(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047472
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】リベット機械
(51)【国際特許分類】
B21J 15/28 20060101AFI20220316BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
B21J15/28 M
G05B23/02 V
B21J15/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021032703
(22)【出願日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】2003015.1
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】520190665
【氏名又は名称】アトラス コプコ アイエーエス ユーケー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO IAS UK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】エリオット, ピーター ジョン
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA11
3C223FF34
3C223FF44
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リベットシステム等の産業機械の故障を診断し、解決する方法及び装置を提供する。
【解決手段】産業機械に関連付けられた第1の状態を特定するステップと、第1の状態に基づいて産業機械に関連付けられた少なくとも1つの第2の状態を特定するステップと、特定された各第2の状態について、第2の状態に関連付けられた状態時間を決定するステップと、少なくとも1つの第2の状態及びそれぞれの状態時間に基づいて、産業機械が少なくとも1つの第2の状態のうちの少なくとも1つにおいて所定の期間とは異なる期間を費やしたと判断したことに応じた故障インジケータ条件を決定するステップと、故障表示の決定に応じて、少なくとも1つの第2の状態のうちの1つの表示を含む診断情報を生成するステップと、診断情報を産業機械のユーザインタフェースにおいて出力するステップとを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械の故障を診断する方法であって、
前記産業機械に関連付けられた第1の状態を特定するステップと、
前記第1の状態に基づいて前記産業機械に関連付けられた少なくとも1つの第2の状態を特定するステップと、
特定された各第2の状態について、前記第2の状態に関連付けられた状態時間を決定するステップと、
前記少なくとも1つの第2の状態及びそれぞれの前記状態時間に基づいて、前記産業機械が前記少なくとも1つの第2の状態のうちの少なくとも1つにおいて所定の期間とは異なる期間を費やしたと判断したことに応じた故障インジケータ条件を決定するステップと、
前記故障表示の決定に応じて、前記少なくとも1つの第2の状態のうちの前記1つの表示を含む診断情報を生成するステップと、
前記診断情報を前記産業機械のユーザインタフェースにおいて出力するステップと
を含む、産業機械の故障を診断する方法。
【請求項2】
前記産業機械の動作中に、状態の履歴及び関連付けられた状態時間を保守するステップをさらに含み、第2の状態及び前記第2の状態に関連付けられた状態時間を特定するステップは、前記状態の履歴及び関連付けられた状態時間から前記第2の状態及び関連付けられた状態時間を特定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記故障インジケータ条件の決定に応じて、前記状態の履歴及び関連付けられた状態時間の所定数のデータエントリの内容をコピーするステップをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2の状態のそれぞれに関連付けられた前記状態時間は、前記第2の状態への遷移時のグローバルタイマの値に基づいており、前記グローバルタイマは、前記産業機械のすべての動作を同期させるために前記産業機械によって使用される、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記ユーザインタフェースは、前記産業機械の状態履歴の表示を生成するステップをさらに含み、前記状態履歴は、前記産業機械の現在の状態、前記現在の状態の後にアクティブになる状態、現在の状態の前にアクティブだった状態、及び前記現在の状態に関連付けられた状態時間を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記産業機械のヒューマンマシンインタフェース、又は前記機械に直接若しくは遠隔で取り付けられた診断システムに前記ユーザインタフェースを表示するステップをさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ユーザインタフェースは、前記現在の状態に到達するために前記産業機械が辿る遷移経路の表示を含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記ユーザインタフェースにおいて状態強制ユーザインタフェース要素を提供するステップをさらに含み、前記状態強制ユーザインタフェース要素の選択により前記産業機械は所定の状態へと遷移する、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記産業機械の動作中に、状態の履歴及び関連付けられた状態時間の保守を、前記状態強制ユーザインタフェース要素の選択後に継続する、請求項2に従属する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
診断出力を生成するステップは、前記第2の状態及び状態時間情報を処理して、状態遷移のタイミングを示す出力を生成することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
状態遷移のタイミングを示す前記出力と共に表示するように構成された時間計算ユーザインタフェース要素を提供するステップをさらに含み、前記時間計算ユーザインタフェースは、オペレータが状態遷移のタイミングを示す前記出力内の2つの位置を選択し、前記選択された2つの位置間の期間を出力することを可能にするように構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記産業機械に関連付けられたI/O信号の変化を特定するステップと、
前記I/O信号に関連付けられた状態インジケータに、変化を示す値を割り当てるステップであって、前記割り当ては所定の期間持続するように構成されている、割り当てるステップと、
前記I/O信号の現在値及び前記状態インジケータの現在値の表示を含む診断情報を生成するステップと、
前記産業機械のユーザインタフェースにおいて、前記診断情報に基づいて診断出力を出力するステップと
を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
