(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046958
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】バッテリ試験装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20220316BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220316BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220316BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
G01R31/00
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152623
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】坂本 竜也
【テーマコード(参考)】
2G036
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G036AA12
2G036AA13
2G036AA27
2G036AA28
2G036BB08
2G036CA10
2G036CA11
2G036CA12
5G503BA01
5G503BB01
5G503EA09
5H030AA01
5H030AS18
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】複数の負荷模擬装置を、開閉スイッチを介してバッテリに電気的に接続する際に、前記複数の負荷模擬装置の電圧を前記バッテリの電圧と同程度の電圧になるように制御しつつ、前記複数の負荷模擬装置に、負荷模擬装置が損傷を受けるような大きな電流が流れるのを防止可能なバッテリ試験装置を提供する。
【解決手段】バッテリ試験装置1は、電圧制御を行う制御部21a,22aをそれぞれ有する複数の負荷模擬装置21,22と、複数の負荷模擬装置21,22とバッテリBとを電気的に接続または切断する開閉スイッチ31,32と、を備える。複数の負荷模擬装置21,22のうち一つの負荷模擬装置21以外の負荷模擬装置22は、開閉スイッチ31,32が複数の負荷模擬装置21,22とバッテリBとを電気的に接続する際に、一つの負荷模擬装置21に比べて、低い制御精度を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを試験するバッテリ試験装置であって、
電圧制御を行う制御部をそれぞれ有する複数の負荷模擬装置と、
前記複数の負荷模擬装置と前記バッテリとを電気的に接続または切断する開閉スイッチと、
を備え、
前記複数の負荷模擬装置のうち一つの負荷模擬装置以外の負荷模擬装置は、前記開閉スイッチが前記複数の負荷模擬装置と前記バッテリとを電気的に接続する際に、前記一つの負荷模擬装置に比べて、低い制御精度を有する、
バッテリ試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリ試験装置において、
前記制御精度は、前記負荷模擬装置の制御分解能である、
バッテリ試験装置。
【請求項3】
請求項1に記載のバッテリ試験装置において、
前記負荷模擬装置の前記制御部は、前記電圧制御を行うためのフィードバック回路を有し、
前記制御精度は、前記フィードバック回路の制御ゲインである、
バッテリ試験装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のバッテリ試験装置において、
前記複数の負荷模擬装置のうち一つの負荷模擬装置は、前記開閉スイッチによって前記複数の負荷模擬装置と前記バッテリとが電気的に接続されてから所定時間が経過した後は、他の負荷模擬装置に対して電流制御のための指令信号を出力する、
バッテリ試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの試験を行うバッテリ試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリの試験を行うバッテリ試験装置が知られている。このようなバッテリ試験装置は、負荷模擬装置と、開閉スイッチとを備える。前記負荷模擬装置は、前記バッテリに対する負荷を模擬するための装置である。前記負荷模擬装置は、電圧を制御する制御部を有する。前記開閉スイッチは、前記バッテリと前記負荷模擬装置とを電気的に接続または切断するための装置である。
