は、前記ユーザ機器から前記マスター基地局への電力ヘッドルーム報告がトリガーされるたびに、常に、前記第1の電力ヘッドルーム報告を、セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告とともに、前記ユーザ機器から受信し、前記セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告は、前記ユーザ機器により、前記セカンダリ基地局と接続可能な前記第2の無線リンクを対象に事前に設定される仮想アップリンクリソース割当てに基づいて、前記ユーザ機器と前記セカンダリ基地局との間の前記第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を計算したものである。
【0107】
この一般的な態様は、システム、デバイス、およびコンピュータプログラムによって実施する、または、システム、デバイス、コンピュータプログラムの任意の組合せによって実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【
図1】3GPP LTEシステムの例示的なアーキテクチャを示している。
【
図2】3GPP LTEのE-UTRANアーキテクチャ全体の例示的な概要を示している。
【
図3】3GPP LTE(リリース8/9)において定義されているダウンリンクコンポーネントキャリアの例示的なサブフレーム境界を示している。
【
図4】3GPP LTE(リリース8/9)において定義されているダウンリンクスロットの例示的なダウンリンクリソースグリッドを示している。
【
図5】ダウンリンクのキャリアアグリゲーションが有効になっている状態における3GPP LTE-A(リリース10)のレイヤ2構造を示している。
【
図6】アップリンクのキャリアアグリゲーションが有効になっている状態における3GPP LTE-A(リリース10)のレイヤ2構造を示している。
【
図7】移動端末のDRX動作と、特に、短DRXサイクルおよび長DRXサイクルによるDRX機会およびオン期間を示している。
【
図8】3GPP LTE(リリース8/9)に定義されている電力ヘッドルーム報告(PHR)のMAC制御エレメントを示している。
【
図9】3GPP LTE(リリース10)に定義されている拡張電力ヘッドルーム報告(ePHR)のMAC制御エレメントを示している。
【
図10】スモールセルを機能強化するための配備シナリオとして、マクロセルとスモールセルが同じキャリア周波数を使用する場合を示している。
【
図11】スモールセルを機能強化するためのさらなる配備シナリオとして、マクロセルとスモールセルが異なるキャリア周波数を使用し、スモールセルが屋外である場合を示している。
【
図12】スモールセルを機能強化するためのさらなる配備シナリオとして、マクロセルとスモールセルが異なるキャリア周波数を使用し、スモールセルが屋内である場合を示している。
【
図13】スモールセルを機能強化するためのさらなる配備シナリオとして、スモールセルのみを備える場合を示している。
【
図14】マクロeNBおよびスモールeNBがコアネットワークに接続される二重接続における通信システムアーキテクチャの概要を示しており、S1-UインタフェースがマクロeNBにおいて終端し、RAN内でベアラが分割されない場合である。
【
図15A】サービングゲートウェイとUEとの間の2本の個別のEPSベアラを有する場合の複数の異なるオプションを示している。
【
図15B】サービングゲートウェイとUEとの間の2本の個別のEPSベアラを有する場合の複数の異なるオプションを示している。
【
図15C】サービングゲートウェイとUEとの間の2本の個別のEPSベアラを有する場合の複数の異なるオプションを示している。
【
図16】従来技術における、電力が制限されるシナリオを示しており、UEがマクロeNBおよびスモールeNBの両方に接続され、マクロeNBおよびスモールeNBのそれぞれが、自身にアップリンク送信するためのUEの出力電力を独立して制御する場合である。
【
図17】代替の一実施例による、電力パラメータP
EMAX,MeNBおよびP
EMAX,SeNBの初期値をマクロeNBからスモールeNBおよびUEに配信する状況を示している。
【
図18】別の代替実施例による、電力パラメータP
EMAX,MeNBおよびP
EMAX,SeNBの初期値をマクロeNBからスモールeNBおよびUEに配信する状況を示している。
【
図19】さらに別の代替実施例による、電力パラメータP
EMAX,MeNBおよびP
EMAX,SeNBの初期値をマクロeNBからスモールeNBおよびUEに配信する状況を示している。
【
図20】本開示の一実施例による、電力ヘッドルーム報告のMAC制御エレメント(CE)の構造を示しており、このMAC制御エレメントは、P
EMAX,SeNBと同じである仮想P
CMAX,SeNBをスモールeNBに知らせるために使用され、第2の無線リンクの拡張電力ヘッドルーム報告に加えて、第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告および仮想P
CMAX,SeNBがさらに含まれている。
【
図21】本開示の一実施例による、UEによって実行される修正改良された電力ヘッドルーム報告方法を示しており、第2の無線リンクの拡張電力ヘッドルーム報告がスモールeNBに送信され、第2の無線リンクのパスロスをマクロeNBに知らせるために、第1の無線リンクの拡張電力ヘッドルーム報告に加えて、第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告がさらに送信される。
【
図22】本開示の一実施例による、電力ヘッドルーム報告のMAC制御エレメントの構造を示しており、このMAC制御エレメントは、
図21のPHR送信に関連して使用することができ、すなわち第1の無線リンクの拡張電力ヘッドルーム報告と第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告を含む。
【
図23】第2の無線リンクの電力ヘッドルーム報告のMAC制御エレメントの構造を示しており、このMAC制御エレメントは、
図21のPHR送信に関連して使用することができ、すなわち第2の無線リンクの拡張電力ヘッドルーム報告を含む。
【発明を実施するための形態】
【0109】
以下では、移動局はデュアルコネクティビティの状態にあり、したがってマスター基地局およびセカンダリ基地局の両方にそれぞれの無線リンクを介して接続されているものと想定する。上に説明したように、この想定されたシナリオに関連する問題点の1つとして、マスター基地局およびセカンダリ基地局における2つのスケジューラが、互いに独立して移動局のアップリンク送信をスケジューリングする。さらなる問題点として、マスター基地局およびセカンダリ基地局は、移動局がこれらの基地局へのアップリンク送信に使用する電力についても、独立して制御する。
図16に例示的に示した、電力が制限される状況(すなわち移動局は自身の電力出力限界の範囲内となるように電力出力を下げるため電力スケーリングを実行する必要がある)を回避する目的で、本開示では以下のように提案する。
【0110】
本開示の第1の態様によると、移動局の電力制御を、主として単一の基地局(マスター基地局またはセカンダリ基地局)によって制御する。以下では、説明のみを目的として、本開示のこの第1の態様による電力制御は、マスター基地局によって実行され、セカンダリ基地局によって実行されないものと想定する。当然ながら、本開示のこの第1の態様は、移動局の電力を制御する基地局がセカンダリ基地局であるシナリオにも、対応する必要な変更を行ったうえで、適用される。
【0111】
したがって、マスター基地局は、移動局がアップリンク送信に利用できる最大出力電力を、マスター基地局へのアップリンク送信とセカンダリ基地局へのアップリンク送信の間で分配する役割を担う。2つの基地局の間での電力分配の比率は、基地局および目的の通信のさまざまなパラメータを考慮することによって定義することができ、この場合のパラメータは、例えば、移動局から2つの基地局への無線リンクにおけるパスロス、2つの基地局のトラフィック負荷、2つの基地局への2本の無線リンクに利用可能なリソース、のうちの1つまたは複数である。
【0112】
パスロスに関する情報は、マスター基地局において、例えば測定によって、または仮想電力ヘッドルーム報告を受信することによって、決定することができる(後の説明を参照)。負荷の情報は、セカンダリ基地局から直接受信する、またはマスター基地局が、セカンダリ基地局の無線ベアラを対象とする、受信したバッファ状態報告から導く。
【0113】
電力分配比率は、例えば、マスター基地局へのアップリンク送信用に、移動局の最大出力電力の50%、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用に、移動局の最大出力電力の残りの50%とすることができる。当然ながら、任意の別の電力分配比率(例えば40:60、75:25など)も可能である。
【0114】
したがって、マスター基地局は、2つのパラメータ、すなわち、1)マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,MeNB)、および、2)セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)、を決定する。これらのパラメータは、各基地局へのアップリンク送信を実行するときに移動局によって使用される。
【0115】
これらのパラメータを決定した時点で、他のエンティティ(すなわちセカンダリ基地局および移動局)にパラメータを知らせる。このステップは多数の方法において行うことができ、以下ではそのうちのいくつかを具体的に開示する。
【0116】
第1の代替方法によると、マスター基地局が、必要なパラメータをセカンダリ基地局および移動局に知らせるためのステップを実行し、すなわち、1)セカンダリ基地局へのアップリンク送信用として決定した移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)を、マスター基地局からセカンダリ基地局に送信し、2)セカンダリ基地局へのアップリンク送信用として決定した移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)を、マスター基地局から移動局に送信し、3)マスター基地局へのアップリンク送信用として決定した移動局の最大出力電力(PEMAX,MeNB)を、マスター基地局から移動局に送信する。
【0117】
第2の代替方法によると、マスター基地局は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用として決定した移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)を、セカンダリ基地局に送信し、マスター基地局へのアップリンク送信用として決定した移動局の最大出力電力(PEMAX,MeNB)を、移動局に送信する。次いで、第1の代替方法とは異なり、セカンダリ基地局が、マスター基地局から受信した、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)を、移動局に転送する。
【0118】
さらなる第3の代替方法によると、マスター基地局は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用として決定した移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)と、マスター基地局へのアップリンク送信用として決定した移動局の最大出力電力(PEMAX,MeNB)の両方を、移動局に送信する。次いで、移動局が、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用として決定された移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)に関する情報を、セカンダリ基地局に提供する。このステップは、さまざまな方法において行うことができ、例えば、第2の無線リンクに関する電力ヘッドルーム報告に関連する個別のパラメータとして、または第2の無線リンクに関する仮想電力ヘッドルーム報告の一部として、行うことができる(後からさらに詳しく説明する)。
【0119】
いずれの場合にも、2つの基地局および移動局は、電力分配に関する情報を取得し、したがって電力が制限される状況が生じるリスクを最小限に抑えて電力制御を実行することができ、なぜなら、アップリンクスケジューリングおよび電力制御は、移動局の利用可能な最大出力電力を超えないように基地局によって実行されるためである。
【0120】
この第1の態様に関連するさらなる改良形態によると、マスター基地局によって最初に定義される電力分配比率を監視し、(必要な場合に)更新する。特に移動局は、これに関連して必要な情報を、電力分配を制御する役割を担うマスター基地局に提供する。すでに上述したように、マスター基地局が電力分配比率を決定するときの基礎となる1つの基準は、移動局とマスター基地局、および移動局とセカンダリ基地局の間のそれぞれの無線リンクにおけるパスロスに関する情報である。したがって、移動局は、パスロスに関する適切な情報をマスター基地局に提供することによって、電力分配比率を更新できるようにマスター基地局を支援する。
【0121】
最初に、マスター基地局は、移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクにおけるパスロスに関する情報を、移動局から受信される、第1の無線リンクに関する通常の電力ヘッドルーム報告から決定することができる。電力ヘッドルーム報告の中の電力ヘッドルーム値は、マスター基地局への第1の無線リンクにおけるパスロスに関する情報に基づいて移動局によって計算され、したがってマスター基地局は、第1の無線リンクにおけるパスロスに関するこの情報を、受信した電力ヘッドルーム値から導くことができる。さらには、マスター基地局に提供される、第1の無線リンクのモビリティ測定報告(すなわちRSRP/RSRQ測定)から、パスロスの情報を導くこともできる。
【0122】
