(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047028
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】電気機械変換器
(51)【国際特許分類】
H04R 11/02 20060101AFI20220316BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20220316BHJP
B06B 1/04 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
H04R11/02
H04R1/00 317
H04R1/00 310G
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152724
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 行志
【テーマコード(参考)】
5D017
5D021
5D107
【Fターム(参考)】
5D017AA11
5D017AB12
5D021AA04
5D107AA14
5D107BB08
5D107CC09
5D107DD03
5D107DD12
5D107FF10
(57)【要約】
【課題】性能に悪影響を及ぼすことを抑える技術を提供する。
【解決手段】電気機械変換器100は、磁石110,114による磁束を閉回路状に導くヨーク102,104に囲まれた内部空間にコイル118が配置された構造部と、構造部の内部空間をコイル118の巻心方向に貫通して配置されたアーマチュア120と、アーマチュア120を挟んでヨーク102,104との間に対をなして配置され、アーマチュア120を支持する弾性部材106,108と、弾性部材106,108との接触領域を線状として、弾性部材106,108とヨーク102,104とを当接させる当接部102b,104bとを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異極同士を対向させた二対の磁石と、この磁石による磁束を閉回路状に導くヨークと、このヨークに囲まれた内部空間に配置されたコイルとを有する構造部と、
前記構造部の内部空間を前記コイルの巻心方向に貫通して配置されたアーマチュアと、
前記アーマチュアを挟んで前記ヨークとの間に対をなして配置され、前記アーマチュアを前記内部空間にて支持する弾性部材と、
前記弾性部材との接触領域を線状として、前記弾性部材と前記ヨークとを当接させる当接部と
を備えた電気機械変換器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械変換器において、
前記弾性部材は、
前記アーマチュアと前記ヨークとの間に挟み込まれて変形した状態で、前記当接部に接触する板ばね状の対向部位を有しており、
前記当接部は、
前記弾性部材の変形状態で前記対向部位に現れる曲率半径よりも曲率半径が小さい曲面を有することを特徴とする電気機械変換器。
【請求項3】
請求項1に記載の電気機械変換器において、
前記弾性部材は、
前記アーマチュアと前記ヨークとの間に挟み込まれて変形した状態で、前記当接部に接触する板ばね状の対向部位を有しており、
前記当接部は、
前記対向部位に対して凸形状となるエッジを有することを特徴とする電気機械変換器。
【請求項4】
請求項3に記載の電気機械換器において、
前記エッジは、
前記弾性部材の変形状態で前記対向部位に現れる前記接触領域を中心とした開き角よりも小さい開き角を有することを特徴とする電気機械変換器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電気機械変換器において、
前記当接部は、
前記アーマチュアの貫通方向に添う前記構造部の中心軸線か、もしくは貫通方向と直交する前記構造部の中心軸線を挟んで対称であり、かつ、互いに平行な軸線上に前記弾性部材との前記接触領域を配置していることを特徴とする電気機械変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を機械振動に変換する電気機械変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気機械変換器としては、例えば二対の磁石、これら磁石による磁束を導くヨーク、そして電気信号が供給されるコイルを一体的に配置して構造部を構成するとともに、その内部空間にアーマチュアを貫通させて配置し、アーマチュアを挟んで対称に配置した二対の弾性部材でアーマチュアを変位可能に支持したものや(例えば、特許文献1,3参照。)、一対の弾性部材で同様に支持したもの(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【0003】
上記の一対又は二対をなす弾性部材(ばね)は、いずれもヨークとアーマチュアとの間に挟み込まれて変形しつつ、互いの弾性力(復元力)がバランスするポイントでヨークに対してアーマチュアを相対的に位置決めする。このとき、アーマチュアはヨークとの関係から構造上(設計上)の中心軸に添って正しく位置していることを求められるが、弾性部材の加工精度のばらつき等でアーマチュアに作用する弾性力がアンバランスになると、アーマチュアに中心軸からの傾きが生じて正規に位置決めされなくなることがある。このようなアーマチュアの傾きは、例えばアーマチュアに働く中心軸回りのモーメントがなるべく小さくなる構造を採用することで、ある程度まで抑制することが可能である(特許文献3の技術事項参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-139041号公報
