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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047150
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】トラック用チェーンフック
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/06 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
B60R11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152898
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000139735
【氏名又は名称】株式会社伊原工業
(74)【代理人】
【識別番号】100180057
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】伊原 良碩
(72)【発明者】
【氏名】天野 裕之
【テーマコード(参考)】
3D020
【Fターム(参考)】
3D020BA15
3D020BB02
3D020BC19
3D020BD03
3D020BD07
(57)【要約】
【課題】 トラックチェーンの着脱作業を省力化するためのチェーンフックを提供し、そのトラックでの設置方法を提案する。
【解決手段】 トラックに固定するベース部材7と、フック4を支持する懸架部材6とを備え、当該懸架部材6は、当該ベース部材7との一体性を維持しつつ、当該ベース部材7に対して相対移動可能に構成されたトラック用チェーンフック1である。好ましくは、ベース部材7又は懸架部材6が、懸架部材6を移動する際に懸架部材6又はベース部材7と接触する案内要素を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックに固定するベース部材と、チェーンフックを支持する懸架部材とを備え、当該懸架部材は、前記ベース部材との一体性を維持しつつ、前記ベース部材に対して相対移動可能に構成されたトラック用チェーンフック。
【請求項2】
前記ベース部材又は懸架部材が、前記懸架部材を移動する際に懸架部材又はベース部材と接触する案内要素を備えた、請求項1に記載のトラック用チェーンフック。
【請求項3】
前記ベース部材及び懸架部材が、懸架部材をベース部材に対して相対移動していない位置で保持するためのロック機構を備えた請求項1又は請求項2に記載のトラック用チェーンフック。
【請求項4】
前記ベース部材が、相対移動により懸架部材が通過する軌跡上に移動制限手段を備え、該移動制限手段により、ベース部材に対する懸架部材の可動領域が制限される請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のトラック用チェーンフック。
【請求項5】
前記ベース部材が、相対移動により懸架部材が通過する軌跡上に、ベース部材に対する懸架部材の可動領域を制限する移動制限手段を備え、当該移動制限手段が、懸架部材をベース部材に対して相対移動していない位置で保持するためのロック機構を担っている請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトラック用チェーンフック。
【請求項6】
前記ベース部材がガイドレールを備え、前記懸架部材がスライダを備え、前記ガイドレールに固定されてスライダを支持しつつスライダに対して回転可能に接触している第1の案内要素、及び/又は、前記スライダに固定されてガイドレールに対して回転可能に接触している第2の案内要素を備えた請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のトラック用チェーンフック。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のトラック用チェーンフックのベース部材を車体前後方向に延びるシャシーに対して鉛直面上で垂直で、かつ、懸架部材の相対移動可能な方向がシャシーから離れる方向に向くように配置して据え付けたトラック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック用チェーンフックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、トラック運転手のなり手が慢性的に不足するなか、高齢ドライバーや女性ドライバーが増えている。これを背景に、肉体的に負担があるトラック周りの作業の省力化が求められている。
【0003】
