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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046840
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】回路基板および回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220316BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
H05K1/02 C
H05K1/02 D
H05K3/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152438
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩野 典子
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA16
5E338AA18
5E338BB02
5E338BB13
5E338BB22
5E338BB25
5E338BB35
5E338BB48
5E338EE28
(57)【要約】
【課題】製造プロセスの一部で起きるガラスの外周端部からのクラック発生の亀裂の進展を防ぐことができる回路基板および回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス製のコア基板1の少なくとも一方の面に配線層5と絶縁層6とを積層して形成された高周波回路13を備えた回路基板10は、前記高周波回路13を形成した中央領域11と、前記中央領域11の周辺に形成された周辺領域12とを有し、前記周辺領域12に、前記コア基板1を貫通する複数の応力緩和用貫通孔14を設け,前記応力緩和用貫通孔14にガラス以外の素材からなる充填物を充填した。充填物としては樹脂が好ましく用いられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製のコア基板の少なくとも一方の面に配線層と絶縁層とを積層して形成された回路を備えた回路基板であって、
前記回路基板は、前記回路を形成した中央領域と、前記中央領域の周辺に形成された周辺領域とを有し、
前記周辺領域の前記コア基板には、ガラス以外の素材からなる充填物が充填された複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記貫通孔は,前記コア基板の縁に沿って整列していることを特徴とする請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記周辺領域の幅は,2mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記コア基板のガラスは,感光性であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項5】
前記貫通孔に充填される充填物は,樹脂または導電性ペーストであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項6】
前記貫通孔の開口径が,30μm~100μmであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項7】
異なる前記貫通孔を配置したことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項8】
前記コア基板の前記周辺領域の全体に、銅層が形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項9】
ガラス製のコア基板の中央領域に、配線用貫通孔を形成し、前記コア基板の前記中央領域の周囲における周辺領域に、複数の応力緩和用貫通孔を形成する工程と、
前記中央領域に配線層を形成し、前記配線用貫通孔に前記配線層に接続された貫通電極を形成する工程と、
前記配線層に絶縁層を積層する工程と、
前記応力緩和用貫通孔の内部に充填物を充填する工程と、を有することを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記中央領域から前記周辺領域を分離する工程を有することを特徴とする請求項9に記載の回路基板の製造方法。
【請求項11】
