(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047203
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】遠隔操作切断装置
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20220316BHJP
B28D 1/08 20060101ALI20220316BHJP
B28D 1/04 20060101ALI20220316BHJP
B27B 17/00 20060101ALN20220316BHJP
【FI】
E04G23/08 D
B28D1/08
B28D1/04 Z
B27B17/00 B
B27B17/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152983
(22)【出願日】2020-09-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】392022721
【氏名又は名称】株式会社和田電業社
(74)【代理人】
【識別番号】100094617
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 正浩
(72)【発明者】
【氏名】和田 功
【テーマコード(参考)】
2E176
3C069
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176AA04
2E176DD22
3C069AA01
3C069BA01
3C069BC03
3C069BC06
3C069CA08
3C069EA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数のパーツに分割して人力で山間地へ搬入し、切断対象のコンクリート柱を遠隔操作で切断できる、人肩運搬型の遠隔操作切断装置を提供する。
【解決手段】取付架台10、スライドテーブル20及びチェーンソー30を分離して搬送し、切断対象のコンクリート柱に取付架台10を取り付け、この取付架台10にスライドテーブル20を装着し、チェーンソー移動台21にチェーンソー30を搭載して組み立て、遠隔操作でコンクリート柱を切断する。取付架台10の取付部12は、基材の四隅に設けられ、切断対象のコンクリート柱に突き当てた状態に接する当接部材18-1~18-4を備える。この当接部材は、裏面側に、基材に固定した球状部を内挿する球状孔部を備え、この球状孔部を介して球状部に角度自在・回転自在に取り付けられていることを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断対象のコンクリート柱に取り付けられる取付架台と、
チェーンソーが着脱自在に搭載されるチェーンソー移動台を有し、前記取付架台に装着され、前記切断対象のコンクリート柱に対してチェーンソーを水平方向に移動させるスライドテーブルと、
前記スライドテーブルに設けられ、前記チェーンソー移動台を前記取付架台に対して水平方向に移動させる移動手段と、
前記移動手段及び前記チェーンソーを倒柱範囲外から遠隔操作で制御する制御手段とを具備し、
前記取付架台は、前記スライドテーブルを装着する装着部と、一端側がこの装着部の一端側に対して垂直方向に結合され、コンクリート柱への取付面となる板状の基材を有する取付部と、前記装着部の他端側と前記取付部の他端側間に結合された支持部とを備え、前記取付部をコンクリート柱に宛がい、チェーンブロックのチェーンをコンクリート柱に巻き付けて、当該チェーンブロックのフックを前記取付部に係止するものであり、
前記取付部は、前記基材の四隅に設けられ、切断対象のコンクリート柱に突き当てた状態に接する当接部材と、前記基材の両側面に設けられ、チェーンブロックのフックを掛けるための係止孔を有する係止部材を備え、
前記取付部の当接部材は、裏面側に、前記基材に固定した球状部を内挿する球状孔部を備え、この球状孔部を介して前記球状部に角度自在・回転自在に取り付けられており、
前記取付架台、スライドテーブル及びチェーンソーを分離して搬送し、前記切断対象のコンクリート柱に取付架台を取り付け、この取付架台にスライドテーブルを装着し、チェーンソー移動台にチェーンソーを搭載して組み立て、前記制御手段による遠隔操作でコンクリート柱を切断することを特徴とする遠隔操作切断装置。
【請求項2】
前記取付部は、前記チェーンブロックのチェーンをコンクリート柱に巻き付けて締め込んだときに、コンクリート柱に当接するスパイクボルトを備えている請求項1に記載の遠隔操作切断装置。
【請求項3】
前記スライドテーブルは、前記取付架台に装着される枠状体を備え、前記チェーンソー移動台は、この枠状体の長手方向に沿って前記移動手段により水平方向に往復移動する請求項1に記載の遠隔操作切断装置。
【請求項4】