【特許文献2】特開2018-186378号公報
【特許文献3】特開2019-193218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したアーマチュアが中心軸回りに受けるモーメントを小さくする手法(特許文献3)は、具体的には二対の弾性部材を用いた構造(特許文献1)に関するものであり、一対の弾性部材を用いた構造(特許文献2)には直ちに適用できない。また、機械加工にはある程度のばらつきが避けられないことから、中心軸から完全に対称な距離でアーマチュアに弾性力を作用させる完璧な精度での加工は実現困難である。そして、どちらの構造においても、ヨークと弾性部材との間に作用する力のアンバランスがアーマチュアを正規の位置から傾け、電気機械変換器としての性能に悪影響を及ぼすことから、製造過程での歩留り(不良品の発生率)が悪くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、性能に悪影響を及ぼすことを抑える技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電気機械変換器を提供する。電気機械変換器は、磁石、ヨーク及びコイルからなる構造部の内部空間にアーマチュアを配置し、これを挟んでヨークとの間に対をなす弾性部材の弾性力でアーマチュアを変位可能に支持したものである。このような基本構成において、電気機械変換器は特有の構成として「当接部」を備える。
【0008】
すなわち、上記構成の「当接部」は、弾性部材との接触領域を線状として、弾性部材とヨークとを接触(当接)させるものである。この場合、ヨークと弾性部材との間での力の作用点を線状の範囲内に集中させることができるので、力の作用点が距離を空けて幅広に分散することがない。したがって、このような力の作用点が集中する範囲をアーマチュアを挟んで対称に配置することにより、アーマチュアの傾きの原因となる力のトルクを非常に小さく抑えることができる。
【0009】
このため「当接部」は、構造部の中心軸線を挟んで対称であり、かつ、互いに平行な軸線上に弾性部材との接触領域を配置している態様が好ましい。なお、構造部の中心軸線は、アーマチュアの貫通方向に添う中心軸線か、もしくはアーマチュアの貫通方向と直交する中心軸線のいずれでもよい。いずれにしても、「当接部」が構造部の中心軸線を挟んで対称に、線状の接触領域を互いに平行な軸線上に配置することにより、上記のように力の作用点が中心軸線と対称、かつ平行な軸線上に集中して位置付けられる。これにより、ヨークと弾性部材との間に働く力のアンバランスで中心軸線回りのトルクが生じることを防止し、アーマチュアの傾きを抑えることで電気機械変換器の性能悪化を防止して製造過程での歩留まり悪化を防止することができる。
【0010】
また、「当接部」については、弾性部材との関係から以下の好ましい態様を採用することができる。
〔第1の態様〕
第1の態様は、「当接部」が曲面で弾性部材と接触する態様である。
すなわち、弾性部材は、アーマチュアとヨークとの間に挟み込まれて変形した状態で、「当接部」の曲面と接触して弾性力を作用させる板ばね状の対向部位を有している。この場合、弾性部材の変形状態では対向部位が湾曲して撓むことになるが、このとき対向部位に現れる曲率半径をR1とすると、「当接部」が有する曲面の曲率半径R2の方が小さい(R1>R2)。これにより、湾曲して撓んだ状態(曲面の状態)の対向部位と「当接部」の曲面との接触領域を好適に線状として、力の作用点を接触領域に集中させることができる。
【0011】
〔第2の態様〕
第2の態様は、「当接部」がエッジ(端縁)で弾性部材と接触する態様である。
すなわち、弾性部材は、第1の態様と同様に板ばね状の対向部位を有するが、「当接部」は、板ばね状の対向部位に対して凸形状となるエッジを有している。この場合、「当接部」は、エッジの形状そのままに弾性部材との接触領域を好適に線状として、力の作用点を接触領域に集中させることができる。
【0012】
また、上記第2の態様では、弾性部材の変形状態で対向部位が湾曲して撓むことになるが、このとき対向部位に現れる接触領域を中心とした開き角をθ1とすると、エッジの開き角θ2の方が小さい(θ1>θ2)。したがって、板ばね状の対向部位は、撓み状態でより鋭角なエッジと接触し、力の作用点を接触領域に集中させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、電気機械変換器としての性能に悪影響を及ぼすことを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の電気機械変換器100を示す斜視図である。
【
図3】
図1中のIII-III線に沿う電気機械変換器100の断面図である。
【
図4】
図1中のIV-IV線に沿う電気機械変換器100の断面図である。
【
図5】
図1中のV-V線に沿う位置での電気機械変換器100の断面図である。
【
図6】
図5と同じ断面位置において構造の第2態様を示す図である。
【
