(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046935
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】脱臭抗菌剤及び脱臭抗菌方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/12 20060101AFI20220316BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20220316BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20220316BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
B01J20/12 C
A61L9/01 E
A61L9/014
B01J20/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152585
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000160407
【氏名又は名称】吉澤石灰工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100116159
【弁理士】
【氏名又は名称】玉城 信一
(72)【発明者】
【氏名】内山 直行
【テーマコード(参考)】
4C180
4G066
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180BB02
4C180BB03
4C180BB04
4C180BB06
4C180BB07
4C180BB09
4C180CC04
4C180CC06
4C180CC15
4C180EA24X
4C180EA26X
4G066AA16D
4G066AA17D
4G066AA63B
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4G066BA20
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4G066BA36
4G066BA38
4G066CA24
4G066CA25
4G066CA27
4G066CA29
4G066CA51
4G066DA01
4G066FA37
(57)【要約】
【課題】抗菌作用を良好に発揮しながら、低級アルコール及び低級炭化水素等の低沸点有機溶媒蒸気を除去できる脱臭抗菌剤を提供する。
【解決手段】水溶液若しくは分散液のpHが12以上となるアルカリ性粉末と、無機系粉末とを含み、前記アルカリ性粉末の比表面積が20m2/g以上であり、前記無機系粉末の陽イオン交換容量が1~50meq/100gであり、メジアン径(DI50)が15~180μmである脱臭抗菌剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液若しくは分散液のpHが12以上となるアルカリ性粉末と、無機系粉末とを含み、
前記アルカリ性粉末の比表面積が20m2/g以上であり、
前記無機系粉末の陽イオン交換容量が1~50meq/100gであり、メジアン径(DI50)が15~180μmである脱臭抗菌剤。
【請求項2】
前記アルカリ性粉末と前記無機系粉末との合計に対する、前記アルカリ性粉末の含有量が、10~90質量%である請求項1に記載の脱臭抗菌剤。
【請求項3】
前記アルカリ性粉末のメジアン径(DA50)と前記無機系粉末のメジアン径(DI50)との比(DI50/DA50)が1~12である請求項1又は2に記載の脱臭抗菌剤。
【請求項4】
前記アルカリ性粉末が、消石灰粉末及び/又はドロマイト系粉末である請求項1~3のいずれか1項に記載の脱臭抗菌剤。
【請求項5】
前記無機系粉末が、活性白土粉末及び/又はセピオライト粉末である請求項1~4のいずれか1項に記載の脱臭抗菌剤。
【請求項6】
低沸点有機溶媒蒸気発生源及び/又はその近傍に、請求項1~5のいずれか1項に記載の脱臭抗菌剤を配置する脱臭抗菌方法。
