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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047216
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】バキュームポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/12 20060101AFI20220316BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20220316BHJP
   F04C 29/06 20060101ALI20220316BHJP
   F04C 25/02 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
F04C29/12 G
B60T17/00 C
F04C29/06 C
F04C25/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152998
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 功史
【テーマコード(参考)】
3D049
3H129
【Fターム(参考)】
3D049BB21
3D049BB27
3D049CC03
3D049HH09
3D049JJ01
3D049JJ02
3D049JJ08
3D049JJ09
3D049PP05
3D049PP06
3D049PP07
3H129AA05
3H129AB02
3H129BB35
3H129BB44
3H129BB45
3H129CC15
3H129CC25
3H129CC38
(57)【要約】
【課題】排気通路における凍結防止剤の析出を抑制する。
【解決手段】バキュームポンプ2は、ポンプ室3と、大気開放された排気口5を含み、ポンプ室3から排気口5に気体を導く排気通路6と、を備え、排気通路6を形成する壁面20は、第1領域21と、第1領域21よりも排気通路6における下流側に位置し、第1領域21よりも撥水性が高い第2領域23と、を含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室と、
大気開放された排気口を含み、前記ポンプ室から前記排気口に気体を導く排気通路と、を備え、
前記排気通路を形成する壁面は、
第1領域と、
前記第1領域よりも前記排気通路における下流側に位置し、前記第1領域よりも撥水性が高い第2領域と、を含む、
バキュームポンプ。
【請求項2】
前記排気通路は、前記壁面の前記第2領域によって少なくとも部分的に形成され、前記排気口を下流端に有する前記排気通路の出口流路部を含む、
請求項1に記載のバキュームポンプ。
【請求項3】
前記出口流路部内に設けられ、前記壁面の前記第2領域の一部として形成される弁座に当接可能に設けられる弁体をさらに備える、
請求項2に記載のバキュームポンプ。
【請求項4】
前記壁面の前記第2領域は、少なくとも、前記排気通路のうち前記弁座と前記排気口との間の部位を形成する、
請求項3に記載のバキュームポンプ。
【請求項5】
前記排気通路は、前記弁座を含む前記壁面の前記第2領域によって形成され、前記排気口を下流端に有する前記排気通路の出口流路部を含み、
前記出口流路部内に設けられ、前記出口流路部からの前記弁体の脱落を防止するためのストッパを備える、
請求項3又は4に記載のバキュームポンプ。
【請求項6】
前記出口流路部は、前記排気通路のうち前記排気口に向かって鉛直方向下方に延在し、
前記弁座は、前記出口流路部の鉛直方向における中央位置よりも上方に位置する、
請求項5に記載のバキュームポンプ。
【請求項7】
前記出口流路部を形成する中空筒部材と、
少なくとも前記中空筒部材の内壁面を覆うように設けられ、前記壁面の前記第2領域を形成する撥水被膜と、を備える、
請求項2乃至6の何れか一項に記載のバキュームポンプ。
【請求項8】
前記出口流路部を形成する中空筒部材と、
前記ポンプ室を形成するポンプケーシングと、を備え、
前記中空筒部材は、前記排気通路のうち前記出口流路部と前記ポンプ室とを連通させる上流側通路部を形成する前記ポンプケーシングよりも撥水性が高い材料で構成される、
請求項2乃至6の何れか一項に記載のバキュームポンプ。
【請求項9】
前記ポンプ室を形成するポンプケーシングを備え、
前記ポンプケーシングは、
前記出口流路部を形成し、下方に向かって延びる筒状部を含む上側ケーシングと、
前記上側ケーシングの下方に位置し、前記筒状部が嵌合するボアを有する下側ケーシングと、を含み、
