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  • 特開-逆止弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046870
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】逆止弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/02 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
F16K15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152477
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】窪 英範
【テーマコード(参考)】
3H058
【Fターム(参考)】
3H058AA03
3H058BB40
3H058CA02
3H058CA04
3H058CB12
3H058CB14
3H058CC02
3H058CC08
3H058CC11
3H058CD05
3H058EE02
3H058EE06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】開弁した際、流体の十分な流量を確保することができる逆止弁を提供する。
【解決手段】流入口51からドレン等の流体が矢印91方向に流入した場合、ディスク弁2は弁座面9から離れる方向に平行移動して開弁する(開弁状態)。ディスク弁2が開弁することによって、流入したドレン等は、ディスク弁2の外周に形成された8箇所の外周空間を通過し、外側流路92に沿って排出される。また、同時にディスク弁2は副弁座3の副弁座面3aからも離れ、ディスク弁2の中心穴2aが開放され、流入したドレン等はディスク弁2の中心穴2aを通過し、内側流路93に沿って排出される。このように、ドレン等は、異なる複数の経路である外側流路92及び内側流路93に沿って排出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が一次側から二次側に向かって通過する流路、及び当該流路に連通する弁室部を有する本体、
弁室部内に移動可能に位置しており、弁室部に設けられた弁座部に当接可能な弁体手段であって、一次側から二次側に通過する流体の流れを受けて移動し、弁座部と離隔することによって、外周部分に形成される外周流路を開放して開弁状態になり、二次側から一次側に向かう逆流方向の流体の流れを受けて移動し、弁座部に当接することによって、外周部分に形成される外周流路を閉塞して閉弁状態になる弁体手段、
を備えた逆止弁において、
弁室部には、弁体手段と当接可能である補助弁座部が設けられており、
弁体手段には、外周流路とは異なる経路である補助流路を形成させる補助流路空間が形成されており、
弁体手段が開弁状態にあるとき、弁体手段は補助弁座部と離隔することによって補助流路空間を開放して補助流路を形成し、
弁体手段が閉弁状態にあるとき、弁体手段は補助弁座部に当接することによって補助流路を閉塞する、
ことを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
請求項1に係る逆止弁において、
弁体手段に形成されている補助流路空間は、当該弁体手段の中心部に貫通孔として形成されている、
ことを特徴とする逆止弁。
【請求項3】
請求項2に係る逆止弁において、
補助弁座部は、補助流路空間を貫通して位置する固定部材によって支持されている、
ことを特徴とする逆止弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る逆止弁は、弁体が移動することによって開弁又は閉弁を行う逆止弁の構成の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
逆止弁は、流体の流路に設けられる弁であり、流体の背圧による逆流を防止する機構を備えている。たとえば、産業プラントに設置されている配管は高温・高圧の蒸気を移送し、この配管内には蒸気と共に、蒸気から発生したドレン(凝縮水)が所定の方向(順方向)に流れている。
【0003】
このような蒸気やドレンの逆流を防止するために、配管上の必要箇所に逆止弁が設けられる。逆止弁には、構造上、様々な方式があり、スイング式逆止弁、リフト式逆止弁、ディスク式逆止弁等が知られている。
【0004】
