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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047223
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】音声通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20220316BHJP
   H04M 3/56 20060101ALI20220316BHJP
   H04R 3/12 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04M3/56 Z
H04R3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153008
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】宮阪 修二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 一任
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 康展
【テーマコード(参考)】
5D220
5K201
【Fターム(参考)】
5D220AA05
5D220AA12
5D220AB06
5K201BB09
5K201EC06
5K201ED00
5K201EE17
(57)【要約】
【課題】遠隔会議の臨場感を向上させる。
【解決手段】音声通信装置は、N個の音声信号のそれぞれに対して、第1の壁41と第2の壁42とを有する仮想空間における音像定位位置を決定する音像位置決定部12と、音像位置決定部12により決定された音像定位位置に音像が定位するように音像定位処理を行って音像定位音声信号を出力するN個の音像定位部13と、N個の音像定位音声信号を加算して加算音像定位音声信号を出力する加算部14と、を備え、音像定位部13は、音像位置決定部12によって決定された音像定位位置から放出された音波が、受聴者位置に仮想的に存在する受聴者の両耳に直接到達することを模擬した第1の頭部伝達関数と、その音像定位位置から放出された音波が、受聴者の両耳に、第1の壁41と第2の壁42とのうちの近い方の壁で反射して到達することを模擬した第2の頭部伝達関数とを用いて音像定位処理を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号が入力されるN(Nは2以上の整数)個の入力部と、
前記N個の入力部から入力されるN個の音声信号のそれぞれに対して、第1の壁と第2の壁とを有する仮想空間における音像定位位置を決定する音像位置決定部と、
前記N個の入力部のそれぞれに対応するN個の音像定位部であって、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部により当該音像定位部に対応する入力部に対して決定された音像定位位置に音像が定位するように音像定位処理を行って音像定位音声信号を出力する前記N個の音像定位部と、
前記N個の音像定位部から出力されたN個の前記音像定位音声信号を加算して加算音像定位音声信号を出力する加算部と、を備え、
前記音像位置決定部は、前記N個の音声信号の音像定位位置を、前記第1の壁と第2の壁との間であって、前記第1の壁と前記第2の壁との間の受聴者位置から見て互いに重ならない位置となるように決定し、
前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部によって当該音像定位部に対して決定された音像定位位置から放出された音波が、前記受聴者位置に仮想的に存在する受聴者の両耳に直接到達することを模擬した第1の頭部伝達関数と、当該音像定位位置から放出された音波が、前記受聴者の両耳に、前記第1の壁と前記第2の壁とのうちの近い方の壁で反射して到達することを模擬した第2の頭部伝達関数とを用いて前記音像定位処理を行う
音声通信装置。
【請求項2】
前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記第1の壁による音波の反射率と、前記第2の壁による音波の反射率との少なくとも一方を変更自在に、前記音像定位処理を行う
請求項1に記載の音声通信装置。
【請求項3】
前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記第1の壁の位置と、前記第2の壁の位置との少なくとも一方を変更自在に、前記音像定位処理を行う
請求項1又は請求項2に記載の音声通信装置。
【請求項4】
音声信号が入力されるN(Nは2以上の整数)個の入力部と、
前記N個の入力部から入力されるN個の音声信号のそれぞれに対して、仮想空間における音像定位位置を決定する音像位置決定部と、
前記N個の入力部のそれぞれに対応するN個の音像定位部であって、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部により当該音像定位部に対応する入力部に対して決定された音像定位位置に音像が定位するように音像定位処理を行って音像定位音声信号を出力する前記N個の音像定位部と、
前記N個の音像定位部から出力されたN個の前記音像定位音声信号を加算して加算音像定位音声信号を出力する加算部と、を備え、
前記音像位置決定部は、前記N個の音声信号の音像定位位置を、受聴者位置から見て互いに重ならない位置となり、前記受聴者位置に仮想的に存在する受聴者の正面を0度とする場合において、0度を含んで又は挟んで互いに隣接する音像定位位置の間隔の方が、0度を含まずに又は挟まずに互いに隣接する音像定位位置の間隔よりも狭くなるように決定し、
前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部によって当該音像定位部に対して決定された音像定位位置から放出された音波が、前記受聴者位置に仮想的に存在する受聴者の両耳に直接到達することを模擬した頭部伝達関数を用いて前記音像定位処理を行う
音声通信装置。
【請求項5】
音声信号が入力されるN(Nは2以上の整数)個の入力部と、
前記N個の入力部から入力されるN個の音声信号のそれぞれに対して、仮想空間における音像定位位置を決定する音像位置決定部と、
前記N個の入力部のそれぞれに対応するN個の音像定位部であって、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部により当該音像定位部に対応する入力部に対して決定された音像定位位置に音像が定位するように音像定位処理を行って音像定位音声信号を出力する前記N個の音像定位部と、