前記上側ケーシングの母材よりも撥水性が高い材料で形成され、前記筒状部の内壁面の少なくとも一部を覆うように設けられる撥水被膜を備える、
請求項2乃至6の何れか一項に記載のバキュームポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バキュームポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、ブレーキブースタの負圧室内を負圧にするためにバキュームポンプが用いられる場合がある。バキュームポンプは、車両のエンジンルームに搭載されることが多いが、場合によっては地面に近い場所に搭載されることもある。このため、搭載場所によっては車両が深い水溜まりを走行する際にバキュームポンプが浸水することがある。これに対して、特許文献1には、排気通路の排気口を閉塞可能な弁体を備えるバキュームポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-97912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、路面には塩化ナトリウムや塩化カルシウムのような塩化物を含む凍結防止剤が散布されている場合がある。このため、車両の走行時に、凍結防止剤を含んだ水溶液が排気口から排気通路内に侵入し、排気通路に凍結防止剤が析出してしまう虞がある。場合によってはバキュームポンプの排気を阻害するおそれもあるため、凍結防止剤の析出を抑制することが望ましい。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、排気通路における凍結防止剤の析出を抑制できるバキュームポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るバキュームポンプは、ポンプ室と、大気開放された排気口を含み、ポンプ室から排気口に気体を導く排気通路と、を備え、排気通路を形成する壁面は、第1領域と、第1領域よりも排気通路における下流側に位置し、第1領域よりも撥水性が高い第2領域と、を含む。
【0007】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、排気通路は、壁面の第2領域によって少なくとも部分的に形成され、排気口を下流端に有する排気通路の出口流路部を含んでもよい。
【0008】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の構成において、出口流路部内に設けられ、壁面の第2領域の一部として形成される弁座に当接可能に設けられる弁体をさらに備えてもよい。
【0009】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の構成において、壁面の第2領域は、少なくとも、排気通路のうち弁座と排気口との間の部位を形成してもよい。
【0010】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)に記載の構成において、排気通路は、弁座を含む壁面の第2領域によって形成され、排気口を下流端に有する排気通路の出口流路部を含み、出口流路部内に設けられ、出口流路部からの弁体の脱落を防止するためのストッパを備えてもよい。
【0011】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の構成において、出口流路部は、排気通路のうち排気口に向かって鉛直方向下方に延在し、弁座は、出口流路部の鉛直方向における中央位置よりも上方に位置してもよい。
【0012】
(7)幾つかの実施形態では、上記(2)から(6)の何れか1つに記載の構成において、出口流路部を形成する中空筒部材と、少なくとも中空筒部材の内壁面を覆うように設けられ、壁面の第2領域を形成する撥水被膜と、を備えてもよい。
【0013】
(8)幾つかの実施形態では、上記(2)から(6)の何れか1つに記載の構成において、出口流路部を形成する中空筒部材と、ポンプ室を形成するポンプケーシングと、を備え、中空筒部材は、排気通路のうち出口流路部とポンプ室とを連通させる上流側通路部を形成するポンプケーシングよりも撥水性が高い材料で構成されてもよい。
【0014】
(9)幾つかの実施形態では、上記(2)から(6)の何れか1つに記載の構成において、ポンプ室を形成するポンプケーシングを備え、ポンプケーシングは、出口流路部を形成し、下方に向かって延びる筒状部を含む上側ケーシングと、上側ケーシングの下方に位置し、筒状部が嵌合するボアを有する下側ケーシングと、を含み、上側ケーシングの母材よりも撥水性が高い材料で形成され、筒状部の内壁面の少なくとも一部を覆うように設けられる撥水被膜を備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示のバキュームポンプによれば、排気通路における凍結防止剤の析出を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係るバキュームポンプを示す概略的な分解斜視図である。
