(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046889
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】工具ホルダ
(51)【国際特許分類】
B23B 29/00 20060101AFI20220316BHJP
B23B 27/16 20060101ALI20220316BHJP
B23B 29/24 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
B23B29/00 P
B23B27/16 B
B23B29/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152516
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千田 国秀
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046AA15
3C046EE11
3C046NN05
3C046PP01
(57)【要約】
【課題】タレット面に対する工具ホルダの確実な取付け状態を維持し、高精度の突切り加工を達成する工具ホルダを提供する。
【解決手段】工作機械に設けたタレット12のタレット面12aに当接して固定するホルダ基部110とこのホルダ基部110と一体成形して突切り加工用ブレード200を着脱自在に保持するブレード保持部120とで構成され、ブレード保持部120が、突切り加工用ブレード200の突切り方向に向かってホルダ基部110から突出し、ホルダ基部110およびブレード保持部120が、タレット12のタレット面12aを正面視した状態でタレット面12a内に収まるように形成されている工具ホルダ100。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に設けたタレットのタレット面に当接して固定するホルダ基部と該ホルダ基部と一体成形して突切り加工用ブレードを着脱自在に保持するブレード保持部とで構成された工具ホルダであって、
前記ブレード保持部が、前記突切り加工用ブレードの突切り方向に向かって前記ホルダ基部から突出し、
前記ホルダ基部および前記ブレード保持部が、前記タレットのタレット面を正面視した状態で前記タレット面内に収まるように形成されている、工具ホルダ。
【請求項2】
前記ブレード保持部が、前記タレットのタレット面を正面視した状態で前記突切り加工用ブレードを前記ホルダ基部の中央付近に位置付けるように前記ホルダ基部から突出している、請求項1に記載の工具ホルダ。
【請求項3】
前記ブレード保持部が、前記ブレード保持部の両側面をそれぞれ段差状に一部切り欠いて前記突切り加工用ブレードを添着させる左右一対のブレード用添着面と前記突切り加工用ブレードを前記ホルダ基部に向けて着座させる左右一対のブレード用座面とを有している、請求項1または請求項2に記載の工具ホルダ。
【請求項4】
前記ブレード保持部が、前記突切り加工用ブレードを前記ブレード保持部の両側面のいずれか一方に付け替え自在となるように形成されている、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の工具ホルダ。
【請求項5】
前記ブレード保持部が、前記突切り加工用ブレードの突切り先端部位のみを突切り方向に向けて前記ブレード保持部から突出するように形成されている、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の工具ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のタレットに装着される切削工具の工具ホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械のタレットに装着される切削工具の工具ホルダについては、切削工具の切削機能に応じて様々なホルダ形態があり、また、この工具ホルダに保持した切削工具でワークに対して円周溝加工や切り離し加工などの突切り加工する場合、例えば、ワークを突き切る切削インサートと称するブレードとこのブレードを保持する柱状のホルダとを備えた突切り加工用の切削工具が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
そこで、このような突切り加工用の切削工具を工作機械のタレットに装着するための工具ホルダとして、