前記N個の音像定位部から出力されたN個の前記音像定位音声信号を加算して第1の加算音像定位音声信号を出力する第1の加算部と、
前記仮想空間における背景雑音を示す背景雑音信号を記憶する背景雑音信号記憶部と、
前記加算音像定位音声信号と前記背景雑音信号とを加算して第2の加算音像定位音声信号を出力する第2の加算部と、を備え、
前記音像位置決定部は、前記N個の音声信号の音像定位位置を、受聴者位置から見て互いに重ならない位置となるように決定し、
前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部によって当該音像定位部に対して決定された音像定位位置から放出された音波が、前記受聴者位置に仮想的に存在する受聴者の両耳に直接到達することを模擬した頭部伝達関数を用いて前記音像定位処理を行う
音声通信装置。
【請求項6】
前記背景雑音信号記憶部が記憶する前記背景雑音信号は1以上であり、
更に、前記背景雑音信号記憶部が記憶する1以上の前記背景雑音信号の中から1つ以上を選択する選択部を備え、
前記第2の加算部は、前記加算音像定位音声信号と、前記選択部によって選択された前記背景雑音信号とを加算して前記第2の加算音像定位音声信号を出力する
請求項5に記載の音声通信装置。
【請求項7】
前記選択部は、時間の経過に伴い、選択する前記背景雑音信号を変更する
請求項6に記載の音声通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の話者による遠隔会議に利用される音声通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の話者による遠隔会議に利用される音声通信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-237841号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】イェンスブラウェルト・森本政之・後藤敏幸共著「空間音響」鹿島出版会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
音声通信装置を利用して開催される遠隔会議、Web飲み会等において、参加者が得る臨場感を向上させることが望まれる。
【0006】
そこで、本開示は、従来よりも、音声通信装置を利用して開催される遠隔会議、Web飲み会等において、参加者が得る臨場感を向上させることができる音声通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る音声通信装置は、音声信号が入力されるN(Nは2以上の整数)個の入力部と、前記N個の入力部から入力されるN個の音声信号のそれぞれに対して、第1の壁と第2の壁とを有する仮想空間における音像定位位置を決定する音像位置決定部と、前記N個の入力部のそれぞれに対応するN個の音像定位部であって、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部により当該音像定位部に対応する入力部に対して決定された音像定位位置に音像が定位するように音像定位処理を行って音像定位音声信号を出力する前記N個の音像定位部と、前記N個の音像定位部から出力されたN個の前記音像定位音声信号を加算して加算音像定位音声信号を出力する加算部と、を備え、前記音像位置決定部は、前記N個の音声信号の音像定位位置を、前記第1の壁と第2の壁との間であって、前記第1の壁と前記第2の壁との間の受聴者位置から見て互いに重ならない位置となるように決定し、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部によって当該音像定位部に対して決定された音像定位位置から放出された音波が、前記受聴者位置に仮想的に存在する受聴者の両耳に直接到達することを模擬した第1の頭部伝達関数と、当該音像定位位置から放出された音波が、前記受聴者の両耳に、前記第1の壁と前記第2の壁とのうちの近い方の壁で反射して到達することを模擬した第2の頭部伝達関数とを用いて前記音像定位処理を行う。
【0008】
本開示の一態様に係る音声通信装置は、音声信号が入力されるN(Nは2以上の整数)個の入力部と、前記N個の入力部から入力されるN個の音声信号のそれぞれに対して、仮想空間における音像定位位置を決定する音像位置決定部と、前記N個の入力部のそれぞれに対応するN個の音像定位部であって、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部により当該音像定位部に対応する入力部に対して決定された音像定位位置に音像が定位するように音像定位処理を行って音像定位音声信号を出力する前記N個の音像定位部と、前記N個の音像定位部から出力されたN個の前記音像定位音声信号を加算して加算音像定位音声信号を出力する加算部と、を備え、前記音像位置決定部は、前記N個の音声信号の音像定位位置を、受聴者位置から見て互いに重ならない位置となり、前記受聴者位置に仮想的に存在する受聴者の正面を0度とする場合において、0度を含んで又は挟んで互いに隣接する音像定位位置の間隔の方が、0度を含まずに又は挟まずに互いに隣接する音像定位位置の間隔よりも狭くなるように決定し、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部によって当該音像定位部に対して決定された音像定位位置から放出された音波が、前記受聴者位置に仮想的に存在する受聴者の両耳に直接到達することを模擬した頭部伝達関数を用いて前記音像定位処理を行う。
【0009】
本開示の一態様に係る音声通信装置は、音声信号が入力されるN(Nは2以上の整数)個の入力部と、前記N個の入力部から入力されるN個の音声信号のそれぞれに対して、仮想空間における音像定位位置を決定する音像位置決定部と、前記N個の入力部のそれぞれに対応するN個の音像定位部であって、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部により当該音像定位部に対応する入力部に対して決定された音像定位位置に音像が定位するように音像定位処理を行って音像定位音声信号を出力する前記N個の音像定位部と、前記N個の音像定位部から出力されたN個の前記音像定位音声信号を加算して第1の加算音像定位音声信号を出力する第1の加算部と、前記仮想空間における背景雑音を示す背景雑音信号を記憶する背景雑音信号記憶部と、前記加算音像定位音声信号と前記背景雑音信号とを加算して第2の加算音像定位音声信号を出力する第2の加算部と、を備え、前記音像位置決定部は、前記N個の音声信号の音像定位位置を、受聴者位置から見て互いに重ならない位置となるように決定し、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部によって当該音像定位部に対して決定された音像定位位置から放出された音波が、前記受聴者位置に仮想的に存在する受聴者の両耳に直接到達することを模擬した頭部伝達関数を用いて前記音像定位処理を行う。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る音声通信装置によると、音声通信装置を利用して開催される遠隔会議、Web飲み会等において、参加者が得る臨場感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態1に係る遠隔会議システムの構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、実施の形態1に係るサーバ装置の構成の一例を示す模式図である。