産業機械の故障を診断する方法であって、
前記産業機械に関連付けられたI/O信号の変化を特定するステップと、
前記I/O信号に関連付けられた状態インジケータに、変化を示す値を割り当てるステップであって、前記割り当ては所定の期間持続するように構成されている、割り当てるステップと、
前記I/O信号の現在値及び前記状態インジケータの現在値の表示を含む診断情報を生成するステップと、
前記産業機械のユーザインタフェースに、前記診断情報に基づいて診断出力を出力するステップと
を含む、産業機械の故障を診断する方法。
【請求項14】
前記診断情報を生成するステップは、前記産業機械のヒューマンマシンインタフェースのリフレッシュ間隔ごとに実行される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記所定の期間は、前記産業機械のヒューマンマシンインタフェースのリフレッシュレートよりも長い、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記所定の時間が経過した後に、前記I/O信号に関連付けられた前記状態インジケータをリセットするステップをさらに含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記診断情報を前記産業機械のユーザインタフェースにおいて出力するステップは、4つの動作モードを有するインジケータを使用して前記診断情報を出力することを含み、前記4つの動作モードは、
前記I/O信号がローであり、過去の所定の期間内にハイ信号を受信していないことを示す第1のモードと、
前記I/O信号がローであるが、前記過去の所定の期間内に状態の変化が生じたことを示す第2のモードと、
前記I/O信号がハイであり、前記過去の所定の期間中に状態の変化が生じたことを示す第3のモードと、
前記I/O信号がハイであり、前記過去の所定の期間中に変化していないことを示す第4のモードと
を含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記I/O信号は、複数のI/O信号のうちの1つであり、前記I/O信号に関連付けられた前記状態インジケータは、前記複数のI/O信号に関連付けられ、前記診断情報は、前記複数のI/O信号のうちのいずれかの変化を示す、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のI/O信号のための診断信号履歴バッファを保守するステップをさらに含み、前記診断信号履歴バッファは、前記複数のI/O信号のいずれかの変化の履歴表示を提供するように構成されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記診断信号履歴バッファは、複数のスロットを含み、各スロットは、前記複数のI/O信号のそれぞれのためのエントリを含み、前記スロットのそれぞれは、過去の異なる時点における前記複数のI/O信号の状態を表し、
前記診断出力は、インデックスによって参照される前記診断信号履歴バッファのスロットに基づいており、前記インデックスは、所定の頻度で前記診断信号履歴バッファの前記スロットのうちの次のスロットを参照するように更新される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記スロットのうちの少なくとも1つに格納された前記複数のI/O信号の変化の表示を前記所定の頻度で減衰させるステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
スロットに格納された前記複数のI/O信号の変化の表示を減衰させるステップは、前記スロットに格納された値をリセットすることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記診断情報は前記複数のI/O信号のそれぞれに対してビットを含み、前記診断信号履歴バッファの各スロットは、前記複数のI/O信号のそれぞれに対してビットを含み、前記方法は、
前記複数のI/O信号のうちの少なくとも1つの変化を示す診断情報の生成に応じて、前記診断情報を前記スロットに格納された前記値と論理的に結合することによって各スロットに格納された前記値を更新するステップと、
前記現在インデックスされているスロットの前記値をリセットするステップと
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記所定の頻度は、診断信号履歴バッファにおけるスロット数及び前記産業機械のヒューマンマシンインタフェースのリフレッシュ期間の合計に基づく、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記変化を示す値を状態インジケータに割り当てるステップは、前記変化に関連付けられた時刻を格納することをさらに含む、請求項12~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記変化に関連付けられた時間を格納することは、前記変化時のグローバルタイマによって示される時刻を記録することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記産業機械は、リベット機械、接着剤ディスペンシングマシン又はフロードリルシステムである、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
コントローラと、前記コントローラに請求項1~27のうちいずれかに記載の方法を実行させるように構成されたコンピュータ可読命令を格納するメモリとを備える、産業機械の故障を診断するシステム。
【請求項29】
請求項28に記載のシステムを備えた産業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械の動作、診断及び故障の解決のための方法及び装置に関する。特に、本発明は、限定されるものではないが、リベットシステムにおける故障を診断し、解決するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動作中、産業機械は、機械の動作シーケンスを介して遷移するための正確な時間を決定するためにシステムがシステム入力及びシステム出力に依存しており、これらの信号のタイミング又は存在が、最終的に故障状態につながる漸進的な感知不能な変化を伴って経時的に変化するため、検出することが困難な故障を発生させることがある。例えば、産業機械の動作シーケンスのある状態から別の状態への遷移の間、産業機械は、対応する入力信号及び出力信号を提供してもよい。特定の状況では、産業機械の動作中にエラーが発生した場合、産業機械によって提供される入力信号及び出力信号は、予想される値ではないか、又は予想される時間内に提供されないことがあり、故障の存在を示す。しかしながら、産業機械は、多くの状態が可能であり、それに対応する故障を伴う大型で複雑なものであることが多い。このことにより、産業機械のオペレータにとって、機械が現在どの状態で動作しているか、又はどの状態で故障が発生したかを判断することが困難になり得る。そのため、リベットシステム等の産業機械の故障を診断し、解決する方法及び装置が必要とされている。
【0003】
