(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047049
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】異方性無機微粒子を用いた粉塵捕集層を有するフィルタエレメント、該フィルタエレメントを備えた集塵機
(51)【国際特許分類】
B01D 39/20 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
B01D39/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152751
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000227250
【氏名又は名称】日鉄鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 博道
(72)【発明者】
【氏名】小倉 慎一
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 雄次
(72)【発明者】
【氏名】篠田 賢
(72)【発明者】
【氏名】星 徹
【テーマコード(参考)】
4D019
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA06
4D019BA13
4D019BB06
4D019BD01
4D019CB06
(57)【要約】
【解決すべき課題】
従来と圧力損失が変わらず、且つ3μm以下の小粒子径の微粉体製品の捕集が可能な、フィルタエレメントの提供。
【解決手段】
無機物で長径/短径比が2.0以上の異方性粒子を1~95wt%含む微粒子をフィルタエレメント素材の表面に固着して得たフィルタエレメントを用いて、集塵フィルタを構成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機物で長径/短径比が2.0以上の異方性粒子を含む微粒子を固着して成る粉塵捕集層を備えたフィルタエレメント。
【請求項2】
フィルタエレメント素材及び粉塵捕集層を構成する全微粒子に対し、異方性粒子を0.2wt%~10.0wt%含む請求項1記載のフィルタエレメント。
【請求項3】
異方性粒子が導電物質で被覆されている請求項1又は2に記載のフィルタエレメント。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルタエレメントを備えた集塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均粒子径が約3μm以下の微粉体を捕集可能な集塵フィルタを構成する粉塵捕集層に係る技術である。
具体的には、フィルタ素材の表面に粉塵捕集層を形成する際に、フィルタ素材の表面に塗工する塗工液を構成する微粒子として、異方性を持った無機物からなる微粒子を用いることにより、従来技術では捕集困難であった平均粒子径が約3μm以下の粉塵を捕集可能なフィルタエレメントを得るものである。
また、異方性を持った無機物からなる微粒子表面へ導電性被膜を形成した粒子を使用することにより、平均粒子径が約3μm以下の粉塵を捕集可能な帯電防止仕様のフィルタエレメントを得るものである。
【背景技術】
【0002】
集塵フィルタのフィルタエレメントは、樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材と、樹脂微粒子からなる粉塵捕集層とから構成される。また、フィルタエレメントの仕様によっては、導電性を呈するカーボン層を追加して構成することがある。
【0003】
フィルタエレメント素材は、特許文献1,2などに例示された方法によって、合成樹脂粉末を焼結して得ることができ、得られた合成樹脂の焼結体を構成する個々の合成樹脂の粒子の間には、空気の通過が可能な空隙が形成されている。
集塵フィルタのフィルタエレメントの粉塵捕集層は、粉塵捕集層として使用する樹脂微粒子を水系の溶媒に懸濁させて、粉塵捕集層として使用する樹脂微粒子を含有した塗工液を調製し、樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材の表面に、前記塗工液を塗布後、乾燥することにより、粉塵捕集層を形成する。
【0004】
また、帯電防止仕様のフィルタエレメントに於いては、導電性を呈するカーボン粉を水系の溶媒に懸濁させて、導電性を呈するカーボン粉を含有する塗工液を調製し、樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材の表面に前記カーボン塗工液を塗布後、乾燥することにより、導電性を呈するカーボン層を形成する。その後、粉塵捕集層として使用する樹脂微粒子を含有した塗工液を塗布後、乾燥することにより、粉塵捕集層を形成する。
【0005】
粉塵捕集層として使用する樹脂の微粒子は、集塵フィルタを用いて捕集する粉塵の性質および粒子径に応じて、樹脂の材質および粒子径を選択する。粉塵捕集層として使用する樹脂の材質としては、球状のポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、などから選択し、樹脂の粒子径は、1~100μmの範囲から選択する。
