(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047140
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】プラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152885
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保井 宗一
(72)【発明者】
【氏名】飯野 大輝
(72)【発明者】
【氏名】福水 裕之
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA05
5F004BA09
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB28
5F004BC08
5F004CA06
5F004DA00
5F004DA01
5F004DA16
5F004DA17
5F004DA18
5F004DA22
5F004DA23
5F004DA25
5F004DA26
5F004DB03
5F004DB07
5F004EB01
(57)【要約】
【課題】ホールエッチングレートやエッチングマスクとの加工選択比を高めることを可能にしたプラズマエッチング方法を提供することにある。
【解決手段】実施形態のプラズマエッチング方法は、フルオロカーボンガスのプラズマによりシリコン含有膜をエッチングする方法である。フルオロカーボンガスは、6個以上の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ主鎖は単結合と二重結合とが交互に結合した構造を有する第1のフルオロカーボン、6個以上の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ主鎖は単結合と三重結合とが交互に結合した構造を有する第2のフルオロカーボン、及び5個以上の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ主鎖は二重結合と三重結合とを含む構造を有する第3のフルオロカーボンから選ばれる少なくとも1つを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロカーボンガスのプラズマによりシリコン含有膜をエッチングする方法において、
前記フルオロカーボンガスは、6個以上の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ前記主鎖は単結合と二重結合又は単結合と三重結合とが交互に結合した構造を有するフルオロカーボンを含む、プラズマエッチング方法。
【請求項2】
フルオロカーボンガスのプラズマによりシリコン含有膜をエッチングする方法において、
前記フルオロカーボンガスは、5個以上の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ前記主鎖は二重結合と三重結合とを含む構造を有するフルオロカーボンを含む、プラズマエッチング方法。
【請求項3】
液体原料である前記フルオロカーボンを気化し、得られたフルオロカーボンガスのプラズマを生成させ、前記プラズマにより前記シリコン含有膜をエッチングする、請求項1又は2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
基板のエッチング処理が行われるチャンバと、
前記チャンバ内に配置された電極と、
6個以上の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ前記主鎖は単結合と二重結合とが交互に結合した構造を有する第1のフルオロカーボン、6個以上の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ前記主鎖は単結合と三重結合とが交互に結合した構造を有する第2のフルオロカーボン、及び5個以上の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ前記主鎖は二重結合と三重結合とを含む構造を有する第3のフルオロカーボンから選ばれる少なくとも1つを含む液体原料を気化し、得られたフルオロカーボンガスを流量を制御して前記チャンバ内に導入するプロセスガス導入系と、
前記フルオロカーボンガスのプラズマを生じさせる電圧を前記電極に印加する電源と
を具備するプラズマエッチング装置。
【請求項5】
