(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047447
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用の食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、及び雑貨
(51)【国際特許分類】
A61K 36/74 20060101AFI20220316BHJP
A61K 36/9068 20060101ALI20220316BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220316BHJP
A61K 31/438 20060101ALI20220316BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20220316BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20220316BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20220316BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20220316BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20220316BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220316BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20220316BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20220316BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220316BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220316BHJP
【FI】
A61K36/74
A61K36/9068
A61P31/14
A61K31/438
A61K31/12
A61K8/9789
A61K8/9794
A61K8/49
A61K8/35
A61Q19/00
A61Q5/06
A61Q5/02
A61Q1/00
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153379
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
(71)【出願人】
【識別番号】595132360
【氏名又は名称】株式会社常磐植物化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】梁 明秀
(72)【発明者】
【氏名】宮川 敬
(72)【発明者】
【氏名】森田 武志
(72)【発明者】
【氏名】國吉 智子
(72)【発明者】
【氏名】楊 金緯
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD18
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC851
4C083AC852
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC11
4C083CC32
4C083CC38
4C083FF01
4C086AA01
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4C086CB22
4C086MA01
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4C086NA14
4C086ZB33
4C088AB14
4C088AB81
4C088MA02
4C088NA14
4C088ZB33
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB14
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB33
(57)【要約】
【課題】
新型コロナウイルスの感染症の予防又は治療用食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、雑貨の提供。
【解決手段】
キャッツクロー抽出物、ショウガ抽出物、Pteropodine及びその薬学的に許容される塩、Isopteropodine及びその薬学的に許容される塩、6-Gingerol及びその薬学的に許容されるエーテル、並びに、6-Shogaol及びその薬学的に許容されるエーテルの少なくともいずれかを含有する新型コロナウイルスの感染症の予防又は治療用食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、雑貨である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャッツクロー(Uncaria tomentosa)抽出物を含有する新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤。
【請求項2】
ショウガ(Zingiber officinale)抽出物を含有する新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤。
【請求項3】
Pteropodine、及び、その薬学的に許容される塩の少なくともいずれかを含有する新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤。