とりわけチェーンの着脱の省力化は、2018年12月14日に公布・施行された「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令の一部を改正する命令」に基づくチェーン規制の導入により、課題として顕在化しつつある。チェーン規制とは、スタッドレスタイヤ装着車であっても、チェーンの装着を義務化する道路区間の設定のことであり、冬期に北海道や豪雪地域を走行するトラックでは、チェーン規制区間に入る際と出る際、逐一チェーンの着脱を繰り返す必要が生じることが予想される。
【0004】
トラックのチェーンは、トラックのシャシー下部に設置されたチェーンフック(非特許文献1)やチェーンハンガーに懸架しておき、必要に応じて使用することが一般的であるが、シャシー下部には近年、様々な部材が設置されるようになり、チェーンフックも占有スペースの都合、シャシー後方の非常に奥まった場所にシャシーに対して平行(非特許文献2)又は垂直(特許文献1、非特許文献3)に設置されていることが多い。厳冬下でこのような設置場所に腰をかがめて潜り込み、1個あたり5kg~20kgにもなる重いチェーンをフックから取り外したり、フックに架渡したりを繰り返すことは、高齢ドライバーや女性ドライバーには酷な作業である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-184151号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ヤマダボディーワークス公式サイト商品ページ「ステンレスチェーン吊 3連」(URL:https://www.yamadabody.co.jp)
【非特許文献2】トラックデコレーションパーツ専門店RoyalQueen商品ページ(URL:https://item.rakuten.co.jp/royalqueen-deco/cf_s4fl/)
【非特許文献3】エルフトラック(いすゞ) 平成29年(2017年) 新潟県 - 中古車(URL:https://kakaku.com/kuruma/used/item/23595837/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記現状に鑑み、本発明は、トラックチェーンの着脱作業を省力化するためのチェーンフックを提供し、そのトラックでの設置方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の1つの側面は、トラックに固定するベース部材と、チェーンフックを支持する懸架部材とを備え、当該懸架部材は、当該ベース部材との一体性を維持しつつ、当該ベース部材に対して相対移動可能に構成されたトラック用チェーンフックである。本明細書において「相対移動」とは、直線運動のみならず、スイングダウンウォール、ダウンキャビネットと称される昇降式吊り戸棚で使用されるような手前にせり出す回転運動も含まれる。懸架部材がベース部材との一体性を維持していることで、懸架部材自体の脱落がなく、トラック用チェーンフックがトラックの奥まった位置に設置されている場合でも、ベース部材から懸架部材が張り出すことで、チェーンフックを車体の外側(側面や後面)に引き出しやすいため、トラックチェーンの着脱作業の省力化が可能になる。
【0009】
上記トラック用チェーンフックにおいて、上記ベース部材又は懸架部材が、前記懸架部材を移動する際に懸架部材又はベース部材と接触する案内要素を備えていることが好ましい。本明細書において「案内要素」とは、懸架部材の運動を、当該懸架部材がベース部材よりも車体側面近くに来るように接触しながら導くあらゆる要素を意味し、転がり案内の直動機構や、すべり案内も含まれる。案内要素があると相対移動が確実になる。
【0010】
上記トラック用チェーンフックにおいて、上記ベース部材及び懸架部材が、懸架部材をベース部材に対して相対移動していない位置で保持するためのロック機構を備えたものであることが好ましい。懸架部材をベース部材に納めれば、別途施錠等の作業が発生しないため、トラックチェーンの着脱作業が省力化されるとともに、曲がりくねった道を走行する際に車にかかる遠心力による懸架部材の抜けが防止され、盗難防止効果も期待できる。
【0011】
上記トラック用チェーンフックにおいて、上記ベース部材が、相対移動により懸架部材が通過する軌跡上に移動制限手段を備え、該移動制限手段により、ベース部材に対する懸架部材の可動領域が制限されるものであることが好ましい。懸架部材の脱落が防止されるため、トラックチェーンの着脱作業に際して危険がなく、懸架部材をベース部材に再度取り付ける必要がないため、省力化が可能になる。
【0012】
上記トラック用チェーンフックにおいて、前記ベース部材が、相対移動により懸架部材が通過する軌跡上に、ベース部材に対する懸架部材の可動領域を制限する移動制限手段を備え、当該移動制限手段が、懸架部材をベース部材に対して相対移動していない位置で保持するためのロック機構を担っていてもよい。工数も部品点数も少なくなるため、軽量化とコスト低減につながる。
【0013】