【0003】
上述のようにバッテリの試験を行う負荷模擬装置を備えたバッテリ試験装置として、例えば特許文献1に開示されるようなバッテリ評価装置が知られている。このバッテリ評価装置では、バッテリに対して電子負荷装置が接続されている。
【0004】
また、上述のようなバッテリ試験装置として、例えば特許文献2に開示されるような定電流負荷試験装置が知られている。この定電流負荷試験装置は、開閉スイッチを介して被試験電池に接続される電圧電流増幅器を有する。前記定電流負荷試験装置は、前記開閉スイッチによって前記被試験電池を前記電圧電流増幅器に接続した瞬間に過渡的な突入電流が流れるのを防止するために、前記開閉スイッチがOFF時の両端の電圧を同じ電位にする回路を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-171841号公報
【特許文献2】特開平7-229953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、試験対象であるバッテリに負荷模擬装置などを電気的に接続する場合、上述の特許文献2に開示されているように、前記バッテリと前記負荷模擬装置との電圧差を小さくする必要がある。そのため、前記負荷模擬装置に電圧制御を行う制御部を設け、該制御部によって前記負荷模擬装置の電圧を前記バッテリの電圧と同程度の電圧になるように調整した後、開閉スイッチをON(閉じた状態)にして前記負荷模擬装置と前記バッテリとを電気的に接続することが考えられる。
【0007】
一方、近年のEVやHEVの大容量化に伴って、バッテリも大容量化している。そのため、1つのバッテリに対して複数の負荷模擬装置を接続する場合がある。複数の負荷模擬装置を、それぞれ開閉スイッチを介してバッテリに電気的に接続する場合にも、各負荷模擬装置の電圧が前記バッテリの電圧と同程度の電圧になるように、前記各負荷模擬装置の電圧を制御する必要がある。
【0008】
しかしながら、上述のように複数の負荷模擬装置の電圧が前記バッテリの電圧と同程度の電圧になるように、前記複数の負荷模擬装置で電圧を制御した場合、前記複数の負荷模擬装置の電圧制御が互いに影響して、前記複数の負荷模擬装置に、負荷模擬装置が損傷を受けるような大きな電流が流れる可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、複数の負荷模擬装置を、開閉スイッチを介してバッテリに電気的に接続する際に、前記複数の負荷模擬装置の電圧を前記バッテリの電圧と同程度の電圧になるように制御しつつ、前記複数の負荷模擬装置に、負荷模擬装置が損傷を受けるような大きな電流が流れるのを防止可能なバッテリ試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係るバッテリ試験装置は、バッテリを試験するバッテリ試験装置である。このバッテリ試験装置は、電圧制御を行う制御部をそれぞれ有する複数の負荷模擬装置と、前記複数の負荷模擬装置と前記バッテリとを電気的に接続または切断する開閉スイッチと、を備える。前記複数の負荷模擬装置のうち一つの負荷模擬装置以外の負荷模擬装置は、前記開閉スイッチが前記複数の負荷模擬装置と前記バッテリとを電気的に接続する際に、前記一つの負荷模擬装置に比べて、低い制御精度を有する(第1の構成)。
【0011】
複数の負荷模擬装置を有するバッテリ試験装置は、前記複数の負荷模擬装置の制御精度のうち最も高い制御精度に応じて駆動される。よって、前記複数の負荷模擬装置を、開閉スイッチを介してバッテリに電気的に接続した際に、高い制御精度を有する負荷模擬装置の電圧制御に応じて、前記複数の負荷模擬装置の電圧を前記バッテリの電圧と同程度の電圧になるように制御することができる。
【0012】
しかも、上述のように前記高い制御精度を有する負荷模擬装置の電圧制御に応じて前記バッテリ試験装置を駆動することにより、前記複数の負荷模擬装置を、前記開閉スイッチを介して前記バッテリに電気的に接続した際に、前記前記複数の負荷模擬装置のうち制御精度が高い負荷模擬装置と制御精度が低い負荷模擬装置との間、及び、制御精度が低い負荷模擬装置同士の間で、電圧制御が互いに影響するのを防止できる。これにより、前記複数の負荷模擬装置を、前記開閉スイッチを介して前記バッテリに電気的に接続した際に、前記複数の負荷模擬装置の電圧制御が互いに影響し合うことを防止できる。