図3図3は、実施の形態1に係る音声通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施の形態1に係る音像位置決定部が音像定位位置を決定した様子の一例を示す模式図である。
図5図5は、実施の形態1に係る音像定位部が音像定位処理を行う様子の一例を示す模式図である。
図6図6は、実施の形態2に係る音声通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の一態様を得るに至った経緯)
従来、インターネット網の高速化、大容量化、サーバ装置の高性能化等に伴い、複数地点から同時に参加可能な遠隔会議システムを実現する音声通信装置が実用化されている。このような遠隔会議システムは、近年の新型コロナウイルス感染症の影響により、ビジネス用途だけでなく、いわゆるWeb飲み会等といった広くコンシューマ用途でも利用されるようになっている。
【0013】
音声通信装置を利用して開催される遠隔会議、Web飲み会等の開催が広まるにつれ、これら遠隔会議、Web飲み会等において参加者が得る臨場感を向上させたいという要望が強くなってきている。
【0014】
そこで、発明者らは、音声通信装置を利用して開催される遠隔会議、Web飲み会等において参加者が得る臨場感を向上させるべく、鋭意、実験、検討を行った。その結果、発明者らは、下記音声通信装置に想到した。
【0015】
本開示の一態様に係る音声通信装置は、音声信号が入力されるN(Nは2以上の整数)個の入力部と、前記N個の入力部から入力されるN個の音声信号のそれぞれに対して、第1の壁と第2の壁とを有する仮想空間における音像定位位置を決定する音像位置決定部と、前記N個の入力部のそれぞれに対応するN個の音像定位部であって、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部により当該音像定位部に対応する入力部に対して決定された音像定位位置に音像が定位するように音像定位処理を行って音像定位音声信号を出力する前記N個の音像定位部と、前記N個の音像定位部から出力されたN個の前記音像定位音声信号を加算して加算音像定位音声信号を出力する加算部と、を備え、前記音像位置決定部は、前記N個の音声信号の音像定位位置を、前記第1の壁と第2の壁との間であって、前記第1の壁と前記第2の壁との間の受聴者位置から見て互いに重ならない位置となるように決定し、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部によって当該音像定位部に対して決定された音像定位位置から放出された音波が、前記受聴者位置に仮想的に存在する受聴者の両耳に直接到達することを模擬した第1の頭部伝達関数と、当該音像定位位置から放出された音波が、前記受聴者の両耳に、前記第1の壁と前記第2の壁とのうちの近い方の壁で反射して到達することを模擬した第2の頭部伝達関数とを用いて前記音像定位処理を行う。
【0016】
上記音声通信装置によると、N個の入力部のそれぞれから入力されるN人の話者の声を、あたかも、第1の壁と第2の壁とを有する仮想空間内で発声されたものであるかのごとく演出して提供することができる。また、上記音声通信装置によると、N人の話者の声を聴く受聴者は、仮想空間における話者と壁との位置関係を、比較的容易に把握することができ。このため、この受聴者は、N人の話者の声の到来方向の区別を比較的容易に行うことができる。従って、上記音声通信装置によると、従来よりも、音声通信装置を利用して開催される遠隔会議、Web飲み会等において参加者が得る臨場感を向上させることができる。
【0017】
また、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記第1の壁による音波の反射率と、前記第2の壁による音波の反射率との少なくとも一方を変更自在に、前記音像定位処理を行うとしてもよい。
【0018】
これにより、仮想空間における話者の声の反響度合いを変更自在とすることができる。
【0019】
また、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記第1の壁の位置と、前記第2の壁の位置との少なくとも一方を変更自在に、前記音像定位処理を行うとしてもよい。
【0020】
これにより、仮想空間における壁の位置を変更自在とすることができる。
【0021】
本開示の一態様に係る音声通信装置は、音声信号が入力されるN(Nは2以上の整数)個の入力部と、前記N個の入力部から入力されるN個の音声信号のそれぞれに対して、仮想空間における音像定位位置を決定する音像位置決定部と、前記N個の入力部のそれぞれに対応するN個の音像定位部であって、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部により当該音像定位部に対応する入力部に対して決定された音像定位位置に音像が定位するように音像定位処理を行って音像定位音声信号を出力する前記N個の音像定位部と、前記N個の音像定位部から出力されたN個の前記音像定位音声信号を加算して加算音像定位音声信号を出力する加算部と、を備え、前記音像位置決定部は、前記N個の音声信号の音像定位位置を、受聴者位置から見て互いに重ならない位置となり、前記受聴者位置に仮想的に存在する受聴者の正面を0度とする場合において、0度を含んで又は挟んで互いに隣接する音像定位位置の間隔の方が、0度を含まずに又は挟まずに互いに隣接する音像定位位置の間隔よりも狭くなるように決定し、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部によって当該音像定位部に対して決定された音像定位位置から放出された音波が、前記受聴者位置に仮想的に存在する受聴者の両耳に直接到達することを模擬した頭部伝達関数を用いて前記音像定位処理を行う。
【0022】