【請求項4】
Isopteropodine、及び、薬学的に許容される塩の少なくともいずれかを含有する新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤。
【請求項5】
6-Gingerol、及び、薬学的に許容されるエーテルの少なくともいずれかを含有する新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤。
【請求項6】
6-Shogaol、及び、薬学的に許容されるエーテルの少なくともいずれかを含有する新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤。
【請求項7】
請求項1から6に記載の抽出物又は化合物の少なくともいずれかを含有する新型コロナウイルス感染症の予防及び治療用の食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、又は、雑貨。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用の食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、及び雑貨に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、中国湖北省武漢市で2019年12月に感染者が確認され、世界各地に感染が拡大している。原因となる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はコロナウイルスの一種で、コロナウイルス科のコロナウイルス亜科に属するプラス鎖RNAウイルスである。コロナウイルスは一般的な風邪の原因のほか、2003年にアジアを中心に流行した重症呼吸器症候群(SARS)や2012年以降中東地域で広がっている中東呼吸器症候群(MERS)のウイルスも含まれる。新型コロナウイルス感染症の主な症状は発熱や全身倦怠感、呼吸器症状で、約8割は軽症のまま治癒するが、約2割は肺炎症状が悪化し、約5%は人工呼吸管理などが必要な重症例となるとされ、容態が急激に悪化する例も報告されている。重症化の要因として、免疫細胞からの過剰なサイトカイン放出であるサイトカインストームによって過剰な免疫反応が起き、肺などの臓器が障害されることが考えられている。
【0003】
また、本件出願日現在、新型コロナウイルス感染症に対する特異的な治療薬は存在せず、既存薬の転用に留まっている。抗エボラウイルス薬レムデシビルが重症の新型コロナウイルス感染者の治療期間を短縮する効果などが確認され、日本国内で特例承認を受けている。しかしながら、投薬の対象は原則として重症患者であるほか、腎機能障害や肝機能障害の頻度が高いとされるなど安全性に懸念がある。さらに、レムデシビルは供給量が限定されているという課題もある。また、ステロイド薬であるデキサメタゾンも重症例の死亡を減少させたとの報告があり、新型コロナウイルス感染症に対する治療薬として国内で2例目の承認となったが、米国NIHの治療ガイドラインでは重症患者への使用を推奨しており、軽症者に対する治療法は確立されていない。その他の治療薬は適応外使用となり、有効性や安全性については検証途中で不明瞭である。また、一般的にウイルスの感染予防手段として効果的なワクチン接種については、臨床試験が開始されているワクチンもあるものの、実用化には至っていない。こうした現状から、新型コロナウイルスに効果があり、なおかつ安全性が高く安定的に供給できる予防剤や治療剤の開発は喫緊の課題である。
【0004】
一方、天然由来成分と新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)タンパク質の相互作用について、分子ドッキング法を用いた報告があり、エピガロカテキンガレートやアントシアニジン、クルクミンなどが抗ウイルス作用を有する可能性があるとして示されている(非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Preprint, DOI: 10.26434/chemrxiv.12051927.v2
【非特許文献2】Preprint, DOI:10.21203/rs.3.rs-19560/v
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらはコンピューターによるシミュレーションの結果であり、細胞や動物レベルで効果の実証はされていない。上記の通り、現時点で使用されている治療薬は安全性に懸念が残り、供給量も限られるため、こうした課題を解決できる安全性の高い、原料の入手が容易な天然物を利用した予防又は治療用食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、及び雑貨等の提供が望まれている。
【0007】
本発明は、上記した従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、安全性が高く、原料の入手が容易な天然物を含有成分とする新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、及び雑貨を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、安全性の高い天然物であって、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、雑貨に広く使用可能な新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤について、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、キャッツクロー抽出物、ショウガ抽出物、Pteropodine及びその薬学的に許容される塩、Isopteropodine及びその薬学的に許容される塩、6-Gingerol及びその薬学的に許容されるエーテル、並びに、6-Shogaol及びその薬学的に許容されるエーテルの少なくともいずれかを含む、好ましくは有効成分として含む新型コロナウイルスに対する予防又は治療の効果を有する食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物又は雑貨である。これまでにキャッツクロー抽出物、ショウガ抽出物、Pteropodine、Isopteropodine、6-Gingerol、6-Shogaolの新型コロナウイルスに対する効果は全く知られておらず、本発明者らの鋭意研究による新知見である。