前記配線層を形成するとともに、前記周辺領域の全体に銅層を形成することを特徴とする請求項9または10に記載の回路基板の製造方法。
【請求項12】
前記絶縁層を形成するとともに、前記応力緩和用貫通孔の内部に樹脂を充填することを特徴とする請求項9~11のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項13】
前記配線用貫通孔に導電性ペーストを充填して前記貫通電極を形成するとともに、前記応力緩和用貫通孔に導電性ペーストを充填することを特徴とする請求項9~11のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項14】
前記配線層を含む回路をダイシングする工程を有することを特徴とする請求項9~13のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,回路基板および回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信機器の高性能化が進み,内部の電子部品において,高密度化,小型化が進んでいる。昨今のフロントエンドモジュール内では,フィルタを含む多数の受動部品や能動部品がフロントエンドモジュール基板上に多数搭載される。さらにアンテナなどを含んだパッケージ基板もミリ波などの領域で注目されており,今後も多様な周波数帯を用いて高速・大容量な通信を行うため,これらの部品は増加するものとみられている。
【0003】
このような技術動向に対応して,インダクタやキャパシタで構成される受動部品,およびフィルタ部品の類を配線基板内に内蔵することで,基板表面を占有する部品を低減し,小型・低背化に寄与しようとする提案がなされている。基板内に前述の素子を内蔵することで,配線長を短縮し,寄生成分の低減ができると同時に,はんだなどの異種部材との接合点での反射を低減することが可能となる。このため,高周波部品を扱う基板上で有利となる。
【0004】
前述の基板として,セラミック,ガラスクロスを含有した有機基板や,それらを含まない有機基板,シリコン基板,FO-WLP(Fan Out-Wafer Level Package)などが考えられるが,ガラス材料は平坦・平滑性に優れ,微細配線形成においてシリコン基板に近い性質を有し,電気特性においては,シリコンよりも高い絶縁性を得ることができる。したがって,ガラス材料は特に5G(第5世代移動通信システム)以降のミリ波の分野で比較的優位な材料といえる。
【0005】
しかしながら,ガラス材料は,上記の特性においては優れるものの,応力に対して比較的弱い脆性材料でもある。積層基板を形成する際に,コア基板上に該基板と異なる線膨張係数の材料を積層することにより,温度変化などによりコア基板外周部に応力を発生させることが知られている。また,積層基板では,製造プロセスで,基板の端部を保持して製造する工程が複数回繰り返されるため,微小なダメージが蓄積されガラスの端部からクラックが生じやすく,また前記コア基板が薄くなることでハンドリング性が悪下する。
【0006】
さらにコア基板の断面のクラックは,基板に蓄積された内部応力が開放されることにより発生し,コア基板が裂ける方向に破壊が進展する可能性がある。
【0007】
このようなクラックを発生させない方法として,特許文献1には、温度変化によって、コア基板の切断面に、信頼性に影響するような破壊を生じることのないよう、コア基板と、コア基板の少なくとも一方面に形成された、一または複数の配線層と絶縁層との積層体からなるビルドアップ層とを有するパッケージ用基板において、コア基板の外周縁の内側にコア基板を貫通する複数の貫通穴を設ける技術が開示されている。
また、特許文献2には、補強材を樹脂配線基板の辺の部分に配置する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-220647号公報
【特許文献2】特開2009-21579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の技術を用いても、製造プロセス中にコア基板の製品部まで付近まで進展する破損を防ぐためには更なる検討が必要である。
【0010】
また、特許文献2を採用するためには多層配線基板の外周を補強材で覆う作業工数を要し、多層配線基板のコストを増大させることとなる。
【0011】
本発明は,かかる課題に鑑みてなされたものであり,製造プロセスの一部で起きるガラスの外周端部からのクラック発生の亀裂の進展を防ぐことができる回路基板および回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
