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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047020
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】電気機械変換器
(51)【国際特許分類】
   H04R 13/00 20060101AFI20220316BHJP
   H04R 25/00 20060101ALI20220316BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20220316BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
H04R13/00
H04R25/00 F
H04R1/00 317
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152715
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 行志
【テーマコード(参考)】
5D017
5D021
5D107
【Fターム(参考)】
5D017AB12
5D021BB05
5D107AA13
5D107BB08
5D107CC09
5D107DD03
(57)【要約】
【課題】部品製作における困難さを緩和しつつ電気機械変換器を小型化する技術の提供。
【解決手段】駆動部1は、1対のヨーク10の内側にコイル22及び2対の磁石20が固定された一体的な構造部と、その内部空間を貫くように配置されるアーマチュア25と、これらの間に配置される2対のバネ28とで構成される。ヨーク10は、外側ヨーク11及び内側ヨーク12を一体化して構成され、各曲げ部11bの端部同士が最終的に固定される。外側ヨーク11は、バネ28の反発力が作用するバネ係合部11cに所望の強度を確保できる厚さに設定され、内側ヨーク12は、ヨーク10を通過する磁束を飽和させない所定の断面積を確保する上での厚さの不足分を補う厚さに設定される。これにより、ヨーク部品の製作が容易となり、磁束を飽和させることがなく突出寸法が抑制されたヨーク10を製作することで、駆動部ひいては電気機械変換器を小型化することが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなす磁石と、
対をなし、各々が複数のヨーク部品を平板状の部位にて相互に重ね合わせてなる、前記磁石による磁束を導くヨークと、
電気信号が供給される空芯のコイルと、
対をなす前記ヨークの内側に前記磁石と前記コイルとが一体的に配置されてなる構造部の内部空間を貫いて配置されるアーマチュアと、
対をなし、各々が前記構造部と前記アーマチュアとに係合する弾性部材と
を備えた電気機械変換器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械変換器において、
各前記ヨークは、
いずれか1つの前記ヨーク部品に、前記ヨーク部品の重ね合わせ方向である第1方向に直交する所定の第2方向における両側面の対称となる位置から突出して前記第1方向に屈曲し所定の長さで延び出た屈曲部を有し、
対をなす前記ヨークは、
前記屈曲部の端面において相互に固定されることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項3】
請求項2に記載の電気機械変換器において、
各前記ヨークは、
前記構造部において外側に配置されるヨーク部品の前記第1方向に直交するいずれかの方向における両側面の所定の位置から突出した係合部を有し、
前記弾性部材は、
前記係合部に係合することを特徴とする電気機械変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を機械振動に変換する電気機械変換器に関し、特に、いわゆるバランスドアーマチュア型の構造のうち、アーマチュアに係合させるバネの復元力を利用する構造を有した電気機械変換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電気機械変換器においては、ヨーク、磁石、コイルが一体的に配置された構造部とその内部空間を貫くアーマチュアとの間にバネが配置されて駆動部が構成され、コイルに電流が流れた際にアーマチュアに作用する磁石の磁気力とバネの復元力とのバランスによりアーマチュアが一定範囲内で変位することで、駆動部がアーマチュアと構造部との間に相対振動を生じさせる。例えば、構造部とアーマチュアとの間に2対のバネが配置された電気機械変換器(特許文献1を参照。)や、1対のバネが配置された電気機械変換器(特許文献2を参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-139041号公報
【特許文献2】特開2018-186378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、構造部の一部をなすヨークは、軟磁性材料で形成され、磁石で発生する磁束を導く役割を有している。軟磁性材料は、その特性として飽和磁束密度が決まっており、飽和磁束密度を超えると磁束が飽和して頭打ちの状態となりヨークとしての役割を果たさなくなることから、ヨークの断面積は、磁束を飽和させない範囲内の大きさに設計する必要がある。
【0005】
上述した先行技術は、いずれも2つのヨークでアーマチュアを両側からバネを介して挟み込んだ上で各ヨークを接合して固定させた構造を有している。つまり、これらの先行技術におけるヨークは、磁束を導くこと(使用時の役割)に加え、バネを介してアーマチュアを位置決めすること及び2つのヨークを固定させて駆動部を完成させること(製造時の役割)をその役割としている。