図7に示すように、タレット12のタレット面12aに固定する板状のホルダ基部511とこのホルダ基部511の片側端部からワークWに向けてL字状に突出した切削工具520のホルダ521を保持する工具保持部512とで構成された工具ホルダ510がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した工具ホルダ510では、突切り加工用の切削工具520を丸棒状のワークWの接線に直交する方向(
図7中、矢印D1方向)に送った場合、突切り方向D1とは逆方向の力が、ブレード522の刃先に反力F1として負荷される。
この反力F1が、工具保持部512を経てホルダ基部511に生じ、タレット面12aからホルダ基部511の片持ち梁状に食み出した部分(
図7中、二点鎖線による囲い部分)に曲げモーメントが作用するため、工具ホルダ510が変形する。
この変形により、工具ホルダ510に保持した切削工具520のワークWに対する突切り位置にズレを生じて突切り加工の加工精度が低下してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、タレット面に対する工具ホルダの確実な取付け状態を維持し、高精度の突切り加工を達成する工具ホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1に、本発明は、工作機械に設けたタレットのタレット面に当接して固定するホルダ基部と該ホルダ基部と一体成形して突切り加工用ブレードを着脱自在に保持するブレード保持部とで構成された工具ホルダであって、前記ブレード保持部が、前記突切り加工用ブレードの突切り方向に向かって前記ホルダ基部から突出し、前記ホルダ基部および前記ブレード保持部が、前記タレットのタレット面を正面視した状態で前記タレット面内に収まるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
第2に、前記ブレード保持部が、前記タレットのタレット面を正面視した状態で前記突切り加工用ブレードを前記ホルダ基部の中央付近に位置付けるように前記ホルダ基部から突出していることを特徴とする。
【0009】
第3に、前記ブレード保持部が、前記ブレード保持部の両側面をそれぞれ段差状に一部切り欠いて前記突切り加工用ブレードを添着させる左右一対のブレード用添着面と前記突切り加工用ブレードを前記ホルダ基部に向けて着座させる左右一対のブレード用座面とを有していることを特徴とする。
【0010】
第4に、前記ブレード保持部が、前記突切り加工用ブレードを前記ブレード保持部の両側面のいずれか一方に付け替え自在となるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
第5に、前記ブレード保持部が、前記突切り加工用ブレードの突切り先端部位のみを突切り方向に向けて前記ブレード保持部から突出するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、突切り加工時に突切り方向の送り分力がブレード保持部を経てホルダ基部に生じてもこのホルダ基部をタレットから食み出すことなくタレット面内で確実に受け止め、従来のようにホルダ基部を変形させることがないため、タレット面に対する工具ホルダの確実な取付け状態を維持し、その結果、突切り加工用ブレードの突切り方向に対するゆがみや傾きがなく、しかも、ブレード側面の偏摩耗が低減され、高精度の突切り加工を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例である工具ホルダが装着されるタレットを備えた工作機械を示す斜視図。
【
図4A】
図2に示す工具ホルダの一方の側面に添着される突切り加工用ブレードの斜視図。
【
図4B】
図2に示す工具ホルダの他方の側面に添着される突切り加工用ブレードの斜視図。
【
図5】主軸の回転軸方向から視た突切り加工時の工具ホルダに負荷される力の説明図。
【
図6】工作機械の下方から上方を視た突切り加工時の工具ホルダに負荷される力の説明図。
【
図7】従来技術の工具ホルダを工作機械の下方から上方を視た突切り加工時の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の工具ホルダは、工作機械に設けたタレットのタレット面に当接して固定するホルダ基部とこのホルダ基部と一体成形して突切り加工用ブレードを着脱自在に保持するブレード保持部とで構成され、このブレード保持部が突切り加工用ブレードの突切り方向に向かってホルダ基部から突出し、これらのホルダ基部およびブレード保持部がタレットのタレット面を正面視した状態でタレット面内に収まるように形成され、突切り加工時に突切り加工用ブレードの突切り方向から受ける反力をタレット面内で確実に受け止めてホルダ基部を変形させずに、タレット面に対する工具ホルダの確実な取付け状態を維持し、高精度の突切り加工を達成するものであれば、その具体的な実施形態は、如何なるものであっても構わない。