代表的な本発明の回路基板の一つは、ガラス製のコア基板の少なくとも一方の面に配線層と絶縁層とを積層して形成された回路を備えた回路基板であって、
前記回路基板は、前記回路を形成した中央領域と、前記中央領域の周辺に形成された周辺領域とを有し、
前記周辺領域の前記コア基板には、ガラス以外の素材からなる充填物が充填された複数の貫通孔が形成されている。
【0013】
代表的な本発明の回路基板の製造方法の一つは、
ガラス製のコア基板の中央領域に、配線用貫通孔を形成し、前記コア基板の前記中央領域の周囲における周辺領域に、複数の応力緩和用貫通孔を形成する工程と、
前記中央領域に配線層を形成し、前記配線用貫通孔に前記配線層に接続された貫通電極を形成する工程と、
前記配線層に絶縁層を積層する工程と、
前記応力緩和用貫通孔の内部に充填物を充填する工程と、を有している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,製造プロセスの一部で起きるガラスの外周端部からのクラック発生の亀裂の進展を防ぐことができる回路基板および回路基板の製造方法を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる回路基板を平面視した概略図である。
図2図2は、図1のA部を拡大して示す図である。
図3図3は、回路基板の周辺領域の応力緩和用貫通孔と、中央領域の配線用貫通孔を拡大して示す断面図である。
図4図4は、応力緩和用貫通孔14の配置の一例を示す回路基板10の角部の拡大図である。
図5図5は、応力緩和用貫通孔14の配置の別な例を示す回路基板10の角部の拡大図である。
図6図6は、回路基板を製造する工程を示す図である。
図7図7は、回路基板を製造する工程を示す図である。
図8図8は、回路基板を製造する工程を示す図である。
図9図9は、回路基板を製造する工程を示す図である。
図10図10は、回路基板を製造する工程を示す図である。
図11図11は、変形例にかかる回路基板の周辺領域の応力緩和用貫通孔と、中央領域の配線用貫通孔を拡大して示す断面図である。
図12図12は、実施例にかかる応力緩和用貫通孔14の配置の一例を示す回路基板10の角部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を記載されたものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
なお、本開示において、「面」とは、板状部材の面のみならず、板状部材に含まれる層について、板状部材の面と略平行な層の界面も指すことがある。また、「上面」、「下面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層を図示した場合の、図面上の上方又は下方に示される面を意味する。
また、「側面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層における面や層の厚みの部分を意味する。さらに、面の一部及び側面を合わせて「端部」ということがある。
また、「上方」とは、板状部材又は層を水平に載置した場合の垂直上方の方向を意味する。さらに、「上方」及びこれと反対の「下方」については、これらを「Z軸方向」ということがあり、水平方向については、「X軸方向」、「Y軸方向」ということがある。
また、「平面形状」、「平面視」とは、上方から面又は層を視認した場合の形状を意味する。さらに、「断面形状」、「断面視」とは、板状部材又は層を特定の方向で切断した場合の水平方向から視認した場合の形状を意味する。
さらに、「中心部」とは、面又は層の周辺部ではない中心部を意味する。そして、「中心方向」とは、面又は層の周辺部から面又は層の平面形状における中心に向かう方向を意味する。
さらに、「中央領域」とは、回路基板のうち、製造工程でハンドリングをする際の支持部分として用いられることがなく、回路が形成される可能性のある領域であり、「周辺領域」とは、中央領域の周辺に存在する,製造工程でハンドリングをする際の支持部分として用いられる領域である。「中央領域」と「周辺領域」の範囲や大きさは、個々の回路基板ごとに定めることができる。
【0018】
<回路基板>