【0006】
通常、板材を加工して部品を製作する場合には、板材の厚さが厚くなると抜きや曲げの最小幅が自ずと大きくなる。上述した先行技術におけるヨークは、使用時の役割を踏まえると、磁束が通過する部位の断面積を所望の大きさで確保できる程度の厚さにする必要がある。しかしながら、この厚さの板材に対し、さらに製造時の役割を果たせるよう曲げ加工を施す設計をすると、部位の形状によっては製作が困難になる、或いは、曲げ加工が施される部位の寸法が必要以上に大きくなり結果として電気機械変換器全体の寸法が大きくなる、といった課題が生じる。
【0007】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、電気機械変換器の部品製作における困難さを緩和しつつ電気機械変換器を小型化する技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の電気機械変換器を採用する。なお、以下の括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
本発明の電気機械変換器は、対をなす磁石と、対をなし、各々が複数のヨーク部品を平板状の部位にて相互に重ね合わせてなる、磁石による磁束を導くヨークと、電気信号が供給される空芯のコイルと、対をなすヨークの内側に磁石とコイルとが一体的に配置されてなる構造部の内部空間を貫いて配置されるアーマチュアと、対をなし、各々が構造部とアーマチュアとに係合する弾性部材とを備えている。
【0010】
この態様の電気機械変換器においては、各ヨークは、平板状の部位を有するヨーク部品を複数個重ね合わせて構成され、複数の平板状の部位の厚さの合計により、ヨークを通過する磁束を飽和させることのない所定の断面積が確保される。このようなヨーク部品は、それぞれがヨークの厚さよりも薄い板材で形成されるため、曲げ加工を施して他の部位を形成する際に、ヨークと同じ厚さの板材に曲げ加工を施す場合と比較して、製作が容易となり、また、曲げ加工を施すことにより突出する寸法が小さく抑制される。したがって、この態様の電気機械変換器によれば、製作における困難さを緩和しながら磁束を飽和させることのないヨークをより小さく製作することができ、電気機械変換器の小型化に寄与することが可能となる。
【0011】
好ましくは、上記の電気機械変換器において、ヨークは、いずれか1つのヨーク部品に、ヨーク部品の重ね合わせ方向である第1方向に直交する所定の第2方向における両側面の対称となる位置から突出して第1方向に屈曲し所定の長さで延び出た屈曲部を有し、対をなすヨークは、屈曲部の端面において相互に固定される。
【0012】
この態様の電気機械変換器においては、いずれかのヨーク部品に屈曲部を有している。屈曲部は、当該ヨーク部品をなす板材に曲げ加工を施して形成されたものであるが、この板材はヨークの厚さよりも薄いため、ヨークと同じ厚さの板材と比較して、曲げ加工を施し易く、また、曲げ加工を施すことにより突出する寸法が小さく抑制される。したがって、この態様の電気機械変換器によれば、部品製作における困難さを緩和しつつ電気機械変換器を小型化することができる。
【0013】
より好ましくは、上記の電気機械変換器において、各ヨークは、構造部において外側に配置されるヨーク部品の第1方向に直交するいずれかの方向における両側面の所定の位置から突出した係合部を有し、弾性部材は、係合部に係合する。
【0014】
この態様の電気機械変換器によれば、ヨークが構造部の一部として一体化される際に外側に配置されるヨーク部品に弾性部材が係合する部位が設けられるため、そのような部位が仮に構造部において内側に配置されるヨーク部品に設けられるとした場合と比較して、弾性部材の長さをより長くすることができ、弾性部材が第1方向に変位可能とされる所定の変位量を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、電気機械変換器の部品製作における困難さを緩和しつつ電気機械変換器を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の電気機械変換器における駆動部を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の電気機械変換器におけるヨークを示す斜視図である。
図3】第1実施形態の電気機械変換器における駆動部を示す分解斜視図である。
図4】第1実施形態を比較例と対比させて説明する図である。
図5】第2実施形態の電気機械変換器における駆動部を示す斜視図である。
図6】第2実施形態の電気機械変換器におけるヨークを示す斜視図である。
図7】第2実施形態の電気機械変換器における駆動部を示す分解斜視図である。
図8】第2実施形態を比較例と対比させて説明する図である。
図9】第3実施形態の電気機械変換器における駆動部を示す斜視図である。
図10】第3実施形態の電気機械変換器における側板を示す斜視図である。
図11】第3実施形態の電気機械変換器における駆動部を示す分解斜視図である。
図12】第4実施形態の電気機械変換器における駆動部を示す斜視図である。
図13】第4実施形態の電気機械変換器における側板を示す斜視図である。
図14】第4実施形態の電気機械変換器における駆動部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の各実施形態は好ましい例示であり、本発明はこの例示に限定されるものではない。また、説明の便宜のため、構成に関する方向を各図面の紙面上の方向に沿って、上、下、左、右として示す場合がある。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の電気機械変換器における駆動部(駆動部1)を示す斜視図である。駆動部1は、1対(2つ)のヨーク10と、2対(4つ)の磁石20と、コイル22と、アーマチュア25と、2対(4つ)のバネ28とで構成される。
