(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047098
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】燃料電池システムの制御装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220316BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20220316BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20220316BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20220316BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20220316BHJP
B60L 50/75 20190101ALI20220316BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
H01M8/04313
H01M8/04537
H01M8/04858
B60L50/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152832
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】小野 大輔
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA13
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD02
5H125CA18
5H125EE55
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC05
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127CC07
5H127DB69
5H127DB91
5H127DC45
5H127FF08
5H127FF11
(57)【要約】
【課題】移動体の動作に必要な必要電力量を正確に算出し、算出した必要電力量に応じて燃料電池システムの発電電力を適切に制御する。
【解決手段】移動体1に搭載された燃料電池システム100を制御する制御装置101であって、制御装置101は、任意地点を認識可能な位置認識部101aと、移動体が任意地点に移動するのに必要な必要電力量を算出する電力算出部101bと、を有し、位置認識部101aは、移動体の出発地点を出発地点、移動体の移動先地点を移動先地点として認識し、電力算出部101bは、出発地点から移動先地点までの移動に必要な電力を必要電力量として算出し、算出された必要電力量に応じて燃料電池スタック115の発電電力を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載された燃料電池システムを制御する制御装置であって、
任意地点の移動体の位置を認識可能な位置認識部と、
前記移動体が任意地点に移動するのに必要な必要電力量を算出する電力算出部と、
を有し、
前記位置認識部は、前記移動体の出発地点と移動先地点とを認識し、
前記電力算出部は、前記出発地点から前記移動先地点までの移動に必要な電力を前記必要電力量として算出し、
算出された前記必要電力量に応じて燃料電池スタックの発電電力を制御する、
燃料電池システムの制御装置。
【請求項2】
前記位置認識部は、経由地点を更に認識し、
前記電力算出部は、前記出発地点から前記経由地点までの移動に必要なエネルギーと、前記経由地点から前記移動先地点までの移動に必要なエネルギーとを含んで、前記必要電力量を算出する、
請求項1に記載の燃料電池システムの制御装置。
【請求項3】
荷役作業の対象物の荷重を参照して前記発電電力を制御する、
請求項1または請求項2に記載の燃料電池システムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、燃料電池システムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムを発電装置として搭載した電動車両等の移動体が存在する。この燃料電池システムにおいて、燃料電池スタックの発電電力を、低発電、中発電、高発電のように複数段階に制御するものが知られている。
【0003】
燃料電池システムにおいて、燃料電池スタックの発電電力が大きくなるほど、ラジエータ用ウォータポンプ及びラジエータファンなどの補機の消費電力が多くなり、発電効率が悪化することが知られている。また、燃料電池システムにおいて、低発電~中発電~高発電といった発電電力の変動が燃料電池スタックの劣化の原因となることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、燃料電池スタックの発電を、低発電、中発電、高発電の3段階に切り替えると共に、高発電を更に3段階に切り替えることで、高発電時の効率悪化を抑えようとする技術が開示されている。
【0006】
上記特許文献1に記載された技術は、発電効率を改善できるものの、発電電力の変動に起因する燃料電池スタックの劣化については何ら対策されていない。
【0007】
この開示は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、移動体の動作に必要な必要電力量を正確に算出し、算出した必要電力量に応じて燃料電池スタックの発電電力を適切に制御することができる燃料電池システムの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この開示に係る燃料電池システムの制御装置は、移動体に搭載された燃料電池システムを制御する制御装置であって、任意地点の移動体の位置を認識可能な位置認識部と、移動体が任意地点に移動するのに必要な必要電力量を算出する電力算出部と、を有し、位置認識部は、移動体の出発地点と移動先地点とを認識し、電力算出部は、出発地点から移動先地点までの移動に必要な電力を必要電力量として算出し、算出された必要電力量に応じて燃料電池スタックの発電電力を制御する。
【0009】
この開示に係る燃料電池システムの制御装置において、位置認識部は、経由地点を更に認識し、電力算出部は、出発地点から経由地点までの移動に必要なエネルギーと、経由地点から移動先地点までの移動に必要なエネルギーと含んで、必要電力量を算出してもよい。
【0010】
この開示に係る燃料電池システムの制御装置において、荷役作業の対象物の荷重を参照して発電電力を制御してもよい。
【発明の効果】
【0011】
この開示に係る燃料電池システムの制御装置によれば、移動体の移動に必要な必要電力量を正確に算出し、算出した必要電力量に応じて発電電力を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1の燃料電池システムを搭載する移動体の構成を示す構成図である。
【
図2】実施の形態1の移動体の移動の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この開示による燃料電池システムの制御装置の実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0014】
実施の形態1.