【0006】
粉塵捕集層は、該捕集層に使用する樹脂の微粒子を個々に積層して形成し、該捕集層を構成する個々の樹脂微粒子の間には、空気の通過が可能な空隙を有する構造を有する。捕集対象粒子を含有する含塵空気の塵分は、粉塵捕集層で捕捉され、前記粉塵捕集層によって塵分が捕集された後の清浄空気は、前記捕集層に形成された空気の通過が可能な空隙及びフィルタエレメント素材の空隙を通過して前記フィルタエレメントの内側に流れ込む。
【0007】
ここで、一般的な集塵機の構造について説明する。
集塵機10は、密閉されたケーシング12を有し、その内部は区画壁である上部天板14によって下部の集塵室16と、上部の清浄空気室18とに分けられ、ケーシングの中腹に下部の集塵室へ連通する含塵空気の供給口20が設けられる。またケーシングの上部には、清浄空気室へ連通する清浄空気の排出口22が設けられている。さらに下部天板の下面には、中空扁平状のフィルタエレメント24が所定の間隔で取り付けられており、ケーシングの下部には、除塵された粉塵を排出するホッパ26と、その粉塵の取り出し口28が設けられている。
【0008】
フィルタエレメント24は、
図1にその外観の概略を示すように、上端部に大径部32が形成され、大径部はフレーム34を収容するように膨らんだ形状に形成されている。大径部内に収容されたフレームの両端部は、締付ボルト36を介して大径部と一体的に下部天板14に取り付けられている。なお下部天板とフレームとの間には、パッキン38が介装されている。
【0009】
そしてフィルタエレメント外観図のP-P断面を斜視図で示したように、フィルタエレメント内部は、上端部が開口した中空の室24aが複数形成されており、エレメントの粉塵付着表面は、波形形状或いは蛇腹形状となって付着面積を増大させている。含塵空気供給口20からケーシングの集塵室16内に供給された含塵空気は、中空形状のフィルタエレメント24の濾過体を通過して内側に流れ込む。このとき粉塵は、フィルタエレメントの表面に付着・堆積して捕集され、フィルタエレメントの内側に流れ込んだ清浄空気は、フレームの通路を経てケーシングの上部の清浄空気室18に入り、その排出口22から所定の場所に導かれる。
【0010】
フィルタエレメントの表面に粉塵が付着・堆積すると、空気通路が閉塞されて圧力損失が増加するため、フィルタエレメント24をそれぞれ一定の時間間隔をおいて順次逆洗し、フィルタエレメントの表面に付着・堆積した粉塵を除去する。即ち、タイマー制御等により一定の間隔をおいて図示しない逆洗バルブを順次開閉して、それぞれの対応する噴射管から逆洗のためのパルスエアを噴射する。これにより、パルスエアがそれぞれのフィルタエレメントの内側から外側に向かって逆流し、フィルタエレメント表面に付着・堆積した粉塵が飛散することなく、堆積したままの状態で払い落とされる。これにより払い落とされた粉塵は、ホッパ26を通じて取り出し口から回収される。
【0011】
前述の集塵フィルタの装置構成および含塵空気からの粉塵の除去工程、フィルタエレメントの構成との相乗効果によって、樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材と、樹脂微粒子からなる粉塵捕集層とから構成されるフィルタエレメントは、長期間に亘って連続使用が可能な集塵フィルタエレメントとして、国内外の鉱山、砕石所、製鉄所等に於ける発塵箇所の環境集塵手段として広く採用されてきた。また、近年ではリチウムイオン電池材料の微粉体ならびに電子写真プリントシステムによる印字用途等の微粉体製品の回収用途にも採用されている。
【0012】
近年、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車の駆動用電源として多用されてきているリチウムイオン電池に於いては、電池容量の高容量化、充放電の繰り返しによる電池容量の低下防止などの課題解決のため、材料の開発が行われている。例えば、非特許文献1「アトマイズ法より作製したLiイオン電池負極材用SiSnFeCu合金粉末の高特性化」によると、リチウムイオン電池の高容量化のためには、正極および負極に使用する材料をより高容量化が効果的で、Si系負極材として使用するガスアトマイズ法により作製したSiSnFeCu合金粉末の粒度の違いによる充放電サイクル特性についての検討を行った結果、平均粒子径が2μm程度の合金粉末を用いた場合、平均粒子径が18μmの合金粉末を用いた場合と比較して、充放電サイクル特性が良好となり、充放電の繰り返しによる電池容量の低下防止効果が高くなることが記述されている。
【0013】
また、電子写真プリントシステムに於いては、描画の高画質化が進み、高級印刷分野に於いてはフルカラー画質または銀塩写真に近い高画質品位が求められている。これに伴い、印字用途として使用される微粉体(トナー)の粒子径は、年代とともに小径化する傾向にあり、非特許文献2によると、1990年頃に従来の混練粉砕法を用いて製造されていたトナーの平均粒子径が8~12μmであったのに対し、2000年以降はその製造方法がケミカル製法に移行し、平均粒子径も5~9μmが主流となっている。