さらに、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクにおけるパスロスに関する対応する情報を、マスター基地局に提供する。このステップに関しては以下の点に留意されたい。すなわち、移動局によってセカンダリ基地局に送信される、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクの電力ヘッドルーム報告によって、セカンダリ基地局は、第2の無線リンクにおけるパスロスに関する情報を決定することができるが、マスター基地局はこの情報を決定することができない。なぜならマスター基地局は、セカンダリ基地局とは異なり、移動局が第2の無線リンクの電力ヘッドルーム報告を計算するときの基礎となったリソース割当てを認識していないためである。
【0123】
これに対して、第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告は、セカンダリ基地局への第2の無線リンクを対象に事前に設定される仮想アップリンクリソース割当て(仮想アップリンクリソース割当ては事前に決定されるため、マスター基地局にも認識されている)に基づいて移動局によって計算される。したがって、この仮想電力ヘッドルーム報告によって、マスター基地局は、第2の無線リンクのパスロスに関する情報を決定することができる。
【0124】
したがって、第1の態様の1つの改良形態によると、第2の無線リンクにおけるパスロスに関する情報を移動局からマスター基地局に直接的に送信するのではなく、移動局は、第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告を計算してそれをマスター基地局に送信することによって、マスター基地局が電力分配を決定および更新できるように支援する。セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告(すなわち第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告)は、移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクの「通常の」電力ヘッドルーム報告とともに、移動局からマスター基地局に送信することが好ましい。
【0125】
したがって、本開示の第1の態様のこの改良形態によると、移動局によって実行される電力ヘッドルーム報告方法を次のように修正改良し、すなわち、移動局は、第1の無線リンクおよび第2の無線リンクの電力ヘッドルーム報告を通常の方法において実行し(すなわち、マスター基地局への第1の無線リンクに関する電力ヘッドルーム報告と、セカンダリ基地局への第2の無線リンクに関する電力ヘッドルーム報告)、さらにこれに加えて、移動局は、第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告を計算し、これを第1の無線リンクの「通常の」電力ヘッドルーム報告とともに(すなわち同じメッセージ内で)、マスター基地局に送信する。
【0126】
上の説明において、第2の無線リンクまたは第1の無線リンクの「電力ヘッドルーム報告」という表現は、好ましくは拡張電力ヘッドルーム報告を意味し、拡張電力ヘッドルーム報告は、電力ヘッドルーム値に加えて、移動局からマスター基地局/セカンダリ基地局へのアップリンク送信用に移動局によって設定される、セルに固有な最大出力電力(PCMAX,MeNB/PCMAX,SeNB)(3GPPによって定義されており背景技術のセクションにおいて説明したPCMAX,cに似ている)を含む。
【0127】
結果として、マスター基地局には、両方の無線リンクにおけるパスロスに関する必要な情報が提供される。したがってマスター基地局は、変化するパスロス状況に応じて電力分配比率を調整することができる。次いで、マスター基地局は、更新された電力分配比率を適用するか否か、すなわち、マスター基地局およびセカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,MeNB)/(PEMAX,SeNB)を、上述したいくつかの代替方法のいずれかに従って配信することによって、電力分配比率を再設定するか否か、を決定することができる。いずれの代替方法の場合にも、セカンダリ基地局および移動局は、更新された値を受信してその値を採用するため、最大出力電力のこれらの新しい更新された値に従って、セカンダリ基地局はアップリンクスケジューリングを、移動局はアップリンク送信を実行することができる。
【0128】
ここまでは、マスター基地局が電力分配比率を更新するステップについて、主として、パスロスの変化と、移動局がパスロス(の変化)に関する情報を何らかの方法でマスター基地局に提供することによってマスター基地局を支援する方法とに関連して、説明してきた。
【0129】
本開示の第2の態様によると、別のケース、例えば、アップリンクの無線リンクが(例えば特定の最小時間長にわたり)使用されないケースや、(アップリンクの)無線リンクが使用不能であるケースにおいて、電力分配を更新するステップに関してマスター基地局を支援する追加の機能によって、移動局を拡張する。いずれのケースにおいても、アップリンクにおいて使用されない無線リンク、または使用不能である無線リンクに割り当てられる電力が、他方の無線リンクによって使用されるように電力分配が更新されるならば、有利である。以下ではこのことについて詳しく説明する。
【0130】
主たる発想として、移動局は、無線リンク(第1の無線リンクまたは第2の無線リンク)が非アクティブになるとき、または使用不能である(すなわち無線リンク障害)ときを判断し、そのことを他方の基地局に知らせる。したがって、移動局において利用可能な電力すべてが、(使用可能な、またはアクティブなアップリンク無線リンクを通じての)その他方の基地局へのアップリンク送信に割り当てられるように、電力分配比率を更新することができる。
【0131】
より詳細には、移動局は、第1の無線リンクが非アクティブになるときを判断する。すなわち移動局は、特定の時間にわたりマスター基地局にアップリンクでデータを送信しないことを予測する。このようなケースとしては、例えば、移動局がその第1の無線リンクにおいて不連続受信/送信モード(DRX/DTX)に入るケースが挙げられる。この場合、第1の無線リンクが非アクティブになることがセカンダリ基地局に知らされる。これにより、セカンダリ基地局は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,SeNB)を決定することができる。この更新された値は、具体的には最大出力電力全体である(なぜなら非アクティブである他方の無線リンクでのアップリンク送信用の電力が必要ないため)。次いで、この更新された値が移動局に送信され、移動局は、セカンダリ基地局にアップリンク送信するときに、最大出力電力の更新された値を採用する。
【0132】
同様に、移動局は、第2の無線リンクが非アクティブになるときを判断する。すなわち移動局は、特定の時間にわたりセカンダリ基地局にアップリンクでデータを送信しないことを予測する。このようなケースとしては、例えば、移動局がその第2の無線リンクにおいて不連続受信/送信モード(DRX/DTX)に入るケースが挙げられる。この特定の場合には、第2の無線リンクが非アクティブになることをマスター基地局に知らせ、これによりマスター基地局は、マスター基地局へのアップリンク送信のための移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,MeNB)を決定することができ、この更新された値は、具体的には最大出力電力全体である(なぜなら非アクティブである他方の無線リンクでのアップリンク送信用の電力が必要ないため)。次いで、この更新された値を移動局に送信することができ、したがって移動局は、マスター基地局にアップリンク送信するときに、最大出力電力の更新された値を採用する。
【0133】
上述したように、第2の無線リンクおよび第1の無線リンクが非アクティブになることを、それぞれ、マスター基地局およびセカンダリ基地局に知らせる方法としては、いくつかのオプションがあり、以下ではそのうちのいくつかを開示する。
【0134】
移動局は、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを認識すると、移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクの第1の電力ヘッドルーム報告を作成することができ、この第1の電力ヘッドルーム報告の中の所定のフラグを、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることをマスター基地局に知らせるように設定することができ、次いで、このように作成した第1の電力ヘッドルーム報告をマスター基地局に送ることができる。これに代えて、移動局は、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を作成することができ、このセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の所定のフラグを、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることをマスター基地局に知らせるように設定することができ、次いで、このように作成したセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告をマスター基地局に送ることができる。さらに別の代替方法によると、移動局は、第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を作成することができ、このとき、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを意味するものとしてマスター基地局によって認識される所定の電力ヘッドルーム値(例:負の値)を、このセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告に含める。次いで、このように作成したセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を移動局からマスター基地局に送る。
【0135】
逆に、移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを移動局が認識したときには、移動局は、第2の無線リンクの第2の電力ヘッドルーム報告を作成することができ、この第2の電力ヘッドルーム報告の中の所定のフラグを、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることをセカンダリ基地局に知らせるように設定することができ、次いで、このように作成した第2の電力ヘッドルーム報告をセカンダリ基地局に送ることができる。これに代えて、移動局は、第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を作成することができ、このセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の所定のフラグを、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることをセカンダリ基地局に知らせるように設定することができ、次いで、このように作成したセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告をセカンダリ基地局に送ることができる。さらに別の代替方法によると、移動局は、第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を作成することができ、このとき、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを意味するものとしてセカンダリ基地局によって認識される所定の電力ヘッドルーム値(例:負の値)を、このセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告に含める。次いで、このように作成したセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を移動局からセカンダリ基地局に送る。
【0136】
第1の無線リンク/第2の無線リンクが非アクティブになることを報告する上の方法のさらなる改良形態によると、移動局は、第1の無線リンク/第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが予測される時間長を決定/推定することができ、決定した時間長が所定の時間長(例えば100msまたは200msなど)を超える場合にのみ、対応する基地局(セカンダリ基地局/マスター基地局)にこの状況を知らせる。このように電力分配を再設定するメカニズムは効率的であり、非アクティブである時間が極めて短い場合には実行されないため、有利である。
【0137】
上述した第2の態様のさらに別の改良形態においては、基地局(マスター基地局またはセカンダリ基地局のうちの該当する基地局)は、特定の時間の後、移動局によって再び知らせる必要なしに、電力分配を前の状態に(すなわち更新する前の電力分配比率に)戻す。より詳細には、上に説明したように、移動局は、第2の無線リンク/第1の無線リンクが非アクティブになるときにそのことをマスター基地局/セカンダリ基地局に知らせ、これにより、マスター基地局/セカンダリ基地局は、電力分配を更新し、マスター基地局/セカンダリ基地局へのアップリンク送信に使用される最大出力電力の更新された値を移動局に提供する。第2の無線リンク/第1の無線リンクが再びアクティブになるときに、移動局がそのことをマスター基地局/セカンダリ基地局に再び知らせる必要がないようにする目的で、電力制御タイマを設定することが可能である。この電力制御タイマは、切れたとき、更新前の電力分配比率に戻すようにマスター基地局/セカンダリ基地局をトリガーする。電力制御タイマの値は、所定の値とする、または事前に設定することができる。またはさらなる改良形態によると、電力制御タイマの値は、各場合において移動局によって(無線リンクの非アクティブ時間が終了することが予測されるタイミングを最も正確に認識できるのはおそらくは移動局である)知らせることができる。通知方法は、例えば、電力制御タイマの対応する値をマスター基地局/セカンダリ基地局に直接的に送信することによって、または好ましくは、第2の無線リンク/第1の無線リンクが非アクティブになることをマスター基地局/セカンダリ基地局に知らせるために移動局からマスター基地局/セカンダリ基地局に送信されるセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の(例えば負の)電力ヘッドルーム値に(上の説明を参照)、電力制御タイマの値を符号化することによる。
