(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046986
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】RFIDラベル
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20220316BHJP
G09F 3/00 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
G06K19/077 304
G09F3/00 M
G06K19/077 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152663
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 博美
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 彰
(72)【発明者】
【氏名】榎谷 幸敏
(72)【発明者】
【氏名】名取 智基
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基材と、基材上のアンテナと、アンテナ上のICチップと、基材とアンテナとの間の脱離層と、を備えるRFIDラベルを提供する。
【解決手段】RFIDラベル11は、基材101と、基材101上のアンテナ103と、アンテナ103上のICチップ105と、基材101とアンテナ103との間の脱離層102と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上のアンテナと、
前記アンテナ上のICチップと、
前記基材と前記アンテナとの間の脱離層と、を備える、RFIDラベル。
【請求項2】
前記基材は、熱収縮性または非熱収縮性のプラスチックフィルムである、請求項1に記載のRFIDラベル。
【請求項3】
前記脱離層は、温水またはアルカリ水溶液に可溶な樹脂成分を含む、請求項1または請求項2に記載のRFIDラベル。
【請求項4】
前記アンテナと前記ICチップとの間の接合層をさらに備え、前記接合層は脱離性である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のRFIDラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RFIDラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)技術を備えたラベル(RFIDラベル)を商品に装着することが検討されている。
【0003】
RFID技術は、商品の識別情報が書き込まれたICチップから非接触通信によって情報を送受信する技術である。このようなRFID技術を用いることにより、商品の製造、管理、流通および小売等の様々な場面において、商品を特定することが容易になる。
【0004】
たとえば特許文献1には、ラベルとして用いることが可能なICタグ付き包装体が記載されている。
【0005】
特許文献1に記載のICタグ付き包装体は、プラスチックフィルムおよび金属フレーク層を有する積層体の金属フレーク含有層よりも内側にICタグが設置されており、積層体のJIS K7361-1:1997に準拠して測定した全光線透過率が10.0%以下であり、金属フレークはノンリーフィングタイプであり、平均長さが1~10μmであり、当該平均長さと金属フレークの平均厚みとの比(平均長さ/平均厚み)が25~100とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、たとえばPETボトル等のプラスチック製品が商品に広く利用されている。省資源的な観点や環境的な観点等から、PETボトル等のプラスチック製品をリサイクルすることが強く求められている。
【0008】
プラスチック製品の中でも特にPETボトルのリサイクルは既に構築されている。しかしながら、商品情報の表示等のためにプラスチック製のラベルがPETボトルの胴部に装着されることがあるが、ラベルのリサイクルまでは未だ至っていない。
【0009】
したがって、特許文献1に記載のICタグ付き包装体を用いたラベルをリサイクルする方法も未だ構築されていない。そもそも特許文献1にはICタグ付き包装体を用いたラベルのリサイクルという概念については記載も示唆もされていない。
【0010】
従来のラベルは使用後に燃焼して廃棄されるのが現状となっている。そのためリサイクルが可能なRFIDラベルが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここで開示された実施形態によれば、基材と、基材上のアンテナと、アンテナ上のICチップと、基材とアンテナとの間の脱離層と、を備えるRFIDラベルを提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