図1は,本発明の実施形態にかかる回路基板を平面視した概略図である。図2は、図1のA部を拡大して示す図である。矩形板状の回路基板10は、中央領域11と、中央領域11の周辺に形成された周辺領域12とを有している。中央領域11には、複数の高周波回路(単に回路ともいう)13がマトリクス状に独立して配置されている。周辺領域12には、図2に示すように、複数の応力緩和用貫通孔(単に貫通孔ともいう)14が形成されている。隣接する高周波回路13の間には、貫通孔は形成されていない。高周波回路13は単数であってもよい。
【0019】
周辺領域12は,高周波回路13の配線に接続されないエリアであって,製造工程でハンドリングをする際の支持部分として用いられ、銅層が全面的に形成されていると好ましい。
【0020】
回路基板10の片面の総面積を100%としたときに、周辺領域12の面積は7.5%以上であると好ましい。また、周辺領域12の幅(中央領域11と回路基板10の外周との間隔)は、2mm以上であると好ましい。
【0021】
図3は、回路基板10の周辺領域の応力緩和用貫通孔と、中央領域の配線用貫通孔の断面図である。回路基板10のコア基板1に、応力緩和用貫通孔14と、配線用貫通孔16が形成されている。
【0022】
応力緩和用貫通孔14は、開口径が30μm~300μmであって、複数種類の径を持つ応力緩和用貫通孔14が混在していてもよく、その場合には隣接する応力緩和用貫通孔14の径が異なると、応力緩和用貫通孔14の密度が高まるので好ましい。
【0023】
応力緩和用貫通孔14の内部には、充填物15として、例えばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などが充填されている。応力緩和用貫通孔14の数を変え,また間隔を調整することにより,周辺領域12におけるガラスと樹脂の比率を変化させることができる。充填物15は、弾性率が10GPa以下、CTE(熱膨張係数)が25ppm/℃以下である樹脂を用いて形成されると好ましいが、ガラス以外であれば樹脂に限られない。
【0024】
図4は、応力緩和用貫通孔14の配置の一例を示す回路基板10の角部の拡大図である。図4の例では、応力緩和用貫通孔14は、回路基板10の外周(縁)10aに沿って縦横に整列して配置されている。ここで、外周10aに最も近い応力緩和用貫通孔14との間の距離(かかる領域を貫通孔形成禁止領域という)Δは、50μm以上であると好ましい。また、周辺領域12の総面積に対する応力緩和用貫通孔14合計断面積の割合(占有率という)は、30%以上であると好ましい。
【0025】
図5は、応力緩和用貫通孔14の配置の別な例を示す回路基板10の角部の拡大図である。図5の例では、応力緩和用貫通孔14は、奇数列に対して偶数列を半ピッチずらせて、すなわち千鳥状に配置している。これにより、応力緩和用貫通孔14の密度がさらに高まる。それ以外の構成は、図4に示す例と同様であるため、重複説明を省略する。応力緩和用貫通孔14の配置例は、以上に限られない。
【0026】
応力緩和用貫通孔14を配置する場合、回路基板10を平面視したときに、回路基板10の中止を原点として、対称的に配置されると好ましい。また応力緩和用貫通孔14の半径をrとしたときに、隣接する応力緩和用貫通孔14の中心間距離を3rとすると好ましい。さらに、隣接する3つの応力緩和用貫通孔14の中心を直線で結んで三角形が形成されたとき、その三角形の内角は、0度を超え60度以下であると好ましい。
【0027】
図3において、高周波回路13は、配線用貫通孔16の内壁に形成された貫通電極17を備え、貫通電極17を介して、コア基板1の両面に形成された第1の配線層5,5を互いに導通可能としている。本実施形態では、後述するようにして第1の配線層5,5上に第1の絶縁樹脂層(単に絶縁層ともいう)6,6が形成され,第1の絶縁樹脂層6,6に貫通ビアが形成されて導電材料で充填され,同時に第2の導電層が形成される。これらの積層手順を繰り返すことにより,両面多層配線基板となる。尚,コア基板1の表裏面のどちらかに第1の配線層を形成し,第1の絶縁樹脂層,貫通ビア,第2配線層,第2絶縁樹脂層といった形で,片面積層をしていってもよい。また,コア基板1の両面に配線を形成する場合、その構成はコア基板1を挟んで対称的でも非対称的でもよい。
【0028】
コア基板1の厚さ方向の表面上に順次積層される配線層と絶縁樹脂層をまとめてビルドアップ層と呼ぶ。ビルドアップ層は,複数層に限らず単層であってもよい。
【0029】
配線層は,銅,銀,すず,金,タングステン,導電性樹脂などを用いて形成することができる。好ましくは銅が用いられる。また,配線層の形成には,サブトラクティブ法,セミアディティブ法,インクジェット法,スクリーン印刷,グラビアオフセット印刷などを用いることができるが、セミアディティフ法を好適に用いることができる。