【0138】
上述した電力制御タイマは、マスター基地局/セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力を決定して送信するときに、マスター基地局/セカンダリ基地局によって起動させることが好ましく、特定の時間にわたり動作する(上の説明を参照)。
【0139】
同様に、前述した状況として、第1の無線リンク/第2の無線リンクが無線リンク障害状態に入る(すなわち使用不能になる)ことを移動局が認識する状況について、以下に説明する。
【0140】
移動局は、移動局からセカンダリ基地局への第2の無線リンクが無線リンク障害状態に入ることを認識したとき、使用可能な無線リンクを通じてそのことをマスター基地局に知らせる。このステップは、例えば以下の方法のいずれかに従って行うことができる。
【0141】
移動局は、セカンダリ基地局への第2の無線リンクの無線リンク障害を認識すると、移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクの第1の電力ヘッドルーム報告を作成し、この第1の電力ヘッドルーム報告の中の対応する所定のフラグを、第2の無線リンクの無線リンク障害をマスター基地局に知らせるように設定し、次いで、このように作成した、第1の無線リンクの第1の電力ヘッドルーム報告を、マスター基地局に送ることができる。これに代えて、移動局は、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を作成することができ、このセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の所定のフラグを、第2の無線リンクの無線リンク障害をマスター基地局に知らせるように設定することができ、次いで、このように作成したセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告をマスター基地局に送ることができる。さらに別の代替方法によると、移動局は、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を作成することができ、このとき、第2の無線リンクの無線リンク障害を示すものとしてマスター基地局によって認識される所定の仮想電力ヘッドルーム値を、このセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告に含める。次いで、このように作成したセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を移動局からマスター基地局に送る。
【0142】
マスター基地局は、第2の無線リンクの障害に関する情報を受信した後、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,MeNB)を決定することができる。次いで、マスター基地局は、この更新されたパラメータを移動局に送信する。例えば、マスター基地局は、移動局が自身の最大出力電力すべてを、マスター基地局へのアップリンク送信に使用できることを決定することができる。なぜなら第2の無線リンクの障害のためセカンダリ基地局にアップリンク送信することはできないためである。好ましい解決策によると、マスター基地局は、第2の無線リンクの無線リンク障害を解決するための適切な手順をさらに開始する。
【0143】
逆に、移動局がマスター基地局への第1の無線リンクの無線リンク障害を認識したときには、移動局は、第2の無線リンクの第2の電力ヘッドルーム報告を作成し、この第2の電力ヘッドルーム報告の中の対応する所定のフラグを、第1の無線リンクの無線リンク障害をセカンダリ基地局に知らせるように設定し、次いで、移動局は、このように作成した第2の電力ヘッドルーム報告をセカンダリ基地局に送る。これに代えて、移動局は、第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を作成し、このセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の対応する所定のフラグを、第1の無線リンクの無線リンク障害をセカンダリ基地局に知らせるように設定し、次いで、このように作成したセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告をセカンダリ基地局に送る。さらに別の代替方法によると、移動局は、第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を作成し、このとき、第1の無線リンクの無線リンク障害を示すものとしてマスター基地局によって認識される所定の仮想電力ヘッドルーム値を、このセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告に含める。次いで、このように作成したセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を移動局からセカンダリ基地局に送る。
【0144】
セカンダリ基地局は、第1の無線リンクの障害に関する情報を受信した後、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,SeNB)を決定することができる。次いで、セカンダリ基地局は、この更新されたパラメータを移動局に送信する。例えば、セカンダリ基地局は、移動局が自身の最大出力電力すべてを、セカンダリ基地局へのアップリンク送信に使用できることを決定することができる。なぜなら第1の無線リンクの障害のためマスター基地局にアップリンク送信することはできないためである。好ましい解決策によると、セカンダリ基地局は、第1の無線リンクの無線リンク障害を解決するための適切な手順をさらに開始する。
【0145】
本開示の一実施形態は、移動通信システムにおける電力ヘッドルーム報告の方法を提供する。移動局は、第1の無線リンクを介してマスター基地局に接続されており、かつ、第2の無線リンクを介して少なくとも1つのセカンダリ基地局に接続されている。移動局は、移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクの第1の電力ヘッドルーム報告を計算する。移動局は、計算された第1の電力ヘッドルーム報告を、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのパスロスに関する情報をマスター基地局が決定することを可能にする情報とともに、マスター基地局に送信する。さらに、移動局は、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクの第2の電力ヘッドルーム報告を計算し、計算された第2の電力ヘッドルーム報告を移動局からセカンダリ基地局に送信する。
【0146】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局がパスロスに関する情報を決定するときに基づく情報は、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の形で送信される。この場合、移動局は、セカンダリ基地局への第2の無線リンクを対象に事前に設定される仮想アップリンクリソース割当てに基づいて、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を計算する。上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局は、マスター基地局とセカンダリ基地局との間での、移動局の利用可能な最大送信電力の初期分配を決定する。このステップは、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,MeNB)と、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)と、を決定するステップ、を含む。セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の決定された最大出力電力(PEMAX,SeNB)は、好ましくは、マスター基地局とセカンダリ基地局との間のインタフェースを介して送信されるシグナリングメッセージにおいて、マスター基地局からセカンダリ基地局に送信される。次いで、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の決定された最大出力電力(PEMAX,MeNB)と、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の決定された最大出力電力(PEMAX,SeNB)の両方が、好ましくは、無線リソース制御(RRC)メッセージにおいて、またはメディアアクセス制御(MAC)制御エレメントにおいて、マスター基地局から移動局に送信される。あるいは、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の決定された最大出力電力(PEMAX,MeNB)が、好ましくは、無線リソース制御(RRC)メッセージにおいて、またはメディアアクセス制御(MAC)制御エレメントにおいて、マスター基地局から移動局に送信され、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の決定された最大出力電力(PEMAX,SeNB)が、セカンダリ基地局から移動局に送信される。
【0147】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局は、マスター基地局とセカンダリ基地局との間での、移動局の利用可能な最大送信電力の初期分配を決定する。このステップは、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,MeNB)と、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)と、を決定するステップ、を含む。次いで、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の決定された最大出力電力(PEMAX,MeNB)と、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の決定された最大出力電力(PEMAX,SeNB)が、好ましくは、無線リソース制御(RRC)メッセージにおいて、またはメディアアクセス制御(MAC)制御エレメントにおいて、マスター基地局から移動局に送信される。さらに、移動局は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の受信された最大出力電力(PEMAX,SeNB)、に関する情報を、セカンダリ基地局に送信する。
【0148】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の受信された最大出力電力(PEMAX,SeNB)、に関する情報を、移動局によってセカンダリ基地局に送信するステップは、以下のステップ、すなわち、セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告に含めるための、移動局からセカンダリ基地局へのアップリンク送信用に移動局によって設定される、セルに固有な最大出力電力(PCMAX,SeNB)を、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の受信された最大出力電力(PEMAX,SeNB)に基づいて決定するステップと、セカンダリ基地局が、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)を決定することができるように、移動局からセカンダリ基地局へのアップリンク送信用に移動局によって設定される、セルに固有な決定した最大出力電力(PCMAX,SeNB)を、移動局からセカンダリ基地局に送信するステップと、を含む。
【0149】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の受信された最大出力電力(PEMAX,SeNB)、に関する情報を、移動局によってセカンダリ基地局に送信するステップは、以下のステップ、すなわち、セカンダリ基地局への第2の無線リンクを対象に事前に設定される仮想アップリンクリソース割当てに基づいて、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を、移動局によって計算するステップであって、移動局からセカンダリ基地局へのアップリンク送信用に移動局によって設定される、セルに固有な最大出力電力(PCMAX,SeNB)を、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の受信された最大出力電力(PEMAX,SeNB)に基づいて、決定するステップと、セカンダリ基地局が、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)を決定することができるように、計算されたセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告と、移動局からセカンダリ基地局へのアップリンク送信用に移動局によって設定される、セルに固有な決定した最大出力電力(PCMAX,SeNB)とを、移動局からセカンダリ基地局に送信するステップと、を含む。
