(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047419
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】触覚フィードバックシステム及びアクチュエータの動作調整方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20220316BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220316BHJP
B06B 1/02 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/041 480
B06B1/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153326
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】391021684
【氏名又は名称】菱洋エレクトロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松野 公和
(72)【発明者】
【氏名】村田 淳
(72)【発明者】
【氏名】平原 誠
【テーマコード(参考)】
5D107
5E555
【Fターム(参考)】
5D107AA10
5D107BB08
5D107CD08
5E555AA08
5E555BA04
5E555BB04
5E555BC01
5E555CA12
5E555CB12
5E555CC01
5E555DA24
5E555DD08
5E555EA14
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】環境の変化に関わらず、安定した触覚効果をもたらす触覚フィードバックシステム、及びアクチュエータの動作を調整する方法を提供すること。
【解決手段】電子機器に衝撃を付与するための触覚フィードバックシステムであって、衝撃を発生するように構成されたアクチュエータと、前記アクチュエータに駆動電圧を印加して、前記アクチュエータを駆動する駆動回路と、前記衝撃に関連する運動力学特性を検出する検出部と、前記駆動回路に対し、前記アクチュエータを駆動する第1パルス電圧を発生するための第1制御信号を送信し、前記第1パルス電圧により発生する前記衝撃に関連する前記運動力学特性に基づいて、前記駆動回路に対し、前記アクチュエータを駆動する第2パルス電圧を発生するための第2制御信号を送信して、前記衝撃に関連する前記運動力学特性を制御するように構成されたコントローラとを備える触覚フィードバックシステム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に衝撃を付与するための触覚フィードバックシステムであって、
衝撃を発生するように構成されたアクチュエータと、
前記アクチュエータに駆動電圧を印加して、前記アクチュエータを駆動する駆動回路と、
前記衝撃に関連する運動力学特性を検出する検出部と、
前記駆動回路に対し、前記アクチュエータを駆動する第1パルス電圧を発生するための第1制御信号を送信し、前記第1パルス電圧により発生する前記衝撃に関連する前記運動力学特性に基づいて、前記駆動回路に対し、前記アクチュエータを駆動する第2パルス電圧を発生するための第2制御信号を送信して、前記衝撃に関連する前記運動力学特性を制御するように構成されたコントローラと
を備える触覚フィードバックシステム。
【請求項2】
前記制御により、前記衝撃に関連する前記運動力学特性が所定の範囲内又は目標値になる、請求項1に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項3】
前記アクチュエータは、衝撃的な動きが可能な動作部品を含み、前記衝撃に関連する前記運動力学特性は、前記動作部品のピーク加速度値である、請求項1又は2に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項4】
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値と、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値との時間差が27ms以下である、請求項3に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項5】
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値が、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値より小さい、請求項3又は4に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項6】
前記アクチュエータは、衝撃的な動きが可能な動作部品を含み、前記衝撃に関連する前記運動力学特性は、前記動作部品の最大変位値である、請求項1又は2に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項7】