本明細書に記載された実施形態のうちの1つ又は複数の目的は、上述した課題のうちの少なくとも1つを防止又は緩和することである。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載される第1の実施例によれば、産業機械の故障を診断する方法が提供される。本方法は、産業機械に関連付けられた第1の状態を特定するステップと、第1の状態に基づいて産業機械に関連付けられた少なくとも1つの第2の状態を特定するステップと、特定された各第2の状態について、第2の状態に関連付けられた状態時間を決定するステップと、少なくとも1つの第2の状態及びそれぞれの状態時間に基づいて、産業機械が少なくとも1つの第2の状態のうちの少なくとも1つにおいて所定の期間とは異なる期間を費やしたと判断したことに応じた故障インジケータ条件を決定するステップと、故障表示の決定に応じて、少なくとも1つの第2の状態のうちの1つの表示を含む診断情報を生成するステップと、診断情報を産業機械のユーザインタフェースにおいて出力するステップとを含む。
【0005】
したがって、本発明の第1の態様によれば、産業機械の動作をモデル化する状態機械の少なくとも1つの第2の状態に関連付けられた情報に基づいて診断情報を生成することができる。少なくとも1つの第2の状態は、状態機械の現在アクティブな状態であってもよい。産業機械のユーザインタフェースで出力された診断情報に基づいて、オペレータは、機械がどの状態で現在動作中であるか、又はどの状態で故障が発生したかを判断してもよい。
【0006】
本方法は、産業機械の動作中に、状態の履歴及び関連付けられた状態時間を保守するステップをさらに含んでもよく、第2の状態及び第2の状態に関連付けられた状態時間を特定するステップは、状態の履歴及び関連付けられた状態時間から第2の状態及び関連付けられた状態時間を特定することを含む。状態の履歴及び関連付けられた状態時間は、循環バッファに格納されてもよい。循環バッファは、産業機械の現在アクティブな状態を格納しているメモリ位置を指すポインタを含んでもよい。循環バッファの使用は、本発明の第1の態様に関連する方法の動作速度をさらに向上させることができると理解されるであろう。状態の履歴及び関連付けられた状態時間はまた、任意の固定サイズのバッファに格納されてもよい。
【0007】
本方法は、故障インジケータ条件の決定に応じて、状態の履歴及び関連付けられた状態時間の所定数のデータエントリの内容をコピーするステップをさらに含んでもよい。例えば、所定数は、現在のエントリのすべてであってもよい。このようにして、エントリの後の上書き(例えば、エントリが循環バッファ又は他の固定サイズのバッファに格納されている場合)では、産業機械内の問題を診断するために使用され得る情報を消去しない。実際、産業機械によっては、状態遷移が非常に迅速に起こるため、故障が検出された直後に状態履歴データから関連情報が失われ得ることが理解されるであろう。
【0008】
少なくとも1つの第2の状態のそれぞれに関連付けられた状態時間は、第2の状態への遷移時のグローバルタイマの値に基づいてもよく、グローバルタイマは、産業機械のすべての動作を同期させるために産業機械によって使用される。状態時間がグローバルタイマの値に基づくことによって、状態履歴をI/O信号とクロスチェックすることができ、産業機械内の故障の診断を可能にするさらなるメカニズムを提供することができる。
【0009】
ユーザインタフェースは、産業機械の状態履歴の表示を生成するステップをさらに含んでもよく、状態履歴は、産業機械の現在の状態、現在の状態の後にアクティブになる状態、現在の状態の前にアクティブだった状態、及び現在の状態に関連付けられた状態時間を含む。
【0010】
本方法は、産業機械のヒューマンマシンインタフェースにユーザインタフェースを表示するステップをさらに含んでもよい。産業機械は、限られた量の情報のみを表示することができ、また滅多に表示をリフレッシュすることができないヒューマンマシンインタフェースを有することが多い。本明細書に記載される技術に従って生成されたユーザインタフェースは、特に、産業機械を一般に備えているヒューマンマシンインタフェースの技術的限界に適合されている。
【0011】
ユーザインタフェースは、現在の状態に到達するために産業機械が辿る遷移経路の表示をさらに含んでもよい。
【0012】
本方法は、ユーザインタフェースにおいて状態強制ユーザインタフェース要素を提供するステップをさらに含んでもよく、状態強制ユーザインタフェース要素の選択により産業機械を所定の状態に遷移させる。例えば、状態強制ユーザインタフェースは、産業機械を予め設定した状態(例えば、開始状態又は初期状態)に強制的に遷移させてもよく、又は産業機械をオペレータが選択した状態に強制的に遷移させてもよい。産業機械を特定の状態に強制的に遷移させることにより、産業機械は、その状態に関連付けられた動作を実施してもよい。
【0013】
本方法は、産業機械の動作中に、状態の履歴及び関連付けられた状態時間の保守を、状態強制ユーザインタフェース要素の選択後に継続するステップをさらに含んでもよい。この特徴により、オペレータが強制した動作の後であっても、産業機械に対して継続的な診断動作が実行され得る。このようにして、オペレータは、産業機械に特定の状態(例えば、故障状態の根源として疑われる状態)を強制して、産業機械の動作を監視し続けてもよい。
【0014】
診断出力を生成するステップは、第2の状態及び状態時間情報を処理して、状態遷移のタイミングを示す出力を生成することをさらに含んでもよい。本方法は、状態遷移のタイミングを示す出力と共に表示するように構成された時間計算ユーザインタフェース要素を提供するステップをさらに含んでもよく、時間計算ユーザインタフェースは、オペレータが状態遷移のタイミングを示す出力内の2つの位置を選択し、選択された2つの位置間の期間を出力することを可能にするように構成されている。時間計算ユーザインタフェース要素によって、ユーザはその状態に費やす時間を容易に決定できる。
【0015】
本方法は、産業機械に関連付けられたI/O信号の変化を特定するステップと、I/O信号に関連付けられた状態インジケータに、変化を示す値を割り当てるステップであって、この割り当ては所定の期間持続するように構成されている、割り当てるステップと、I/O信号の現在値及び状態インジケータの現在値の表示を含む診断情報を生成するステップと、産業機械のユーザインタフェースにおいて、診断情報に基づいて診断出力を出力するステップとをさらに含んでもよい。
【0016】
本明細書に記載される第2の実施例によれば、産業機械の故障を診断する方法が提供される。本方法は、産業機械に関連付けられたI/O信号の変化を特定するステップと、I/O信号に関連付けられた状態インジケータに、変化を示す値を割り当てるステップであって、この割り当ては所定の期間持続するように構成されている、割り当てるステップと、I/O信号の現在値及び状態インジケータの現在値の表示を含む診断情報を生成するステップと、産業機械のユーザインタフェースに、診断情報に基づいて診断出力を出力するステップとを含む。所定の期間持続するように構成された値を用いて状態インジケータを更新することにより、産業機械にしばしば提供されているヒューマンマシンインタフェースの種類にI/O信号の変化を表示することができる。特に、状態変化は、比較的遅いリフレッシュレートを有するヒューマンマシンインタフェースに表示することができる。診断出力は、診断情報であってもよく、又は診断情報に基づく出力であってもよい。