【請求項7】
前記低沸点有機溶媒蒸気がアルコールガス及び/又は飽和炭化水素ガスを含む請求項6に記載の脱臭抗菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭抗菌剤及び脱臭抗菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の生活水準及び健康指向等の高まりから、居住空間をはじめ、工場や作業場、店舗、集客施設、公共施設等の人が出入りしたり滞在したりする各種空間内において、徹底した衛生管理や快適性が強く求められるようになっている。そして、衛生管理や快適性の観点から、各種空間においては臭気の除去といった脱臭や各種菌類の繁殖の抑制若しくは除去といった抗菌が図られている。
【0003】
脱臭作用及び抗菌作用を有する脱臭抗菌剤としては、強い酸化力を有する二酸化塩素ガスが知られている。例えば特許文献1では、二酸化塩素ガスを徐放して脱臭・抗菌を行うことができる脱臭抗菌材及び脱臭抗菌方法が提案されている。具体的には、亜塩素酸塩化合物に対して不活性且つ耐酸化性の粉末状の基材に亜塩素酸塩化合物を吸着させ、上記粉末状の基材と、粉末状の不揮発性酸性物質とを混和させた状態で、通気性及び通水性を有する容器内に充填して成ることを特徴とする脱臭抗菌剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の脱臭抗菌方法は、通水性を有する容器を透過した空気中の水分と、亜塩素酸塩化合物及び不揮発性酸性物質とを反応させて二酸化塩素ガスを発生させる仕組みであり、二酸化塩素ガスが発生するという点で、金属腐食や人体への影響が懸念される。
【0006】
ところで、化学工業等においては一般に有機溶媒が使用される。このような有機溶媒のうち、低級炭化水素や低級アルコール類等の低沸点有機溶媒は、有機溶媒蒸気として作業者が繰り返し長期にわたって吸入してしまうことがある。これらの有機溶媒蒸気はそれ自体で人体に有害な場合もあり、また、他の有機系の臭気を取り込んで悪臭を放つ場合もある。
【0007】
したがって、抗菌作用を発揮しつつ、低沸点有機溶媒蒸気をも除去できれば、環境衛生上の観点から非常に有意である。しかし、そのような技術はほとんど知られていないのが現状である。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、抗菌作用を良好に発揮しながら、低級アルコール及び低級炭化水素等の低沸点有機溶媒蒸気を除去できる脱臭抗菌剤、及び脱臭抗菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、下記本発明に想到し上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0010】
[1] 水溶液若しくは分散液のpHが12以上となるアルカリ性粉末と、無機系粉末とを含み、前記アルカリ性粉末の比表面積が20m2/g以上であり、前記無機系粉末の陽イオン交換容量が1~50meq/100gであり、メジアン径(DI50)が15~180μmである脱臭抗菌剤。
[2] 前記アルカリ性粉末と前記無機系粉末との合計に対する、前記アルカリ性粉末の含有量が、10~90質量%である[1]に記載の脱臭抗菌剤。
[3] 前記アルカリ性粉末のメジアン径(DA50)と前記無機系粉末のメジアン径(DI50)との比(DI50/DA50)が1~12である[1]又は[2]に記載の脱臭抗菌剤。
[4] 前記アルカリ性粉末が、消石灰粉末及び/又はドロマイト系粉末である[1]~[3]のいずれかに記載の脱臭抗菌剤。
[5] 前記無機系粉末が、活性白土粉末及び/又はセピオライト粉末である[1]~[4]のいずれかに記載の脱臭抗菌剤。
[6] 低沸点有機溶媒蒸気発生源及び/又はその近傍に、[1]~[5]のいずれかに記載の脱臭抗菌剤を配置する脱臭抗菌方法。