図2図1に示したバキュームポンプの一部切り欠き断面図である。
図3】本開示における「撥水性」を説明するための図である。
図4】一実施形態に係る第2領域を示す概略構成図である。
図5】別の一実施形態に係る第2領域を示す概略構成図である。
図6】さらに別の一実施形態に係る第2領域を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本開示の一実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0018】
図1は、本開示の一実施形態に係るバキュームポンプ2を示す概略的な分解斜視図である。図2は、図1に示したバキュームポンプ2の一部切り欠き断面図である。図1及び図2に例示するバキュームポンプ2は、自動車等の車両におけるブレーキブースタ(マスターバック)の負圧室内を負圧にするための電動バキュームポンプである。以下において「上」及び「下」とは、バキュームポンプ2が車両に設置された状態における「上」及び「下」を意味するものとして説明する。尚、例えば、後述するロータ56の回転軸方向においてトップカバー14側を上、モータ100側を下として上下を規定してもよい。
【0019】
本開示の一実施形態に係るバキュームポンプ2の構成について説明する。図1及び図2に示すように、バキュームポンプ2は、ポンプ室3と、大気開放された排気口5を含み、ポンプ室3から排気口5に気体を導く排気通路6(図2参照)と、を含む。
【0020】
ポンプ室3内には、ポンプ室3への気体の吸込及びポンプ室3からの気体の吐出を行うための可動部50が収容されている。図1及び図2に例示する形態では、可動部50は、駆動装置としてのモータ100によって駆動される。この可動部50は、外周面52に複数のスリット54が形成されたロータ56と、複数のスリット54にそれぞれ配置された複数のベーン58と、を含む。このように、バキュームポンプ2はベーン式の電動バキュームポンプとして構成されている。ロータ56は、モータ100の不図示のシャフトに連結されており、このシャフトを中心として回転する。ロータ56が回転すると、ロータ56のスリット54に沿ってベーン58が遠心力でロータ56の径方向外側に向けて移動し、ベーン58の先端部59がポンプ室3の壁面(カム面11)上を摺動する。
【0021】
図1及び図2に例示する形態では、バキュームポンプ2は、ポンプケーシング本体10と、ポンプカバー12と、トップカバー14と、ボトムカバー16と、を含む。下から順に、ボトムカバー16、ポンプケーシング本体10、ポンプカバー12及びトップカバー14が配置されている。
【0022】
ポンプケーシング本体10は、可動部50が収容されるポンプ室3を画定する。ポンプケーシング本体10は、ロータ56の外周面52と対向するカム面11を含む。ポンプケーシング本体10は、排気通路6のうち出口流路部8を形成する部材(後述する中空筒部材22、又は筒状部47)の周囲を覆う排気カバー部13を含む。排気カバー部13は筒形状を有し、上下方向に沿って延在する。排気カバー部13の下端には外気に開口する孔19が形成されている。
【0023】
ポンプカバー12は、ポンプケーシング本体10とは別体で設けられ、可動部50の一方側(図示する形態ではロータ56の上側)を覆う。ポンプカバー12は、ポンプ室3に気体を導くための吸気通路7からポンプ室3に気体を流入させるように構成された吸気口15を含む。ポンプカバー12は、ポンプケーシング本体10とは分離可能な別部品として構成され、締結部材としてのボルト60(図1参照)によってポンプケーシング本体10に締結される。
【0024】
トップカバー14は、ポンプカバー12の上側を覆う。トップカバー14は、ポンプカバー12とは別体で設けられている。トップカバー14、ポンプカバー12及びポンプケーシング本体10は、締結部材としてのボルト62(図1参照)によって共締めされる。
【0025】
ボトムカバー16は、ポンプケーシング本体10とモータ100との間に設けられ、ポンプケーシング本体10の下側を覆う。ボトムカバー16は、不図示のブレーキブースタの負圧室から吸気を行うための吸気管部70を含む。上述した吸気通路7は、この吸気管部70を介して、気体を取り込むようになっている。ボトムカバー16は、ポンプケーシング本体10とは別体で設けられている。ボトムカバー16は、締結部材としてのボルト64(図1参照)によってポンプケーシング本体10に締結される。