はじめに、実施の形態1における移動体1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、実施の形態1の燃料電池システム100を搭載する移動体1の構成を示す構成図である。
【0015】
[移動体の構成]
図1に示される移動体1は、主に、燃料電池システム100と、車両部200とを備えている。
【0016】
燃料電池システム100には、制御装置101と、操作パネル103と、記憶部107と、水素タンク112と、コンプレッサ113と、水素供給弁114と、燃料電池スタック115と、電圧変換部116と、蓄電装置117と、補機119とが設けられている。
【0017】
制御装置101は、燃料電池システム100の発電に関連する各種の制御と、移動体1の動作に必要な必要電力量に応じた発電電力の適切な制御とを行う。制御装置101内には、位置認識部101aと、電力算出部101bとが設けられている。
【0018】
制御装置101において、位置認識部101aは、車両制御部201を介した測位センサ205からの測位情報に基づいて、任意地点における移動体1の位置を推定または認識し、位置認識情報を生成する。制御装置101において、電力算出部101bは、移動体1が任意地点に移動するのに必要な必要電力量を算出する。また、制御装置101は、位置が認識された地点A~地点B~地点Xのそれぞれの通過時刻から移動時間を算出する。ここで、地点Aは出発地点、地点Bは経由地点、地点Xは移動先地点である。
【0019】
操作パネル103は、燃料電池システム100に対する指示を受け付ける操作部であると共に、各種情報を表示する。記憶部107は、移動体1の任意地点の位置認識情報,移動経路の情報,及び作業情報を含む各種情報を記憶する。
【0020】
水素タンク112は、充填されている水素を燃料電池スタック115に供給する。コンプレッサ113は、制御装置101に制御され、酸素を含む空気を燃料電池スタック115に供給する。水素供給弁114は、制御装置101に制御され、水素タンク112から燃料電池スタック115に供給する水素ガス量を調整する。燃料電池スタック115は、制御装置101の制御に基づいて、水素供給弁114を介した水素タンク112からの水素とコンプレッサ113からの空気に含まれる酸素とにより発電を行う。
【0021】
電圧変換部116には、第1電圧変換部116aと、第2電圧変換部116bとが設けられている。第1電圧変換部116aは、燃料電池スタック115の発電出力を、車両部200の車両負荷210用の一定の電圧に変換し、主機系電力として第1蓄電装置117aと車両負荷210とに供給する。たとえば、第1電圧変換部116aは、電圧80ボルトを電圧48ボルトに変換する。
【0022】
第2電圧変換部116bは、第1電圧変換部116aで電圧変換された電力を、更に低い電圧に変換し、補機系電力として第2蓄電装置117bと補機119とに供給する。たとえば、第2電圧変換部116bは、電圧48ボルトを電圧12ボルトに変換する。
【0023】
蓄電装置117には、第1蓄電装置117aと、第2蓄電装置117bとが設けられている。第1蓄電装置117aは、第1電圧変換部116aの出力と並列に接続されて充電され、車両部200の車両負荷210に瞬間的な大電流が流れる際に放電する。第1蓄電装置117aは、電気2重層キャパシタ、リチウムイオン・キャパシタなどにより構成される。
【0024】
第2蓄電装置117bは、補機119用の蓄電装置であり、第2電圧変換部116bで変換された補機系電力により充電される。第2蓄電装置117bは、補機119の他、制御装置101及び図示されないリレーなどに補機系電力を供給する。第2蓄電装置117bは、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオンバッテリなどにより構成される。
【0025】