前記フルオロカーボンガスは、C5F6ガス、C6F6ガス、C6F8ガス、C8F6ガス、及びC8F10ガスからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項4に記載のプラズマエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体基板等に形成されたシリコン酸化膜等のシリコン含有膜にコンタクトホール、ビアホール、トレンチ(溝)等を形成するために、プラズマエッチングが行われている。このような半導体デバイスの製造プロセスでは、半導体デバイスの電気性能等の確保のために、加工形状の精密制御、特にコンタクトホール等の側壁の垂直加工が重要である。例えば、近年の三次元構造デバイスは、アスペクト比の大きいホールを有する。このようなアスペクト比が大きいホールをプラズマエッチングで形成するにあたって、時間当たりのホールエッチングレートやエッチングマスクとの加工選択比を高めることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0142610号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0056050号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は、ホールエッチングレートやエッチングマスクとの加工選択比を高めることを可能にしたプラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によるプラズマエッチング方法は、フルオロカーボンガスのプラズマによりシリコン含有膜をエッチングする方法において、前記フルオロカーボンガスは、6個以上の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ前記主鎖は単結合と二重結合又は単結合と三重結合とが交互に結合した構造を有するフルオロカーボンを含む。
【0006】
実施形態の他の態様によるプラズマエッチング方法は、フルオロカーボンガスのプラズマによりシリコン含有膜をエッチングする方法において、前記フルオロカーボンガスは、5個以上の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ前記主鎖は二重結合と三重結合とを含む構造を有するフルオロカーボンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態のプラズマエッチング装置を示す断面図である。
【
図2】実施形態のプラズマエッチング装置の変形例を示す断面図である。
【
図3】実施形態のプラズマエッチング方法に用いるフルオロカーボンガスの第1の例を示す図である。
【
図4】実施形態のプラズマエッチング方法に用いるフルオロカーボンガスの第2の例を示す図である。
【
図5】実施形態のプラズマエッチング方法に用いるフルオロカーボンガスの第3の例を示す図である。
【
図6】実施形態のプラズマエッチング方法に用いるフルオロカーボンガスのC/F比を示す表である。
【
図7】比較例としてのフルオロカーボンガスを示す図である。
【
図8】実施形態のプラズマエッチング方法に用いるフルオロカーボンガスのホールエッチングレート及びマスクエッチングレートを示す図である。
【
図9】実施形態のプラズマエッチング方法に用いるフルオロカーボンガスのエッチングマスクとの加工選択比を示す図である。
【
図10】実施形態のプラズマエッチング方法に用いるフルオロカーボンガスのホールエッチングレートに対するエッチングマスクとの加工選択比の関係を示す図である。
【
図11】
図8ないし
図10おけるホールエッチングレート、マスクエッチングレート、及びエッチングマスクとの加工選択比を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態のプラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。説明中の上下等の方向を示す用語は、特に明記が無い場合には後述する基板のプラズマエッチング面(加工面)を上とした場合の相対的な方向を示し、重力加速度方向を基準とした現実の方向とは異なる場合がある。
【0009】
図1は実施形態によるプラズマエッチング装置を示す断面図である。
図1に示すプラズマエッチング装置1は、平行平板型の反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)装置であり、チャンバ2、排気口3、プロセスガス導入口4、下部電極(基板電極)5、上部電極(対向電極)6、第1のプロセスガス導入系7、第2のプロセスガス導入系8、第1の電源系統9、及び第2の電源系統10を備える。
【0010】