【0014】
当該微粉体を製造する電子写真プリントシステム機器メーカ各社からは、小粒子径の微粉体の捕集に対応が可能な集塵フィルタエレメントが熱望されてきたものである。
前述の要望を受け、樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材の表面に形成する粉塵捕集層に使用する樹脂微粒子の選定および前記樹脂微粒子を塗工する際の塗工液の調製方法について試行錯誤を重ねた結果、フィルタエレメント素材の表面に樹脂微粒子の均一な層を形成するに至り、微細な粉体の捕集に対応することが可能なフィルタエレメントの製作を行うに至った。
【0015】
しかしながら、前記の方法及び処方によって樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材の表面に対して形成された樹脂微粒子からなる粉塵捕集層は、前記粒子よりも更に小粒子径である平均粒子径が約3μm以下の微粉体を完全に捕集することは出来ず、当該微粉体の一部がフィルタエレメントを通過し、清浄空気室へ流入してしまう事が課題となっていた。
【0016】
これに対応することを目的に、本発明者らは粉塵捕集層を構成する粒子を平均粒子径が約3μm以下の球状粒子として試行を行ったが、フィルタエレメントを通過する気流の圧力損失が甚大となってしまい、実用的には至らなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2003-126627号公報
【特許文献2】特開2004-202326号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】大同特殊鋼社発行の技報「電気製鋼」第86巻2号(2016) p.101-106
【非特許文献2】富士ゼロックス社発行のテクニカルレポートNo.20 (2011) 「EA-Ecoトナー」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、フィルタの圧力損失を従来のフィルタと同程度に抑えつつ平均粒子径が約3μm以下の微粉体をほぼ完全に捕集することができるフィルタエレメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記従来技術の課題に鑑み、さらに粉塵捕集層を構成する粒子について試行錯誤を重ねた結果、フィルタの用途に見合った性質を備えていれば素材は問わないが、異方性を持った無機物で長径/短径比が2.0以上、好ましくは10.0以上の微粒子を粉塵捕集層として用いることにより、平均粒子径が約3μm以下の微粉体をほぼ完全に捕集、しかもフィルタの圧力損失も、従来のフィルタと同程度に抑えることができることを見出し、本発明に至ったものである。なお、本発明でいう微粒子として、汎用性があり比較的入手が容易な素材としては、平均粒子長10μm程度のチタン酸カリウムや酸化チタン、又はこれら粒子表面に導電性被膜を形成した微粒子を用いることができる。また、ここで述べる「短径」とは、長径に対し直角方向の径のうち最大箇所の径をいい、「平均粒子径」とは、マイクロトラックなどの粒度分布測定装置で測定した際のD50値を指す。
また、本願での粉塵の捕集効率は、集塵負荷確認試験において清浄空気側に抜けた粉体の量を、デジタル粉塵計を用いて測定し評価した。なお、一般的な空間の粉塵濃度をデジタル粉塵計で測定したところ、20cpm程度の数値を示すことから、粉塵の捕集効率は、この数値を基準に検討したものである。
【0021】
本発明の技術による粉塵捕集層として使用する異方性無機微粒子としては、チタン酸カリウムの市販品として「ティスモN」(大塚化学(株)製:平均粒子径0.3~0.6μm、平均粒子長10~20μm)、同じく導電性被膜を形成した酸化チタンの市販品として、酸化スズで被膜された「デントールWK-500」(同上製:平均粒子径5~15μm)が例示される。
【0022】
粉塵捕集層として使用する異方性無機微粒子の添加率は、塗工液の全成分に対して占める割合で1wt%~50wt%から選択し、粉塵捕集層中の水分以外の全固形分(接着剤、添加材含む)に対する割合で1~95wt%、粉塵捕集層中の全微粒子(水分、接着剤、添加剤を除く)に対する割合で75~100wt%となるようにすることが好ましい。より好ましくは、異方性無機微粒子を、塗工液の全成分に対して占める割合で10wt%~20wt%、フィルタエレメント素材及び粉塵捕集層を構成する全微粒子(水分、接着剤、添加剤を除く)に対する割合で0.2~10.0wt%の範囲で添加する。