上記トラック用チェーンフックにおいて、上記ベース部材がガイドレールを備え、上記懸架部材がスライダを備え、上記ガイドレールに固定されてスライダを支持しつつスライダに対して回転可能に接触している第1の案内要素、及び/又は、上記スライダに固定されてガイドレールに対して回転可能に接触している第2の案内要素を備えたものであってもよい。ここでの回転可能とは、1軸回転のみならず、2軸回転、多軸回転も含まれる。回転可能な案内要素が一方又は両方に固定されていることにより、スライダとガイドレールとが直接的に面接触している場合に比べて摩擦抵抗が小さく相対移動がよりスムースになり、トラック用チェーンフックがトラックの奥まった位置に設置されている場合でも、チェーンフックを車体の外側に引き出しやすいため、トラックチェーンの着脱作業の省力化が可能になる。
【0014】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の側面は、トラック用チェーンフックのベース部材を車体前後方向に延びるシャシーに対して鉛直面上で垂直で、かつ、懸架部材の相対移動可能な方向がシャシーから離れる方向に向くように配置して据え付けたトラックである。トラック用チェーンフックがトラックの奥まった位置に設置されている場合でも、ベース部材から懸架部材が張り出すことで、チェーンフックを車体の側方に引き出しやすいため、トラックチェーンの着脱作業の省力化が可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トラックチェーンの着脱作業の省力化が可能なチェーンフックを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るトラック用チェーンフックの1態様を示す写真。
図2a】第1実施態様に係るトラック用チェーンフックのA-A断面。
図2b】第1実施態様に係るトラック用チェーンフックのC-C断面。
図2c図2bのストッパ周辺の拡大断面。
図2d】第1実施態様に係るトラック用チェーンフックのD-D断面。
図2e】第1実施態様に係るトラック用チェーンフックのB-B断面。
図2f】第1実施態様に係るスプリングロックのバネを除いた形状図。
図3】本発明に係るトラック用チェーンフックの切れ目、ノック部、フックの関係性を示す拡大写真。
図4図3のトラック用チェーンフックのスライダの前蓋を引き出す途中のストッパが見える写真。
図5】本発明に係るトラック用チェーンフックのトラックへの据え付け態様を示す図。
図6】第2実施態様に係るトラック用チェーンフックの写真。
図7a】第2実施態様に係るトラック用チェーンフックのA-A断面図。
図7b】第2実施態様に係るトラック用チェーンフックの視た側面図。
図7c】第2実施態様に係るトラック用チェーンフックのB-B断面図。
図7d】第2実施態様に係るトラック用チェーンフックの平面図。
図7e】第2実施態様に係るトラック用チェーンフックのD-D方向から視た側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について以下に適宜図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1に係るトラック用チェーンフック1は、アングル3及びガイドレール5を備えたベース部材7と、スライダ2及びフック4を備えた懸架部材6と、ベース部材7のガイドレール5及び懸架部材6のスライダ2の各々にピン8で固定されて相互に対して回転可能に接触している案内ローラー9、10とで構成されている。
【0018】
図2a及び図2bに示すように、ベース部材7のガイドレール5は、アングル3と溶接固定するレール頂面12、レール頂面12に直交し互いに平行なレール対向側面13及びレール対向側面13に直交するとともにレール頂面12に平行なレール底面14、懸架部材6のスライダ2を挿入するための開口端面15及びスライダ2の引出方向Yに沿って開口した開口下面16で構成され、ガイドレール5におけるレール頂面とは反対側の面17にはストッパ18が固定されている。
ベース部材7のアングル3は、トラックのシャシーへの取付面19及び取付面19に対して直交する直交面20を有し、直交面20の下端21がガイドレール5の長手方向軸Xに沿ってレール頂面12に溶接固定されている。
【0019】
懸架部材6のスライダ2は、ガイドレール5の開口端面15の一端から挿入しガイドレール5に完全に収納されたとき、ガイドレール5の開口端面15を閉塞する前蓋24と、ガイドレール5の開口下面16を占有する底部26と、ガイドレール5のレール対向側面13及びレール底面14とともに案内ローラー9、10を収納する空間27を画定する垂直部28及びフランジ30とで構成されている。
【0020】
前蓋24には、スライダ2の引出方向Yに沿って後端側にフランジ部31を備えた上げ底トレイ32が、底部26と平行に固定されている。ここで、上げ底トレイ32の固定位置は、上げ底トレイ32がガイドレール5に完全に収納された状態で、図2cに示すように、ストッパ18が固定された面17からフック4の頂面までの距離cが、ストッパ18の最小厚みbLよりも大きく、ストッパ18が固定された面17から上げ底トレイ32のフランジ部31までの距離aが、ストッパ18の最大厚みbHよりも小さくなる位置に設定している。
