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特開2022-46904電子楽器、録音再生プログラム及び録音再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046904
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】電子楽器、録音再生プログラム及び録音再生方法
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
G10H1/00 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152541
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】間森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真哉
(72)【発明者】
【氏名】馬野 靖久
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478EA71
5D478EA87
5D478EB02
5D478EB12
5D478EB37
(57)【要約】
【課題】入力された楽音フレーズの出力後に、その楽音フレーズとリズムフレーズとを出力できる電子楽器、録音再生プログラム及び録音再生方法を提供すること。
【解決手段】ルーパー1は、録音ボタン2が操作された場合に、楽音の録音が開始される。その際、スピーカSからは録音中の楽音(即ち楽音フレーズP)が出力される。その後、ループ再生ボタン3が操作された場合に、録音の停止と、録音された楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生の開始とが行われる。これにより、入力された楽音フレーズPの出力後に、その楽音フレーズPとリズムフレーズRとをループ再生した楽音を出力できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された楽音フレーズを録音し、その楽音フレーズとリズムフレーズとを再生する電子楽器であって、
第1指示の入力タイミングに基づく第1タイミングと、その第1タイミング後における第2指示の入力タイミングに基づく第2タイミングとを順次に取得するタイミング取得手段と、
そのタイミング取得手段によって取得した第1タイミングで、楽音の録音を開始し、前記タイミング取得手段によって取得した第2タイミングで、前記第1タイミングから前記第2タイミングまでに録音された楽音によるフレーズを前記楽音フレーズとして確定し、前記楽音フレーズの始端からの再生を開始すると共に、前記リズムフレーズの始端からの再生を開始する録音再生制御手段とを備えていることを特徴とする電子楽器。
【請求項2】
再生される前記楽音フレーズの終端のタイミングと前記リズムフレーズの終端のタイミングとが合致するように、前記リズムフレーズのテンポを設定するテンポ設定手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の電子楽器。
【請求項3】
前記録音再生制御手段は、前記楽音フレーズの再生開始後に、前記楽音フレーズの始端から終端までをループ再生することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子楽器。
【請求項4】
複製回数を指定する複製回数指定手段を備え、
前記録音再生制御手段は、前記第1タイミングから前記第2タイミングまでに録音された楽音によるフレーズを前記複製回数指定手段で指定された複製回数分複製して連結したものを、前記楽音フレーズとして確定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子楽器。
【請求項5】
前記タイミング取得手段は、前記第2指示の入力タイミング以後の音楽的タイミングを第2タイミングとして取得することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子楽器。
【請求項6】
前記音楽的タイミングは、小節または拍の終端のタイミングであることを特徴とする請求項5記載の電子楽器。
【請求項7】
前記リズムフレーズは、MIDIデータで構成されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電子楽器。
【請求項8】
前記第1指示および前記第2指示が同一の操作子への操作によって入力されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の電子楽器。
【請求項9】
コンピュータに、入力された楽音フレーズを録音し、その楽音フレーズとリズムフレーズとを再生する処理を実行させる録音再生プログラムであって、
第1指示の入力タイミングに基づく第1タイミングと、その第1タイミング後における第2指示の入力タイミングに基づく第2タイミングとを順次に取得するタイミング取得ステップと、
そのタイミング取得ステップによって取得した第1タイミングで、楽音の録音を開始し、前記タイミング取得ステップによって取得した第2タイミングで、前記第1タイミングから前記第2タイミングまでに録音された楽音によるフレーズを前記楽音フレーズとして確定し、前記楽音フレーズの始端からの再生を開始すると共に、前記リズムフレーズの始端からの再生を開始する録音再生制御ステップと、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする録音再生プログラム。
【請求項10】
入力された楽音フレーズを録音し、その楽音フレーズとリズムフレーズとを再生する録音再生方法であって、
