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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047406
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】タンク用遮断弁
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/22 20060101AFI20220316BHJP
   F16K 31/12 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
B65D90/22 Z
F16K31/12
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153308
(22)【出願日】2020-09-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000221546
【氏名又は名称】東電設計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000134903
【氏名又は名称】株式会社ニシヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】保延 宏行
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山藤 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】錦織 貴光
【テーマコード(参考)】
3E070
3E170
3H056
【Fターム(参考)】
3E070AA03
3E070AB01
3E070BK10
3E070CA17
3E070CB20
3E070CC10
3E070GB16
3E070GB20
3E070VA30
3E170AA03
3E170AB01
3E170BA10
3E170CA10
3E170CB10
3E170CC10
3E170GB15
3E170GB20
3E170VA20
3H056AA01
3H056BB46
3H056CA06
3H056CD02
3H056GG04
(57)【要約】
【課題】水害等によりタンクが水に浸った場合であっても、タンク内の流体が流出することを防止できるタンク用の遮断弁を提供する。
【解決手段】液体を貯留するタンクに設けられた配管の流路を遮断する遮断弁であって、タンクの浸水を薬剤の反応に基づいて検出する水検出部と、水検出部により検出された浸水に基づいて動作し、タンクに貯留された液体が流通する流路を遮断する遮断部と、水検出部を覆うように形成され、上方からの降水に対して薬剤の浸水を防止しつつ、下方から水が流入した際に薬剤を浸水させるフード部と、を備えるタンク用遮断弁である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンクに設けられた配管の流路を遮断する遮断弁であって、
前記タンクの浸水を薬剤の反応に基づいて検出する水検出部と、
前記水検出部により検出された浸水に基づいて動作し、前記タンクに貯留された液体が流通する前記流路を遮断する遮断部と、
前記水検出部を覆うように形成され、上方からの降水に対して前記薬剤の浸水を防止しつつ、下方から水が流入した際に前記薬剤を浸水させるフード部と、を備える、
タンク用遮断弁。
【請求項2】
前記遮断部は、前記水検出部による検出された浸水に基づいて伸長する伸長部と、
前記伸長部の伸長に応じて前記流路を遮断する弁体と、を備える、
請求項1に記載のタンク用遮断弁。
【請求項3】
前記水検出部は、作動圧を有する作動流体を供給し、前記作動流体に基づいて前記伸長部を伸長させる供給部を備える、
請求項2に記載のタンク用遮断弁。
【請求項4】
前記供給部は、前記作動流体である気体が充填された容器を備える、
請求項3に記載のタンク用遮断弁。
【請求項5】
前記水検出部は、前記薬剤の浸水に基づいて移動し、前記容器に開口を生成し、前記作動流体を流出させるニードルが形成されている移動部を備える、
請求項4に記載のタンク用遮断弁。
【請求項6】
前記伸長部は、袋状に形成された膨張体を備え、