[7] 前記低沸点有機溶媒蒸気がアルコールガス及び/又は飽和炭化水素ガスを含む[6]に記載の脱臭抗菌方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、抗菌作用を良好に発揮しながら、低級アルコール及び低級炭化水素等の低沸点有機溶媒蒸気を除去できる脱臭抗菌剤、及び脱臭抗菌方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1]脱臭抗菌剤
本発明の脱臭抗菌剤の一態様は、水溶液若しくは分散液のpHが12以上となるアルカリ性粉末(以下、単に「アルカリ性粉末」ということがある)と、無機系粉末とを含む。
特に、上記アルカリ性粉末は比表面積が20m2/g以上であり、上記無機系粉末は陽イオン交換容量が1~50meq/100gで、メジアン径(DI50)が15~180μmである。
【0013】
本発明者の検討によれば、陽イオン交換容量が1~50meq/100gで、メジアン径(DI50)が15~180μmである本実施形態に係る無機系粉末によれば、低沸点有機溶媒蒸気に対する吸着能が高いことが見出された。
また、水溶液若しくは分散液のpHが12以上となるアルカリ性粉末は良好な抗菌性を示すが、比表面積が20m2/g未満のアルカリ性粉末は低沸点有機溶媒蒸気の吸着能が低い。これに対して比表面積が20m2/g以上である本実施形態に係るアルカリ性粉末は低沸点有機溶媒蒸気に対して良好な吸着能を有することを見出した。
そして、本実施形態に係る無機系粉末及びアルカリ性粉末を混合することでそれぞれの効果が相乗的に高まることを見出した。
【0014】
上記の相乗的な効果の発現理由は不明な点が多いが、おそらく、無機系粉末に付着若しくは吸着した水分がアルカリ性粉末表面に接触することで、アルカリ性粉末の強アルカリ性が発現しやすくなり、優れた抗菌効果とともに低沸点有機溶媒蒸気除去の効果が得られると推測されるが、このときアルカリ性粉末の比表面積が20m2/g以上であることで、抗菌効果と低沸点有機溶媒蒸気除去の効果を発現させ得る表面が多くなるため、既述のような相乗的な効果が得られやすくなると推測される。
本発明の脱臭抗菌剤の一態様について、以下、詳細に説明する。
【0015】
(アルカリ性粉末)
アルカリ性粉末は、これを100mlの純水に10g添加し、3分程度撹拌して溶解もしくは分散した際のpHが12以上となる粉末で、例えば、消石灰、生石灰、ドロマイト系化合物等が挙げられる。
上記のなかでも、消石灰粉末及び/又はドロマイト系化合物(特に、水酸化ドロマイト)が、コスト及び取り扱い性の観点から好ましい。
【0016】
ここで、ドロマイト系化合物(「ドロマイト系粉末」ともいう)としては、ドロマイトから誘導される化合物で、例えば、軽焼ドロマイト、水酸化ドロマイト等が挙げられる
ドロマイト(Dolomite)は、カルサイト(Calcite)と呼ばれる炭酸カルシウム(CaCO3)と、マグネサイト(Magnesite)と呼ばれる炭酸マグネシウム(MgCO3)との、理想的には1:1の複塩である。成分的にみれば、これはカルサイトとマグネサイトとの中間に位置する物質である。ドロマイトを比較的温和な条件で加熱すれば、脱炭酸反応が起こって、「軽焼ドロマイト」と呼ばれる酸化カルシウム(CaO)と酸化マグネシウム(MgO)との酸化物の複塩が得られる。軽焼ドロマイトに水を加えて消化すれば、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)との水酸化物の複塩である、水酸化ドロマイトが得られる。水酸化ドロマイトには、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化第二鉄等の他の成分を本発明の効果を妨げない範囲で含有していてもよい。
【0017】
水酸化ドロマイトに含まれる水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムとの質量比〔Ca(OH)2/Mg(OH)2質量比〕は、10/90~90/10が好ましく、20/80~85/15がより好ましく、40/60~80/20がさらに好ましい。この質量比が上記の範囲であれば、カルシウム成分、マグネシウム成分両者の特性を十分に生かせることになる。
【0018】
上記水酸化ドロマイトとしては、JIS R9001に規定する特号及び1号の水酸化ドロマイトが好適である。