【0030】
絶縁樹脂層は,エポキシ樹脂系材料,エポキシアクリレート系樹脂,ポリイミド系樹脂などを用いて形成することができる。これらの絶縁性材料は,充填剤を含んでもよい。絶縁樹脂層を形成する絶縁性材料には線膨張係数が7~130ppm/Kのエポキシ配合樹脂が一般的に入手し易く好ましい。
【0031】
また,絶縁性材料は,液状であっても,フィルム状であってもよい。絶縁性材料が液状の場合,スピンコート法,ダイコータ法,カーテンコータ法,ロールコータ法,ドクターブレード法,スクリーン印刷などにより形成することができる。絶縁性材料がフィルム状の場合,例えば真空ラミネート法により絶縁樹脂層を形成することができる。上記のように形成された絶縁樹脂層は,加熱または光照射により硬化させてもよい。
【0032】
例えば回路基板10は、中央領域11と周辺領域12とを有し、高周波回路13を複数配置したパネルの状態で製品として出荷され、出荷先にて、中央領域11から周辺領域12が削除され、さらに高周波回路13ごとにダイシングされて、電子機器に搭載される。なお、中央領域11から周辺領域12を分離した状態で、回路基板10が出荷される場合もある。
【0033】
<回路基板の製造方法>
以下に、回路基板10の製造工程について、図6~10を参照して説明する。まず、300μm以下の板厚のコア基板1を準備する。コア基板1の材質は,電気絶縁性を有し,シリコンの熱膨張係数に近い材料が好ましい。このような材質として,例えば,ガラス,セラミック,ガラスセラミック等の無機材料を用いることが可能である。本実施形態では,コア基板1としてガラス基板を用いた。ガラス基板は,表面の平滑性と寸法安定性が優れる。ガラス基板は、表面を当分野で一般的に行われている方法により処理されたものであってもよい。例えば、表面に粗化処理を行ったものであってもよく,フッ酸で処理したものであってもよく、また,ガラス基板表面にシリコン処理を施したものであってもよい。ガラス基板の表面に下地層(図示せず)を形成してもよい。コア基板1の厚さは,特に限定されないが,好ましくは100μm~300μmである。
【0034】
(貫通孔形成)
まず,図6に示すようにコア基板1の中央領域11に配線用貫通孔16を形成し、周辺領域12に応力緩和用貫通孔14を形成する。配線用貫通孔16と応力緩和用貫通孔14の形成方法としては,放電加工,レーザー加工,フッ酸などの薬液処理,これらの組合せになどが挙げられるが,それらに限定されるものではない。また,感光性のガラスに、配線用貫通孔13と応力緩和用貫通孔14を形成してもよい。応力緩和用貫通孔14の位置は、信号ライン,電源ライン,グランドなど,回路配線として必要な機能を有した配線の外側であればどこでもよいが,好ましくは最も外側の高周波回路13の外縁から1mm以内の範囲に配置することが望ましい。また,応力緩和用貫通孔14の数,径についても限定されるものではないが,好ましくは全周に均一に配置し,径は加工可能な範囲で小さくする。応力緩和用貫通孔14の配列は,孔間の距離が一定となるような千鳥配列に配置されてよい。千鳥配置の列数については限定されない。コア基板1に配線用貫通孔16を形成する場合は,応力緩和用貫通孔14の形成と同じ工程で実行されることが好ましい。
【0035】
(配線層の形成)
次に図7に示すように、コア基板1の中央領域11の表裏面に、第1の配線層5,5を形成する。上述したように第1の配線層5、5は,銅,銀,すず,金,タングステン,導電性樹脂などを用いて形成することができるが、好ましくは銅が用いられる。配線形成方法は限定されないが、例えばセミアディティブ工法によるCuめっき配線などを使用できる。また,コア基板1の配線用貫通孔16の内部にも導電性材料を積層または充填して貫通電極17を形成する。このとき、周辺領域12に銅層を形成できる。
【0036】
(貫通孔の充填)
次に,応力緩和用貫通孔14の充填を行う。なお、応力緩和用貫通孔14の充填は,配線層形成時にCuめっきで埋める方法や,配線形成後に電導性ペーストで充填する方法を採用してもよく,その場合には応力緩和用貫通孔14の内部が導通化される。ただし、応力緩和用貫通孔14の充填物15は、後述する第1の絶縁樹脂層6,6に用いられる樹脂と同等の熱膨張率,弾性率,延性を有した材料、すなわち同じ樹脂であることが望ましい。尚,応力緩和用貫通孔14の充填は,別工程で行ってもよい。
【0037】