前記膨張体は、前記容器から供給された前記作動流体である気体により膨張し、前記弁体を移動させる、
請求項4又は5に記載のタンク用遮断弁。
【請求項7】
前記伸長部は、前記水検出部による検出された浸水に基づいて伸長する弾性部材を備える、
請求項6に記載のタンク用遮断弁。
【請求項8】
前記弁体は、前記流路を塞ぐように開閉させる回転軸により回転自在に設けられ、
前記回転軸には、前記流路を閉じる第1方向に前記弁体を回転させ、前記第1方向と反対の第2方向の回転を防止するワンウェイクラッチが設けられている、
請求項2から7のうちいずれか1項に記載のタンク用遮断弁。
【請求項9】
前記水検出部は、所定以上の水圧が加わると移動して前記薬剤を浸水させるための浸水流路を形成する移動弁体を有する水圧弁を備える、
請求項1から8のうちいずれか1項に記載のタンク用遮断弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水害時にタンク内に貯留された液体の流出を防止するタンク用遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
港などの沿岸地域には、漁船などの船舶に燃料を補給するためのオイルタンク等の液体を貯留するタンクが設けられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このようなタンクは、津波等の水害被害にあう虞がある。従って沿岸地域に設置されたタンクの配管には、水害時に内部に貯留された液体が外部に漏れ出さないように遮断弁等を設けることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-149449号公報
【特許文献2】特開2015-227182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
東日本大震災では、沿岸地域に設置された多くのタンクが津波によって流されたことが確認、報告されている。また、漁港近くの屋外に設けられ、漁船に燃料を補給するための小型のタンクが数多く津波の影響で流されたことが確認されている。満液のタンクが流されると、建物などの構造物に衝突する虞があると共に、内用液が漏洩する虞がある。
【0005】
また、漁船に燃料を補給するための小型のタンクの多くは、津波の波力による衝撃ではなく、水に浸かり浮力が作用したことによって基台から引き抜け、漂流したことが確認、報告されている。さらに、タンクの底部と基台の間に水が浸入したことによってタンクに大きな浮力が作用し、基台からの脱落を誘発したと考えられている。
【0006】
したがって、水害等によりタンクが水に浸った場合であっても、タンクから液体が流出することを防止する手法が強く望まれている。特に、1000kL以下の小規模タンクでは、配管ノズル部に対して緊急遮断弁や遠隔操作弁の設置義務がないため、何らかの遮断方法が求められている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、水害等によりタンクが水に浸った場合であっても、タンク内の流体が流出することを防止できるタンク用の遮断弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明は、液体を貯留するタンクに設けられた配管の流路を遮断する遮断弁であって、前記タンクの浸水を薬剤の反応に基づいて検出する、水検出部と、前記水検出部により検出された浸水に基づいて動作し、前記タンクに貯留された液体が流通する前記流路を遮断する遮断部と、前記水検出部を覆うように形成され、上方からの降水に対して前記薬剤の浸水を防止しつつ、下方から水が流入した際に前記薬剤を浸水させるフード部と、を備える、タンク用遮断弁である。
【0010】
本発明によれば、浸水を検出する水検出部に薬剤を用いることにより、電源を用いることが無く構成を簡素化することができる。本発明によれば、水検出部を覆うフード部が形成されていることにより、降雨時における誤動作を防止しつつ、浸水時に確実にタンクの配管を遮断することができる。
【0011】
また、本発明の前記遮断部は、前記水検出部による検出された浸水に基づいて伸長する伸長部と、前記伸長部の伸長に応じて前記流路を遮断する弁体と、を備えていてもよい。
【0012】
