(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047124
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20220316BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20220316BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20220316BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220316BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220316BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220316BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20220316BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20220316BHJP
【FI】
H05K3/28 F
H01L23/14 R
H01L23/12 F
C08K3/013
C08L101/00
C08L63/00 C
H01L33/62
H01L33/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152865
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真俊
【テーマコード(参考)】
4J002
5E314
5F142
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002CD001
4J002CD011
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD041
4J002CD051
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4J002CD141
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4J002DJ046
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4J002FD310
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4J002GQ00
5E314AA25
5E314AA32
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5E314DD07
5E314FF01
5E314GG26
5F142CD02
5F142CE03
5F142CE16
(57)【要約】
【課題】高い反射率を有する硬化層へのキャビティ形成時の加工性に優れるプリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】白色無機顔料を含む無機充填材を含む熱硬化性の樹脂組成物の硬化物で形成された硬化層を用意する工程と、前記硬化層にサンドブラスト処理を施してキャビティを形成する工程と、を含む、プリント配線板の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色無機顔料を含む無機充填材を含む熱硬化性の樹脂組成物の硬化物で形成された硬化層を用意する工程と、
前記硬化層にサンドブラスト処理を施してキャビティを形成する工程と、を含む、プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
波長460nmの光に対する前記硬化物の反射率が、85%以上である、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記キャビティのアスペクト比が、1.0以下であり、
前記キャビティの壁面の勾配角度が、60°以上である、請求項1又は2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記硬化層の厚みが、5μm以上150μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記無機充填材の量が、前記樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、20質量%以上70質量%以下であり、
前記白色無機顔料の量が、前記樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上60質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂組成物が、エポキシ樹脂を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記硬化層を用意する工程が、前記樹脂組成物の層を用意する工程と、前記樹脂組成物の層を熱硬化する工程と、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
前記キャビティを形成する工程が、開口を有するマスクを前記硬化層上に設置する工程と、前記マスクの前記開口を通して砥粒を前記硬化層に噴射する工程と、を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
前記砥粒の平均粒径が、前記0.5μm以上50μm以下である、請求項8に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
前記砥粒の修正モース硬度が、5以上である、請求項8又は9に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
前記硬化層が、前記プリント配線板の層間絶縁層又はソルダーレジスト層である、請求項1~10のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板においては、携帯端末、コンピューター、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライト;照明器具の光源など、低電力で発光する発光ダイオード(LED)を直接実装して用いられる用途が増えてきている。
【0003】
このようなプリント配線板の最外層には、光源から発せられる光の取り出し効率を高めるため、光を反射させるための反射シートが形成されることがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LEDディスプレイ用のプリント配線板の反射シートは、白色無機顔料を含む感光性樹脂組成物によって形成されることが多い。前記の感光性樹脂組成物で形成された反射シートにキャビティを形成する場合、従来は、フォトリソグラフィを用いることが一般的であった。具体的には、フォトマスクを通して露光して反射シートに潜像を形成し、その後、前記の潜像を現像して、所望のパターン形状を有するキャビティを形成することが一般的であった。
【0006】
ところが、露光の際、光が白色無機顔料によって散乱されるので、反射シートの意図しない部分でも露光が行われることがあった。例えば、フォトマスクによって覆われた反射シートの部分に、白色無機顔料によって散乱された光が進入した結果、本来は露光されるべきでない部分が露光されることがあった。このような現象が生じると、得られるキャビティの形状がいびつになりやすいので、意図した形状を有するキャビティを形成する困難性が高くなる。そこで、高い反射率を達成できる白色無機顔料を含む樹脂組成物を用いた硬化層にキャビティを形成する工程において、加工性を高める技術の開発が求められている。
【0007】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたものであって、高い反射率を有する硬化層へのキャビティ形成時の加工性に優れるプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、白色無機顔料を含む無機充填材を含む熱硬化性の樹脂組成物の硬化物で形成された硬化層を用意する工程と、硬化層にサンドブラスト処理を施してキャビティを形成する工程と、を含む製造方法が、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0009】
〔1〕 白色無機顔料を含む無機充填材を含む熱硬化性の樹脂組成物の硬化物で形成された硬化層を用意する工程と、
前記硬化層にサンドブラスト処理を施してキャビティを形成する工程と、を含む、プリント配線板の製造方法。
〔2〕 波長460nmの光に対する前記硬化物の反射率が、85%以上である、〔1〕に記載のプリント配線板の製造方法。
〔3〕 前記キャビティのアスペクト比が、1.0以下であり、
前記キャビティの壁面の勾配角度が、60°以上である、〔1〕又は〔2〕に記載のプリント配線板の製造方法。
〔4〕 前記硬化層の厚みが、5μm以上150μm以下である、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
〔5〕 前記無機充填材の量が、前記樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、20質量%以上70質量%以下であり、
前記白色無機顔料の量が、前記樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上60質量%以下である、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
〔6〕 前記樹脂組成物が、エポキシ樹脂を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
〔7〕 前記硬化層を用意する工程が、前記樹脂組成物の層を用意する工程と、前記樹脂組成物の層を熱硬化する工程と、を含む、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
〔8〕 前記キャビティを形成する工程が、開口を有するマスクを前記硬化層上に設置する工程と、前記マスクの前記開口を通して砥粒を前記硬化層に噴射する工程と、を含む、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
〔9〕 前記砥粒の平均粒径が、前記0.5μm以上50μm以下である、〔8〕に記載のプリント配線板の製造方法。
〔10〕 前記砥粒の修正モース硬度が、5以上である、〔8〕又は〔9〕に記載のプリント配線板の製造方法。