ここで開示された実施形態によれば、リサイクルが可能なRFIDラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態のRFIDラベルの一部の模式的な拡大平面図である。
【
図2】
図1のII-IIに沿った模式的な断面図である。
【
図3】実施形態のRFIDラベルの他の一例の模式的な断面図である。
【
図4】(a)~(h)は、実施形態のRFIDラベルのリサイクル方法の一例を図解するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<RFIDラベル>
図1に、実施形態のRFIDラベル11の一部の模式的な拡大平面図を示す。
図2に、
図1のII-IIに沿った模式的な断面図を示す。
【0015】
実施形態のRFIDラベル11は、たとえば、商品のPETボトル等の容器の周囲に熱収縮によりまたは熱非収縮により巻き付いて装着される巻き付きラベル、または商品のPETボトル等の容器の外周面への貼り付けによって装着されるタックラベル等として用いることができる。
【0016】
図1および
図2に示すように、実施形態のRFIDラベル11は、基材101と、基材101上の脱離層102と、脱離層102上のアンテナ103と、アンテナ103上の接合層104と、接合層104上のICチップ105とを備えている。
【0017】
<基材>
基材101は、少なくとも、脱離層102、アンテナ103およびICチップ105を支持することが可能な基材である。
【0018】
基材101に含まれる樹脂としては、たとえば、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等)、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体等)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂(ナイロン等)、アラミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、またはアクリル系樹脂等を用いることができる。基材101は、これらの樹脂の1種類を含んでいてもよく、2種類以上を含んでいてもよい。
【0019】
基材101のリサイクルの観点からは、基材101に含まれる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、またはポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)を用いることが好ましく、PETを用いることがより好ましい。PETは、ジカルボン酸成分の主成分としてテレフタル酸を含み、ジオール成分の主成分としてエチレングリコールを含むポリエステル樹脂である。また、PETは、他の成分として、たとえば、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、またはナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸を含んでいてもよく、たとえば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、または1,4-シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分を含んでいてもよい。
【0020】
RFIDラベル11が、たとえば巻き付きラベルとして用いられる場合には、基材101は熱収縮性または非熱収縮性のプラスチックフィルムであってもよい。基材101が熱収縮性のプラスチックフィルムである場合には、たとえば、筒状のRFIDラベル11を容器の外周に嵌め込んだ後に熱をかけることによって、RFIDラベル11を容器の外周を取り囲むように装着することが可能となる。基材101が非熱収縮性のプラスチックフィルムである場合にはたとえば、帯状のRFIDラベル11を容器の外周に巻き付けた後にRFIDラベル11の両端を貼り合わせることによって、RFIDラベル11を容器の外周に装着することが可能となる。
【0021】
RFIDラベル11が、たとえばタックラベルとして用いられる場合には、基材101は非熱収縮性のプラスチックフィルムであってもよい。
【0022】
基材101は、1層からなる単層のプラスチックフィルムであってもよく、2層以上からなる多層のプラスチックフィルムであってもよい。
【0023】
<脱離層>
脱離層102は、基材101とアンテナ103との間に位置し、任意の脱離用溶剤に可溶な層である。
【0024】
脱離用溶剤は、脱離層102を構成する樹脂成分を溶解可能または膨潤可能な液体である。脱離層102を構成する樹脂成分の種類によって適宜選択可能である。
【0025】