【0010】
より具体的に、本発明は以下のとおりである。すなわち、本発明の一観点に係る新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤は、キャッツクロー(Uncaria tomentosa)抽出物を含有するものであり、好ましくはこれを有効成分として配合するものである。ここで予防剤、治療剤における「剤」は、助数詞として用いる用語であって、薬理的な機能を有するものの意味として「剤」を用いているが、これは必ずしも医薬品組成物(薬剤)を意味するものではなく、この予防剤、治療剤は、その有効成分として、食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、又は、雑貨中に利用されうるものである。
【0011】
また、本発明の他の一観点に係る新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤は、ショウガ(Zingiber officinale)抽出物を含有するものであり、好ましくはこれを有効成分として配合するものである。
【0012】
また、本発明の他の一観点に係る新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤は、Pteropodine、及び、その薬学的に許容される塩の少なくともいずれかを含有するものであり、好ましくはこれを有効成分として配合するものである。
【0013】
また、本発明の他の一観点に係る新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤は、Isopteropodine、及び、薬学的に許容される塩の少なくともいずれかを含有するものであり、好ましくはこれを有効成分として配合するものである。
【0014】
また、本発明の他の一観点に係る新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤は、6-Gingerol、及び、薬学的に許容されるエーテルの少なくともいずれかを含有するものであり、好ましくはこれを有効成分として配合するものである。
【0015】
また、本発明の他の一観点に係る新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用医薬品組成物は、6-Shogaol、及び、薬学的に許容されるエーテルの少なくともいずれかを含有するものであり、好ましくはこれを有効成分として配合するものである。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明により、安全性が高く、原料の入手が容易な天然物を含有成分とする新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、及び雑貨を提供することができる。本発明は天然由来抽出物、又は化合物であり、安全性に優れるため、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、雑貨に配合、又は添加して用いるのに好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
実施例における図に関する簡単な説明は以下のようである。
【
図1】製造例1~製造例4の新型コロナウイルスの感染抑制効果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態や実施例の具体的例示にのみ限定されるわけではない。
【0019】
本発明の新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤は、キャッツクロー抽出物、ショウガ抽出物、Pteropodine及びその薬学的に許容される塩、Isopteropodine及びその薬学的に許容される塩、6-Gingerol及びその薬学的に許容されるエーテル、並びに、6-Shogaol及びその薬学的に許容されるエーテルの少なくともいずれかを含有するものであり、好ましくはこれらの少なくともいずれかを有効成分として含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0020】
前記キャッツクロー抽出物、ショウガ抽出物は、植物の抽出に一般的に用いられている方法により容易に得ることができる。なお、各植物抽出物には、抽出原料の抽出液、該抽出液の希釈液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。また、抽出原料の使用部位は、上記効果を得ることができる限りにおいて限定されるものではないが、キャッツクロー抽出物は樹皮、ショウガ抽出物は根茎を用いるのが好ましい。
【0021】
また、上記の植物抽出物の抽出方法は特に制限されず、当業者に周知の方法にしたがって行うことができる。抽出溶媒としては、水、アルコール系溶媒、およびアセトン、エステル類、多価アルコール類、エーテル類等の有機溶媒を用いることができる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。これらの中でもエタノールを用いることが好ましく、エタノール含量が10%~95%(v/v)の含水エタノールを用いることがより好ましい。抽出溶媒の量、抽出温度、抽出時間および抽出方法は、上記効果を発揮する本組成物を得ることができる限りにおいて限定されるものではない。抽出溶媒の量は原料の乾燥重量に対して、1~100重量部が好ましい。抽出温度は4~90℃が好ましい。抽出時間は30分~1週間が好ましい。抽出方法は攪拌抽出、浸漬抽出、向流抽出、超音波抽出、超臨界抽出などの任意の方法で行うことができる。