この中、たとえばディスク式逆止弁は、本体内に弁座及び移動可能に配置された円盤状のディスク弁を内蔵している。このディスク弁は、逆止弁の本体に形成された流路を遮るように位置しており、コイルバネによって、弁座の弁座面に接する方向に付勢されている。
【0005】
ドレン等の流体が順方向に向けて逆止弁の流入口から流入した場合、流体の入口側である一次側の圧力が、出口側である二次側の圧力よりも大きくなる。これによってコイルバネは圧縮され、ディスク弁は弁座から離れる方向に平行移動して流路を開放して開弁し、ドレン等の順方向への流れを許容する。そして、ドレン等は本体の内面とディスク弁の側面との間の隙間を通過し、逆止弁の流出口から流出する。
【0006】
これに対して、ドレン等に逆流が生じて流出口から逆流方向にドレン等が侵入した場合、この逆流によって一次側圧力が二次側圧力よりも小さくなる。これによってディスク弁は、流体の圧力とコイルバネの付勢力を受けて平行移動し、弁座の弁座面に接して流路を閉塞して閉弁し、ドレン等の流体の逆流は逆止弁で遮られる。
【0007】
このようなディスク式逆止弁として、後記特許文献1に開示されている技術がある。この特許文献1に開示されている逆止弁においては、入口側部材2と出口側部材4から弁ケーシングを構成し、この弁ケーシングに入口1と弁室5と出口3を形成している。そして、入口1と弁室5の間に金属製の環状弁座6を設けている(特許文献1、明細書段落番号[0009])。そして、環状弁座6に離着座するディスク状弁体7を弁室5内に配置し、ディスク状弁体7を環状弁座6へ付勢するコイルバネ8を設けている。(特許文献1、明細書段落番号[0009])。
【0008】
入口1の流体圧力が出口3の流体圧力及びコイルバネ8の付勢力よりも大きくなると、ディスク状弁体7がコイルバネ8を圧縮して環状弁座6から離座して開弁し、流体がディスク状弁体7の外周を通って出口5に流れる。これに対して、入口1の流体圧力が出口3の流体圧力及びコイルバネ8の付勢力よりも小さくなると、ディスク状弁体7が入口1側に変位して環状弁座6に着座して閉弁し、出口3から入口1への流体の逆流が防止される(特許文献1、明細書段落番号[0012])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-47905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前述の特許文献1に開示された技術においては、開弁した際、流体はディスク状弁体7の外周を通って出口5に流れるのみである。このため、流体の十分な流量を確保することができない場合がある。
【0011】
そこで本願に係る逆止弁は、開弁した際、流体の十分な流量を確保することができる逆止弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願に係る逆止弁は、
流体が一次側から二次側に向かって通過する流路、及び当該流路に連通する弁室部を有する本体、
弁室部内に移動可能に位置しており、弁室部に設けられた弁座部に当接可能な弁体手段であって、一次側から二次側に通過する流体の流れを受けて移動し、弁座部と離隔することによって、外周部分に形成される外周流路を開放して開弁状態になり、二次側から一次側に向かう逆流方向の流体の流れを受けて移動し、弁座部に当接することによって、外周部分に形成される外周流路を閉塞して閉弁状態になる弁体手段、
を備えた逆止弁において、
弁室部には、弁体手段と当接可能である補助弁座部が設けられており、
弁体手段には、外周流路とは異なる経路である補助流路を形成させる補助流路空間が形成されており、
弁体手段が開弁状態にあるとき、弁体手段は補助弁座部と離隔することによって補助流路空間を開放して補助流路を形成し、
弁体手段が閉弁状態にあるとき、弁体手段は補助弁座部に当接することによって補助流路を閉塞する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願に係る逆止弁においては、弁体手段が開弁状態にあるとき、弁体手段は弁座部と離隔して外周部分に形成される外周流路を開放すると共に、補助弁座部と離隔して補助流路空間を開放して、外周流路とは異なる経路である補助流路を形成する。
【0014】
すなわち、弁体手段が開弁状態にあるとき、外周流路と共に外周流路とは異なる経路である補助流路が形成され、これらの流路を流体が通過する。したがって、開弁した際、流体の十分な流量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本願に係る逆止弁の第1の実施形態であるディスク式逆止弁1を示す一部断面図であって、開弁時の状態を示す一部断面図である。