〔11〕 前記硬化層が、前記プリント配線板の層間絶縁層又はソルダーレジスト層である、〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い反射率を有する硬化層へのキャビティ形成時の加工性に優れるプリント配線板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するため、工程(I)で用意される硬化層を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するため、工程(II-1)において硬化層上にドライフィルムを設けた様子を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するため、工程(II-1)においてドライフィルムに露光処理を施す様子を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するため、工程(II-1)においてドライフィルムに現像処理を施した後の様子を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するため、工程(II-2)においてサンドブラスト処理が行われた後の様子を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る製造方法で製造されるプリント配線板の一例を模式的示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0013】
[1.プリント配線板の製造方法の概要]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、無機充填材を含む熱硬化性の樹脂組成物の硬化物で形成された硬化層を用意する工程(I)と、硬化層にキャビティを形成する工程(II)とを含む。熱硬化性の樹脂組成物に含まれる無機充填材は、白色無機顔料を含む。また、工程(II)は、キャビティを形成するために硬化層にサンドブラスト処理を施すことを含む。
【0014】
前記のプリント配線板の製造方法では、白色無機顔料を含む熱硬化性の樹脂組成物の硬化物によって、硬化層が形成されている。白色無機顔料が光を効果的に反射できるので、硬化層は、高い光の反射率を有することができる。また、前記のプリント配線板の製造方法は、サンドブラスト処理によって硬化層にキャビティを形成している。サンドブラスト処理は、砥粒によって硬化層を物理的に削ってキャビティを形成できるので、白色無機顔料での光の反射の影響を排除できる。また、サンドブラスト処理は、大きな熱の発生が無く、硬化層を侵食する薬液の使用が不要であるので、樹脂成分の劣化を抑制できる。したがって、光、熱及び薬液によるキャビティの意図しない変形を抑制できるので、キャビティ形成時の加工性に優れる。よって、硬化層にキャビティを、意図した通りの形状に、高い精度で簡単に製造することが可能であるので、優れた加工性を達成できる。
【0015】
[2.硬化層を用意する工程(I)]
工程(I)では、樹脂組成物の硬化物で形成された硬化層を用意する。硬化層は、市場から購入して用意してもよく、樹脂組成物を用いて製造することで用意してもよい。樹脂組成物層を用いて硬化層を製造する場合、工程(I)は、樹脂組成物の層を用意する工程(I-1)と、樹脂組成物の層を熱硬化して硬化層を得る工程(I-2)と、を含みうる。以下、樹脂組成物の層を、適宜「樹脂組成物層」と呼ぶことがある。
【0016】
[2.1.熱硬化性の樹脂組成物]
<(A)無機充填材>
熱硬化性の樹脂組成物は、(A)無機充填材を含む。また、(A)無機充填材は、(A-1)白色無機顔料を含む。(A)白色無機顔料は、一実施形態において、波長500nmの光に対する反射率が90%以上である無機化合物のことをいう。(A)白色無機顔料にはシリカは含まれない。(A)白色無機顔料は、通常、反射率を向上させる機能を有する。(A)白色無機顔料は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
(A-1)白色無機顔料の材料の例としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化スズ、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等の白色金属酸化物;硫化亜鉛、硫化ストロンチウム等の白色金属硫化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の白色金属水酸化物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン等の白色金属窒化物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸鉛等の白色金属炭酸塩;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛等の白色金属硫酸塩;リン酸亜鉛、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム等の白色金属リン酸塩;ホウ酸アルミニウム等の白色金属ホウ酸塩;コーディエライト、タルク、クレー、雲母、ハイドロタルサイト、ベーマイト等の白色鉱物類等が挙げられる。
【0018】
これらの中でも、(A-1)白色無機顔料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、及び炭酸カルシウムから選ばれることが好ましく、酸化チタンが特に好適である。酸化チタンとしては、ルチル型、アナタース型、及びブルカイト型のいずれを用いてもよいが、反射率をより向上させる観点から、ルチル型が好ましい。酸化チタンは、硫酸法、塩素法などの方法により得られたものを用いることができる。(A-1)白色無機顔料の材料は、1種類単独であってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。(A-1)白色無機顔料の形状は、例えば、不定形状、破砕状、鱗片状又は球状の何れであってもよい。
【0019】
(A-1)白色無機顔料の市販品としては、例えば、堺化学工業社製の「PX3788」;石原産業社製のタイペーク「CR-50」、「CR-57」、「CR-80」、「CR-90」、「CR-93」、「CR-95」、「CR-97」、「CR-60」、「CR-63」、「CR-67」、「CR-58」、「CR-85」、「UT771」;デュポン社製のタイピュア「R-100」、「R-101」、「R-102」、「R-103」、「R-104」、「R-105」、「R-108」、「R-900」、「R-902」、「R-960」、「R-706」、「R-931」;日本軽金属社製「AHP300」;昭和電工社製アルナビーズ「CB-P05」、「CB-A30S」などが挙げられる。
【0020】
(A-1)白色無機顔料の比表面積としては、好ましくは0.5m2/g以上、より好ましくは1m2/g以上、特に好ましくは2m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは80m2/g以下、70m2/g以下又は60m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0021】
(A-1)白色無機顔料の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0022】
(A-1)白色無機顔料の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、(A-1)白色無機顔料の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、(A-1)白色無機顔料100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(A-1)白色無機顔料の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0023】
(A-1)白色無機顔料は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。表面処理剤としては、例えば、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、イソシアヌレート系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、酸無水物系シランカップリング剤、アルキルシランカップリング剤、フェニルシランカップリング剤等のシランカップリング剤が挙げられる。表面処理剤は、反射率を向上させる観点から、窒素原子を含まないシランカップリング剤が好ましく、フェニルシランカップリング剤、アルキルシランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤から選ばれるシランカップリング剤が特に好ましい。
【0024】
フェニルシランカップリング剤としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。アルキルシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等が挙げられる。エポキシ系シランカップリング剤としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0025】
ビニル系シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。(メタ)アクリル系シランカップリング剤としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。スチリル系シランカップリング剤としては、例えば、p-スチリルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0026】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「KBM-103」、「KBE-103」(フェニルシランカップリング剤);「KBM-13」、「KBM-22」、「KBE-13」、「KBE-22」、「KBM-3033」、「KBE-3033」、「KBM-3063」、「KBE-3063」、「KBE-3083」、「KBM-3103C」、「KBM-3066」、「KBM-7103」(アルキルシランカップリング剤);「KBM-1003」、「KBE-1003」(ビニル系シランカップリング剤);「KBM-303」、「KBM-402」、「KBM-403」、「KBE-402」、「KBE-403」(エポキシ系シランカップリング剤);「KBM-1403」(スチリル系シランカップリング剤);「KBM-502」、「KBM-503」、「KBE-502」、「KBE-503」、「KBM-5103」((メタ)アクリル系シランカップリング剤)等が挙げられる。
【0027】
表面処理剤による表面処理の程度は、(A-1)白色無機顔料の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、(A-1)白色無機顔料100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0028】
表面処理剤による表面処理の程度は、(A-1)白色無機顔料の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。(A-1)白色無機顔料の単位表面積当たりのカーボン量は、(A-1)白色無機顔料の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0029】
(A-1)白色無機顔料の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の(A-1)白色無機顔料を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された(A-1)白色無機顔料に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて(A-1)白色無機顔料の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0030】