【0022】
また上記の抽出物は、得られた抽出液を濾過し得られた濾液そのもの、濾液を濃縮した濃縮液、濃縮液を乾燥して得られる乾燥物、これらの粗精製物又は精製物であってもよい。濃縮方法、乾燥方法は任意の方法で行うことができる。必要な場合にはデキストリンなどの賦形剤を入れてもよい。精製を行う場合は、合成吸着樹脂、活性炭、イオン交換樹脂、カラムクロマトグラフィー、再結晶など当業者に既知の手段に従って行うことができる。
【0023】
Pteropodine、Isopteropodine、6-Gingerol、6-Shogaolは有機化学的に合成することによっても製造することが可能であるが、植物由来のものであることが好ましい。これらの化合物は植物から抽出することによって得られ、更にこれをろ過や遠心分離等で抽出液を回収し、これに濃縮、吸着、分離、溶出、溶媒除去などの処理をして精製したものであることが好ましい。抽出に使われる植物は、キャッツクロー(Uncaria tomentosa)、ショウガ(Zingiber officinale)が例として挙げられる。なお、合成方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を利用することができる。
【0024】
合成または精製により得られた化合物の構造は、当業者に既知の手段に従って同定することができる。例えば、プロトン核磁気共鳴分光法(1H-NMR)、カーボン核磁気共鳴分光法(13C-NMR)、質量分析法(MS)、元素分析法、赤外分光法(IR)、紫外分光法(UV)、融点測定法などを単独で、または組み合わせて使用してもよい。
【0025】
上記化合物は、キャッツクロー(Uncaria tomentosa)やショウガ(Zingiber officinale)を抽出精製することによっても得られるものであるから、上記キャッツクロー抽出物やショウガ抽出物は新型コロナウイルス感染症の予防剤又は治療剤としても使用できるものと考えられる。
【0026】
また、上記化合物において、「薬学的に許容される塩」は、典型的には上記化合物と酸又は塩基との反応によって生じる塩であって、「薬学的に許容されるエーテル」は、典型的には上記化合物とアルコール、アルコキシド、有機ハロゲン化合物との反応によって生じるエーテルであって、上記化合物の新型コロナウイルス感染症の予防又は治療の効果を維持することができるものをいう。
【0027】
キャッツクロー抽出物、ショウガ抽出物、Pteropodine及びその薬学的に許容される塩、Isopteropodin及びその薬学的に許容される塩e、6-Gingerol及びその薬学的に許容されるエーテル、並びに、6-Shogaol及びその薬学的に許容されるエーテルは、優れた新型コロナウイルス感染症の予防及び治療効果を有する。特に、以下に説明する本発明の食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、雑貨に配合するのに好適である。
【0028】
食品組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;飴、キャンディー、チュアブル、ゼリー、ガム、チョコレート等の菓子類;顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤など種々の形態の健康食品、機能性表示食品や栄養補助食品が挙げられる。
【0029】
医薬品組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチなどが挙げられる。
【0030】
医薬部外品組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、消毒液、マスク、ハンドジェル、薬用石けん、うがい薬、入浴剤、薬用歯みがき粉などが挙げられる。
【0031】
化粧品組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、化粧水、化粧液、クリーム、乳液、整髪料、洗髪料、仕上げ用化粧品などが挙げられる。
【0032】
また、雑貨としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、消毒液、マスク、手袋、フェイスシールド、ハンドジェル、スプレー、ウエットティッシュ、空気清浄器、アロマオイル、石けん、歯みがき粉などが挙げられる。
【0033】
なお、新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、雑貨は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が得られる限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【0034】
以上、本実施形態により、安全性が高く、原料の入手が容易な天然物又は天然物由来の化合物を含有成分とする新型コロナウイルス感染症の予防又は治療用食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、雑貨を提供することができる。
【実施例0035】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
(製造例1)
―Pteropodineの単離精製―