第1操作で、楽音の録音を開始し、第2操作で、前記第1操作から前記第2操作までに録音された楽音によるフレーズを前記楽音フレーズとして確定し、前記楽音フレーズの始端からの再生を開始すると共に、前記リズムフレーズの始端からの再生を開始することを特徴とする録音再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器、録音再生プログラム及び録音再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、小節単位で構成されるリズムパターンやMIDIデータ(以下「リズムフレーズ」という)を所望のテンポでループ再生すると共に、かかるリズムフレーズの再生に合わせて演奏された楽音によるフレーズ(以下「楽音フレーズ」という)を所定時間記憶したデータをループ再生する電子楽器が知られている。これにより、演奏者が楽音フレーズを繰り返し演奏することなく楽音フレーズとリズムフレーズとを重ね合わせた楽音がループ再生されるので、演奏者はかかる楽音フレーズとリズムフレーズとを伴奏として、更に自己の演奏をすることができる。
【0003】
例えば特許文献1の電子楽器では、リズムフレーズの再生の開始と同時に、入力された鍵盤16又は外部MIDI機器43からの楽音フレーズが録音用メモリ13aに録音され、録音された録音用メモリ13aがループ再生される。これにより、演奏者が楽音フレーズを繰り返し演奏することなく楽音フレーズとリズムフレーズとを重ね合わせた楽音がループ再生されるので、演奏者がかかる楽音フレーズとリズムフレーズとに、更に別の楽音フレーズを重ねることで表現豊かな楽音を容易に出力できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-93491号公報(例えば、段落0037-0042、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の電子楽器では、まず先にリズムフレーズが再生されるので、演奏者はかかるリズムフレーズ再生開始と同時に又はリズムフレーズ再生開始後のタイミングから演奏を開始しなければならない。よって、曲の始まりのイントロ部分はギター演奏のみとし、かかるイントロ後のAメロ部分はギター演奏のみならずリズムフレーズも加えて演奏するという楽曲構成が実現できないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、入力された楽音フレーズの出力後に、その楽音フレーズとリズムフレーズとを出力できる電子楽器、録音再生プログラム及び録音再生方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の電子楽器は、入力された楽音フレーズを録音し、その楽音フレーズとリズムフレーズとを再生するものであって、第1指示の入力タイミングに基づく第1タイミングと、その第1タイミング後における第2指示の入力タイミングに基づく第2タイミングとを順次に取得するタイミング取得手段と、そのタイミング取得手段によって取得した第1タイミングで、楽音の録音を開始し、前記タイミング取得手段によって取得した第2タイミングで、前記第1タイミングから前記第2タイミングまでに録音された楽音によるフレーズを前記楽音フレーズとして確定し、前記楽音フレーズの始端からの再生を開始すると共に、前記リズムフレーズの始端からの再生を開始する録音再生制御手段とを備えている。
【0008】
本発明の録音再生プログラムは、コンピュータに、入力された楽音フレーズを録音し、その楽音フレーズとリズムフレーズとを再生する処理を実行させるプログラムであって、第1指示の入力タイミングに基づく第1タイミングと、その第1タイミング後における第2指示の入力タイミングに基づく第2タイミングとを順次に取得するタイミング取得ステップと、そのタイミング取得ステップによって取得した第1タイミングで、楽音の録音を開始し、前記タイミング取得ステップによって取得した第2タイミングで、前記第1タイミングから前記第2タイミングまでに録音された楽音によるフレーズを前記楽音フレーズとして確定し、前記楽音フレーズの始端からの再生を開始すると共に、前記リズムフレーズの始端からの再生を開始する録音再生制御ステップと、を前記コンピュータに実行させるものである。
【0009】
また本発明の録音再生方法は、入力された楽音フレーズを録音し、その楽音フレーズとリズムフレーズとを再生する方法であって、第1操作で、楽音の録音を開始し、第2操作で、前記第1操作から前記第2操作までに録音された楽音によるフレーズを前記楽音フレーズとして確定し、前記楽音フレーズの始端からの再生を開始すると共に、前記リズムフレーズの始端からの再生を開始するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、ルーパーの使用形態を表す図であり、(b)は、ルーパーの正面図である。
図2】楽音フレーズの録音と、録音された楽音フレーズ及びリズムフレーズのループ再生とを説明する図である。
図3】ルーパーの機能ブロック図である。
図4】ルーパーの電気的構成を示すブロック図である。
図5】(a)は、テンポテーブルを模式的に示す図であり、(b)は、リズムパターンテーブルを模式的に示す図である。
図6】メイン処理のフローチャートである。
図7】(a)は、録音処理のフローチャートであり、(b)は、テンポ設定処理のフローチャートである。
図8】(a)は、楽音再生処理のフローチャートであり、(b)は、リズム再生処理のフローチャートである。
図9】(a)は、変形例におけるテンポ設定処理のフローチャートであり、(b)は、変形例におけるルーパーの正面図である。
図10】変形例におけるメイン処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1を参照して、本実施形態の効果装置1の概要を説明する。図1(a)は、ルーパー1の使用形態を表す図であり、図1(b)は、ルーパー1の正面図である。ルーパー1は、演奏者Hの演奏に応じて電気ギターG等の楽器から入力された楽音によるフレーズである楽音フレーズPと、予め記憶されているハイハットやスネア等によるフレーズであるリズムフレーズRとをそれぞれの先頭から終端までを繰り返し再生し、スピーカSに出力する電子楽器である。以下、楽音フレーズP又はリズムフレーズRの先頭(始端)から終端まで繰り返し再生することを「ループ再生」という。
【0012】
図1(b)に示す通り、ルーパー1には、楽音の録音を開始する録音ボタン2と、楽音の録音の停止と、録音された楽音による楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生を開始するループ再生ボタン3と、楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生を停止する停止ボタン4とが設けられる。