【0017】
診断情報を生成するステップは、産業機械のヒューマンマシンインタフェースのリフレッシュ間隔ごとに実行されてもよい。所定の期間は、産業機械のヒューマンマシンインタフェースのリフレッシュレートよりも長くてもよい。例えば、所定の期間は、産業機械のヒューマンマシンインタフェースの2つのリフレッシュ期間以上であってもよい。
【0018】
本方法は、所定の期間が経過した後に、I/O信号に関連付けられた状態インジケータをリセットするステップをさらに含んでもよい。診断情報を産業機械のユーザインタフェースにおいて出力するステップは、4つの動作モードを有するインジケータを使用して診断情報を出力することをさらに含んでもよく、4つの動作モードは、I/O信号がローであり、過去の所定の期間内にハイ信号を受信していないことを示す第1のモードと、I/O信号がローであるが、過去の所定の期間内に状態の変化が生じたことを示す第2のモードと、I/O信号がハイであり、過去の所定の期間中に状態の変化が生じたことを示す第3のモードと、I/O信号がハイであり、過去の所定の期間中に変化していないことを示す第4のモードとを含む。
【0019】
I/O信号は、複数のI/O信号のうちの1つであってもよく、I/O信号に関連付けられた状態インジケータは、複数のI/O信号に関連付けられていてもよく、診断情報は、複数のI/O信号のうちのいずれかへの変化を示すものであってもよい。
【0020】
本方法は、複数のI/O信号のための診断信号履歴バッファを保守するステップを含み、診断信号履歴バッファは、複数のI/O信号のいずれかの変化の履歴表示を提供するようにさらに構成されている。
【0021】
診断信号履歴バッファは、複数のスロットを含んでもよく、各スロットは、複数のI/O信号のそれぞれのためのエントリを含み、スロットのそれぞれは、過去の異なる時点における複数のI/O信号の状態を表し、診断出力は、インデックスによって参照される診断信号履歴バッファのスロットに基づいていてもよく、インデックスは、所定の頻度で診断信号履歴バッファのスロットのうちの次のスロットを参照するように更新される。
【0022】
本方法は、スロットのうちの少なくとも1つに格納された複数のI/O信号に対する変化の表示を所定の頻度で減衰させるステップをさらに含んでもよい。スロットに格納された複数のI/O信号に対する変化の表示を減衰させるステップは、スロットに格納された値をリセットすることを含んでもよい。
【0023】
診断情報は複数のI/O信号のそれぞれに対してビットを含んでもよく、診断信号履歴バッファの各スロットは、複数のI/O信号のそれぞれに対してビットを含み、本方法は、複数のI/O信号のうちの少なくとも1つに対する変化を示す診断情報の生成に応じて、診断情報をスロットに格納された値と論理的に結合することによって各スロットに格納された値を更新するステップと、現在インデックスされているスロットの値をリセットするステップとをさらに含んでもよい。現在インデックスされているスロットは、インデックスを次のスロットへと更新する前又は後にリセットされてもよいことが理解されるであろう。スロットの数は、複数のI/O信号におけるI/O信号の数以上であってもよい。
【0024】
所定の頻度は、診断信号履歴バッファにおけるスロット数及び産業機械のヒューマンマシンインタフェースのリフレッシュ期間の合計に基づいていてもよい。
【0025】
変化を示す値を状態インジケータに割り当てるステップは、変化に関連付けられた時間を格納することをさらに含んでもよい。変化に関連付けられた時間を格納することは、変化時のグローバルタイマによって示される時刻を記録することをさらに含んでもよい。
【0026】
産業機械は、リベット機械、接着剤ディスペンシングマシン又はフロードリルシステムであってもよい。
【0027】
本明細書に記載される第3の実施例によれば、産業機械の故障を診断するシステムが提供される。システムは、コントローラと、コントローラに本発明の第1又は第2の態様による方法を実行させるように構成されてもよいコンピュータ可読命令を格納するメモリとをさらに備えてもよい。
【0028】
本明細書に記載される第4の実施例によれば、産業機械が提供される。産業機械は、上記及び本明細書の他の箇所に記載の実施例によるシステムを備えてもよい。
【0029】
特徴が例示的な一実施態様との関連で上述されている場合、適切であれば、そのような特徴は他の例示的実施態様に適用されてもよいことが理解されるであろう。実際、上記及び本明細書の他の箇所に記載の特徴のいずれかは、任意の操作的な組み合わせで組み合わせることができ、そのような組み合わせは、本開示において明示的に予見される。
【0030】
適切な範囲で、本明細書に記載される方法は、適切なコンピュータプログラムによって実施されてもよく、そのため、そのような制御方法をプロセッサに実行させるように構成されたプロセッサ可読命令を含むコンピュータプログラムが提供される。このようなコンピュータプログラムは、任意の適切なキャリア媒体(有形又は非有形のキャリア媒体であってもよい)に保持されてもよい。
【0031】
ここで添付の図面を参照して、単なる例として本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】
図2は、リベットシステムの概略側面図である。
【
図3】
図3は、リベットセットツール10、リベットテープ、及びリベットシステムにスプロケット供給を行うリベットテープリールを概略的に示す。
【
図4B】
図4Bは、テープカッターアセンブリ及びリベットセンサを備えたリベットセットツール供給サブアセンブリ300を概略的に示す。
【
図5】
図5は、リベットセットツールのスプロケット供給動作をモデル化した状態機械の概略図である。
【
図6】
図6は、産業機械の診断を行う処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、産業機械に関連付けられた複数の状態及び複数の状態のうちにそれぞれにおいて産業機械が動作する時間を記録するために使用されてもよい例示的データ構造の概略図である。
【
図8】
図8は、産業機械のオペレータに提供されてもよい改良された診断ディスプレイの概略図である。
【
図8A】
図8Aは、産業機械のオペレータに提供されてもよい改良された診断ディスプレイの概略図である。
【
図9】
図9は、
図2に示すリベットシステムのような産業機械の継続的な動作及び保守のための診断情報を生成し提供する診断システムの概略図である。
【
図10】
図10は、
図9の診断システムによって生成されてもよい改良された診断情報の図である。
【
図11】
図11は、診断情報生成のためにI/O信号履歴を保守するために実行されてもよい例示的処理を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、産業機械のオペレータに提供されてもよい診断出力の概略図である。
【
図13】
図13は、産業機械のオペレータに提供されてもよい診断出力の概略図である。
【
図14】
図14は、産業機械のオペレータに提供されてもよい診断出力の概略図である。
【
図15】
図15は、産業機械に関連付けられたI/O信号に対する複数の変化を記録するために使用されてもよい例示的なデータ構造の概略図である。
【
図16】
図16は、