【0150】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局は、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのパスロスに関する決定した情報に基づいて、マスター基地局とセカンダリ基地局の間での、移動局の利用可能な最大送信電力の更新された分配を決定する。このステップは、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,MeNB)と、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,SeNB)と、を決定するステップ、を含む。セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力(PEMAX,SeNB)は、マスター基地局からセカンダリ基地局に送信される。次いで、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力(PEMAX,MeNB)と、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力(PEMAX,SeNB)の両方が、マスター基地局から移動局に送信される、あるいは、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力(PEMAX,MeNB)が、マスター基地局から移動局に送信され、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力(PEMAX,SeNB)が、セカンダリ基地局から移動局に送信される。
【0151】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、計算される第1の無線リンクの第1の電力ヘッドルーム報告は、拡張電力ヘッドルーム報告であり、拡張電力ヘッドルーム報告は、移動局からマスター基地局へのアップリンク送信用に移動局によって設定される、セルに固有な最大出力電力(PCMAX,MeNB)、をさらに含み、計算される第2の無線リンクの第2の電力ヘッドルーム報告は、拡張電力ヘッドルーム報告であり、拡張電力ヘッドルーム報告は、移動局からセカンダリ基地局へのアップリンク送信用に移動局によって設定される、セルに固有な最大出力電力(PCMAX,SeNB)、をさらに含む。
【0152】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、移動局が移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを認識したとき、移動局は、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報をマスター基地局に提供する。好ましい解決策においては、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報は、以下の形、すなわち、
- 移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクの第1の電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値、
の形で、マスター基地局に提供される。
【0153】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、移動局は、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが予測される時間長を求め、求めた時間長が所定の時間長を超える場合にのみ、移動局は、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報をマスター基地局に提供する。
【0154】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報は、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値の形で、マスター基地局に提供される。所定の電力ヘッドルーム値は、好ましくは、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが移動局によって予測される時間長に関する時間情報を符号化する所定の負の値である。
【0155】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局は、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する受信された情報に基づいて、マスター基地局とセカンダリ基地局の間での、移動局の利用可能な最大送信電力の更新された分配を決定し、このステップは、少なくとも、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,MeNB)を決定するステップ、を含む。マスター基地局は、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力(PEMAX,MeNB)を、移動局に送信する。
【0156】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局は、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力(PEMAX,MeNB)を決定して送信するときに、電力制御タイマを起動させる。電力制御タイマが切れた時点で、マスター基地局は、更新前の、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,MeNB)を、移動局に送信する。電力制御タイマは、
- 所定の時間値、または、
- 第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報が、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値の形でマスター基地局に提供され、所定の電力ヘッドルーム値が、好ましくは、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが予測される時間長に関する時間情報を符号化する所定の負の値である場合、所定の負の電力ヘッドルーム値を含む受信されるセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中で移動局によって示される時間値、
を使用して設定されることが好ましい。
【0157】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、移動局が移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを認識したとき、移動局は、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報をセカンダリ基地局に提供する。第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報は、以下の形、すなわち、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクの第2の電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値、
の形で、セカンダリ基地局に提供される。
【0158】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、移動局は、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが予測される時間長を求め、求めた時間長が所定の時間長を超える場合にのみ、移動局は、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報をセカンダリ基地局に提供する。
【0159】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報は、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値の形で、セカンダリ基地局に提供される。この場合、所定の電力ヘッドルーム値は、好ましくは、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが移動局によって予測される時間長に関する時間情報を符号化する所定の負の値である。
【0160】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、セカンダリ基地局は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,SeNB)を決定する。セカンダリ基地局は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力(PEMAX,SeNB)を、移動局に送信する。
【0161】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、セカンダリ基地局は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力(PEMAX,SeNB)を決定して送信するときに、電力制御タイマを起動させる。電力制御タイマが切れた時点で、セカンダリ基地局は、更新前の、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)を、移動局に送信する。電力制御タイマは、
- 所定の時間値、または、
- 第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報が、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値の形でセカンダリ基地局に提供される。所定の電力ヘッドルーム値は、好ましくは、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが移動局によって予測される時間長に関する時間情報を符号化する所定の負の値である場合、所定の負の電力ヘッドルーム値を含む受信されるセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中で移動局によって示される時間値、
を使用して設定されることが好ましい。
【0162】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、移動局からセカンダリ基地局への第2の無線リンクが無線リンク障害状態に入るとき、移動局は、第2の無線リンクの無線リンク障害についての情報を、好ましくは以下の形、すなわち、
- 移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクの第1の電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値、
の形で、マスター基地局に提供する。
【0163】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局は、第2の無線リンクの無線リンク障害に関する受信された情報に基づいて、マスター基地局とセカンダリ基地局の間での、移動局の利用可能な最大送信電力の更新された分配を決定する。このステップは、少なくとも、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,MeNB)を決定するステップ、を含む。マスター基地局は、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,MeNB)を、移動局に送信する。マスター基地局は、第2の無線リンクの無線リンク障害を解決するための適切な手順を開始することが好ましい。
【0164】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、移動局からマスター基地局への第1の無線リンクが無線リンク障害状態に入るとき、移動局は、第1の無線リンクの無線リンク障害についての情報を、好ましくは以下の形、すなわち、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクの第2の電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値、
の形で、セカンダリ基地局に提供する。
【0165】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、セカンダリ基地局は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,SeNB)を決定する。セカンダリ基地局は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力(PEMAX,SeNB)を、移動局に送信する。セカンダリ基地局は、第1の無線リンクの無線リンク障害を解決するための適切な手順を開始することが好ましい。
【0166】
本開示のこの第1の実施形態は、移動通信システムにおいて電力ヘッドルームを報告する移動局であって、第1の無線リンクを介してマスター基地局に接続可能であり、かつ、第2の無線リンクを介して少なくとも1つのセカンダリ基地局に接続可能である、移動局、をさらに提供する。本移動局のプロセッサは、移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクの第1の電力ヘッドルーム報告を計算する。本移動局の送信器は、計算された第1の電力ヘッドルーム報告を、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのパスロスに関する情報をマスター基地局が決定することを可能にする情報とともに、マスター基地局に送信する。プロセッサは、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクの第2の電力ヘッドルーム報告をさらに計算する。次いで、送信器は、計算された第2の電力ヘッドルーム報告をセカンダリ基地局に送信する。