前記移動手段は、前記枠状体の長手方向に沿って配置された推進軸と、この推進軸に螺合・挿通する状態で回転自在に設けられた雌ネジ孔を有し、前記チェーンソー移動台に固定された支持部材と、前記推進軸を回動駆動する駆動装置を備えている請求項3に記載の遠隔操作切断装置。
【請求項5】
前記制御手段は、有線または無線で、倒柱範囲外から前記移動手段及び前記チェーンソーを制御するものである請求項1乃至4のいずれかに記載の遠隔操作切断装置。
【請求項6】
前記制御手段は、命令を送信する送信機と、この送信機からの命令を受信する受信機と、前記受信機で受けた命令に基づいて前記駆動装置を制御するサーボモータと、前記受信機で受けた命令に基づいて前記チェーンソーのスロットルを制御するリニアアクチュエータユニットとを備えている請求項5に記載の遠隔操作切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパーツに分割して人力で山間地へ搬入し、切断対象のコンクリート柱に取り付けつつ組み立て、コンクリート柱を遠隔操作で切断するための、人肩運搬型の遠隔操作切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、安定した作業体勢確保が困難である急傾斜地での切断や、蔓絡み等の裂けやすい樹木の切断時に、作業員の安全を確実に確保できる、人肩運搬型の遠隔操作切断装置が記載されている。
【0003】
この特許文献1に示す遠隔操作切断装置は、下記(イ)~(ニ)のような特長を備えている。
(イ)取付架台、スライドテーブル及びチェーンソーを分離して搬送できる。
(ロ)伐採対象の樹木へ取付架台を取り付ける際に、取付部を樹木に宛がい、樹木にチェーンブロックを巻き付けることで、偏芯木や裂けやすい木等の危険木にも安全且つ確実に取り付けることができる。
(ハ)倒木範囲外から遠隔操作で樹木を伐採できる。
(ニ)作業員が直接チェーンソーを使用して行う危険な伐採作業を最小限にでき、作業の安全、人身災害防止が図れ、作業員のチェーンソーの使用時間を削減できるので、白蝋病等の職業病防止も図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1の遠隔操作伐採装置は、樹木の伐採を目的とすることから、山間地に立設されている電柱などのコンクリート柱を切断するのには、必ずしも適したものではなかった。
【0006】
例えば、取付部には、基材の四隅に、平面視L字の抱え込み部材が設けられているが、この取付部を樹木に宛がい、チェーンブロックのチェーンを樹木に巻き付けて締め込んだときに、抱え込み部材の折曲している部分が、コンクリート柱の表面に線状に当接するので、遠隔操作伐採装置の取付部を、コンクリート柱に確実に取り付けることが困難であった。
【0007】
具体的には、チェーンブロックのチェーンをコンクリート柱に巻き付けて締め込んだとしても、取付部が水平方向、或いは、上下方向にずれ込んでしまう可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数のパーツに分割して人力で山間地へ搬入し、切断対象のコンクリート柱に取り付けつつ組み立て、コンクリート柱を遠隔操作で切断できる、人肩運搬型の遠隔操作切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る遠隔操作切断装置においては、切断対象のコンクリート柱に取り付けられる取付架台と、チェーンソーが着脱自在に搭載されるチェーンソー移動台を有し、前記取付架台に装着され、前記切断対象のコンクリート柱に対してチェーンソーを水平方向に移動させるスライドテーブルと、前記スライドテーブルに設けられ、前記チェーンソー移動台を前記取付架台に対して水平方向に移動させる移動手段と、前記移動手段及び前記チェーンソーを倒柱範囲外から遠隔操作で制御する制御手段とを具備し、前記取付架台は、前記スライドテーブルを装着する装着部と、一端側がこの装着部の一端側に対して垂直方向に結合され、コンクリート柱への取付面となる板状の基材を有する取付部と、前記装着部の他端側と前記取付部の他端側間に結合された支持部とを備え、前記取付部をコンクリート柱に宛がい、チェーンブロックのチェーンをコンクリート柱に巻き付けて、当該チェーンブロックのフックを前記取付部に係止するものであり、前記取付部は、前記基材の四隅に設けられ、切断対象のコンクリート柱に突き当てた状態に接する当接部材と、前記基材の両側面に設けられ、チェーンブロックのフックを掛けるための係止孔を有する係止部材を備え、前記取付部の当接部材は、裏面側に、前記基材に固定した球状部を内挿する球状孔部を備え、この球状孔部を介して前記球状部に角度自在・回転自在に取り付けられており、前記取付架台、スライドテーブル及びチェーンソーを分離して搬送し、前記切断対象のコンクリート柱に取付架台を取り付け、この取付架台にスライドテーブルを装着し、チェーンソー移動台にチェーンソーを搭載して組み立て、前記制御手段による遠隔操作でコンクリート柱を切断することで、上述した課題を解決した。