図7】第2実施形態の電気機械変換器200を示す斜視図である。
【
図9】
図7中のIX-IX線に沿う電気機械変換器200の断面図である。
【
図10】
図7中のX-X線に沿う電気機械変換器200の断面図である。
【
図11】
図7中のXI-XI線に沿う位置での電気機械変換器200の断面図である。
【
図12】
図11と同じ断面位置において構造の第2態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。以下にいくつかの実施形態で示す電気機械変換器は、例えば電気信号を機械振動に変換する用途の他に、その機械振動で電気信号を音(音響)に変換するスピーカ、イヤホン等の電気音響変換器への適用が可能である。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の電気機械変換器100を示す斜視図である。また
図2は、電気機械変換器100の分解斜視図である。電気機械変換器100の基本構造は、磁石110,112,114,116、ヨーク102,104及びコイル118を一体的に配置した構造部の内部空間(ともに参照符号なし)を貫いてアーマチュア120を配置し、ヨーク102,104との間に挟み込んだ二対の弾性部材106,108でアーマチュア120を支持したものである。
【0017】
このような基本構造は、既に公知であるため詳細については省略するが、
図1及び
図2でみて上下に一対をなす2つのヨーク102,104の両側縁には、それぞれ互いの組み合わせ方向に屈曲された曲げ部102a,104aが2つずつ対称に形成されている。
図1の完成状態では、これら曲げ部102a,104aの対向する接合面にて上下のヨーク102,104が圧接され、一体的に接合(例えばレーザー溶接)されている。
【0018】
また、上側のヨーク102の内側面には、その長手方向に間隔を空けて2個の磁石110,112が接着により固定されており、下側のヨーク104の内側面にも、長手方向に間隔を空けて2個の磁石114,116が接着により固定されている。完成状態では、長手方向の片側で上下に対向する角板状の磁石110,114が1つの対をなし、もう片側でも上下に対向する角板状の磁石112,116がもう1つの対をなしている。なお、対をなす磁石110,114及び磁石112,116は互いに異極同士(S極-N極)を対向させており、さらに同一の各ヨーク102,104の内面で長手方向に並んで配置された2個の磁石110,112及び磁石114,116については、互いの極性が逆向きに磁化されている。これにより、完成状態で2つのヨーク102,104は、上下で二対をなす磁石110,114及び磁石112,116による磁束を閉回路状に導いている。
【0019】
コイル118は、ヨーク102,104に囲まれた内部空間で長手方向の中央、すなわち磁石110,114の対と磁石112,116の対との間に配置されている。コイル118はコアを有しない空芯タイプであり、その巻中心の方向は、構造部全体の長手方向に合致している。コイル118の外周面は、部分的に曲げ部102a,104aの間から構造部の短手方向(長手方向と直交する方向)へ両側に表出しており、このような表出した2箇所には、それぞれコイル端子122,124が半田付けされている。コイル端子122,124は、コイル118の巻始め端と巻終わり端をそれぞれ外部に接続可能としている。なお、コイル118は絶縁された状態で、ヨーク102,104の内面と接着により固定されている。
【0020】
アーマチュア120は、構造部の内部空間を長手方向、つまりコイル118の巻心方向に貫通するようにして配置されている。アーマチュア120は、上側及び下側の角板状の磁石110,112及び磁石114,116にそれぞれ両面が対向する平板状をなしており、長手方向の両端部が内部空間から外側に突出している。このような突出したアーマチュア120の両端部には、上面及び下面にそれぞれ弾性部材106,108との当接部120a,120bが形成されている。
【0021】
一方、上下のヨーク102,104には、長手方向の両側に内部空間よりも突出した当接部102b,104bが形成されており、ヨーク102,104は、それぞれ当接部102b,104bにて弾性部材106,108と接触する。これら当接部102b,104bは、それぞれヨーク102,104の長手方向の中心軸線上で、かつ短手方向の中央に位置している。なお、この点についてはさらに後述する。
【0022】
上下二対の弾性部材106,108は、薄板状のばね部材を曲げ加工して形成されており、単体では全体が切欠楕円形状、あるいは「ε」字断面形状や「3」字断面形状といった形状をなしている。各弾性部材106,108は、上下のヨーク102,104とはそれぞれ当接部102b,104bの1箇所だけで接触する。このため各弾性部材106,108は、当接部102b,104bに対応する中央の部位が溝型断面形状に加工されており、その溝底に相当する部位が板ばね状をなす対向部位106a,108aとして形成されている。
【0023】
また、各弾性部材106,108は、中央の対向部位106a,108aから両側に延びた部位がそれぞれU字断面形状に屈曲された湾曲部106c,108cとして形成されるとともに、各湾曲部106c,108cに連なる末端の部位がそれぞれ鍵(Γ)型断面形状をなす当接部106b,108bとして形成されている。各弾性部材106,108は、末端の当接部106b,108bにてアーマチュア120と上下両面それぞれの2箇所で接触し、上側の弾性部材106が当接部106bでアーマチュア120上面側の当接部120aと接触し、下側の弾性部材108が当接部108bでアーマチュア120下面側の当接部120bと接触する。