【0167】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局がパスロスに関する情報を決定するときに基づく情報は、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の形で送信される。この場合、プロセッサは、セカンダリ基地局への第2の無線リンクを対象に事前に設定される仮想アップリンクリソース割当てに基づいて、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を、計算する。
【0168】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、本移動局の受信器は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)、もしくは、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,MeNB)、またはその両方を、好ましくは、無線リソース制御(RRC)メッセージにおいて、またはメディアアクセス制御(MAC)制御エレメントにおいて、マスター基地局から受信する。
【0169】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、本移動局の受信器は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)を受信し、送信器は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の受信された最大出力電力(PEMAX,SeNB)に関する情報を、セカンダリ基地局に送信する。
【0170】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、プロセッサは、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の受信された最大出力電力(PEMAX,SeNB)に基づいて、セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告に含めるための、移動局からセカンダリ基地局へのアップリンク送信用に移動局によって設定される、セルに固有な最大出力電力(PCMAX,SeNB)を決定する。送信器は、セカンダリ基地局が、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)を決定することができるように、移動局からセカンダリ基地局へのアップリンク送信用に移動局によって設定される、セルに固有な決定した最大出力電力(PCMAX,SeNB)を、セカンダリ基地局に送信する。
【0171】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、プロセッサは、セカンダリ基地局への第2の無線リンクを対象に事前に設定される仮想アップリンクリソース割当てに基づいて、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告を計算する。このするステップは、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の受信された最大出力電力(PEMAX,SeNB)に基づいて、移動局からセカンダリ基地局へのアップリンク送信用に移動局によって設定される、セルに固有な最大出力電力(PCMAX,SeNB)を決定するステップ、を含む。送信器は、セカンダリ基地局がセカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)を決定することができるように、計算されたセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告と、移動局からセカンダリ基地局へのアップリンク送信用に移動局によって設定される、セルに固有な決定した最大出力電力(PCMAX,SeNB)とを、セカンダリ基地局に送信する。
【0172】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、プロセッサが移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを認識したとき、送信器は、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報を、好ましくは以下の形、すなわち、
- 移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクの第1の電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値、
の形で、マスター基地局に提供する。
【0173】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、プロセッサは、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが予測される時間長を求め、決定した時間長が所定の時間長を超える場合にのみ、送信器が、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報をマスター基地局に提供する。
【0174】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報は、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値の形で、マスター基地局に提供される。この場合、プロセッサは、所定の電力ヘッドルーム値を、好ましくは、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが移動局によって予測される時間長に関する時間情報を符号化する所定の負の値、に設定する。
【0175】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、プロセッサが移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを認識したとき、送信器は、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報を、好ましくは以下の形、すなわち、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクの第2の電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値、
の形で、セカンダリ基地局に提供する。
【0176】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、プロセッサは、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが予測される時間長を求め、決定した時間長が所定の時間長を超える場合にのみ、送信器が、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報をセカンダリ基地局に提供する。
【0177】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることに関する情報は、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値の形で、セカンダリ基地局に提供される。この場合、プロセッサは、所定の電力ヘッドルーム値を、好ましくは、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが移動局によって予測される時間長に関する時間情報を符号化する所定の負の値に設定する。
【0178】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、プロセッサが移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクが無線リンク障害に入ることを認識したとき、送信器は、第2の無線リンクの障害に関する情報を、好ましくは以下の形、すなわち、
- 移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクの第1の電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値、
の形で、マスター基地局に提供する。
【0179】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、プロセッサが移動局とマスター基地局との間の第1の無線リンクが無線リンク障害に入ることを認識したとき、送信器は、第1の無線リンクの障害に関する情報を、好ましくは以下の形、すなわち、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクの第2の電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中の、所定の値を有するビットフラグ、または、
- 移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の所定の電力ヘッドルーム値、
の形で、セカンダリ基地局に提供する。
【0180】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、受信器は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,SeNB)を受信し、かつ、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,MeNB)を受信する。
【0181】
本開示のこの第1の実施形態は、移動通信システムにおいて移動局から電力ヘッドルーム報告を受信するマスター基地局、をさらに提供する。移動局は、第1の無線リンクを介して本マスター基地局に接続されており、かつ、第2の無線リンクを介して少なくとも1つのセカンダリ基地局に接続されている。本マスター基地局の受信器は、第1の電力ヘッドルーム報告を、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのパスロスに関する情報を本マスター基地局が決定することを可能にする情報とともに、移動局から受信する。本マスター基地局のプロセッサは、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのパスロスに関する情報を、受信された情報に基づいて決定する。
【0182】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、プロセッサは、本マスター基地局とセカンダリ基地局との間での、移動局の利用可能な最大送信電力の初期分配を決定する。このステップは、マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,MeNB)と、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力(PEMAX,SeNB)と、を決定するステップ、を含む。本マスター基地局の送信器は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の決定された最大出力電力(PEMAX,SeNB)を、好ましくは、本マスター基地局とセカンダリ基地局との間のインタフェースを介して送信されるシグナリングメッセージにおいて、セカンダリ基地局に送信する。送信器は、本マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の決定された最大出力電力(PEMAX,MeNB)、もしくは、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の決定された最大出力電力(PEMAX,SeNB)、またはその両方を、好ましくは、無線リソース制御(RRC)メッセージにおいて、またはメディアアクセス制御(MAC)制御エレメントにおいて、移動局に送信する。
【0183】
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本開示の実施形態の有利な変形形態によると、プロセッサは、本マスター基地局とセカンダリ基地局の間での、移動局の利用可能な最大送信電力の更新された分配を、移動局とセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのパスロスに関する決定した情報に基づいて、決定する。このステップは、本マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,MeNB)と、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の最大出力電力の更新された値(PEMAX,SeNB)と、を決定するステップ、を含む。本マスター基地局の送信器は、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力(PEMAX,SeNB)を、セカンダリ基地局に送信する。送信器は、本マスター基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力(PEMAX,MeNB)、もしくは、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用の移動局の更新された最大出力電力(PEMAX,SeNB)、またはその両方を、移動局に送信する。
【0184】