また、水酸化ドロマイトの原料として、軽焼ドロマイトを用いることができる。この軽焼ドロマイトとしては、JIS R9001に規定する特号及び1号の軽焼ドロマイトが好適である。軽焼ドロマイトは、処理対象物や原料中に含まれる水と反応して消化により水和され、水酸化ドロマイトに変化する。そのため、水酸化ドロマイトを調製する工程を省略して軽焼ドロマイトをそのまま用いても水酸化ドロマイトによる効果が発揮される。
【0019】
アルカリ性粉末の比表面積(BET比表面積)は、20m2/g以上であり、20~60m2/gであることが好ましく、25~55m2/gであることがより好ましい。比表面積が20m2/g未満であると、無機系粉末との相乗効果が得られ難くなり、低沸点有機溶媒蒸気の吸着能を低下させてしまう。このようなアルカリ性粉末として、例えば消石灰としては吉澤石灰工業(株)製のカルミューメソックス等が挙げられ、水酸化ドロマイトとしては吉澤石灰工業(株)製のマグミュー等が好適に挙げられる。
なお、本明細書における比表面積は、窒素吸着によるBET法により、窒素の吸着量から1点法により算出される比表面積を意味する。
【0020】
アルカリ性粉末の平均粒子径(メジアン径(d50))は、2~40μmであることが好ましく、2~20μmであることがより好ましい。2~40μmであることで、低沸点有機溶媒蒸気との接触(吸着)面積を維持することができる。本明細書におけるメジアン径(d50)は、レーザ回折散乱法によって求めた粒度分布における粒子個数の積算値が50%となる粒子径(d50)を意味する。
【0021】
(無機系粉末)
無機系粉末の陽イオン交換容量(C.E.C)は、1~50meq/100gであり、1~30meq/100gであることが好ましく、2~15meq/100gであることがより好ましい。
陽イオン交換容量(C.E.C)は、1~50meq/100gであることで、低沸点有機溶媒蒸気、特にアルコール蒸気の吸着能を良好にすることができる。
なお、陽イオン交換容量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0022】
無機系粉末の平均粒子径(メジアン径(d50))は、15~180μmであり、18~100μmであることが好ましく、20~40μmであることがより好ましい。メジアン径が15~180μmであることで、低沸点有機溶媒蒸気、特にアルコール蒸気の吸着能を良好にすることができる。
【0023】
無機系粉末のBET比表面積は、80~200m2/gであることが好ましく、90~190m2/gであることがより好ましい。80~200m2/gであることで、低沸点有機溶媒蒸気との接触(吸着)面積を維持することができる。
【0024】
無機系粉末の細孔容積は、0.1~0.5cm3/gであることが好ましく、0.2~0.4cm3/gであることがより好ましい。0.1~0.5cm3/gであることで、低沸点有機溶媒蒸気との接触(吸着)面積を維持することができる。細孔容積は、ガス吸着式細孔分布測定器「NOVA-4200」(株式会社セイシン企業製)により測定することができる。
【0025】
上記無機系粉末は、アルカリ性粉末との相乗効果の観点から、セピオライト粉末、活性白土粉末、珪藻土粉末であることが好ましく、セピオライト粉末、活性白土粉末であることがより好ましく、セピオライト粉末であることがさらに好ましい。
【0026】
ここで、セピオライトは、Si12Mg8O30(OH)4(OH2)4・8H2Oで表示される含水マグネシウムシリケートである。セピオライト粉末の市販品としては、例えば、(株)セピオジャパン製のエードプラスSP、Sepisorb-400が挙げられる。
【0027】
また、活性白土は、モンモリロン石を主体とするいわゆるベントナイトや酸性白土等を硫酸等で酸処理を施して活性を高めた粘土鉱物誘導体である。例えば、上記ベントナイトや酸性白土を常温で乾かし粉末とし、これを常圧又は加圧のもとで90℃以上の温度で硫酸等の酸の適当量で加熱する。その後、濾別・洗浄し、120~200℃で乾燥させたものが用いられる。活性白土は、表面活性を高めるために硫酸等の酸処理が行われていることから、またその表面の分子の配向状態から強い酸性が示される。