【0024】
電気機械変換器100の完成状態において、各弾性部材106,108は所定の変位量(変形量)をもって上下のヨーク102,104とアーマチュア120との間に挟まれる。これにより、アーマチュア120は上下二対の弾性部材106,108の弾性力(反発力)を受けつつ、これらの力が平衡する位置で支持され、構造部との間に適当な空隙(エアギャップ)を持って配置される。なお、
図2の分解状態においても、
図1と同様に各弾性部材106,108が変形状態で示されているが、自由状態(無負荷)において各弾性部材106,108の対向部位106a,108aは平板状であり、全体的に潰れることなく、対向部位106a,108aと末端の当接部106b,108bとが平行となる。
【0025】
なお、ヨーク102,104及びアーマチュア120には例えば45%Niのパーマロイ等の軟磁性材料が用いられ、弾性部材106,108には、ばね用SUS301材等のステンレス鋼材が用いられる。
【0026】
〔中心軸線との関係〕
次に、電気機械変換器100の構造部に規定されるいくつかの中心軸線との関係について説明する。中心軸線は、構造部を立体的に捉えた場合に例えば3方向に規定される(いわゆるX-Y-Z軸)。
【0027】
〔中心軸線A1〕
図3は、
図1中のIII-III線に沿う電気機械変換器100の断面図である。
図1でみた構造部の長手方向を例えば水平方向とすると、
図3に示される断面は電気機械変換器100の水平断面(X-Y軸方向断面)となる。この
図3に示されているように、電気機械変換器100の構造部には長手方向の水平な中心軸線A1を規定することができる。磁石110,112,114,116やヨーク102,104、コイル118といった構造部を構成する部材は、いずれも水平方向(X-Y平面)において中心軸線A1を共通のものとして対称に配置されている。
【0028】
〔アーマチュアの傾き(1)〕
ここで、電気機械変換器100の性能に悪影響を及ぼすアーマチュア120の傾きに関し、中心軸線A1に対して
図3中の矢印H方向(水平方向)にアーマチュア120が傾くことは構造上生じ難い。これは、アーマチュア120を支持している弾性部材106,108がヨーク102,104との間で矢印H方向への力を作用させていないため、構造上、力のアンバランスが起こり難いからである。
【0029】
図4は、
図1中のIV-IV線に沿う電気機械変換器100の断面図である。
図3を水平断面図とすると、
図4は長手方向の垂直断面図(X-Z軸方向断面図)となる。
図4に示されているように、同じく磁石110,112,114,116やヨーク102,104、コイル118といった構造部を構成する部材は、いずれも垂直方向(Y-Z方向)において中心軸線A1を共通のものとして対称に配置されていることが分かる。
【0030】
〔アーマチュアの傾き(2)〕
ここでは、中心軸線A1に対して
図4中の矢印V方向(垂直方向)にアーマチュア120が傾くことはあり得るが、ほとんど問題にならない。矢印V方向のアーマチュア120の傾きは、本実施形態の構造において上下の弾性部材106,108とヨーク102,104との間に作用する力のアンバランスが極端に大きい場合に生じるが、通常はこのような力のアンバランスは小さく抑えられるので、機械加工のばらつきを考慮に入れたとしても問題にならないためである。
【0031】
〔中心軸線A2,A3〕
次に
図5は、
図1中のV-V線に沿う位置での電気機械変換器100の断面図である。
図4を長手方向の垂直断面図(X-Z軸方向断面図)とすると、
図5は短手方向の垂直断面図(Y-Z軸方向断面図)となる。また、
図5中(A)が全体の断面図であり、
図5中(B)が
図5中(A)の一点鎖線で囲まれた範囲を拡大した部分断面図である。
図5中(A)に示されているように、電気機械変換器100の構造部には、短手方向の水平な中心軸線A2を規定することができ、さらに垂直方向の中心軸線A3を規定することができる。そして、構造部を構成する各種の部材は、いずれも垂直方向(Y-Z平面)において中心軸線A2及び中心軸線A3を共通のものとして対称に配置されていることが分かる。なお、長手方向の中心軸線A1は、中心軸線A2と中心軸線A3との交点上に位置する(
図5では参照符号なし)。
【0032】
〔アーマチュアの傾き(3)〕
ここでは、中心軸線A2に対して
図5中(A)の矢印L方向(垂直方向)のアーマチュア120の傾きが問題になり得る。矢印L方向のアーマチュア120の傾きは、中心軸線A3についても同じ意味であるが、中心軸線A1に関して言えば、中心軸線A1回り(回転方向)の傾きということになる。そして、このような傾きが問題になるのは、主に中心軸線A2方向でヨーク102,104と弾性部材106,108との間に作用する力のアンバランスが起こり得る場合であることが既に分かっている(先行技術文献の特許文献3参照。)。
【0033】
本発明の発明者は、上述したアーマチュア120に傾きを生じさせる構造上の要因に鑑み、ヨーク102,104と弾性部材106,108との間に作用する力にアンバランスを生じさせない構造を実現するに至ったものである。その構造は、以下に挙げた複数の態様により実現されている。
