(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046949
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】やに入りはんだ、音による品質管理手法
(51)【国際特許分類】
B23K 1/00 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
B23K1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152604
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】592025786
【氏名又は名称】株式会社日本スペリア社
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】はんだ付け時に発生するフラックス等の飛散による不良を当該不良と関連する音を検知し、はんだ付け不良を製品化しない検査方法を提供する。
【解決手段】はんだ付け時に発生するフラックス等の飛散による不具合と関連する異常音に着目し、フラックス等に起因する飛散が発生するときに連動する異常音を検出して、当該異常音が発生した場合、はんだ付け時のフラックスの飛散等による不良と検知させる方法を利用したはんだ付けの良否を判定する。また、当該検査方法を応用した生産システムを取り入れることにより効率的な電子機器の生産を可能とした。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付けの検査方法であって、はんだ付け時に発生する異常音を検出し、その異常音によりはんだ付けの良否を判定することを特徴とする検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の検査方法がやに入りはんだを用いたはんだ付けの良否を判定することを特徴とする検査方法。
【請求項3】
請求項1及び請求項2記載の検査方法が、飛散による不具合を検出し、はんだ付けの良否を判定することを特徴とする検査方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3記載のはんだ付けの良否を判定する検査方法並びに当該はんだ付け工程を取入れたことを特徴とする生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、やに入りはんだを用いたはんだ付けの品質管理手法に関し、はんだ付け時の音によるはんだ付けの良否を判別する方法並びにそれを用いた品質管理手法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板に電子部品をはんだ付けする場合、溶融したはんだの液面にプリント基板を接触させてはんだ付けするフローはんだ付けや、プリント基板のパターンに沿ってはんだペーストを印刷し、リフリー炉にて熱を加えはんだを溶融してはんだ付けするリフローはんだ付けや、やに入りはんだとはんだ鏝やはんだ付けロボットを用いて電子部品を基板にはんだ付けする方法等が用いられている。
【0003】
近年、やに入りはんだを用いてはんだ付けする場合は、はんだコテを用いた手作業より、はんだ付けロボットを用い自動化されたはんだ付け方法が多く用いられ、生産性向上の一助となっている。
一方、生産性向上に伴い、はんだ付け時に発生する飛散やサイドボール、不ぬれ等の不具合の発生、特にフラックスやそれに起因する飛散が大きな問題となっている。
【0004】
フラックスの飛散防止に関して、特許文献1ではやに入りはんだに使用するフラックス成分をロジン系樹脂と活性剤を含有し、更に平均分子量8000~100000のアクリルポリマー及びビニルエーテルポリマーから選択される1種以上を含有させたフラックス組成を用いることで、フラックスの飛散が抑制されることが開示されている。
【0005】
また、はんだ付け時に発生した不具合を検知する方法として、特許文献2及び特許文献3では、はんだ付け作業時にカメラを用いて、はんだ接合部を撮影し、その画像を解析し、はんだ付けの良否を判定する検査方法が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1で開示されている方法ではフラックスの飛散が完全には防止できず、飛散が発生した場合に、不良が製品化される虞がある。
【0007】
また、特許文献2及び特許文献3で開示されている検査方法では、主にはんだ接合部の状態を撮影した画像解析データを基にした良否判定である為、フラックス飛散によるはんだ付け不良には適さないという問題があり、フラックス飛散によるはんだ付けの良否を検知し、はんだ付けが不良が含まれた状態で製品化しない検査方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6268507号公報