樹脂組成物に含まれる(A-1)白色無機顔料の量は、硬化物の反射率を効果的に高める観点、及び、キャビティ形成時の加工性を効果的に高める観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0031】
(A)無機充填材は、必要に応じて、(A-1)白色無機顔料に組み合わせて更に(A-2)任意の無機充填材を含んでいてもよい。この(A-2)任意の無機充填材には、(A-1)白色無機顔料は含めない。(A-2)任意の無機充填材としては、例えば、波長500nmの光に対する反射率が90%未満である無機充填材を用いてよい。
【0032】
中でも、硬化物の反射率を効果的に高める観点、及び、キャビティ形成時の加工性を効果的に高める観点から、(A-2)任意の無機充填材としては、シリカが好ましい。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。
【0033】
シリカの市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0034】
(A-2)任意の無機充填材の比表面積及び平均粒径の範囲は、(A-1)白色無機顔料と同様でありうる。(A-2)任意の無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(A-2)任意の無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、(A-1)白色無機顔料における表面処理剤と同様のものが挙げられる。(A-2)任意の無機充填材の表面処理剤による表面処理の程度は、(A-1)白色無機顔料と同様でありうる。
【0036】
樹脂組成物に含まれる(A-2)任意の無機充填材の量は、硬化物の反射率を効果的に高める観点、及び、キャビティ形成時の加工性を効果的に高める観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下であり、例えば、0質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上等でありうる。
【0037】
樹脂組成物に含まれる(A)無機充填材の量(即ち、(A-1)白色無機顔料と(A-2)任意の無機充填材の合計の量)は、硬化物の反射率を効果的に高める観点、及び、キャビティ形成時の加工性を効果的に高める観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、特に好ましくは58質量%以下である。
【0038】
(A-1)白色無機顔料に対する(A-2)任意の無機充填材の質量比((A-2)成分の質量/(A-1)成分の質量)は、硬化物の反射率を効果的に高める観点、及び、キャビティ形成時の加工性を効果的に高める観点から、好ましくは0以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.8以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下、特に好ましくは1.5以下である。
【0039】
<(B)熱硬化性樹脂>
樹脂組成物は、熱硬化性を有するので、通常、(B)熱硬化性樹脂を含む。(B)熱硬化性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、硬化物の反射率を効果的に高める観点、及び、キャビティ形成時の加工性を効果的に高める観点から、(B)熱硬化性樹脂は、(B-1)エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0040】
(B-1)エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する硬化性樹脂を意味する。(B-1)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
(B-1)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0042】
樹脂組成物は、(B-1)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(B-1)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0043】
エポキシ樹脂には、温度25℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度25℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(B-1)エポキシ樹脂として、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0044】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0045】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0046】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0048】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0049】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「YX8000」(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(B-1)エポキシ樹脂は、固体状エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、又はそれらの組み合わせの何れであってもよいが、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、固体状エポキシ樹脂を含むことが好ましく、固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂との組み合わせであることが特に好ましい。
【0051】
(B-1)エポキシ樹脂として、固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(固体状エポキシ樹脂:液状エポキシ樹脂)は、好ましくは20:1~1:20、より好ましくは10:1~1:10、特に好ましくは3:1~1:3である。
【0052】
(B-1)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~1,000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~500g/eq.、さらにより好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0053】
(B-1)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0054】
樹脂組成物に含まれる(B-1)エポキシ樹脂の量は、硬化物の反射率を効果的に高める観点、及び、キャビティ形成時の加工性を効果的に高める観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
【0055】
樹脂組成物に含まれる(B-1)エポキシ樹脂の量は、硬化物の反射率を効果的に高める観点、及び、キャビティ形成時の加工性を効果的に高める観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。樹脂組成物の樹脂成分とは、別に断らない限り、樹脂組成物の不揮発成分のうちで(A)無機充填材を除いた成分をいう。
【0056】
(B)熱硬化性樹脂が(B-1)エポキシ樹脂を含む場合、(B)熱硬化性樹脂は、更に(B-2)硬化剤を含んでいてもよい。(B-2)硬化剤は、(B-1)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。(B-2)硬化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(B-2)硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノール系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、チオール系硬化剤等が挙げられる。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(B-2)硬化剤は、フェノール系硬化剤を含むことが好ましい。
【0058】
フェノール系硬化剤は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する硬化剤であり、例えば、ビスフェノール系硬化剤、ビフェニル型フェノール系硬化剤、ナフタレン型フェノール系硬化剤、フェノールノボラック型フェノール系硬化剤、ナフチレンエーテル型フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、ポリフェニレンエーテル型フェノール系硬化剤、フェノールアラルキル型フェノール系硬化剤、クレゾールノボラック型フェノール系硬化剤、ビスフェノール型フェノール系硬化剤等が挙げられる。中でも好ましくは、ビスフェノール系硬化剤であり、より好ましくは、フッ素原子を有するビスフェノール化合物、脂環構造を有するビスフェノール化合物、フルオレン骨格を有するビスフェノール化合物から選ばれるビスフェノール系硬化剤、さらに好ましくは、フッ素原子を有するビスフェノール化合物、特に好ましくは、ビスフェノールAFである。
【0059】
フェノール系硬化剤の市販品としては、例えば、セントラル硝子社製の「BiS-AF」、「BiSOFP-A」、「BiS-Z」、「BiSOC-FL」等が挙げられる。
【0060】
カルボジイミド系硬化剤は、1分子中に2個以上のカルボジイミド構造を有する硬化剤であり、例えば、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。
【0061】
カルボジイミド系硬化剤の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0062】
酸無水物系硬化剤は、1分子中に1個以上のカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)を有する硬化剤であり、例えば、無水フタル酸、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物等の芳香族酸無水物系硬化剤;テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族酸無水物系硬化剤;スチレン/無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル/スチレン/無水マレイン酸共重合体等の重合体無水物系硬化剤などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」、三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」、日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」等が挙げられる。