図2図1に示すII―II方向の矢視断面図である。
図3図1に示すディスク式逆止弁1の閉弁時の状態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態における用語説明]
以下の実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る逆止弁の下記の構成要素に対応している。
【0017】
ディスク式逆止弁1・・・逆止弁
ディスク弁2・・・弁体手段
中心穴2a・・・補助流路空間、貫通孔
副弁座3・・・補助弁座部
支持バー4・・・固定部材
弁室7・・・弁室部
弁室7、流入口51及び流出口52・・・流路
第一ボディー11及び第二ボディー12・・・本体
第一ボディー11の二次側の端部・・・弁座部
流入口51側・・・一次側
流出口52側・・・二次側
外側流路92・・・外周流路
内側流路93・・・補助流路
ドレン等・・・流体
矢印95方向・・・逆流方向
【0018】
[第1の実施形態]
本願に係る逆止弁の第1の実施形態であるディスク式逆止弁1を図面に基づいて説明する。本実施形態では、ディスク式逆止弁1を蒸気移送のための配管系統に設置する例を示す。配管内には蒸気と共に蒸気から発生したドレンが流れており、ディスク式逆止弁1はこのドレン等の逆流を防止する。
【0019】
(ディスク式逆止弁1の構成の説明)
図1に示すように、ディスク式逆止弁1は第一ボディー11及び第二ボディー12を有しており、内部に弁室7を形成して構成されている。第一ボディー11と第二ボディー12とはネジ部13で結合され、ガスケット90を挟むことによって弁室7の気密性を保っている。
【0020】
第一ボディー11には流入口51が貫通して形成されて弁室7に連通しており、流入口51の外側から配管(図示せず)が接続され、流入口51を通じてドレン等が矢印91方向に沿って弁室7に流入する。また、第二ボディー12には流出口52が貫通して形成されて弁室7に連通しており、流出口52の外側に排出管(図示せず)が接続されてドレン等が矢印94方向に沿って弁室7から排出される。なお、本実施形態において、流入口51側が一次側であり、流出口52側が二次側である。弁室7を形成する第一ボディー11の二次側の端部は弁座として機能し、この二次側部分の端面が弁座面9である。
【0021】
弁室7にはディスク弁2が設けられている。このディスク弁2の中心線60は矢印91方向に沿って配置されており、ディスク弁2は弁室7内において中心線60の配置方向に往復して移動自在である。
【0022】
ディスク弁2は円盤形状を有しており、図2に示すように外周側面に等間隔をもって8つの外周突起21が設けられている。各外周突起21は、弁室7の内周面7aに近接して位置している。そして、各外周突起21の間に8箇所の外周空間25が形成されている。さらに、ディスク弁2の中央部には中心穴2aが形成されている。この中心穴2aの中心はディスク弁2の中心線60に一致するように構成されている。
【0023】
図1に示すように、弁室7にはバネ受17が固定されて設けられている。バネ受17は、十字型に延びる4本のバネ受脚17aを有しており、この4本のバネ受脚17aの先端部が第二ボディー12の内壁に固定されている。バネ受17とディスク弁2との間にはコイルバネ15が取り付けられている。このコイルバネ15によってディスク弁2は弁座面9に向けて付勢される。
【0024】
バネ受17の中心部には支持バー4が固定されている。この支持バー4の軸線はディスク弁2の中心線60に一致するよう配置されている。そして、支持バー4はディスク弁2の中心穴2aを貫通して配置されており、先端に副弁座3が固定されている。副弁座3の中心もディスク弁2の中心線60に一致するよう構成されている。
【0025】
副弁座3の一次側の正面は、中心部から外周に向けて副弁座3の厚みが漸次薄くなるようなだらかに傾斜する球面状の曲面として構成されている。そして、二次側の背面は平坦な副弁座面3aであり、この副弁座面3aは上述の弁座面9と同一平面上に配置されている。なお、副弁座面3aは、ディスク弁2に形成されている中心穴2aよりも大きな面積を備えており、ディスク弁2が副弁座面3aに当接した際、副弁座面3aが中心穴2aを完全に覆うように構成されている。
【0026】
(ディスク式逆止弁1の動作の説明)
続いて、ディスク式逆止弁1の動作を説明する。流入口51からディスク式逆止弁1にドレン等の流体が矢印91方向に流入した場合、まずドレン等は副弁座3の球面状の曲面に衝突し、この球面状の曲面に沿って円滑に案内され、副弁座3の外周と弁座面9との間に形成されている空間から侵入し、ディスク弁2を加圧する。