【0013】
したがって、前記複数の負荷模擬装置を、前記開閉スイッチを介して前記バッテリに電気的に接続した際に、前記複数の負荷模擬装置の電圧を前記バッテリの電圧と同程度の電圧になるように制御しつつ、前記複数の負荷模擬装置に、負荷模擬装置が損傷を受けるような大きな電流が流れるのを防止できる。
【0014】
前記第1の構成において、前記制御精度は、前記負荷模擬装置の制御分解能である(第2の構成)。
【0015】
これにより、複数の負荷模擬装置を、開閉スイッチを介してバッテリに電気的に接続した際に、高い制御分解能を有する負荷模擬装置の電圧制御に応じて、前記複数の負荷模擬装置の電圧を前記バッテリの電圧と同程度の電圧になるように制御することができる。しかも、前記複数の負荷模擬装置を、前記開閉スイッチを介して前記バッテリに電気的に接続した際に、前記複数の負荷模擬装置の電圧制御が互いに影響し合うことを防止できる。
【0016】
したがって、前記複数の負荷模擬装置を、前記開閉スイッチを介してバッテリに電気的に接続した際に、前記複数の負荷模擬装置の電圧を前記バッテリの電圧と同程度の電圧になるように制御しつつ、前記複数の負荷模擬装置に、負荷模擬装置が損傷を受けるような大きな電流が流れるのを防止できる。
【0017】
前記第1の構成において、前記負荷模擬装置の前記制御部は、前記電圧制御を行うためのフィードバック回路を有する。前記制御精度は、前記フィードバック回路の制御ゲインである(第3の構成)。
【0018】
これにより、フィードバック回路の制御ゲインが低い負荷模擬装置は、制御ゲインが高い負荷模擬装置に比べて、電圧制御の追従性が低下している。よって、高い制御ゲインを有する負荷模擬装置の電圧制御に応じて、前記複数の負荷模擬装置の電圧を前記バッテリの電圧と同程度の電圧になるように制御しつつ、前記複数の負荷模擬装置の電圧制御が互いに影響し合うことを防止できる。
【0019】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記複数の負荷模擬装置のうち一つの負荷模擬装置は、前記開閉スイッチによって前記複数の負荷模擬装置と前記バッテリとが電気的に接続されてから所定時間が経過した後は、他の負荷模擬装置に対して電流制御のための指令信号を出力する(第4の構成)。
【0020】
開閉スイッチによって複数の負荷模擬装置とバッテリとが電気的に接続された後も、複数の負荷模擬装置がそれぞれ電圧制御を行うと、互いの電圧制御が影響し合って負荷模擬装置に大きな電流が流れる可能性がある。
【0021】
これに対し、上述のように一つの負荷模擬装置が他の負荷模擬装置に対して電流制御の指令信号を出力することにより、開閉スイッチによって複数の負荷模擬装置とバッテリとが電気的に接続されてから所定時間が経過した後に、前記複数の負荷模擬装置の電流制御が互いに影響し合うことを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態に係るバッテリ試験装置は、電圧制御を行う制御部をそれぞれ有する複数の負荷模擬装置と、前記複数の負荷模擬装置と前記バッテリとを電気的に接続または切断する開閉スイッチと、を備える。前記複数の負荷模擬装置のうち一つの負荷模擬装置以外の負荷模擬装置は、前記開閉スイッチが前記複数の負荷模擬装置と前記バッテリとを電気的に接続する際に、前記一つの負荷模擬装置に比べて、低い制御精度を有する。
【0023】
これにより、前記複数の負荷模擬装置を、前記開閉スイッチを介して前記バッテリに電気的に接続した際に、前記複数の負荷模擬装置の電圧を前記バッテリの電圧と同程度の電圧になるように制御しつつ、前記複数の負荷模擬装置に、負荷模擬装置が損傷を受けるような大きな電流が流れるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るバッテリ試験装置の概略構成を示す電気回路図である。
【
図2】
図2は、制御分解能が同じ複数の負荷模擬装置を、開閉スイッチによってバッテリに電気的に接続した際の電圧及び電流の変化を示す図である。
【
図3】
図3は、制御分解能が異なる複数の負荷模擬装置を、開閉スイッチによってバッテリに電気的に接続した際の電圧及び電流の変化を示す図である。
【
図4】
図4は、開閉スイッチが閉じた後のバッテリ試験装置の電流制御の概要を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態2に係るバッテリ試験装置の概略構成を示す電気回路図である。
【
図6】