本発明によれば、水検出部が浸水を検出すると伸長部が伸長し、伸長した伸長部により弁体が流路を遮断するという電気的な構成を持たない機械的な構成により、浸水時に確実にタンクの配管を遮断することができる。
【0013】
また、本発明の前記水検出部は、作動圧を有する作動流体を供給し、前記作動流体に基づいて前記伸長部を伸長させる供給部を備えていてもよい。
【0014】
本発明によれば、供給部が作動流体の作動圧により伸長部を伸長させるという電気的な構成を持たない機械的な構成により、浸水時に確実にタンクの配管を遮断することができる。
【0015】
また、本発明の前記供給部は、前記作動流体である気体が充填された容器を備えていてもよい。
【0016】
本発明によれば、容器に充填された気体を動力源とする電気的な構成を持たない機械的な構成により、浸水時に確実にタンクの配管を遮断することができる。
【0017】
また、本発明の前記水検出部は、前記薬剤の浸水に基づいて移動し、前記容器に開口を生成し、前記作動流体を流出させるニードルが形成されている移動部を備えていてもよい。
【0018】
また、本発明の前記伸長部は、袋状に形成された膨張体を備え、前記膨張体は、前記容器から供給された前記作動流体である気体により膨張し、前記弁体を移動させてもよい。
【0019】
本発明によれば、作動流体により膨張する膨張体が弁体を移動させるという電気的な構成を持たない機械的な構成により、浸水時に確実にタンクの配管を遮断することができる。
【0020】
また、本発明の前記伸長部は、前記水検出部による検出された浸水に基づいて伸長する弾性部材を備えていてもよい。
【0021】
本発明によれば、伸長部が弾性部材により伸長するという機械的な構成により、浸水時に確実にタンクの配管を遮断することができる。
【0022】
また、本発明の前記弁体は、前記流路を塞ぐように開閉させる回転軸により回転自在に設けられ、 前記回転軸には、前記流路を閉じる第1方向に前記弁体を回転させ、前記第1方向と反対の第2方向の回転を防止するワンウェイクラッチが設けられていてもよい。
【0023】
本発明によれば、浸水時に弁体が流路を閉じた場合に、ワンウェイクラッチが設けられていることにより、流路において流体の圧力が弁体に作用しても弁体が流路を開放する方向に回転することを防止し、浸水時に確実にタンクの配管を遮断することができる。
【0024】
また、本発明の前記水検出部は、所定以上の水圧が加わると移動して前記薬剤を浸水させるための浸水流路を形成する移動弁体を有する水圧弁が備えられていてもよい。
【0025】
本発明によれば、移動弁体が所定以上の水圧が加わると移動するという機械的な構成により、浸水時に確実にタンクの配管を遮断することができる。本発明によれば、被害が発生しない水深の水没により遮断弁が動作してタンクが使用不可となることを防止しつつ、所定以上の水圧となる浸水時には確実に遮断弁を動作させ、タンクの安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
水害等によりタンクが水に浸った場合であっても、タンク内の流体が流出することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るタンクの構成を示す図である。
図2】遮断弁の構成を示す断面図である。
図3】浸水時の遮断弁の動作を示す断面図である。
図4】変形例1に係る遮断弁の構成及び動作を示す断面図である。
図5】変形例2に係る水圧弁の構成及び動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照にしつつ、本発明の一実施形態に係るタンク用遮断弁について説明する。本実施形態のタンク用遮断弁は、津波や高潮、台風、豪雨、ダムや堤防の決壊、越流など、あらゆる水害に伴って水に浸かり得る地域(沿岸地域など)に設置されたタンクを対象とし、水害時に水に浸った場合であってもタンクに貯留された液体が漏出することを防止する。
【0029】
図1に示されるように、本実施形態のタンク1は、円筒型に形成されたオイルタンクである。タンク1は、例えば、漁船などの船舶用の燃料や、ガソリンや軽油等の危険物や薬品等である液体を貯留する。タンク1は、地面に設けられた基台Dに設置されている。タンク1と基台Dとは、例えば、アンカーボルト及びナット等を用いて固定されている。タンク1と基台Dとの固定手段は、流出防止用にFRP等を用いてタンク1と基台Dとが一体化するように補強されていてもよい。または、タンク1と基台Dとは、固定されていない場合もある。