【0027】
これによって、弁室7内のディスク弁2は弁座面9から離れる方向に平行移動し、図1に示すように開弁する(開弁状態)。このとき、コイルバネ15は圧縮された状態になる。
【0028】
ディスク弁2が開弁することによって、流入したドレン等は、ディスク弁2の外周に形成された8箇所の外周空間25を通ってディスク弁2の裏側に回り込み、さらにバネ受17の十字型に延びる4本のバネ受脚17aの間を通過し、外側流路92に沿って流出口52から矢印94方向に排出される。
【0029】
また、ディスク弁2が開弁することによって、同時にディスク弁2は副弁座3の副弁座面3aからも離れ、ディスク弁2の中心穴2aが開放される。これによって、流入したドレン等はディスク弁2の中心穴2aを通ってバネ受17の十字型に延びる4本のバネ受脚17aの間を通過し、内側流路93に沿って流出口52から矢印94方向に排出される。
【0030】
このように、ディスク弁2が開弁した場合、流入したドレン等は外側流路92に沿って排出されると同時に、内側流路93に沿って排出される。すなわち、異なる複数の経路である外側流路92及び内側流路93に沿って排出されるため、開弁した際、ドレン等の流体の十分な流量を確保することができる。
【0031】
これに対して、流出口52から図3に示す矢印95方向にドレン等が逆流して侵入した場合、この逆流はバネ受17の十字型に延びる4本のバネ受脚17aの間を通過してディスク弁2の裏側に達する。そして、ドレン等の逆流による圧力とコイルバネ15の付勢力を受けてディスク弁2は平行移動する。
【0032】
このディスク弁2の平行移動によってディスク弁2は弁座面9に接し、図3に示すように閉弁する(閉弁状態)。また、このとき同時にディスク弁2は副弁座3の副弁座面3aにも接し、ディスク弁2の中心穴2aが閉塞される。これによって、外側流路92及び内側流路93は遮断され、ドレン等の逆流が防止される。
【0033】
なお、上述のように中心穴2aの中心点はディスク弁2の中心線60に一致するよう形成されており、かつ副弁座3の中心線及びこの副弁座3を支持する支持バー4の軸線も同様にディスク弁2の中心に一致するよう配置されている。このため、開弁時において、内側流路93はディスク弁2に対して偏りなく形成され、ドレン等はディスク弁2の中心穴2aをバランスよく通過する。したがって、ディスク弁2がドレン等の偏った流体圧の影響を受けて弁室7内で斜め方向にずれる等、不都合を生じることはない。
【0034】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、ディスク弁2がコイルバネ15によって弁座面9に向けて付勢されているスプリング式のディスク式逆止弁1に、本願に係る逆止弁を適用した例を示したが、コイルバネ15を備えていないディスク式逆止弁に適用してもよい。
【0035】
また、前述の実施形態においては、弁体手段としてディスク弁2を例示したが、弁室部に移動可能に設けられており、弁座部及び補助弁座部に離隔又は当接することによって弁の開閉を行うものであれば他の形状、構造のものを採用することができる。
【0036】
たとえば、前述の実施形態においては、ディスク弁2の外周側面に等間隔をもって8つの外周突起21が設けられ、8箇所の外周空間25が形成されている例を示したが、7つ以下又は9つ以上の外周突起を設けることもできる。
【0037】
また、前述の実施形態においては、補助弁座部として支持バー4に支持された副弁座3を例示したが、他の形状、構造のものを採用することができる。たとえば、支持バー4による支持ではなく第一ボディー11(本体)の内壁に直接固定された補助弁座部を採用してもよい。
【0038】
さらに、ディスク弁2に補助流路空間として中心穴2aが形成されている例を示したが、他の形状、構造のものを採用することができる。たとえば、複数の貫通穴を補助流路空間として弁体手段に形成してもよい。
【0039】
また、前述の実施形態においては、二つの異なる経路である外側流路92及び内側流路93に沿ってドレン等の流体が流出する例を掲げたが、三つ以上の経路を形成して流体を流出させることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1:ディスク式逆止弁 2:ディスク弁 2a:中心穴 3:副弁座
4:支持バー 7:弁室 11:第一ボディー 12:第二ボディー
51:流入口 52:流出口 92:外側流路 93:内側流路

図1
図2
図3