【0013】
本実施形態において、楽音フレーズP及びリズムフレーズRの拍子は「4分の4拍子」とされ、楽音フレーズPのサンプリング周期は「44100Hz」とされる。なお、楽音フレーズP及びリズムフレーズRの拍子は「4分の4拍子」に限られず、4分の3拍子や4分の2拍子等、他の拍子を用いても良い。また、楽音フレーズPのサンプリング周期は44100Hzに限られず、44100Hz以上でも44100Hz以下でも良い。
【0014】
次に図2を参照して、ルーパー1による楽音フレーズPの録音と、録音された楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生について説明する。図2は、楽音フレーズPの録音と、録音された楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生とを説明する図である。図2においては、時刻T1~T2で楽音フレーズPが録音され、時刻T2~T6で録音された楽音フレーズP及びリズムフレーズRがループ再生される。
【0015】
具体的に、演奏者Hによって録音ボタン2が操作される(第1操作)ことで、電気ギターG等から入力される楽音の録音が開始される(時刻T1)。この際、入力される楽音フレーズPが録音されるのと同時にスピーカSからも楽音フレーズPが出力される。その後、演奏者Hによってループ再生ボタン3が操作される(第2操作)と(時刻T2)、楽音の録音が停止される。これによって、録音ボタン2の入力タイミングである時刻T1(第1タイミング)からループ再生ボタン3の入力タイミングである時刻T2(第2タイミング)まで録音された楽音によるフレーズが、楽音フレーズPとして確定される。そして、確定された楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生が開始される。この際、楽音フレーズPの再生開始とリズムフレーズRとの再生開始における先頭(始端)のタイミングが同期されるので、楽音フレーズPとリズムフレーズRとのズレを抑制することができる。
【0016】
これにより、録音中において電気ギターG等から入力される楽音(即ち楽音フレーズP)の出力後(時刻T1~T2)に、その楽音フレーズPとリズムフレーズRとをループ再生した楽音を出力できる(時刻T2~)。時刻T1~T2においては、スピーカSから出力されるのは楽音フレーズPのみなので、例えば楽音フレーズPが電気ギターGのソロ演奏の場合、そのソロ演奏によるメロディラインを聴衆に印象付けることができる。その後に楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生が開始されるので、楽音フレーズPとリズムフレーズRとによる重厚な楽音を繰り返し出力できる。これにより、楽音フレーズPとリズムフレーズRとによる表現豊かな楽音が出力できる。
【0017】
また詳細は後述するが、リズムフレーズRはテンポが変更可能に構成され、そのリズムフレーズRのテンポは、楽音フレーズPにおいて1ループ分再生される時間、即ち時刻T1から時刻T2までの時間であるフレーズ長Tに応じて設定される。図2は、フレーズ長Tに応じて設定したテンポでリズムフレーズRを再生させた様子を示す一例であり、ループ再生を1回行った楽音フレーズPの終端のタイミングと、ループ再生を2回行ったリズムフレーズRの終端のタイミングとを合致(同期)させることができる(例えば時刻T3,T4,T5,T6)。
【0018】
これにより、楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生におけるいずれかの終端のタイミングと、その後のループ再生の開始のタイミングとを同期させることができるので、楽音フレーズPとリズムフレーズRとのズレが無い調和のとれた楽音が出力できる。また、フレーズ長Tに応じてリズムフレーズRのテンポが設定されるので、演奏者Hによる楽音フレーズPの録音が終了した直後に、演奏者HにリズムフレーズRのテンポに関する設定操作をさせる必要がない。これにより、ルーパー1の操作性を向上させることができる。
【0019】
そして、このような楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生は、停止ボタン4が操作された場合に停止される(時刻T6)。
【0020】
次に、図3を参照してルーパー1の機能を説明する。図3は、ルーパー1の機能ブロック図である。図3に示すように、ルーパー1は、タイミング取得手段100と、録音再生制御手段101とを有している。タイミング取得手段100は、第1指示の入力タイミングに基づく第1タイミングと、その第1タイミング後における第2指示の入力タイミングに基づく第2タイミングとを順次に取得する手段であり、図4で後述のCPU10で実現される。
【0021】
録音再生制御手段101は、タイミング取得手段100によって取得した第1タイミングで、楽音の録音を開始し、タイミング取得手段100によって取得した第2タイミングで、第1タイミングから第2タイミングまでに録音された楽音によるフレーズを楽音フレーズPとして確定し、楽音フレーズPの始端からの再生を開始すると共に、リズムフレーズRの始端からの再生を開始する手段でありCPU10で実現される。
【0022】
ルーパー1においては、第1タイミングが取得された場合に、入力された楽音(即ち楽音フレーズP)の出力と録音とが行われ、第2タイミングが取得された場合に録音された楽音フレーズPの再生の開始と、リズムフレーズRの再生の開始とが行われる。これにより、入力された楽音フレーズPの出力後に、その楽音フレーズPとリズムフレーズRとを再生して出力できる。
【0023】
次に図4,5を参照してルーパー1の電気的構成を説明する。図4はルーパー1の電気的構成を示すブロック図である。ルーパー1は、CPU10と、フラッシュROM11と、RAM12と、アナログデジタルコンバータ(ADC)13と、録音ボタン2と、ループ再生ボタン3と、停止ボタン4と、音源14と、Digital Signal Processor15(以下「DSP15」と称す)とを有し、それぞれバスライン16を介して接続される。DSP15には、音源14とデジタルアナログコンバータ(DAC)17とが接続され、そのDAC17にはアンプ18が接続され、そのアンプ18にはスピーカSが接続される。