【0028】
活性白土の市販品としては、例えば、活性白土SA35、SA1、T、R-15、E、ニッカナイトG-36、G-153、G-168(いずれも日本活性白土(株)製);ガレオンアース(NVZ、NF2、NFX、V2)、ミズカエース(いずれも水澤化学工業(株)製);等が挙げられる。
【0029】
また、珪藻土はケイ藻が堆積したシリカを主成分とする天然物質であり、良好な細孔容積の点から北海道稚内地方で産出する稚内珪藻土が好ましいが、もちろん稚内地方以外において産出したものも使用できる。
【0030】
アルカリ性粉末のメジアン径(DA50)と無機系粉末のメジアン径(DI50)との比(DI50/DA50)は、それぞれの機能を効果的に発現させる観点から、1~12であることが好ましく、1~7であることがより好ましく、1.4~6であることがさらに好ましく、1.5~5であることがよりさらに好ましい。
【0031】
アルカリ性粉末と無機系粉末との合計に対する、アルカリ性粉末の含有量は、10~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることがさらに好ましく、なかでも、25~55質量%であることが好ましい。10~90質量%であることで、低沸点有機溶媒蒸気の除去及び抗菌作用を良好に発揮できる。
【0032】
脱臭抗菌剤中のアルカリ性粉末と無機系粉末との合計量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%であることがより好ましい。90質量%であることで、低沸点有機溶媒蒸気の除去及び抗菌作用を良好に発揮できる。
【0033】
アルカリ性粉末及び無機系粉末以外に、活性炭といった粉末を含有してもよい。
かかる粉末の平均粒子径(メジアン径(d50))は、10~200μmであることが好ましく、20~190μmであることがより好ましい。
【0034】
本発明の脱臭抗菌剤の一態様としては、既述のアルカリ性粉末と、既述の無機系粉末とを混合することで調製することができる。混合方法としては特に限定されない。
本発明の脱臭抗菌剤は、特に、低沸点有機溶媒蒸気(少なくとも、プロパノール蒸気及び/又はヘキサン蒸気)除去用の脱臭抗菌剤であることが好ましい。
【0035】
[2]脱臭抗菌方法
本発明の脱臭抗菌方法の一態様は、低沸点有機溶媒蒸気発生源及びその近傍に、本発明の一態様に係る脱臭抗菌剤を配置する方法である。ここで低沸点有機溶媒蒸気としては、例えば、アルコールガス(例えばプロパノール蒸気)及び/又は飽和炭化水素ガス(例えばヘキサン蒸気)を含むガスが挙げられる。
【0036】
また、低沸点有機溶媒蒸気発生源とは、例えば、アルコールガス(例えばプロパノール蒸気)及び/又は飽和炭化水素ガス(例えばヘキサン蒸気)が発生する場所が挙げられる。
なお、低沸点有機溶媒蒸気発生源及びその近傍には、アンモニアガス及び硫化水素ガスの他に、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、スカトール等が存在することもある。
また、上記のような低沸点有機溶媒蒸気発生源には、大腸菌、黄色ぶどう球菌、緑膿菌、サルモネラ菌等の少なくともいずれかの細菌が存在し、場合によっては、感染菌が存在することもある。
【0037】
配置の方法としては、脱臭抗菌剤を粉末状のままで腐敗ガス発生源若しくはその近傍に配置してもよいし、顆粒状若しくはペレット状として配置してもよく、特に限定されるものではない。
【0038】
また、これらを不織布、不織紙、織布等からなる容器や袋に収納して配置してもよい。 不織布は、多数の布繊維が立体的に絡み合って形成されたものであり、繊維間に多数の空隙が形成されているものである。
不織紙は、多数の紙繊維が立体的に絡み合って形成されたものであり、繊維間に多数の空隙が形成されているものである。
織布は、繊維を引き揃えて撚りをかけた糸を織り込んで形成されたものであり、糸間に多数の空隙が形成されているものである。
なお、樹脂等からなる多孔質フィルムで通気性及び通水性を有する容器を構成してもよい。