【0010】
また、前記取付部は、前記チェーンブロックのチェーンをコンクリート柱に巻き付けて締め込んだときに、コンクリート柱に当接するスパイクボルトを備えていることで上述した課題を解決した。
【0011】
この他、前記スライドテーブルは、前記取付架台に装着される枠状体を備え、前記チェーンソー移動台は、この枠状体の長手方向に沿って前記移動手段により水平方向に往復移動することで、同じく上述した課題を解決した。
【0012】
また、前記移動手段は、前記枠状体の長手方向に沿って配置された推進軸と、この推進軸に螺合・挿通する状態で回転自在に設けられた雌ネジ孔を有し、前記チェーンソー移動台に固定された支持部材と、前記推進軸を回動駆動する駆動装置を備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0013】
更に、前記制御手段は、有線または無線で、倒柱範囲外から前記移動手段及び前記チェーンソーを制御するものであることで、同じく上述した課題を解決した。
【0014】
また、前記制御手段は、命令を送信する送信機と、この送信機からの命令を受信する受信機と、前記受信機で受けた命令に基づいて前記駆動装置を制御するサーボモータと、前記受信機で受けた命令に基づいて前記チェーンソーのスロットルを制御するリニアアクチュエータユニットとを備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る遠隔操作切断装置によれば、取付部に設けた複数の当接部材を、基材に固定した球状部を内挿する球状孔部を介して角度自在・回転自在に取り付けたので、切断対象のコンクリート柱へ取付架台を取り付ける際に、取付部をコンクリート柱に宛がい、コンクリート柱にチェーンブロックを巻き付けることで、安全且つ確実に取り付けることができる。
【0016】
また、制御手段を介して、コンクリート柱の倒れる範囲外から遠隔操作でコンクリート柱を切断できるので、作業員の安全を確実に確保することができる。
【0017】
具体的には、コンクリート柱を切断した際に、思わぬ方向に倒れてしまう事態が生じても、作業員は倒れるコンクリート柱の範囲外にいることから、倒れるコンクリート柱の直撃を受けることがないのである。
【0018】
加えて、急傾斜地等で足場が悪く、安定した作業体勢確保が困難であり、倒れるコンクリート柱からの速やかな退避が困難である場合においても、作業員は予め倒れる範囲の外に避難していることから、作業員の安全を確実に確保することができる。
【0019】
しかも、作業員が直接チェーンソーを使用して行う危険なコンクリート柱の切断作業を最小限にでき、作業の安全、人身災害防止が図れる。また、作業員のチェーンソーの使用時間を削減できるので、白蝋病等の職業病防止も図れる。
【0020】
更に、取付架台、スライドテーブル及びチェーンソーを分離して搬送できるので、山間地への人力での搬入も容易である。また、組み立ては、切断対象のコンクリート柱に取付架台を取り付け、この取付架台にスライドテーブルを装着し、チェーンソー移動台にチェーンソーを搭載すれば良いので、取付作業の簡便化も図れる。
【0021】
しかも、スパイクボルトで切断対象のコンクリート柱に対する取付架台の回転方向や上下方向へのずれを防止することで、チェーンソーの振動による取付部の緩みやずれを防止できる。
【0022】
加えて、既存の有線または無線の制御手段、チェーンソー、チェーンブロック等の汎用品を流用して遠隔操作切断装置を作製することができるので、開発費や製造コストも少なくて済む。
【0023】
また、制御手段には、無線の場合、送信機、受信機、サーボモータ及びリニアアクチュエータユニット等の市販のラジオコントロールユニットを用いることができる。
【0024】
従って、本発明によれば、複数のパーツに分割して人力で山間地へ搬入し、切断対象のコンクリート柱に取り付けつつ組み立て、コンクリート柱を遠隔操作で切断できる、人肩運搬型の遠隔操作切断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る遠隔操作切断装置の概略構成を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示した遠隔操作切断装置における、取付架台の斜視図である。
【
図3】
図2に示した取付架台を背面側から見た斜視図である。
【
図4】
図2及び
図3に示した取付架台の取付部を拡大して示す斜視図である。
【
図5】
図1に示した遠隔操作切断装置における、スライドテーブルとチェーンソー移動台の斜視図である。
【
図6】
図5に示したスライドテーブルのチェーンソー移動台にチェーンソーを搭載し、切断を開始した時の状態を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示した遠隔操作切断装置における、切断終了時の状態を示す斜視図である。