チャンバ2には、排気口3とプロセスガス導入口4が設けられている。排気口3は、図示しない圧力調整バルブや排気ポンプ等に接続されている。チャンバ2内の気体は、排気口3から排出され、チャンバ2内が高真空に保たれる。また、プロセスガス導入口4からプロセスガスを導入するにあたって、プロセスガス導入口4から流入するガスの流量と排気口3から流出するガスの流量とを釣り合わせることによって、チャンバ2内の圧力を一定の真空圧に保つことが可能とされている。
【0011】
チャンバ2のプロセスガス導入口4には、第1のプロセスガス導入系7及び第2のプロセスガス導入系8が接続されている。さらに、チャンバ2には、上部電極6の複数のガス吐出口11に面するガス導入空間12がプロセスガス導入口4と接続されるように設けられている。第1のプロセスガス導入系7は、常温で液体のプロセスガス原料を気化してチャンバ2内に導入する機構を有する。第2のプロセスガス導入系8は、常温で気体のプロセスガスをチャンバ2内に導入するものであり、ガス供給源13とガス流量を制御するマスフローコントローラ14と開閉バルブ15と配管16とを有している。配管16の一端はガス供給源13に接続され、他端はプロセスガス導入口4に接続されている。常温で気体のプロセスガスとしては、例えば、He、Ar、Kr、Xe等の希ガス、N2、O2、H2、CO、NF3、SF6、CH4等のガス、CF4、C4F6、C4F8等の一般的なCxFyガス、CHF3、CH2F2、CH3F等のCxHyFzガスが用いられる。
【0012】
第1のプロセスガス導入系7は、液体のプロセスガス原料GSを収容する原料タンク17と、液体流量制御器18と、液体のプロセスガス原料GSを気化する気化器19と、これら原料タンク17、液体流量制御器18、及び気化器19を接続する配管20とを有している。配管20の一端は原料タンク17内に開口されており、他端はプロセスガス導入口4に接続されている。原料タンク17には、不活性ガス供給ライン21が接続されている。気化器19にはプロセスガス原料GSの気化成分(プロセスガス)をチャンバ2内に送るキャリアガスを供給するキャリアガス供給ライン22が接続されている。気化器19の周囲は、断熱材23で覆われている。さらに、配管20内でプロセスガス原料GSの気化成分が液化しないように、気化器19からプロセスガス導入口4までの配管20の周囲には、ヒータ24が設けられている。配管20、不活性ガス供給ライン21、及びキャリアガス供給ライン22には、必要箇所に応じて開閉バルブ25が設けられている。
【0013】
第1のプロセスガス導入系7においては、不活性ガス供給ライン21から不活性ガスを原料タンク17に供給することによって、プロセスガス原料GSが液体流量制御器18を介して気化器19に送られる。液体流量制御器18で流量が制御された液体のプロセスガス原料GSは、気化器19で気化される。液体流量制御器18で液体のプロセスガス原料GSの流量が制御されているため、気化器19で気化されたプロセスガス原料GSの気化成分は、所定のガス流量としてプロセスガス導入口4を介してチャンバ2内に送られる。液体のプロセスガス原料GS及びその気化成分については、後に詳述する。
【0014】
プロセスガス原料GSを気化させる機構としては、
図1に示した気化器19を用いた構成に限られるものではない。
図2は実施形態のプラズマエッチング装置の変形例を示す断面図である。
図2に示すように、液体のプロセスガス原料GSを収容する原料タンク17を直接加熱することによって、液体のプロセスガス原料GSを気化させるようにしてもよい。すなわち、
図2に示す第1のプロセスガス導入系7においては、液体のプロセスガス原料GSを収容する原料タンク17の周囲にヒータ26が設けられており、さらに原料タンク17及びヒータ26の周囲が断熱材27で覆われている。原料タンク17からプロセスガス導入口4までの配管20には、気体流量制御器28が設けられている。配管20及び気体流量制御器28の周囲にはヒータ24が設けられている。
【0015】
図2に示す第1のプロセスガス導入系7において、液体のプロセスガス原料GSが収容された原料タンク17は、ヒータ26により直接加熱される。ヒータ26により加熱された液体のプロセスガス原料GSは気化し、配管20に送られる。プロセスガス原料GSの気化成分は、気体流量制御器28で流量が制御され、この状態でプロセスガス導入口4を介してチャンバ2内に送られる。
【0016】
チャンバ2内には、半導体ウエハW等の基板を載置する載置台(保持部)を兼ねた上下動自在な基板電極として下部電極5が設けられている。下部電極5の上部には、図示しない静電チャックが設けられており、半導体ウエハWを下部電極5に保持することができるように構成されている。下部電極5の上方には、対向電極としてプロセスガス吐出用のシャワーヘッドを兼ねる上部電極6が、ガス導入空間12と半導体ウエハWのエッチング処理が行われる処理空間とを区画する位置に配置されている。上部電極6には、プロセスガスをガス導入空間12から半導体ウエハWの処理空間へと供給するように、複数のガス吐出口11が設けられている。チャンバ2はアースされている。