【0015】
すなわち、本発明である工具ホルダの具体的な実施形態については、ホルダ基部およびブレード保持部が、タレットのタレット面を正面視した状態でタレット面内に収まるように形成され、すなわち、タレットのタレット面から食み出さずに形成されていれば良く、例えば、ホルダ基部の中央付近からワークに向けてT字状突出しても良く、あるいは、ホルダ基部の片側端部からワークに向けてL字状に突出しても良い。
特に、ブレード保持部がホルダ基部の中央付近からワークに向けてT字状に突出して形成されている場合には、一つの工具ホルダで突切り加工用ブレードを工具ホルダの正面主軸側と背面主軸側のいずれか一方の側面に付け替え自在に添着することができるので、より好ましい。
【0016】
他方、本発明の工具ホルダに装着する突切り加工用ブレードの具体的なブレード形態については、主軸に保持されたワークに対して円周溝加工、溝入れ加工、切り離し加工等の突切り加工が可能であれば、如何なるブレード形態であっても良く、例えば、ワークを突切る切削インサートや切削チップとも称する超硬合金からなるブレードとこのブレードを保持する偏平板状のブレード用アダプター部とで構成されているものがより好ましい。
そして、突切り加工用ブレードを構成するブレードとこのブレードを保持するブレード用アダプター部とは、全体として偏平板状を呈しているのが望ましいが、両者が一体不可分に組み付けられていても良く、ブレードがワークの材質に応じて交換自在となるように組み付けられていても何ら構わない。
なお、上述した突切り加工用ブレードは、通常、用いられている市販のものであっても良いが、工具ホルダのブレード保持部に合わせて独自に製作することもできる。
【実施例0017】
以下、
図1乃至
図4に基づいて、本発明の一実施例である工具ホルダ100について説明する。
図1は、本発明の一実施例である工具ホルダ100が装着されるタレット12を備えた工作機械10を示す斜視図であり、
図2は、本発明の実施例である工具ホルダ100の斜視図であり、
図3は、
図2に示す工具ホルダ100の組み立て分解図である。
図4Aは、
図2に示す工具ホルダ100の一方の側面に添着される突切り加工用ブレード200の斜視図であり、
図4Bは、工具ホルダ100の他方の側面に添着される突切り加工用ブレード200の斜視図である。
なお、
図1中には、工作機械10のXYZの3軸方向を示している。また、
図2乃至
図4中には、互いに直交する3軸上における工具ホルダおよび突切り加工用ブレードの構成を示すため、互いに直交するxyzの3軸方向を示している。
【0018】
<1.工作機械の概要>
まず、
図1を参照して、本発明の一実施例である工具ホルダ100が装着されるタレット12を備えた工作機械10について説明する。
工作機械10は、いわゆるタレット旋盤であり、丸棒状のワークWを把持して回転する主軸11と、この主軸11の近傍に配置して工具ホルダ100が装着されるタレット12とが設けられている。
なお、本実施例の工具ホルダ100を用いる工作機械10では、正面主軸11及び正面主軸11と対向する背面主軸(不図示)の2つの主軸が設けられているが、正面主軸11のみが設けられていても何ら構わない。
また、この工作機械10で設けたタレット12には、その外周面を12等分した12ヶ所の平坦なタレット面12aが備えられており、これらのタレット面12aの一つに本実施例の工具ホルダ100が装着される。
なお、タレット12は、その外周面を12等分したもの、すなわち、12角形のものに限らず多角形であればよい。例えば、タレット12は、8角形であっても構わない。
【0019】
<2.工具ホルダの構造>
本発明の一実施例である工具ホルダ100の構造について、以下に詳しく説明する。
まず、工具ホルダ100は、
図2および
図3に示すように、工作機械10に設けたタレット12のタレット面12aに当接して固定するホルダ基部110と、このホルダ基部110と一体成形して突切り加工用ブレード200およびダミープレート300を着脱自在に保持するブレード保持部120と、で構成されている。
本実施例では、工具ホルダ100がホルダ基部110とブレード保持部120とから構成される略T型を呈している。
【0020】
これらのホルダ基部110およびブレード保持部120は、タレット12のタレット面12aを正面視した状態でタレット面12a内に収まるように形成されている。