補機119は、第2蓄電装置117bから補機系電力の供給を受け、燃料電池スタック115が発電する際に必要な補助機能によって、燃料電池スタック115の発電の実行を補佐する機器である。発電に必要な補助機能としては、発電に必要な酸素を含む空気及び水素の燃料電池スタック115への供給、並びに燃料電池スタック115の冷却などが該当する。具体的には、補機119には、コンプレッサ113、水素供給弁114、燃料電池スタック115に設けられるラジエータに付随するラジエータファン、及び冷却水ポンプなどが該当する。
【0026】
車両部200には、車両制御部201と、操作部203と、測位センサ205と、荷重検出部207と、車両負荷210とが設けられている。車両制御部201は、車両負荷210に含まれる走行モータによる移動体1の移動を制御する。操作部203は、移動体1の移動のための車両部200に対する操作を受け付け、受け付けた操作の情報を車両制御部201に通知する。移動体1が産業車両である場合、操作部203は、荷役の作業についての操作を更に受け付け、受け付けた操作の情報を車両制御部201に通知する。
【0027】
測位センサ205は、任意地点での測位情報を生成して車両制御部201に通知する。測位センサ205は、各地点近傍に貼付されたRFID(radio frequency identifier)またはQR(Quick Response)の読み取り、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System)を利用したによる測位、または、レーザセンサを使用したレーザーSLAM(Simultaneous Localization and Mapping, 自己位置推定と環境地図作成の同時実行)による空間認識、のいずれかにより、各地点の測位情報を生成する。
【0028】
荷重検出部207は、フォーク荷重センサ等により構成され、移動体1が産業車両であってフォーク等の荷役部を備える場合、荷役作業の対象物の荷重を検出し、検出した荷重情報を車両制御部201に通知する。荷役作業とは、荷物または貨物等の対象物について、積み付け、積み下ろし、取り出し、仕分け、荷揃え、運搬、などを行う各種の作業である。
【0029】
車両負荷210は、主機系電力の供給を受け、車両制御部201の制御に従って、移動体1を移動させる走行モータである。また、車両負荷210は、移動体1の制動時において回生発電により回生電力を生成し、生成した回生電力を燃料電池システム100に戻す。車両負荷210から燃料電池システム100に戻された回生電力は、第1蓄電装置117aに充電される。移動体1が産業車両である場合、車両負荷210は、走行モータに加え、荷役部を駆動する荷役モータが該当する。
【0030】
[燃料電池システムの制御装置の制御]
次に、実施の形態1における移動体1に搭載された燃料電池システム100の制御装置101の制御を説明する。
【0031】
移動体1の移動について以下のような前提条件が存在しており、
図2を参照して説明する。
図2は、実施の形態1に係る移動体1の移動の様子を示す説明図である。
・移動体1は、作業領域300内において任意地点を移動し、規則性のある荷役作業を繰り返す。
・移動体1は、地点Aと経由地Bを通り、地点X(XはX0~Xnのいずれか)へ移動し、地点Xにおいて荷役作業を行う。
・移動体1は、地点Xでの荷役作業を行った後、再び地点Aに戻る
・移動体1は、以上の移動と荷役作業とを繰り返す。
・移動体1は、荷役作業を行う毎に、位置認識部101aによって生成された荷役作業を行った地点Xにおける位置認識情報、位置認識部101aによって算出された地点A~地点B~地点Xの移動時間、電力算出部101bによって算出された地点A~地点B~地点Xの消費エネルギー、及び、電力算出部101bによって算出された地点A~地点B~地点Xの回生エネルギーを、記憶部107に記憶させる。
【0032】
以下、移動体1の任意地点への移動に伴う、移動体1に搭載された燃料電池システム100の制御装置101による制御について説明する。