一般に、音像定位の弁別限は、受聴者の正面程敏感で、左右に離れる程鈍感になることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。上記音声通信装置によると、受聴者から見て、正面方向の話者間の角度よりも、左右方向の話者間の角度の方が大きくなる。このため、この受聴者は、N人の話者の声の到来方向の区別を比較的容易に行うことができる。従って、上記音声通信装置によると、従来よりも、音声通信装置を利用して開催される遠隔会議、Web飲み会等において参加者が得る臨場感を向上させることができる。
【0023】
本開示の一態様に係る音声通信装置は、音声信号が入力されるN(Nは2以上の整数)個の入力部と、前記N個の入力部から入力されるN個の音声信号のそれぞれに対して、仮想空間における音像定位位置を決定する音像位置決定部と、前記N個の入力部のそれぞれに対応するN個の音像定位部であって、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部により当該音像定位部に対応する入力部に対して決定された音像定位位置に音像が定位するように音像定位処理を行って音像定位音声信号を出力する前記N個の音像定位部と、前記N個の音像定位部から出力されたN個の前記音像定位音声信号を加算して第1の加算音像定位音声信号を出力する第1の加算部と、前記仮想空間における背景雑音を示す背景雑音信号を記憶する背景雑音信号記憶部と、前記加算音像定位音声信号と前記背景雑音信号とを加算して第2の加算音像定位音声信号を出力する第2の加算部と、を備え、前記音像位置決定部は、前記N個の音声信号の音像定位位置を、受聴者位置から見て互いに重ならない位置となるように決定し、前記N個の音像定位部のそれぞれは、前記音像位置決定部によって当該音像定位部に対して決定された音像定位位置から放出された音波が、前記受聴者位置に仮想的に存在する受聴者の両耳に直接到達することを模擬した頭部伝達関数を用いて前記音像定位処理を行う。
【0024】
上記音声通信装置によると、N個の入力部のそれぞれから入力されるN人の話者の声を、あたかも、背景雑音で満たされた仮想空間内で発声されたものであるかのごとく演出して提供することができる。従って、上記音声通信装置によると、従来よりも、音声通信装置を利用して開催される遠隔会議、Web飲み会等において参加者が得る臨場感を向上させることができる。
【0025】
また、前記背景雑音信号記憶部が記憶する前記背景雑音信号は1以上であり、更に、前記背景雑音信号記憶部が記憶する1以上の前記背景雑音信号の中から1つ以上を選択する選択部を備え、前記第2の加算部は、前記加算音像定位音声信号と、前記選択部によって選択された前記背景雑音信号とを加算して前記第2の加算音像定位音声信号を出力するとしてもよい。
【0026】
これにより、演出したい仮想空間の雰囲気に合わせて、背景雑音を選択することができる。
【0027】
また、前記選択部は、時間の経過に伴い、選択する前記背景雑音信号を変更するとしてもよい。
【0028】
これにより、時間の経過とともに、仮想空間の雰囲気の演出を変更することができる。
【0029】
以下、本開示の一態様に係る音声通信装置の具体例について、図面を参照しながら説明する。ここで示す実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序等は、一例であって本開示を限定する趣旨ではない。また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0030】
なお、本開示の包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0031】
(実施の形態1)
以下、互いに異なる場所にいる複数の参加者が会議を行うことができる遠隔会議システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、実施の形態1に係る遠隔会議システム1の構成の一例を示す模式図である。
【0033】
図1に示すように、遠隔会議システム1は、音声通信装置10と、ネットワーク30と、N+1(Nは2以上の整数)個の端末20(図1における端末20A~端末20Fに対応)と、N+1個のマイク21(図1におけるマイク21A~マイク21Fに対応)と、N+1個のスピーカ22(図1におけるスピーカ22A~スピーカ22Fに対応)とを備える。
【0034】
マイク21A~マイク21Fは、それぞれ、端末20A~端末20Fに接続され、端末20A~端末20Fを利用するユーザ23A~ユーザ23Fの声を電気信号である音声信号に変換して端末20A~端末20Fに出力する。
【0035】
マイク21A~マイク21Fが有する機能は同様であってもよい。このため、本明細書では、マイク21A~マイク21Fのことを、互いに区別して表記する必要がない場合には、マイク21とも称する。
【0036】
スピーカ22A~スピーカ22Fは、それぞれ、端末20A~端末20Fに接続され、端末20A~端末20Fから出力される電気信号である音声信号を音声に変換して外部に出力する。
【0037】
スピーカ22A~スピーカ22Fが有する機能は同様であってもよい。このため、本明細書では、スピーカ22A~スピーカ22Fのことを、互いに区別して表記する必要がない場合には、スピーカ22とも称する。スピーカ22は、電気信号を音声に変換する機能を有するものであれば、いわゆるスピーカに限定される必要はなく、例えば、いわゆるイヤホン、ヘッドホン等であっても構わない。
【0038】
端末20A~端末20Fは、それぞれ、マイク21A~マイク21Fと、スピーカ22A~スピーカ22Fと、ネットワーク30とに接続され、接続されるマイク21A~マイク21Fから出力される音声信号を、ネットワーク30に接続される外部装置に送信する機能と、ネットワーク30に接続される外部装置から音声信号を受信して、受信した音声信号をスピーカ22A~スピーカ22Fに出力する機能とを有する。ネットワーク30に接続される外部装置には、音声通信装置10が含まれる。
【0039】
端末20A~端末20Fが有する機能は同様であってよい。このため、本明細書では、端末20A~端末20Fのことを、互いに区別して表記する必要が無い場合には、端末20とも称する。端末20は、例えば、パソコン、スマートフォン等によって実現される。
【0040】
端末20は、例えば、マイク21の機能を有していてもよい。この場合には、図1では、端末20がマイク21に接続されるかのごとく図示されているが、実際には、マイク21は端末20に含まれることとなる。また、端末20は、スピーカ22の機能を有していてもよい。この場合には、図1では、端末20がスピーカ22に接続されるかのごとく図示されているが、実際には、スピーカ22は端末20に含まれることとなる。また端末20は、例えば、更に、ディスプレイ、タッチパッド、キーボード等の入出力装置を備えていてもよい。