【0026】
次に、排気通路6について説明する。図2に例示する形態では、排気通路6は、ポンプケーシング本体10とボトムカバー16との間に形成された拡張型吸音器としての消音室72(拡張室)と、ポンプカバー12とトップカバー14との間に形成された拡張型吸音器としての消音室74(拡張室)と、排気口5を下流端に有する出口流路部8と、を含む。排気通路6は、排気通路6内を排気が流通する流通方向において、上流側から順に消音室72、消音室74、及び出口流路部8を含んでいる。
【0027】
消音室72には、ポンプケーシング本体10に形成された吐出口18を介してポンプ室3の排気が吐出される。消音室72を通った排気は、ポンプケーシング本体10とポンプカバー12とを貫通する貫通穴76を介して消音室74に流入する。消音室74内の空間と出口流路部8内の空間とは互いに連通しており、消音室74を通った排気は出口流路部8に流入する。出口流路部8に流入した排気は、出口流路部8の排気口5及び排気カバー部13の孔19を通ってバキュームポンプ2の外部に排出される。
【0028】
排気通路6を形成する壁面20は、第1領域21と、第1領域21よりも排気通路6における下流側に位置し、第1領域21よりも撥水性が高い第2領域23と、を含む。図2に例示する形態では、壁面20のうち第1領域21は、排気通路6のうち消音室72及び消音室74を形成している。壁面20のうち第2領域23は、排気通路6のうち出口流路部8を形成している。
【0029】
尚、本開示は、第2領域23が第1領域21より下流側に位置するのであれば、第1領域21及び第2領域23の形成範囲に関して、図2に例示する形態に限定されない。例えば、壁面20の第1領域21が消音室72を形成し、壁面20の第2領域23が消音室74及び出口流路部8を形成してもよい。他の例では、壁面20の第1領域21が出口流路部8のうち上流部を形成し、壁面20の第2領域23が出口流路部8のうち上流部より下流側に位置する下流部を形成してもよい。
【0030】
ここで、本開示における「撥水性」について説明する。図3は、本開示における「撥水性」を説明するための図である。
【0031】
本開示における「撥水性」は、図3に示すように、撥水性を測定(評価)する対象物120に純水の液滴124が付着している状態において、対象物120の表面122と液滴124の表面126とが接触するポイントP1を通過する液滴124の表面126の接線をLとすると、接線Lと対象物120の表面122とによって形成される角度のうち液滴124が存在する側の角度(以降では、接触角θと記載する)である。この接触角θの測定方法は、特に限定されず、例えば、接触角計(協和界面科学株式会社、製品名:全自動接触角計 DMo-902)を用いて測定すればよい。
【0032】
本開示の一実施形態に係るバキュームポンプ2の作用・効果について説明する。図1及び図2に例示する構成によれば、出口流路部8を形成する第2領域23は、消音室72及び消音室74を形成する第1領域21よりも撥水性が高い(接触角θが大きい)。このため、車両が走行している際に路面に散布された凍結防止剤を含んだ水溶液(以下、単に「水溶液」と記載する)が排気口5から出口流路部8内に侵入しても、水溶液が出口流路部8に付着することを抑制するとともに、出口流路部8内に侵入した水溶液を落下させて排気口5から排出させる。よって、出口流路部8における凍結防止剤の析出を抑制できる。
【0033】
以下、第2領域23の具体例について説明する。図4は、本開示の一実施形態に係る第2領域23を示す概略構成図である。
【0034】
図4に示すように、一実施形態では、バキュームポンプ2は、筒形状を有し、上下方向に沿って延在する中空筒部材22A(22)と、中空筒部材22Aの内壁面25を覆い、第2領域23を形成する撥水被膜24Aと、を備える。中空筒部材22Aが、上述した出口流路部8を形成している。
【0035】
図4に例示する形態では、中空筒部材22Aは、ポンプカバー12及びポンプケーシング本体10の排気カバー部13のそれぞれとは別体で設けられている。中空筒部材22Aは、基部26と、この基部26から上方に延在するとともに、ポンプカバー12に形成された穴28に圧入される圧入部30と、を含む。基部26及び圧入部30は、消音室74から排気口5に向かって鉛直方向下方に延在している。
【0036】