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値と、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値との時間差が27ms以下である、請求項6に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項8】
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値が、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値より小さい、請求項6又は7に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項9】
前記第1パルス電圧及び前記第2パルス電圧による前記アクチュエータの駆動が併せて1回の触覚フィードバックを構成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項10】
電子機器に衝撃を付与するように構成されたアクチュエータの動作を調整する方法であって、
前記アクチュエータを駆動する第1パルス電圧を発生するステップと、
前記第1パルス電圧により駆動された前記アクチュエータの前記衝撃に関連する運動力学特性に基づいて、前記アクチュエータを駆動する第2パルス電圧を発生し、前記衝撃に関連する前記運動力学特性を制御するステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記制御により、前記衝撃に関連する前記運動力学特性が所定の範囲内又は目標値になる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アクチュエータは、衝撃的な動きが可能な動作部品を含み、前記衝撃に関連する前記運動力学特性は、前記動作部品のピーク加速度値である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値と、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値との時間差が27ms以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値が、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値より小さい、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記アクチュエータは、衝撃的な動きが可能な動作部品を含み、前記衝撃に関連する前記運動力学特性は、前記動作部品の最大変位値である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値と、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値との時間差が27ms以下である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値が、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値より小さい、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1パルス電圧及び前記第2パルス電圧による前記アクチュエータの駆動が併せて1回の触覚フィードバックを構成する、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に衝撃を付与するための触覚フィードバックシステム、及びアクチュエータの動作を調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タブレット端末、スマートフォン、携帯電話及びコンピュータのような、使用時にユーザが筐体やタッチスクリーンに触れる電子機器は、人体に触覚フィードバック(ハプティク・フィードバック)を付与するアクチュエータ(ハプティク・アクチュエータ)を搭載することがある。ユーザの身体の部位(例えば、手指)若しくはユーザが操作する物体が電子機器の入力部に触れたとき、あるいはシステムが特定のイベントを生成したとき、ハプティク・アクチュエータは、電子機器の筐体やタッチスクリーンなどの構成部品に運動を発生させる。ユーザは、電子機器に接触した身体の部位で振動を知覚したり、音として知覚したりすることで、直感的かつ容易に電子機器を操作し、又は情報を受け取ることができる。
【0003】
ハプティク・アクチュエータは、一般的に駆動源に電力を使用しており、運動の性質から衝撃駆動型と振動駆動型に大別することができる。衝撃駆動型は代表例として、形状記憶合金を利用するSIA(Shape Memory metal Impact Actuator)やピエゾ素子を利用した圧電アクチュエータを挙げることができる。衝撃駆動型アクチュエータは、衝撃的な動きが可能な動作部品を含み、電子機器のタッチスクリーンや筐体に対し、動作部品が打撃し、又は連動させることで一過性の衝撃を与える。振動駆動型アクチュエータは代表例として偏心モータを利用するERM(Eccentric Rotating Mass)型アクチュエータ、磁界中のコイルに交流電流を流して可動子を振動させるリニア共振型アクチュエータ(LRA:Linear Resonant Actuator)などを挙げることができる。振動駆動型は振動体に必要な時間だけ一定の振幅の振動を与える。