【実施例0039】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(各種無機系粉末)
無機系粉末として、下記表1、表2に示す性状・物性、化学成分のセピオライト粉末((株)セピオジャパン製エードプラスSP)、活性白土粉末(日本活性白土(株)社製SA-1)、珪藻土粉末(有限会社 稚内グリーンファクトリー社製 珪藻土-0.7mm)、ゼオライト粉末(ジークライト(株)社製ジークライトSGW)を用いた。
【0041】
【0042】
【0043】
(各種アルカリ性粉末)
アルカリ性粉末として下記表3に示す性状・物性の高反応性水酸化ドロマイト(吉澤石灰工業(株)製マグミュー)、高反応性消石灰(吉澤石灰工業(株)製カルミューメソックス)、水酸化ドロマイト(吉澤石灰工業(株)製)、工業用特号消石灰(吉澤石灰工業(株)製)を用いた。
【0044】
【0045】
本実施例におけるd50(粒度分布における粒子個数の積算値が50%となる粒子径)及びd90(粒度分布における粒子個数の積算値が90%となる粒子径)は、レーザ回折式粒度分布測定装置「SALD-2300」(株式会社島津製作所製)により測定した。
比表面積は、ガス吸着式細孔分布測定器「NOVA-4200」(株式会社セイシン企業製)を用いて、BET法により、窒素の吸着量から1点法により算出した。
細孔容積も、ガス吸着式細孔分布測定器「NOVA-4200」(株式会社セイシン企業製)を用いて、算出した。
pHは、それぞれの試料を10g採取し、これを100mlの純水中に添加してガラス棒を使って3分間よく撹拌した後、pHメータにて測定した。
化学成分は、JIS R9011の「石灰の分析方法」に規定された方法により測定した。
【0046】
また、以下に陽イオン交換容量の測定方法を説明する。なお、下記説明において、「M」は「モル/リットル」、「L」は「リットル」、「mL」は「ミリリットル」を表す。
【0047】
(1)試薬の調製
i)1M酢酸アンモニウム液
酢酸アンモニウム77.08gを1Lの純水に溶解し、その後、2Mのアンモニア水溶液と2Mの酢酸とで、pHを7に調整して、1M酢酸アンモニウム液を調製した。
ii)エタノール(0.8m3/m3)
エタノール800mLに純水100mLを加えて、BTB試験紙によりアンモニア水でpHを7に調整した。
iii)塩化ナトリウム溶液(10質量%)
塩化ナトリウム100gに純水を加えて1Lとした。
(2)操作-交換-
試料0.1gを遠心管に分取した。そこへ1M酢酸アンモニウム液を40mL添加した。25℃の恒温槽中で適宜振り混ぜながら放置した。その後、5000rpmで遠心分離し上澄み液を捨てた。
(3)操作-洗浄-
次に、エタノール40mLを加えて振り混ぜ、5000rpmで遠心分離し上澄みを捨てた。この洗浄操作を4回繰り返した後、室温で乾燥させた。
(4)操作-浸出-
乾燥後、塩化ナトリウム溶液40mLを加え、25℃の恒温槽中で適宜振り混ぜながら24時間放置した。その後、5000rpmで遠心分離し上澄み液を採取し、純水にて50mLにメスアップした。
(5)測定
50mLに定容とした、浸透塩化ナトリウム溶液から正確に一定量(20ml)はかり、ブレムナー蒸留装置により、NH4
+を定量して陽イオン交換容量を求めた。
【0048】
(各種粉末の吸着試験)
吸着試験は、無機系粉末及びアルカリ性粉末のそれぞれを充填したテドラーバッグ(5リットル)内に1-プロパノール蒸気又はヘキサン蒸気を所定濃度となるように充填して60分後、120分後、240分後、360分後のそれぞれでガス検知管((株)ガステック製)を用いて、20℃での各ガスの濃度を測定した。
なお、1-プロパノール蒸気の充填時の濃度は500ppmとし、ヘキサン蒸気の充填時の濃度は200ppmとした。結果を下記表4(1-プロパノール蒸気)、表5(ヘキサン蒸気)に示す。なお、粉末を使用しない場合(ブランク)の結果も併せて示す。
【0049】
【0050】
【0051】
(実施例1~9、比較例1~4)
アルカリ性粉末(高反応性水酸化ドロマイト(吉澤石灰工業(株)製マグミュー))及び無機系粉末を下記表6に示す配合(単位は質量部)で混合して脱臭抗菌剤を作製した。