脱離用溶剤としては、たとえば、有機溶剤;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)若しくはノルマルプロピルアルコール(NPA)等のアルコール、またはこれらの1種以上のアルコールを含む水溶液;親水性のアルコール界面活性剤を含む水溶液、酸水溶液、アルカリ水溶液、または温水等を用いることができる。
【0026】
安全性の観点から、脱離用溶剤としては、温水またはアルカリ水溶液を用いることが好ましく、さらに脱離層102の意図しない分解を抑制する観点を考慮すると、脱離用溶剤としては、アルカリ水溶液を用いることがより好ましい。
【0027】
脱離層102が温水に可溶であるとは、脱離層102を2つの層に挟み込んだ積層構造体(縦×横:1cm×1cm)を85℃の温水中に浸漬させて15分間攪拌させた際に、2つの層が分離された状態となることを意味する。また、脱離層102がアルカリ水溶液に可溶であるとは、脱離層102を2つの層に挟み込んだ積層構造体(縦×横:1cm×1cm)を85℃の1.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液(すなわち、水酸化ナトリウム水溶液の全体質量の1.5%が水酸化ナトリウム)に浸漬して15分間攪拌させた際に、2つの層が分離された状態となることを意味する。なお、これらの場合の攪拌速度は、攪拌容積にもよるが、たとえば1000rpm程度とすることができる。
【0028】
温水に可溶な脱離層102としては、たとえば、ポリエステル系樹脂を主成分とする層を用いることができる。
【0029】
アルカリ水溶液に可溶な脱離層102としては、たとえば、カルボジイミド系硬化剤とポリエステル系樹脂とを含む層を用いることができる。
【0030】
脱離層102におけるカルボジイミド系硬化剤(X)とポリエステル系樹脂(Y)との固形分比(X:Y)は、好ましくは100:4~100:30であり、より好ましくは100:10~100:30であり、特に好ましくは100:20~100:30である。この場合には、脱離層102の耐水性と、基材101への密着性と、アルカリ水溶液への可溶性とが良好となる。
【0031】
また、アルカリ水溶液に可溶な脱離層102としては、たとえば、酸価が200~300(mg-KOH/g)のスチレン-無水マレイン酸系樹脂、酸価が40~150(mg-KOH/g)のロジン-マレイン酸系樹脂、および酸価が40~150(mg-KOH/g)のアクリル酸共重合系樹脂から選択された少なくとも一種のアルカリ可溶性樹脂を含む層を用いることができる。脱離層102上へのアンテナ103の良好な印刷適性と脱離層102のアルカリ水溶液への良好な溶解性とを得る観点からは、アルカリ可溶性樹脂は、樹脂成分全量に対して50~95重量%の割合で含まれていることが好ましく、樹脂成分全量に対して60~85重量%の割合で含まれていることがより好ましい。
【0032】
スチレン-無水マレイン酸系樹脂としては、たとえば、酸価が200~300(mg-KOH/g)のスチレン-無水マレイン酸系樹脂を用いることができる。脱離層102上へのアンテナ103の良好な印刷適性と脱離層102のアルカリ水溶液への良好な溶解性との両立の観点からは、スチレン-無水マレイン酸系樹脂の酸価は、220~295(mg-KOH/g)であることが好ましく、245~290(mg-KOH/g)であることがより好ましく、255~285(mg-KOH/g)であることが特に好ましい。
【0033】
スチレン-無水マレイン酸系樹脂としては、たとえば、スチレンと無水マレイン酸との共重合体であるスチレン-無水マレイン酸共重合体、または当該スチレン-無水マレイン酸共重合体の変性体(たとえば、部分的にエステル化された部分的エステル化物など)等を用いることができる。スチレン-無水マレイン酸共重合体において、スチレンとしては、たとえば、スチレンの他にもα-メチルスチレン等のスチレン系化合物を用いることができる。スチレン-無水マレイン酸共重合体をエステル化する際には、たとえば、メタノール、エタノール、またはプロピルアルコール等のアルコール類を用いることができる。
【0034】
スチレン-無水マレイン酸系樹脂においては、たとえば、スチレンと無水マレイン酸との割合またはエステル化度を適宜調節することによって、スチレン-無水マレイン酸系樹脂の酸価をコントロールすることができる。
【0035】
ロジン-マレイン酸系樹脂としては、たとえば、酸価が40~150(mg-KOH/g)のロジン-マレイン酸系樹脂を用いることができる。脱離層102上へのアンテナ103の良好な印刷適性と脱離層102のアルカリ水溶液への良好な溶解性との両立の観点からは、ロジン-マレイン酸系樹脂の酸価は、45~120(mg-KOH/g)であることが好ましく、90~110(mg-KOH/g)であることがより好ましい。
【0036】