【0030】
タンク1の下方には、配管2が設けられている。配管2は、タンク1の内部に貯留された燃料等の液体が流通する。配管2は、船舶等に燃料を供給する。配管2の一端は、タンク1に接続され他端は船舶等に燃料を供給するためのノズル等が接続されている。配管2の途中には、例えば、配管2の流路を遮断する手動式の仕切弁3が設けられている。通常時において配管2の流路は仕切弁3により開放されている。仕切弁3の下流側には、タンク1用の遮断弁4が設けられている。遮断弁4(タンク用遮断弁)は、浸水時に配管2の流路を自動的に遮断する。遮断弁4は、万が一にタンク1が流された際に、タンク1及び配管2と一体となって移動してもよい。
【0031】
図2に示されるように、遮断弁4は、浸水を検出する水検出部5と、配管2の流路を遮断する遮断部6と、水検出部5を覆うように形成されたフード部7と、を備える。
【0032】
水検出部5は、タンク1の浸水を水に反応する薬剤5Aに基づいて検出する。薬剤5Aは、例えば、浸水すると溶解する物質により生成されている。薬剤5Aは、通常時に固体であり浸水時に水に溶解するものであればどのような材料を用いて形成されていてもよい。水検出部5は、薬剤5Aを収容する本体部5Hと、本体部5Hに接続された供給部5Yとを備える。
【0033】
供給部5Yは、作動流体である気体が圧縮され高圧で充填された容器を備える。気体は、例えば、二酸化炭素である。供給部5Yは、作動圧を有する作動流体に基づいて後述の伸長部を伸長させる。供給部5Yは、ネジ部5Jが形成されている。ネジ部5Jの先端は、膜が形成されている。膜は、後述のニードル5Nが貫入されることにより破られ、開口される。膜が開口することにより、作動流体が供給部5Yから流出する。
【0034】
供給部5Yは、ネジ部5Jが螺入された接続部5Sを介して本体部5Hに接続されている。接続部5Sには、供給部5Yから流出した作動流体が流通する配管5Pが接続されている。本体部5Hは、例えば、有底の円筒状に形成された容器である。本体部5Hには、外部と貫通する貫通孔5Kが形成されている。貫通孔5Kは、複数個形成されていてもよい。本体部5H内には、薬剤の浸水に基づいて移動し、容器に開口を生成し、作動流体を流出させるニードル5Nが形成された移動部5Iを備える。
【0035】
移動部5Iは、例えば、一面側にニードル5Nが形成されたフランジ5Fを備える。フランジ5Fは、例えば、円板状に形成されている。フランジ5Fの他面側には、シャフト5Tが形成されている。シャフト5Tは、例えば、円形断面の棒状に形成されている。シャフト5Tには、伸縮自在なコイル状のバネ5Bが挿通されている。バネ5Bの一端側は、フランジ5Fの他面側に接触している。バネ5Bの他端側には、ワッシャ5Wが接触している。バネ5Bの他に伸縮自在な他の弾性部材が用いられていてもよい。
【0036】
ワッシャ5Wは、円板状に形成されている。ワッシャ5Wの中心には、貫通孔が形成されている。ワッシャ5Wは、シャフト5Tに挿通されている。ワッシャ5Wの一面側は、バネ5Bを圧縮している。ワッシャ5Wの他面側には、薬剤5Aが固定されている。薬剤5Aは、円柱状に形成されている。薬剤5Aの中心には、貫通孔が形成されている。薬剤5Aは、シャフト5Tに挿通されている。
【0037】
薬剤5Aは、ワッシャ5Wをバネ5Bが圧縮状態となるようにシャフト5Tに固定されている。後述のように本体部5Hの貫通孔5Kから水が侵入すると、薬剤5Aが水に溶解し、ワッシャ5Wがバネ5Bに押圧されてシャフト5Tをスライドしてバネ5Bが伸長する。バネ5Bが伸長すると、ニードル5Nが供給部5Yのネジ部5Jに開口を形成する。本体部5Hは、接続部5Sから分離され、薬剤5Aを交換することができる。供給部5Yも接続部5Sから分離され、交換することができる。水検出部5において、薬剤5Aを用いることにより、遮断弁4は電源を必要とせず、電源喪失による動作停止の虞が無くなると共に、管理コストを低減できる。
【0038】