【特許文献2】特開2010-29888号公報
【特許文献3】特開2009-276208号公報
【特許文献4】特開2019-39787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況を鑑み、はんだ付け時に発生するフラックス等の飛散による不良を検知し、はんだ付け不良が含まれた状態で製品化しない検査方法の提供を目的とする。
【課題を解決する為の手段】
【0010】
本発明は、前記課題解決の為、はんだ付け時に発生する異常音に着目し、フラックス等に起因する飛散が発生するときの異常音を聞き分けて、はんだ付け時のフラックスの飛散等による不良を検知し、良否を判定する方法を見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
更に、前記の本発明のはんだ付け時に発生する異常音を聞き分けることにより、フローはんだ付け時のプリヒートに於いてもプリフラックス起因によるはんだ付け不良への応用も可能となる。
なお、ここで言う異常音とは、はんだ付け工程に於いて飛散等の不具合が発生する際に関連して発生する音のことを言い、良好なはんだ付けが行われている状態で発生する音やはんだ付け以外の作業や装置が発生する音、会話等の環境音は除くものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の異常音によるはんだ品質管理手法を用いることにより、フラックス等を起因とする飛散による不良を判別することができることから、はんだ付け工程、特に、やに入りはんだを用いたはんだ付け時の不良を効率よく判別できる為、不良品の発生を効率よく識別でき、生産性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】はんだ付け実験でのコテ先にやに入りはんだを接触させた状態を示す写真
【
図3】はんだ付け実験で飛散が発生した直後を示す写真
【
図5】はんだ付け実験を行った際の飛散発生時とそれ以外の音の状態を示すグラフ
【発明を実施する為の形態】
【0014】
本発明のはんだ付けの音による品質管理手法は、はんだ付け時に発生する異常音を検出することにより、フラックス等に起因する飛散を的確に検知し、はんだ付けの良否を判定することを特徴としている。
【0015】
音による検査方法は、特許文献4に開示されているように、構造物を対象とし、検査対象表面を打撃することにより発生する打撃音を検出して構造物内部の状態を判定する検査方法が知られているが、はんだ付け時に発生する音を検出して、不良を判定する検査方法を示唆された例は見られない。
【0016】
このように、本発明のはんだ付け時に発生する音により不良を判別することを特徴とした品質管理手法であるが、特に、やに入りはんだのはんだ付け時に発生するフラックスを起因とする飛散を検知することに優れる為、これまでにない精度の高い品質管理手法である。
【0017】
以下に実施例を基に本発明の詳細を説明する。
試料として、やに入りはんだは株式会社日本スペリア社製やに入りはんだSN100C 030 線径1.0mmの不良品を、はんだ鏝として白光株式会社製はんだコテC型φ5.0mmを夫々用い、白色感熱紙上にてはんだ付け条件としてコテ先温度380℃にて、飛散が発生するまで、試料のやに入りはんだをはんだ鏝に押し当て、試料のやに入りはんだをはんだ鏝に押し当て飛散が発生した直後までの間をビデオカメラにて録画と録音を行い、飛散の発生した時とそれ以外の状態を画像並びに音にて確認した。
【0018】
そして、音の確認には市販のソフト(Sonic Tools)をインストールした携帯電話にて行った。
【0019】
【0020】
図1に示すように、感熱紙の上にコテ先(「2」)を380℃に加熱し、やに入りはんだ(「1」)を準備する。
次に、
図2に示すように、はんだ付け作業時同様にコテ先にやに入りはんだを接触(「3」)させてはんだを溶解させる。
更に、やに入りはんだを溶解させると突然破裂音共に
図3に示すように溶解したやに入りはんだが感熱紙上に飛散した。
図4は、感熱紙上に飛散したやに入りはんだ(「4」)の状況を示している。
【0021】
図5ははんだ付け作業時の発生する音を縦軸に音量(dB)、横軸に周波数(KHz)で表したグラフであり、やに入りはんだをコテ先に接触させる直前から飛散直後までの時間測定したものである。