【0004】
特許文献1(再表2012/023605号)には、ワイヤー状形態を有する形状記憶合金の長さ方向の伸縮変化を利用して水平方向(または平面方向)または上下方向(前後方向または厚み方向)の衝撃的な動き(衝撃動作)、および当該衝撃動作の繰り返しに基づく回転動作または直進動作を可能にする衝撃駆動型アクチュエータが開示されている。当該衝撃駆動型アクチュエータによれば、所定の配線状態で配置されるワイヤー状形状記憶合金に対して各種形状の絶縁性熱伝導体を可能な限り有効に接触させるように設け、この絶縁性熱伝導体によってワイヤー状形状記憶合金でパルス的通電時に生じた熱を迅速に放散させて逃がすようにしたため、ワイヤー状形状記憶合金の低温化を迅速に行うことができ、比較的に短い時間で繰り返すことが可能な瞬間的動作を実現することができ、実用性の高い衝撃駆動型アクチュエータを実現することができる。
【0005】
特許文献2(特開2010-287231号公報)には、多タッチ触感タッチパネルのためのアクチュエータ制御の方法、システム及び装置が開示されている。システムの減衰特性のみならず所望の特定タイプの触覚効果にも依存して、制御器は、主パルスが追従するブレーキパルスかつまたはキックインパルス(kick-in pulse)を発生し加速度応答を増加させ、かつ又はブレーキパルスを発生して短い機械的タイプの触覚効果に対する減衰効果を提供することができる。これにより、従来のアクチュエータに関連する触感遅延効果の問題を解決することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再表2012/023605号
【特許文献2】特開2010-287231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アクチュエータ等の部品を含む触覚フィードバックシステムが搭載された電子機器は、固定された環境条件で使用されることが少なく、屋外や屋内などの場所的変動、季節などの時間変動によって、温度や湿度などの環境条件が変動する場合がある。温度や湿度などの変動により、アクチュエータ自体、あるいは電子機器の筐体やタッチスクリーンなどの構成部品の硬さや体積は多少変化することがある。
【0008】
上記のような変化は通常、電子機器の使用に困難をきたすほどのものではないが、アクチュエータに同じ駆動電圧を印加しても、衝撃がもたらす触覚効果が一定でないという問題がある。例えば、アクチュエータの動作部品からタッチスクリーンに衝撃を与えてクリックのような触覚効果をフィードバックする場合、動作部品の運動力学特性(例えば、加速度又は変位)が上記環境変動により一定ではなく、クリック感覚が比較的「鋭い」と感じられるときと、比較的「鈍い」と感じられる時がある。このようなクリック感覚の変動は、電子機器の機能に支障をきたさないにせよ、ユーザの使用体験を向上させる観点では好ましくない。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みて完成されたものであり、環境の変化に関わらず、安定した触覚効果をもたらす触覚フィードバックシステム、及びアクチュエータの動作を調整する方法を提供することが課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討した結果、アクチュエータに対して、衝撃に関する運動力学特性を検出するための第1パルス電圧と、検出された運動力学特性に基づいて、当該運動力学特性を所定範囲(あるいは、所定値)に制御するための第2パルス電圧を、別々に印加することにより、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、環境条件の変動により規定値や理論値から離れた運動力学特性を第1パルス電圧の印加により検出し、当該検出結果に基づいて、所定の運動力学特性を達成するために必要なパルス電圧を計算して、それを第2パルス電圧として発生する、というものである。
【0011】
したがって、本発明は以下のように特定される。
(1)
電子機器に衝撃を付与するための触覚フィードバックシステムであって、
衝撃を発生するように構成されたアクチュエータと、
前記アクチュエータに駆動電圧を印加して、前記アクチュエータを駆動する駆動回路と、
前記衝撃に関連する運動力学特性を検出する検出部と、
前記駆動回路に対し、前記アクチュエータを駆動する第1パルス電圧を発生するための第1制御信号を送信し、前記第1パルス電圧により発生する前記衝撃に関連する前記運動力学特性に基づいて、前記駆動回路に対し、前記アクチュエータを駆動する第2パルス電圧を発生するための第2制御信号を送信して、前記衝撃に関連する前記運動力学特性を制御するように構成されたコントローラと
を備える触覚フィードバックシステム。
(2)
前記制御により、前記衝撃に関連する前記運動力学特性が所定の範囲内又は目標値になる、(1)に記載の触覚フィードバックシステム。
(3)
前記アクチュエータは、衝撃的な動きが可能な動作部品を含み、前記衝撃に関連する前記運動力学特性は、前記動作部品のピーク加速度値である、(1)又は(2)に記載の触覚フィードバックシステム。
(4)