【0052】
・ガス吸着試験:
各実施例で作製した脱臭抗菌剤をそれぞれ1g用いて、“各種粉末の吸着試験”と同様にして、1-プロパノール蒸気及びヘキサン蒸気の各吸着試験を行った。結果を下記表4に示す。
【0053】
【0054】
表6より、本発明に係る無機系粉末の割合を減らしても、低沸点有機溶媒蒸気を良好に除去していることから、無機系粉末とアルカリ性粉末との相乗効果が発揮されているといえる。また、本発明に係る無機系粉末(セピオライト、活性白土、珪藻土)を用いることで、そうでない粉末(ゼオライト)比べて優れた効果が確認できた。
【0055】
・抗菌試験:
「JIS Z 2801:2012 抗菌加工製品・抗菌性試験方法・抗菌効果」を参考にした試験方法によって、実施例1~7、比較例1、2の脱臭抗菌剤(20g)を収納したパック(試験品)の各種細菌に対する常温下(25℃)での抗菌効果を調べた。具体的には下記のようにして試験を行った。
【0056】
(1)試験品の清浄化
試験品の両面にパルスドキセノンランプ(コメット,BHX-200)をそれぞれ20秒間照射して清浄化した。
(2)試験条件
i)作用温湿度:25±1℃、90%RH以上
ii)作用時間:直後(無加工試験品のみ)、24時間
【0057】
(3)試験菌及び試験菌液の調製
i)試験菌
a)Escherichia coli NBRC3972(大腸菌)
b)Staphylococcus aureus NBRC12732(黄色ぶどう球菌)
ii)試験菌液の調製
凍結保存された菌株を普通寒天培地(日水製薬)で35±1℃、24時間培養した。この培養菌を新たな普通寒天培地に移植して、35±1℃で19時間培養した。発育した集落をかき取り、1/500濃度の普通ブイヨン培地(栄研化学)で約105個/mLに調製し、これを試験菌液とした。
【0058】
(4)試験方法
試験方法は「JIS Z 2801:2012 抗菌加工製品・抗菌性試験方法・抗菌効果」を参考にした。詳細を以下に示す。
i)試験菌液の接種と培養
試験品をシャーレに入れ、試験品表面全体に試験菌液0.4mLを9箇所滴下した。滴下した試験菌液が浸み込んだ後、パック内の内容物と菌液の接触効率を高めるために、菌液接種面を裏返して、作用温湿度条件(25℃±1℃、90%RH)下で所定時間作用させた。
【0059】
ii)菌数測定
所定時間作用後に予めSCDLPブイヨン培地(栄研化学)100mLを入れたストマッカー用減菌袋に試験品を回収し、試験品から試験菌を洗い出した。洗い出した液を菌数測定用試料液とした。試料液はリン酸緩衝生理食塩液を用いて希釈列を作製し、試料液原液及び希釈液の各1mLをシャーレに移し、標準寒天培地(日水製薬)約20mLと混合後、固化させて35±1℃で48時間培養した。培養後の発育集落を数えて、試験品あたりの試験菌数(定量下限値:100個/試験品)を求めた。また、得られた試験菌数から、無加工試験品を対照として、各抗菌加工品の抗菌活性値を求めた。
黄色ブドウ球菌対する試験結果、及び大腸菌に対する試験結果を下記表7に示す。試験菌である大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する24時間作用における抗菌活性値が2.0以上の場合を合格として「〇」で示し、2.0未満を不合格として「×」で示した。
【0060】
なお、抗菌活性値(R)は下記式から求めた。
式:R=(Ut-Uo)-(At-Uo)=Ut-At
R:抗菌活性値(数値は小数点以下2桁目を切り捨て、小数点1桁で表示)
Ut:無加工試験品の接種直後の生菌数の対数値
Uo:無加工試験品の各作用時間後の生菌数の対数値
At:抗菌加工品の各作用時間後の生菌数の対数値
【0061】
【0062】
表7より、両試験菌共に各実施例においては24時間作用後に定量下限値未満となった。参考とした試験規格「JIS Z 2801」における「抗菌効果」は、試験菌である大腸菌や黄色ブドウ球菌に対する24時間作用における抗菌活性値が2.0以上とされており、これを鑑みれば、実施例に係る脱臭抗菌剤は優れた抗菌効果を発揮したことがわかる。