【0021】
図2dに示すように、上げ底トレイ32及び底部26には、フック4の軸方向に垂直な断面形状に適合する大きさのフック挿入孔35が引出方向Yに沿って等間隔に3箇所開けられ、当該フック挿入孔35にフック4の一端が挿入された状態で溶接固定されることでフック4を支持している。
【0022】
図2a及び図2dに示すように、スライダ2の案内ローラー9は、引出方向Yに対して左右一対で、上げ底トレイ32のフランジ部31付近で垂直部28にピン8で固定されており、ガイドレール5に収納すると、ピン8を軸として回転可能なローラー部39がレール頂面とは反対側の面17に回転可能に接触している。
【0023】
ガイドレール5の案内ローラー10は、長手方向軸Xに対して左右一対で、開口端面15近傍で、レール対向側面13にピン止めされており、スライダ2を収納すると、ピン8を軸として回転可能なローラー部40がフランジ30の下面に回転可能に接触することによりスライダ2自体を支持している。
【0024】
以下では、ベース部材7と懸架部材6との相対位置について、懸架部材6をベース部材7に対して延伸していない位置で保持するためのロック機構を実現する1実施態様について説明する。
図2aに示すように、ガイドレール5には、スライダ2が完全に収納された状態で、ガイドレール5の長手方向軸Xに沿ってレール頂面12上、直交面20との溶接端の前方にレール貫通孔11が開けられている。図2eに示すように、上げ底トレイ32において、ガイドレール5のレール貫通孔11に対応する位置にもトレイ貫通孔34、底部26において、トレイ貫通孔34に対応する位置にも底板貫通孔45が開けられている。
【0025】
レール貫通孔11、トレイ貫通孔34及び底板貫通孔45を貫通するように、スプリングロック29が挿入されている。図2fに示すように、スプリングロック29のノック部36は、軸方向に垂直に切断したときに四角形断面でレール貫通孔11に入退可能な大きさを有し、スライダ2の引出方向Yに沿って後端側の頂面に切り欠き43があるように配置されている。スプリングロック29の中程から下端にかけては、ノック部36の断面より小さな断面積を有する細径部37となっており、当該細径部37を芯材として底板貫通孔45より大きな径のバネ44が挿入される。当該バネ44は、上げ底トレイ32と底部26に挟まれた空間に収納されることになる。底板貫通孔45から下方に突き出た細径部37の下端穴に通された指掛けリング46が取り付けられている。
【0026】
図3に示すように、ガイドレール5のレール頂面12には、スライダ2の引出しに伴ってノック部36が通過する軌跡面と交差しない2本の切れ目47が開口端面15を起点として平行に入っており、切れ目47の間の切開片48はノック部36の切り欠き43の角度と略同じ角度に押し上げられていることで、開口端面15を拡張している。すなわち、本実施形態では、ベース部材7のレール貫通孔11及び切開片48、並びに、懸架部材6のスプリングロック29の関係性がロック機構に相当する。
【0027】
以下では、上記構成に基づく作用について説明する。
スライダ2がガイドレール5に完全に収納された状態では、引出方向Yに沿って最前端のトレイ貫通孔34の位置は、ガイドレール5の最前端に固定された案内ローラー10のピン8の位置と略一致し、スプリングロック29のノック部36はレール貫通孔11から最高点まで突き出ている。この状態ではノック部36が邪魔になってスライダ2が引き出せないロック状態にある。ここで、指掛けリング46を下に引っ張ると、スプリングロック29の正四角柱部37が下がり、バネ44の他端も底部26に押しつけられ、ノック部36も降下していく。ノック部36の頂点がレール貫通孔11より下の位置まで後退すると、ロック解除状態となり、スライダ2にピン8で固定された最後端の案内ローラー9がレール底板上を回転すること、及び、ガイドレール5の最前端にピン8で固定された案内ローラー9がフランジ30を支持しつつ回転することにより、なめらかに前蓋24を引き出せるようになる。そのまま前蓋24をわずかに引き出し、指掛けリング46から指を離すと、スプリングロック29の位置はレール貫通孔11から引出方向Yに沿って前方にずれ、ガイドレール5におけるレール頂面とは反対側の面17によってノック部36の上方への突出が規制される。前蓋24をさらに引き出していくと、スプリングロック29のノック部36は、レール頂面とは反対側の面17上を摺動しながら長手方向軸Xに沿って移動し、ガイドレール5の切開片48に達すると、バネ44の復元力によってノック部36の切り欠き43が切開片48の下面にフィットし、そのまま切開片48の傾斜に沿うように上昇し、遂にはノック部36が切開片48から脱して上方に突出し、最高点に達する。