【0019】
各ヨーク10は、外側の部位をなす外側ヨーク11及び内側の部位をなす内側ヨーク12からなり、外側ヨーク11を外側にした状態で上下に配置される。コイル22は、上下に配置された1対のヨーク10(より正確には、内側ヨーク12)の内側かつ左右方向の中央部に固定される。磁石20は、上下で対をなし、2対の磁石20が1対のヨーク10(より正確には、内側ヨーク12)の内側かつ左右の両端部に固定される。このように一体的に配置されるヨーク10、磁石20、コイル22が、構造部を構成する。
【0020】
アーマチュア25は、構造部の内部空間を貫くようにして配置される。バネ28は、上下で対をなし、2対のバネ28が左右の両端部において構造部(より正確には、外側ヨーク11)とその内部空間を貫通するアーマチュア25との間に配置される。その上で、1対のヨーク10(より正確には、外側ヨーク11)の端部同士が固定され、構造部にアーマチュア25、バネ28が加わって駆動部1を構成する。
【0021】
2対の磁石20は、相互に逆向きに磁化されている。例えば、右側に配置される1対の磁石20は下向きに磁化されており、左側に配置される1対の磁石20は上向きに磁化されている。そのため、コイル22に電流が流れる(電気信号が供給される)と、アーマチュア25の左右方向の両側の領域において相互に逆向きの磁束が発生し、これらの磁束が1対のヨークにより閉回路状に導かれて、構造部(ヨーク10、磁石20、コイル22)とアーマチュア25とが磁気回路を構成する。そして、磁石20の磁気力が作用してアーマチュア25が変位すると、この変位に応じたバネ28の復元力がアーマチュア25に作用して、構造部とアーマチュアとの間で相対振動が生じることとなる。
【0022】
なお、ヨーク10の構成や、駆動部1をなす各構成部品間における接続関係については、別の図面を用いて詳しく後述する。また、以下の説明においては、2対の磁石20がコイル22を挟む方向を「X方向」とし、対をなすバネ28がアーマチュア25を挟む方向を「Z方向」とし、X方向及びZ方向のいずれに対しても直交する方向を「Y方向」として示すこととする。
【0023】
図2は、ヨーク10を示す斜視図である。ヨーク10は、上述したように外側ヨーク11及び内側ヨーク12からなり、これらが圧接されレーザ溶接等により固定されて構成される。外側ヨーク11及び内側ヨーク12は、例えば、45%Niのパーマロイ等の軟磁性材料を用いて形成される。
【0024】
外側ヨーク11は、磁束が通過することとなる磁束通過部11aと、1対のヨーク10を固定させる端面を有する曲げ部11bと、バネ28を係合させるバネ係合部11cとを有する。磁束通過部11aは、平板矩形状の部位である。曲げ部11bは、磁束通過部11aをなす板材に曲げ加工を施して形成された部位で、磁束通過部11aのY方向の両側に2箇所ずつ設けられており、磁束通過部11aのY方向の両側面から突出してZ方向に屈曲して全て同じ長さで延び出ている。バネ係合部11cは、磁束通過部11aのX方向の両側に1箇所ずつ設けられており、バネ28に係合する面は、バネ28に作用する力のトルクを小さく抑制できるような形状に形成されている。
【0025】
内側ヨーク12は、XY平面における形状が外側ヨークの磁束通過部11aと略同一の平板矩形状の部位であり、磁束通過部11aに重ね合わされ、これと一体化されて磁束が通過することとなる。磁石20からヨーク10に導かれる磁束はX方向に通過するため、磁束通過部11a及び内側ヨーク12のYZ平面の断面積は、磁束を飽和させることのない所定の大きさに設計されている。ここで、Y方向の寸法には、駆動部1(電気機械変換器)全体としての設計に応じた制約が生じることから、断面積を所定の大きさとするには、Z方向の寸法、すなわち磁束通過部11a及び内側ヨーク12の厚さを調整して、ヨーク10全体としての所定の厚さを確保しなければならない。一方で、バネ係合部11cにはバネ28の反発力が終始作用し、これによりレーザ溶接等で固定される曲げ部11bの端部にもバネ28の反発力が終始伝達されることとなるため、これらの部位にはそれぞれに所望の強度を確保しなければならない。
【0026】
そこで、本実施形態においては、磁束通過部11aの厚さはバネ係合部11cに所望の強度を持たせることができる範囲内で薄くし、所定の厚さに足りない分を内側ヨーク12の厚さで補っている。これにより、ヨーク10全体としての所定の厚さを確保し、バネ係合部11c及び曲げ部11bのそれぞれに十分な強度を確保しながらも、曲げ部11bを曲げ加工により形成することで生じるヨーク10のY方向の突出寸法を小さく抑制することができる。
【0027】
図3は、駆動部1を示す分解斜視図である。なお、図3においては、図面の視認性を高めて発明の理解を促進すべく、外側ヨークの磁束通過部11aと内側ヨーク12との接続、及び、Z方向の両端に配置された外側ヨークの各曲げ部11b同士の接続を示す一点鎖線の図示を省略している。
【0028】
外側ヨーク11の磁束通過部11aと内側ヨーク12とは、圧接されてレーザ溶接等で固定される。また、内側ヨーク12のX方向の両端部には、磁石20が1つずつ接着固定され、内側ヨーク12のX方向の中央部には、空芯のコイル22が接着固定される。そして、コイル22のY方向の両端部には、コイル端子23が接着固定され、コイル巻線の巻き始めと巻き終わりがそれぞれコイル端子23に半田付けされる。
【0029】