「移動局」または「移動ノード」は、通信ネットワーク内の物理エンティティである。1つのノードがいくつかの機能エンティティを有することができる。機能エンティティとは、所定の一連の機能を実施する、もしくは、ノードまたはネットワークの別の機能エンティティに所定の一連の機能を提供する、またはその両方であるソフトウェアモジュールまたはハードウェアモジュールを意味する。ノードは、通信機器または通信媒体にノードをアタッチする1つまたは複数のインタフェースを有することができ、ノードはこれらのインタフェースを通じて通信することができる。同様に、ネットワークエンティティは、機能エンティティを通信機器または通信媒体にアタッチする論理インタフェースを有することができ、ネットワークエンティティは論理インタフェースを通じて別の機能エンティティやコレスポンデントノードと通信することができる。
【0185】
請求項および本開示の説明全体を通じて使用されている用語「マスター基地局」は、3GPP LTE-Aのデュアルコネクティビティの分野において使用されている意味として解釈されたい。したがって、別の用語として、マクロ基地局、マスターeNB、マクロeNB、サービング基地局、あるいは3GPPによって今後決定される何らかの別の用語が考えられる。同様に、請求項および説明全体を通じて使用されている用語「セカンダリ基地局」は、3GPP LTE-Aのデュアルコネクティビティの分野において使用されている意味として解釈されたい。したがって、別の用語として、スレーブ基地局、セカンダリeNB、スレーブeNB、または3GPPによって今後決定される何らかの別の用語が考えられる。
【0186】
請求項および本開示の説明全体を通じて使用されている用語「無線リンク」は、移動局と基地局との間の無線接続として広義に理解されたい。
【0187】
用語「電力ヘッドルーム報告」は、本開示の特定の実施形態においては、3GPPにおいて定義されている電力ヘッドルーム報告を意味するものとし、好ましくは、3GPPにおいて定義されている拡張電力ヘッドルーム報告を意味するものとする。
【0188】
用語「仮想電力ヘッドルーム報告」は、本開示の特定の実施形態においては、3GPPにおいて定義されている仮想電力ヘッドルーム報告を意味するものとする。
【0189】
以下では、本開示のいくつかの実施形態について詳しく説明する。説明のみを目的として、これらの実施形態のほとんどは、3GPP LTE(リリース8/9)およびLTE-A(リリース10/11)の移動通信システムによる無線アクセス方式(その一部分については上の背景技術のセクションにおいて説明した)に関連して説明する。なお、本開示は、例えば、上の背景技術のセクションに説明した3GPP LTE-A(リリース12)の通信システムなどの移動通信システムにおいても、有利に使用することができることに留意されたい。以下に詳述する実施形態は、3GPP LTEおよび/または3GPP LTE-Aに規定されている機能性に関連して使用される実施例、もしくは、そのような機能性を強化する実施例、またはその両方である実施例として、説明してある。この点において、説明全体を通じて、3GPP LTEおよび/または3GPP LTE-Aの専門用語を採用してある。さらには、本開示のコンセプト/原理全体を詳述するために、例示的なシステム構成について検討してある。
【0190】
以下の説明は、本開示を制限するものではなく、本開示を深く理解するための実施形態の単なる例として理解されたい。当業者には、請求項に記載されている本開示の一般的な原理を、さまざまなシナリオに、本明細書には明示的に説明されていない方法で、適用できることが認識されるであろう。したがって、さまざまな実施形態を説明する目的で想定されている以下のシナリオは、本開示をそれらに限定するものではない。
【0191】
本開示に関連して、さまざまな実施例について説明する。本開示の原理の説明を単純にするため、いくつかの想定を行う。しかしながら、これらの想定は、請求項によって広義に定義されている本開示の範囲を限定するようには解釈されないものとする。
【0192】
本開示について、
図17~
図23を参照しながら説明する。スモールセル環境におけるデュアルコネクティビティのシナリオを想定し、この場合、UEは、マスター基地局(MeNB)およびセカンダリ基地局(SeNB)の両方に、それぞれ第1の無線リンクおよび第2の無線リンクを介して接続されている。しかしながら、本開示はこのシナリオに制限されないことに留意されたい。例えば、UEが1つのマスター基地局と少なくとも2つのセカンダリ基地局に接続されるシナリオも可能である。
【0193】
本開示によると、マスター基地局およびセカンダリ基地局の一方は、マスター基地局へのアップリンク送信用と、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用との間での、UEの電力分配を制御する役割を担う。本開示の以下の説明においては、電力分配を制御する役割をマスター基地局が担うものと想定する。しかしながら、本開示の原理は、電力分配を制御する役割を担う基地局としてセカンダリ基地局が選択されるシナリオにも、(必要な変更を行ったうえで)等しく適用することができる。
【0194】
3GPPによってすでに定義されている電力制御によると(背景技術のセクションを参照されたい)、UEは、通常、アップリンク送信に使用することが許可される最大出力電力を、基地局(eNB)によって設定されてシグナリングされる自身の電力クラスおよび最大電力上限(すなわちPEMAX)に基づいて決定する。PEMAXは、(マスター)基地局によって決定され、UEに送信される。UEは、信号の品質、スペクトル放射マスク、およびスプリアス放射に関する要件を満たすことができるように、場合によってはMPRやA-MPRなどのさらなる電力制限を適用して、自身の最大送信電力を下げる。
【0195】
UE(マスター基地局に接続されている)がデュアルコネクティビティ状態に入るとき、すなわちセカンダリ基地局によって制御されるセルが設定されて追加されるとき、本開示によると、アップリンク送信に利用可能なUEの出力電力の、マスター基地局とセカンダリ基地局との間での初期電力分配を決定する(すなわち2つのパラメータPEMAX,MeNBおよびPEMAX,SeNBを決定する)ことが有利である。PEMAX,MeNBは、移動局がマスター基地局へのアップリンク送信に使用する最大出力電力として理解されるものとする。同様に、PEMAX,SeNBは、移動局がセカンダリ基地局へのアップリンク送信に使用する最大出力電力として理解されるものとする。より一般的には、マスター基地局は、同じ基地局または異なる基地局に属する各アップリンクコンポーネントキャリア(またはセル)、または設定されているアップリンクコンポーネントキャリアのセットでの送信用に移動局に許可される最大電力を決定することができる。一方の基地局(マスター基地局またはセカンダリ基地局)がさらなるコンポーネントキャリアを制御している場合、その基地局は、シグナリングされた最大許容アップリンク送信電力(PEMAX,MeNBおよびPEMAX,SeNB)を、コンポーネントキャリアの間でさらに分配することができる。
【0196】
マスター基地局は、効率的かつ適切な電力分配の初期比率(すなわち2つのパラメータPEMAX,MeNBおよびPEMAX,SeNB)を決定する目的で、以下のパラメータのうちの1つまたは複数を考慮することができる。
- UEとマスター基地局/セカンダリ基地局との間の2本の無線リンクにおけるパスロス。このパスロスは、UEがマスター基地局またはセカンダリ基地局からどれだけ離れているか(UEからマスター基地局またはセカンダリ基地局までの距離)の1つの指標となる。したがって、パスロスは、UEがマスター基地局およびセカンダリ基地局にデータを送信するのに必要な電力と、最適な電力分配比率とを決定することを可能にする。
- マスター基地局およびセカンダリ基地局によって処理されるトラフィック負荷に関する情報
- 2本の無線リンクに利用可能なアップリンクリソース
【0197】
結果として、マスター基地局は、UEからマスター基地局へのアップリンク送信用と、UEからセカンダリ基地局へのアップリンク送信用との間で、最大許容アップリンク送信電力をどのように分配するかを決定する(すなわちマスター基地局はPEMAX,MeNBおよびPEMAX,SeNBの値を決定する)。例えば、23dBmの最大送信電力を有する移動端末がマスター基地局およびセカンダリ基地局と通信する場合、マスター基地局は、各基地局用に最大許容アップリンク送信電力を20dBmに設定することができる。別の例として、電力分配比率を1:2に設定し、すなわち、PEMAX,MeNB=PCMAX/3、PEMAX,SeNB=2*PCMAX/3である。PCMAXは、一般的には、UEが利用できる最大アップリンク送信電力を意味することを理解されたい。マスター基地局は、移動局によって設定されるPCMAXを正確に認識していないため、この値の何らかの予測を行うか、または、最悪の状況(仕様によって許可される最大電力低減(すなわちMPR)を移動局が適用する)を常に想定する(PCMAXとしてPCMAX_Lを想定することに等しい)か、いずれかが必要である。
【0198】
マスター基地局によってPEMAX,MeNBおよびPEMAX,SeNBの初期値が決定された後、セカンダリ基地局およびUEがそれぞれの電力制御手順において使用できるように、これらのパラメータがセカンダリ基地局およびUEに配信される。具体的には、UEは、マスター基地局およびセカンダリ基地局の両方へのアップリンク送信用の出力電力を適切に制御するために、PEMAX,MeNBおよびPEMAX,SeNBの両方を必要とする。しかしながら、セカンダリ基地局はパラメータPEMAX,SeNBのみを必要とする。
【0199】
図17~
図19は、2つのパラメータP
EMAX,MeNBおよびP
EMAX,SeNBがセカンダリ基地局およびUEによって受信されるように、これらのパラメータをマスター基地局から適切に配信する方法に関する異なる実施例を示している。
図17に示した第1の代替実施例によると、マスター基地局は、P
EMAX,MeNBおよびP
EMAX,SeNBをUEに送信し、P
EMAX,SeNBをセカンダリ基地局に送信することができる。さらに、
図17のこの特定のシナリオにおいては、パラメータP
EMAX,MeNBおよびP
EMAX,SeNBは、RRCシグナリングを介して(すなわちRRC設定として)送信される。これに代えて、
図17には示していないが、2つのパラメータP
EMAX,MeNBおよびP
EMAX,SeNBをMAC制御エレメントとしてマスター基地局からUEに送信することもできる。さらには、パラメータP
EMAX,SeNBは、マスター基地局からXnインタフェースを介してセカンダリ基地局に送信されることが好ましい。
【0200】
別の代替実施例によると、
図18に示したように、パラメータP
EMAX,SeNBを、
図17の場合と同じ方法で(すなわち好ましくはXnインタフェースを介して)マスター基地局からセカンダリ基地局に送信する。しかしながら、パラメータP
EMAX,SeNBをUEに送信するのは、マスター基地局ではなくセカンダリ基地局である。この送信は、
図18に示したようにMAC制御エレメントを使用することによって行うことができる。マスター基地局は、パラメータP
EMAX,MeNBを、例えばRRC設定の一部として、あるいは(
図18には示していないが)MAC制御エレメントにおいて、UEに送信する。
【0201】
さらに別の実施例によると、
図19に示したように、マスター基地局は、P
EMAX,MeNBおよびP
EMAX,SeNBをUEに送信する。この場合、
図17および
図18の実施例とは異なり、マスター基地局はP
EMAX,SeNBをセカンダリ基地局に送信する必要はなく、なぜならこの送信は次のようにUEによって行われるためである。UEは、いくつかの方法でP
EMAX,SeNBをセカンダリ基地局に送信することができる。簡単な方法としては、
図19には示していないが、UEは、マスター基地局からP
EMAX,SeNBを受信した後、このパラメータを、例えば特定のMAC制御エレメント内で、セカンダリ基地局にそのまま転送する。これに代えて、UEは、受信したP
EMAX,SeNBに基づいて、電力関連パラメータである仮想P
CMAX,SeNB(仮想電力ヘッドルームの計算に使用される最大電力)を計算することができる。基本的には、仮想電力ヘッドルーム報告によると、P
CMAX,SeNBはP
CMAX_H,cに等しく、P
CMAX_H,cはP
EMAX,SeNBに等しい。したがってUEは、
図19に示したように仮想P
CMAX,SeNBをセカンダリ基地局に送信することができる。別の実施例によると、UEは、上述したように仮想P
CMAX,SeNBを計算した後、セカンダリリンクの仮想電力ヘッドルーム報告(V-PHR
SeNB)をさらに計算し、これらの両方を一緒にセカンダリ基地局に送信する。
図20は、これら2つのパラメータV-PHR
SeNBおよび仮想P
CMAX,SeNBを一緒にセカンダリ基地局に送信する1つの方法を示している。この図は、電力ヘッドルーム報告のMAC制御エレメントの構造を示しており、このMAC制御エレメントは、セカンダリ基地局への第2の無線リンクの拡張電力ヘッドルーム報告(2行目~5行目、背景技術のセクションにおける、追加のP
CMAX,cなどを含むタイプ2/タイプ1の拡張PHRに関する対応する説明部分も参照)を含み、さらに、仮想電力ヘッドルーム値および対応するP
CMAX,SeNB(通常では仮想PHRと一緒には送信されない)を含む。
【0202】
図17~
図19に関連して上に例示的に説明したように、セカンダリ基地局およびUEには、必要なパラメータP
EMAX,MeNBおよびP
EMAX,SeNBが提供され、したがって、3GPPによってすでに標準化されている通常の電力制御手順にこれらのパラメータを適用することができる。すなわち、UEは、マスター基地局およびセカンダリ基地局によってスケジューリングされるアップリンク送信に使用する自身のP
CMAX,MeNBおよびP
CMAX,SeNBを計算する(必要な場合にはさらなる電力低減を適用する)。
【0203】
したがって、上述したさまざまな代替方法の1つによって、パラメータPEMAX,SeNBおよびPEMAX,MeNBをマスター基地局からセカンダリ基地局およびUEに配信することが可能である。その後にパラメータPEMAX,MeNBおよびPEMAX,SeNBの更新された値をセカンダリ基地局もしくはUEまたはその両方に配信するさらなる改良形態においても、これらの同じ代替方法を使用することができる。
【0204】