【0041】
逆に、マイク21が端末20の機能を有していてもよい。この場合には、図1では、端末20がマイク21に接続されるかのごとく図示されているが、実際には、端末20はマイク21に含まれることとなる。また、スピーカ22が端末20の機能を有していてもよい。この場合には、図1では、端末20がスピーカ22に接続されるかのごとく図示されているが、実際には、端末20はスピーカ22に含まれることとなる。
【0042】
ネットワーク30は、端末20A~端末20Fと、音声通信装置10とを含む複数の装置に接続され、接続される複数の装置間の信号を伝達する。後述するように、音声通信装置10は、サーバ装置100によって実現される。このため、ネットワーク30は、音声通信装置10を実現するサーバ装置100に接続される。
【0043】
音声通信装置10は、ネットワーク30に接続され、サーバ装置100により実現される。
【0044】
図2は、音声通信装置10を実現するサーバ装置100の構成の一例を示す模式図である。
【0045】
図2に示すように、サーバ装置100は、入力装置101と、出力装置102と、CPU(Central Processing Unit)103と、内蔵ストレージ104と、RAM(Random Access Memory)105と、バス106とを備える。
【0046】
入力装置101は、キーボード、マウス、タッチパッド等といったユーザインタフェースとなる装置であり、サーバ装置100を利用するユーザの操作を受け付ける。入力装置101は、ユーザの接触操作を受け付ける他、音声での操作、リモコン等での遠隔操作を受け付ける構成であってもよい。
【0047】
出力装置102は、ディスプレイ、スピーカ、出力端子等といったユーザインタフェースとなる装置であり、サーバ装置100の信号を外部に出力する。
【0048】
内蔵ストレージ104は、フラッシュメモリ等といった記憶装置であり、サーバ装置100が実行するプログラム、サーバ装置100が利用するデータ等を記憶する。
【0049】
RAM105は、SRAM(Static RAM)、DRAM(Dynamic RAM)等といった記憶装置であり、プログラムの実行の際の一時的な記憶領域等に利用される。
【0050】
CPU103は、内蔵ストレージ104に記憶されるプログラムをRAM105にコピーし、コピーしたプログラムに含まれる命令をRAM105から順次読み出して実行する。
【0051】
バス106は、入力装置101と、出力装置102と、CPU103と、内蔵ストレージ104と、RAM105とに接続され、接続される構成要素間の信号を伝達する。
【0052】
図2には図示していないが、サーバ装置100は、通信機能を備える。サーバ装置100は、この通信機能により、ネットワーク30に接続する。
【0053】
音声通信装置10は、例えば、CPU103が、内蔵ストレージ104に記憶されるプログラムをRAM105にコピーし、コピーしたプログラムに含まれる命令をRAM105から順次読み出して実行することで実現される。
【0054】
図3は、音声通信装置10の構成の一例を示すブロック図である。
【0055】
図3に示すように、音声通信装置10は、N個の入力部11(図3における第1の入力部11A~第5の入力部11Eに対応)と、音像位置決定部12と、N個の音像定位部13(図3における第1の音像定位部13A~第5の音像定位部13Eに対応)と、加算部14と、出力部15とを備える。
【0056】
第1の入力部11A~第5の入力部11Eは、それぞれ、第1の音像定位部13A~第5の音像定位部13Eに接続され、端末20のいずれかから出力された音声信号が入力される。ここでは、第1の入力部11Aには、端末20Aから出力された第1の音声信号が入力され、第2の入力部11Bには、端末20Bから出力された第2の音声信号が入力され、第3の入力部11Cには、端末20Cから出力された第3の音声信号が入力され、第4の入力部11Dには、端末20Dから出力された第4の音声信号が入力され、第5の入力部11Eには、端末20Eから出力された第5の音声信号が入力されるとして説明する。また、ここでは、第1の音声信号には、第1の端末20Aのユーザ(ここでは、ユーザ23A)の発した声が変換された電気信号が含まれ、第2の音声信号には、第2の端末20Bのユーザ(ここでは、ユーザ23B)の発した声が変換された電気信号が含まれ、第3の音声信号には、第3の端末20Cのユーザ(ここでは、ユーザ23C)の発した声が変換された電気信号が含まれ、第4の音声信号には、第4の端末20Dのユーザ(ここでは、ユーザ23D)の発した声が変換された電気信号が含まれ、第5の音声信号には、第5の端末20Eを利用するユーザ(ここでは、ユーザ23E)の発した声が変換された電気信号が含まれるとして説明する。
【0057】
第1の入力部11A~第5の入力部11Eが有する機能は同様である。このため、本明細書では、第1の入力部11A~第5の入力部11Eのことを、互いに区別して表記する必要が無い場合には、入力部11とも称する。
【0058】
出力部15は、加算部14に接続され、加算部14から出力される後述の加算音像定位音声信号を、端末20のいずれかに出力する。ここでは、出力部15は、加算音像定位音声信号を、端末20Fに出力するとして説明する。
【0059】
音像位置決定部12は、第1の音像定位部13A~第5の音像定位部13Eに接続され、N個の入力部11から入力されるN個の音声信号(図3における第1の音声信号から第5の音声信号が対応)のそれぞれに対して、第1の壁41(後述の図4参照)と第2の壁42(後述の図4参照)とを有する仮想空間における音像定位位置を決定する。
【0060】
図4は、音像位置決定部12が、N個の音声信号のそれぞれに対して、仮想空間における音像定位位置を決定した様子を示す模式図である。
【0061】
図4に示すように、仮想空間90は、第1の壁41と、第2の壁42と、第1の音像位置51と、第2の音像位置52と、第3の音像位置53と、第4の音像位置54と、第5の音像位置55と、受聴者位置50とを含む。
【0062】
第1の壁41と第2の壁42とは、それぞれ、仮想空間内に存在する、音波を反射する仮想的な壁である。
【0063】
受聴者位置50は、第1の音声信号~第5の音声信号により示される音声を受聴する仮想的な受聴者の位置である。
【0064】
第1の音像位置51は、音像位置決定部12が第1の音声信号に対して決定した音像位置である。第2の音像位置52は、音像位置決定部12が第2の音声信号に対して決定した音像位置である。第3の音像位置53は、音像位置決定部12が第3の音声信号に対して決定した音像位置である。第4の音像位置54は、音像位置決定部12が第4の音声信号に対して決定した音像位置である。第5の音像位置55は、音像位置決定部12が第5の音声信号に対して決定した音像位置である。