さらに前蓋24を引き出すと、図4に示すように上げ底トレイ32に固定されたフック4の頂面がガイドレール5に固定されたストッパ18の最小厚みbLの部分をくぐっていき、やがて上げ底トレイ32のフランジ部31とガイドレール5においてレール頂面とは反対側の面17に固定されたストッパ18とが接触することで移動制限され、それ以上スライダ2を引き出せなくなる。この状態で、引出方向Yに沿って最後端のトレイ貫通孔34の位置は、ガイドレール5の最前端に固定された案内ローラー10のピン8の位置と略一致している。したがって、スライダ2を最大限に引き出せば、ロック状態ではトラックにおいて最も奥まった位置にある最後端のフック4が、ロック状態における最前端のフック4の位置まで引き出せることになる。これは長さにしてガイドレール5の長手方向軸Xに沿った全長のほぼ2倍に伸びたことに相当する。これにより、フック4へのチェーンの懸架作業を車体102の側面近くで容易に行えるようになる。
【0028】
上述したトラック用チェーンフック1は、図5に示すように、トラック100の車体前後方向Cに延びるシャシー101に対して鉛直面上で垂直な方向に沿ってフック4が配列するように、リアバンパー102とスペアタイヤ104との間の位置で荷台103にベース部材7を据え付けることができ、このとき懸架部材6の引出方向Yは、シャシー101から車体の側方に離れる方向に向くように据え付ける。
【0029】
(第2実施形態)
第2の実施形態に係るトラック用チェーンフック50の第1実施形態との顕著な相違点は、ガイドレール55とスライダ52との接触が線接触のすべり案内になっている点にある。
すなわち、図6図7a、図7bおよび図7cに示すように、アングル53の下端を両側から挟みボルト58で固定されたガイドレール55は、開口端面65から視て概ね六角形に開口するチャンネル68と、長手方向軸Xに沿ってスリット状に延びる開口下面66とを有する。
【0030】
図7c及び図7eに示すように、スライダ52は、ガイドレール55のチャンネル68に面した内面に引出方向Yに沿って線接触可能な太さの円筒形状を有し、引出方向Yに沿って最前端の開口には2つの前蓋取付穴57を有する前蓋取付板59で蓋がされて取付ボルト73で前蓋74と一体化している。円筒の下端には、開口下面66を横断可能な厚さのフック取付板67が溶接固定され、さらにフック取付板67にフック4の上端部が溶接固定されている。ここで、引出方向Yに沿って最も後端にあるフック4cの上端部については、フック取付板67において垂下側壁64に面する側に取り付けられ、その他のフック4a,4bの上端部は、フック取付板67においてフック4cとは反対側に取り付けられている。フック4の下端部は、いずれも同じ方向に鈎上に湾曲している。フック取付板67の引出方向Yに沿って最前部には、ノックピン貫通孔69が形成されている。
【0031】
図7c及び図7dに示すように、ガイドレール55の外面には、垂下側壁64、補助垂下板71及びレバー軸受81が直接固定され、垂下側壁64及び補助垂下板71を介してスプリングロック79のシリンダ85が支持され、レバー軸受81によって、レバー軸受81の外径と等しくなるように膨大したロック操作レバー78の頭頂部が水平回転可能に支持されている。ロック操作レバー78の頭頂部より下方は、レバー軸受81の内径より小さく、レバー軸受81を通って下端近傍で折り曲げられ、長手方向軸Xに沿って開口端面65より前方にまで延びている。
【0032】
スプリングロック79は、図2fに示すスプリングロック29で採用されている段付きノックピン36、段付きノックピン36の細径部37に挿入された図示しないバネに加えて、段付きノックピン36及びバネを収容可能な大きさの第1開口と細径部37が入退可能な大きさの第2開口とを有するシリンダ85、並びに、細径部37の下端穴に通された指掛けリング46を備えており、当該指掛けリング46内をロック操作レバー78が通っている。ここで、バネが自然長のとき、段付きノックピン36の先端は、スライダ52を引き出す際に、フック4a,4b,4cの進路を妨害する第1位置にあるが、ロック操作レバー78をガイドレールから離れる方向に水平回転させると、それに伴って指掛けリング46が引っ張られてシリンダ85内でバネが縮むと同時にシリンダ85の第2開口から細径部37が露出し、段付きノックピン36の先端は、フック4a,4bの進路を妨害しないがフック4cの進路を妨害する第2位置に来る。この状態でロック解除状態となり、スライダ52の前蓋74を引出方向Yに引き出すことが可能になる。そのままスライダ52を引き出していくと、フック取付板67は、段付きノックピン36の先端はノックピン貫通孔69に入らない位置まで移動する。この位置でロック操作レバー78を解放すると、バネの復元力によってフック取付板67に当接し、さらにスライダ52を引き出していくと、当接した状態で摺動し、最終的にフック4cに当接する位置でスライダ52を引き出せなくなる。すなわち、本実施形態では、引出方向Yに沿って最も後端にあるフック4cの移動軌跡をそれ以外のフック4a,4bの移動軌跡と異ならせ、それをスプリングロック79の伸縮及びフック取付板67におけるノックピン貫通孔69の位置と関連付けることによって、ロック機構を担うスプリングロック79にスライダ52の抜けを防止する移動制限手段(ストッパ)としての役割も担わせていることになる。