ここまでは、基本的に、マスター基地局とセカンダリ基地局の間での電力分配の初期設定について説明してきた。パラメータPEMAX,SeNBおよびPEMAX,MeNBの初期値が、(電力分配制御の役割を担う)マスター基地局によって決定され、次いでセカンダリ基地局およびUEに送信される。したがって、セカンダリ基地局はアップリンクスケジューリングに、UEはアップリンク送信に、これらの初期値を適用することができる。以下では、UEからマスター基地局へのアップリンク送信と、UEからセカンダリ基地局へのアップリンク送信との間での効率的な電力分配比率を維持するために、最初に設定された電力分配を更新するときに従うさらなる動作について説明する。以下の説明においても、マスター基地局が、必要に応じて電力分配を更新する役割を担う、すなわち、パラメータPEMAX,SeNBおよびPEMAX,MeNBの更新された値を決定し、それらを必要に応じて(上に提示したいくつかの代替方法の1つに従って)セカンダリ基地局もしくはUEまたはその両方に配信するものと想定する。
【0205】
これを目的として、マスター基地局は、初期電力分配を決定するときと同様に、例えば、2本の無線リンクのうちの少なくとも一方におけるパスロスに関する情報、またはトラフィック負荷に関する情報を使用する。両方の無線リンクのトラフィック負荷など、これらの情報のいくつかをマスター基地局がすでに有することがあるが(例えばマスター基地局がセカンダリ基地局のデータをセカンダリ基地局に転送する場合)、通常ではマスター基地局が認識していないそれ以外の情報をマスター基地局に提供する。
【0206】
具体的には、マスター基地局は、UEとマスター基地局との間の第1の無線リンクのパスロスに関する情報を、UEから受信される第1の無線リンクの(拡張)電力ヘッドルーム報告から決定することができる。現在の標準規格によって定義されている、背景技術のセクションに記載した電力ヘッドルーム値の等式から理解できるように、パスロス(PL)に関する情報は、マスター基地局に提供する電力ヘッドルーム値を計算するためにUEが使用するさまざまなパラメータのうちの1つであり、この等式の残りのパラメータのほとんどを認識しているマスター基地局は、UEによって求められるパスロスに関する情報を導くことができる。マスター基地局は、第1の無線リンクのパスロス情報を決定する目的で、電力ヘッドルーム報告に加えて、RSRP(Reference Signal Received Power)やRSRQ(Reference Signal Received Quality)などのモビリティ測定報告を使用することができる。
【0207】
その一方で、マスター基地局は、UEによって求められる、UEとセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクのパスロスは認識しておらず、このパラメータも、電力分配比率を更新するうえで重要である。このパスロスに関する情報は、いくつかの方法でマスター基地局に提供することができる。
【0208】
当然ながら、第2の無線リンクのパスロスに関する情報は、例えば対応するMAC制御エレメントまたは別の適切なメッセージにおいて、UEから直接的にマスター基地局に提供することができる。
【0209】
これに代えて、UEは、セカンダリ基地局への第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告(仮想電力ヘッドルーム値を含む)を計算して作成することができる。3GPPによる仮想電力ヘッドルーム報告(V-PHR)の定義では(詳細については背景技術のセクションを参照)、マスター基地局は、UEからPHvirtualの値を受信すると、この値からパスロスに関する情報を導くことができる。これとは対照的に通常の電力ヘッドルーム報告では、電力ヘッドルーム値は、マスター基地局には認識されないリソース割当て(すなわち、サブフレームiの有効なリソースブロックの数で表されるPUSCHリソース割当ての帯域幅であるMPUSHC(i))に基づいて、UEによって計算される。このため、マスター基地局は、通常の電力ヘッドルーム報告からはパスロス情報を導くことができない。背景技術のセクションにおいて概説したように、仮想電力ヘッドルーム(仮想PH)は、非特許文献3によると、次のように計算される。
PHvirtual,c(i)=PCMAX,H,c-{P0_PUSCH(j)+a(j)+PLc+f(i)}
パラメータf(i)は、UEに固有なTPCコマンドを表し、このコマンドは累積モードまたは絶対モードのいずれかにおいて設定することができる。マスター基地局は、セカンダリ基地局によって送られるTPCコマンドを認識していないため、さらなる代替実施形態においては、セカンダリリンクの仮想電力ヘッドルーム値を計算する場合にf(i)を0に設定することができる。
【0210】
第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告(V-PHR)をマスター基地局に提供することができ、これによりマスター基地局は、仮想電力ヘッドルーム報告からパスロスに関する情報を導くことができる。例えば、UEが第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告(V-PHR)を通常の電力ヘッドルーム報告とともにマスター基地局に送信するように、通常の電力ヘッドルーム報告方法を修正改良することができる。このことは
図22から理解でき、
図22は、PHR
MeNBおよび仮想PHR
SeNBのMAC制御エレメントを示している。
【0211】
このようにして通常の電力ヘッドルーム報告方法が変更され、UEは、3GPP標準規格にすでに定義されているように、第1の無線リンクの電力ヘッドルーム報告および第2の無線リンクの電力ヘッドルーム報告を作成して、第1の無線リンクの電力ヘッドルーム報告をマスター基地局に、第2の無線リンクの電力ヘッドルーム報告をセカンダリ基地局に、それぞれ送信するだけではない(通常の電力ヘッドルーム報告については例えば
図23を参照)。これに加えて、UEは、第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告を作成し、それを(好ましくは第1の無線リンクの通常の電力ヘッドルーム報告とともに)(セカンダリ基地局ではなく)マスター基地局に送信する。
【0212】
図21は、このさらなる実施形態による1つの例示的なUEの挙動を示している。UE(より詳細には、マスター基地局への方向へのMAC機能/プロトコルを扱うMACエンティティMAC
MeNB)は、(3GPP標準規格リリース10によってすでに定義されている)マスター基地局に関連付けられるセルのグループの拡張電力ヘッドルーム報告情報と、セカンダリ基地局に関連付けられるセルのグループの仮想電力ヘッドルーム情報とを含む、電力ヘッドルーム報告を生成し、これらをマスター基地局に送信する。
図21に示した例示的な実施例によると、UE(より詳細にはMAC
SeNB)は、セカンダリ基地局に関連付けられるセルのグループの拡張電力ヘッドルーム情報を生成し、それをセカンダリ基地局に送信する。なお、すでに上述したように、本発明は、他方の(セカンダリ)無線リンクの仮想電力ヘッドルーム情報がマスター基地局に提供される場合のみに限定されない。マスター基地局に関連付けられるセルのグループの仮想電力ヘッドルーム情報が、セカンダリ基地局に関連付けられるセルのグループの電力ヘッドルーム情報とともにセカンダリ基地局に提供される場合にも、同じ原理を適用することができる。
【0213】
図22に示したように、セカンダリ基地局に関連付けられる仮想電力ヘッドルームは、基本的にはタイプ1の電力ヘッドルーム(PH)とするべきである。しかしながら、タイプ2の(すなわち基準PUCCHフォーマットに基づく)仮想電力ヘッドルームを含むことも可能である。仮想電力ヘッドルーム(PH)は、
図22によると、常に、マスター基地局へのリンクの通常の電力ヘッドルーム報告の最後に付加される。
【0214】
別の実施形態によると、仮想電力ヘッドルーム情報は、セカンダリ基地局の識別子とともに提供される。このことは、特に、UEが1つのマスター基地局と複数のセカンダリ基地局とに接続されている配備の場合に必要である。識別子を伝える目的には、例えば予約されているビット「R」やビット「V」を使用することができる。
【0215】
さらなる代替実施形態においては、仮想電力ヘッドルーム報告情報は、個別の電力ヘッドルームMAC制御エレメントにおいて送信され、このMAC制御エレメントは、事前定義された識別子(例えば論理チャネルID)によって識別される。この第2の電力ヘッドルーム報告のフォーマットは、非特許文献2に定義されている電力ヘッドルームMAC制御エレメントまたは拡張電力ヘッドルームMAC制御エレメントに似たものとすることができる。
【0216】
したがって、1つの具体的な実施例においては、標準の電力ヘッドルーム報告方法を次のように変更することができる。すなわち、マスター基地局への電力ヘッドルーム報告が(例えば報告が周期的であることによって、またはパスロスが大きく変化するなどのイベントによって報告がトリガーされることによって)トリガーされるたびに、UEは、常に、マスター基地局への通常の電力ヘッドルーム報告と、セカンダリ基地局に関連付けられる仮想電力ヘッドルーム報告とを一緒にマスター基地局に送信する。
【0217】
要約すると、マスター基地局は、電力分配を更新するうえで必要な情報を、好ましくは定期的に受信する。さらにマスター基地局は、パラメータP
EMAX,SeNBおよびP
EMAX,MeNBの更新された値を決定し、それらを、必要に応じて(例えば
図17~
図19に関連して上に提示および説明したいくつかの代替方法の1つに従って)セカンダリ基地局もしくはUEまたはその両方に配信する。
【0218】
ここまでは、例えばUEが移動してパスロスが変化することによって効率的な電力分配比率が変化し、したがって電力分配比率を更新することが有利であるシナリオの場合に、電力分配比率を更新するステップについて説明してきた。しかしながら、これ以外の状況、例えば、特定の無線リンク(例えば第1の無線リンクまたは第2の無線リンク)がアップリンクにおいて使用されない、または使用不能となるときにも、電力分配比率を更新する。より詳細には、無線リンクは、いくつかの理由によってアップリンクにおいて非アクティブになりうる。例えば、UEは、特定の時間長にわたりダウンリンクデータ(例えばアップリンクリソース割当て)を受信しないことを予測するとき、バッテリを節約するためにDRX状態に入ることができる(DRXに関する背景技術の対応する説明部分も参照)。
【0219】
別の例は、無線リンクの(少なくともアップリンクにおける)無線リンク障害が発生し(すなわち無線リンクが機能せず、アップリンク送信用にそれ以上使用できない)、したがって無線リンク障害状態に入るときである。少なくとも上記の2つの場合には、2本の無線リンクの一方においてアップリンク送信が行われない、またはアップリンク送信が不可能であるので、その時点の電力分配比率は効率的ではない。なぜなら、使用されない、または使用不能である無線リンクを通じてのアップリンク送信に割り当てられる電力は無駄であり、使用されるまたは使用不能ではない、残っている他方の無線リンクを通じてのアップリンク送信用に電力を使用する方が有利であるためである。以下では、これを達成するための、本開示のさらなる改良形態について説明する。
【0220】
最初に、無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになる場合について説明する。UEは、2本の無線リンクを通じてのアップリンク送信を監視しており、したがって、無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになるとき(すなわちUEからマスター基地局またはセカンダリ基地局にアップリンク送信が送られないことが予測されるとき)を決定することができる。すでに上述したように、このような場合としてUEがDRXモードに入るときが挙げられる。
【0221】
より好ましい解決策においては、非常に短い時間だけ無線リンクが非アクティブになることによって電力分配比率の再設定がトリガーされることを回避するため、UEは、無線リンクが非アクティブであることが予測される時間長をさらに決定することができ、無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが予測される時間長が特定の時間しきい値を超えるときにのみ、(後述するように)本開示の次のステップに進むことができる。しきい値は、例えば所定の値とする、またはマスター基地局によってRRCを介して設定することができる。
【0222】
いずれの場合にも、マスター基地局/セカンダリ基地局にアップリンク送信するための2本の無線リンクが非アクティブになるかを監視しているUEは、2本の無線リンクの一方が実際に非アクティブになればそのことを認識する。
【0223】
UEが、マスター基地局への第1の無線リンクが(好ましくは所定の時間しきい値よりも長い時間長にわたり)アップリンクにおいて非アクティブになることを認識したと想定すると、このことを(すなわち第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを)セカンダリ基地局に知らせる。同様に、UEが、セカンダリ基地局への第2の無線リンクが(好ましくは所定の時間しきい値よりも長い時間長にわたり)アップリンクにおいて非アクティブになることを認識したとき、このことを(すなわち第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを)マスター基地局に知らせる。
【0224】
UEは、一方の基地局(すなわちマスター基地局/セカンダリ基地局)への無線リンクが非アクティブになることを、以下の方法のうちの少なくとも1つにおいて、他方の基地局(すなわちセカンダリ基地局/マスター基地局)に知らせることができる。
【0225】
UEは、この状況を電力ヘッドルーム報告のトリガーとして使用することができ、したがって、対応する所定のフラグが所定の値(例えば「1」)に設定された電力ヘッドルーム報告を作成することができる。受信側の基地局は、無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを、この所定の値によって認識することができる。より詳細には、マスター基地局への第1の無線リンクが非アクティブになる場合、UEは、セカンダリ基地局への第2の無線リンクの電力ヘッドルーム報告を作成し、作成した第2の電力ヘッドルーム報告の中のフラグ(例えば、