(絶縁樹脂層の形成)
次に,第1の配線層5、5上に第1の絶縁樹脂層6,6を形成する。上述したように,第1の絶縁樹脂層6,6は,エポキシ樹脂系材料,エポキシアクリレート系樹脂,ポリイミド系樹脂などを用いて形成することができる。これらの絶縁性材料は,充填剤を含んでもよい。配線層と絶縁樹脂層とを複数層積層する場合は,上述した配線層形成工程と絶縁樹脂層形成工程とを繰り返し行う。
さらに図8に示すように,第1の絶縁樹脂層6,6の上に第2の配線層7,7を形成し、第2の配線層7,7の上に第2の絶縁樹脂層8,8を形成することができる。第1の配線層5、5と、第2の配線層7、7とは、導通ビア7aを介して導通する。
【0038】
(最外層の形成及び表面処理)
次に,図9に示すように最外層9を形成する。最外層9の形成方法や材料は特に限定されるものではないが,ソルダーレジストと呼ばれる感光性の樹脂材料を形成することが好ましい。また,配線層の表面処理として,OSP(Organic Solderability Preservative)処理,金めっき処理,Snめっき処理などを施すことがあるが,特に限定されない。
【0039】
以上で、図10に示すように、回路基板10が完成する。回路基板10は、周辺領域12を含んだ状態で製品として出荷することもできるし、あるいは図10の点線Bで示す位置で、中央領域11と周辺領域12とを切断して、中央領域11のみを有する回路基板10を出荷することもできる。本実施形態によれば、周辺領域12に応力緩和用貫通孔14を形成することによって、回路基板10の縁にクラックが生じることを抑制できる。
【0040】
(個片化)
出荷された回路基板10は、例えば出荷先にて、中央領域11の高周波回路13毎にダイシングブレードにより個片化され、電子機器に搭載される。
【0041】
(変形例)
図11は、変形例にかかる回路基板の周辺領域の応力緩和用貫通孔14と、中央領域の配線用貫通孔16の断面図である。本変形例において、配線用貫通孔16に導電性ペーストが充填されて貫通電極17が形成され、貫通電極17は、第1の配線層5,5と導通している。また、応力緩和用貫通孔14にも充填物15として導電性ペーストが充填されている。配線用貫通孔16と応力緩和用貫通孔14の導電性ペーストは、配線層形成工程で充填できる。導電性ペーストとしては、有機材料または無機材料をバインダーとする導電フィラーを含んだものを用いることができる。それ以外の構成は、図3に示す例と同様であるため、重複説明を省略する。
【0042】
(実施例1と比較例1)
以下,実施例1と比較例1とを比較して説明する。
まず,板厚寸法が300μmのコア基板1(アルミノ珪酸塩ガラス)を準備し,コア基板1に応力緩和用貫通孔14を形成した。応力緩和用貫通孔14は放電加工により80μmの径で形成し,応力緩和用貫通孔14の中心間距離が120μmとなるように千鳥配置2列で回路基板10の外周から0.5mmの位置に設けた。同時に表裏の電気的接続を得る為の配線用貫通孔16も設けた.
【0043】
次に,コア基板1の厚さ方向の表面に銅めっきにより5μmの厚みの第1の配線層5、5を形成した。銅配線の形成にはセミアディティブ法を使用した.次に,第1の配線層5、5に重ねて、線膨張係数が34ppmのエポキシ配合樹脂である絶縁性材料を真空ラミネートし,第1の絶縁樹脂層6,6を形成した。このとき同時に応力緩和用貫通孔14を絶縁性材料で充填した。
【0044】
さらに,第1の配線層5,5の形成と第1の絶縁樹脂層6,6の形成と,層間の導通を得る為のビア加工を繰り返すことで回路基板10を得た。次にソルダーレジストにより最外層9を形成し,フォトリソグラフィープロセスにより,接合パッドを露出させた。つぎに接合パッドの表面処理としてOSP処理を施した。
【0045】
(比較結果)
上記実施例1に対し、周辺領域12に貫通孔を形成しない以外は共通の構成を有する比較例1を作製した。その結果,比較例1では,約7割の回路基板の外周において、製造プロセス内でのハンドリングにより生じた破損が観察された。これに対し、実施例1の回路基板10では、高周波回路13に達する割れやひびなどが発生していないことを確認できた。
【0046】
(実施例2および比較例2)
上面からみた(平面視した)ときに1辺が100mmで、板厚寸法100μmのコア基板1を準備し、それぞれのコア基板1に応力緩和貫通孔14が形成される周辺領域を2mm幅とし、四辺の縁からΔ=50μm内側を貫通孔形成禁止領域として、表1に示した4種類のパターン配置で応力緩和貫通孔14を形成した。
【0047】