【0033】
・移動体1は、地点Xでの荷役作業が終了して、次の荷役作業のため地点Aに戻る、あるいは、荷役作業のため駐機地点から地点Aに到達する。
・移動体1が地点Aに接近した時点で、制御装置101内の位置認識部101aは、測位センサ205からの測位情報を参照して、地点Aに接近した位置認識情報を生成する。
【0034】
・制御装置101内の電力算出部101bは、移動体1が地点Aに接近したとの位置認識情報を受け、移動体1が地点Aから地点Bを通って地点Xに移動するのに必要な必要電力量PNの算出を行う。なお、地点Xは、地点X0~Xnのうちのいずれかである。
・制御装置101内の電力算出部101bは、移動体1が任意地点に移動するのに必要な必要電力量PNを算出する。ここで、必要電力量PNを算出する際のパラメータを、以下のa~fとして定める。
a:地点Aにおける第1蓄電装置117aの蓄電エネルギー、
b:移動体1が地点Aから地点Bへ移動するための消費エネルギーから回生エネルギーを差し引いたエネルギー、
c:移動体1が地点Bから各地点Xへ移動するための消費エネルギーから、地点Bから各地点Xへ移動する際に生じる回生エネルギーを差し引いたエネルギー、
d:地点Aから地点Xまでの移動時間内に燃料電池システム100が第1蓄電装置117aへ蓄電可能な最大エネルギー、
e:第1蓄電装置117aの蓄電可能な最大エネルギー、
f:地点A~地点X間の移動時間、
である。
【0035】
なお、パラメータaは地点Aにおける実測値を用いる。パラメータb~d、及びfは、移動体1が前回の荷役作業により得た値を用いる。パラメータeは、第1蓄電装置117aの仕様により決定する。
また、地点X0~Xnのうちで最も遠距離または高低差大などの理由でエネルギーcの最も大きいものをmax(c)、地点X0~Xnのうちで近距離または高低差小などの理由でエネルギーcの最も小さいものをmin(c)、とする。
【0036】
以上のパラメータa~fを用いて、制御装置101内の電力算出部101bは、
必要電力量PNの最大値PNmax
=(d-a+b+max(c))/f、
必要電力量PNの最小値PNmin
=(e-a+b+min(c))/f、
のように、必要電力量PNについて、必要電力量PNの最小値PNminと、必要電力量PNの最大値PNmaxとを算出する。
【0037】
制御装置101は、移動体1が地点Aから地点Bを通って地点Xに移動して荷役作業をし、地点Aに戻る際に、
必要電力量の最大値PNmax>発電電力Pgen>必要電力量の最小値PNmin、
を満たすように、燃料電池スタック115の発電電力Pgenを制御する。
【0038】
移動体1が産業車両であってフォーク等の荷役部を備える場合、荷重検出部207は、荷役作業の対象物の荷重から生成した荷重情報を車両制御部201に通知する。車両制御部201は、荷重情報を制御装置101に通知する。制御装置101内の電力算出部101bは、車両制御部201から通知を受けた荷重情報を用いて必要電力量PNを補正する。具体的には、電力算出部101bは、荷重情報が予め定めた閾値より大きい場合、必要電力量PNを増やすように補正する。また、電力算出部101bは、荷重情報により必要電力量PNを補正せず、荷重情報を参照して発電電力Pgenを直接補正してもよい。
【0039】
以上のようにすることで、制御装置101は、移動体1の移動に必要な必要電力量PNを正確に算出し、算出した必要電力量PNに応じて発電電力Pgenを適切に制御することができる。この場合、各時点での状況の変化に応じて低発電~中発電~高発電のように発電電力を変動させることがないため、燃料電池スタック115の劣化を抑制することができる。
【0040】
また、以上のようにすることで、制御装置101は、移動体1が地点Aに接近したと認識した時点で、地点Aから地点Xまでの移動に必要な必要電力量PNを算出することができ、必要電力量PNを迅速かつ正確に算出することが可能になる。これにより、移動体1が地点Aから出発する時点では、算出した必要電力量PNに応じて制御装置101が発電電力Pgenを適切に制御することができる。