【0024】
CPU10は、バスライン16により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュROM11は書き換え可能な不揮発性のメモリであり、制御プログラム11aと、テンポテーブル11bと、リズムパターンテーブル11cとが設けられる。CPU10によって制御プログラム11aが実行されると、図6のメイン処理が実行される。テンポテーブル11bは、楽音フレーズPのフレーズ長Tに応じたリズムフレーズRの小節数およびテンポが記憶されるデータテーブルであり、リズムパターンテーブル11cは、リズムフレーズR毎の各音色が発音するタイミングが記憶されるデータテーブルである。図5を参照してテンポテーブル11b及びリズムパターンテーブル11cを説明する。
【0025】
図5(a)は、テンポテーブル11bを模式的に示した図である。図5(a)に示す通り、テンポテーブル11bには、フレーズ長Tに応じた小節数およびテンポ(単位:BPM(Beats Per Minute))の組み合わせが記憶される。具体的にテンポテーブル11bには、小節数およびテンポを様々に変化させた際の、それぞれの小節数およびテンポの組み合わせにおいて要する「時間(秒)」が記憶される。楽音フレーズPのフレーズ長Tをテンポテーブル11bで参照することで、該当する時間の小節数およびテンポの組み合わせが取得される。
【0026】
例えば、楽音フレーズPのフレーズ長Tとして「11.85秒」が指定された場合は、テンポテーブル11bの時間において「11.85秒」に該当する小節数「4」及びテンポ「81」が取得され、リズムフレーズRのテンポとして「81」が設定される。
【0027】
ところで、テンポテーブル11bには、1の時間であっても複数の小節数およびテンポの組み合わせが存在する場合がある。例えば、図5(a)のテンポテーブル11bには、時間が「12.00秒」に該当する小節数およびテンポの組み合わせとして、小節数「4」及びテンポ「80」と、小節数「6」及びテンポ「120」と、小節数「8」及びテンポ「160」とが記憶されている。これは、小節数およびテンポの組み合わせによって、時間が様々に変化するからであり、具体的に同一のテンポであっても小節数が多いと時間は長くなり、また同一の小節数であってもテンポが速いと時間が短くなるからである。
【0028】
このように、1のフレーズ長Tをテンポテーブル11bで参照することで複数の小節数およびテンポの組み合わせが取得された場合、取得されたどのテンポをリズムフレーズRのテンポに設定しても、楽音フレーズPの終端のタイミングと、リズムフレーズRを取得されたテンポで且つ取得された小節数分繰り返した際の終端のタイミングとを合致させることができる。本実施形態では、テンポテーブル11bから複数の小節数およびテンポの組み合わせが取得された場合、取得されたテンポのうち最も遅いものがリズムフレーズRのテンポに設定される。なお、テンポの設定について詳細は後述する。
【0029】
図5(b)は、リズムパターンテーブル11cを模式的に示した図である。本実施形態では、リズムフレーズRはMIDIデータによって構成される。図5(b)に示す通り、リズムパターンテーブル11cには、No.1,2,・・・の各リズムフレーズRにおいてハイハット、スネア、バスドラム等の各音色の発音タイミングが記憶される。具体的にリズムパターンテーブル11cには、各リズムフレーズRにおいて拍位置とその拍位置に該当するTICK値で発音させる音色が指定される。図5(b)においては、各音色における発音タイミングに該当する拍位置およびTICK値に黒色の丸印が記されている。
【0030】
例えば、リズムパターンテーブル11cの「No.1」のリズムフレーズRにおいては、拍位置1(TICK値=0)でハイハット及びバスドラムが発音され、拍位置2(TICK値=96)でハイハット及びスネアが発音され、拍位置3(TICK値=192)でハイハットのみが発音され、拍位置4(TICK値=288)でハイハット及びスネアが発音される。また、TICK値=383は「No.1」のリズムフレーズRの終端のタイミングなので、各音色に「(終端)」が記される。このような「No.1」のリズムフレーズRは4拍で構成されるので、その長さは「1小節」とされる。各タイミング(TICK値)において発音タイミングとなっている音色のMIDIメッセージを後述の音源14に送信することで、リズムフレーズRが再生される。
【0031】
なお、リズムパターンテーブル11cには1小節分の長さのリズムフレーズRのみが記憶されるものではなく、「No.10」のリズムフレーズRのように、4小節分の長さのリズムフレーズRやその他の小節数分の長さのリズムフレーズRが記憶される。以下、リズムパターンテーブル11cに示されるような、各リズムフレーズRの発音タイミングに係る情報のことを「リズムパターン」という。
【0032】
図4に戻る。RAM12は、CPU10が制御プログラム11a等のプログラム実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するメモリであり、楽音が記憶される楽音メモリ12aと、上記のリズムパターンが記憶されるリズムパターンメモリ12bと、リズムフレーズRのテンポが記憶されるテンポメモリ12cとが設けられる。
【0033】
ADC13は、電気ギターG等の楽器から入力された電気信号(アナログ信号)を、デジタル信号(例えば16ビット)に変換する装置である。音源14は、CPU10から入力されるリズムフレーズR等の演奏情報(MIDIメッセージ)に応じた波形データを出力する装置である。
【0034】
DSP15は、音源14等から入力された波形データを演算処理するための演算装置である。DAC17は、DSP15から入力された波形データを、アナログ波形データに変換する変換装置であり、アンプ18は、該DAC17から出力されたアナログ波形データを所定の利得で増幅する増幅装置である。スピーカSからはそのアンプ18で増幅されたアナログ波形データが楽音として放音される。
【0035】