その上で、構造部の一部をなすコイル22に形成されたX方向に貫通する孔を貫くようにして、アーマチュア25が配置される。アーマチュア25は、例えば、外側ヨーク11や内側ヨーク12と同じく45%Niのパーマロイ等の軟磁性材料を用いて形成されており、そのX方向の両端よりやや内側におけるY方向の両端部には、凹状に切り欠かれたバネ係合部25aがそれぞれ形成されている。バネ28は、例えば、バネ用SUS301材等のステンレス鋼材を用いた板状部材を折り曲げ加工して形成されており、Z方向に対をなす2対のバネ28のうち、1対は、X方向の一端部(例えば、右側)において外側ヨーク11とアーマチュア25との間に配置されて両者のバネ係合部11c,25aに係合し、他の1対は、X方向の他端部(例えば、左側)において外側ヨーク11とアーマチュア25との間に配置されて両者のバネ係合部11c,25aに係合する。最後に、Z方向の両端に配置された各外側ヨーク11に設けられた4か所の曲げ部11bが相互に圧接されて、レーザ溶接等で固定されると、駆動部1が完成する。
【0030】
駆動部1においては、2対のバネ28は、Z方向に所定の変位量をもって外側ヨーク11とアーマチュア25との間に挟まれる。また、アーマチュア25は、Z方向に対をなすバネ28からの反発力を受け、これらの反発力が釣り合う位置に、構造部との間に適当な空隙を置いて保持される。バネ係合部11cは外側ヨーク11に設けられているが、これにより、バネ係合部が仮に内側ヨークに設けられるとした場合と比較して、バネ28に必要とされる板状部材の長さをより長くすることができ、バネ28がZ方向に変位可能とされる所定の変位量を確保することができる。
【0031】
なお、駆動部1は、図示されていないハウジングに収容される。そして、アーマチュア25の両端部がハウジングに固定され、コイル端子23から延出する図示されていない配線がハウジングに設けられた電気端子と接続されると、電気機械変換器が完成する。このような電気機械変換器は、振動子として利用される。例えば、使用者の耳甲介腔に装用する軟骨伝導補聴器に適用すれば、電気機械変換器で生じる振動をハウジングを介して耳軟骨に伝達することが可能となる。この構成は駆動部1を備えた電気機械変換器の一例に過ぎず、電気機械変換器の用途によっては、駆動部1がさらなる構成部品とともにハウジングに収容される場合もある。あるいは、ハウジングに収容されずに用いられる場合もある。
【0032】
図4は、第1実施形態を比較例と対比させて説明する図である。図4中(A)は、比較例としての電気機械変換器におけるヨーク10´を示す斜視図であり、図4中(B)は、ヨーク10´を第1実施形態のヨーク10と並べて示す側面図である。
【0033】
比較例のヨーク10´は、実施例のヨーク10において2つのヨーク部品(外側ヨーク11及び内側ヨーク12)の厚さを合計して確保した磁束通過部の厚さを、1つの部品で確保しようとするものである。そのため、ヨーク10´は、所定の厚さT´を有した1枚の板材に加工を施して形成されており、磁束通過部10a´のY方向の両側に2箇所ずつ曲げ部10b´が設けられるとともに、X方向の両側に1箇所ずつバネ係合部10c´が設けられている。
【0034】
曲げ部10b´は、厚さT´の板材に曲げ加工を施して形成されるため、その先端部におけるY方向の寸法が厚さT´に等しい。したがって、曲げ部10b´には大きな強度が確保されることとなるが、これほどの強度は必要とされていない。また、曲げ部10b´の磁束通過部10a´より上方に突出する部位の高さH´は、厚さT´より小さく設計されているが、このような形状を形成することは非常に困難である。ヨーク10´におけるY方向の突出寸法W2´は、磁束通過部10a´におけるY方向の寸法W1´に厚さT´を曲げ加工する上で必要とされる寸法を加えた大きさとなる。
【0035】
これに対し、第1実施形態のヨーク10においては、バネ係合部11cに所望の強度を持たせることができる厚さT1の板材で形成された外側ヨークの磁束通過部11aに、厚さT2に形成された内側ヨーク12が固定されており、厚さの不足分が内側ヨーク12の厚さで補われている。このようなヨーク10によれば、磁束が通過する部位の断面積(図中の網掛け部分)を、比較例のヨーク10´と同じ大きさで確保し(W1×T=W1´×T´)、バネ係合部11c及び曲げ部11bのそれぞれに十分な強度を確保しながらも、Y方向の突出寸法W2は、曲げ加工を施す板材の厚さT1を薄くした分だけ小さく抑えることができる(W2<W2´)。また、曲げ部11bの磁束通過部11aより上方に突出する部位の高さHを曲げ加工が施される板材の厚さT1より大きく設計し易くなり、曲げ部11bの形成が容易となる。したがって、第1実施形態によれば、部品製作における困難さを緩和しつつ、駆動部ひいては電気機械変換器を全体として小型化することが可能となる。
【0036】
なお、ここでは発明の理解を容易とするために、実施形態と比較例とで、磁束通過部の断面をなす幅及び厚さが同一であるという想定の下で説明を行ったが(W1=W1´かつT=T´)、駆動部1(電気機械変換器)全体としての設計を踏まえた上で、実施形態における幅や高さを比較例と異なる大きさとしながら(例えば、厚さをTより少し大きくし、それに応じて幅をW1より少し小さくする等)、同一の断面積を確保することも可能である。また、第1実施形態のヨーク10は2つのヨーク部品(外側ヨーク11及び内側ヨーク12)から構成されているが、ヨークを構成するヨーク部品の個数はこれに限定されない。例えば、曲げ部を有しない内側ヨークが軟磁性材料を用いて形成された2以上のヨーク部品から構成され、ヨークとしては合計で3以上の複数のヨーク部品から構成されてもよい。
【0037】
〔第2実施形態〕