【0065】
図4に示すように、音像位置決定部12は、N個の音像信号の音像定位位置(ここでは、第1の音像位置51~第5の音像位置55)を、第1の壁41と第2の壁42との間であって、受聴者位置50から見て互いに重ならない位置となるように決定する。より詳細には、音像位置決定部12は、N個の音像信号の音像定位位置を、受聴者位置50に仮想的に存在する受聴者の正面を0度とする場合において、0度を含んで又は挟んで互いに隣接する音像定位位置の間隔の方が、0度を含まずに又は挟まずに互いに隣接する音像定位位置の間隔よりも狭くなるように決定する。
【0066】
このため、図4に示すように、受聴者位置50から見た、第1の音像位置51と第2の音像位置52との間の角度を角度Xとし、受聴者位置50から見た、第2の音像位置52と第3の音像位置53との間の角度を角度Yとする場合に、X>Yとなる。
【0067】
再び図3に戻って、音声通信装置10の説明を続ける。
【0068】
第1の音像定位部13Aは、第1の入力部11Aと音像位置決定部12と加算部14とに接続され、音像位置決定部12によって決定された第1の音像位置51に音像が定位するように音像定位処理を行って、音像定位音声信号を出力する。第2の音像定位部13Bは、第2の入力部11Bと音像位置決定部12と加算部14とに接続され、音像位置決定部12によって決定された第2の音像位置52に音像が定位するように音像定位処理を行って、音像定位音声信号を出力する。第3の音像定位部13Cは、第3の入力部11Cと音像位置決定部12と加算部14とに接続され、音像位置決定部12によって決定された第3の音像位置53に音像が定位するように音像定位処理を行って、音像定位音声信号を出力する。第4の音像定位部13Dは、第4の入力部11Dと音像位置決定部12と加算部14とに接続され、音像位置決定部12によって決定された第4の音像位置54に音像が定位するように音像定位処理を行って、音像定位音声信号を出力する。第5の音像定位部13Eは、第5の入力部11Eと音像位置決定部12と加算部14とに接続され、音像位置決定部12によって決定された第5の音像位置55に音像が定位するように音像定位処理を行って、音像定位音声信号を出力する。
【0069】
第1の音像定位部13A~第5の音像定位部13Eが有する機能は同様である。このため、本明細書では、第1の音像定位部13A~第5の音像定位部13Eのことを、互いに区別して表記する必要が無い場合には、音像定位部13とも称する。
【0070】
音像定位部13は、より詳細には、音像位置決定部12により決定された音像位置から放出された音波が、受聴者位置50に仮想的に存在する受聴者の両耳に直接到達することを模擬した第1の頭部伝達関数(Head-Related Transfer Function、HRTF)と、音像位置決定部12により決定された音像位置から放出された音波が、受聴者位置50に仮想的に存在する受聴者の両耳に、第1の壁41と第2の壁42とのうちの近い方の壁で反射して到達することを模擬した第2の頭部伝達関数とを用いて、音像定位処理を行う。
【0071】
図5は、音像定位部13が音像定位処理を行う様子を示す模式図である。
【0072】
図5において、話者71は、第1の音像位置51に仮想的に存在する話者であり、話者72は、第2の音像位置52に仮想的に存在する話者であり、話者73は、第3の音像位置53に仮想的に存在する話者であり、話者74は、第4の音像位置54に仮想的に存在する話者であり、話者75は、第5の音像位置55に仮想的に存在する話者である。受聴者60は、受聴者位置50に仮想的に存在する受聴者である。
【0073】
話者71は、例えば、ユーザ23Aのアバターであってよく、話者72は、例えば、ユーザ23Bのアバターであってよく、話者73は、例えば、ユーザ23Cのアバターであってよく、話者74は、例えば、ユーザ23Dのアバターであってよく、話者75は、例えば、ユーザ23Eのアバターであってよく、受聴者60は、例えば、ユーザ23Fのアバターであってよい。
【0074】
また、話者71Aは、第1の壁41を鏡面とする鏡面位置に仮想的に存在する話者71の鏡像であり、話者74Aは、第2の壁42を鏡面とする鏡面位置に仮想的に存在する話者74の鏡像である。
【0075】
図5に示すように、仮想空間90において、例えば、第1の話者71が発した音声は、2本の実線で示される伝達経路を通って直接受聴者60の両耳に到達する。また、第1の話者71が発した音声は、2本の破線で示される伝達経路を通って、第1の壁41に反射して受聴者の両耳に到達する。
【0076】
このため、仮想空間90において、第1の話者71が発した音声に対して2本の実線で示される伝達経路のそれぞれに対応する第1の頭部伝達関数を畳み込んで生成された2つの信号と、2本の破線で示される伝達経路のそれぞれに対応する第2の頭部伝達関数を畳み込んで生成され2つの信号とが加算された信号を、受聴者60が例えばヘッドホンを用いて受聴すれば、受聴者60は、あたかも第1の話者71が第1の音像位置で発した音声であるかのように受聴することとなる。この際、受聴者60は、第1の壁41により反射した音声も受聴することとなるため、受聴者60は、仮想空間90が壁を有する仮想空間であることを感じることとなる。
【0077】
図5に示すように、仮想空間90において、例えば、第4の話者74が発した音声は、2本の実線で示される伝達経路を通って直接受聴者60の両耳に到達する。また、第4の話者74が発した音声は、2本の破線で示される伝達経路を通って、第2の壁42に反射して受聴者の両耳に到達する。
【0078】
このため、仮想空間90において、第4の話者74が発した音声に対して2本の実線で示される伝達経路のそれぞれに対応する第1の頭部伝達関数を畳み込んで生成された2つの信号と、2本の破線で示される伝達経路のそれぞれに対応する第2の頭部伝達関数を畳み込んで生成され2つの信号とが加算された信号を、受聴者60が例えばヘッドホンを用いて受聴すれば、受聴者60は、あたかも第4の話者74が第4の音像位置で発した音声であるかのように受聴することとなる。この際、受聴者60は、第2の壁42により反射した音声も受聴することとなるため、受聴者60は、仮想空間90が壁を有する仮想空間であることを感じることとなる。
【0079】
この際、音像定位部13は、第1の壁41による音波の反射率と、第2の壁42による音波の反射率との少なくとも一方を変更自在に、音像定位処理を行うとしてもよい。反射率を変更することで、仮想空間90における音声の反響度合いを変更することができる。
【0080】
また、この際、音像定位部13は、第1の壁41の位置と、第2の壁42の位置との少なくとも一方を変更自在に、音像定位処理を行うとしてもよい。壁の位置を変更することで、仮想空間90における空間の広がり度合いを変更することができる。