株式会社常磐植物化学研究所製のキャッツクロー(Uncaria tomentosa)抽出物を硫酸酸性条件下で加熱抽出する。pHを中性に調整後、等量のメタノール/クロロホルム混液を加えて、液-液分配を行った後、シリカゲルを用いたカラム精製を行った。Pteropodineが多く含まれる画分を濃縮・乾燥させ、再度シリカゲルを充填したカラムに吸着させ、ヘキサン/酢酸エチル混液を用いて溶出させた後、再結晶化し、Pteropodineを得た。構造は化学式(1)に示す。
【化1】
【0037】
<1H-NMR(500MHz,CDCl3)>
δ1.40(3H,d,J=6.1Hz,18-CH3)、1.51(1H,m,14β-H)、1.59(1H,m,20-H)、1.72(1H,ddd,J=12.1Hz,J=4.3Hz,J=4.3Hz,14α-H)、1.99(1H,m,6α-H)、2.32(1H,dd,J=12.1Hz,J=3.8Hz,21α-H)、2.36(1H,dd,J=12.1Hz,J=4.3Hz,3-H)、2.36(1H,m,5α-H)、2.40(1H,ddd,J=13.0Hz,J=12.5Hz,6β-H)、2.44(1H,ddd,J=12.1Hz,J=4.7Hz,J=4.3Hz,15-H)、3.30(1H,ddd,J=13.0Hz,J=8.5Hz,J=2.9Hz,5β-H)、3.32(1H,dd,J=12.1Hz,J=2.0Hz,21β-H)、3.60(3H,s,23-OCH3)、4.55(1H,qd,J=10.5Hz,J=6.1Hz,19-H)、6.87(1H,d,J=7.6Hz,12-H)、7.04(1H,ddd,J=7.6Hz,J=7.3Hz,J=1.0Hz,10-H)、7.18(1H,ddd,J=7.6Hz,J=7.6Hz,J=1.2Hz,11-H)、7.20(1H,d,J=7.3Hz,9-H)、7.41(1H,s,17-H)、8.52(1H,brs,NH)
【0038】
(製造例2)
―Isopteropodineの単離精製―
株式会社常磐植物化学研究所製のキャッツクロー(Uncaria tomentosa)抽出物を硫酸酸性条件下で加熱抽出する。pHを中性に調整後、等量のメタノール/クロロホルム混液を加えて、液-液分配を行った後、シリカゲルを用いたカラム精製を行った。ヘキサン/酢酸エチル溶出画分を濃縮・乾燥させた後、再度シリカゲルを用いたカラム精製を行った。ヘキサン/酢酸エチル混液を用いて溶出させた後、再結晶化し、Isopteropodineを得た。構造は化学式(2)に示す。
【化2】
【0039】
<1H-NMR(500MHz,CDCl3)>
δ0.88(1H,ddd,J=11.7Hz,J=11.7Hz,J=11.7Hz,14β-H)、1.41(3H,d,J=6.2Hz,18-CH3)、1.59(1H,m,20-H)、1.62(1H,ddd,J=11.7Hz,J=2.8Hz,J=2.8Hz,14α-H)、2.00(1H,ddd,J=11.9Hz,J=7.6Hz,J=7.6Hz,6α-H)、2.39(1H,ddd,J=11.9Hz,J=7.6Hz,J=2.4Hz,6β-H)、2.42(1H,dd,J=11.9Hz,J=3.8Hz,21-α)、2.46(1H,ddd,J=7.6Hz,J=7.6Hz,J=7.6Hz,5α-H)、2.51(1H,ddd,J=11.7Hz,J=2.8Hz,J=2.8Hz,15-H)、2.57(1H,dd,J=11.7Hz,J=2.8Hz,3-H)、3.22(1H,ddd,J=7.6Hz,J=7.6Hz,J=2.4Hz,5β-H)、3.29(1H,dd,J=11.9Hz,J=1.8Hz,21β-H)、3.60(3H,s,23-OCH3)、4.36(1H,qd,J=10.4Hz,J=6.2Hz,19-H)、6.89(1H,d,J=7.7Hz,12-H)、7.02(1H,ddd,J=7.7Hz,J=7.7Hz,J=1.1Hz,10-H)、7.19(1H,ddd,J=7.7Hz,J=7.7Hz,J=1.3Hz,11-H)、7.27(1H,d,J=7.7Hz,9-H)、7.41(1H,s,17-H)、8.42(1H,brs,NH)
【0040】
(製造例3)
―6-Gingerolの単離精製―
乾燥させたショウガ(Zingiber officinale)粉砕物にメタノールを加えて抽出し、濃縮した後、濃縮液に水とジエチルエーテルを加えて、液-液分配を行った。ジエチルエーテル層を濃縮した後、シリカゲルを用いたカラム精製を行った。ヘキサン、ヘキサン/酢酸エチル混液、メタノールで溶出させた後、6-Gingerolが多く含まれる画分を濃縮し、さらに逆相高速液体クロマトグラフィー(ODS)を用い75%メタノールで精製を行い、6-Gingerolを得た。構造は化学式(3)に示す。
【化3】
【0041】
<1H-NMR(500MHz,CDCl3)>
δ0.89(3H,t,J=7.0Hz,10-CH3)、1.30(6H,m,7-2H,8-2H,9-2H)、1.38-1.49(2H,m,6-2H)、2.48(1H,dd,J=17.5Hz,J=9.0Hz,4-H)、2.57(1H,dd,J=17.5Hz,J=2.0Hz,4-H)、2.73(2H,m,2-2H)、2.84(2H,m,1-2H)、3.87(3H,s,3’-OCH3)、4.02(1H,m,5-H)、6.66(1H,dd,J=8.0Hz,J=2.0Hz,6’-H)、6.68(1H,d,J=2.0Hz,2’-H)、6.82(1H,d,J=8.0Hz,5’-H)
【0042】
(製造例4)
―6-Shogaolの単離精製―
乾燥させたショウガ(Zingiber officinale)粉砕物にメタノールを加えて抽出し、濃縮した後、濃縮液に水とジエチルエーテルを加えて、液-液分配を行った。ジエチルエーテル層を濃縮した後、シリカゲルを用いたカラム精製を行った。ヘキサン、ヘキサン/酢酸エチル混液、メタノールで溶出させた後、6-Shogaolが多く含まれる画分を濃縮し、さらに逆相高速液体クロマトグラフィー(ODS)を用い35%アセトニトリルで精製を行い、6-Shogaolを得た。構造は化学式(4)に示す。
【化4】
【0043】