図15に描かれたデータ構造の一部に格納されたデータが、本明細書に記載される技術の動作中にどのように変化し得るかを示す概略図である。
【
図17】
図17は、産業機械のオペレータに提供されてもよい診断出力の概略図である。
【
図18】
図18は、産業機械のオペレータに提供されてもよい診断出力の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照して、本明細書に記載される技術に関連して使用されてもよい例示的状態機械の例が示されている。一般に、状態機械は、「状態」と呼ばれる動作シーケンス内のいくつかのフェーズを含む論理構成である。状態機械は、必要な遷移条件(
図1のt1~t9)が真になったときにアクティブになり得るいくつかの追加状態(
図1のS1~S5)と一緒に、動作論理が開始されたときにアクティブになる初期状態(
図1のS0)を有する。遷移は、タイミング信号、入力信号及び出力信号からなる制御入力から構成される論理的条件であり、開発者によって優先順位がつけられ、任意に所与される動作条件のセットに対してシーケンスを最適な経路で通過しようとすることができる。状態機械は、直前の状態及び制御入力の現在値に応じて、設定された数の状態のうちのいずれか1つであり得る。動作中、状態機械は、遷移を定義する条件が満たされると、初期状態又は現在の状態から、指定された順序で1つ又は複数の異なる状態に遷移する。
【0034】
例示的な状態機械100は、S0~S5の値で表される6つの状態を含む。各遷移がソース(開始状態)及び宛先(終了状態)を有するように、各状態は遷移によってリンクされている。条件の評価が「真」と評価された場合(すなわち、条件が満たされた場合)、状態機械100は、ソース状態から遷移に関連付けられた宛先状態に遷移し、典型的には、他の遷移を評価して機械のシーケンスの優先順位をつけることを停止するように、状態は各遷移に関連付けられている。これは、例えば、各状態内にアクティブなより高い優先度の遷移が存在しないという条件を設定することによって、又はより高い優先度の遷移の条件が満たされると、より低い優先度の遷移を評価した論理をスキップすることによって実行できる。
【0035】
例示的な状態機械100では、これらの条件のうちのいずれか1つが実行されると状態機械100がS0から状態S1、S2又はS3のうちの1つに遷移するように、状態S0は、条件t1、t2及びt3によってそれぞれ状態S1、S2及びS3にリンクされている。典型的には、状態遷移は、2つ以上の遷移が同時にアクティブである場合、1つの遷移が優先されるように優先順位がつけられる。状態S1及びS2はそれぞれ条件t5及びt6によって状態S4にリンクされ、状態S1、S3及びS4はそれぞれ遷移条件t4、t7及びt8によって状態S5にリンクされる。状態S5は、遷移条件t9によってさらにデフォルト状態S0にリンクされる。
【0036】
状態遷移後、状態機械100は、状態の通常の論理が評価される前に、新たにアクティブになった状態に関連付けられたすべての開始動作[E]を処理する。次いで、状態機械100は、有効な遷移(t)条件がアクティブになるまで、状態に対して指定された任意の動作を実行して現在アクティブな状態で動作し続ける。これにより、シーケンスの次の状態、すなわち宛先状態に遷移する前に、現在の状態の任意の終了動作[X]が実行される。状態が非アクティブのとき、その状態に関連付けられたコード又は遷移論理は実行されない。
【0037】
状態内に開始動作E及び/又は終了動作Xを含めることにより、状態機械が辿る遷移経路にかかわらず、特定の動作のセットが状態の開始及び終了時に実行されてもよいことを保証し、これは、新たにアクティブになった状態によって使用されるデータを初期化するために有用であり、状態シーケンス内で遷移する前に未処理の操作を整理する。
【0038】
産業機械をモデル化する場合、状態機械の状態は、産業機械がその動作を実行するためにとるステップに対応する。ある状態から別の状態への遷移は、産業機械に提供される入力信号、時間、又はその両方の組み合わせに基づいて生じる。例えば、1つ又は複数の状態機械は、モーション及び供給論理の動作をモデル化し、システムが適切な入力信号に応じて所望の機能を実行することを保証するためにリベットシステムで使用されてもよい。
【0039】
産業機械からの出力は、現在アクティブな状態及びその状態で動作している論理に依存し、通常、出力は状態間の遷移時にのみ変化する。ある状況では、故障が発生した場合、状態機械への入力が正しくなく、したがって状態機械が正しく遷移することを妨げていることがある。これにより今度は、産業機械によって提供される出力信号が予想される値から外れるか、又は予想される時間内に(又はまったく)提供されない。
【0040】
状態機械はリベットシステムのような複雑な産業機械のモデル化を可能にし得るが、そのような状態機械は大きく複雑であるため、状態機械の使用者がその動作、ひいては産業機械の動作を理解することが困難になり得る。結果的に、複雑な状態機械によってモデル化された産業機械のエラー又は故障を特定することが困難であることが多い。そのため、リベットシステムのような、複雑な状態機械によって動作がモデル化された産業機械の故障を診断し、解決する方法及び装置が必要とされている。
【0041】
産業機械の動作をモデル化するために、
図1に示すような状態機械を使用することができる。一般に、状態機械を産業機械の動作をモデル化するために使用する場合、各状態に関連付けられた動作の実行時に生成される出力は予め分かっている。状態機械の現在アクティブな状態に関連付けられた動作の実行時に状態機械によって生成された出力が予想される出力と異なる場合、出力の生成に遅延がある場合、又は出力が生成されない場合、これは状態機械によって動作がモデル化されている産業機械の機能に故障があることを意味している。
【0042】
リベットシステムのような複雑な産業機械では、産業機械の動作をモデル化した状態機械は、例えば、約256以上の状態を含んでもよい。結果的に、オペレータがトラブルシューティングの目的で状態機械の動作を理解することは困難になり得る。そのような場合、オペレータが状態機械の現在アクティブな状態に基づいて産業機械の故障を診断し、解決することを可能にする情報にオペレータがアクセスできれば有用である。
【0043】
本明細書に記載される技術は、状態機械の現在アクティブな状態に関連付けられた情報に基づいて産業機械の動作をモデル化する状態機械を使用して産業機械の故障を診断し、解決する方法及び装置を提供する。例示的な構成は、リベットシステム及びリベットシステムによって実行されるスプロケット供給動作の例を用いて、
図2~
図8を参照してさらに詳細に説明する。
【0044】
図2において、C型フレーム200の下部アームに支持されたリベット据込みダイ12の上の、従来のC型フレーム200の上部アームに取り付けられたリベットセットアクチュエータ15を備えたリベットセットツール10が示されている。リベットは、当該技術分野で周知のように、ツール10によってダイ12の上に支持されたワークWに挿入される。C型フレーム200は、必要に応じてロボットによってワークWに対してツール10と共に近づいたり遠ざかったりに移動可能であるように、ロボットマニピュレータ(図示せず)に設置される。C型フレーム200のそばにある供給装置(図示せず)は、リベットRをバルク源から所定の制御可能な方法でセットツール10に供給するように設計されている。