図5に示す「5」は飛散が発生しない状態での作業時の音の状況を表し、0~16KHzの範囲で概ね20dB以下であるのに対し、飛散が発生した時の音の状況(「6」)は、0~16KHzの範囲で20dBをはるかに超え、高い場合には40dBを超え、飛散が発生しない状態の倍の数値を示している。
【0022】
このように、やに入りはんだのはんだ付けに於いて、本発明の音による品質管理手法を用いた場合、飛散の発生を的確に把握でき、はんだ接合の良否判定が可能となる。
【0023】
また、本発明の音による品質管理手法を実施する場合に於いて、やに入りはんだを用いたはんだ付け時に発生する音を判定する際、飛散等の不具合が発生するときの音、例えば音質、音量やパターンが、不具合が発生しない状況下での音の違いが認識できるようなマイクや解析装置、プログラム等を用い、良否が判定可能であれば、マイクの大きさや感度、解析装置の精度等は適宜設定や選定が可能である。
【0024】
具体的には、はんだ付けを行う工程に於いて、例えば、やに入りはんだを用いる自動はんだ付け装置を使用する場合、コテ先に供給されるやに入りはんだやはんだ付けする電子部品のセッティング場所やはんだ付け工程そのものに影響を与える場所以外ではんだ付けする作業場所に近いところにピンマイク等をセッティングしてはんだ付け時の音を収集して異常音を検出することで、フラックス等に起因するはんだ付け不良を認識させることができる為、はんだ付け作業工手に影響を与えず、飛散等の不具合が発生する際に発する異常音を精度良く検知することが可能である。
その際に、異常音を精度良く検出する為に、はんだ付け装置のコテ先洗浄の為のエアーブロー音や、はんだ付け作業以外の音、例えば、電子部品等が移動するときの音や作業員が発する音を収集できるように異常音収集の用マイクとは別のマイクを1個以上セッティングさせて収集し、はんだ付け作業の時の音と差分させることにより、より異常音を検出させることが可能である。
【0025】
そして、はんだ付け時に発生する不具合の音質を解析することにより、やに入りはんだの不良内容を把握することも可能と考える。
やに入りはんだの不良には、やに切れ(やに入りはんだに含有されている「やに」に未充填箇所がある不良)や水分等の異物や、やに入りはんだの合金部分に空隙がある不良等があり、これらの不良部分を用いてはんだ付けした場合は、夫々音質等に違いが見られる為、はんだ付け箇所をモニタリングするカメラ等を併せて用いることで、飛散等以外の不ヌレやブリッジ等の接合不良も精度良く判定可能となる。
そして、本発明の音による品質管理手法を生産システムに盛り込むことにより、生産システムの自動化がより進み、生産性の向上に寄与する。
また、このモニタリングデータを収集解析することにより、やに入りはんだの不具合の内容を把握でき、はんだ付け工程で発生した不良の仕分けや生産ラインを一時止める等対処方法の選択と優先順位を決定することが可能となり、生産性向上や品質管理の向上に寄与が期待できる。
【0026】
更に、本発明の音による品質管理手法は、やに入りはんだによるはんだ付けに限らず、フローはんだ付け工程にも応用が可能で、フラックスを塗布しプリヒートを行う際にマイク等で音を集音、解析することにより、非水性フラックスに含まれる水分等の不純物を検知することも可能である。
【0027】
本発明の音による品質管理手法は、やに入りはんだに代表されるはんだ付けに適応が可能であるが、はんだ付け工程に於いて、不具合と連動する異常音が発生する場合には前述の通り、やに入りはんだ以外のフローはんだ付け、プリフォームやクリームはんだ等への応用も可能である。
【0028】
また、はんだ付けに用いるはんだ合金やフラックスの種類を問わず、不具合と連動する異常音が発生する場合に用いることが可能である。
具体的には、はんだ合金の種類として、Sn-Cu系、Sn-Cu-Ni系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Bi系、Sn-Zn系等の鉛フリーはんだやSn-Pb系はんだが例示でき、フラックスとして非水系フラックスや水溶性フラックスが例示できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の音による品質管理手法は、はんだ付けの不具合を精度良く検出可能であり、はんだ付け工程にインラインすることも可能である為、はんだ付け工程で発生する飛散等の不具合を正確に検知することにより、はんだ付け作業の効率化に大きく寄与可能となり、はんだ付け工程の際に発生する不良の判別に広く応用が期待できる。
【符号の説明】
【0030】
1 やに入りはんだ
2 はんだコテのコテ先
3 やに入りはんだとコテ先の接触部分
4 飛散したフラックス並びにやに入りはんだ
5 不具合が発生しない状態のはんだ付け時の音
6 飛散が発生した時(不具合発生時)のはんだ付け時の音