塗工液に含有される異方性無機微粒子の量が少ない場合は、異方性無機微粒子が全体に行き渡らず、焼結体の気孔が十分に満たされない。また液粘度が低いため、塗工した溶液が乾燥するまでの間に垂れ落ち、捕集層の欠損となる。過剰な場合は液粘度が高くなり、フィルタエレメント焼結体表面へ均質に塗工することが困難になる。丁度良い範囲の場合は異方性無機微粒子添加後、撹拌することで粘性を持った液状となる。塗工するためにフィルタエレメント上に乗せる際には、液状の内にスプレーにより吹き付けるか、フィルタエレメント素材表面へ滴下した塗工液を刷毛やヘラ等で塗り拡げる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の技術による調合溶液を塗工液として用いて、樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材に塗工し、フィルタエレメント表面に粉塵捕集層を形成した場合、平均粒子径が約3μm以下の微粉体を捕集することが可能となる。この粉塵捕集層は捕集性能に優れ、フィルタエレメントを通過する気流の圧力損失も実用範囲内であり、フィルタエレメント素材を構成する樹脂焼結体の気孔の大きさが大きな場合や塗工するフィルタエレメント素材が屈曲している場合でも塗工することが可能である。
【0024】
調合溶液に使用する異方性無機微粒子の含有量および塗工量を調整することによって、集塵捕集層に於ける気孔の大きさを調整することが可能である。
また帯電防止仕様のフィルタエレメントに於いては、従来導電性を有する層と粉塵捕集層の2層を形成する工程が必要であったが、導電性を有する微粒子を含有する塗工液を用いることで、1工程に集約することが可能である。
【0025】
このことにより、本発明の技術による調合溶液を塗工液として用いて、樹脂焼結体からなるフィルタエレメント素材に塗工し、フィルタエレメント表面へ粉塵捕集層を形成した場合に、捕集対象粒子の平均粒子径が約3μm以下の微細な粉体を長時間捕集した場合に於いても、捕集対象粉体が粉塵捕集層を構成する樹脂微粒子間の空隙を通過し、清浄空気側に抜けてしまう「目抜け」や、粉塵捕集層を構成する樹脂微粒子間の空隙に微細な粉体が侵入する「目詰まり」の発生頻度が大幅に低減したフィルタエレメントを得ることが可能となり、集塵機ユーザに於いての集塵機保守の効率化および生産性の向上に資することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】(1)一般的な集塵機の外観図、(2)フィルタエレメントの外観図、及び(3)その断面斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例に基づき具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0028】
《通常仕様の粉塵捕集層の形成》
塗工液総量に対し市水82.0wt%、接着剤として酢酸ビニールとアクリル酸エステルの共重合体(商品名:モビニールDM5 ジャパンコーティングレジン(株) 製)3.0wt%を混合した後、チタン酸カリウム(商品名:ティスモN 大塚化学(株)製)15.0wt%を添加してスラリーとし、充分に攪拌して塗工液を調製した。
前記塗工液をスプレー吹き付け器具(商品名:WIDER1L-2-12J2S アネスト岩田(株)製)を使用してシンターラメラーラボ焼結板基材(濾過面積0.005m
2)へ塗工し、その後ギアオーブン(商品名:GO-A2 (株)東洋精機製作所製)にて50℃2時間乾燥して、本発明による粉塵捕集層を形成したラボ試験片を得た。
前記で得られたラボ試験片をシンターラメラーラボ集塵装置(
図2参照 日鉄鉱業(株)製)に装着し、試験集塵粉として粒子径を日鉄鉱業(株)製「エルボージェット」などに例示される気流分級機で0.4μm~13μmの範囲に整え、平均粒子径が1.4μmの鉄粉を用いて、濾過風速6.0m/min(処理風量30L/min)、粉塵フィード濃度10g/m
3の条件下で集塵負荷確認試験を5分間行った。集塵負荷確認試験に於いては、ラボ試験片を通過して清浄空気側へ抜けた粉体の量をデジタル粉塵計(商品名:LD-3K2 柴田科学(株)製)により1分間毎に計測[cpm]すると共に、試験中の圧力損失[kPa]について評価を行った。
清浄空気側へ抜けた粉体の量(含塵濃度)は、実施例1及び実施例2において試験開始時0~19cpmと一般的な空間同等の低い値であったのに対し、比較例では63~86cpmであった。比較例でも試験経過とともに含塵濃度は低下したが、これは試験装置へフィードされた試験集塵粉が、それまでにフィルタエレメント表面へ付着・堆積した試験集塵粉自身の層により捕集され、清浄空気側へ抜けていく粉体が減少したためと示唆される。実施例では試験開始時から試験集塵粉をほぼ完全に捕集出来ており、これはエレメント表面に塗工した粉塵捕集層で微細な粉体をほぼ全て捕集出来ているといえる。比較例では清浄空気側へ抜けてしまい、時間経過してもエレメント表面に付着・堆積しない微細な粉体も、実施例では捕集可能であると示唆される。
また圧力損失は、比較例1と比較し、試験開始時はやや高めであったが、5分後には逆転し低い値となった。比較例2に対しては常に低い値であった。このことから、本発明技術によって形成された粉塵捕集層は、長期間にわたり圧力損失を増加させることなく微細な粉体を捕集することが可能であると言える。
本事例1及び2の様に、最大貫通細孔径を小さくすることで、比較例では捕集出来なかった細かい微粉体を捕集出来る様になった。加えて平均貫通細孔径も小さくなっているが、粉塵捕集層を異方性微粒子により構成することで、フィルタエレメントの圧力損失を増加させることなく、捕集性を向上させることができた。