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値と、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値との時間差が27ms以下である、(3)に記載の触覚フィードバックシステム。
(5)
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値が、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値より小さい、(3)又は(4)に記載の触覚フィードバックシステム。
(6)
前記アクチュエータは、衝撃的な動きが可能な動作部品を含み、前記衝撃に関連する前記運動力学特性は、前記動作部品の最大変位値である、(1)又は(2)に記載の触覚フィードバックシステム。
(7)
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値と、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値との時間差が27ms以下である、(6)に記載の触覚フィードバックシステム。
(8)
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値が、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値より小さい、(6)又は(7)に記載の触覚フィードバックシステム。
(9)
前記第1パルス電圧及び前記第2パルス電圧による前記アクチュエータの駆動が併せて1回の触覚フィードバックを構成する、(1)~(8)のいずれか一項に記載の触覚フィードバックシステム。
(10)
電子機器に衝撃を付与するように構成されたアクチュエータの動作を調整する方法であって、
前記アクチュエータを駆動する第1パルス電圧を発生するステップと、
前記第1パルス電圧により駆動された前記アクチュエータの前記衝撃に関連する運動力学特性に基づいて、前記アクチュエータを駆動する第2パルス電圧を発生し、前記衝撃に関連する前記運動力学特性を制御するステップと
を含む方法。
(11)
前記制御により、前記衝撃に関連する前記運動力学特性が所定の範囲内又は目標値になる、(10)に記載の方法。
(12)
前記アクチュエータは、衝撃的な動きが可能な動作部品を含み、前記衝撃に関連する前記運動力学特性は、前記動作部品のピーク加速度値である、(10)又は(11)に記載の方法。
(13)
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値と、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値との時間差が27ms以下である、(12)に記載の方法。
(14)
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値が、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値より小さい、(12)又は(13)に記載の方法。
(15)
前記アクチュエータは、衝撃的な動きが可能な動作部品を含み、前記衝撃に関連する前記運動力学特性は、前記動作部品の最大変位値である、(10)又は(11)に記載の方法。
(16)
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値と、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値との時間差が27ms以下である、(15)に記載の方法。
(17)
前記第1パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値が、前記第2パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値より小さい、(15)又は(16)に記載の方法。
(18)
前記第1パルス電圧及び前記第2パルス電圧による前記アクチュエータの駆動が併せて1回の触覚フィードバックを構成する、(10)~(17)のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、環境の変化に関わらず、安定した触覚効果をもたらす触覚フィードバックシステム、及びアクチュエータの動作を調整する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る触覚フィードバックシステムの構成概略図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る触覚フィードバックシステムを用いてアクチュエータの動作を調整する方法の流れ図である。
【
図3】アクチュエータの動作部品の加速度又は変位(縦軸)を制御すべき対象とした場合、本発明に係る触覚フィードバックシステムを用いた調整方法によって、加速度又は変位の時間変動(横軸)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0015】
(1.アクチュエータ)