図5は、第2実施形態の電気機械変換器における駆動部(駆動部2)を示す斜視図である。駆動部2は、1対(2つ)のヨーク30と、2対(4つ)の磁石40と、コイル42と、アーマチュア45と、1対(2つ)のバネ48とで構成される。すなわち、第2実施形態は、駆動部を構成するバネが1対である点において上述した第1実施形態と大きく異なっており、これに伴って他の構成部品(ヨーク、アーマチュア等)の形状や大きさも第1実施形態におけるものとは異なっている。
【0038】
なお、本実施形態においてヨーク、アーマチュア、バネに用いられる材料は、第1実施形態と同様である。第1実施形態と共通する点については、説明を適宜省略する。
【0039】
各ヨーク30は、外側の部位をなす外側ヨーク31及び内側の部位をなす内側ヨーク32からなり、外側ヨーク31を外側にした状態でZ方向の両端に配置される。コイル42は、1対のヨーク30(より正確には、内側ヨーク32)の内側かつX方向の中央部に固定される。2対の磁石40は、1対のヨーク30(より正確には、内側ヨーク32)の内側かつX方向の両端部に固定される。アーマチュア45は、ヨーク30、磁石40、コイル42が一体的に配置されてなる構造部の内部空間を貫くようにして配置される。2対のバネ48は、構造部(より正確には、外側ヨーク31)とアーマチュア45との間に配置される。その上で、1対のヨーク30(より正確には、内側ヨーク32)の端部同士が固定されて、駆動部2を構成する。
【0040】
第2実施形態においては、駆動部を構成するバネ48が1対とされているため、構成部品の組立てが第1実施形態における場合よりも容易であり、したがって、より小型の電気機械変換器に適している。なお、ヨーク30の構成や、駆動部2をなす各構成部品間における接続関係については、別の図面を用いて詳しく後述する。
【0041】
図6は、ヨーク30を示す斜視図である。ヨーク30は、上述したように外側ヨーク31及び内側ヨーク32からなり、これらが圧接されレーザ溶接等により固定されて構成される。
【0042】
外側ヨーク31は、磁束が通過することとなる磁束通過部31aと、バネ48を係合させるバネ係合部31bとからなる。磁束通過部31aは、略平板矩形状の部位である。バネ係合部31bは、磁束通過部31aのY方向の両側に1箇所ずつ設けられており、バネ48に係合する面は、バネ48に作用する力のトルクを小さく抑制できるような形状に形成されている。
【0043】
内側ヨーク32は、磁束が通過することとなる磁束通過部32aと、1対のヨーク30を固定させる端面を有する曲げ部32bとからなる。磁束通過部32aは、略平板矩形状の部位であり、外側ヨーク31の磁束通過部31aに重ね合わされる。曲げ部32bは、磁束通過部32aをなす板材に曲げ加工を施して形成された部位で、磁束通過部32aのY方向の両側に2箇所ずつ設けられており、磁束通過部32aのY方向の両側面から突出してZ方向に屈曲して同じ長さで延び出ている。
【0044】
本実施形態においては、磁束通過部31a,32aが一体化され、そのYZ平面の断面積は、磁束を飽和させることのない所定の大きさに設計されている。また、磁束通過部31aの厚さはバネ係合部31bに所望の強度を持たせることができる範囲内で薄くし、上述した所定の厚さに足りない分を内側ヨーク32の磁束通過部32aの厚さで補っている。これにより、ヨーク30全体としての所定の厚さを確保し、バネ係合部31b及び曲げ部32bのそれぞれに十分な強度を確保しながらも、曲げ部32bを曲げ加工により形成することで生じるヨーク30のY方向の突出寸法を小さく抑制することができる。
【0045】
図7は、駆動部2を示す分解斜視図である。なお、図7においては、図面の視認性を高めて発明の理解を促進すべく、外側ヨークの磁束通過部31aと内側ヨークの磁束通過部32aとの接続、及び、Z方向の両端部に配置された内側ヨークの各曲げ部32b同士の接続を示す一点鎖線の図示を省略している。
【0046】
外側ヨークの磁束通過部31aと内側ヨークの磁束通過部31aとは、圧接されてレーザ溶接等で固定される。また、磁束通過部32aのX方向の両端部には、磁石40が1つずつ接着固定され、磁束通過部32aのX方向の中央部には、空芯のコイル42が接着固定される。そして、コイル42のY方向の両端部には、コイル端子43が接着固定され、コイル巻線の巻き始めと巻き終わりがそれぞれコイル端子43に半田付けされる。
【0047】
その上で、構造部の一部をなすコイル42に形成されたX方向に貫通する孔を貫くようにして、アーマチュア45が配置される。アーマチュア45のX方向の両端よりやや内側におけるY方向の両端部には、凹状に切り欠かれたバネ係合部45aがそれぞれ形成されている。1対のバネ48は、外側ヨーク31とアーマチュア25との間に配置され、X方向の両端部においてアーマチュアのバネ係合部45aに係合し、Y方向の両端部において外側ヨークのバネ係合部31bに係合する。最後に、Z方向の両端部に配置された各内側ヨーク32に設けられた4か所の曲げ部32bが相互に圧接されて、レーザ溶接等で固定されると、駆動部2が完成する。
【0048】
駆動部2においては、1対のバネ48は、Z方向に所定の変位量をもって外側ヨーク31とアーマチュア45との間に挟まれる。また、アーマチュア45は、Z方向に対をなすバネ48からの反発力を受け、これらの反発力が釣り合う位置に、構造部との間に適当な空隙を置いて保持される。
【0049】
図8は、第2実施形態を比較例と対比させて説明する図である。図8中(A)は、比較例としての電気機械変換器におけるヨーク30´を示す斜視図であり、図8中(B)は、ヨーク30´を第2実施形態のヨーク30と並べて示す側面図である。なお、図8に示した各部位の寸法を示す符号(W1,W2,H,T,T1,T2等)は、図4に示した符号とは一切関係しない。
【0050】