【0045】
セットツール10は、油圧、空気圧又は電気駆動によってハウジングに対して並進駆動される往復プランジャを収容した円筒形ハウジングを備える。ハウジングは、接合部が形成されるワークWと接触するための環状表面を有する端部ノーズ部分14を有し、プランジャは、ノーズを通って延びる通路(
図3で最も良く見てとれる)を往復するパンチ(図示せず)で終端する。リベットをワークWに挿入するために、パンチがノーズ14を越えて延びる通路を下降し、ノーズ14内の通路の端部に供給されたリベットと接触するように、プランジャが駆動される。力の継続的な印加によって、リベットがワークWに挿入されるようにパンチを駆動してノーズ14に通す。
【0046】
リベットセットツール10のリベット供給システムの動作は、一般に、
図1に示す状態機械100のような状態機械によってモデル化することができる。
【0047】
図3は、リベットテープ300aと共にリベット供給装置ツール300(リベット挿入ツールとも呼んでもよい)の斜視図を示す。リベット供給装置300にはリベットテープ300aによってリベットが供給され、リベットテープ300aに沿ってリベット300bが配される。リベットテープ300aは、スプールキャリア300cのリールに巻かれ、リールからリベットセットツール300のノーズアセンブリ300d(すなわち、
図2のノーズ14に対応する)を通って供給される。ノーズアセンブリ300dは、典型的には、リベットセットツールの一方の端部に設けられ、パンチ(図示せず)を備える。パンチは、ノーズアセンブリ300dに対して移動し、パンチの位置に応じて、ノーズアセンブリは、静止位置又は後退位置にある。パンチがワークに向かって延びている場合、ノーズアセンブリは静止位置にあり、パンチがワークに向かって延びておらず、パンチとワークとの間にリベットが配置されるスペースを残す場合、ノーズアセンブリは後退位置にある。
【0048】
図4A及び
図4Bは、テープ供給リベットセットツールの供給経路を示す。
図4Aは、スプールキャリア300cに巻かれたテープ300aの断面を示し、リベット300bを載せたリベットテープはチューブ300eを通過する。リベットテープ300aは、チューブ300eを通ってリベットセットツール10へと供給される。リベットテープ300aは、スプロケット供給アクチュエータ300f(例えば、スプロケットホイールを有する空気圧モータ)によって、リベットセットツールの供給サブシステム300(図示せず)を通って引き込まれる。
図4Aに示すように、チューブ300eは、リベットテープの端部を感知するためのセンサ300gを任意選択で備えていてもよい。
図4Bにおいて、テープカッターアセンブリ300h及びリベットセンサ300iを備えたリベットセットツール10の供給サブシステムの斜視図が示される。
【0049】
供給モータ300fは、リベットがリベット受け部材(図示せず)に入るまでノーズアセンブリ300dを介してリベットテープ300aを引っ張り、リベットは
図4Bに示すセンサ300iによって検出される。その後、供給モータ300fは停止し、リベットセットツール10(図示せず)のアクチュエータ(図示せず)によってリベットがワーク内へと駆動される。その後、供給モータ300fは、例えば次のリベットを検出するまで、再び移動する。センサ300gはさらに、用途に応じて30~100個のリベットが残った状態でスプールが端部に達したことを検知するため、リベットセットツール10のオペレータは、部品のリベット締めを積極的に行っていないときに交換のスケジュールを決めることができる。テープ300aがノーズアセンブリ300dを通って供給されると、使用済みテープ300jは、固定システムの廃棄物受けへと巻き取られるか、又はテープカッターブレード(図示せず)を備えた
図4Bに示す空気圧式テープカッターアセンブリ300hによって管理可能な長さに切断される。ある種のリベットセットツールでは、空気圧スプール又は単純なスプールキャリアを有するスプリングスプール構成が、スプールキャリア300cを介してリベットを供給するために使用されてもよいことが理解されるであろう。
【0050】
図5は、リベットセットツール10のリベット供給動作を実行するテープ供給制御論理のモデル化に適した状態機械500の概略図を示す。まず、リベットセットツールのリベット供給動作が無効化されると、供給制御論理は非動作状態にあり、状態機械500はデフォルト状態の「供給オフ」(S0)にある。供給オフ状態S0に関連付けられた終了条件t1は、リベットセットツール10の供給動作が(例えば、任意の機械停止入力を除去し、供給制御論理を有効化することによって)有効化された場合に満たされる。t1が満たされると、状態機械500は、供給オフ状態S0から「準備完了」状態(S1)に遷移する。
【0051】
「準備完了」状態(S1)にある間、外部停止入力が検出されると、t2の条件がアクティブになり、システムは「供給オフ」状態(S0)に戻る。しかしながら、機械停止入力が非アクティブのままであり、リベット供給要求がアクティブではなく、テープ切断要求がアクティブである場合には、終了条件t4の条件が満たされ、システム500は「テープ切断」状態(S3)に遷移する。
【0052】
状態機械500のアクティブ状態が「テープ切断」状態(S3)であれば、テープ切断が開始され、テープカッターアセンブリ300hのテープカッターブレードにより使用済みリベットテープ300jが切断される。リベットテープ300jが切断されると、テープ切断状態(S3)に関連付けられた終了条件t9が満たされ、状態機械500は「切断戻り」状態(S7)に遷移する。
【0053】
「切断戻り」状態(S7)がアクティブになると、テープカッターブレードが引っ込められ、使用済みテープ300jの供給経路が空けられる。テープカッターブレードが引っ込められた後、リベットセットツール10の供給制御論理は、テープ切断要求信号がなくなるのを待ち、その時点で終了条件t15がアクティブになり、状態機械500は「準備完了」状態(S1)に遷移する。「テープ切断」状態(S3)又は「切断戻り」状態(S7)にある間は、システムはリベット供給要求に応答しないため、テープ切断プロセス中にスプロケットテープが動く可能性がなくなり、供給の信頼性が向上する。
【0054】
「準備完了」状態(S1)において、供給制御論理が「供給要求」又は「次の供給」コマンド信号を受信したときに停止条件又はテープ切断要求がアクティブでなければ、終了条件t3がアクティブになり、状態機械500は「供給アクティブ」状態(S2)に遷移する。「準備完了」状態(S1)から「供給アクティブ」状態(S2)への遷移において、供給プルカウンタは、終了動作を介してゼロにリセットされる。
【0055】
「供給アクティブ」状態(S2)になると、開始動作を介して供給プルカウンタは増分され、供給制御論理が「供給アクティブ」状態(S2)にある間、供給アクチュエータ300fが作動し、リベットテープ300aをノーズ300d内に引き込む。「供給アクティブ」状態(S2)に関連付けられた4つの終了条件がある。
【0056】