図6は、フィードバック回路の概略構成を示す制御ブロック図である。
【
図7】
図7は、その他の実施形態に係るバッテリ試験装置の概略構成を示す電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
<実施形態1>
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態1に係るバッテリ試験装置1の概略構成を示す図である。このバッテリ試験装置1は、バッテリBに電気的に接続されることにより、バッテリBの充放電の特性を試験するための装置である。
【0027】
図1に示すように、バッテリ試験装置1は、試験対象であるバッテリBに対して電気的に接続されている。バッテリ試験装置1は、複数の負荷ユニット11,12を有する。バッテリ試験装置1では、複数の負荷ユニット11,12は、電気的に並列に接続されている。すなわち、バッテリBには、電気的に並列に接続された複数の負荷ユニット11,12が電気的に接続されている。
【0028】
このように、バッテリBに対し、複数の負荷ユニット11,12を電気的に並列に接続することで、バッテリBが大容量のバッテリの場合でも、バッテリ試験装置1によって、バッテリBの試験を行うことができる。
【0029】
負荷ユニット11は、負荷模擬装置21と、開閉スイッチ31とを備えている。開閉スイッチ31は、負荷模擬装置21をバッテリBに対して電気的に接続または切断するためのスイッチである。開閉スイッチ31は、閉じた状態で負荷模擬装置21とバッテリBとを電気的に接続し、開いた状態で負荷模擬装置21とバッテリBとを電気的に切断する。開閉スイッチ31は、例えば、電磁開閉器、電磁リレーなどのように電気的に動作するスイッチであってもよいし、機械的に動作するスイッチであってもよい。
【0030】
なお、負荷ユニット12も、負荷ユニット11と同様、負荷模擬装置22と、開閉スイッチ32とを備えている。以下では、負荷模擬装置21及び開閉スイッチ31についてのみ説明し、負荷模擬装置22及び開閉スイッチ32についての説明は省略する。
【0031】
負荷模擬装置21は、バッテリBに対する負荷を模擬可能な装置である。具体的には、負荷模擬装置21は、バッテリBに充電されている電力を放電する放電回路として機能するとともに、バッテリBに対して充電を行う充電回路として機能する。
【0032】
負荷模擬装置21は、図示しない複数のスイッチング素子と、該スイッチング素子の駆動を制御する制御部21aとを有する。前記複数のスイッチング素子は、駆動されることで、負荷模擬装置21の出力電圧を制御するとともに、バッテリBに対する負荷も変えることができる。すなわち、制御部21aは、前記複数のスイッチング素子の駆動を制御することにより、負荷模擬装置21の出力電圧を制御するとともに、バッテリBに対する負荷特性も制御する。
【0033】
制御部21aは、出力電圧が所定の電圧になるように前記複数のスイッチング素子の駆動を制御することにより、前記出力電圧をフィードバック制御する。
【0034】
負荷模擬装置21は、開閉スイッチ31を介してバッテリBに電気的に接続されている。よって、開閉スイッチ31を閉じた状態にすることで、負荷模擬装置21とバッテリBとが電気的に接続される一方、開閉スイッチ31を開けた状態にすることで、負荷模擬装置21とバッテリBとが電気的に切断される。
【0035】
(電圧制御)
バッテリ試験装置1における複数の負荷模擬装置21,22は、それぞれ、開閉スイッチ31,32を介してバッテリBに電気的に接続されている。開閉スイッチ31,32を上述のように閉じた状態にすることで、複数の負荷模擬装置21,22はバッテリBに接続されるが、複数の負荷模擬装置21,22の出力電圧とバッテリBの電圧とが異なると、開閉スイッチ31,32を閉じた際に、複数の負荷模擬装置21,22に大きな電流が流れる可能性がある。そのため、複数の負荷模擬装置21,22の制御部21a,22aは、開閉スイッチ31,32を閉じる前に、前記出力電圧がバッテリBの電圧と同程度の電圧になるように、前記出力電圧を制御する。
【0036】
ところで、複数の負荷模擬装置21,22がそれぞれ電圧制御を行うと、開閉スイッチ31,32を閉じた際に、複数の負荷模擬装置21,22における電圧検出の誤差等に起因して電圧制御のずれが生じるため、複数の負荷模擬装置21,22の電圧制御が互いに影響し合う可能性がある。そうすると、開閉スイッチ31,32を閉じた際に、複数の負荷模擬装置21,22に、負荷模擬装置21,22が損傷を受けるような大きな電流が流れる可能性がある。