本発明は、さまざまは触覚フィードバック効果を生成する、任意のアクチュエータを備えることができる。衝撃駆動型のアクチュエータや、振動駆動型のアクチュエータのいずれも、本発明のために用いることができるが、動作が比較的単純で運動力学特性を特定しやすい衝撃駆動型アクチュエータが好ましい。後述の触覚フィードバックシステムは、衝撃駆動型アクチュエータを例として説明するが、振動駆動型アクチュエータにも適用できることは言うまでもない。
【0016】
例えば、本発明の一実施形態におけるアクチュエータはコイル、動作部品(例えば金属芯材)及びバネから作られている。コイルは金属の周りに巻きつけられ、(ここで、コイルと金属の部品の両者は「ソレノイド」と称してよい)かつ、コイルが磁界を生成するとき(例えば、電流がコイル端子間を流れる時)金属は移動する。当該金属の移動は電子機器に衝撃をもたらし得る。バネは次いで、電流がコイルから除去されるとき移動金属または他の芯材を静止位置に戻すように用いてよい。
【0017】
あるいは、別の実施形態における衝撃駆動型アクチュエータは、通電加熱で収縮するワイヤー状形状記憶合金と、このワイヤー状形状記憶合金に接触し当該ワイヤー状形状記憶合金で生じた熱を逃がす絶縁性熱伝導体(動作部品)と、を備えるように構成される。駆動回路により、当該ワイヤー状形状記憶合金に対して瞬間的に通電を行い、ワイヤー状形状記憶合金を瞬間的に収縮させると、それに接触する絶縁性熱伝導体が瞬間的に押圧されて変位する。当該絶縁性熱伝導体の変位は電子機器に衝撃をもたらし得る。そして、絶縁性熱伝導体による熱伝導作用によってワイヤー状形状記憶合金で生じた熱が急速に放熱され、その結果、ワイヤー状形状記憶合金は直ぐに元の長さ状態(伸長状態)に戻る。こうして、ワイヤー状形状記憶合金において、相対的に短い時間間隔での瞬間的な収縮を行うことが可能となる。このようなアクチュエータの詳細は再表2012/023605号に開示されている。
【0018】
あるいは、別の実施形態における衝撃駆動型アクチュエータは、通電加熱で収縮するワイヤー状形状記憶合金と、このワイヤー状形状記憶合金に接触し当該ワイヤー状形状記憶合金で生じた熱を逃がす絶縁性熱伝導体の固定子(固定部品)及び移動子(動作部品)と、を備えるように構成される。駆動回路により、当該ワイヤー状形状記憶合金に対して瞬間的に通電を行い、ワイヤー状形状記憶合金を瞬間的に収縮させると、それに接触する絶縁性熱伝導体の移動子が瞬間的に押圧されて変位する。当該絶縁性熱伝導体の移動子の変位は電子機器に衝撃をもたらし得る。そして、絶縁性熱伝導体による熱伝導作用によってワイヤー状形状記憶合金で生じた熱が急速に放熱され、その結果、ワイヤー状形状記憶合金は直ぐに元の長さ状態(伸長状態)に戻る。こうして、ワイヤー状形状記憶合金において、相対的に短い時間間隔での瞬間的な収縮を行うことが可能となる。
【0019】
固定子の位置を変更させないように、電子機器の部品に、例えば両面テープや接着剤などで固定し、移動子に電子機器の動作する部品(筐体やタッチスクリーンなど)を密着させ、衝撃駆動型アクチュエータを挟み込み、それらを元に戻すスプリングなどの弾性を持った部品で動作する部品を抑え込むことで電子機器に衝撃をもたらすことが可能となる。固定子と移動子の形状は、上記機能を実現できれば特に限定されず、円盤状、波状、柱状など、適宜選択することができる。
【0020】
(2.駆動回路)
駆動回路は、アクチュエータに駆動電圧を印加して、前記アクチュエータを駆動することが可能であれば、その構造は特に限定されない。典型的には、駆動回路には、DC/DCコンバータ、電池などの電源、充電抵抗、放電用コンデンサ、FETなどのスイッチ素子、センサなどの検出器、マイコンなどの演算器、駆動パルスのコントローラなどが含まれる。
【0021】
(3.検出部)
検出部は、アクチュエータによって出力される衝撃に関連する運動力学特性、例えば変位、速度、加速度、又は衝撃の感受性に関連する何らかの運動力学特性を測定又は検知できるように構成され得る。一例では、検出部は、アクチュエータの動作部品によって出力される変位を感知するように構成された位置センサ(例えば、ポテンショメータ)であり得る。一例では、検出部は、アクチュエータの動作部品によって出力される加速度を感知するように構成された加速度センサ(加速度計とも呼ばれる)であり得る。例えば、検出部は、バネ質量ベースの加速度センサ、圧電ベースの加速度センサ、微細加工された微小電気機械(MEMS)加速度センサ、または任意の他のタイプの加速度センサであり得る、またはそれらを含み得る。一実施形態では、検出部が加速度センサである場合、電子機器は、加速度センサを置換又は増強する第2のセンサを含み得る。例えば、第2のセンサは、位置センサ(例えば、感知コイル)、電流センサ、ゼロ交差センサ、または任意の他のセンサであり得る。
【0022】
(4.コントローラ)
コントローラは、駆動回路に対し、アクチュエータを駆動する第1パルス電圧を発生するための第1制御信号を送信し、当該第1パルス電圧により発生する衝撃に関連する運動力学特性に基づいて、さらに駆動回路に対し、アクチュエータを駆動する第2パルス電圧を発生するための第2制御信号を送信して、衝撃に関連する運動力学特性を制御するように構成される。
【0023】