比較例のヨーク30´は、実施例のヨーク30において2つのヨーク部品(外側ヨーク31及び内側ヨーク32)の厚さを合計して確保した磁束通過部の厚さを、1つの部品で確保しようとするものである。そのため、比較例のヨーク30´は、所定の厚さT´を有した1枚の板材に加工を施して形成されており、磁束通過部30a´のY方向の両側に2箇所ずつ曲げ部30b´が設けられるとともに、当該2箇所ずつ設けられた曲げ部30b´の中間の位置に1箇所ずつバネ係合部30c´が設けられている。
【0051】
曲げ部30b´は、厚さT´の板材に曲げ加工を施して形成されるため、その先端部におけるY方向の寸法が厚さT´に等しい。したがって、曲げ部30b´には大きな強度が確保されることとなるが、これほどの強度は必要とされていない。また、曲げ部30b´の磁束通過部30a´より上方に突出する部位の高さH´は、厚さT´より小さく設計されているが、このような形状を形成することは非常に困難である。ヨーク30´の曲げ部30b´が設けられた位置におけるY方向の突出寸法W2´は、磁束通過部30a´におけるY方向の寸法W1´に厚さT´を曲げ加工する上で必要とされる寸法を加えた大きさとなる。
【0052】
これに対し、第2実施形態のヨーク30においては、バネ係合部31bに所望の強度を持たせることができる厚さT1の板材で形成された外側ヨークの磁束通過部31aと、厚さT2の板材で形成された内側ヨークの磁束通過部32aとが固定されており、厚さの不足分が内側ヨークの磁束通過部32aの厚さで補われている。内側ヨーク32の厚さT2は外側ヨーク31の厚さT1よりも薄いが、厚さT2でも曲げ部32bに必要とされる強度は十分に確保することができる。このようなヨーク30によれば、磁束が通過する部位の断面積(図中の網掛け部分)を、比較例のヨーク30´と同じ大きさで確保し(W1×T=W1´×T´)、バネ係合部31b及び曲げ部32bのそれぞれに十分な強度を確保しながらも、曲げ部32bが設けられた位置におけるY方向の突出寸法W2は、曲げ加工を施す板材の厚さT2を薄くした分だけ小さく抑えることができる(W2<W2´)。また、曲げ部32bの磁束通過部32aより上方に突出する部位の高さHを曲げ加工が施される板材の厚さT2より大きく設計し易くなり、曲げ部32bの形成が容易となる。したがって、第2実施形態によれば、部品製作における困難さを緩和しつつ、駆動部ひいては電気機械変換器を全体として小型化することが可能となる。
【0053】
〔第3実施形態〕
図9は、第3実施形態の電気機械変換器における駆動部(駆動部3)を示す斜視図である。駆動部3は、1対(2つ)のヨーク50と、2対(4つ)の磁石60(図9には角度により視認不可能な一部の磁石60が図示されていない)と、コイル62と、アーマチュア65と、2対(4つ)のバネ68と、1対(2つ)の側板70とで構成される。また、各ヨーク50は、1枚の板材で形成される。
【0054】
すなわち、第3実施形態は、駆動部を構成するバネが2対である点においては上述した第1実施形態と共通するが、各ヨーク50が1枚の板材で形成される点、及び、1対の側板70が設けられる点において、第1実施形態と大きく異なっており、これに伴って他の構成部品の形状や大きさも第1実施形態におけるものとは異なっている。以下では、第1実施形態と共通する点についての説明を適宜省略する。
【0055】
1対のヨーク50は、Z方向の両端に配置される。コイル62は、1対のヨーク50の内側かつX方向の中央部に固定される。2対の磁石60は、1対のヨーク50の内側かつX方向の両端部に固定される。このようにして一体的に配置されるヨーク50、磁石60、コイル62に後述する1対の側板70が加わって、構造部を構成する。
【0056】
アーマチュア65は、構造部の内部空間を貫くようにして配置される。2対のバネ68は、X方向の両端部において構造部(より正確には、ヨーク50)とアーマチュア65との間に配置される。1対の側板70は、1対のヨーク50の位置決め及び固定の役割を有しており、その開口部からコイル端子63を露出させた状態でY方向の両端に配置され、1対のヨーク50の位置及び間隔を決定した上で、各ヨーク50のY方向の側面と固定される。このように、構造部にアーマチュア65、バネ68が加わって駆動部3を構成する。
【0057】
第3実施形態においては、ヨーク50が1枚の板材で曲げ加工を施すことなく形成されるため、ヨークの製作が第1実施形態における場合よりも容易である。なお、側板70の構成や、駆動部3をなす各構成部品間における接続関係については、別の図面を用いて詳しく後述する。
【0058】
図10は、側板70を示す斜視図である。
【0059】
側板70は、その中央部に開口したコイル端子を露出させる開口部70aと、開口部70aを取り囲むようにして形成された1対のヨーク50と固定される固定部70bと、固定部70bのX方向の両側に対称となる位置に1箇所ずつ設けられ、固定部70bのX方向の両側面の一部から突出してY方向に屈曲する曲げ部70cと、曲げ部70cのY方向の端部に設けられZ方向に所定の長さL1を有しており、1対のヨーク50の間隔及び位置を決定して両者間の空間を確保するスペーサ部70dとを有する。
【0060】
側板70が有するこれらの各部位は、1枚の板材に種々の加工を施すことにより形成されている。また、側板70の厚さは、ヨーク50の厚さと比較してかなり薄く設定されている。側板70の材料としては、例えば、SUS301材等のステンレス鋼材が用いられる。
【0061】
図11は、駆動部3を示す分解斜視図である。なお、図11においては、側板70とヨーク50との接続を示す一点鎖線の図示を省略している。
【0062】