【0034】
〔第1態様〕
図5中(A):本構造の第1態様は、ヨーク102,104の当接部102b,104bが弾性部材106,108と曲面で接触する構造である。すなわち、弾性部材106,108の図示しない自由状態において対向部位106a,108aが平板状であるとすると、これらと接触する当接部102b,104bは平面ではなく曲面に形成されている。したがって、当接部102b,104bと対向部位106a,108aとの接触領域は、中心軸線A1方向に延びる直線状となっている。これにより、ヨーク102,104の当接部102b,104bからそれぞれ弾性部材106,108に作用する力Fの作用点が実質的に線状に狭められて集中するため、中心軸線A2方向に力Fの作用点が分散することがない。このため、先行技術(特許文献3等)で問題となった中心軸線A2方向に拡がる力の作用点間の幅をほぼ無(ゼロ)とし、前記課題を解決することができる。
【0035】
図5中(B):当接部102b,104bに形成する曲面は、以下の指標により好適に規定することができる。例えば、上側の当接部102bを例に挙げると、弾性部材106の変形状態で対向部位106aには撓みによる変形が生じているが、この撓み状態で対向部位106aに現れる曲率半径R1よりも、当接部102bに形成する曲面の曲率半径R2を小さくする(R1>R2)。これにより、上記のようにヨーク102側の当接部102bと弾性部材106の対向部位106aとの接触領域は中心軸線A2方向に線状に狭められ、力Fの作用点の分散がほぼ無(ゼロ)に抑えられる。
【0036】
そして、ヨーク102,104の当接部102b,104bは、構造部の中心軸線A1,A2を中心として上下対称に配置されるので、上下のヨーク102,104から弾性部材106,108が受ける力Fが中心軸線A1,A3から互い違いにずれることがなく、
図5中(A)に示したアーマチュア120の矢印L方向の傾きの原因となるトルクの発生を非常に小さく抑えることができる。
【0037】
〔第2態様〕
図6は、
図5と同じ断面位置において本構造の第2態様を示す図である。このうち、
図6中(A)が全体の断面図であり、
図6中(B)が
図6中(A)の一点鎖線で囲まれた範囲を拡大した部分断面図である。
【0038】
図6中(A):第2態様では、ヨーク102,104に第1態様と異なる当接部302b,304bを形成するが、その他は第1態様と同じである。このような第2態様では、当接部302b,304bが弾性部材106,108とエッジ(端縁)で接触する構造である。ここでも同様に、弾性部材106,108の図示しない自由状態において対向部位106a,108aが平板状であるとすると、これらと接触する当接部302b,304bは平面形状ではなく、対向部位106a,108aに対して凸形状(山形状)に形成されており、その接触部分がエッジ形状となっている。したがって、当接部302b,304bと対向部位106a,108aとの接触領域は、同じく中心軸線A1方向に延びる直線状となっている。これにより、ヨーク102,104の当接部302b,304bからそれぞれ弾性部材106,108に作用する力Fの作用点が実質的に線状に狭められて集中するため、中心軸線A2方向に力Fの作用点が分散することがなく、同様に中心軸線A2方向に拡がる力の作用点間の幅をほぼ無(ゼロ)とし、前記課題を解決することができる。
【0039】
図6中(B):当接部302b,304bに形成するエッジは、以下の指標により好適に規定することができる。ここでも同様に、例えば上側の当接部302bを例に挙げると、弾性部材106の変形状態で対向部位106aには撓みによる変形が生じているが、この撓み状態で対向部位106aに現れる接触領域を中心とした開き角θ1よりも、当接部302bに形成するエッジの開き角θ2を小さくする(θ1>θ2)。これにより、上記のようにヨーク102側の当接部302bと弾性部材106の対向部位106aとの接触領域は中心軸線A2方向に線状に狭められ、力Fの作用点の分散がほぼ無(ゼロ)に抑えられる。
【0040】
そして、ヨーク102,104の当接部302b,304bは、構造部の中心軸線A1,A2を中心として上下対称に配置されるので、上下のヨーク102,104から弾性部材106,108が受ける力Fが中心軸線A1,A3から互い違いにずれることがなく、
図6中(A)に示したアーマチュア120の矢印L方向の傾きの原因となるトルクの発生を非常に小さく抑えることができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に、電気機械変換器の第2実施形態について説明する。
図7は、第2実施形態の電気機械変換器200を示す斜視図である。また
図8は、電気機械変換器200の分解斜視図である。電気機械変換器200の基本構造は、磁石210,212,214,216、ヨーク202,204及びコイル218を一体的に配置した構造部の内部空間(ともに参照符号なし)を貫いてアーマチュア220を配置し、ヨーク202,204との間に挟み込んだ一対の弾性部材206,208でアーマチュア220を支持したものである。
【0042】
このように、第2実施形態の電気機械変換器200は、一対の弾性部材206,208でアーマチュア220を支持する点が第1実施形態と異なっている。ただし、弾性部材206,208とヨーク202,204との接触以外の構成は第1実施形態と共通する部分が多いため、以下では第1実施形態の説明により得られた理解が大いに活用されることとなる(参照符号は、第1実施形態の100番台を200番台に変更。)。