中空筒部材22A内(出口流路部8内)には弁体32が設けられている。この弁体32は、第2領域23の一部として形成される弁座34に当接可能となっている。具体的には、中空筒部材22Aの基部26は、上下方向に沿ってストレート状に延在するストレート面36を有する第1基部38と、第1基部38の上端から上方に延在するにつれて中空筒部材22A内の流路断面を縮径するテーパ面40を有する第2基部42と、を含む。第1基部38は、下端に排気口5を形成するとともに、上端が中空筒部材22Aの鉛直方向における中央位置P2よりも上方に位置している。第2基部42は、内径が弁体32より小径となる小径部(弁座34)を有している。つまり、弁座34は、基部26のテーパ面40に形成されており、中央位置P2よりも上方に位置している。
【0037】
図4に示す例では、撥水被膜24A(第2領域23)は、少なくとも、中空筒部材22Aの内壁面25全体を覆っており、排気通路6のうち弁座34と排気口5との間の部位を形成している。撥水被膜24Aは、例えば、接触角θが70度以上となる材料で中空筒部材22Aの内壁面25を覆うことで形成される。幾つかの実施形態では、撥水被膜24Aはフッ素樹脂で形成される。幾つかの実施形態では、撥水被膜24Aは、ニッケルにフッ素樹脂が分散された母材で中空筒部材22Aの内壁面25に表面処理されたフッ素含有ニッケルメッキである。フッ素含有ニッケルメッキ被膜を用いれば、例えば、接触角θが110度程度の撥水性の高い撥水被膜24Aを実現可能である。
【0038】
図4に例示する構成によれば、中空筒部材22Aの内壁面25は、接触角θが70度以上となる材料で形成される撥水被膜24Aで覆われている。このため、排気口5から侵入した水溶液が、中空筒部材22Aの内壁面25に付着することを抑制する。また、中空筒部材22A内に侵入した水溶液が撥水被膜24Aの表面に付着したとしても、この付着した水溶液を落下させて排気口5からバキュームポンプ2の外部に排出することができる。
【0039】
また、図4に例示する構成によれば、中空筒部材22Aはポンプカバー12及び排気カバー部13のそれぞれとは別体で設けられているので、中空筒部材22Aへの撥水被膜24Aの形成が容易になり、バキュームポンプ2の製造コストを削減できる。
【0040】
また、図4に例示する構成によれば、弁座34は、中空筒部材22Aの中央位置P2よりも上方に位置するように設けられているので、弁座34を排気口5から離間させ、弁座34に水溶液が付着することを抑制できる(弁座34の濡れを防止できる)。
【0041】
ポンプカバー12及び排気カバー部13は、アルミニウム合金で構成されている場合がある。ここで、典型的なアルミニウム合金は接触角が70度未満であり、例えば65度程度の値を有する。図4に例示する構成によれば、撥水被膜24Aは接触角が70度以上となる材料で形成されるので、ポンプカバー12及び排気カバー部13のそれぞれをアルミニウム合金製としつつ、出口流路部8の壁面20の撥水性をポンプカバー12及び排気カバー部13のそれぞれより高くすることができる。
【0042】
尚、図4に例示する形態では、撥水被膜24Aは中空筒部材22Aの内壁面25全体を覆っていたが、本開示はこの形態に限定されない。幾つかの実施形態では、撥水被膜24Aは、ストレート面36及びテーパ面40のうち一方を覆う。幾つかの実施形態では、撥水被膜24Aは、ストレート面36の一部を覆う。幾つかの実施形態では、撥水被膜24Aは、テーパ面40の一部を覆う。幾つかの実施形態では、撥水被膜24Aは、中空筒部材22Aの内壁面25の少なくとも一部を覆う。
【0043】
幾つかの実施形態では、図4に示すように、バキュームポンプ2は、出口流路部8内に設けられ、弁体32の出口流路部8からの脱落を防止するためのストッパ44を備える。図4に示す例では、ストッパ44は、中空筒部材22Aの第1基部38内に設けられる。ストッパ44は、出口流路部8を流通する排気が通過可能に構成され、例えば、複数の棒部材のそれぞれを互いに交差させることで形成される格子部材であってもよい。このような構成によれば、バキュームポンプ2が浸水している状態では、弁座34に弁体32を接触させて、ポンプ室3に液体が侵入することを抑制できる。一方で、バキュームポンプ2が浸水していない状態では、弁体32をストッパ44によって保持し、出口流路部8内の空間と外気とを連通させることができる。
【0044】
幾つかの実施形態では、図4に示すように、排気カバー部13は、排気カバー部13の周壁を切り欠くスリット46が形成されている。スリット46は、排気カバー部13の下端から上方に沿って延びている。そして、中空筒部材22Aの排気口5は、スリット46の上端46aより下方に位置している。換言すれば、中空筒部材22Aは、鉛直方向において十分な長さを有し、スリット46の上端46aよりも下方に排気口5が位置するように延在している。このため、弁座34が排気口5から上方に大きく離間した位置に形成されることとなり、弁座34に水溶液が付着することを抑制できる。