次に、図6~8を参照して、ルーパー1のCPU10で実行される処理を説明する。図6は、メイン処理のフローチャートである。メイン処理は、ルーパー1の電源投入後に実行される処理である。メイン処理はまず、ステートに「1」を設定する(S1)。ステートは、ルーパー1の動作状態を表す値であり、本実施形態においては、楽音の録音の待機状態を表す「1」と、楽音の録音中を表す「2」と、楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生中を表す「3」とが設けられる。電源投入直後に行われるS1の処理では、ルーパー1の動作状態の初期値としてステートに「1」(録音待機)が設定される。
【0036】
S1の処理の後、演奏者HからリズムフレーズRの設定の変更指示があったかを確認する(S2)。具体的には、図示しないルーパー1のリズム設定変更ボタンによって、リズムパターンメモリ12bに記憶されているリズムパターンと異なるリズムパターンが設定されたかが確認される。なお、ルーパー1の電源投入直後において、リズム設定変更ボタンによってリズムパターンが初期設定された場合も、演奏者HからリズムフレーズRの設定の変更指示があったものとされる。
【0037】
S2の処理において演奏者HからリズムフレーズRの設定の変更指示があった場合は(S2:Yes)、演奏者Hから指定されたリズムパターンをリズムパターンテーブル11cから取得し、リズムパターンメモリ12bに設定する(S3)。一方でS2の処理において演奏者HからリズムフレーズRの設定の変更指示がなかった場合は(S2:No)、S3の処理をスキップする。
【0038】
S2,S3の処理の後、録音ボタン2、ループ再生ボタン3又は停止ボタン4が操作されたかを確認する(S4)。S4の処理において録音ボタン2が操作された場合は(S4:「録音ボタン」)、ステートが「1」かを確認する(S5)。S5の処理においてステートが「1」である場合は(S5:Yes)、図7(a)の録音処理を開始し(S6)、ステートに「2」(録音中)を設定する(S7)。ここで図7(a)を参照して、S6の処理によって開始される録音処理を説明する。
【0039】
図7(a)は、録音処理のフローチャートである。録音処理は、上記したS6の処理による録音処理の開始指示がされてから、後述のS9(図6)の処理による録音処理の停止指示がされるまで楽音フレーズPのサンプリング周期、即ち1/44100秒毎に実行される割込処理である。
【0040】
録音処理は、ADC13から1サンプル分の楽音データを読出し(S30)、読出した楽音データを楽音メモリ12aに追加する(S31)。これらS30,S31の処理を1/44100秒毎に繰り返すことで、電気ギターG等から入力された楽音フレーズPがサンプリング周期44100Hzで楽音メモリ12aに記憶(録音)される。また、S31の処理による楽音フレーズPの録音と同時にS30の処理でADC13から取得された楽音データがDSP15に送信される。これによって、録音中の楽音フレーズPがスピーカSから出力される。S31の処理の後、録音処理を終了する。
【0041】
図6に戻る。S5の処理においてステートが「1」ではない場合は(S5:No)、録音中またはループ再生中に録音ボタン2が操作された場合であるので、意図しない楽音の録音を防ぐため、S6,S7の処理をスキップする。
【0042】
S4の処理においてループ再生ボタン3が操作された場合は(S4:「ループ再生ボタン」)、ステートが「2」(録音中)かを確認する(S8)。S8の処理においてステートが「2」である場合は(S8:Yes)、録音処理(図7(a))を停止する(S9)。これによって、S6の処理で開始された録音処理による、楽音メモリ12aへの楽音の録音が停止される。
【0043】
S9の処理の後、図8(a)で後述の楽音再生処理において楽音メモリ12aの楽音データの読出位置を表す読出アドレスを楽音メモリ12aの先頭に設定し、図8(b)で後述のリズム再生処理においてTICK値として用いられる経過TICKに0を設定する(S10)。これによって、楽音再生処理およびリズム再生処理による楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生が、それぞれの先頭(始端)から開始される。
【0044】
S10の処理の後、テンポ設定処理(S11)を行う。ここで、図7(b)を参照してテンポ設定処理を説明する。
【0045】
図7(b)は、テンポ設定処理のフローチャートである。テンポ設定処理は、楽音メモリ12aにおける楽音フレーズPのフレーズ長TからリズムフレーズRのテンポを取得し、更に取得されたテンポから1TICK当たりの時間を設定する処理である。
【0046】
テンポ設定処理はまず、楽音メモリ12aに記憶される楽音フレーズPのフレーズ長Tを取得する(S40)。S40の処理の後、テンポテーブル11bをフレーズ長Tで参照し、フレーズ長Tに近似する時間に該当する小節数およびテンポの組み合わせを取得する(S41)。この際、図5(a)で上記したフレーズ長Tが「12.00秒」の場合等、フレーズ長Tに該当する小節数およびテンポの組み合わせが複数ある場合は、該当する小節数およびテンポの組み合わせが全て取得される。
【0047】
S41の処理の後、小節数およびテンポの組み合わせが複数取得されたかを確認する(S42)。S42の処理において小節数およびテンポの組み合わせが複数取得された場合は(S42:Yes)、取得された小節数およびテンポの組み合わせのうち、最も遅いテンポをテンポメモリ12cに設定する(S43)。一方で、小節数およびテンポの組み合わせが1つだった場合は(S42:No)、取得されたテンポをテンポメモリ12cに設定する(S44)。
【0048】
S43,S44の処理の後、テンポメモリ12cのテンポから1TICK当たりの実際の時間を設定する(S45)。具体的には、テンポメモリ12cのテンポをTm、時間軸上の解像度をTPQNとすると、1TICK当たりの実際の時間Ttは、以下の数式1で算出される。
【0049】
【数1】
即ち、60をテンポTmで割った値を更に解像度TPQNで割った値が、時間Ttとされる。本実施形態において解像度TPQNには「96」が設定されるが、解像度TPQNに96以下が設定されても良いし、96以上が設定されても良い。
【0050】
このように算出された時間Ttが数式1で1TICK当たりの実際の時間に設定される。楽音フレーズPのフレーズ長Tに応じて1TICK当たりの実際の時間が設定されるので、かかる時間に基づいて再生されるリズムフレーズRの長さを、楽音フレーズPのフレーズ長Tに応じたものとできる。S45の処理の後、テンポ設定処理を終了する。
【0051】