【
図8】遠隔操作切断装置をコンクリート柱に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図9】遠隔操作切断装置をコンクリート柱に取り付けた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る遠隔操作切断装置の概略構成を示している。この切断装置は、取付架台10、スライドテーブル20及びチェーンソー30等を備えている。上記取付架台10は、切断対象のコンクリート柱40にチェーンブロック50を用いて装着される。
【0028】
上記スライドテーブル20は、上記取付架台10の上部水平面に装着され、このスライドテーブル20のチェーンソー移動台21にチェーンソー30が着脱自在に搭載される。
【0029】
このチェーンソー30の動力は、一般的には、2ストロークガソリンエンジンが用いられているが、これに限定されず、動力として電動モーターを用いるチェーンソー30であっても差し支えない。
【0030】
チェーンソー移動台21は、切断対象のコンクリート柱40の直径に応じて市販のチェーンソーを入れ替えできるようになっている。また、チェーンソー移動台21は、スライドテーブル20上を長手方向に往復移動するようになっており、当該チェーンソー移動台21に搭載したチェーンソー30を水平方向に移動させてコンクリート柱40を切断する。
【0031】
上記取付架台10、スライドテーブル20、チェーンソー30及びチェーンブロック50等は分離して人力で山間地等に搬入する。そして、
図1に示すように、切断対象のコンクリート柱40にチェーンブロック50のチェーン51を巻き付け、当該チェーンブロック50のフック52,53を上記取付架台10に係止し、チェーンブロック50を締め込んで取付架台10をコンクリート柱40の切断部、例えば、根本付近に取り付ける。
【0032】
次に、この取付架台10にスライドテーブル20を装着し、チェーンソー移動台21にチェーンソー30を搭載して組み立て、無線や有線による遠隔操作でコンクリート柱40を切断するようになっている。
【0033】
上記取付架台10は、
図2及び
図3に示すように、スライドテーブル20を装着する装着部(スライドテーブル装着部)11、一端側がこの装着部11の一端側に対して垂直方向に結合され、コンクリート柱40への取付面となる板状の基材を有する取付部12、上記装着部11の他端側と上記取付部12の他端側間に結合され、これらを支持する支持部13-1,13-2とからなる。これらの各部を構成する部材には、軽量化のために、例えば、アルミニウム等の材料が用いられている。
【0034】
上記装着部11は、本例では板状部材の長手方向の両側面を直角に折曲した折曲部11a,11bと、短手方向の一側面を直角に折曲した折曲部11cとを有する。また、板状部材には、スライドテーブル20を装着する際に用いる長円形のネジ穴14-1,14-2と、このスライドテーブル20をL字金具で固定するための係止部材15-1,15-2がそれぞれ対応する位置に設けられている。
【0035】
上記取付部12のコンクリート柱40への取付面となる板状の基材は、長手方向の両側面を直角に折曲した折曲部12a,12bを有し、一辺側が上記装着部11の板状部材に溶接等で固着される。
【0036】
上記基材には、コンクリート柱40に装着したときに基材の両側面に配置される係止部材16-1,16-2が設けられている。係止部材16-1,16-2は、チェーンブロック50のフック52,53を掛けるための係止孔17-1,17-2を有する。これら係止部材16-1,16-2には、本例ではL字アングルを短く切断した部材が用いられている。
【0037】
上記係止部材16-1,16-2間の基材表面の四隅には、
図4に拡大して示すように、当接部材18-1~18-4が角度自在・回転自在に取り付けられている。
【0038】
これら当接部材18-1~18-4はそれぞれ、当接部材18-3で代表的に示すように、基材表面に固定した球状部18-3bを内挿する球状孔部18-3aを備え、この球状孔部18-3aを介して、基材に固定した球状部18-3bに角度自在・回転自在に取り付けられる。
【0039】
当接部材18-1~18-4におけるコンクリート柱40との接触面側は、ゴムなどの弾性部材で形成されており、チェーンブロック50のチェーン51をコンクリート柱40に巻き付けて締め込んだときに、弾性変形して密着し、コンクリート柱40に対する取付架台10のずれを防止するようになっている。
【0040】
上記接触面側は、コンクリート柱40の表面形状に対応する凹レンズ形状になっていても良い。この場合には、コンクリート柱40の表面に対して摩擦係数の大きな材料であれば、ゴムなどの弾性部材に限らず樹脂などを用いることもできる。
【0041】