【0043】
第2実施形態においても、
図7及び
図8でみて上下に一対をなす2つのヨーク202,204の両側縁には、それぞれ互いの組み合わせ方向に屈曲された曲げ部202a,204aが2つずつ対称に形成されている。
図7の完成状態では、これら曲げ部202a,204aの対向する接合面にて上下のヨーク202,204が圧接され、一体的に接合(例えばレーザー溶接)されている。
【0044】
また、上側のヨーク202の内側面には、その長手方向に間隔を空けて2個の磁石210,212が接着により固定されており、下側のヨーク204の内側面にも、長手方向に間隔を空けて2個の磁石214,216が接着により固定されている。完成状態では、長手方向の片側で上下に対向する角板状の磁石210,214が1つの対をなし、もう片側でも上下に対向する角板状の磁石212,216がもう1つの対をなしている。なお、対をなす磁石210,214及び磁石212,216は互いに異極同士(S極-N極)を対向させており、さらに同一の各ヨーク202,204の内面で長手方向に並んで配置された2個の磁石210,212及び磁石214,216については、互いの極性が逆向きに磁化されている。これにより、完成状態で2つのヨーク202,204は、上下で二対をなす磁石210,214及び磁石212,216による磁束を閉回路状に導いている。
【0045】
コイル218は、ヨーク202,204に囲まれた内部空間で長手方向の中央、すなわち磁石210,214の対と磁石212,216の対との間に配置されている。コイル218はコアを有しない空芯タイプであり、その巻中心の方向は、構造部全体の長手方向に合致している。コイル218の外周面は、部分的に曲げ部202a,204aの間から構造部の短手方向(長手方向と直交する方向)へ両側に表出しており、このような表出した2箇所には、それぞれコイル端子222,224が半田付けされている。コイル端子222,224は、コイル218の巻始め端と巻終わり端をそれぞれ外部に接続可能としている。なお、コイル218は絶縁された状態で、ヨーク202,204の内面と接着により固定されている。
【0046】
アーマチュア220は、構造部の内部空間を長手方向、つまりコイル218の巻心方向に貫通するようにして配置されている。アーマチュア220は、上側及び下側の角板状の磁石210,212及び磁石214,216にそれぞれ両面が対向する平板状をなしており、長手方向の両端部が内部空間から外側に突出している。このような突出したアーマチュア220の両端部には、上面及び下面にそれぞれ弾性部材206,208との当接部220a,220bが形成されている。
【0047】
一方、上下のヨーク202,204には、短手方向の両側に内部空間よりも突出した当接部202b,204bが形成されており、ヨーク202,204は、それぞれ当接部202b,204bにて一対の弾性部材206,208と接触する。これら当接部202b,204bは、それぞれヨーク202,204の短手方向の中心軸線上で、かつ長手方向の中央に位置している点が第1実施形態とは異なっている。なお、この点についてもさらに後述する。
【0048】
〔一対の弾性部材〕
第2実施形態に用いられる上下一対の弾性部材206,208は、薄板状のばね部材を略角リング形状に打ち抜き、その両側の短辺部を長辺部に対して曲げ加工して形成されており、短辺部と長辺部とをつなぐ各4つのコーナー部位が湾曲部206c,208cとなっている。各弾性部材206,208は、上下のヨーク202,204とはそれぞれ当接部202b,204bの2箇所で接触し、この点も第1実施形態と異なっている。すなわち、各弾性部材206,208は、当接部202b,204bに対応する長辺部の中央の部位が板ばね状をなす対向部位206a,208aとしてそれぞれ形成されている。
【0049】
また、各弾性部材206,208は、上記のように両側の短辺部が長辺部に対して屈曲されることにより、その屈曲方向の側端縁(厚み方向の側面)をアーマチュア220に対向させている。そして、各弾性部材206,208は、短辺部の中央の部位が当接部206b,208bとして形成されている。各弾性部材206,208は、短辺部の中央に形成された当接部206b,208bにてアーマチュア220と上下両面それぞれの2箇所で接触し、上側の弾性部材206が両側の当接部206bでアーマチュア220上面で両側の当接部220aとそれぞれ接触し、下側の弾性部材208が両側の当接部208bでアーマチュア220下面で両側の当接部220bとそれぞれ接触する。このように、第2実施形態では弾性部材206,208とアーマチュア220との接触関係が第1実施形態と異なっている。
【0050】
そして、第2実施形態においても、電気機械変換器200の完成状態において、各弾性部材206,208は所定の変位量(変形量)をもって上下のヨーク202,204とアーマチュア220との間に挟まれる。これにより、アーマチュア220は上下一対の弾性部材206,208の弾性力(反発力)を受けつつ、これらの力が平衡する位置で支持され、構造部との間に適当な空隙(エアギャップ)を持って配置される。なお、
図8の分解状態においても、