第1に、ノーズスイッチセンサ300iがツールの移動条件(静止時又は後退時)に応じて選択された所定の期間アクティブになるか、又は「次の供給」コマンドにより最大の供給プル回数が満たされた場合、終了条件t7がアクティブになり、状態機械500は「完了」状態(S6)に遷移する。例えば、供給制御論理は、ノーズスイッチセンサ300iがツールの移動に基づいて必要な持続時間(典型的には、静止時に0.125秒又は後退時に0.1秒)アクティブになる場合、「完了」状態(S6)に遷移してもよい。
【0057】
第2に、ノーズスイッチセンサ300iがアクティブになることなく、供給アクチュエータ300fが所定の時間アクティブであり、供給プルサイクル数が許容される最大値、例えば1秒間及び3プル未満である場合、終了条件t5が満たされ、供給制御論理500は「供給一時停止」状態(S4)に遷移する。
【0058】
第3に、ノーズスイッチセンサ300iがアクティブになることなく、供給アクチュエータ300fが所定の時間アクティブであり、供給プルサイクル数が最大値に、例えば1秒間及び3プルに達した場合、終了条件t6が満たされ、供給制御論理500は「供給故障」状態(S5)に遷移する。
【0059】
最後に、「供給要求」及び「次の供給」の両方のコマンド信号がなくなると、終了条件t8が満たされ、供給制御論理は「準備完了」状態(S1)に遷移し、進行中であり得る供給が中断される。
【0060】
状態機械500が「供給一時停止」状態(S4)にあるときには、供給アクチュエータが非アクティブになり、リベット供給(300f)を行うリベットセットツール10の部品は初期位置に戻る。状態機械500が「供給一時停止」状態(S4)にあるときに供給制御論理が無効化されると、終了条件t10が満たされ、状態機械500は「供給オフ」状態(S0)に遷移する。アクチュエータが所定の期間、例えば0.25秒間非アクティブであった場合、終了条件t11が満たされ、状態機械500は「供給アクティブ」状態(S2)に遷移する。
【0061】
状態機械500が「供給故障」状態(S5)に遷移すると、テープセンサ300gの端部の状態に応じて供給の問題に対応する故障コードが設定され、状態機械500は、故障確認信号入力を受信するまで「供給故障」状態(S5)のままであり、故障確認信号入力の受信時点で遷移t12が満たされ、「供給オフ」状態(S0)に遷移して戻る前に供給故障コードがゼロにリセットされる。
【0062】
供給システムの現在アクティブな状態が「完了」状態(S6)である場合、供給システムは、ノーズ300dに取り付けられたパンチの下にリベットを供給するか、又は「次の供給」コマンド中にタイムアウトしている。この状態では、システムは、終了条件t14を満たす「供給要求」コマンド及び「次の供給」コマンドがなくなるのを待ち、供給システムがまだ有効である場合、状態機械500が「準備完了」状態(S1)に戻るか、又は供給制御論理が無効である場合、終了条件t13が満たされ、状態機械500が「供給オフ」状態(S0)に戻る。
【0063】
図5から見てとれるように、状態機械500は、リベットプルが所定の限界値を超えるなど、故障の原因が予め分かっている場合に故障に対処し、その故障をオペレータに報知する準備が整っている。しかしながら、故障が発生する前だが、未知の問題によりリベットセットツールの性能が低下している場合、故障は産業機械が行う動作のいずれか1つに起因していることがあるため、オペレータが状態機を用いて産業機械の動作における故障を特定することが困難になる。このような状況では、故障を特定して産業機械を診断するためには、オペレータは、産業機械の動作をモデル化した状態機械におけるありとあらゆる遷移経路を通過することにより、産業機械の動作及び遷移経路の各状態に関連付けられた動作を理解しなければならない場合がある。
図2及び
図3に示すリベットセットツール10のような複雑な産業機械の場合、遷移経路は約数百あってもよく、オペレータが産業機械の動作を適切に診断することは困難である。
【0064】
ここで、
図6を参照して、
図5に示す産業機械の動作をモデル化した状態機械の現在及び以前のアクティブな状態に関連する情報に基づいて、
図3に示すリベットセットツールのような産業機械を診断する方法について説明する。
【0065】
図6において、産業機械の診断を実行する処理を示すフローチャートが示されている。ステップ600では、産業機械に関連付けられた第1の状態が特定される。特定された第1の状態は、産業機械の機能をモデル化した状態機械の現在アクティブな状態である。例えば、
図5に示す状態機械500を参照して、現在アクティブな状態が「供給アクティブ」状態S2である場合、状態S2は、リベットセットツールのような産業機械に関連付けられた第1の状態となる。産業機械に関連付けられた第1の状態が特定されると、処理はステップ600からステップ601に進み、ここでは、第1の状態に関連付けられた情報を得るためにさらなる処理が実行される。
【0066】
ステップ601では、第1の状態に基づいて、産業機械に関連付けられた1つ又は複数の第2の状態を特定するための処理が実行される。第2の状態は、状態機械が第1の状態に遷移する前の任意の時点でアクティブであった状態機械の状態である。すなわち、第2の状態とは、状態機械が第1の状態に到達するまでに遷移する状態である。例えば、
図5で説明した状態機械500を参照すると、「供給アクティブ」状態S2が現在アクティブな状態である場合、第2の状態は、「準備完了」状態S1に到達するために状態機械500が辿った遷移経路に応じて、「準備完了」状態S1又は「供給一時停止」状態S4のいずれかであってもよい。
【0067】
状態時間は、第2の状態それぞれに関連付けられている。第2の状態に関連付けられた状態時間は、状態機械が第2の状態に遷移した時点である。第2の状態に関連付けられた状態時間は、産業機械に関連付けられたタイマによって取得することができる。タイマは、産業機械のすべての動作を同期させるグローバルタイマであってもよい。すなわち、グローバルタイマは、産業機械の各態様に対する時間を測定し、システムの異なる部分の動作を時間的に比較できるようにするために使用されるタイマであってもよい。
【0068】
複数の第2の状態及び第2の状態それぞれに関連付けられた状態時間が特定された後、処理はステップ601からステップ602へと進む。ステップ602では、第2の状態のための状態時間閾値と、第2の状態に関連付けられた状態時間とを用いて、状態機械が第2の状態のいずれかで予期しない長さの時間を費やしたかどうかを判断する。第2の状態のための状態時間閾値は、産業機械がその第2の状態に関連付けられた動作のセットを実行するのに費やすと予想される時間を示す。したがって、少なくとも1つの第2の時間のうちの1つが、その第2の状態の予想される状態時間と異なる場合、これは故障、又は産業機械の性能が予想された性能よりも低いことを示すことができる。例えば、少なくとも1つの第2の時間が、その第2の状態の状態時間閾値を超える場合、これは故障、又は産業機械の性能が予想された性能よりも低いことを示すことができる。産業機械が第2の状態に費やす時間は、第2の状態に関連付けられた状態時間と、産業機械が遷移する次の状態に関連付けられた状態時間との間の期間として決定されてもよいことが理解されるであろう。
【0069】