図23の電力ヘッドルーム報告MAC制御エレメントにおける予約されているフラグ「R」のうちの1つ、またはVフラグのうちの1つ)を設定する。これに代えて、UEは、セカンダリ基地局への第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告を作成し、このセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中のフラグ(例えば、
図20に示した電力ヘッドルーム報告MAC制御エレメントの最後の2行におけるRフラグの一方)を設定する。さらに別の代替方法によると、UEは、セカンダリ基地局への第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告を作成し、このセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の仮想電力ヘッドルーム値を、特定の所定の値(例えば負の値、なぜなら通常のV-PHは負であることはない)に設定する。いずれの場合にも、セカンダリ基地局は、上述した指示情報(すなわちフラグまたは所定のV-PH値)のうちの1つをUEから受信し、その情報から、第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを導くことができる。
【0226】
逆に、セカンダリ基地局への第2の無線リンクが非アクティブになる場合、UEは、マスター基地局への第1の無線リンクの電力ヘッドルーム報告を作成し、作成した第1の電力ヘッドルーム報告の中のフラグ(例えば、
図22の最初の5行に示した電力ヘッドルーム報告MAC制御エレメントにおける予約されているフラグ「R」のうちの1つ、またはVフラグのうちの1つ)を設定する。これに代えて、UEは、UEとセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告を作成し(この仮想電力ヘッドルーム報告は、上述したように第2の無線リンクのパスロスに関する情報をマスター基地局に提供する場合にも使用される)、このセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の中のフラグ(例えば、
図22に示した電力ヘッドルーム報告MAC制御エレメントの最後の行におけるRフラグまたはVフラグ)を設定する。さらに別の代替方法によると、UEは、UEとセカンダリ基地局との間の第2の無線リンクの仮想電力ヘッドルーム報告を作成し、このセカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の仮想電力ヘッドルーム値を、特定の所定の値(例えば負の値)に設定する。なお、この場合、セカンダリ仮想電力ヘッドルーム値によってマスター基地局が第2の無線リンクのパスロスに関する情報を導くことはできないことに留意されたい。いずれの場合にも、マスター基地局は、上述した指示情報(すなわちフラグまたは所定のV-PH値)のうちの1つをUEから受信し、その情報から、第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを導くことができる。
【0227】
要約すると、UEは、一方の基地局(すなわちマスター基地局/セカンダリ基地局)への無線リンクが非アクティブになることを、何らかの方法で、他方の基地局(すなわちセカンダリ基地局/マスター基地局)に知らせる。セカンダリ基地局/マスター基地局は、受信した指示情報を使用することで、UEによるアップリンク送信用の出力電力すべてが、「アクティブ」のままである無線リンクを通じてのアップリンク送信に割り当てられるように、電力分配比率を更新することができる。すなわち、マスター基地局への第1の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることがセカンダリ基地局に通知されたときには、セカンダリ基地局は、PEMAX,SeNB=PCMAX(またはPCMAX_L)という関係からPEMAX,SeNBの新しい値を決定し、その値を(例えばMAC制御エレメントにおいて)UEに送信し、したがってUEは、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用にその新しい値を適用する。同様に、セカンダリ基地局への第2の無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることがマスター基地局に通知されたときには、マスター基地局は、PEMAX,MeNB=PCMAX(またはPCMAX_L)という関係からPEMAX,MeNBの新しい値を決定し、その値を(例えばMAC制御エレメントにおいて)UEに送信し、したがってUEは、マスター基地局へのアップリンク送信用にその新しい値を適用する。
【0228】
しかしながら、このように無線リンクが非アクティブになる状況は、通常では一時的なものであるため、最終的には電力分配比率を前の比率に戻さなければならない。そのために、当然ながらUEは、電力分配比率の再度の再設定をトリガーするため、一方の基地局(すなわちマスター基地局/セカンダリ基地局)への無線リンクが再びアクティブになることを、さきほど説明した方法に類似する方法において、他方の基地局(すなわちセカンダリ基地局/マスター基地局)にもう一度知らせることができる。
【0229】
しかしながら、本開示の別の改良形態によると、無線リンクがアップリンクにおいて再びアクティブになるときにUEがもう一度通知するこのステップを、セカンダリ基地局/マスター基地局における対応するタイマを使用することによって、回避する。より詳細には、再設定された電力分配比率は、セカンダリ基地局およびマスター基地局の中に実装される電力制御タイマによって設定される特定の時間長の間のみ有効であるものとする。この電力制御タイマが切れた後には、再設定の前の電力分配が再び適用されるものとする。詳細には、電力制御タイマは、セカンダリ基地局およびマスター基地局の中に実装され、無線リンクが非アクティブになることに関する指示情報をセカンダリ基地局/マスター基地局が受信して電力出力の新しい更新された値を計算してそれをUEに送るときに、トリガーされる。電力制御タイマが切れた時点で、セカンダリ基地局/マスター基地局は、電力分配比率を、再設定する前に適用されていた比率に戻し、このように元に戻した電力パラメータPEMAX,SeNB/PEMAX,MeNBをもう一度UEに送信する。
【0230】
電力制御タイマの値は、事前に設定する、またはより好ましくは、UEによって指定することができる。具体的には、UEは、無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになることを認識したとき、その無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブであることが予測される時間長をさらに決定することができる。次いで、UEは、非アクティブであることが予測される時間長をセカンダリ基地局またはマスター基地局に知らせ、セカンダリ基地局およびマスター基地局は、この情報を使用して自身の電力制御タイマを設定することができる。有利な一実施例によると、UEは、非アクティブであることが予測される時間長を、セカンダリ仮想電力ヘッドルーム報告の仮想電力ヘッドルーム値に符号化することができる。例えば、この仮想電力ヘッドルーム値は、第1の無線リンクまたは第2の無線リンクが非アクティブになることを(例えば負の仮想電力ヘッドルーム値を使用することによって)符号化するのみならず、非アクティブであることが予測される時間長も(例えば別の特定の負の仮想電力ヘッドルーム値を使用することによって)符号化する。
【0231】
したがって、上に説明したように、無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになるときには、UEが自身のUE電力リソース全体を、依然としてアクティブな他方の無線リンクに使用することができるように、UEの電力分配が再設定される。
【0232】
無線リンクに障害が発生する(すなわち無線リンクがアップリンク(またはダウンリンク)送信用にもはや使用できない)状況にも、類似する方法において対処する。UEは、障害が発生していないか無線リンクを監視しており、したがって2本の無線リンクの一方の無線リンク障害が実際に発生すればそのことを認識する。その場合、UEは、無線リンク障害について、他方の基地局に知らせる。すなわちUEは、セカンダリ基地局への第2の無線リンクの無線リンク障害の場合にはマスター基地局に知らせ、マスター基地局への第1の無線リンクの無線リンク障害の場合にはセカンダリ基地局に知らせる。
【0233】
UEは、第1の無線リンク/第2の無線リンクの無線リンク障害について、例えば、無線リンクがアップリンクにおいて非アクティブになる上述した場合に行われる方法と同様の方法において、セカンダリ基地局/マスター基地局に知らせることができる。これに関連して、さまざまな(仮想)電力ヘッドルーム報告のさまざまなRフラグまたはVフラグ、あるいは(負の)仮想電力ヘッドルーム値を再利用する方法については、不必要な繰り返しを避けるため、上の説明を参照されたい。
【0234】
要約すると、UEは、マスター基地局/セカンダリ基地局への無線リンクの無線リンク障害について、何らかの方法でセカンダリ基地局/マスター基地局に知らせる。セカンダリ基地局/マスター基地局は、受信した指示情報を使用することで、UEによるアップリンク送信用の出力電力すべてが、機能している無線リンクを通じてのアップリンク送信に割り当てられるように、電力分配比率を更新することができる。詳細には、第1の無線リンクの無線リンク障害がセカンダリ基地局に通知されたときには、セカンダリ基地局は、PEMAX,SeNB=PCMAX(またはPCMAX_L)という関係からPEMAX,SeNBの新しい値を決定し、その値を(例えばMAC制御エレメントにおいて)UEに送信し、したがってUEは、セカンダリ基地局へのアップリンク送信用にその新しい値を適用する。逆に、第2の無線リンクの無線リンク障害がマスター基地局に通知されたときには、マスター基地局は、PEMAX,MeNB=PCMAX(またはPCMAX_L)という関係からPEMAX,MeNBの新しい値を決定し、その値を(例えばMAC制御エレメントにおいて)UEに送信し、したがってUEは、マスター基地局へのアップリンク送信用にその新しい値を適用する。
【0235】
さらには、セカンダリ基地局/マスター基地局は、無線リンク障害についての指示情報をUEから受信したとき、その無線リンク障害を解決するための適切な手順を開始することができる。例えば、マスター基地局は、第2の無線リンクの無線リンク障害を知らされたとき、セカンダリ基地局を介していた無線ベアラを、マスター基地局を介する無線ベアラに変更することができ、あるいは、UEが接続する別のセカンダリ基地局を決定することができる。これらの手順の詳細については、従来技術においてすでに公知であり、したがって当業者に公知であるため、ここでは説明を省く。
【0236】
これに対して、セカンダリ基地局が第1の無線リンクの無線リンク障害について知らされたときには、セカンダリ基地局は、自身が新しいマスター基地局となるように再設定またはハンドオーバーを実行することができる。この手順の詳細については、従来技術においてすでに公知であり、したがって当業者に公知であるため、ここでは説明を省く。その後、無線リンク障害が解決されたか、およびどのように解決されたかに応じて、電力分配比率を再び更新することができる。UEの電力分配を適切に設定するため、新しいパラメータPEMAX,SeNBもしくはPEMAX,MeNBまたはその両方を決定し、それらをUEもしくはマスター基地局/セカンダリ基地局またはその両方にもう一度提供する。
【0237】
ハードウェアおよびソフトウェア実装
本開示の別の実施形態は、上述したさまざまな実施形態を、ハードウェアおよびソフトウェア、またはハードウェアのみを使用して実施することに関する。これに関連して、本開示は、UE(移動端末)と、マスターeNodeB(基地局)およびセカンダリeNodeB(基地局)とを提供する。本UEおよび本基地局は、本発明の方法を実行する。
【0238】
本開示のさまざまな実施形態は、コンピューティングデバイス(プロセッサ)を使用して実施または実行することができる。コンピューティングデバイスまたはプロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または、その他プログラマブルロジックデバイスなどである。さらに、無線送信器、無線受信器、およびその他の必要なハードウェアを、装置(UE、マスター基地局、セカンダリ基地局)内に設けることができる。本開示のさまざまな実施形態は、これらのデバイスの組合せによって実行または具体化することもできる。
【0239】
さらに、本開示のさまざまな実施形態は、ソフトウェアモジュールによっても実施され得る。これらのソフトウェアモジュールは、プロセッサによって実行され、または、ハードウェアにおいて直接実行される。また、ソフトウェアモジュールとハードウェア実装の組合せも可能である。ソフトウェアモジュールは、任意の種類のコンピュータ可読記憶媒体、例えば、RAMやEPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、レジスタ、ハードディスク、CD-ROM、DVDなどに格納され得る。
【0240】
さらには、本開示の複数の異なる実施形態の個々の特徴は、個別に、または任意の組合せにおいて、別の実施形態の主題とすることができることに留意されたい。
【0241】
具体的な実施形態に示した本開示には、広義に記載されている本開示の概念または範囲から逸脱することなく、さまざまな変更もしくは修正またはその両方を行うことができることが、当業者には理解されるであろう。したがって、本明細書に示した実施形態は、あらゆる点において例示的であり、本発明を制限するものではないものとみなされる。