より具体的には、ホルダ基部110は、タレット面12aから食み出すことなくタレット面12a内に設けられるとともに、ブレード保持部120がタレット面12aを正面視した状態でタレット面12a内に収まるように形成されている。
【0021】
ホルダ基部110には、タレット面12aに当接されるタレット用当接面111およびボルト孔112が形成されている。
タレット用当接面111は、タレット面12aの形状に合わせた矩形状をなし、タレット面12aの略全面に当接する寸法となっている。
ボルト孔112は、ホルダ基部110の四隅に厚み方向に貫通して形成されている。ホルダ基部110は、これらのボルト孔112を通したボルトによってタレット面12aに固定される。
【0022】
ブレード保持部120は、ホルダ基部110からx軸方向に突出している。
このブレード保持部120は、突切り加工用ブレード200をホルダ基部110の中央付近に位置付けるようにホルダ基部110に設けられている。
【0023】
そして、ブレード保持部120は、
図3に示すように、このブレード保持部120の両側面を段差状に一部切り欠いて、突切り加工用ブレード200を添着させる左右一対のブレード用添着面121と、突切り加工用ブレード200をホルダ基部110に向けて着座させる左右一対のブレード用座面122とを有している。
【0024】
ブレード用添着面121は、ブレード保持部120の両側面に形成されている。
このため、正面主軸側での加工に用いる突切り加工用ブレード200または、背面主軸側での加工に用いる突切り加工用ブレード200がブレード保持部120の両側面のいずれか一方に付け替え自在になっている。
このブレード用添着面121のy軸方向の高さH1は、突切り加工用ブレード200のy軸方向の高さH2に略等しくなっている。
すなわち、突切り加工用ブレード200は、y軸方向においてブレード用添着面121によって略全幅で当接されるようになっている。
【0025】
このようなブレード保持部120は、突切り加工用ブレード200の後述する突切り先端部位211のみをx軸方向においてブレード保持部120から突出されるように形成されている。
より具体的には、突切り加工用ブレード200がブレード保持部120に保持された状態で、突切り加工用ブレード200の突切り先端部位211のみをx軸方向において後述の主分力方向ブレード用座面122bから突出されるようにブレード保持部120が設けられている。
【0026】
ブレード用座面122は、突切り加工用ブレード200のx軸方向の端面を着座させる送り方向ブレード用座面122aと、突切り加工用ブレード200のy軸方向の端面を着座させる主分力方向ブレード用座面122bとを備えている。
【0027】
送り方向ブレード用座面122aの幅W1は、着座される突切り加工用ブレード200の厚みT1と同程度に設定されている。
主分力方向ブレード用座面122bの幅W2は、着座される突切り加工用ブレード200の厚みT2と同程度に設定されている。
【0028】
<3.突切り加工用ブレードの構造>
次に、本発明の一実施例である工具ホルダ100に取付けられる突切り加工用ブレード200の構造について、以下に詳しく説明する。
突切り加工用ブレード200は、ブレード保持部120の両側面に形成された一対のブレード用添着面121のそれぞれに付け替えられる
図4Aに示す突切り加工用ブレード200と
図4Bに示す突切り加工用ブレード200とに分けられる。
なお、本実施例では、
図4Aに示す突切り加工用ブレード200が工具ホルダ100の一方の側面に取付けられている。ここで、
図4Bに示す突切り加工用ブレード200を用いる場合、
図4Bに示す突切り加工用ブレード200を
図2においてダミープレート300が固定されているブレード保持部120の側面に固定させる。
【0029】
このような突切り加工用ブレード200は、刃物として機能するブレード部210と、工具ホルダ100のブレード保持部120によって保持されるブレード用アダプター部220とで構成され、平板状を呈している。
【0030】
ブレード部210は、ブレード用アダプター部220と一体的に形成されると共に、ブレード用アダプター部220に比べて薄く形成されている。
なお、ブレード部210は、刃先からブレード用アダプター部220に略円弧状に連接する部分までの距離が加工前のワークWの半径と同程度に設定されている。
このブレード部210は、刃先に切削インサート211aを着脱自在に保持可能な突切り先端部位211を有している。
【0031】
切削インサート211aは、ワークWに対して強度が極めて高い材料、例えば、超硬合金からなる。
【0032】