図6に戻る。S11のテンポ設定処理の後、図8(a)の楽音再生処理を開始し(S12)、図8(b)のリズム再生処理を開始する(S13)。これにより、楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生が開始される。ここで図8を参照して、S12の処理で開始される楽音再生処理と、S13の処理で開始されるリズム再生処理とを説明する。
【0052】
図8(a)は、楽音再生処理のフローチャートである。楽音再生処理は、上記したS12の処理による楽音再生処理の開始指示がされてから後述のS16(図6)の処理による楽音再生処理の停止指示がされるまで、楽音フレーズPのサンプリング周期毎に実行される割込処理である。
【0053】
楽音再生処理はまず、楽音メモリ12aの読出アドレスにおける1サンプル分の楽音データを読出し(S50)、読出した楽音データをDSP15に送信する(S51)。DSP15に送信された楽音データは、DAC17を経由して、DAC17に接続されるスピーカSから楽音として出力される。これらS50,S51の処理を1/44100秒毎に実行することで、楽音フレーズPがスピーカSから出力される。
【0054】
S51の処理の後、読出アドレスの位置が、楽音メモリ12aの楽音フレーズPにおける終端の楽音データの位置であるかを確認する(S52)。S52の処理において読出アドレスの位置が楽音フレーズPにおける終端の楽音データの位置である場合は(S52:Yes)、楽音フレーズPのループ再生において楽音フレーズPの終端まで至ったので、次回の楽音再生処理のS50,S51の処理で楽音メモリ12aの先頭位置の楽音データを読出するため、読出アドレスの位置を楽音メモリ12aの先頭位置に設定する(S53)。
【0055】
一方で、S52の処理において読出アドレスの位置が楽音フレーズPにおける終端の楽音データの位置ではない場合は(S52:No)、楽音フレーズPのループ再生において楽音フレーズPの終端まで至っていないので、読出アドレスの位置を1つ進める(S54)。このように、楽音メモリ12aの楽音フレーズPの先頭から順に1サンプル分の楽音データを読出して出力し、楽音フレーズPの終端に至った場合に、再度楽音フレーズPの先頭から楽音データを読出することで、楽音フレーズPのループ再生が実現される。S53,S54の処理の後、楽音再生処理を終了する。
【0056】
次に、リズム再生処理を説明する。図8(b)は、リズム再生処理のフローチャートである。リズム再生処理は、上記したS13の処理によるリズム再生処理の開始指示がされてから後述のS17(図6)の処理によるリズム再生処理の停止指示がされるまで、1TICKに該当する時間毎に実行される割込処理である。なお、リズム再生処理は、図6のS13の処理でリズム再生処理が開始された直後にも実行される。かかるタイミングで実行されるリズム再生処理が、経過TICKが「0」のタイミングにおけるリズム再生処理である。
【0057】
リズム再生処理はまず、リズムパターンメモリ12bのリズムパターンにおいて経過TICKに該当する発音タイミングの音色があるかを確認する(S60)。具体的には、経過TICKをリズムパターンにおけるTICK値(図5(b)参照)で参照し、経過TICKに該当するTICK値において発音タイミングの音色(即ち図5(b)において黒色の丸印が記されている音色)があるかを確認する。
【0058】
S60の処理においてリズムパターンメモリ12bのリズムパターンにおいて経過TICKに該当するTICK値に発音タイミングの音色がある場合は(S60:Yes)、該当する音色のMIDIメッセージを音源14に送信する(S61)。音源14において送信されたMIDIメッセージに該当する波形データが取得され、その波形データがDSP15及びDAC17を経由して、DAC17に接続されるスピーカSから楽音として出力される。この際、S51の処理による楽音フレーズPの出力とS61の処理によるリズムフレーズRの出力とが重複した場合は、これら楽音フレーズPとリズムフレーズRとがDSP15内で混合されて出力される。
【0059】
このように、リズムフレーズRはTICK値に基づくタイミングで出力される。ここで図7(b)のテンポ設定処理で説明した通り、1TICK当たりの時間は、楽音フレーズPのフレーズ長Tに応じたテンポから取得される。よって、かかるTICK値に基づいて出力されるリズムフレーズRの長さを楽音フレーズPのフレーズ長Tに関連させることができる。従って、ループ再生されるリズムフレーズRのある終端のタイミングを、同じくループ再生される楽音フレーズPのいずれか終端のタイミングと合致(同期)させることができる。これに伴い、その直後のループ再生におけるリズムフレーズRの再生の開始と楽音フレーズPの開始とも同期させることができる。これにより、楽音フレーズPとリズムフレーズRとのタイミングのズレを抑制された、聴衆にとって違和感の小さい楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生とすることができる。
【0060】
また、図7(b)のテンポ設定処理において楽音フレーズPのフレーズ長Tに応じた小節数およびテンポが複数取得された場合は、そのうちの最も遅いテンポが1TICK当たりの時間の設定に用いられるテンポに選択される。これによって、1TICK当たりの時間が、楽音フレーズPのフレーズ長Tに応じたもののうち最も長い時間となる。よって、リズムフレーズRのテンポが不意に早くなるのを抑制することができる。
【0061】
S60の処理においてリズムパターンメモリ12bのリズムパターンにおいて経過TICKに該当するTICK値に発音タイミングの音色がない場合は(S60:No)、S61の処理をスキップする。
【0062】
S60,S61の処理の後、経過TICKに1を加算する(S62)。S62の処理の後、経過TICKがリズムパターンメモリ12bにおける終端のTICK値よりも大きいかを確認する(S63)。S63の処理において経過TICKがリズムパターンメモリ12bにおける終端のTICK値よりも大きい場合は(S63:Yes)、リズムパターンメモリ12bのリズムパターンの終端まで至ったので、経過TICKに0を設定する(S64)。これによって、リズムパターンメモリ12bのリズムパターンに基づくリズムフレーズRがループ再生される。
【0063】