【0063】
アミン系硬化剤は、2個以上のアミノ基を有する硬化剤であり、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0064】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0065】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0066】
チオール系硬化剤は、2個以上のメルカプト基を有する硬化剤であり、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0067】
(B-2)硬化剤の反応基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。反応基当量は、反応基1当量あたりの硬化剤の質量である。反応基は、例えば、フェノール系硬化剤であればフェノール性水酸基である。酸無水物系硬化剤の場合はカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)1当量で反応基2当量に相当する。
【0068】
樹脂組成物に含まれる(B-2)硬化剤の量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0069】
樹脂組成物に含まれる(B-2)硬化剤の量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0070】
<(C)熱可塑性樹脂>
樹脂組成物は、上述した成分に組み合わせて、更に(C)熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。(C)熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(C)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂から選ばれる樹脂が好ましく、フェノキシ樹脂が特に好ましい。
【0072】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YX7200B35」、「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0073】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業(株)製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0074】
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含むモノマー成分を重合してなる重合体を意味する。アクリル樹脂を構成するモノマー成分には、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーに加えて、(メタ)アクリルアミド系モノマー、スチレン系モノマー、官能基含有モノマー等が共重合成分として含まれていてもよい。アクリル樹脂の具体例としては、東亜合成社製の「ARUFON UP-1000」、「ARUFON UP-1010」、「ARUFON UP-1020」、「ARUFON UP-1021」、「ARUFON UP-1061」、「ARUFON UP-1080」、「ARUFON UP-1110」、「ARUFON UP-1170」、「ARUFON UP-1190」、「ARUFON UP-1500」、「ARUFON UH-2000」、「ARUFON UH-2041」、「ARUFON UH-2190」、「ARUFON UHE-2012」、「ARUFON UC-3510」、「ARUFON UG-4010」、「ARUFON US-6100」、「ARUFON US-6170」などが挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0076】
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0077】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0078】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0079】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0080】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0081】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学(株)製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St1200」、「OPE-2St2200」、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0082】
ポリカーボネート樹脂としては、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0083】
(C)熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下である。。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0084】
(C)熱可塑性樹脂は、20μmに製膜した場合の膜面に対して垂直方向から入射した波長460nmの光の透過率が80%以上となる熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0085】
樹脂組成物に含まれる(C)熱可塑性樹脂の量は、硬化物の反射率を効果的に高める観点、及び、キャビティ形成時の加工性を効果的に高める観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは35質量%以下である。
【0086】
樹脂組成物に含まれる(C)熱可塑性樹脂の量は、硬化物の反射率を効果的に高める観点、及び、キャビティ形成時の加工性を効果的に高める観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは75質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、特に好ましくは55質量%以下である。
【0087】
<(D)硬化促進剤>
樹脂組成物は、上述した成分に組み合わせて、更に(D)硬化促進剤を含んでいてもよい。(D)硬化促進剤は、(B-1)エポキシ樹脂等の(B)熱硬化性樹脂の硬化反応を促進させる機能を有する。(D)硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
(D)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、(D)硬化促進剤としては、より高い反射率を達成する観点から、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、リン系硬化促進剤がより好ましい。
【0089】
リン系硬化促進剤としては、より高い反射率を達成する観点から、ホスホニウム塩及びホスフィンからなる群より選ばれる1以上を含むことが好ましい。
【0090】
ホスホニウム塩としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0091】
ホスフィンとしては、例えば、トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物等が挙げられる。
【0092】
リン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、北興化学工業社製の「TBP-DA」等が挙げられる。
【0093】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0094】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」、四国化成社製の「1B2PZ-10M」等が挙げられる。
【0095】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0096】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0097】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0098】
樹脂組成物に含まれる(D)硬化促進剤の量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.8質量%以下であり、例えば、0質量%以上、0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。
【0099】
樹脂組成物に含まれる(D)硬化促進剤の量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
【0100】
<(E)任意の添加剤>
樹脂組成物は、上述した成分に組み合わせて、不揮発成分として、更に(E)任意の添加剤を含んでいてもよい。(E)任意の添加剤としては、例えば、ゴム粒子等の有機充填材;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。(E)任意の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(E)任意の添加剤の含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0101】
<(F)有機溶剤>
樹脂組成物は、上述した不揮発成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含んでいてもよい。(F)有機溶剤としては、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。(F)有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(F)有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0102】
樹脂組成物に含まれる(F)有機溶剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の全成分を100質量%とした場合、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下等でありうる。
【0103】
<樹脂組成物の製造方法>
樹脂組成物は、例えば、任意の調製容器に上述した各成分を任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合することによって、製造することができる。また、各成分を加えて混合する過程で、温度を適宜設定することができ、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、加えて混合する過程において又はその後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置又は振盪装置を用いて撹拌又は振盪し、均一に分散させてもよい。また、撹拌又は振盪と同時に、真空下等の低圧条件下で脱泡を行ってもよい。