【0045】
第2領域23の別の具体例について説明する。図5は、別の一実施形態に係る第2領域23を示す概略構成図である。尚、図5に例示する形態において、図4に例示する形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略している。
【0046】
別の一実施形態では、図5に示すように、バキュームポンプ2は、出口流路部8を形成する中空筒部材22B(22)を備える。この中空筒部材22Bは、ポンプカバー12よりも撥水性が高い材料で構成される点で図4に例示した中空筒部材22Aとは異なるが、それ以外の構成は中空筒部材22Aと同様である。この中空筒部材22Bは、排気通路6のうち出口流路部8とポンプ室3とを連通させる上流側通路部を形成するポンプケーシングよりも撥水性が高い材料で構成される。図4に例示する形態では、中空筒部材22Aは、消音室72を形成するポンプケーシング本体10とボトムカバー16のそれぞれ、及び、消音室74を形成するポンプカバー12とトップカバー14のそれぞれよりも撥水性が高い材料で構成されている。このような中空筒部材22Aは、例えば、快削ステンレス鋼で構成される。
【0047】
図5に例示する構成によれば、中空筒部材22Bはポンプカバー12よりも高い撥水性を有する材料で構成されるので、排気口5から中空筒部材22B内に侵入した水溶液が中空筒部材22Bの内壁面27に付着することを抑制する。また、中空筒部材22B内に侵入した水溶液が中空筒部材22Bの内壁面27に付着したとしても、この付着した水溶液を落下させて排気口5からバキュームポンプ2の外部に排出することができる。尚、図5に例示する構成によれば、中空筒部材22Bの内壁面27に撥水被膜24Aをコーティングする工程が不要となる。
【0048】
第2領域23のさらに別の具体的な構成例について説明する。図6は、さらに別の一実施形態に係る第2領域23を示す概略構成図である。尚、図6に例示する形態において、図4に例示する形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略している。
【0049】
さらに別の一実施形態では、図6に示すように、ポンプカバー12(上側ケーシング)は、出口流路部8を形成する内壁面51を有し、下方に向かって延びる筒形状の筒状部47を含む。筒状部47はポンプカバー12の一部である(圧入部30を設ける必要がない)という点で、図4に例示した中空筒部材22Aとは異なるが、それ以外の構成は中空筒部材22Aと同様である。ポンプケーシング本体10(下側ケーシング)の排気カバー部13は、ポンプカバー12の下方に位置し、筒状部47が嵌合するボア48を有する。
【0050】
この場合、バキュームポンプ2は、ポンプカバー12の母材よりも撥水性が高い材料で形成され、筒状部47の内壁面51を覆うように設けられる撥水被膜24Bを備える。撥水被膜24Bは、ポンプカバー12の母材よりも撥水性が高い材料で形成されるのであれば特に限定されず、例えば上述した撥水被膜24Aと同じ材料で形成されてもよい。
【0051】
図6に例示する構成によれば、筒状部47の内壁面51はポンプカバー12の母材よりも高い撥水性を有する撥水被膜24Bで覆われているので、筒状部47内に侵入した水溶液が撥水被膜24Bで覆われている筒状部47の内壁面51に付着することを抑制する。また、筒状部47内に侵入した水溶液が撥水被膜24Bの表面に付着したとしても、この付着した水溶液を落下させて排気口5からバキュームポンプ2の外部に排出することができる。
【0052】
また、図6に例示する構成によれば、筒状部47がポンプカバー12の一部として構成されることにより、1部品として設計・製造することができ、バキュームポンプ2の部品点数を削減することができる。
【0053】
以上、本開示の一実施形態に係るバキュームポンプについて説明したが、本開示は上記の形態に限定されるものではなく、本開示の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
2 バキュームポンプ
3 ポンプ室
5 排気口
6 排気通路
8 出口流路部
10 ポンプケーシング本体(下側ケーシング)
12 ポンプカバー(上側ケーシング)
20 排気通路の壁面
21 第1領域
22A 中空筒部材
22B 中空筒部材
23 第2領域
24A 撥水被膜
24B 撥水被膜
32 弁体
34 弁座
44 ストッパ
47 筒状部
48 ボア
72 消音室(上流側通路部)
74 消音室(上流側通路部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6