S63の処理において経過TICKがリズムパターンメモリ12bの終端のTICK値以下の場合(S63:No)、S64の処理をスキップする。S63,S64の処理の後、リズム再生処理を終了する。
【0064】
図6に戻る。S13の処理の後、ステートに「3」(ループ再生中)を設定する(S14)。S8の処理においてステートが「2」ではない場合は(S8:No)、録音待機またはループ再生中にループ再生ボタン3が操作された場合であるので、意図しない楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生を防ぐため、S9~S14の処理をスキップする。
【0065】
S4の処理において停止ボタン4が操作された場合は(S4:「停止ボタン」)、ステートが「3」かを確認する(S15)。S15の処理においてステートが「3」である場合は(S15:Yes)、楽音再生処理を停止し(S16)、リズム再生処理を停止する(S17)。これによって、楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生が停止される。S17の処理の後、ステートに「1」(録音待機)を設定する(S18)。S15の処理においてステートが「3」ではない場合は(S15:No)、S16~S18の処理をスキップする。
【0066】
S4の処理において録音ボタン2、ループ再生ボタン3又は停止ボタン4のいずれも操作されなかった場合(S4:「なし」)、またはS5,S7,S8,S14,S15,S18の処理の後、S2以下の処理を繰り返す。
【0067】
以上説明した通り、本実施形態のルーパー1においては、録音ボタン2が操作された場合に、楽音フレーズPの録音が開始される。その際、スピーカSからは録音中の楽音フレーズPが出力される。その後、ループ再生ボタン3が操作された場合に、楽音フレーズPの録音の停止と、録音された楽音フレーズP及びリズムフレーズRのループ再生の開始とが行われる。これにより、入力された楽音フレーズPの出力後に、その楽音フレーズPとリズムフレーズRとをループ再生した楽音を出力できる。
【0068】
例えば、楽音フレーズPが電気ギターGのソロ演奏による場合、まず、電気ギターGによるソロ演奏のみの楽音フレーズPが出力されることで、そのソロ演奏のメロディラインを聴衆に印象付けることができる。更にその後のループ再生では、楽音フレーズPとリズムフレーズRとが重ね合わされた重厚な楽音が繰り返し出力される。これにより、楽音フレーズPとリズムフレーズRとによる変化の富んだ楽音を容易に出力できる。
【0069】
また、楽音フレーズPのフレーズ長Tは、録音ボタン2が操作されてからループ再生ボタンを操作するまでの時間とされる。これにより、演奏者Hが所望するタイミングで録音ボタン2およびループ再生ボタンの操作を行うことで、演奏者Hが所望するフレーズ長Tの楽音フレーズPを容易に録音し、ループ再生することができる。かかるループ再生は、停止ボタン4が操作された場合に停止されるので、演奏者Hが停止ボタン4を操作することで、演奏者Hが所望するタイミングでのループ再生の停止を容易に行うことができる。
【0070】
以上、上記実施形態に基づき説明したが、種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0071】
上記実施形態では、図7(b)のテンポ設定処理において、S41の処理によって小節数およびテンポの組み合わせが複数取得された場合に、そのうちの最も遅いテンポを1TICK当たりの時間の設定に用いられるテンポに選択した。しかし、これに限られず、
最も速いテンポを1TICK当たりの時間の設定に用いられるテンポに設定しても良いし、中間のテンポを1TICK当たりの時間の設定に用いられるテンポに設定しても良い。更に最も遅いテンポ、最も速いテンポ及び中間のテンポのうち、いずれのテンポを1TICK当たりの時間の設定に用いるかを演奏者Hが事前に設定できるようにしても良い。
【0072】
また、取得された小節数およびテンポの組み合わせにおいて、小節数が偶数であるもののテンポを1TICK当たりの時間の設定に用いられるテンポに選択しても良い。これにより、リズムフレーズRの長さを音楽的におさまりの良い偶数の小節相当にすることができるので、聴感上の違和感が抑制されたリズムフレーズRとすることができる。
【0073】
更に取得された小節数およびテンポの組み合わせにおいて、小節数が演奏者Hが予め指定した小節数である指定小節数であるもののテンポを、1TICK当たりの時間の設定に用いられるテンポに選択しても良い。具体的に図9(a)のテンポ設定処理に示すように、S41の処理の後、図示しないルーパー1の設定ボタンを介して演奏者Hによって設定された指定小節数を取得する(S100)。S100の処理の後、S41の処理で取得された小節数およびテンポの組み合わせのうち、小節数が指定小節数であるもののテンポをテンポメモリ12cに設定する(S101)。S101の処理の後、S45の処理による1TICK当たりの時間の設定処理を実行すれば良い。
【0074】
これによって、1回のリズムフレーズRの再生中に、指定小節数分の楽音フレーズPが再生される。即ち指定小節数が1回のリズムフレーズRの再生中に再生される楽音フレーズPの「複製回数」とされ、1回のリズムフレーズRの再生中に、楽音フレーズPを「複製回数」個複製して連結したフレーズが新たな楽音フレーズP’とされ、かかる楽音フレーズP’がループ再生される。
【0075】
例えば、図6のS3の処理で選択されるリズムフレーズRのリズムパターンの長さの既定(即ち図5(b)における小節数)が「4小節」であり、楽音フレーズPのフレーズ長Tが「1小節」相当である場合、指定小節数にリズムフレーズRの小節数と同じ「4」が設定されることで、楽音フレーズP’は、1小節の楽音フレーズPが4個連結された4小節分のフレーズに構成される。これによって、リズムフレーズRと楽音フレーズP’とをループ再生させた場合、リズムフレーズRの終端のタイミングと楽音フレーズP’の終端のタイミングとを同期させることができる。
【0076】
このように、指定小節数をリズムフレーズRの既定の小節数に設定することで、楽音フレーズP’の終端のタイミングに合わせて、リズムフレーズRの再生を途中で打ち切る必要がない。これにより、リズムフレーズRは既定の小節数の全体が再生されるので、演奏者Hが所望する態様のリズムフレーズRによる、楽音フレーズP’とリズムフレーズRとのループ再生を容易に実現できる。