【0104】
<樹脂シート>
硬化層の形成を簡便かつ効率よく行う観点から、樹脂組成物は、該樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を含む樹脂シートの形態で用意されることが好ましい。一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層を含む。
【0105】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0106】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0107】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0108】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0109】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「PET501010」、「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」;東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0110】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0111】
樹脂シートが含む樹脂組成物層の厚みの範囲は、後述する硬化層の厚みの範囲と同じでありうる。
【0112】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0113】
樹脂シートは、例えば、液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0114】
有機溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した有機溶剤と同様のものが挙げられる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0115】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物(樹脂ワニス)中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物(樹脂ワニス)を用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0116】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0117】
[2.2.樹脂組成物層を用意する工程(I-1)]
工程(I-1)では、樹脂組成物層を用意する。通常、樹脂組成物層は、適切な基板上に設けられることで用意される。基板に制限はなく、例えば、絶縁層及び導体層を備える回路基板を用いうる。好ましい回路基板としては、例えば、導体層で形成された導体回路を表面の少なくとも一部に備える回路基板;絶縁層と、絶縁層上に形成された導体層と、導体層上に形成されたソルダーレジスト層とを備える回路基板;などが挙げられる。
【0118】
樹脂組成物層は、例えば、圧縮成形法によって設けてもよい。また、樹脂組成物層は、例えば、基板上に樹脂組成物を塗布して設けてもよい。プリント配線板の製造を円滑に行う観点から、樹脂組成物層は、樹脂シートを基板に積層して設けることが好ましい。この積層は、通常、樹脂シートの樹脂組成物層と基板とが接合するように行われる。基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0119】
基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0120】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0121】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0122】
こうして設けられる樹脂組成物層の厚みの範囲は、後述する硬化層の厚みの範囲と同じでありうる。
【0123】
[2.3.樹脂組成物層を熱硬化する工程(I-2)]
工程(I-1)で樹脂組成物層を設けた後で、その樹脂組成物層を熱硬化させる工程(I-2)を行って、樹脂組成物の硬化物で形成された硬化層を得る。樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なりうる。一例において、硬化温度は、好ましくは120℃~240℃、より好ましくは130℃~220℃、さらに好ましくは150℃~210℃でありうる。また、硬化時間は、好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間でありうる。
【0124】
工程(I)は、工程(I-2)で樹脂組成物を硬化させる前に、樹脂組成物を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱する工程を含んでいてもよい。この工程では、例えば、樹脂組成物を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0125】
図1は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するため、工程(I)で用意される硬化層20を模式的に示す断面図である。
図1に一例を示すように、工程(I)によれば、通常、基板10上に硬化層20が設けられる。
図1では、樹脂シートの支持体(図示せず)が除去された様子を示すが、工程(I)で用意された硬化層20上には支持体があってもよい。
【0126】
硬化層20の厚みT20は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは130μm以下、特に好ましくは120μm以下である。硬化層20の厚みT20が前記範囲の下限値以上である場合、硬化層20の光反射率を効果的に高めることができる。また、硬化層20の厚みT20が前記範囲の上限値以下である場合、プリント配線板の薄型化を達成できる。また、硬化層20の厚みT20が前記範囲にある場合に、キャビティの加工性を効果的に高めることが可能である。
【0127】
[3.硬化層にキャビティを形成する工程(II)]
工程(I)で硬化層を用意した後で、この硬化層にサンドブラスト処理を施して、キャビティを形成する工程(II)を行う。サンドブラスト処理では、通常、砥粒をノズルから噴射させ、この砥粒を硬化層に衝突させる。一般的には、砥粒は、適切な圧力のエアーによって噴射される。砥粒の衝突によって硬化層が削られるので、硬化層にキャビティを形成できる。砥粒は、液体を含まない状態で噴射されてもよく(ドライブラスト処理)、液体を含むスラリーの状態で噴射されてもよい(ウェットブラスト処理)。
【0128】
熱硬化性の樹脂組成物の硬化物は、一般に、高い硬度を有することができる。よって、上述した工程(I)で用意された硬化層は、砥粒の衝突によって円滑に削られることができる。したがって、サンドブラスト処理による高い精度でのキャビティ形成が可能であり、優れた加工性を実現できる。熱硬化性の樹脂組成物による前記の利点は、感光性樹脂組成物を用いた場合とは対照的である。すなわち、感光性樹脂組成物の硬化物は、一般に柔軟であるので、砥粒の衝突によって正確に削ることは難しい。これに対し、熱硬化性の樹脂組成物を採用した本実施形態では、感光性樹脂組成物を用いる場合よりも優れた加工性を達成できる。
【0129】
所望の位置に選択的にキャビティを形成するために、サンドブラスト処理は、通常、硬化層上にマスクを設置した状態で行う。一般に、マスクは、キャビティを形成したい位置に開口を有する。よって、開口が形成された位置では、砥粒が硬化層に衝突し、硬化層が削られる。他方、開口が形成されていない位置では、マスクに遮られて砥粒が硬化層に衝突しないので、硬化層は削られない。したがって、マスクに覆われていない開口の位置に、キャビティを形成できる。このようにマスクを用いてサンドブラスト処理を行う場合、工程(II)は、マスクを硬化層上に設置する工程(II-1)と、マスクの開口を通して砥粒を硬化層に噴射する工程(II-2)と、を含みうる。
【0130】
[3.1.硬化層上にマスクを設置する工程(II-1)]
工程(II-1)では、硬化層上に、開口を有するマスクを設置する。マスクは、キャビティの形成が可能なものを任意に用いうる。中でも、開口の形状及びサイズを正確に制御できることから、マスクとしては、パターンドライフィルムを用いることが好ましい。
【0131】
パターンドライフィルムをマスクとして硬化層上に設ける場合、工程(II-1)は、例えば、
硬化層上に、ドライフィルムを積層する工程、及び、
フォトマスクを用いてドライフィルムに露光及び現像を行い、パターンドライフィルムを得る工程
を含みうる。
【0132】
図2は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するため、工程(II-1)において硬化層20上にドライフィルム30を設けた様子を模式的に示す断面図である。
図2に一例を示すように、工程(II-1)は、硬化層20上にドライフィルム30を積層する工程を含みうる。硬化層20とドライフィルム30との積層条件は、上述した基板と樹脂シートの積層条件と同じでありうる。
図2では、基板10とは反対側の硬化層20の表面20Uにドライフィルム30が接するように積層を行った例を示す。ただし、硬化層20上に樹脂シートの支持体(図示せず。)がある場合、この支持体を介して硬化層20上にドライフィルム30を積層してもよい。
【0133】
ドライフィルム30としては、露光及び現像によりパターンドライフィルムが得られるものを用いうる。中でも、サンドブラスト処理に対して耐性を有する材料で形成されたフィルムが好ましい。例えば、ドライフィルム30としては、フォトレジスト組成物で形成された感光性のフィルムを用いうる。このようなドライフィルム30としては、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等の樹脂で形成されたドライフィルムが挙げられる。
【0134】
ドライフィルム30の厚みT30は、キャビティの加工性を向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0135】
図3は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するため、工程(II-1)においてドライフィルム30に露光処理を施す様子を模式的に示す断面図である。
図3に一例を示すように、硬化層20上にドライフィルム30を積層した後で、フォトマスク40を用いてドライフィルム30に露光処理を施す。この露光処理では、通常、適切なパターンを有するフォトマスク40を通して、ドライフィルム30に活性エネルギー線(図示せず。)が照射される。ここでは、露光処理によって、ドライフィルム30の露光部分が光硬化させられる例を示して説明する。露光部分とは、別に断らない限り、露光処理の光が当たった部分を表す。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、紫外線が好ましい。紫外線の照射量及び照射時間は、ドライフィルム30に応じて適切に設定できる。露光方法としては、例えば、フォトマスク40をドライフィルム30に密着させて露光する接触露光法、フォトマスク40をドライフィルム30に密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法、などが挙げられる。