<1H-NMR(600MHz,CDCl3)>
δ0.89(3H,t,J=8.7Hz,10-CH3)、1.30(4H,m,8-2H,9-2H),1.45(2H,m,7-2H)、2.19(1H,ddd,J=16.2Hz,J=10.8Hz,J=1.8Hz,6-H)、2.85(4H,m,1-2H,2-2H)、3.87(3H,s,3’-OCH3)、6.09(1H,br d,J=19.2Hz,4-H),6.68(1H,dd,J=9.6Hz,2.4Hz,6’-H)、6.71(1H,d,J=2.4Hz,2’-H)、6.80(1H,m,5-H)、6.83(1H,d,J=9.6Hz,5’-H)
【0044】
(実施例1)
―新型コロナウイルスの感染抑制効果―
製造例1~製造例4の化合物を試料として用い、下記の試験法により、新型コロナウイルスの感染抑制効果を評価した。
【0045】
10μMの最終濃度でVeroE6/TMPRSS2細胞培地に添加し、37℃、3時間培養した。その後、新型コロナウイルスSARS-CoV-2(MOI=0.05)を添加し、細胞に感染させた。さらに37℃、48時間培養し、CellTiter-GloTMを加えて細胞生存率を測定した。
ポジコンとしては、新型コロナウイルスの肺細胞への感染を抑制できると報告されているカモスタット(Camostat)とナファモスタット(Nafamostat)を用いた。
【0046】
図1の結果から、製造例1~製造例4の化合物は、ポジコンのカモスタット(Camostat)とナファモスタット(Nafamostat)より、新型コロナウイルスに対する高い感染抑制作用を有することが確認できた。
【0047】
なお、VeroE6/TMPRSS2細胞の細胞生存率を指標として製造例2~4のIC50を算出した。
【表1】
【0048】
(実施例2)
SARS-CoV-2 Nproteinに対する抗体を用いた免疫染色を行うことでウイルスの感染を視覚化した。
最終濃度10μM、25μM、50μMで製造例2、製造例3をVeroE6/TMPRSS2細胞の培地へ加え、37℃で3時間培養した後、新型コロナウイルスSARS-CoV-2(MOI=0.05)を添加し、細胞に感染させた。さらに37℃、24時間培養し、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定した。透過処理としてTritonX-100を加え、室温で15分処理を行った。その後Blocking OneTMにて室温で15分ブロッキング処理を行った。免疫染色はSARS-CoV-2 Nucleocapsid Protein antibody(1:100希釈,Novus NB100―56576)を用いて1時間室温で反応させ、その後Alexa 568―labele anti―rabbitantibody(1:100希釈, Thermo)を用いて1時間室温で染色を行った。細胞の核はProlong Gold Antifade Mount with DAPI (Thermo)を用いて染色を行った。
【0049】
図2の結果から、製造例2と3を添加した場合はいずれも濃度依存的に感染細胞の減少が観察された。
【0050】
(実施例3)
SARS-CoV-2に対する感染抑制効果は細胞侵入と細胞侵入後のどちらに作用するかを検討した。
最終濃度50μMの製造例2と3を以下の条件でVeroE6/TMPRSS2細胞の培地へ加えた。Full timeの条件では新型コロナウイルスSARS-CoV-2(MOI=0.05)感染3時間前から培地へ加え、感染2時間後の洗浄後も培地に製造例2と3が50μMで存在するようにした。Entryの条件では新型コロナウイルスSARS-CoV-2(MOI=0.05)感染3時間前から培地へ加え、感染2時間後の洗浄後まで培地に製造例2と3が存在するようにした。Post-entryの条件では新型コロナウイルスSARS-CoV-2(MOI=0.05)感染2時間後の洗浄後から感染48時間後の検出まで製造例2と3が存在するようにした。検出は感染48時間後にCellTiter-Glo
TMを加えて細胞生存率を測定した。
【表2】
【0051】
図3の結果から、製造例2と3はいずれも細胞侵入後に作用することが確認された。
【0052】
(実施例4)
コロナウイルスはポリプロテインが合成後、パパイン様酵素により三箇所切断後、3CL プロテアーゼによって11箇所切断されることで、機能を持ったペプチドを合成する。
プロテアーゼによるポリプロテインの切断反応をウエスタンブロッド法で検出できる試験系を用い、プロテアーゼによるポリプロテインの切断への阻害作用を検討した。
コムギ無細胞タンパク質合成系を用いて、新型コロナウイルスSARS-CoV-23C Lプロテアーゼと、3CLプロテアーゼによって切断されるアミノ酸配列を持つペプチド(FLAG-TSITSAVLQ^SGFRKMAFP-GST-biotin)を合成した。合成したプロテアーゼと基質、さらに最終濃度500μMで製造例2と3を加え、37℃で3時間反応させ、13%ポリアクリルアミドゲルを用いてのSDS-PAGEを行いPVDFメンブレンへと転写し、Blocking OneTMにて室温で15分ブロッキング処理を行った。その後anti-streptavidin-HRP antibody(1:5000希釈)を用いて検出を行なった。
【0053】
図4の結果から、製造例2と3はいずれもプロテアーゼによるポリプロテインの切断を阻害した。
本発明は、キャッツクロー抽出物、ショウガ抽出物、Pteropodine及びその薬学的に許容される塩、Isopteropodine及びその薬学的に許容される塩、6-Gingerol及びその薬学的に許容されるエーテル、並びに、6-Shogaol及びその薬学的に許容されるエーテルの少なくともいずれかを有効成分として配合した食品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物、化粧品組成物、雑貨として産業上の利用可能性がある。