【表1】
【0048】
パターンは、格子配置(図4参照)と、隣接する3つの応力緩和貫通孔14の中心を結んだ直線からなる三角形の内角が60°である千鳥配置(図5参照)とした。また、応力緩和貫通孔14の孔径を、φ100μmとφ30μmとした。ここで、それぞれ応力緩和貫通孔14の開口径の半径をrとしたときに、実施例2として応力緩和貫通孔14の中心が3rのピッチ、比較例2として応力緩和貫通孔14の中心が5rのピッチとなるように、間隔をあけて配置した。
【0049】
次に、上述した実施形態の製造方法に従って、コア基板の厚さ方向に銅めっきにより、7μmの厚みの第1の配線層5を形成し、次に,第1の配線層5に重ねて、線膨張係数が34ppmのエポキシ配合樹脂である絶縁性材料を真空ラミネートし,第1の絶縁樹脂層6を形成した。このとき同時に応力緩和用貫通孔14を絶縁性材料で充填した。
【0050】
第1の配線層5の形成と第1の絶縁樹脂層6の形成と,層間の導通を得る為のビア加工を繰り返すことで回路基板10を得た。次にソルダーレジストにより最外層9を形成し,フォトリソグラフィープロセスにより,接合パッドを露出させた。つぎに接合パッドの表面処理としてOSP処理を施した。
【0051】
(比較結果)
上記の条件で作成した実施例2による回路基板は、いずれのパターン配置でも、周辺領域での応力緩和貫通孔14の占有率が30%以上となるため、応力緩和貫通孔14の配置ピッチが5rである比較例2よりも、コア基板外周の樹脂の体積が多くなることで端部からの割れやクラックが軽減され良好な結果が得られた。
【0052】
(実施例3と比較例3)
上面からみた(平面視した)ときに1辺が100mmで、板厚寸法100μmのコア基板1を準備し、それぞれのコア基板1に、大径・小径の応力緩和貫通孔14が形成される周辺領域12を5mm幅とし、四辺の縁からΔ=50μm内側を貫通孔形成禁止領域として、図12のような千鳥配置で応力緩和貫通孔14を作成した。また、同時に中央領域11に、表裏面を導通するための配線用貫通孔(図11参照)も形成した。
【0053】
周辺領域12において、図12のように、小径の応力緩和貫通孔14を複数個、千鳥配置で形成した小径貫通孔領域Aと、小径貫通孔領域Aの内側にて、大径の応力緩和貫通孔14を複数個、千鳥配置で形成した大径貫通孔領域Bの2つの領域を設けた。ここで、領域A、Bの合計の幅は5mmとした。このとき、小径貫通孔領域Aでは応力緩和貫通孔14の径をφ30μmとし、大径貫通孔領域Bの領域では応力緩和貫通孔14の径をφ100μmとした。
【0054】
次に実施例2と同様に、上述した実施形態の製造方法に従って、コア基板の厚さ方向に銅めっきにより、7μmの厚みの第1の配線層5を形成し、次に,第1の配線層5に重ねて、線膨張係数が34ppmのエポキシ配合樹脂である絶縁性材料を真空ラミネートし,第1の絶縁樹脂層6を形成した。このとき、同時に応力緩和用貫通孔14を絶縁性材料で充填した。
【0055】
また、ナノ導電粒子を含む導電性ペーストをスクリーン印刷で応力緩和貫通孔を形成した位置に印刷を行い、貫通孔に充填した基板を作成した。一方、比較例3として応力緩和用貫通孔を有さないコア基板を準備した。
【0056】
実施例3及び比較例3とも、第1の配線層5の形成と第1の絶縁樹脂層6の形成と,層間の導通を得る為のビア加工を繰り返すことで回路基板を得た。次にソルダーレジストにより最外層9を形成し,フォトリソグラフィープロセスにより,接合パッドを露出させた。つぎに接合パッドの表面処理としてOSP処理を施した。
【0057】
(比較結果)
これら実施例3及び比較例3について、図12の右上の角CPから左方に1mm、下方に1mmシフトした位置Xに、先端のとがった錐(キリ)を突き刺して、強制的にクラックを生じさせるようにした。その結果、応力緩和貫通孔を有さない比較例3の回路基板では、中央領域11に向かって亀裂が伸展した。これに対し実施例3の回路基板では、クラックは生じるものの、小径貫通孔領域Aと大径貫通孔領域Bの境界で亀裂が止まり、中央領域11に向かって亀裂が伸展することを防ぐことができた。
【符号の説明】
【0058】
1 コア基板
5 第1の配線層
6 第1の絶縁樹脂層
7 第2の配線層
8 第2の絶縁樹脂層
9 最外層
10 回路基板
11 中央領域
12 周辺領域
13 高周波回路
14 応力緩和用貫通孔
15 充填物
16 配線用貫通孔
17 貫通電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12