【0037】
これに対し、本実施形態では、複数の負荷模擬装置21,22のうち一つの負荷模擬装置21の制御分解能は、他の負荷模擬装置22の制御分解能よりも高い。すなわち、他の負荷模擬装置22の制御分解能は、一つの負荷模擬装置21の制御分解能よりも低い。
【0038】
例えば、一つの負荷模擬装置21では、電圧制御の目標値が小数点第2位であるのに対し、他の負荷模擬装置22では、電圧制御の目標値が小数点1位である。このような制御分解能の設定は、例えば、負荷模擬装置21,22の制御部21a,22aにおいて、電圧制御の目標値における分解能の設定を変えることにより行われる。
【0039】
なお、負荷模擬装置21,22において、図示しない電圧検出部で検出した値をアナログからデジタルに変換する際の有効数字を変えることにより、負荷模擬装置21,22の分解能を調整してもよい。
【0040】
このように、複数の負荷模擬装置21,22のうち一つの負荷模擬装置21の制御分解能に比べて他の負荷模擬装置22の制御分解能を低くすることで、開閉スイッチ31,32を閉じた際に、複数の負荷模擬装置21,22で行われる電圧制御が互いに影響し合うことを防止できる。
【0041】
なお、複数の負荷模擬装置のうち一つの負荷模擬装置の制御精度が、他の負荷模擬装置の制御精度よりも高ければ、上述のような効果を得ることができる。すなわち、本実施形態における制御分解能は、制御精度の一例である。前記制御精度は、後述する実施形態2のような制御ゲインであってもよいし、制御の精度に関連する他のパラメータであってもよい。
【0042】
図2は、同じ制御分解能で電圧制御を行う2つの負荷模擬装置を、開閉スイッチを介してバッテリに電気的に接続した際の電圧及び電流の変化を示す図である。
図2に示すように、開閉スイッチを閉じた状態にすることで、前記2つの負荷模擬装置の電圧と前記バッテリの電圧とは同程度になる一方、前記2つの負荷模擬装置の間で電流が流れる。前記2つの負荷模擬装置のうち一方の負荷模擬装置(図中のBTS1)は、制御制限値に達するまで電圧を上昇させようとし、他方の負荷模擬装置(図中のBTS2)は、制御制限値に達するまで電圧を減少させようとする。
【0043】
このように、同じ制御分解能で電圧制御を行う2つの負荷模擬装置をバッテリに電気的に接続すると、2つの負荷模擬装置は、それぞれの電圧が前記バッテリの電圧と同程度の電圧になるように電圧制御を行う。そのため、前記2つの負荷模擬装置の電圧制御が互いに影響し合って、制御制限値に達するまでそれぞれ別の動作をする。これにより、開閉スイッチを閉じた際に、前記2つの負荷模擬装置の間に、負荷模擬装置が損傷を受けるような大きな電流が流れる場合がある。
【0044】
これに対し、本実施形態のように、複数の負荷模擬装置のうち一つの負荷模擬装置の制御分解能に比べて、他の負荷模擬装置の制御分解能を低くすることにより、複数の負荷模擬装置の電圧制御が互いに影響し合うことを防止できる。
【0045】
図3は、一つの負荷模擬装置(図中のBTS1)と該一つの負荷模擬装置に比べて制御分解能が低い負荷模擬装置(図中のBTS2)とを、開閉スイッチを介してバッテリに電気的に接続した際の電圧及び電流の変化を示す図である。
図3に示すように、開閉スイッチを閉じた状態にすることで、2つの負荷模擬装置とバッテリとが同程度の電圧になるとともに、前記2つの負荷模擬装置の間で電流が流れるのも抑制できる。このように、一つの負荷模擬装置に比べて他の負荷模擬装置の制御分解能を低くすることで、複数の負荷模擬装置の電圧制御が互いに影響し合うことを防止できる。
【0046】
したがって、本実施形態の構成により、複数の負荷模擬装置21,22を、開閉スイッチ31,32を介してバッテリBに電気的に接続した際に、複数の負荷模擬装置21,22の電圧をバッテリBの電圧と同程度の電圧になるように制御しつつ、複数の負荷模擬装置21,22に、負荷模擬装置が損傷を受けるような大きな電流が流れるのを防止することができる。
【0047】
本実施形態のバッテリ試験装置1では、開閉スイッチ31,32を閉じてから所定時間経過後に、負荷模擬装置21,22は、電流制御に移行するとともに、制御分解能が高い負荷模擬装置21は、他方の負荷模擬装置22の電流制御もコントロールする。具体的には、制御分解能が高い負荷模擬装置21は、開閉スイッチ31,32を閉じてから所定時間を経過した後に、電流制御に移行するとともに、他方の負荷模擬装置22に対して電流制御の指令信号を出力する。これにより、開閉スイッチ31,32を閉じてから所定時間経過後に、複数の負荷模擬装置21,22の電流制御が互いに影響し合うことを防止できる。