図7と同様に各弾性部材206,208が変形状態で示されているが、自由状態(無負荷)において各弾性部材206,208の対向部位206a,208aは平板状であり、その長辺部は撓み変形していない。
【0051】
なお、第2実施形態においても、ヨーク202,204及びアーマチュア220には例えば45%Niのパーマロイ等の軟磁性材料が用いられ、弾性部材206,208には、ばね用SUS301材等のステンレス鋼材が用いられる。
【0052】
〔中心軸線との関係〕
次に、第2実施形態において電気機械変換器200の構造部に規定されるいくつかの中心軸線との関係について説明する。なお、中心軸線が例えば3方向に規定される点は第1実施形態と同様である。
【0053】
〔中心軸線A1〕
図9は、
図7中のIX-IX線に沿う電気機械変換器200の断面図である。
図7でみた構造部の長手方向を例えば水平方向とすると、
図9に示される断面は電気機械変換器200の水平断面(X-Y軸方向断面)となる。第2実施形態においても、電気機械変換器200の構造部には長手方向の水平な中心軸線A1を規定することができる。
【0054】
〔アーマチュアの傾き(1)〕
第2実施形態においても同様に、中心軸線A1に対して
図9中の矢印H方向(水平方向)にアーマチュア220が傾くことは構造上生じ難い。これは、同じくアーマチュア220を支持している弾性部材206,208がヨーク202,204との間で矢印H方向への力を作用させていないため、構造上、力のアンバランスが起こり難いからである。
【0055】
図10は、
図7中のX-X線に沿う電気機械変換器200の断面図である。
図9を水平断面図とすると、
図10は短手方向の垂直断面図(Y-Z軸方向断面図)となる。
図10に示されているように、構造部には短手方向の水平な中心軸線A2を規定することができる。第1実施形態と断面の方向が異なるのは、断面をとる当接部202b,204bの配置が第1実施形態と水平方向で90°違っていることによる。そして、ヨーク202,204やコイル218といった構造部を構成する部材は、いずれも水平方向(Y-Z平面)において中心軸線A2を共通のものとして対称に配置されていることが分かる。
【0056】
〔アーマチュアの傾き(2)〕
第2実施形態において、中心軸線A2に対して
図10中の矢印V方向(垂直方向)にアーマチュア220が傾くことは構造上生じ難いので、問題とはならない。
【0057】
〔中心軸線A1,A3〕
次に
図11は、
図7中のXI-XI線に沿う位置での電気機械変換器200の断面図である。
図10を短手方向の垂直断面図(Y-Z軸方向断面図)とすると、
図11は長手方向の垂直断面図(X-Z軸方向断面図)となる。また、
図11中(A)が全体の断面図であり、
図11中(B)が
図11中(A)の一点鎖線で囲まれた範囲を拡大した部分断面図である。
図11中(A)に示されているように、構造部には、短手方向の水平な中心軸線A1とともに垂直方向の中心軸線A3を規定することができる。なお、短手方向の中心軸線A2は、中心軸線A1と中心軸線A3との交点上に位置する(
図11では参照符号なし)。
【0058】
〔アーマチュアの傾き(3)〕
第2実施形態では、中心軸線A1に対して
図11中(A)の矢印L方向(垂直方向)のアーマチュア220の傾きが問題になり得る。矢印L方向のアーマチュア220の傾きは、中心軸線A3についても同じ意味であるが、中心軸線A2に関して言えば、中心軸線A2回り(回転方向)の傾きということになる。そして、先行技術文献として挙げた特許文献3の技術事項から得られる知見によると、このような傾きが問題になるのは、主に中心軸線A1方向でヨーク202,204と弾性部材206,208との間に作用する力のアンバランスが起こり得る場合であることが分かる。
【0059】
本発明の発明者は、第2実施形態のように一対の弾性部材206,208でアーマチュア220を支持する場合においても、そのアーマチュア220に傾きを生じさせる構造上の要因に鑑み、ヨーク202,204と弾性部材206,208との間に作用する力にアンバランスを生じさせない構造を実現するに至ったものである。その構造は、以下に挙げた複数の態様により実現されている。
【0060】
〔第1態様〕
図11中(A):本構造の第1態様は、ヨーク202,204の当接部202b,204bが弾性部材206,208と曲面で接触する構造である。すなわち、弾性部材206,208の図示しない自由状態において対向部位206a,208aが平板状であるとすると、これらと接触する当接部202b,204bは平面ではなく曲面に形成されている。したがって、当接部202b,204bと対向部位206a,208aとの接触領域は、中心軸線A2方向に延びる直線状となっている。これにより、ヨーク202,204の当接部202b,204bからそれぞれ弾性部材206,208に作用する力Fの作用点が実質的に線状に狭められて集中するため、中心軸線A1方向に力Fの作用点が分散することがない。このため、第2実施形態の構造を想定した場合において、先行技術(特許文献3等)で問題となる中心軸線A1方向に拡がる力の作用点間の幅をほぼ無(ゼロ)とし、前記同様の課題を解決することができる。
【0061】
図11中(B):当接部202b,204bに形成する曲面は、以下の指標により好適に規定することができる。例えば、上側の当接部202bを例に挙げると、弾性部材206の変形状態で対向部位206aには撓みによる変形が生じているが、この撓み状態で対向部位206aに現れる曲率半径R1よりも、当接部202bに形成する曲面の曲率半径R2を小さくする(R1>R2)。これにより、上記のようにヨーク202側の当接部202bと弾性部材206の対向部位206aとの接触領域は中心軸線A1方向に線状に狭められ、力Fの作用点の分散がほぼ無(ゼロ)に抑えられる。