【0017】
基板電極としての下部電極5には、第1の電源系統9及び第2の電源系統10が接続されている。第1の電源系統9は整合器30及び第1の高周波電源31を有し、第2の電源系統10は整合器32及び第2の高周波電源33を有する。第1の高周波電源31は、プロセスガスをイオン化して、プラズマを発生させるための第1の高周波電圧(Va)を出力する電源であり、出力された第1の高周波電圧(Va)が下部電極5に印加される。第2の高周波電源33は、プラズマからイオンを半導体ウエハWに引き込むための、第1の高周波電圧(Va)より周波数が低い第2の高周波電圧(Vb)を出力する電源であり、出力された第2の高周波電圧(Vb)が下部電極5に印加される。電圧Va及び電圧Vbは共に、一般には高周波と呼ばれるが、それぞれの周波数の違いを説明するため、便宜的に第1の高周波電圧(Va)をRF高周波電圧、第2の高周波電圧(Vb)をRF低周波電圧と称する。
【0018】
第1の高周波電源31が出力するRF高周波電圧(Va)は、プラズマの発生力を高めるために27MHz以上であることが好ましく、例えば100MHz、60MHz、40MHz、27MHz等であることが好ましい。第2の高周波電源33が出力するRF低周波電圧(Vb)は、プラズマからのイオンの引き込み性を高めるために3MHz以下であることが好ましく、例えば3MHz、2MHz、400kHz、100kHz等であることが好ましい。また、第2の高周波電源33から下部電極5に印加されるRF低周波電圧(Vb)の上下のピーク間電圧は1000V以上であることが好ましい。
【0019】
第1のプロセスガス導入系7からのチャンバ2内へのプロセスガスの導入、及び必要に応じて第2のプロセスガス導入系8からのチャンバ2内へのプロセスガスの導入と同時に、上記した第1の高周波電源31からRF高周波電圧(Va)及び第2の高周波電源33からRF低周波電圧(Vb)を下部電極5に印加することによって、下部電極5と上部電極6との間にプラズマが発生する。すなわち、第1の高周波電源31からのRF高周波電圧(Va)と第2の高周波電源33からのRF低周波電圧(Vb)とが重畳して下部電極5に印加されることによって、プロセスガスがイオン化して下部電極5と上部電極6との間にプロセスガスのプラズマが形成されると共に、下部電極5側へのイオンの引き込みが行われる。
【0020】
次に、上記したプラズマエッチング装置1を用いた半導体ウエハWのプラズマエッチング方法について説明する。実施形態のプラズマエッチング方法においては、まず下部電極5上にエッチング処理する半導体ウエハW等の基板を載置する。エッチング処理する半導体ウエハWは、シリコン、タングステン、アルミニウム、チタン、モリブデン、及びタンタルからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む半導体膜又は金属膜上に形成されたシリコン酸化膜(SiO膜)やシリコン窒化膜(SiN膜)等のシリコン含有膜を有する。このようなSiO膜やSiN膜等のシリコン含有膜を有する半導体ウエハWにエッチングマスクを形成すると共に、エッチングマスクをパターニングして開口部を形成した後、プラズマエッチング処理することによって、エッチングマスクの開口部に応じてシリコン含有膜にコンタクトホールのようなホール部を形成する。
【0021】
シリコン含有膜にコンタクトホール等を形成するにあたって、第1のプロセスガス導入系7からチャンバ2内へプロセスガスを導入すると同時に、エッチングマスクが形成された半導体ウエハWが載置された下部電極5に対して、第1の高周波電源31からRF高周波電圧(Va)及び第2の高周波電源33からRF低周波電圧(Vb)を印加し、下部電極5と上部電極6との間にプラズマを発生させると共に、プラズマ中のイオンを半導体ウエハWに引き込むことによって、シリコン含有膜をエッチング処理する。シリコン含有膜のエッチング処理は、例えばSiO膜に対して実施される。プラズマエッチング処理するシリコン含有膜は、SiO膜の単独膜に限らず、SiO膜とSiN膜との積層膜であってもよい。シリコン含有膜のエッチング処理において、シリコン含有膜と上記した半導体膜や金属膜とのエッチングレートの違いに基づいて、シリコン含有膜を選択的に加工することができる。
【0022】