一実施形態において、コントローラは、駆動信号を生成するように構成された増幅器、又はより一般的には駆動回路を含み得る。一実施形態では、コントローラは、1つ又は複数のプロセッサ又はプロセッサコア、プログラマブルロジックアレイ(PLA)又はプログラマブルロジック回路(PLC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、又は任意の他の制御回路を含み得る。コントローラがプロセッサを含む場合、プロセッサは、携帯電話又は他のエンドユーザデバイス上の汎用プロセッサなどの汎用プロセッサであってもよく、あるいは、触覚効果の生成専用のプロセッサであってもよい。一実施形態では、コントローラは、検出器からのデータに基づいて、駆動回路を介して、アクチュエータを制御するように構成され得る。
【0024】
(5.触覚フィードバックシステム)
前述の各構成要素を備えた触覚フィードバックシステムは、環境の変化に適合された安定した触覚効果をもたらすことができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る触覚フィードバックシステムの構成概略図を示す。
図2は、当該触覚フィードバックシステムを用いてアクチュエータの動作を調整する方法の流れ図である。特定の開始条件を満たす場合(例えば、ユーザの身体の一部が電子機器のタッチスクリーンの一部に触れた場合)、触覚フィードバックシステムは作動を開始する。アクチュエータが駆動パルスにより駆動される場合、コントローラが、制御信号(以下、「プリ制御信号」という。)を出力する(S101)。プリ制御信号を受けた駆動回路から第1パルス電圧を発生し、アクチュエータを駆動する(S102)。後述のように、ここでの駆動は衝撃に関連する運動力学特性を検出するためであり、それだけで完全な触覚効果を達成するものではないので、当該第1パルス電圧によるアクチュエータの駆動をプリ駆動と呼ぶ。
【0025】
アクチュエータのプリ駆動を実施すると、検出器がアクチュエータから発生する衝撃に関連する運動力学特性を検出する(S103)。前述のように、運動力学特性は、変位、速度、加速度、又は衝撃の感受性に関連する何らかの運動力学特性であり得る。好ましくは、運動力学特性は、加速度又は変位である。当該運動力学特性は、電子機器の筐体又はタッチスクリーンについて検出してもよく、アクチュエータが衝撃的な動きが可能な動作部品を含む場合、当該運動力学特性は、当該動作部品について直接検出してもよい。設計上の利便性や、触覚フィードバックシステムモジュールとして生産する場合の一体性を考慮すると、運動力学特性は、動作部品について検出することが好ましい。その場合、動作部品の設計上の動作方向における加速度又は変位を検出対象とすればよい。
【0026】
以下、アクチュエータの動作部品の加速度及び変位を制御すべき運動力学特性の例として説明する。本発明の一実施形態では、加速度として動作部品のピーク加速度値を検出する。本発明の別の一実施形態では、変位として動作部品の最大変位値を検出する。検出器がアクチュエータの動作部品の加速度又は変位を検出すると、コントローラが、当該加速度又は変位が、生成すべき所望の加速度又は変位であるかどうかを判定する(S104)。生成すべき所望の加速度又は変位は、あらかじめ設定された、加速度又は変位の目標範囲、又は目標値であり得る。目標範囲とは、例えばある中央値に対して、±1%の範囲、又は±2%の範囲、又は±5%の範囲、又は±10%の範囲など、精度の要求に応じて適宜設定し得る。当該中央値は、事前にデフォルト設定として規定されている数値でもよく、ユーザが設定した数値でもよく、特定の算出方法に基づいてプロセッサが最適と決定した数値であってもよい。目標値も、事前にデフォルト設定として規定されている数値でもよく、ユーザが設定した数値でもよく、特定の算出方法に基づいてプロセッサが最適と決定した数値であってもよい。
【0027】
次いで、所望の加速度又は変位を得られないと判定した場合、コントローラが、その差分を補った制御信号を生成する(S105)。ここで、「差分を補った制御信号」とは、当該差分のみを反映した制御信号を意味するものではなく、当該制御信号自体によって、所望の加速度又は変位を得られることを意味する。コントローラが、当該所望の加速度又は変位で駆動できる制御信号を出力し(S106)、当該制御信号を受けた駆動回路から第2パルス電圧を発生し、アクチュエータを本駆動する(S107)。第2パルス電圧によるアクチュエータの駆動から発生する衝撃が、所望の触覚効果を達成するので、ここでの駆動を本駆動と呼ぶ。当該本駆動により、目標範囲又は目標値に該当する加速度又は変位が得られるので、それに対応して所望の触覚効果が得られる。このようにして、環境が変化しても、前記衝撃に関連する前記運動力学特性を所定の目標範囲又は目標値に制御でき、安定した触覚効果が得られる触覚フィードバックシステムが提供される。
【0028】
アクチュエータは、第1パルス電圧によるプリ駆動、及びそれに続く第2パルス電圧による本駆動により、2回の衝撃を発生するが、ユーザは、より強い衝撃を感受しやすいので、プリ駆動ではなく、加速度又は変位が目標範囲又は目標値である本駆動による衝撃がもたらす触覚効果をユーザに提供することが好ましい。そのため、制御すべき運動力学特性が、アクチュエータの動作部品の加速度である場合、第1パルス電圧により発生する動作部品のピーク加速度値が、第2パルス電圧により発生する動作部品のピーク加速度値より小さいことが好ましい。同様に、制御すべき運動力学特性が、アクチュエータの動作部品の変位である場合、第1パルス電圧により発生する動作部品の最大変位値が、第2パルス電圧により発生する動作部品の最大変位値より小さいことが好ましい。