【0136】
図4は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するため、工程(II-1)においてドライフィルム30に現像処理を施した後の様子を模式的に示す断面図である。露光処理の後で、ドライフィルム30に現像処理を施す。現像により、
図4に一例を示すように、ドライフィルム30の露光部及び非露光部の一方が除去されるので、開口51を有するマスクとしてのパターンドライフィルム50が得られる。ここでは、現像処理によってドライフィルム30の非露光部分が除去されて、開口51を有するパターンドライフィルム50が得られる例を示して説明する。また、非露光部分とは、別に断らない限り、露光処理の光が当たらなかった部分を表す。現像は、ウェット現像、ドライ現像のいずれを行ってもよい。現像の方式としては、例えば、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング方式、スクラッピング方式等が挙げられる。
【0137】
[3.2.砥粒を硬化層に噴射する工程(II-2)]
図4に示すように工程(II-1)でマスクとしてのパターンドライフィルム50を硬化層20上に設置した後で、このパターンドライフィルム50をマスクとして用いたサンドブラスト処理を硬化層20の施す工程(II-2)を行う。具体的には、工程(II-2)では、パターンドライフィルム50の開口51を通して砥粒(図示せず。)を硬化層20に噴射する。
【0138】
図5は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するため、工程(II-2)においてサンドブラスト処理が行われた後の様子を模式的に示す断面図である。パターンドライフィルム50に覆われていない部分(開口51に露出した部分)では、砥粒が衝突して、硬化層20は削られる。他方、パターンドライフィルム50で覆われた部分では、硬化層20がパターンドライフィルム50で保護されるので、硬化層20は削られない。よって、
図5に示すように、硬化層20は、砥粒の衝突によって開口51に露出した部分だけが選択的に削られるので、その硬化層20に、キャビティ60が形成される。通常、形成されるキャビティ60は、開口51と同じ平面形状を有することができる。平面形状とは、別に断らない限り、厚み方向から見た形状を表す。
【0139】
サンドブラスト処理は、砥粒を吹き付けるドライブラスト処理、及び、砥粒及び液体を含むスラリーを吹き付けるウェットブラスト処理のいずれであってもよい。サンドブラスト処理としては、キャビティの加工性を効果的に高める観点から、ドライブラスト処理が好ましい。
【0140】
砥粒としては、例えば、シリカ、ガラス等の無機化合物;スチール、ステンレス、亜鉛、銅等の金属化合物;ガーネット、ジルコニア、炭化ケイ素、アルミナ、ボロンカーバイト等のセラミックス;ドライアイス等の材料を主成分とした粒子が挙げられる。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、無機化合物粒子及びセラミックス粒子が好ましく、アルミナ粒子、炭化ケイ素粒子、及びシリカ粒子のいずれかが好ましい。シリカは、結晶シリカが好ましい。
【0141】
砥粒としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、デンカ社製「DAW-03」、日鉄ケミカル&マテリアル社製「AY2-75」(アルミナ);信濃電気精錬社製「GP#4000」、「SER-A06」(炭化ケイ素);龍森社製「IMSIL A-8」(結晶シリカ);不二製作所製「フジランダムWA」(溶融アルミナ)が挙げられる。
【0142】
サンドブラスト処理に用いる砥粒の修正モース硬度は、サイズの小さいキャビティの加工性を高める観点から、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、特に好ましくは7以上である。上限値は、通常、15以下でありうる。砥粒の修正モース硬度は、モース硬度計を用いて測定することができる。
【0143】
砥粒の平均粒径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、より好ましくは2.0μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下である。砥粒の平均粒径が前記の範囲にある場合、サイズの小さいキャビティの加工性を高められる。例えば、キャビティの加工時間を短縮したり、砥粒の吹き返しを抑制してマスクの研削を抑制したり、キャビティの壁面の勾配角度を大きくしたりできる。砥粒の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡観察により測定することができ、詳細は、特開2008-41932号公報に記載の方法により行うことができる。
【0144】
砥粒の平均粒径R1は、キャビティの加工性を高める観点から、硬化層に含まれる(A-1)白色無機顔料の平均粒径R2よりも大きいことが好ましい。また、(A-1)白色無機顔料の平均粒径R2に対する砥粒の平均粒径R1の比R1/R2は、キャビティの加工性を高める観点から、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、特に好ましくは10以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、特に好ましくは50以下である。
【0145】
砥粒の平均粒径R1は、キャビティの加工性を高める観点から、硬化層の厚みT20よりも小さいことが好ましい。硬化層の厚みT20に対する砥粒の平均粒径R1の比R1/T20は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.04以上であり、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.50以下、特に好ましくは0.30以下である。
【0146】
砥粒を噴射する圧力(加工圧力)は、キャビティの加工性を高める観点、及び、キャビティの形成を短時間で行う観点から、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.15MPa以上であり、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.8MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下である。ここで、加工圧力は、硬化層の表面における値である。
【0147】
[3.3.マスクを除去する工程(II-3)]
キャビティの形成後、硬化層の表面には、マスクが残留することがある。例えば、上述したパターンドライフィルムをマスクとして用いる場合、砥粒と衝突することによってパターンドライフィルムは削られうるが、
図5に示した例のように、パターンドライフィルムの一部が硬化層上に残留することがありうる。そこで、マスクを除去する工程を行ってもよい。
【0148】
マスクの除去方法に制限は無い。例えば、マスクとしてパターンドライフィルムを用いた場合、そのパターンドライフィルムを溶解しうる除去液とパターンドライフィルムとを接触させ、溶解させて、除去してもよい。接触方法は、例えば、浸漬法、スプレー法、塗布法などが挙げられるが、これに限定されない。
【0149】
[4.任意の工程]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、上述した工程に組み合わせて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
【0150】
例えば、プリント配線板の製造方法は、支持体を剥離する工程を含んでいてもよい。支持体を剥離する時期は、制限は無い。よって、支持体は、工程(I-1)と工程(I-2)との間に剥離してもよく、工程(I-2)と工程(II)との間に剥離してもよく、工程(II-1)と工程(II-2)との間に剥離してもよく、工程(II-2)の後に剥離してもよい。
【0151】
例えば、プリント配線板の製造方法は、硬化層上に光源を配置する工程を含んでいてもよい。光源としては、発光ダイオード(LED)ミニLED、マイクロLED等が挙げられる。光源から発せられる光の取り出し効率を高める観点では、光源は、キャビティ内に配置することが好ましい。また、プリント配線板の製造方法は、光源を配線に電気的に接続する工程、光源を封止する工程を含んでいてもよい。
【0152】
例えば、プリント配線板の製造方法は、硬化層上に導体層、絶縁層等の任意の層を形成する工程を含んでいてもよい。この際、絶縁層として、上述した方法によって硬化層を形成してもよい。例えば絶縁層及び導体層の形成を繰り返し行う場合、硬化層を、層間絶縁層として機能させることができる。
【0153】
[5.製造されるプリント配線板]
図6は、本発明の一実施形態に係る製造方法で製造されるプリント配線板の一例を模式的示す断面図である。
図6に示すように、上述した製造方法によれば、キャビティ60が形成された硬化層20を備えるプリント配線板100が得られる。プリント配線板100は、通常、基板10と、この基板10上に形成された硬化層20とを備える。
【0154】
硬化層20に含まれる硬化物は、(A-1)白色無機顔料を含むので、高い光反射率を有することができる。具体的には、波長460nmの光に対する硬化物の反射率は、好ましくは85%以上であることができる。反射率の上限値は100%以下等でありうる。よって、硬化層20は、高い光反射率を有することができる。硬化物の反射率は、例えば、硬化層20を切断した断面を研磨し、その研磨面について、マルチチャンネル分光器(大塚電子社製、MCPD-7700)を用いて測定することができる。
【0155】
上述したように、プリント配線板100が備える硬化層20には、キャビティ60が形成されている。このキャビティ60は、硬化層20に形成された凹部であり、硬化層20を貫通していてもよく、硬化層20を貫通していなくてもよい。上述した製造方法では優れた加工性で硬化層20にキャビティ60を形成できるので、キャビティ60は、大きい勾配角度θ(0°≦θ≦90°)を有する壁面60Wを有することができる。キャビティ60の壁面60Wの勾配角度θは、好ましくは60°以上であり、通常90°以下である。キャビティ60の壁面60Wの勾配角度θとは、硬化層20の表面20Uに対してキャビティ60の壁面60Wがなす角度を表す。キャビティ60の壁面60Wの勾配角度θが大きいほど、加工性が良好であったことを表す。
【0156】
キャビティ60の壁面60Wの勾配角度θは、FIB-SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて、硬化層20の断面観察を行うことにより、測定できる。具体的には、FIB(集束イオンビーム)を用いて、硬化層20を、当該硬化層20の厚み方向に平行で且つキャビティ60の底部60Bの中心60Cを通る断面が現れるように削り出す。この断面をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察して、壁面60Wの勾配角度θを測定できる。