また、樹脂とコンクリート柱40との間に、濡らした布や滑り止め用のシート材などを介在させても構わない。更に、コンクリート柱40の直径に合わせた複数種類の曲率の当接部材18-1~18-4を用意し、切断するコンクリート柱40の直径に応じて交換しても良い。
【0042】
上記基材の当接部材18-1,18-2間、及び当接部材18-3,18-4間にはそれぞれ、チェーンブロック50のチェーン51をコンクリート柱40に巻き付けて締め込んだときに、コンクリート柱40に当接するスパイクボルト19-1,19-2が設けられている。これらスパイクボルト19-1,19-2は、コンクリート柱40に対する取付架台10の回転方向や上下方向へのずれを防止するものである。
【0043】
上記支持部13-1,13-2は、本例では上記装着部11の他端側と上記取付部12の他端側間に、溶接やリベット、ボルトとナット等で固定された一対の斜材からなり、上記装着部11を支持して補強するものである。これらの斜材は、中央付近の幅広部13-1a,13-2aが直角に折曲されており、折曲強度が高められている。
【0044】
上記スライドテーブル20は、
図5に示すように、取付架台10の装着部11に設けられている係止部材15-1,15-2にL字金具29-1,29-2を係止し、L字金具29-1,29-2のネジ穴29-1a,29-2aと板状部材のネジ穴14-1,14-2にそれぞれボルトを挿通してナットで固定することで装着される。
【0045】
このスライドテーブル20は、アルミニウム等からなる角パイプ22a,22b,22c,22dが溶接等で固着されて形成された枠状体22と、角パイプ22c,22d上に設置された移動レール23-1,23-2とを備えている。枠状体22の角部はそれぞれ、L字金具24-1~24-4で補強されている。また、枠状体22には、長手方向に沿って配置された推進軸(リニアシャフト)25が挿通されている。
【0046】
チェーンソー移動台21は、チェーンソー30を搭載して、枠状体22上を長手方向に沿って水平方向に往復移動するものである。上記枠状体22の短手方向の角パイプ22a,22bは、長手方向に沿って配置された推進軸25の両端を支持している。
【0047】
チェーンソー移動台21には、図示しない支持部材が固定されており、この支持部材は推進軸25に螺合・挿通する状態で回転自在に設けられた雌ネジ孔を有している。
【0048】
更に、チェーンソー移動台21の下面には、移動レール23-1,23-2に係合するスライダー(図示せず)が設けられている。そして、推進軸25をモータ等の駆動装置で回動駆動することにより、チェーンソー移動台21を水平方向に往復移動させる。このように、支持部材、推進軸25、移動レール23-1,23-2、スライダー、駆動装置等は移動手段として働く。
【0049】
チェーンソー移動台21の上面には、チェーンソー30を搭載して固定するための保持具28-1,28-2,28-3が設けられている。
【0050】
保持具28-1,28-2は、チェーンソー移動台21の上面に取り付けられた柱状突起形状をしており、保持具28-3はチェーンソー移動台21の上面に固定したL字金具である。これらの保持具28-1,28-2,28-3で挟み込むようにチェーンソー30を載置することで、チェーンソー30が自重により固定される。
【0051】
また、このチェーンソー移動台21には、チェーンソー30のスロットル操作を行うスロットル操作装置26と、モータの制御装置27が設けられている。上記スロットル操作装置26は、例えば、リニアアクチュエータユニットとリニアモーションガイド(LMガイド)とを備えている。本例ではラジオコントロールユニットを用いており、上記制御装置27は、受信機とサーボモータ等を備えており制御手段として働く。
【0052】
そして、図示しない送信機の操作による命令または指示を受信機が受信すると、この受信機によりサーボモータとリニアアクチュエータユニットが作動され、モータのオン/オフ及び回転方向の制御と、直線運動部をころがりを用いてガイドするLMガイドによるスロットルレバーの制御が行われる。
【0053】
これによって、コンクリート柱40の倒れる範囲外からチェーンソー30のスロットル操作及びモータの回動制御が可能である。もちろん、コンクリート柱40の倒れる範囲外から遠隔操作できれば良いので、有線によるコントロールユニットを用いることも充分に可能である。
【0054】
図6は、
図5に示したスライドテーブル20のチェーンソー移動台21にチェーンソー30を搭載し、切断を開始した時の状態を示す斜視図である。また、
図7は、
図6に示した遠隔操作切断装置における切断終了時の状態を示す斜視図である。
【0055】
図示するように、チェーンソー移動台21がスライドテーブル20の長手方向に沿って水平移動することで、チェーンソー30のガイドバー30aが矢印で示すように水平移動し、このガイドバー30aの外周に沿って回転するソーチェーン30bによりコンクリート柱40が切断される。