【0048】
なお、負荷模擬装置21,22は、バッテリBの代わりに、コンデンサに電気的に接続されていてもよい。この場合には、開閉スイッチ31,32を閉じてから所定時間経過後に、負荷模擬装置21,22は、電圧制御を継続するとともに、制御分解能が高い負荷模擬装置21は、他方の負荷模擬装置22の電圧もコントロールする。これにより、開閉スイッチ31,32を閉じてから所定時間経過後に、複数の負荷模擬装置21,22の電圧制御が互いに影響し合うことを防止できる。
【0049】
図4は、開閉スイッチ31,32が閉じた後のバッテリ試験装置1の電流制御の概要を示すフローチャートである。以下で、
図4を用いて、開閉スイッチ31,32が閉じた後のバッテリ試験装置1の電流制御を説明する。
【0050】
図4に示すフローがスタート(START)すると、まず、ステップS1で、負荷模擬装置21,22が開閉スイッチ31,32を閉にする。なお、このステップS1の前までは、負荷模擬装置21,22は、それぞれ、出力電圧をバッテリBの電圧に合わせるように、電圧制御を行っている。
【0051】
開閉スイッチ31,32を閉にした後のステップS2では、負荷模擬装置21が、開閉スイッチ31,32を閉にしてから所定時間が経過したかどうかを判定する。開閉スイッチ31,32を閉にしてから所定時間が経過した場合(YESの場合)には、ステップS3に進んで、制御分解能が最も高い負荷模擬装置21は、電流制御に移行するとともに、他の負荷模擬装置22に対して電流制御の指令信号を出力する。この際、制御分解能が低い負荷模擬装置22では、制御部22aは、独自に行う電圧制御を停止して、負荷模擬装置21から出力される前記指令信号に基づいて電流制御を行う。その後、このフローを終了する(END)。
【0052】
一方、開閉スイッチ31,32を閉にしてから所定時間が経過していない場合(NOの場合)には、ステップS2で開閉スイッチ31,32を閉にしてから所定時間が経過したと判定されるまで、ステップS2の判定を繰り返す。
【0053】
これにより、開閉スイッチ31,32によって複数の負荷模擬装置21,22とバッテリBとが電気的に接続されてから所定時間が経過した後でも、複数の負荷模擬装置21,22の電流制御が互いに影響し合うことを防止できる。
【0054】
<実施形態2>
図5は、実施形態2に係るバッテリ試験装置100の概略構成を示す。本実施形態の構成は、複数の負荷模擬装置121,122において、制御部121a,122aのフィードバック回路121b,122b(
図5ではFB回路)の制御ゲインが異なる点で、実施形態1の構成と異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。なお、
図5において、符号111,112は、負荷ユニットである。
【0055】
図5に示すように、負荷模擬装置121は制御部121aを有し、負荷模擬装置122は制御部122aを有する。制御部121aはフィードバック回路121bを有し、制御部122aはフィードバック回路122bを有する。
【0056】
フィードバック回路121b,122bは、出力電圧に応じて入力電圧を補正することにより、前記出力電圧を所望の電圧に制御するための回路である。本実施形態では、フィードバック回路121b,122bは、負荷模擬装置121の出力電圧がバッテリBの電圧と同程度の電圧になるように、負荷模擬装置121の出力電圧を制御する。
【0057】
図6は、フィードバック回路121b,122bの構成の一例を示す制御ブロック図である。
図6に示すように、フィードバック回路121b,122bは、それぞれ、フィードバックループ150と、増幅器151とを有する。フィードバックループ150は、出力電圧を入力側にフィードバックして、入力電圧と出力電圧との差分を求める。増幅器151は、前記差分を所定の制御ゲインによって増幅して出力する。この制御ゲインによって、前記出力電圧が前記所望の電圧に近づく時間を調整することができる。すなわち、前記制御ゲインを調整することによって、電圧制御における目標値への収束速度を調整することができる。
【0058】