ロジン-マレイン酸系樹脂としては、たとえば、ロジンと無水マレイン酸との付加反応物(たとえば、三塩基酸の付加物)を、多価アルコール(グリセリンなど)と縮合させたエステル化物等を用いることができる。
【0037】
ロジン-マレイン酸系樹脂においては、たとえば、ロジンと無水マレイン酸との割合またはエステル化度を適宜調節することによって、ロジン-マレイン酸系樹脂をコントロールすることができる。
【0038】
アクリル酸共重合系樹脂としては、たとえば、酸価が40~150(mg-KOH/g)のアクリル酸共重合系樹脂を用いることができる。脱離層102上へのアンテナ103の良好な印刷適性と脱離層102のアルカリ水溶液への良好な溶解性との両立の観点からは、アクリル酸共重合系樹脂の酸価は、45~120(mg-KOH/g)であることが好ましく、45~75(mg-KOH/g)であることがより好ましい。
【0039】
アクリル酸共重合系樹脂としては、たとえば、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、アクリル酸又はメタクリル酸と共重合可能なモノマー(共重合性モノマー)との共重合体等を用いることができる。共重合性モノマーとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル];ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレート;N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等のスチレン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;イタコン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有ビニル類[(メタ)アクリル酸を除く];アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有ビニル類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類やジエン類等を用いることができる。共重合性モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0040】
アクリル酸共重合系樹脂においては、たとえば、(メタ)アクリル酸と共重合性モノマーとの割合を適宜調節することによって、アクリル酸共重合系樹脂の酸価を適宜コントロールすることができる。
【0041】
アルカリ水溶液に可溶な脱離層102に用いられるアクリル酸共重合系樹脂としては、たとえば、以下(1)~(4)を具備する樹脂を用いることができる。
(1)第1のガラス転移温度T1を有するアクリル酸共重合系樹脂である第1樹脂を含有する;
(2)上記T1よりも低い第2のガラス転移温度T2を有するアクリル酸共重合系樹脂である第2樹脂を含有する;
(3)脱離層102の見掛けの酸価は、40mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である;
(4)脱離層102に含有される第1樹脂および第2樹脂は、合計で、脱離層102全体の50~95質量%を占める。
【0042】
上記(1)~(4)を具備するアクリル酸共重合系樹脂は、脱離層102上へのアンテナ103の良好な印刷適性と脱離層102のアルカリ水溶液への良好な溶解性とを示す傾向にある。
【0043】
上記(1)および(2)に示されるように、第1樹脂および第2樹脂は、それぞれアクリル酸共重合系樹脂である。アクリル酸共重合系樹脂は、樹脂におけるアクリル酸および/またはメタクリル酸、ならびに共重合モノマーの合計割合が、60モル%以上であることが好ましい。
【0044】
上記(1)および(2)に関し、第1樹脂および第2樹脂の各Tgは、たとえば、アクリル酸共重合樹脂の質量平均分子量(Mm)を調整することにより制御することができる。たとえば、第1樹脂のMmを、第2樹脂のMmよりも大きくすることにより、T1>T2の関係性を具備する第1樹脂および第2樹脂とすることができる。好ましくは、第1樹脂のMmは30000以上90000以下であり、第2樹脂のMmは10000以上30000未満である。
【0045】
上記(1)および(2)に関し、第1樹脂のTgであるT1は、90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。T1の上限値は、たとえば、アクリル酸共重合系樹脂の物性から、120℃程度とすることができる。第2樹脂のTgであるT2は、80℃未満であることが好ましく、75℃以下であることより好ましく、65℃以下であることが特に好ましい。T2の下限値は、たとえば、取扱い容易性の観点から、30℃程度とすることができる。T1およびT2は、たとえば20℃以上の差があることが好ましく、30℃以上の差があることがより好ましく、40℃以上の差があることが特に好ましい。この場合には、脱離層102上へのアンテナ103の印刷適性を向上させることができる傾向にある。