【0033】
なお、本発明の実施の形態は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、また、上記実施形態に説明される構成のすべてが本発明の必須要件であるとは限らない。本発明は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当該技術的範囲に属する限り種々の改変等の形態を採り得る。
例えば、第1及び第2の実施形態(以下、集合的に「上記実施形態」という)では、ロック機構を担う部材として、スプリングロック29、79を用いたが、これに代えて、又は、これと組み合わせて、ガイドレール5、55の開口端面15に南京錠の掛け金を設け、スライダ2、52にも掛け金が入退可能な大きさの開口部を前蓋24、74に開けた構成とすることで、前蓋24がガイドレール5、55に完全に収納された際に開口部から掛け金が突き出て、その掛け金に南京錠をかけることでロックする機構も採用できる。また図6に示すように、ガイドレール55の開口部のフランジ56とスライダ52の前蓋74とに南京錠のシャックルを挿入可能な鍵穴75を設け、前蓋74を閉じた状態で南京錠のシャックルを通して施錠してもよい。
また、第1実施形態で使用した案内ローラー9、10に代えて、ボールベアリングを備えた転がり案内の直動機構や、すべり案内のような他の案内要素を使用することもできる。
第1実施形態で案内ローラー9、10(案内要素)は、ガイドレール5(ベース部材7)とスライダ2(懸架部材6)にそれぞれ設けたが、ガイドレール5又はスライダ2のいずれかのみに設けてもよい。
第1実施形態でストッパ18の位置は、ガイドレール5におけるレール頂面とは反対側の面17としたが、特に限定されず、スライダ2の案内ローラー9の回転を規制するため、ガイドレール5におけるレール対向側面13から空間27内に突き出るように設けてもよい。
第1実施形態で使用したストッパ18に代えて、移動制限手段として永久磁石を設置し、当該ベース部材7の永久磁石の位置に対応させて、懸架部材6が通過する軌跡上に同極の永久磁石を対向配置することで、反発力を利用することもできる。
第1実施形態でベース部材7に対する懸架部材6の相対移動可能な方向は、一方向、すなわちガイドレール5のいずれか一方の開口端面15に向かう方向のみとしたが、双方向、すなわち両方の開口端面15に向かう方向であってもよい。
第1実施形態でローラー部39は、レール頂面とは反対側の面17に回転可能に接触しているものとしたが、レール底面14に回転可能に接触するように構成してもよい。
上記実施形態で、ロック機構を担う部材は、ガイドレール5,55に直接支持固定されている構成としたが、別の実施形態として、リンクを介してガイドレールに間接的に支持されている構成としてもよい。具体的には、前蓋74に切り欠きを設け、ガイドレール5,55の開口部のフランジ56とスライダ52の前蓋74との間にリンクを挟み、リンクの一方のジョイントをフランジ56に回転可能に固定し、前蓋74が閉じたときに、リンクの自重で他方のジョイントが前蓋74の切り欠きに入り、自動的にロックが働くような構成としてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1,50 トラック用チェーンフック
2,52 スライダ
3,53 アングル
4,4a,4b,4c フック
5,55 ガイドレール
6 懸架部材
7 ベース部材
8 ピン
9、10 案内ローラー
11 レール貫通孔
12 レール頂面
13 レール対向側面
14 レール底面
15,65 開口端面
16,66 開口下面
17 レール頂面とは反対側の面
18 ストッパ
19 取付面
20 直交面
21 下端
X 長手方向軸
24,74 前蓋
26 底部
27 空間
28 垂直部
29,79 スプリングロック
30 フランジ
Y 引出方向
31 フランジ部
32 上げ底トレイ
33 トレイ底面
34 トレイ貫通孔
35 フック挿入孔
36 ノック部
37 細径部
39、40 ローラー部
43 切り欠き
44 バネ
45 底板貫通孔
46 指掛けリング
47 切れ目
48 切開片
56 フランジ
57 前蓋取付穴
59 前蓋取付板
64 垂下側壁
67 フック取付板
68 チャンネル
69 ノックピン貫通孔
71 補助垂下板
73 取付ボルト
75 鍵穴
78 ロック操作レバー
81 レバー軸受
85 シリンダ
100 トラック
101 シャシー
102 車体
C 車体前後方向
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e