ブレード用アダプター部220には、前述したブレード保持部120のブレード用添着面121に当接されるホルダ用当接面221と、このホルダ用当接面221の反対側の面からブレード保持部120のブレード用添着面121に向けてネジ等の締結部材Tを通すことができる締結部材挿通孔222とが形成されている。
これにより、突切り加工用ブレード200は、ネジ止めされることによってホルダ用当接面221をブレード保持部120のブレード用添着面121に当接させた状態でブレード保持部120に固定される。
【0033】
突切り加工用ブレード200が、ホルダ用当接面221をブレード保持部120のブレード用添着面121に当接した状態でブレード保持部120に固定されると、突切り加工用ブレード200のx軸方向における突切り加工用ブレード200の端面がブレード保持部120の送り方向ブレード用座面122aに対向し、y軸方向における突切り加工用ブレード200の端面がブレード保持部120の主分力方向ブレード用座面122bに対向する。
【0034】
<4.ダミープレートの構造>
ダミープレート300は、ブレード保持部120の両側面に形成された一対のブレード用添着面121のいずれか一方の面に固定するものである。
このダミープレート300は、突切り加工用ブレード200を固定しない側のブレード用添着面121のネジ穴に切屑が入り込むことを防ぐと共に、切屑によってブレード用添着面121が損傷することを防ぐため、突切り加工用ブレード200の固定に用いるボルト穴あるいはネジ穴に締結部材Tを通してブレード用添着面121に固定される(
図3参照)。
なお、ダミープレート300は、ブレード保持部120のブレード用添着面121に固定した状態でx軸方向およびy軸方向でブレード用添着面121の内側に収まる寸法に調整されており、ブレード保持部120の一側面に固定された突切り加工用ブレード200による突切り加工の邪魔にならないようになっている。
【0035】
<5.本実施例の工具ホルダに負荷される力>
次に、
図5および
図6を参照して、突切り加工によって工具ホルダ100に負荷される力について説明する。
図5は、主軸の回転軸方向から視た突切り加工時の工具ホルダ100に負荷される力の説明図であり、
図6は、工作機械の下方から上方を視た突切り加工時の工具ホルダ100に負荷される力の説明図である。
なお、
図5および
図6中には、工作機械10のXYZの3軸方向を示している。
【0036】
ここで、タレット12に固定された工具ホルダ100は、突切り加工時におけるタレット12の旋回により、
図2乃至
図4に示したx軸が工作機械10のX軸に対応し、y軸が工作機械10のY軸に対応し、z軸が工作機械10のZ軸にそれぞれ対応する位置に位置決めされる。
これにより、x軸が突切り加工用ブレード200の突切り方向D1(以下、「加工送り方向」という。)に対応し、y軸が突切り加工用ブレード200に負荷される主分力の方向D2に対応し、z軸が工作機械10の主軸11の方向に対応する。
【0037】
工作機械10によって突切り加工が開始され、突切り加工用ブレード200がワークWの接線に直交する方向でワークWに押し付けられる方向である加工送り方向D1に送られると、加工送り方向D1とは逆方向の送り分力F1と、ワークWの接線方向の主分力F2が突切り加工用ブレード200の突切り先端部位211に負荷される。
【0038】
突切り加工用ブレード200の突切り先端部位211に負荷された送り分力F1により、突切り加工用ブレード200の加工送り方向D1の端面が送り方向ブレード用座面122aに当接するため、送り分力F1は送り方向ブレード用座面122aによって受け止められ、ブレード保持部120とホルダ基部110とを介してタレット面12aに負荷される。
なお、送り方向ブレード用座面122aの幅W1は、着座される突切り加工用ブレード200の厚みT1と同程度に設定されているため、送り分力F1を確実に受け止める。
【0039】
このようにして送り方向ブレード用座面122aによって受け止められた送り分力F1は、タレット面12a内(
図6中に示しす2本の二点鎖線の間)に収まるように形成されたホルダ基部110に生じる。
図6に示すように、工具ホルダ100がホルダ基部110とブレード保持部120とから構成される略T型をなすことにより、ホルダ基部110に生じた送り分力F1がホルダ基部110に偏在して負荷されることなくホルダ基部110の中央部位から左右方向にバランス良く分散負荷される。
【0040】
一方、突切り加工用ブレード200の突切り先端部位211に負荷された主分力F2は、
図5に示すように、突切り加工用ブレード200の主分力の方向D2の端面が主分力方向ブレード用座面122bに当接するため、主分力F2は主分力方向ブレード用座面122bによって受け止められる。