【0046】
上記(3)に関し、脱離層102の見掛けの酸価は、脱離層102に含まれる2種類以上の樹脂からなる混合樹脂の酸価を意味する。脱離層102の見掛けの酸価は、第1樹脂および第2樹脂の各酸価を制御することにより、調整することができる。第1樹脂および第2樹脂の各酸価は、たとえば、(メタ)アクリル酸と共重合性モノマーとの配合割合により調整することができる。
【0047】
上記(3)に関し、脱離層102の見掛けの酸価は、50mgKOH/g以上130mgKOH/g以下であることがより好ましく、55gKOH/g以上125mgKOH/g以下であることが特に好ましい。これらの場合には、脱離層102上へのアンテナ103の印刷適性と脱離層102のアルカリ水溶液への溶解性とを特に向上させることが可能になる。
【0048】
第1樹脂の酸価および第2樹脂の各酸価は、各々、40mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることが好ましい。この場合には、脱離層102の見掛けの酸価を容易に上記(3)のように40mgKOH/g以上150mgKOH/g以下とすることができる。また、第1樹脂の酸価は、第2樹脂の酸価よりも低いことが好ましい。第1樹脂の酸価は60mgKOH/g未満であることが好ましい。また、第2樹脂の酸価は、80mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0049】
上記(4)に関し、脱離層102における第1樹脂および第2樹脂は、合計で、脱離層102全体の70質量%以上95質量%以下を占めることが好ましく、80質量%以上95質量%以下を占めることがより好ましい。これらの場合には、脱離層102のアルカリ水溶液への溶解性と脱離層102上へのアンテナ103の印刷適性とを特に向上させることが可能になる。また、第1樹脂の含有割合と第2樹脂の含有割合とは大きく相違しない方が好ましい。第1樹脂と第2樹脂の2種類の樹脂を含有することによる相乗効果を向上させる観点からは、第1樹脂の含有量と第2樹脂の含有量との比(相対的に含有量の大きい樹脂の含有量/相対的に含有量の小さい樹脂の含有量)は3以下であることが好ましい。
【0050】
脱離層102が脱離用溶剤に対して溶解可能または膨潤可能であることは、たとえば、各種分析技術を用いて確認することができる。たとえば、核磁気共鳴(NMR)、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GCMS)または熱分解ガスクロマトグラフィー(熱分解GCMS)等により、脱離層102内にアクリル酸共重合系樹脂が特定の含有量で存在することを確認することができる。また、脱離層102の酸価は、たとえば、脱離層102を滴定することによって確認することができる。脱離層102の滴定は、たとえば、脱離層102をキシレン・ジメチルホルムアミドの混合溶剤等の滴定用溶剤に溶かし、所定濃度の水酸化カリウム溶液(たとえば0.1mol/Lの水酸化カリウム・エタノール溶液)を用いて電位差滴定した結果に基づいて算出することができる。また、脱離層102が上記Tgを具備する第1樹脂および第2樹脂を含有することは、たとえば、後述のコート層の形成に用いられる組成物を、示差走査熱量分析(DSC)法に供することにより、確認することができる。DSC法は、セイコーインスツルメンツ株式会社製の「DSC6200」を用いて、昇温速度10℃/分の条件で行なうことができる。また、第1樹脂のMmおよび第2樹脂のMmは、たとえばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、確認することができる。
【0051】
上記の第1樹脂および第2樹脂は、メタクリル酸-メチルメタクリル酸共重合体(以下、「MM共重合体」とも記す)であることが好ましい。この場合には、脱離層102のアルカリ水溶液に対する溶解性と脱離層102上へのアンテナ103の印刷適性とを共に顕著に向上させることが可能になる。MM共重合体は、合成してもよく、市販品であってもよい。第1樹脂に好適な市販品としては、三菱レイヨン社製の「ダイヤナールLR-1941」または「ダイヤナールBR-87」等が挙げられる。第2樹脂に好適な市販品としては、BASFジャパン株式会社製の「JONCRYL JDX-C3000」、東亜合成株式会社製の「ARUFON UC3000」、または三菱レイヨン株式会社製の「BR-605」等が挙げられる。なかでも、第1樹脂および第2樹脂としては、「ダイヤナールLR-1941」と「JONCRYL JDX-C3000」との組み合わせを用いることが好ましい。
【0052】