【0041】
[実施の形態1により得られる効果]
本開示に係る燃料電池システム100の制御装置101は、任意地点の位置を認識可能な位置認識部101aと、移動体が任意地点に移動するのに必要な必要電力量を算出する電力算出部101bと、を有し、位置認識部101aは、移動体の出発地点と移動先地点とを認識し、電力算出部101bは、出発地点から移動先地点までの移動に必要な電力を必要電力量PNとして算出し、算出された必要電力量PNに応じて燃料電池スタック115の発電電力Pgenを制御する。これにより、移動体1の移動に必要な必要電力量PNを正確に算出し、算出した必要電力量PNに応じて発電電力Pgenを適切に制御することができる。
【0042】
本開示に係る燃料電池システム100の制御装置101において、位置認識部101aは、出発地点と移動先地点との間の経由地点を更に認識し、電力算出部101bは、出発地点から経由地点までの移動に必要なエネルギーbと、経由地点から移動先地点までの移動に必要なエネルギーcとを含んで、必要電力量PNを算出する。すなわち、電力算出部101bは、出発地点から経由地点までの移動に必要な固定のエネルギーbと、経由地点から移動先地点までの移動に必要な変動可能性のあるエネルギーcとに分けて、必要電力量PNを算出する。これにより、固定のエネルギーbとは別に、エネルギーcについては、最大値のmax(c)と、最小値のmin(c)とに分けることで、必要電力量の最大値PNmaxと必要電力量の最小値PNminとを、迅速かつ正確に算出することができる。
【0043】
この開示に係る燃料電池システム100の制御装置101において、移動体1が産業車両であってフォーク等の荷役部と荷重検出部207とを備える場合、荷重検出部207により検出された荷重を参照して発電電力Pgenを制御することにより、発電電力Pgenを適切に制御することができる。
【0044】
その他の実施の形態.
上記の実施の形態1について、以下のような変形が可能である。
【0045】
燃料電池システム100において燃料電池スタック115の発電電力を制御する制御装置として、制御装置101と車両制御部201とを統合した統合型制御装置を設けることが可能である。
【0046】
以上の実施の形態1の説明では、移動体1として車両を具体例にしているが、車両に限定されず、燃料電池システム100を搭載可能な各種の移動体に適用することが可能である。例えば、一定の動作を開始する前に消費電力、または、消費電力と回生電力とに基づいて必要電力量PNを算出できれば、船舶または航空機であっても、燃料電池システム100において燃料電池スタック115の発電電力を適切に制御することが可能である。この場合も、発電電力を変動させることがなくなり、燃料電池スタック115の劣化を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本開示の燃料電池システム100の制御装置101は、産業車両のように比較的規則正しい運転態様で用いられる移動体1において、燃料電池スタック115の発電電力Pgenを適切に制御することができ、発電電力を変動させることがなくなり、燃料電池スタック115の劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 移動体、100 燃料電池システム、101 制御装置、101a 位置認識部、101b 電力算出部、103 操作パネル、107 記憶部、112 水素タンク、113 コンプレッサ、114 水素供給弁、115 燃料電池スタック、116 電圧変換部、116a 第1電圧変換部、116b 第2電圧変換部、117 蓄電装置、117a 第1蓄電装置、117b 第2蓄電装置、119 補機、200 車両部、201 車両制御部、203 操作部、205 測位センサ、207 荷重検出部、210 車両負荷、300 作業領域。