なお、主分力方向ブレード用座面122bの幅W2は、着座される突切り加工用ブレード200の厚みT2と同程度に設定されているため、主分力F2を確実に受け止める。
また、ブレード保持部120が、突切り加工用ブレード200の突切り先端部位211のみをX軸方向において主分力方向ブレード用座面122bから突出されるように突切り加工用ブレード200を保持することにより、突切り加工時に発生する主分力F2により突切り加工用ブレード200に生じがちなブレード厚み方向のたわみが抑制される。
さらに、ブレード用添着面121のY軸方向の高さH1を、突切り加工用ブレード200のY軸方向の高さH2に略等しくすることにより、突切り加工用ブレード200がY軸方向においてブレード用添着面121によって略幅で当接されるため、突切り加工時に発生する主分力F2により突切り加工用ブレード200に生じがちなブレード厚み方向のたわみがさらに抑制される。
【0041】
<6.本実施例の工具ホルダが奏する効果>
上述した本実施例の工具ホルダ100によれば、ブレード保持部120が突切り加工用ブレード200の突切り方向(X軸方向)に向かってホルダ基部110から突出し、このホルダ基部110およびブレード保持部120がタレット12のタレット面12aを正面視した状態でタレット面12a内に収まるように形成されていることにより、
突切り加工時に送り分力F1がブレード保持部120を経てホルダ基部110に生じてもこのホルダ基部110をタレット12から食み出すことなくタレット面12a内で確実に受け止め、従来のようにホルダ基部110を変形させることがないため、
タレット面12aに対する工具ホルダ100の確実な取付け状態を維持し、その結果、突切り加工用ブレード200の突切り方向に対するゆがみや傾きがなく、しかも、ブレード側面の偏摩耗が低減され、高精度の突切り加工を達成することができる。
【0042】
また、本実施例の工具ホルダ100によれば、ブレード保持部120が、タレット12のタレット面12aを正面視した状態で突切り加工用ブレード200をホルダ基部110の中央付近に位置付けるようにホルダ基部110から突出していることにより、突切り加工時に突切り加工用ブレード200から生じる送り分力がF1、ホルダ基部110の中央部位から左右方向に作用するため、この送り分力F1をブレード保持部120を介してホルダ基部110の中央部位から左右方向にバランス良くタレット12に分散させることができる。
【0043】
また、本発明の実施例である工具ホルダ100によれば、ブレード保持部120がこのブレード保持部120の両側面をそれぞれ段差状に一部切り欠いて突切り加工用ブレード200を添着させる左右一対のブレード用添着面121と、突切り加工用ブレード200をホルダ基部110に向けて着座させる左右一対のブレード用座面122とを有していることにより、ブレード保持部120のブレード用座面122が、送り分力F1を確実に受け止め、この送り分力F1がブレード保持部120とホルダ基部110とを介してタレット面12aに負荷されるため、従来のような突切り加工時の負荷によるホルダ基部110の変形を確実に抑制することができる。
【0044】
また、本発明の実施例である工具ホルダ100によれば、ブレード保持部120が突切り加工用ブレード200をブレード保持部120の両側面のずれか一方に付け替え自在となるように形成されていることにより、一つの工具ホルダ100で正面主軸側での加工に用いる突切り加工用ブレード200または、背面主軸側での加工に用いる突切り加工用ブレード200であっても付け替え可能となり、従来のようなそれぞれの突切り加工用ブレード200に対応する工具ホルダ100を用意する必要がないため、工具ホルダ100の保有点数を半減することができる。
【0045】
また、本発明の実施例である工具ホルダ100によれば、ブレード保持部120が、突切り加工用ブレード200の突切り先端部位211のみを加工送り方向D1に向けてブレード保持部120から突出するように形成されていることにより、突切り加工時に発生する主分力F2により突切り加工用ブレード200に生じがちなブレード厚み方向のたわみをブレード保持部120が抑制するため、その結果として、突切り加工時の加工送り速度を増加させて加工効率を向上させることができる。
【0046】
なお、本発明の実施例である工具ホルダ100では、突切り加工用ブレード200を突切り方向(X軸方向)のみに送るものを例示したが、突切り方向に加えて主軸の軸方向(Z軸方向)に突切り加工用ブレード200を送るようにしても構わない。また、突切り加工用ブレード200をZ軸方向に送る場合、ブレード保持部120のブレード用添着面121が主軸の軸方向に生じる送り分力を受ける面として機能することは言うまでもない。