脱離層102は、第1樹脂および第2樹脂に加え、他の成分を含んでいてもよい。好ましい他の成分としては、セルロース誘導体が挙げられる。脱離層102がセルロース誘導体を含む場合には、脱離層102の耐ブロッキング性および密着性等を向上させることが可能になる。
【0053】
脱離層102に含まれるセルロース誘導体としては、たとえば、ニトロセルロース、アセチルセルロース、カルボキシメチルセルロース若しくはその塩、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネート等を用いることができる。脱離層102に含まれるセルロース誘導体としては、ニトロセルロースを用いることが好ましい。脱離層102において、セルロース誘導体は単独でまたは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0054】
脱離層102におけるセルロース誘導体の含有量は、脱離層102の全質量の1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上12質量%以下であることが特に好ましい。これらの場合には、脱離層102の耐ブロッキング性および印刷適性を向上することができる。セルロース誘導体は、35以上380以下の重合度を有することが好ましく、45以上290以下の重合度を有することがより好ましく、55以上110以下の重合度を有することが特に好ましい。これらの場合にも、脱離層102の耐ブロッキング性および印刷適性を向上させることが可能になる。
【0055】
また、脱離層102は、好ましい他の成分として、たとえば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(以下、「VV共重合体」とも記す)を含んでいてもよい。脱離層102がVV共重合体を含むことにより、基材101と脱離層102との密着性をさらに向上することが可能になる。
【0056】
脱離層102におけるVV共重合体の含有量は、脱離層102の全質量の5~20質量%であることが好ましく、8~18質量%であることがより好ましく、9~12質量%であることが特に好ましい。これらの場合には、脱離層102の基材101に対する密着性および脱離層102上へのアンテナ103の印刷適性を向上することができる。脱離層102におけるVV共重合体は、10,000~40,000のMmを有することが好ましく、15,000~35,000のMmを有することがより好ましい。これらの場合に、脱離層102の基材101に対する密着性の向上が顕著となる。
【0057】
上記の脱離層102は、基材101が熱収縮性または非熱収縮性のいずれの場合にも適用可能である。ただ、基材101が熱収縮性である場合には、基材101の熱収縮に追従するという観点からは、脱離層102としては、上記の酸価が40~150(mg-KOH/g)のアクリル酸共重合系樹脂を用いることが好ましく、上記(1)~(4)を具備するアクリル酸共重合系樹脂を用いることがより好ましい。
【0058】
<アンテナ>
アンテナ103は、外部から無線で電波を受信してICチップ105に信号を送信可能であるとともに、ICチップ105からの信号を受信して外部に無線で電波を送信可能である部材である。
【0059】
アンテナ103は、たとえば、銅箔またはアルミニウム箔をプレスで打ち抜く方法、エッチングまたはめっきを利用する方法、金属ペーストをシルクスクリーンにより印刷する方法、インクジェット印刷を利用する方法、または金属線を巻く方法により形成することができる。
【0060】
<接合層>
接合層104は、アンテナ103とICチップ105との間に配置され、アンテナ103とICチップ105との間の信号が通信可能となるように、アンテナ103上にICチップ105を固定するための層である。
【0061】
接合層104は、アンテナ103とICチップ105との間の信号が通信可能であれば、導電性であってもよく、絶縁性であってもよい。
【0062】
接合層104は、脱離性であることが好ましい。この場合には、RFIDラベル11のリサイクル時に、アンテナ103からICチップ105を分離することが可能になる。
【0063】
脱離性である接合層104は、たとえば温水またはアルカリ水溶液等の上記の脱離用溶剤に可溶な層であってもよい。この場合には、RFIDラベル11のリサイクル時に、上記の脱離用溶剤に接合層104を溶解させることによって、アンテナ103からICチップ105を分離することが可能になる。
【0064】
脱離性である接合層104としては、たとえば、脱離層102に用いられる上記の材料に導電性フィラーなどの導電性物質を加えた材料を含む層を用いることができる。導電性フィラーとしては、たとえば、金属、金属酸化物、カーボンブラック、グラファイト、または高分子導電性化合物等を用いることができる。
【0065】
<ICチップ>
ICチップ105は、アンテナ103を介した通信により、外部からの情報を格納可能であるとともに、格納された情報を外部に送信可能な部材である。