【0062】
そして、ヨーク202,204の当接部202b,204bは、構造部の中心軸線A1,A2を中心として上下対称に配置されるので、上下のヨーク202,204から弾性部材206,208が受ける力Fが中心軸線A2,A3から互い違いにずれることがなく、
図11中(A)に示したアーマチュア220の矢印L方向の傾きの原因となるトルクの発生を非常に小さく抑えることができる。
【0063】
〔第2態様〕
図12は、
図11と同じ断面位置において本構造の第2態様を示す図である。このうち、
図12中(A)が全体の断面図であり、
図12中(B)が
図12中(A)の一点鎖線で囲まれた範囲を拡大した部分断面図である。
【0064】
図12中(A):第2態様では、ヨーク202,204に第1態様と異なる当接部402b,404bを形成するが、その他は第1態様と同じである。このような第2態様では、当接部402b,404bが弾性部材206,208とエッジ(端縁)で接触する構造である。ここでも同様に、弾性部材206,208の図示しない自由状態において対向部位206a,208aが平板状であるとすると、これらと接触する当接部402b,404bは平面形状ではなく、対向部位206a,208aに対して凸形状(山形状)に形成されており、その接触部分がエッジ形状となっている。したがって、当接部402b,404bと対向部位206a,208aとの接触領域は、同じく中心軸線A2方向に延びる直線状となっている。これにより、ヨーク202,204の当接部402b,404bからそれぞれ弾性部材206,208に作用する力Fの作用点が実質的に線状に狭められて集中するため、中心軸線A1方向に力Fの作用点が分散することがなく、同様に中心軸線A1方向に拡がる力の作用点間の幅をほぼ無(ゼロ)とし、前記と同様の課題を解決することができる。
【0065】
図12中(B):当接部402b,404bに形成するエッジは、以下の指標により好適に規定することができる。ここでも同様に、例えば上側の当接部402bを例に挙げると、弾性部材206の変形状態で対向部位206aには撓みによる変形が生じているが、この撓み状態で対向部位206aに現れる接触領域を中心とした開き角θ1よりも、当接部402bに形成するエッジの開き角θ2を小さくする(θ1>θ2)。これにより、上記のようにヨーク202側の当接部402bと弾性部材206の対向部位206aとの接触領域は中心軸線A1方向に線状に狭められ、力Fの作用点の分散がほぼ無(ゼロ)に抑えられる。
【0066】
そして、ヨーク202,204の当接部402b,404bは、構造部の中心軸線A1,A2を中心として上下対称に配置されるので、上下のヨーク202,204から弾性部材206,208が受ける力Fが中心軸線A2,A3から互い違いにずれることがなく、
図12中(A)に示したアーマチュア220の矢印L方向の傾きの原因となるトルクの発生を非常に小さく抑えることができる。
【0067】
上述した複数の実施形態によれば、以下の利点が得られる。
(1)第1実施形態で例示した第1及び第2態様の構造を導入することにより、電気機械変換器100のヨーク102,104と弾性部材106,108との間に働く力のアンバランスによるアーマチュア120の傾きを改善し、電気機械変換器100の性能に悪影響を及ぼし歩留りが悪くなるという問題を解決する。
(2)上記は、第1実施形態のように二対の弾性部材106,108で構成される構造について示しているが、第2実施形態によれば、一対の弾性部材206,208で構成される構造の場合にも適用することができる。これにより、電気機械変換器200のヨーク202,204と一対の弾性部材206,208との間に働く力のアンバランスによるアーマチュア220の傾きを改善し、電気機械変換器200の性能に悪影響を及ぼし歩留りが悪くなるという問題を解決する。
【0068】
本発明は上述した複数の実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することが可能である。
【0069】
第1実施形態では、弾性部材106,108の対向部位106a,108aが溝形状に形成されている例を挙げたが、第2実施形態のように全幅にわたって平板状の部位を対向部位106a,108aとしてもよい。
【0070】
各実施形態とも、構造部を構成する各種の部材(磁石、ヨーク、コイル等)の形状や大きさ、細部について特に制約はなく、適宜に変形したり変更したりすることが可能である。
【0071】
当接部102b,104b等をエッジ形状とする場合、開き角θ2が例示の場合よりもさらに鋭角であってもよいし、エッジが単なる山形ではなく、多段階に角度が付いたエッジであってもよい。
【0072】
また、当接部102b,104b等を曲面とする場合、対向部位106a,108a等と接触する部分だけを曲面形状とし、非接触の部位は曲面でない構造としてもよい。
【符号の説明】
【0073】
100 電気機械変換器
102,104 ヨーク
102b,104b 当接部
106,108 弾性部材
106a,108a 対向部位
110,112,114,116 磁石
118 コイル
120 アーマチュア