【0081】
なお、当然のことながら、音像位置決定部12は、更に、音像位置決定部12により決定された音像位置から放出された音波が、受聴者60の両耳に、第1の壁41と第2の壁42とのうちの遠い方の壁で反射して到達することを模擬した第3の頭部伝達関数をも用いて音声処理を行うとしてもよい。
【0082】
再び図3に戻って、音声通信装置10の説明を続ける。
【0083】
加算部14は、N個の音像定位部13と出力部15とに接続され、N個の音像定位部13から出力されたN個の音像定位音声信号を加算して、加算音像定位音声信号を出力する。
【0084】
上記音声通信装置10によると、N個(ここでは5個)の入力部11のそれぞれから入力されるN人(ここでは5人)の話者の声を、あたかも第1の壁41と第2の壁42とを有する仮想空間90内で発声されたものであるかのごとく演出して提供することができる。また、上記音声通信装置10によると、N人の話者の声を聴く受聴者60は、仮想空間90における話者と壁との位置関係を、比較的容易に把握することができ。このため、受聴者60は、N人の話者の声の到来方向の区別を比較的容易に行うことができる。従って、上記音声通信装置10によると、従来よりも、音声通信装置を利用して開催される遠隔会議、Web飲み会等において参加者が得る臨場感を向上させることができる。
【0085】
前述したように、一般に、音像定位の弁別限は、受聴者の正面程敏感で、左右に離れる程鈍感になることが知られている。上記音声通信装置10によると、受聴者60から見て、正面方向の話者間の角度よりも、左右方向の話者間の角度の方が大きくなる。このため、受聴者60は、N人の話者の声の到来方向の区別を比較的容易に行うことができる。従って、上記音声通信装置10によると、従来よりも、音声通信装置を利用して開催される遠隔会議、Web飲み会等において参加者が得る臨場感を向上させることができる。
【0086】
(実施の形態2)
以下、実施の形態1に係る音声通信装置10から、その構成の一部が変更されて構成される実施の形態2に係る音声通信装置について説明する。
【0087】
以下では、実施の形態2に係る音声通信装置について、音声通信装置10の構成要素と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、音声通信装置10との相違点を中心に説明する。
【0088】
図6は、実施の形態2に係る音声通信装置10Aの構成の一例を示すブロック図である。
【0089】
図6に示すように、実施の形態2に係る音声通信装置10Aは、音声通信装置10に対して、第2の加算部16と、背景雑音信号記憶部17と、選択部18とが追加され、出力部15が出力部15Aに変更されて構成される。
【0090】
背景雑音信号記憶部17は、選択部18に接続され、仮想空間90における背景雑音を示す1以上の背景雑音信号を記憶する。
【0091】
背景雑音信号が示す背景雑音は、例えば、現実の会議室において予め録音された暗騒音であってよい。また、背景雑音信号が示す背景雑音は、例えば、現実のバー、居酒屋、ライブハウス等において予め録音された喧騒音であってよい。また、背景雑音信号が示す背景雑音は、例えば、現実のジャズ喫茶で流されるジャズ音楽であってよい。また、背景雑音信号が示す背景雑音は、例えば、人工的に合成された信号であってもよいし、例えば、現実の空間で予め録音された複数の喧騒音を合成して生成した人工的な信号であってもよい。
【0092】
選択部18は、背景雑音信号記憶部17と第2の加算部16とに接続され、背景雑音信号記憶部17が記憶する1以上の背景雑音信号の中から1つ以上を選択する。
【0093】
選択部18は、例えば、時間の経過に伴い、選択する背景雑音信号を変更するとしてもよい。
【0094】
第2の加算部16は、加算部14と選択部18と出力部15Aとに接続され、加算部14から出力される加算音像定位音声信号と、選択部18によって選択された背景雑音信号とを加算して、第2の加算音像定位音声信号を出力する。
【0095】
出力部15Aは、第2の加算部16に接続され、第2の加算部16から出力される第2の加算音像定位音声信号を、端末20のいずれかに出力する。ここでは、出力部15Aは、第2の加算音像定位音声信号を、端末20Fに出力するとして説明する。
【0096】
上記音声通信装置10Aによると、N個(ここでは5個)の入力部11のそれぞれから入力されるN人(ここでは5人)の話者の声を、あたかも、背景雑音で満たされた仮想空間90内で発声されたものであるかのごとく演出して提供することができる。これにより、例えば、選択部18が、現実の会議室において予め録音された暗騒音を示す背景雑音信号を選択する場合には、あたかも、仮想空間90を現実の会議室であるかのごとく演出することができる。また、例えば、選択部18が、現実のバー、居酒屋、ライブハウス等において予め録音された喧騒音を示す背景雑音信号を選択する場合には、あたかも、仮想空間90を現実のバー、居酒屋、ライブハウス等であるかのごとく演出することができる。また、例えば、選択部18が、現実のジャズ喫茶で流されるジャズ音楽を示す背景雑音信号を選択する場合には、あたかも、仮想空間90を現実のジャズ喫茶であるかのごとく演出することができる。従って、上記音声通信装置10Aによると、従来よりも、音声通信装置を利用して開催される遠隔会議、Web飲み会等において参加者が得る臨場感を向上させることができる。
【0097】
また、上記音声通信装置10Aによると、演出したい仮想空間90の雰囲気に合わせて、背景雑音を選択することができる。
【0098】
また、上記音声通信装置10Aによると、時間の経過とともに、仮想空間90の雰囲気の演出を変更することができる。
【0099】
(その他の実施の形態)
以上、本開示の音声通信装置について、実施の形態1、実施の形態2に基づいて説明したが、本開示は、これら実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本開示の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本開示の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本開示に含まれる。
【0100】
(1)実施の形態1及び実施の形態2において、音声通信装置10及び音声通信装置10Aは、Nが5である場合の構成例である。しかしながら、本開示に係る音声通信装置は、Nが2以上の整数であれは、必ずしもNが5である場合の構成例に限定される必要はない。
【0101】