【0066】
ICチップ105としては、たとえば、RFID技術に用いられているICチップを用いることができる。
【0067】
<その他の層>
RFIDラベル11は、上述した以外の層または部材をさらに備えていてもよい。たとえば
図3の模式的断面図に示すように、RFIDラベル11は、脱離層102とアンテナ103との間のプライマー層106をさらに備えていてもよい。このようなプライマー層106を設けることにより、脱離層102とアンテナ103との密着性、または脱離層102上へのアンテナ103の印刷適性を向上させることができる。
【0068】
また、RFIDラベル11がタックラベルとして用いられる場合には、RFIDラベル11は、たとえば、基材101の脱離層102が設けられている側と反対側に配置された粘着剤層(図示せず)と、粘着剤層上の剥離フィルム(図示せず)と、を備えていてもよい。
【0069】
<RFIDラベルの製造方法>
RFIDラベル11は、たとえば以下のようにして製造することができる。まず、基材101を準備する。基材101は、たとえば、Tダイ等の押出法、インフレーション法、チューブラ法またはカレンダー法等の方法によってフィルムを成形することにより、必要に応じて、当該フィルムに対してさらに延伸処理を施すことにより準備することができる。
【0070】
次に、基材101の表面上に脱離層102を形成する。脱離層102は、たとえば、脱離層102に含まれる樹脂成分を含む樹脂組成物を基材101の表面上に塗布した後に乾燥または硬化することにより形成することができる。
【0071】
次に、脱離層102上にアンテナ103を形成する。アンテナ103は、たとえば、銅箔またはアルミニウム箔をプレスで打ち抜く方法、エッチングまたはめっきを利用する方法、金属ペーストをシルクスクリーンにより印刷する方法、インクジェット印刷を利用する方法、または金属線を巻く方法により形成することができる。なお、脱離層102とアンテナ103との間にプライマー層106を設ける場合には、たとえば、脱離層102上にプライマー層106を形成した後にアンテナ103を形成することができる。
【0072】
次に、アンテナ103上にICチップ105を設置する。ICチップ105の設置は、たとえば、接合層104によってアンテナ103上にICチップ105を固定することにより行なうことができる。また、RFIDラベル11が、タックラベルとして用いられる場合には、たとえば、基材101の脱離層102が設けられている側と反対側に、粘着剤層および剥離フィルムを形成する。以上により、実施形態のRFIDラベル11を製造することができる。
【0073】
<RFIDラベルのリサイクル方法>
図4(a)~(h)に、実施形態のRFIDラベル11のリサイクル方法の一例を図解する図を示す。以下、
図4(a)~(h)を参照して、実施形態のRFIDラベル11のリサイクル方法について説明する。なお、本例では、RFIDラベル11が熱収縮性の巻き付きラベルである場合について説明する。
【0074】
<PETボトルの回収>
まず、
図4(a)に示すように、PETボトル10を回収ボックス12にて回収する。ここで、PETボトル10の胴部には、たとえば
図1および
図2に示されるような、アルカリ水溶液に可溶な脱離層102、アンテナ103、接合層104およびICチップ105を備えたRFIDラベル11が装着されている。
【0075】
<圧縮>
次に、
図4(b)に示すように、回収されたPETボトルをRFIDラベル11が装着された状態で圧縮することによって、ラベル付きベール20とする。
【0076】
<集積>
次に、
図4(c)に示すように、ラベル付きベール20は、リサイクル工場30に送られて集積される。
【0077】
<ラベルの回収>
次に、
図4(d)に示すように、PETボトル10からRFIDラベル11を分離して回収する。ここで、RFIDラベル11とともに通常のラベル40も回収され得る。通常のラベル40は、脱離層102を備えていない点、アンテナ103と接合層104とICチップ105とを備えていない点、または脱離層102とアンテナ103と接合層104とICチップ105とを備えていない点で、RFIDラベル11と相違している。
【0078】
PETボトル10からのRFIDラベル11の分離は、たとえば、リサイクル工場30にて、ラベル付きベール20のPETボトル10からRFIDラベル11を取り外すこと等により行なうことができる。
【0079】
RFIDラベル11が分離されたPETボトル10は、たとえば、既存のPETボトルのリサイクル工程でリサイクル可能である。
【0080】
<ソーティング>
次に、
図4(e)に示すように、RFIDラベル11と通常のラベル40とをソーティングすることによって、通常のラベル40からRFIDラベル11を分別して回収する。RFIDラベル11から分別して回収された通常のラベル40は、たとえばサーマルリサイクル工程でリサイクルに利用することが可能である。