【0056】
図8は、本発明の実施形態に係る遠隔操作切断装置を切断対象のコンクリート柱40に取り付けた状態を示す斜視図であり、
図9はその平面図である。
【0057】
図示するように、切断対象のコンクリート柱40にチェーンブロック50のチェーン51を巻き付け、フック52,53を取付架台10の係止部材16-1,16-2に係止してチェーンブロック50を締め込む。
【0058】
このように、取付架台を取り付ける際に、切断対象のコンクリート柱40に取付部12の当接部材18-1~18-4が角度自在・回転自在に取り付けられているので、取付部12をコンクリート柱40に宛がい、コンクリート柱40にチェーンブロック50を巻き付けることで、安全且つ確実に取り付けることができる。
【0059】
また、チェーンブロック50を締め込むことでスパイクボルト19-1,19-2がコンクリート柱40の回転方向と上下方向のずれを防ぐので、チェーンソー30の振動による緩みやずれを防止でき安全に作業できる。
【0060】
上記のような構成の遠隔操作切断装置によれば、送信機による倒柱範囲外からの遠隔操作でコンクリート柱を切断できるので、安定した作業体勢確保が困難な急傾斜地での切断時にも作業員の安全を確保できる。
【0061】
また、危険な切断作業を最小限にでき、作業安全、人身災害防止が図れる。しかも、作業員のチェーンソーの使用時間を削減して、白蝋病等の職業病防止も図れる。
【0062】
更に、取付架台、スライドテーブル、チェーンソー及びチェーンブロック等を分離して搬送できるので、山間地への人力での搬入も容易である。
【0063】
そして、組み立ては、切断対象のコンクリート柱にチェーンブロックを用いて取付架台を取り付け、この取付架台にスライドテーブルを装着し、チェーンソー移動台にチェーンソーを搭載すれば良いので、操作性やコンクリート柱への切断装置のセットが簡単で分かりやすく、取付作業の簡便化も図れる。
【0064】
また、取付架台のコンクリート柱への取り付け時に、取付部をコンクリート柱に宛がい、コンクリート柱に市販の締付工具であるチェーンブロックを巻き付けることで、安全且つ確実に取り付けることができる。
【0065】
しかも、当接部材とスパイクボルトで切断対象のコンクリート柱に対する取付架台の回転方向や上下方向へのずれを防止するとともに、堅固に固定でき、チェーンソーの振動による緩みやずれを防止できる。更に、取付架台の軽量化による取付作業の簡便化も図れる。
【0066】
加えて、既存の有線または無線の制御手段、チェーンソー、チェーンブロック等の汎用品を流用することができるので、開発費や製造コストも少なくて済む。また、構成部材は安価な材質で汎用性があり、且つ極力コストが掛からない構造で実現できる。
【0067】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【0068】
例えば、実施形態では、取付架台の切断対象のコンクリート柱への固定にチェーンブロックを1個で固定する例を示したが、チェーンソーの重量やブレ等に応じて、チェーンブロックを2個で固定するようにしても良い。
【0069】
また、チェーンブロックに代えて、例えば、耐荷重が大きいラチェット式ラッシングベルト等を用いることもできる。このラチェット式ラッシングベルトを用いることで、更に軽量化を実現できる。
【0070】
更に、当接部材を基材の四隅に設ける場合を例に取って説明したが、切断対象のコンクリート柱の直径に応じて、当接部材の数を増やしたり、配置を変更したりしても構わない。
【0071】
この他、各部材をアルミニウムで作成する例を説明したが、アルミニウムに限定されるものではないのは勿論であり、比較的軽量で十分な強度を持ったものであれば、他の材料や複数の材料の組み合わせでも良い。
【符号の説明】
【0072】
10 取付架台
11 装着部(スライドテーブル装着部)
11a,11b,11c 折曲部
12 取付部
12a,12b 折曲部
13-1,13-2 支持部
13-1a,13-2a 幅広部
14-1,14-2 ネジ穴
15-1,15-2 係止部材
16-1,16-2 係止部材
17-1,17-2 係止孔
18-1~18-4 当接部材
18-3a 球状孔部
18-3b 球状部
19-1,19-2 スパイクボルト
20 スライドテーブル
21 チェーンソー移動台
22 枠状体
22a,22b,22c,22d 角パイプ
23-1,23-2 移動レール
24-1~24-4 L字金具
25 推進軸(リニアシャフト)
26 スロットル操作装置
27 制御装置(制御手段)
28-1,28-2,28-3 保持具
29-1,29-2 L字金具
29-1a,29-2a ネジ穴
30 チェーンソー
30a ガイドバー
30b ソーチェーン
40 コンクリート柱
50 チェーンブロック
51 チェーン
52,53 フック