【0157】
上述した製造方法で達成できるキャビティの優れた加工性について、従来技術と対比して説明する。
例えば、フォトリソグラフィを用いて白色無機顔料を含む硬化層にキャビティを形成する方法を考える。この方法では、露光処理の際に光が白色無機顔料で反射されて、フォトマスクによって覆われた部分にまで光が進入しうる。よって、本来は露光されるべきでない部分が露光され、意図した形状を有するキャビティを形成することが難しい。特に、キャビティの壁面の勾配角度を90°に近づけることは困難であった。
【0158】
また、例えば、レーザー光を用いて白色無機顔料を含む硬化層にキャビティを形成する方法を考える。この方法では、レーザー光の熱によって硬化層にキャビティを形成する。ただし、レーザー光で形成されたキャビティには、一般に、スミアと呼ばれる突起が形成される。よって、このスミアを除去するために、薬剤を用いてスミアを除去するデスミア処理を行うことが通常であった。しかし、この方法では、レーザー光の熱によってキャビティの周囲の樹脂が劣化し、更にその劣化した樹脂が薬剤で侵食されうる。この浸食により、キャビティ底部の周辺において硬化層と基板とが剥離して、硬化層及び基板の間に間隙部が形成されることがあった。
【0159】
これに対し、上述した製造方法で採用したサンドブラスト処理では、白色無機顔料による光の反射、熱による樹脂の劣化、及び、薬剤による浸食によってキャビティが影響を受けることを避けられる。よって、マスクの開口に対応する部分だけに選択的に且つ正確にキャビティを形成できる。また、砥粒はマスクのウラ側に侵入し難いので、キャビティの壁面の勾配角度を90°に近づけることが容易である。したがって、上述した優れた加工性を達成することができる。
【0160】
硬化層20のキャビティ60は、小さいアスペクト比を有することができる。キャビティ60の具体的なアスペクト比D/Lは、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.3以下である。下限は特に制限は無く、例えば、0.01以上、0.05以上、0.1以上などでありうる。このような範囲のアスペクト比を有するキャビティ60によれば、キャビティ60の形状を好適化できるので、プリント配線板をLEDディスプレイに適用した場合に、発光効率の向上及び長寿命化の達成ができる。ここで、キャビティ60のアスペクト比とは、キャビティ60の深さDをキャビティ60の開口径Lで割った比D/Lを表す。キャビティ60の開口径Lとは、硬化層20の表面20Uでのキャビティ60の開口部の径を表す。この開口径Lは、キャビティ60の平面形状が円形である場合はその直径を表し、キャビティ60が矩形である場合は長辺の長さを表す。
【0161】
キャビティ60の開口径Lは、特段の制限は無く、当該キャビティ60の用途に応じて設定しうる。キャビティ60の加工性に優れるという利点を有効に活用する観点では、開口径Lは、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上、特に好ましくは60μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、特に好ましくは200μm以下である。
【0162】
キャビティ60の深さDは、特段の制限は無く、当該キャビティ60の用途に応じて設定しうる。キャビティ60が硬化層20を貫通している場合、キャビティ60の深さDは、硬化層20の厚みT20に一致しうる。キャビティ60が硬化層20を貫通しない場合、キャビティ60の深さDは、硬化層20の厚みT20より小さいものでありうる。
【0163】
通常、キャビティ60は、開口径Lよりも底部の径の方が小さいテーパ形状を有する。
【0164】
キャビティ60の平面形状は、特段の制限は無く、当該キャビティ60の用途に応じて設定しうる。キャビティ60の平面形状の例を挙げると、円形、楕円形、正方形及び長方形等の矩形などが挙げられる。
【0165】
プリント配線板100の硬化層20は、通常、キャビティ60を形成する前の厚みT20を維持している。よって、プリント配線板100の硬化層20は、キャビティ60を形成する前と同じ厚みT20を有しうる。
【0166】
硬化層20は、高い光反射率を有することを利用して、光源(図示せず。)からの光を反射させるための光反射用途の層(光反射層)として好適に使用することができる。具体的には、硬化層20は、プリント配線板100の最外層として形成される反射シートとして好適に使用することができる。反射シートとして用いる場合、光源は、通常、キャビティ60内に設置される。また、硬化層20は、プリント配線板100のソルダーレジスト層としても好適に使用することができる。硬化層20は、ソルダーレジスト層及び反射シートの両方を兼ねる層として用いてもよい。また、通常、硬化層20は優れた絶縁性を有することができるので、プリント配線板100の絶縁層として用いることができ、更には層間絶縁層として用いることもできる。中でも、硬化層20は、プリント配線板100の層間絶縁層又はソルダーレジスト層であることが好ましい。
【0167】
[6.半導体装置]
上述した製造方法で製造されたプリント配線板は、例えば、半導体装置に適用できる。よって、上述した製造方法で製造されたプリント配線板は、半導体装置の製造方法に適用できる。プリント配線板を備える半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。半導体装置としては、例えば、携帯端末、コンピューター、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライト;照明器具の光源など、低電力で発光する発光ダイオード(LED)を実装した半導体装置が挙げられる。中でも、半導体装置としては、LEDディスプレイが好ましい。
【実施例0168】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度の指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)である。
【0169】
[製造例1.熱硬化性の樹脂組成物の層を含む樹脂シート1の製造]
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180g/eq.、三菱ケミカル社製「エピコート828EL」)4部と、固体状フッ素原子含有エポキシ樹脂(エポキシ当量245g/eq.、三菱ケミカル社製「YL7760」)4部と、ビフェニル骨格及びシクロヘキサン骨格含有フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7200B35」、固形分35質量%のMEK溶液)20部とを、MEK8部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、酸化チタン(平均粒径0.26μm、堺化学工業社製「PX3788」、フェニルシラン処理付き)10部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO-C2」、アミノシラン処理付き)10部、ビスフェノールAF(セントラル硝子社製「BiS-AF」をMEKで不揮発分50%に調整した溶液)4部、及び、硬化促進剤(北興化学工業社製のリン系触媒「TBP-DA」)0.2部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、ワニス状の樹脂組成物を調製した。
【0170】
支持体として、離型層付きPETフィルム(リンテック社製「PET501010」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、前記のワニス状の樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが20μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂組成物を80℃で4分間加熱することで、厚さが20μmの樹脂組成物層を含む樹脂シート1を得た。
【0171】
[製造例2.熱硬化性の樹脂組成物の層を含む樹脂シート2の製造]
乾燥後の樹脂組成物層の厚さが100μmとなるようにワニス状の樹脂組成物の塗布量を変更した。以上の事項以外は、製造例1と同じ方法により、厚さが100μmの樹脂組成物層を含む樹脂シート2を製造した。
【0172】
[製造例3.熱硬化性の樹脂組成物の層を含む樹脂シート3の製造]
ビスフェノールAF(セントラル硝子社製「BiS-AF」をMEKで不揮発分50%に調整した溶液)4部を用いなかった。また、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが50μmとなるようにワニス状の樹脂組成物の塗布量を変更した。以上の事項以外は、製造例1と同じ方法により、厚さが50μmの樹脂組成物層を含む樹脂シート3を製造した。
【0173】
[製造例4.熱硬化性の樹脂組成物の層を含む樹脂シート4の製造]
酸化チタン(平均粒径0.26μm、堺化学工業社製「PX3788」、フェニルシラン処理付き)の量を10部から20部に変更した。また、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO-C2」、アミノシラン処理付き)を用いなかった。さらに、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが50μmとなるようにワニス状の樹脂組成物の塗布量を変更した。以上の事項以外は、製造例1と同じ方法により、厚さが50μmの樹脂組成物層を含む樹脂シート4を製造した。
【0174】
[製造例5.熱硬化性の樹脂組成物の層を含む樹脂シート5の製造]
球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO-C2」、アミノシラン処理付き)を用いなかった。また、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが50μmとなるようにワニス状の樹脂組成物の塗布量を変更した。以上の事項以外は、製造例1と同じ方法により、厚さが50μmの樹脂組成物層を含む樹脂シート5を製造した。
【0175】
[製造例6.感光性の樹脂組成物の層を含む樹脂シート6の製造]
ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量約272g/eq.、日本化薬社製「NC3000H」)3部と、テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂(エポキシ当量約200g/eq.、三菱ケミカル社製「1031S」)2部と、ビスフェノールA型エポキシアクリレート(酸価99mgKOH/g、固形分濃度約70%、日本火薬社製「ZAR-2000」)10部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アクリル当量約96g/eq.、日本化薬社製「DPHA」)1部とを、MEK6部及びエチルジグリコールアセテート10部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、酸化チタン(平均粒径0.26μm、堺化学工業社製「PX3788」、フェニルシラン処理付き)4部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO-C2」、アミノシラン処理付き)4部、及び、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure819」)0.04部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、ワニス状の感光性樹脂組成物を調製した。