ヨーク50は、1枚の板材で形成されており、磁束が通過することとなる略平板矩形状の磁束通過部50aと、磁束通過部50aのX方向の両端中央部に1箇所ずつ形成されてバネ68を係合させるバネ係合部50bとを有する。磁束通過部50aのX方向の両端部には、磁石60が1つずつ接着固定され、磁束通過部50aのX方向の中央部には、空芯のコイル62が接着固定される。また、コイル62のY方向の両端部には、コイル端子63が接着固定され、コイル巻線の巻き始めと巻き終わりがそれぞれコイル端子63に半田付けされる。
【0063】
その上で、構造部の一部をなすコイル62に形成されたX方向に貫通する孔を貫くようにして、アーマチュア65が配置される。アーマチュア65のX方向の両端よりやや内側におけるY方向の両端部には、凹状に切り欠かれたバネ係合部65aがそれぞれ形成されている。2対のバネ68は、X方向の両端部においてヨーク50とアーマチュア65との間に配置されて両者のバネ係合部50b,65aに係合する。
【0064】
また、一体的に配置されたヨーク50、磁石60、コイル62のY方向の両側から、側板70が配置される。側板70は、先ず、コイル端子63を開口部70aから露出させるようにして配置され、スペーサ部70dが1対のヨーク50の間に挿入されて磁束通過部50aの所定の位置と合わせられる。これにより、2つのヨーク50の間には、所定の大きさの間隔が保たれることとなる。その上で、固定部70bが磁束通過部50aの側面にレーザ溶接等で固定されると、駆動部3が完成する。
【0065】
〔第4実施形態〕
図12は、第4実施形態の電気機械変換器における駆動部(駆動部4)を示す斜視図である。駆動部4は、1対(2つ)のヨーク80と、2対(4つ)の磁石90(図12には角度により視認不可能な一部の磁石90が図示されていない)と、コイル92と、アーマチュア95と、1対(2つ)のバネ98と、1対(2つ)の側板100とで構成される。また、各ヨーク80は、1枚の板材で形成される。
【0066】
すなわち、第4実施形態は、駆動部を構成するバネが1対である点においては上述した第2実施形態と共通するが、各ヨークが1枚の板材で形成される点、及び、1対の側板が設けられる点において第2実施形態と大きく異なっており、これに伴って他の構成部品の形状や大きさも第2実施形態におけるものとは異なっている。また、第4実施形態は、各ヨークが1枚の板材で形成される点、及び、1対の側板が設けられる点においては上述した第3実施形態と共通するが、駆動部を構成するバネが1対である点において第3実施形態と大きく異なっている。以下では、第2実施形態、第3実施形態と共通する点についての説明を適宜省略する。
【0067】
1対のヨーク80は、Z方向の両端に配置される。コイル92は、1対のヨーク80の内側かつX方向の中央部に固定される。2対の磁石90は、1対のヨーク80の内側かつX方向の両端部に固定される。このようにして一体的に配置されるヨーク80、磁石90、コイル92に後述する1対の側板100が加わって、構造部を構成する。
【0068】
アーマチュア95は、構造部の内部空間を貫くようにして配置される。1対のバネ98は、構造部(より正確には、ヨーク80)とアーマチュア95との間に配置される。1対の側板100は、1対のヨーク80の位置決め及び固定の役割を有しており、その開口部からコイル端子93を露出させた状態でY方向の両端に配置され、1対のヨーク80の位置及び間隔を決定した上で、各ヨーク80のY方向の側面と固定される。このように、構造部にアーマチュア95、バネ98が加わって駆動部4を構成する。
【0069】
第4実施形態においては、ヨーク80が1枚の板材で曲げ加工せずに形成されるため、ヨークの製作が第2実施形態における場合よりも容易である。また、駆動部を構成するバネ98が1対とされているため、構造部の組立てが第3実施形態における場合よりも容易であるため、より小型の電気機械変換器に適している。なお、側板100の構成や、駆動部4をなす各構成部品間における接続関係については、別の図面を用いて詳しく後述する。
【0070】
図13は、側板100を示す斜視図である。
【0071】
側板100は、その中央部に開口したコイル端子を露出させる開口部100aと、開口部100aを取り囲みつつそのZ方向の両側の中央部が1箇所ずつ凹状に切り欠かれて形成された、1対のヨーク80と固定される固定部100bと、固定部100bのX方向の両側に対称となる位置に1箇所ずつ設けられ、固定部100bのX方向の両側面の一部から突出してY方向に屈曲する曲げ部100cと、曲げ部100cのY方向の端部に設けられZ方向に所定の長さL2を有しており、1対のヨーク80の間隔及び位置を決定して両者間の空間を確保するスペーサ部100dとを有する。固定部100bに形成される切り欠きは、ヨーク80からY方向に突出するバネ係合部を受け入れるためのものである。
【0072】
側板100が有するこれらの各部位は、1枚の板材に種々の加工を施すことにより形成されている。また、側板100の厚さは、ヨーク80の厚さと比較してかなり薄く設定されている。
【0073】
図14は、駆動部4を示す分解斜視図である。なお、図14においては、側板100とヨーク80との接続を示す一点鎖線の図示を省略している。
【0074】
ヨーク80は、1枚の板材で形成されており、磁束が通過することとなる略平板矩形状の磁束通過部80aと、磁束通過部80aのY方向の両端中央部に1箇所ずつ形成されてバネ98を係合させるバネ係合部80bとを有する。磁束通過部80aのX方向の両端部には、磁石90が1つずつ接着固定され、磁束通過部80aのX方向の中央部には、空芯のコイル92が接着固定される。また、コイル92のY方向の両端部には、コイル端子93が接着固定され、コイル巻線の巻き始めと巻き終わりがそれぞれコイル端子93に半田付けされる。
【0075】