本実施形態では、負荷模擬装置122の制御部122aにおけるフィードバック回路122bの制御ゲインは、負荷模擬装置121の制御部121aにおけるフィードバック回路121bの制御ゲインに比べて低い。これにより、負荷模擬装置121,121の電圧制御における目標値への収束速度を変えることができる。この場合、バッテリ試験装置100では、フィードバック回路121bの制御ゲインが大きい負荷模擬装置121によって、電圧が制御される。そのため、負荷模擬装置121,122の電圧制御が互いに影響し合うのを防止できる。
【0059】
したがって、本実施形態の構成でも、複数の負荷模擬装置121,122を、開閉スイッチ31,32を介してバッテリBに電気的に接続した際に、複数の負荷模擬装置121,122の電圧をバッテリBの電圧と同程度の電圧になるように制御しつつ、複数の負荷模擬装置121,122に、負荷模擬装置が損傷を受けるような大きな電流が流れるのを防止することができる。
【0060】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0061】
前記実施形態1では、バッテリ試験装置1は、複数の負荷模擬装置として、例えば2つの負荷模擬装置21,22を有する。また、前記実施形態2では、バッテリ試験装置100は、複数の負荷模擬装置として、例えば2つの負荷模擬装置121,122を有する。しかしながら、バッテリ試験装置は、3つ以上の負荷模擬装置を有していてもよい。
【0062】
この場合には、バッテリ試験装置は、負荷模擬装置及び開閉スイッチが直列に接続された負荷ユニットを複数有し、該複数の負荷ユニットが電気的に並列に接続されていてもよい。また、バッテリ試験装置において、負荷模擬装置が負荷ユニットに対して電気的に並列に接続されていてもよい。
【0063】
複数の負荷ユニットが電気的に並列に接続されているとともに、一つの負荷ユニットに対して負荷模擬装置が電気的に並列に接続されたバッテリ試験装置の構成例を、
図7に示す。
【0064】
図7に示すように、バッテリ試験装置200は、複数の負荷ユニット11,12,13を備える。負荷ユニット13は、開閉スイッチを有しておらず、負荷模擬装置23を有する。負荷ユニット11,12は、電気的に並列に接続されていて、一つの負荷ユニット12に対して負荷ユニット13の負荷模擬装置23が電気的に並列に接続されている。したがって、負荷ユニット12の開閉スイッチ32を閉じた状態にすることで、負荷模擬装置22,23がバッテリBに電気的に接続される。
【0065】
図7に示す例では、例えば、負荷模擬装置22,23の制御分解能が、負荷模擬装置21の制御分解能に比べて低い。これにより、開閉スイッチ31,32によって複数の負荷模擬装置21,22,23をバッテリBと電気的に接続した際に、負荷模擬装置21,22,23の電圧制御が互いに影響し合うことを防止できる。
【0066】
なお、
図7に示す例において、負荷模擬装置21,22の制御分解能が負荷模擬装置23の制御分解能に比べて低くてもよいし、負荷模擬装置21,23の制御分解能が負荷模擬装置22の制御分解能に比べて低くてもよい。
【0067】
図7に示す例において、3つ以上の負荷ユニットが電気的に並列に接続されていてもよいし、2つ以上の負荷模擬装置が、負荷ユニットの負荷模擬装置に対して電気的に並列に接続されていてもよい。また、複数の負荷ユニットの負荷模擬装置に対して、負荷模擬装置が電気的に並列に接続されていてもよい。
【0068】
また、上述のバッテリ試験装置の構成は、実施形態2の構成に適用してもよい。
【0069】
上述のように、バッテリ試験装置が3つ以上の負荷模擬装置を有する場合には、いずれか一つの負荷模擬装置に比べて他の負荷模擬装置の制御精度が低下していれば、本発明の作用効果が得られる。
【0070】
前記実施形態1では、負荷模擬装置12の制御分解能は、負荷模擬装置11の制御分解能よりも低い。また、前記実施形態2では、負荷模擬装置122の制御ゲインは、負荷模擬装置121の制御ゲインよりも低い。負荷模擬装置は、開閉スイッチが閉じる前後の所定期間だけ、制御分解能や制御ゲインが低下するように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、バッテリを試験するバッテリ試験装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1、100、200 バッテリ試験装置
11、12、13、111、112 負荷ユニット
21、22、23、121、122 負荷模擬装置
21a、22a、23a、121a、122a 制御部
31、32 開閉スイッチ
121b、122b フィードバック回路
150 フィードバックループ
151 増幅器
B バッテリ