【0176】
製造例1で調製した樹脂組成物の代わりに、本製造例6で調製した感光性樹脂組成物を用いたこと以外は、製造例1と同じ方法により、厚さが20μmの樹脂組成物層を含む樹脂シート6を得た。
【0177】
[実施例1]
(1)樹脂シートのラミネート:
マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8201」)により、銅表面の粗化処理(銅エッチング量:0.5μm、粗化処理後の算術平均粗さ(Ra):310nm、粗化処理後の算術十点平均粗さ(Rz):3920nm)を施された内層回路基板(パナソニック社製、「R-1766」)を用意した。この内層回路基板の両面に、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製「MVLP-500」)を用いて、製造例1で製造した樹脂シート1をラミネートした。ラミネートは、内層回路基板と樹脂シート1の樹脂組成物層とが接するように行った。また、ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃及び圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
【0178】
(2)樹脂組成物層の硬化:
ラミネートされた樹脂シート1から支持体を剥離し、180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物層を熱硬化して、硬化層を形成した。
【0179】
(3)マスクの設置:
内層回路基板上に形成された硬化層の表面に、保護層としてポリエチレンテレフタレートフィルムを含むドライフィルム(ニッコー・マテリアルズ社製「ALPHO 20A263」、厚さ50μm)を貼り合わせた。ドライフィルムの貼り合わせは、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-500」)を用いて、30秒間減圧して気圧を13hPa以下にした後、圧力0.1MPa、温度70℃にて、20秒間加圧して行った。
【0180】
その後、キャビティパターンを有するガラスマスクを、ドライフィルムの保護層としてのポリエチレンテレフタレートフィルム上に置いた。そして、UVランプにより、照射強度150mJ/cm2にて、ガラスマスクを通してドライフィルムに紫外線照射を行った。紫外線照射後、ガラスマスク及びドライフィルムの保護層を取り除き、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液を噴射圧0.15MPaにて30秒間ドライフィルムにスプレー処理した。その後、水洗を行って、100μm角の正方形の開口を有するマスクとしてのパターンドライフィルムを硬化層上に設置した。
【0181】
(4)サンドブラスト処理:
砥粒としてアルミナ粒子(平均粒径4.0μm、修正モース硬度12、デンカ社製「DAW-03」)を用いて、硬化層に、加工圧力0.2MPaでドライブラスト処理を行った。このドライブラスト処理では、処理装置のノズルから砥粒を噴射し、パターンドライフィルムの開口を通して硬化層に衝突させた。この際、パターンドライフィルムの開口以外の部分では、パターンドライフィルムに遮られて、砥粒は硬化層に衝突しなかった。硬化層には、パターンドライフィルムの開口と同じ平面形状のキャビティが複数、形成された。
【0182】
(5)ドライフィルムの剥離:
50℃の3%水酸化ナトリウム溶液を、噴射圧0.2MPaにてパターンドライフィルムにスプレー処理して、ドライフィルムを剥離した。その後、水洗を行い、150℃で30分間乾燥して、内層回路基板とキャビティを形成された硬化層とを備える評価用配線板を得た。
【0183】
[実施例2]
樹脂シート1の代わりに製造例3で製造した樹脂シート3を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法により、内層回路基板とキャビティを形成された硬化層とを備える評価用配線板を得た。
【0184】
[実施例3]
樹脂シート1の代わりに製造例4で製造した樹脂シート4を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法により、内層回路基板とキャビティを形成された硬化層とを備える評価用配線板を得た。
【0185】
[実施例4]
樹脂シート1の代わりに製造例5で製造した樹脂シート5を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法により、内層回路基板とキャビティを形成された硬化層とを備える評価用配線板を得た。
【0186】
[実施例5]
樹脂シート1の代わりに製造例2で製造した樹脂シート2を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法により、内層回路基板とキャビティを形成された硬化層とを備える評価用配線板を得た。
【0187】
[実施例6]
ドライブラスト処理の代わりにウェットブラスト処理を行ったこと以外は、実施例1と同じ方法により、内層回路基板とキャビティを形成された硬化層とを備える評価用配線板を得た。このウェットブラスト処理は、砥粒として、アルミナ粒子(平均粒径4.0μm、修正モース硬度12、デンカ社製「DAW-03」)の代わりに、アルミナ粒子を含むスラリー(アルミナ粒子は、平均粒径4.0μm、修正モース硬度12、デンカ社製「DAW-03」;砥粒濃度は20%)を用いたこと以外は、実施例1で行ったドライブラスト処理と同じ方法で行った。
【0188】
[比較例1]
実施例1と同じ内層回路基板を用意した。この内層回路基板の両面に、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製「MVLP-500」)を用いて、製造例6で製造した樹脂シート6をラミネートした。ラミネートは、内層回路基板と樹脂シート6の樹脂組成物層とが接するように、実施例1と同じ条件で行った。
【0189】
内層回路基板にラミネートされた樹脂シート6の支持体上に、キャビティパターンを有するガラスマスクを置いた。そして、照射強度100mJ/cm2にて、ガラスマスクを通して樹脂組成物層に紫外線照射を行って、樹脂組成物層の露光部を光硬化させた。紫外線照射後、ガラスマスク及び樹脂シート6の支持体を取り除き、樹脂組成物層の全面に、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaにて2分間のスプレー処理して、現像を行った。この現像により、非露光部の樹脂組成物が除去されて、樹脂組成物層にキャビティが複数、形成された。
【0190】
現像後、樹脂組成物層に1J/cm2の紫外線照射を行い、さらに190℃、90分間の加熱処理を行って、樹脂組成物層を充分に硬化させた。これにより、内層回路基板と硬化した樹脂組成物層としての硬化層とを備える評価用配線板を得た。硬化層には、ガラスマスクの遮光部(紫外線を遮る部分)と同じ平面形状のキャビティが形成されていた。
【0191】
[比較例2]
樹脂シート1の代わりに製造例6で製造した樹脂シート6を用いた。また、内層回路基板にラミネートされた樹脂シート6の樹脂組成物層を硬化して硬化層を形成する工程において、樹脂組成物層の硬化を、光硬化によって行った。この光硬化では、樹脂組成物層に100mJ/cm2の紫外線を照射すること;樹脂組成物層に1J/cm2の紫外線照射を行うこと;並びに、190℃、90分間の加熱処理を行うこと;を行った。以上の事項以外は実施例1と同じ方法により、内層回路基板とキャビティを形成された硬化層とを備える評価用配線板を得た。
【0192】
[比較例3]
実施例1と同じ方法により、内層回路基板の両面に樹脂シート1をラミネートし、樹脂組成物層を熱硬化して、硬化層を形成した。その後、硬化層に、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数10、バーストモード(10kHz)の条件でCO2レーザー光を照射して、100μm角の正方形の開口を有するキャビティを複数、形成した。
【0193】
その後、キャビティ内のスミアを除去するため、デスミア処理を行った。このデスミア処理では、硬化層を、膨潤液であるアトテックジャパン社製のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガンドPに、60℃で5分間浸漬した。次に、硬化層を、粗化液としてのアトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に、80℃で15分間浸漬させた。次に、硬化層を、中和液としてのアトテックジャパン社製のリダクションショリューシン・セキュリガントPに、40℃で5分間浸漬した。その後、80℃で30分間乾燥して、内層回路基板とキャビティを形成された硬化層とを備える評価用配線板を得た。
【0194】
[キャビティの加工性の評価]
同一の評価用配線板内から、任意で10点のキャビティを選出した。選出したキャビティを、FIB-SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて、断面観察を行った。詳細には、FIB(集束イオンビーム)を用いて、硬化層を、当該硬化層の厚み方向に平行で且つキャビティの底部の中心を通る断面が現れるように削り出した。この断面をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察し、10点のキャビティの壁面の勾配角度の平均を求めた。勾配角度の平均が60°以上であれば、「良」と判定した。勾配角度の平均が60°未満であれば「不良」と判定した。また、比較例3に関しては、キャビティの底部のエッジから連続して、硬化層が内層回路基板の表面にある銅箔層から剥離して形成された間隙部が観察されたため、「不良」と判定した。
【0195】
[キャビティのアスペクト比の測定]
同一の評価用配線板内から、任意で10点のキャビティを選出した。選出したキャビティそれぞれについて、キャビティの深さをキャビティの開口寸法で割り算して、アスペクト比を求めた。上述した実施例及び比較例では、キャビティが矩形の平面形状の開口を有していたので、前記矩形の長辺の長さを、開口寸法として採用した。10点のアスペクト比の平均を求め、後述する表に示した。
【0196】
[樹脂組成物の硬化物の反射率の測定]
評価用配線板を幅50mm、長さ50mmに切り出し、断面を研磨した。マルチチャンネル分光器(大塚電子社製「MCPD-7700」)にて、前記断面において、硬化層の波長460nmの光の反射率を測定した。反射率が85%以上であれば「良」と判定し、85%未満であれば「不良」と判断した。
【0197】
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、下記の通りである。
白色無機顔料の割合:樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する白色無機顔料の割合。
無機充填材の割合:樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する無機充填材の割合。
DB:ドライブラスト処理。
WB:ウェットブラスト処理。
WD:湿式デスミア処理。
【0198】