そして、一体的に配置されたヨーク80、磁石90、コイル92のY方向の両側から、側板100が配置される。側板100は、先ず、ヨークのバネ係合部80bを凹状の切り欠きで受け入れつつコイル端子93を開口部100aから露出させるようにして配置され、スペーサ部80dが1対のヨーク80の間に挿入されて磁束通過部80aの所定の位置と合わせられる。これにより、2つのヨーク80の間には、所定の大きさの間隔が保たれることとなる。
【0076】
アーマチュア95は、構造部の一部をなすコイル92に形成されたX方向に貫通する孔を貫くようにして配置される。アーマチュア95のX方向の両端よりやや内側におけるY方向の両端部には、凹状に切り欠かれたバネ係合部95aがそれぞれ形成されている。1対のバネ98は、ヨーク80とアーマチュア95との間に配置され、X方向の両端部においてアーマチュアのバネ係合部95aに係合し、Y方向の両端部においてヨークのバネ係合部80bに係合する。その上で、側板の固定部100bが磁束通過部80aの側面にレーザ溶接等で固定されると、駆動部4が完成する。
【0077】
〔実施形態の優位性〕
第1実施形態及び第3実施形態は、駆動部を構成するバネが2対の電気機械変換器に対応しており、第2実施形態及び第4実施形態は、駆動部を構成するバネが1対の電気機械変換器に対応している。このうち、第1実施形態及び第2実施形態においては、ヨークを2枚の板材で形成(2つのヨーク部品で構成)し、一方の板材(ヨークの厚さよりも薄い板材)のみに曲げ加工を施して形成した曲げ部同士を固定させることにより、構成部品の製作を容易にするとともに、駆動部全体としての大きさを抑制している。これに対し、第3実施形態及び第4実施形態においては、ヨークを1枚の板材で曲げ加工を施さずに形成し、ヨークよりも薄い板材に曲げ加工がなされた1対の側板で1対のヨークを固定させることにより、構成部品の製作を容易にするとともに、駆動部全体としての大きさを抑制している。このように、4つの実施形態は大別すると2種類に分類することができるが、曲げ加工された部位を有するヨークの厚さよりも薄い板材で形成された部品で1対のヨークを固定させる点においては、全ての実施形態は共通している。
【0078】
上述したように、各実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
(1)4つの各実施形態によれば、1対のヨークが、ヨークの厚さよりも薄い板材で形成された部位で固定されるため、ヨークと同じ厚さの板材で形成される場合と比較して、そのような部位を有する部品を容易に製作することができる。また、そのような部品に曲げ加工を施した部位を形成する際に、ヨークと同じ厚さの板材を曲げ加工して形成する場合と比較して、曲げ加工により突出する部位における部品の突出寸法が小さく抑制されるため、駆動部ひいては電気機械変換器を小型化することができる。
【0079】
(2)第1実施形態及び第2実施形態によれば、1対のヨークがそれぞれ2つのヨーク部品(外側ヨーク及び内側ヨーク)を一体化して構成され、一方のヨーク部品は、バネの反発力が終始作用するバネ係合部に所望の強度を持たせることができる厚さに設定され、他方のヨーク部品は、ヨークを通過する磁束を飽和させることのない所定の断面積を確保する上での厚さの不足分を補う厚さに設定されるため、ヨーク全体として所定の厚さを確保することができる。また、これにより、ヨーク部品を容易に製作することができ、また、曲げ加工を施すことにより突出する部位におけるヨークの突出寸法を小さく抑制することができる。結果として、駆動部ひいては電気機械変換器を小型化することができる。
【0080】
(3)第3実施形態及び第4実施形態によれば、ヨークが1枚の板材で曲げ加工を施すことなく形成されるため、ヨークを容易に製作することができる。また、ヨークの位置決め及び固定を行う1対の側板がヨークの厚さよりも薄い板材に種々の加工を施して形成されるため、側板を必要最小限の大きさで容易に製作することができる。結果として、駆動部ひいては電気機械変換器を小型化することができる。
【0081】
本発明は、上述した各実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することが可能である。
【0082】
上述した第2実施形態においては、バネ係合部31bが外側ヨーク31に設けられ、曲げ部32bが内側ヨーク32に設けられているが、バネ係合部及び曲げ部を同一のヨーク部品に設けてもよい。例えば、バネ係合部及び曲げ部を外側ヨークに設けてもよい。そのような構成とする場合には、内側ヨークは、外側ヨークの磁束通過部の形状と略同一の形状に形成されることとなる。
【0083】
上述した各実施形態におけるバネ28,48,68,98は、磁石の磁気力が作用して変位するアーマチュアに対し、その変位に応じた復元力を与えられるものであれば、板バネ以外の弾性部材を用いてもよい。
【0084】
上述した各実施形態における駆動部1,2,3,4は、電気機械変換器以外の用途に適用してもよい。例えば、電気振動を音響に変換して外部に出力する電気音響変換器の一部として用いることも可能である。
【0085】
その他、駆動部1,2,3,4の各構成部品の例として挙げた材料や数値等はあくまで例示であり、本発明の実施に際して適宜に変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0086】
1, 2, 3, 4 駆動部
10,30,50,80 ヨーク
11,31 外側ヨーク
12,32 内側ヨーク
20,40,60,90 磁石
22,42,62,92 コイル
23,43,63,93 コイル端子
25,45,65,95 アーマチュア
28,48,68,98 バネ
70,100 側板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14