次に遮断部6について説明する。遮断部6は、水検出部5が取り付けられた第1ハウジング6Gと、第1ハウジング6Gに接続されると共に配管2に接続された第2ハウジング6Jとに設けられている。遮断部6は、水検出部5により検出された浸水に基づいて動作する。遮断部6は、水検出部5による検出された浸水に基づいて伸長する伸長部6Sと、伸長部6Sを収容する本体部6Hと、伸長部6Sの伸長に応じて流路を遮断する弁体6Bと、を備える。
【0039】
伸長部6Sは、袋状に形成された膨張体6Tを備える。膨張体6Tは、通常時において収縮した状態により、本体部6Hに収納されている。膨張体6Tの一端側は、配管5Pに接続されている。上記の本体部6H及び膨張体6Tの構成は一例であり、弁体6Bを閉塞できるのであれば他の構成が用いられてもよい。本体部6H及び膨張体6Tは、第1ハウジング6Gに収容されている。第1ハウジング6Gと第2ハウジング6Jとの間には、金属製の薄膜状に形成されたラプチャーディスクKにより仕切られている。
【0040】
ラプチャーディスクKは、通常時において伸長部6Sを、配管2の流路から隔離している。ラプチャーディスクKは、後述のように、膨張体6Tの膨張時に膨張体6Tに突き破られるように形成されている。ラプチャーディスクKにより、通常時において伸長部6Sが燃料に浸かることを防止し、水検出部5が水を検出した場合、伸長部6Sを確実に作動させることができる。膨張体は、供給部5Yから供給された作動流体である気体により膨張し、弁体6Bを押圧して移動させる。
【0041】
弁体6Bは、配管2の流路2Rにおいて、回転自在に設けられている。弁体6Bは、流路2Rを塞ぐように形成されている。弁体6Bは、流路2Rを塞ぐように開閉させる回転軸6Cにより回転自在に設けられている。回転軸6Cには、流路を閉じる第1方向に弁体を回転させ、第1方向と反対の流路を開放する第2方向の回転を防止するワンウェイクラッチが設けられている。弁体6Bは、通常時において流路2Rを開放する位置に回転軸6Cにより軸支されている。上記の回転軸6Cの位置、弁体6Bの開閉方向、構成は、一例であり流路2Rを閉塞できるのであれば他の構成が用いられてもよい。弁体6Bの動作については後述する。
【0042】
次にフード部7について説明する。フード部7は、例えば、上部が閉塞された円筒状に形成されている。フード部7の内部には、水検出部5が収容されている。フード部7は、上方からの降水に対して水検出部5内に収容された薬剤5Aの浸水を防止しつつ、下方から水が流入した際に薬剤5Aを浸水させる。フード部7は、下方から水が浸水した際に、内部に空気溜りができないように上方に微細な穴(不図示)が形成されていてもよい。この孔は、降水時に水検出部5に水が直接当たらない位置に形成される。フード部7の下端には、漂流物の侵入を防止しつつ水を通過させるメッシュ(不図示)が設けられていてもよい。
【0043】
次に、遮断弁4の動作について説明する。
【0044】
図3に示されるように、遮断弁4が浸水すると、フード部7の下方から水が流入し、フード部7の内部に水が充満する。フード部7の内部に水が充満すると、水検出部5の本体部5Hに形成された貫通孔5Kから水が内部に侵入する。本体部5Hの内部に水が浸水すると、薬剤5Aが水と反応して溶解する。薬剤5Aが溶解すると、薬剤5Aに固定されていたワッシャ5Wがバネ5Bに押圧されてシャフト5Tをスライドして移動する。バネ5Bは、ワッシャ5Wの移動に応じて伸長する。バネ5Bの伸長に伴って、フランジ5Fが上方に移動する。
【0045】
フランジ5Fの上昇により、フランジ5Fに形成されたニードル5Nが供給部5Yの接続部5Sの膜に開口を形成する。供給部5Yに形成された開口からは、作動流体が流出する。作動流体は、配管5Pを通じて遮断部6に流入する。作動流体は、配管5Pに接続された膨張体6T内に流入し、膨張体6Tを伸長方向に膨張させる。
【0046】
膨張体6Tは、伸長時にラプチャーディスクKを突き破る。膨張体6Tは、伸長するに従って弁体6Bを押圧し、弁体6Bを回転軸6C周りに回転させる。膨張体6Tが伸長すると、弁体6Bは、流路2Rを塞ぎ、流路2Rにおいて流体の流出を遮断する。回転軸6Cには、ワンウェイクラッチが設けられているため、流路2Rにおける流体の圧力により、弁体6Bが開くことが防止される。
【0047】
浸水が終了した後、手動式の仕切弁3(図1参照)を閉じてタンク1から燃料が流出することが防止される。遮断弁4は、配管2から取り外されて、新品に交換される。遮断弁4は、交換部品を交換して再利用されてもよい。