【0081】
<破砕>
次に、
図4(f)に示すように、予備加熱後のRFIDラベル11を破砕機70により破砕してRFIDラベル片71を作製する。予備加熱後のRFIDラベル11を破砕する方法は、たとえば、当該破砕後により生成するRFIDラベル片71の大きさが予備加熱後のRFIDラベル11の大きさよりも小さくなる方法とすることができる。たとえば、予備加熱後のRFIDラベル11は、後述するアルカリ脱離において、RFIDラベル片からアンテナ片を効率的に分離することができる程度の大きさ(たとえば数cm角)に破砕され得る。なお、RFIDラベル片は、RFIDラベル11の基材101が破砕されることによって生成した基材片と、RFIDラベル11の脱離層102が破砕されることによって生成した脱離層片と、RFIDラベル11のアンテナ103と接合層104とICチップ105とが破砕されることによって生成したアンテナ含有片との積層体を含んでいる。
【0082】
<アルカリ脱離>
次に、
図4(g)に示すように、RFIDラベル片71から金属含有片をアルカリ脱離により分離する。アルカリ脱離は、たとえば、熱アルカリ槽82中の80℃~90℃程度のアルカリ水溶液80にRFIDラベル片71を30秒~20分程度浸漬させ、アルカリ水溶液80にRFIDラベル片71の脱離層片を溶解させることにより行なうことができる。なお、接合層104がアルカリ水溶液に可溶である場合には、当該アルカリ脱離の際に接合層104が溶解して、アンテナ含有片からICチップ105をさらに分離することも可能になる。
【0083】
RFIDラベル片71からアンテナ含有片を分離した後のアルカリ水溶液80は廃液として廃棄処理されてもよく、アルカリ脱離用のアルカリ水溶液80として再利用されてもよい。
【0084】
アルカリ水溶液80としては、たとえば、アルカリ性物質を含有するアルカリ性の水溶液等を用いることができる。アルカリ水溶液80としては、たとえば、水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ金属水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム(Na2CO3)等のアルカリ金属炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)等のアルカリ金属炭酸水素塩の水溶液、またはアンモニア水等を用いることができる。
【0085】
アルカリ水溶液80中のアルカリ性物質の濃度は、脱離能、操作性、または作業性等を損なわない範囲で適宜選択することができる。アルカリ水溶液80中のアルカリ性物質の濃度は、たとえば0.1~10重量%程度、好ましくは0.5~5重量%、さらに好ましくは1~3重量%程度である。
【0086】
<基材片・アンテナ含有片の回収>
上述のアルカリ脱離により、RFIDラベル片71は、基材片91とアンテナ含有片93とに分離される。その後、
図4(h)に示すように、アルカリ水溶液80から、基材片91とアンテナ含有片93とを分離して回収する。
【0087】
基材片91とアンテナ含有片93とを分離する方法としては、たとえば、金属探知、X線、紫外線、可視光線、近赤外線、マイクロ波等のエネルギー線を照射することによる分離、風選分離、比重分離、または目視による分離等の方法を用いることができる。
【0088】
その後、基材片91は、たとえばペレット等のプラスチック製品の製造用のプラスチック原料としてリサイクルすることが可能となる。また、新しいラベルの基材の原料に基材片91を混ぜ込むことによって、熱収縮性のラベルとしてリサイクルすることも可能となる。
【0089】
また、アンテナ含有片93は、たとえば金属等としてリサイクルすることが可能となる。
【0090】
このように、実施形態のRFIDラベル11においては、基材101とアンテナ103との間の脱離層102を脱離用溶剤で溶解することによって、基材101とアンテナ103を分離して回収することが可能であるため、少なくとも基材101およびアンテナ103をリサイクルすることが可能である。
【0091】
以上のように実施形態について説明を行なったが、上述の実施形態の各構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0092】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
10 PETボトル、11 RFIDラベル、12 回収ボックス、20 ラベル付きベール、30 リサイクル工場、40 通常のラベル、70 破砕機、71 RFIDラベル片、80 アルカリ水溶液、82 熱アルカリ槽、91 基材片、93 アンテナ片、101 基材、102 脱離層、103 アンテナ、104 接合層、105 ICチップ、106 プライマー層。