(2)実施の形態1において、音声通信装置10は、第1の音声信号~第5の音声信号が、それぞれ、端末20A~端末20Eから入力され、加算音像定位音声信号が端末20Fへ出力されるとして説明した。これに対して、音声通信装置10を、以下の第1の変形音声通信装置~第5の変形音声通信装置のように変形することも可能である。第1の変形音声通信装置は、第1の音声信号~第5の音声信号が、それぞれ、端末20B~端末20Fから入力され、加算音像定位音声信号が、端末20Aへ出力される構成である。第2の変形音声通信装置は、第1の音声信号~第5の音声信号が、それぞれ、端末20C~端末20F、端末20Aから入力され、加算音像定位音声信号が、端末20Bへ出力される構成である。第3の変形音声通信装置は、第1の音声信号~第5の音声信号が、それぞれ、端末20D~端末20F、端末20A~端末20Bから入力され、加算音像定位音声信号が、端末20Cへ出力される構成である。第4の変形音声通信装置は、第1の音声信号~第5の音声信号が、それぞれ、端末20E~端末20F、端末20A~端末20Cから入力され、加算音像定位音声信号が、端末20Dへ出力される構成である。第5の変形音声通信装置は、第1の音声信号~第5の音声信号が、それぞれ、端末20F、端末20A~端末20Dから入力され、加算音像定位音声信号が、端末20Eへ出力される構成である。
【0102】
また、音声通信装置10、第1の変形音声通信装置~第5の変形音声通信装置は、サーバ装置100により、同時に実現されてもよい。例えば、サーバ装置100は、時分割処理により、音声通信装置10、第1の変形音声通信装置~第5の変形音声通信装置を同時に実現してもよいし、並列処理により、音声通信装置10、第1の変形音声通信装置~第5の変形音声通信装置を同時に実現してもよい。
【0103】
さらには、音声通信装置10、第1の変形音声通信装置~第5の変形音声通信装置が同時に実現されることで得られる機能を実現することができる1つの音声通信装置が、サーバ装置100によって実現されるとしてもよい。
【0104】
(3)実施の形態2において、音声通信装置10Aは、第1の音声信号~第5の音声信号が、それぞれ、端末20A~端末20Eから入力され、第2の加算音像定位音声信号が端末20Fへ出力されるとして説明した。これに対して、音声通信装置10Aを、以下の第6の変形音声通信装置~第10の変形音声通信装置のように変形することも可能である。第6の変形音声通信装置は、第1の音声信号~第5の音声信号が、それぞれ、端末20B~端末20Fから入力され、第2の加算音像定位音声信号が、端末20Aへ出力される構成である。第7の変形音声通信装置は、第1の音声信号~第5の音声信号が、それぞれ、端末20C~端末20F、端末20Aから入力され、第2の加算音像定位音声信号が、端末20Bへ出力される構成である。第8の変形音声通信装置は、第1の音声信号~第5の音声信号が、それぞれ、端末20D~端末20F、端末20A~端末20Bから入力され、第2の加算音像定位音声信号が、端末20Cへ出力される構成である。第9の変形音声通信装置は、第1の音声信号~第5の音声信号が、それぞれ、端末20E~端末20F、端末20A~端末20Cから入力され、第2の加算音像定位音声信号が、端末20Dへ出力される構成である。第10の変形音声通信装置は、第1の音声信号~第5の音声信号が、それぞれ、端末20F、端末20A~端末20Dから入力され、第2の加算音像定位音声信号が、端末20Eへ出力される構成である。
【0105】
また、音声通信装置10A、第6の変形音声通信装置~第10の変形音声通信装置は、サーバ装置100により、同時に実現されてもよい。例えば、サーバ装置100は、時分割処理により、音声通信装置10A、第6の変形音声通信装置~第10の変形音声通信装置を同時に実現してもよいし、並列処理により、音声通信装置10A、第6の変形音声通信装置~第10の変形音声通信装置を同時に実現してもよい。この際、音声通信装置10A、第6の変形音声通信装置~第10の変形音声通信装置に含まれる選択部18が、同じ背景雑音信号を選択するとしてもよい。これにより、音声通信装置を利用して開催される遠隔会議、Web飲み会等において参加者が得る臨場感を更に向上させることができる。
【0106】
さらには、音声通信装置10A、第6の変形音声通信装置~第10の変形音声通信装置が同時に実現されることで得られる機能を実現することができる1つの音声通信装置が、サーバ装置100によって実現されるとしてもよい。
【0107】
(4)音声通信装置10及び音声通信装置10Aの構成要素の一部又は全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムである。ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0108】
なお、ここでは、システムLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、LSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0109】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0110】
(5)音声通信装置10及び音声通信装置10Aの各構成要素は、専用のハードウエアで構成されてもよいし、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい
【産業上の利用可能性】
【0111】
本開示は、遠隔会議システム等に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 遠隔会議システム
10、10A 音声通信装置
11 入力部
11A 第1の入力部
11B 第2の入力部
11C 第3の入力部
11D 第4の入力部
11E 第5の入力部
12 音像位置決定部
13 音像定位部
13A 第1の音像定位部
13B 第2の音像定位部
13C 第3の音像定位部
13D 第4の音像定位部
13E 第5の音像定位部
14 加算部
15、15A 出力部
16 第2の加算部
17 背景雑音信号記憶部
18 選択部
20、20A、20B、20C、20D、20E、20F 端末
21、21A、21B、21C、21D、21E、21F マイク
22、22A、22B、22C、22D、22E、22F スピーカ
23A、23B、23C、23D、23E、23F ユーザ
30 ネットワーク
41 第1の壁
42 第2の壁
50 受聴者位置
51 第1の音像位置
52 第2の音像位置
53 第3の音像位置
54 第4の音像位置
55 第5の音像位置
60 受聴者
71、72、73、74、75 話者
71A、74A 話者の鏡像
90 仮想空間
100 サーバ装置
101 入力装置
102 出力装置
103 CPU
104 内蔵ストレージ
105 RAM
106 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6