上記したシリコン含有膜のプラズマエッチング処理において、第1のプロセスガス導入系7の原料タンク17に収容されるプロセスガス原料GSとしては、6個以上の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ主鎖は単結合と二重結合とが交互に結合した構造を有する第1のフルオロカーボン、6個以上の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ主鎖は単結合と三重結合とが交互に結合した構造を有する第2のフルオロカーボン、及び5個以上の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ主鎖は二重結合と三重結合とを含む構造を有する第3のフルオロカーボンから選ばれる少なくとも1つを含む原料が用いられる。上記した第1、第2、及び第3のフルオロカーボンは、常温で液体であるため、
図1及び
図2に示したような液体のプロセスガス原料GSを気化させる機構が用いられる。
【0023】
第1のフルオロカーボンの具体例を
図3に示す。
図3に示すC
6F
8は、6個の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ主鎖は単結合と二重結合とが交互に結合した構造を有する。また、
図3に示すC
8F
10は、8個の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ主鎖は単結合と二重結合とが交互に結合した構造を有する。第1のフルオロカーボンは、炭素及びフッ素に関して、C
x1F
y1(式中、x1及びy1はx1≧6、y1≧x1+2を満足する数である。)で表される組成を有することが好ましい。
【0024】
第2のフルオロカーボンの具体例を
図4に示す。
図4に示すC
6F
6は、6個の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ主鎖は単結合と三重結合とが交互に結合した構造を有する。また、
図4に示すC
8F
6は、8個の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ主鎖は単結合と三重結合とが交互に結合した構造を有する。第2のフルオロカーボンは、炭素及びフッ素に関して、C
x2F
y2(式中、x2及びy2はx2≧6、y2≧6を満足する数である。)で表される組成を有することが好ましい。
【0025】
第3のフルオロカーボンの具体例を
図5に示す。
図5に示すC
5F
6は、5個の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ主鎖は二重結合と三重結合とを含む構造を有する。具体的には、主鎖は二重結合と三重結合とが単結合を介して結合した部分を有する。また、
図5に示すC
6F
8は、6個の炭素が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ主鎖は二重結合と三重結合とを含む構造を有する。具体的には、主鎖はC
5F
6と同様に、二重結合と三重結合とが単結合を介して結合した部分を有する。三重結合を構成する2つの炭素のうち、二重結合側の炭素とは反対側の炭素は、-CF
3基や-C
2F
5基等のフッ素含有アルキル基に結合することができる。第3のフルオロカーボンは、炭素及びフッ素に関して、C
x3F
y3(式中、x3及びy3はx3≧5、y3≧6を満足する数である。)で表される組成を有することが好ましい。
【0026】
上述したように、第1のプロセスガス導入系7からチャンバ2内に導入するプロセスガスは、C5F6、C6F6、C6F8、C8F6、及びC8F10からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。なお、第1、第2、及び第3のフルオロカーボンは、パーフルオロカーボンに限られるものではなく、一部が水素や酸素に置換された化合物であってもよい。上記したフルオロカーボンは、CxFyで表される組成に加えて、1個以上のHやOをさらに含む組成式で表されるものであってもよい。
【0027】
第1、第2、及び第3のフルオロカーボンのフッ素(F)に対する炭素(C)の比(C/F比)を
図6の表に示す。
図6の表には、比較例のフルオロカーボンのC/F比を合わせて示す。比較例のフルオロカーボンの構造の一部を、
図7に示す。
図6の表に示すように、第1、第2、及び第3のフルオロカーボンのC/F比は、いずれも比較例のフルオロカーボンのC/F比以上である。すなわち、1分子当たりのC量が多いため、プラズマエッチング処理時における堆積性が高い。従って、シリコン含有膜のエッチングマスクとの加工選択比を向上させることができる。
【0028】