【0077】
また、演奏者Hが予め指定小節数を設定しておけば、演奏者Hによる楽音フレーズPの録音が終了した直後に、演奏者Hがルーパー1へ操作をすることなくリズムフレーズRの1回のループ再生中に、指定小節数分の楽音フレーズPを再生した楽音を出力できる。これにより、ルーパー1の操作性を向上させることができる。
【0078】
上記実施形態では、楽音フレーズPのフレーズ長Tを演奏者Hによって録音ボタン2が操作されてからループ再生ボタン3が操作されるまでの時間とした。しかし、これに限られず、例えば、フレーズ長Tがいずれかの小節の長さとなるよう、ループ再生ボタン3が操作されてから実際に楽音の録音を停止するまでの時点を調整しても良い。この場合、ループ再生ボタン3が操作された直後に楽音の録音を停止するのではなく、録音ボタン2が操作された時点をある小節の先頭の時点とし、ループ再生ボタン3が操作された以後におけるいずれかの小節の終端に該当する時点まで楽音の録音を続行すれば良い。
【0079】
より好ましくは、ループ再生ボタン3が操作された以後において、録音ボタン2が操作されてからの時間がテンポテーブル11b(図5(a))に記憶されるいずれかの時間と一致した時点で、楽音の録音を停止し、その楽音による楽音フレーズPのループ再生を開始すれば良い。これにより、楽音フレーズPのフレーズ長Tが1又は複数の小節の長さと一致するので、かかる楽音フレーズPと小節に応じた長さを有するリズムフレーズRとの長さ上のズレを抑制することができ、音楽的な表現を損ねることがないループ再生を実現できる。
【0080】
かかるフレーズ長Tは、いずれか小節の長さに調節されるものに限られず、拍等の音楽的に意味のある長さに調整されても良いし、フレーズ長Tを演奏者Hが任意に設定できるように構成しても良い。
【0081】
また、ループ再生ボタン3が操作されることで楽音の録音を停止したが、これに限られず、ループ再生ボタン3が操作された場合でも録音を続行しても良い。この場合、楽音フレーズPの先頭を楽音メモリ12aにおいて録音ボタン2が操作されたタイミングに設定し、楽音フレーズPの終端をループ再生ボタン3が操作されたタイミングに設定すれば良い。
【0082】
上記実施形態では、テンポテーブル11bを参照することで、楽音フレーズPのフレーズ長Tに近似する小節数およびテンポの組み合わせを取得した。しかし、小節数およびテンポの組み合わせは、テンポテーブル11bから取得されるものに限られず、計算によって取得しても良い。例えば、小節数およびテンポを様々変化させた場合の時間を算出し、算出された時間と、フレーズ長Tとが近似する小節数およびテンポの組み合わせを取得すれば良い。
【0083】
上記実施形態では、ルーパー1には、録音ボタン2、ループ再生ボタン3及び停止ボタン4が設けられ、録音ボタン2が操作された場合に録音を開始し、ループ再生ボタン3が操作された場合に録音の停止およびループ再生を開始し、停止ボタン4が操作された場合にループ再生を停止した。しかし、これに限られず、図9(b)のルーパー11に示すように、録音ボタン2、ループ再生ボタン3及び停止ボタン4を省略して、単一の指示ボタン5(操作子)を設け、指示ボタン5の操作によって、録音の開始と、録音の停止およびループ再生の開始と、停止ループ再生の停止とを切り替えても良い。
【0084】
この場合、図10のメイン処理に示す通り、S2,S3の処理の後、指示ボタン5が操作されたかを確認し(S110)、指示ボタン5が操作された場合は(S110:Yes)、ステートを確認する(S111)。S111の処理において、ステートが「1」の場合は(S111:「1」)、S6~S7の処理を行い、S111の処理において、ステートが「2」の場合は(S111:「2」)、S9~S14以下の処理を行い、ステートが「3」の場合は(S111:「3」)、S16~S18以下の処理を行う。指示ボタン5が操作されなかった場合は(S110:No)、S111以下の処理をスキップすれば良い。これにより、同一の指示ボタン5への操作によって、録音の開始と、録音の停止およびループ再生の開始と、ループ再生の停止とを切り替えることができるので、ルーパー11の操作性を向上させることができる。
【0085】
上記実施形態では、楽音フレーズPをADC13から入力された楽音データから構成し、リズムフレーズRをリズムパターンテーブル11cのリズムパターンから構成した。しかし、これに限られず、ルーパー1に図示しないMIDI機器を接続し、MIDI機器から入力されるMIDIデータから楽音フレーズPを構成しても良い。
【0086】
また、ルーパー1に図示しない通信装置を設け、通信装置を介して接続されたネットワーク上のサーバ等から楽音フレーズP及びリズムフレーズR(若しくはリズムパターン)を取得しても良い。この場合、例えば、ネットワーク上でライブ配信されている楽音を取得し、取得した楽音を楽音メモリ12aに記憶して録音することで楽音フレーズPを構成しても良い。
【0087】
上記実施形態では、電子楽器としてルーパー1を例示した。しかし、これに限られず、電子オルガンや電子ピアノ、電子吹奏楽器等の他の電子楽器に適用しても良い。
【0088】
上記実施形態では、制御プログラム11aをルーパー1のフラッシュROM11に記憶し、ルーパー1上で動作する構成とした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、PC(パーソナル・コンピュータ)や携帯電話、スマートフォンやタブレット端末等の他のコンピュータ上で制御プログラム11aを動作させる構成としても良い。
【0089】
上記実施形態に挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【符号の説明】
【0090】
1,11 ルーパー(電子楽器)
5 指示ボタン(操作子)
11a 制御プログラム(録音再生プログラム)
13 ADC(入力手段)
P 楽音フレーズ
R リズムフレーズ
T フレーズ長
S4,S110 タイミング取得手段、タイミング取得ステップ
S5~S13 録音再生制御手段、録音再生制御ステップ
S42~S45,S101 テンポ設定手段
S100 複製回数指定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10