【0029】
また、プリ駆動により発生する動作部品のピーク加速度値又は最大変位値は、特に限定されないが、検出器による検出限界以上で、目標範囲又は目標値以下であることが好ましい。例えば、プリ駆動により発生する動作部品のピーク加速度値又は最大変位値は、目標範囲の中央値又は目標値の0.1~0.9倍とすることができ、0.2~0.8倍とすることができ、0.3~0.7倍とすることができ、0.4~0.6倍とすることができ、0.5倍とすることができる。
【0030】
さらに、プリ駆動による衝撃がもたらす触覚効果による影響を最小限にするために、プリ駆動と本駆動との間の時間間隔を短くすることが好ましい。より具体的には、人間の触感分解能(2回の刺激の最小時間間隔)以下のタイミングで、本駆動の制御信号を出力することが好ましい。一般的には、人間の触感分解能は、27msとされている。そのため、制御すべき運動力学特性が、アクチュエータの動作部品の加速度である場合、第1パルス電圧により発生する前記動作部品のピーク加速度値と、前記第2パルス電圧により発生する動作部品のピーク加速度値との時間差が27ms以下であることが好ましく、26ms以下であることがより好ましく、25ms以下であることがさらにより好ましく、24ms以下であることがさらにより好ましく、23ms以下であることがさらにより好ましく、22ms以下であることがさらにより好ましく、21ms以下であることがさらにより好ましく、20ms以下であることがさらにより好ましく、19ms以下であることがさらにより好ましく、18ms以下であることがさらにより好ましく、17ms以下であることがさらにより好ましく、16ms以下であることがさらにより好ましく、15ms以下であることがさらにより好ましい。同様に、制御すべき運動力学特性が、アクチュエータの動作部品の変位である場合、第1パルス電圧により発生する前記動作部品の最大変位値と、第2パルス電圧により発生する動作部品の最大変位値との時間差が27ms以下であることが好ましく、26ms以下であることがより好ましく、25ms以下であることがさらにより好ましく、24ms以下であることがさらにより好ましく、23ms以下であることがさらにより好ましく、22ms以下であることがさらにより好ましく、21ms以下であることがさらにより好ましく、20ms以下であることがさらにより好ましく、19ms以下であることがさらにより好ましく、18ms以下であることがさらにより好ましく、17ms以下であることがさらにより好ましく、16ms以下であることがさらにより好ましく、15ms以下であることがさらにより好ましい。
【0031】
前述のように、第1パルス電圧によるプリ駆動及び第2パルス電圧による本駆動の両方により所望の触覚効果が得られるので、プリ駆動及び本駆動の両方が併せて1回の触覚フィードバックを構成する。ここで1回の触覚フィードバックとは、1回のユーザ入力、又は1回のイベントに対応する電子機器の反応をいう。すなわち、1回の触覚フィードバックにより、ユーザは、電子機器が1回反応した、あるいは、特定のイベントが1回発生したと認識する。
【0032】
(6.アクチュエータの動作調整方法)
本発明は、別の側面において、電子機器に衝撃を付与するように構成されたアクチュエータの動作を調整する方法であって、
前記アクチュエータを駆動する第1パルス電圧を発生するステップと、
前記第1パルス電圧により駆動された前記アクチュエータの前記衝撃に関連する運動力学特性に基づいて、前記アクチュエータを駆動する第2パルス電圧を発生し、前記衝撃に関連する前記運動力学特性を制御するステップと
を含む方法に関する。
【0033】
上記方法を実現するためには、前述の本発明に係る触覚フィードバックシステムを用いることができる。また、上記方法を実施するにあたり、触覚フィードバックシステムの作動態様は、前述と同様であり、個々では割愛する。
【0034】
図3は、アクチュエータの動作部品の加速度又は変位(縦軸)を制御すべき対象とした場合、本発明に係る触覚フィードバックシステムを用いた調整方法によって、加速度又は変位の時間変動(横軸)を示すグラフである。
【0035】
第1パルス電圧によるプリ駆動が行われると、アクチュエータの動作部品の運動力学特性の変動(当該グラフでは加速度又は変位)aが発生し、これを検出し、目標値a0と比較して、差分δがある場合に、これを用いて、目標値a0を得るための制御量b0を計算し第2パルス電圧を生成して目標値a0に達する本駆動を行なう。プリ駆動と本駆動の時間差Δtは、人間の触感分解能27ms以下に行なわれる。これにより、ユーザは本駆動による触覚フィードバックのみを感知する。本駆動による触覚フィードバックでは、加速度又は変位が目標値a0に制御されるため、環境の変動にかかわらず、ユーザに対し、常に一定の触覚フィードバックを提供することができる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本明細書において開示される各実施形態の具体的な特徴は互いに独立するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜組み合わせることができることが理解されるべきである。