また、第1、第2、及び第3のフルオロカーボンは、主鎖中に解離しにくい炭素-炭素の三重結合や炭素-炭素の二重結合を含むため、炭素及びフッ素を含む分子量が大きいイオンがプラズマ内で生成されやすい。これによりエッチングイールドが向上し、優れたエッチング効果を示す。さらに、上記したように第1、第2、及び第3のフルオロカーボンは、エッチングマスクとの加工選択比に優れるため、エッチングマスクとの加工選択比を保ちつつプラズマ印加パワーを高めることができる。従って、半導体ウエハWに形成されたシリコン酸化膜(SiO)等のシリコン含有膜をエッチングするにあたって、ホールエッチングレートを高めることができる。
【0029】
図8に第1、第2、及び第3のフルオロカーボンの気化成分(フルオロカーボンガス)のホールエッチングレート(H/R)及びマスクエッチングレート(M/R)を示す。
図9に第1、第2、及び第3のフルオロカーボンの気化成分のエッチングマスクとの加工選択比(Sel.)を示す。さらに、
図10に第1、第2、及び第3のフルオロカーボンの気化成分のホールエッチングレート(H/R)に対する、エッチングマスクとの加工選択比(Sel.)の関係を示す。
図11に示すように、ホールエッチングレート(H/R)は、ホールHの深さ(ΔDepth)を処理時間(time)で除した値であり、マスクエッチングレート(M/R)は、処理中のマスクMの減少厚さ(ΔMask)を処理時間(time)で除した値である。エッチングマスクとの加工選択比(Sel.)は、ホールHの深さ(ΔDepth)をマスクMの減少厚さ(ΔMask)で除した値である。
図11において、Sはエッチング処理するシリコン含有膜、Mはエッチングマスクである。
【0030】
図8、
図9、及び
図10はフルオロカーボンガスについて、第1のフルオロカーボンの例であるC
6F
8ガス、第2のフルオロカーボンの例であるC
6F
6ガス、及び第3のフルオロカーボンの例であるC
5F
6ガスの特性を示している。
図8、
図9、及び
図10は比較のために、
図7に分子構造を示したCF
4ガス、C
2F
4ガス、c-C
4F
6ガス、C
4F
6ガス、2-C
4F
6ガス、及びc-C
6F
8ガスの特性も合わせて示している。
【0031】
図8及び
図9に示すように、第1、第2、及び第3のフルオロカーボンの気化成分(フルオロカーボンガス)は、ホールエッチングレート(H/R)が大きく、かつマスクエッチングレート(M/R)が小さいことが分かる。第1、第2、及び第3のフルオロカーボンの気化成分について、ホールエッチングレート(H/R)がc-C
6F
8ガスとおおよそ同等の例もあるが、マスクエッチングレート(M/R)はc-C
6F
8ガスより明らかに小さい。このため、
図9に示すように、エッチングマスクとの加工選択比(Sel.)に優れていることが分かる。さらに、
図10に示すように、第1、第2、及び第3のフルオロカーボンの気化成分は、ホールエッチングレート(H/R)に対する、エッチングマスクとの加工選択比(Sel.)の関係が、比較例のフルオロカーボンの気化成分に比べて優れていることが分かる。
【0032】
図8、
図9、及び
図10に示すように、第1、第2、及び第3のフルオロカーボンの気化成分からなるフルオロカーボンガスによれば、良好なホールエッチングレートが得られる上に、エッチングマスクとの加工選択比を高めることができる。これらによって、エッチングマスクの状態等を維持しつつ、プラズマ印加パワーを高めることができる。従って、例えばSiO膜やSiO膜とSiN膜との積層膜にアスペクト比が大きいコンタクトホール等を、精度よくかつ効率よく形成することが可能になる。
【0033】
さらに、第1、第2、及び第3のフルオロカーボンの気化成分からなるフルオロカーボンガスは、タングステン(W)等の金属膜のエッチングレートに対してシリコン含有膜のエッチングレートが大きい。従って、W膜等の金属膜上に形成されたシリコン含有膜をエッチング処理するにあたって、シリコン含有膜を選択的に加工することができる。
【0034】
なお、上述した各実施形態の構成は、それぞれ組合せて適用することができ、また一部置き換えることも可能である。ここでは、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図するものではない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0035】
1…プラズマエッチング装置、2…チャンバ、3…排気口、4…プロセスガス導入口、5…下部電極(基板電極)、6…上部電極(対向電極)、7…第1のプロセスガス導入系、8…第2のプロセスガス導入系、9…第1の電源系統、10…第2の電源系統、
17…原料タンク、18…液体流量制御器、19…気化器、20…配管、24,26ヒータ、28…気体流量制御器。