【0048】
遮断弁4を再利用する場合、第1ハウジング6Gは、第2ハウジング6Jから取り外される。タンク1と一緒に移動する第2ハウジング6Jにおいて、流路2Rを開放するように弁体6Bが元の位置にセットされる。第1ハウジング6Gにおいて、伸長部6Sにおいて、本体部6H内に膨張体6Tを畳んで収容する。ラプチャーディスクKを交換後、第1ハウジング6Gを第2ハウジング6Jに取り付ける。
【0049】
水検出部5において、接続部5Sから本体部5Hが取り外される。本体部5Hからは、移動部5Iが取り出される。移動部5Iにおいて、バネ5Bを短縮させ、ワッシャ5Wをシャフト5Tに通し、バネ5Bが短縮した状態において新たな薬剤5Aをシャフト5Tに固定する。薬剤5Aがセットされた移動部5Iは、本体部5Hに戻され、本体部5Hが接続部5Sに取り付けられる。
【0050】
水検出部5において、使用済みの供給部5Yが接続部5Sから取り外される。新品の供給部5Yを接続部5Sに接続すると、遮断弁4のオーバーホールが完了する。遮断弁4は、配管2に再び取り付けられる。遮断弁4が配管2にセットされた後、仕切弁3を開放し、燃料を配管2に流通させる。
【0051】
上述したように、遮断弁4によれば、水害等によりタンク1が水に浸った場合であっても、タンク1内の流体が流出することを防止できる。遮断弁4によれば、浸水時にタンク1に設けられた配管2の流路を自動的に遮断できる。遮断弁4によれば、電気的な機構を持たずに薬剤5Aを使用して遮断をコントロールしているため、電源の喪失による機能の停止の虞が無く、浸水時に確実に動作させることができる。遮断弁4によれば、薬剤5Aを使用しているため、メンテナンスコストを低減することができる。
【0052】
以下、遮断弁4の変形例について説明する。以下の説明では、上記実施形態における同様の機能を有する構成については、同一の名称及び符号を用い、重複する説明は適宜省略する。
【0053】
[変形例1]
図4に示されるように、変形例1の遮断弁4Aは、水検出部5と、遮断部6と、フード部7とを備える。水検出部5において、移動部5Iは、弁体6Bに直接取り付けられている。弁体6Bは、移動部5Iに連結された棒状のシャフト6Xと、シャフト6Xに連結された円板部6Yとを備える。薬剤5Aが浸水して溶解すると(図4(B)参照)、バネ5Bが伸長し、弁体6Bがハウジング6Qに形成された流路6Rを閉塞して遮断する。弁体6Bは、通常時に上記のラプチャーディスクにより流路6Rから隔離されていてもよい。
【0054】
[変形例2]
遮断弁4の水検出部5において本体部5Hの貫通孔5K(図2参照)には、所定以上の水圧が加わると薬剤5Aを浸水させるための浸水流路を形成する水圧弁が設けられていてもよい。
【0055】
図5に示されるように、水圧弁9は、本体部5Hの貫通孔5Kを覆うように形成された筐体9Hと、筐体9H内に移動自在に収容された移動弁体9Bとを備える。筐体9Hは、円筒状に形成されている。筐体9Hの一端側は、開口しており貫通孔5Kに接続されている。筐体9Hの他端側は、円板状の蓋部9H1により閉塞している。蓋部9H1の中央部には、開口9Kが形成されている。
【0056】
移動弁体9Bは、筐体9Hの内径よりも小さい内径の円柱状に形成されている。移動弁体9Bの周囲と筐体9Hの内壁との間には、パッキン9Pが設けられている。移動弁体9Bの一端側は、貫通孔5K側に配置されている、移動弁体9Bの一端側には、筐体9Hの内径よりやや小さい外径に形成されたフランジ部9Fが形成されている。フランジ部9Fには、水が流通するための切欠き部9Rが形成されている。
【0057】
フランジ部9Fと本体部5Hとの間には、移動弁体9Bを蓋部9H1側に付勢するバネ9Sが配置されている。移動弁体9Bの他端側は、バネ9Sの付勢力により蓋部9H1の内側を押圧し、開口9Kを閉塞している。バネ9Sは、開口9Kに所定以上の水圧が作用した際に短縮するように付勢力が調整されている。
【0058】
図5(B)に示されるように、開口9Kに所定以上の水圧が加わると、移動弁体9Bの他端側が水に押圧され、バネ9Sが短縮し、移動弁体9Bが本体部5H側に移動する。そうすると、開口9K、移動弁体9Bの側面、切欠き部9R,貫通孔5Kに通じる浸水流路Hが形成される。水は、浸水流路を通じて本体部5H内部に侵入し、薬剤5Aを反応させる。水圧弁9によれば、電気的な構成を持たない機械的な構成により、浸水時に確実にタンク1の配管2を遮断することができる。水圧弁9によれば、被害が発生しない水深の水没により遮断弁4が動作してタンク1が使用不可となることを防止しつつ、所定以上の水圧となる浸水時には確実に遮断弁4を動作させ、タンク1の安全性を向上させることができる。
【0059】
以上、本発明に係るタンクの防水及び保持構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、供給部5Yの作動流体は、液体でもよい。供給部5Yは、発泡ウレタン等の膨張する薬液を供給して伸長部6Sを伸長させてもよい。供給部5Yは、発泡ウレタン等の膨張する薬液を供給して配管2の流路2Rを閉塞させて遮断するものであってもよい。伸長部6Sは、水検出部5による検出された浸水に基づいて伸長する弾性部材により形成されていてもよい。水検出部5の経時的な汚れにより不具合が生じることを防止するためにフード部7の下方の開口には、浸水時に溶解する膜等が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 タンク、2 配管、2R 流路、3 仕切弁、4 遮断弁、4A 遮断弁、5 水検出部、5A 薬剤、5B バネ、5F フランジ、5H 本体部、5I 移動部、5J ネジ部、5K 貫通孔、5N ニードル、5P 配管、5S 接続部、5T シャフト、5W ワッシャ、5Y 供給部、6 遮断部、6B 弁体、6C 回転軸、6G 第1ハウジング、6H 本体部、6J 第2ハウジング、6Q ハウジング、6R 流路、6S 伸長部、6T 膨張体、6X シャフト、6Y 円板部、7 フード部、9 水圧弁、9B 移動弁体、9F フランジ部、9H 筐体、9H1 蓋部、9K 開口、9P パッキン、9R 切欠き部、9S バネ、D 基台、H 浸水流路、K ラプチャーディスク
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2020-12-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンクに設けられた配管の流路を遮断する遮断弁であって、
前記タンクの浸水を薬剤の反応に基づいて検出する水検出部と、
前記水検出部により検出された浸水に基づいて動作し、前記タンクに貯留された液体が流通する前記流路を遮断する遮断部と、
前記水検出部を覆うように形成され、上方からの降水に対して前記薬剤の浸水を防止しつつ、下方から水が流入した際に前記薬剤を浸水させるフード部と、を備える、
タンク用遮断弁。
【請求項2】
前記遮断部は、前記水検出部による検出された浸水に基づいて伸長する伸長部と、
前記伸長部の伸長に応じて前記流路を遮断する弁体と、を備える、
請求項1に記載のタンク用遮断弁。
【請求項3】
前記水検出部は、作動圧を有する作動流体を供給し、前記作動流体に基づいて前記伸長部を伸長させる供給部を備える、
請求項2に記載のタンク用遮断弁。
【請求項4】
前記供給部は、前記作動流体である気体が充填された容器を備える、
請求項3に記載のタンク用遮断弁。
【請求項5】
前記水検出部は、前記薬剤の浸水に基づいて移動し、前記容器に開口を生成し、前記作動流体を流出させるニードルが形成されている移動部を備える、
請求項4に記載のタンク用遮断弁。
【請求項6】
前記伸長部は、袋状に形成された膨張体を備え、
前記膨張体は、前記容器から供給された前記作動流体である気体により膨張し、前記弁体を移動させる、
請求項4又は5に記載のタンク用遮断弁。
【請求項7】
前記伸長部は、前記水検出部による検出された浸水に基づいて伸長する弾性部材を備える、
請求項に記載のタンク用遮断弁。
【請求項8】
前記弁体は、前記流路を塞ぐように開閉させる回転軸により回転自在に設けられ、
前記回転軸には、前記流路を閉じる第1方向に前記弁体を回転させ、前記第1方向と反対の第2方向の回転を防止するワンウェイクラッチが設けられている、
請求項2から7のうちいずれか1項に記載のタンク用遮断弁。
【請求項9】
前記水検出部は、所定以上の水圧が加わると移動して前記薬剤を浸水させるための浸水流路を形成する移動弁体を有する水圧弁を備える、
請求項1から8のうちいずれか1項に記載のタンク用遮断弁。