図5に示す状態機械を考慮すると、リベットセットツール10の完全な供給プロセスは、準備完了状態S1を終えてから完了状態S6に入るまでの間のいくつかの状態遷移によって決定される。準備完了状態S1から供給アクティブ状態S2に入ったグローバル時間はtm1であり、完了状態S6に入ったグローバル時間はtm2であるとすると、供給プロセスがアクティブであった期間は、(tm2-tm1)であると決定できる。供給プロセスに関連付けられた時間閾値がth1であり、(tm2-tm1)がth1を超える場合、リベットセットツール10の供給制御論理は、リベット供給動作を実行するのに必要だと予め決定されたよりも長い時間を費やしており、したがってシステムが故障しているかもしれないと判断できる。その結果、
図5の状態機械に関連付けられたタイミングを分析して、リベットセットツール10の動作における故障を特定することができる。
【0070】
しかし、上述したように、状態の数及び産業機械が状態間を遷移する速度は、単に状態遷移が起こったときにこれを表示するだけでは、特定の故障をタイムリーに特定するのに十分ではない場合がある。この問題は、産業機械で使用するために典型的に設けられているインタフェースによって悪化する。例えば、コストが適切であることを保証するために、産業機械は、一般に、他のコンピューティングデバイスで使用されるディスプレイと比較して比較的遅いリフレッシュレートを有するディスプレイを備えている。
図6に記載された処理の一部として、第2の状態及び関連付けられた状態時間も格納されてもよい。任意選択で、第1の状態及び第1の状態に関連付けられた状態時間も格納されてもよい。いくつかの実施形態では、循環バッファは、産業機械の診断を可能にするように、状態時間及び複数の状態を格納する特に有益なメカニズムをもたらす。
【0071】
機械の動作を診断する際には、最新状態変化ポインタ701に対して対応する状態機械の構成に含まれる循環バッファ700(
図7)から、状態及び状態時間のシーケンスを抽出することができる。
【0072】
以下の表1~3は、「通常」供給、「低速」供給及び「故障」供給プロセス中に
図5の特定の状態に費やした時間を示す。上述したように、各状態遷移は、その状態がアクティブになった時間と共に記録される。したがって、特定の状態がアクティブであった期間は、次の状態に入った時間からその状態に入った時間を差し引くことによって計算できる。最新の状態開始時間を現在のグローバルタイマ値から差し引くことによって、現在の状態がどれくらいの時間アクティブであるかを決定することができる。
【表1】
【表2】
【表3】
【0073】
通常供給では準備完了状態S1からアクティブ状態S2への遷移を伴うことが表1で見てとれる。システムは、完了状態S6に遷移する前に、アクティブ状態S2に0.4秒間費やした。対照的に、低速供給(表2)ではアクティブ状態S2に最初に遷移し、その後、一時停止状態S4への遷移が行われ、アクティブ状態S2への2回目の遷移が行われた後、完了状態S6へ遷移した。低速供給の例の間、アクティブ状態に費やす合計時間は1.6秒であった。最後に、故障供給の例(表3)では、システムは、供給プルを完了することなく、それぞれ1秒ずつ、合計3回アクティブ状態S2に入り、最終的に故障状態S5に遷移した。
【0074】
図7を参照すると、改良された診断を必要とする各状態機械のために、以下の情報を含んでもよいデータ構造が格納されてもよい。
【0075】
ステップ - この値は現在の状態を表す。
【0076】
次 - この値は、ある状態から別の状態への遷移を要求するために状態機械ハンドラ関数を呼び出す前に設定される。これにより、タイマのリセットだけでなくステップ、シーケンス及び最後の変数の更新が行われ、新しい状態及びグローバル遷移時間が履歴バッファに格納され、履歴ポインタが更新される。この値は、遷移条件(状態機械500における遷移t1~t15など)が発生する度に制御論理に基づいた値が割り当てられ、状態機械をその動作の次の状態に進める。
【0077】
強制 - 以下に説明するように、本明細書に記載される技術は、オペレータが状態機械を所望の状態に手動でリセットすることを可能にし得る。強制値は、「非アクティブ」に設定されていない場合、状態機械ハンドラ関数が呼び出されたときに次値を上書きし、強制的に状態遷移を行い、その後、この強制的な状態遷移が状態履歴バッファに格納された状態で、再び非アクティブにされる。
【0078】
最後 - 状態が変化する前に、現在の状態の値が将来の参照を容易にするために格納されるが、その理由は、ある状態における、遷移前の状態に基づいた動作を決定するのに有用であることが多いからである。
【0079】
タイマ - この値は現在の状態がアクティブである時間を表し、状態機械ハンドラ論理が実行される度に増分される。この値は、状態遷移までの最小時間を確保するか、又は故障などの事象に基づく時間をトリガするために使用されてよい。
【0080】
シーケンス - 状態の値が変化する度に、この32ビット値の最下位8ビットにシフトされ、32ビット値内の他のデータも同様にシフトされる。このように、この単一の変数は、アクティブであった現在及び過去の3つの状態を保存する。これは、ユーザインタフェースディスプレイに過去の状態を表示するのに特に有益である。
【0081】
最新-監視される状態機械はそれぞれ、2つの循環バッファ(
図7の内側及び真ん中のリングにより描かれる)を有し、これらの循環バッファは状態番号と、複数の状態遷移に対して状態に入った時間とを含む。最新の値は、最新の状態遷移を格納するこれらのアレイへのポインタであり、分析のために必要に応じて履歴データをさかのぼって追跡するために使用される。
【0082】
描写されている状態[]及び時間[]値は、
図7に概略的に描写されているように、現在及び過去の状態及び関連付けられた時間のための循環バッファを提供する。概念的にも機能的にも、状態及び状態時間の履歴バッファは循環バッファによって提供されているが、アレイのような任意の適切な基礎となるデータ構造が使用されてもよいことが理解されるであろう。
【0083】
図7の循環バッファ700は、状態及び関連付けられた状態時間のそれぞれに対して32個のセグメントを含む。しかし、循環バッファは、任意の数のセグメントを含んでもよいことが理解されるであろう。循環バッファの対応するセグメントの各対は、状態番号及び関連する状態エントリ時間を格納することができる。循環バッファ700は、循環バッファ700のセグメントのメモリ位置を指すポインタ701を含む。最初、産業機械が動作していないとき、ポインタ701はセグメント0を指す。産業機械がその動作を開始すると、産業機械の動作をモデル化した状態機械は、上述したように産業機械によって実行される遷移又は終了条件に応じて、デフォルト状態から別の状態に遷移する。その後、ポインタ701は、循環バッファ700の次の格納セグメントを指すように増分され、状態の番号及びその状態に関連付けられた状態時間は、ポインタ701が指す循環バッファ700のセグメントに書き込まれる。
【0084】
上記履歴構造の代替策は、現在の状態番号及び状態遷移が起こったときに状態がアクティブになっていた時間を履歴バッファに格納することである。これは、例えば、グローバルタイマが利用できないシステム、又は個々の状態のアクティブな時間をより単純に扱うことが好ましいシステムに使用されてもよい。どちらの方法も同様の情報を提供するが、グローバルタイマが使用されていない場合、複数の状態機械又は他の診断機能間でのデータの同期化はそれほど容易ではないことがある。
【0085】
図5に示す状態機械500を考慮すると、状態機械500がある状態から別の状態に遷移するとき、ポインタ701は増分され、新たな状態番号及びグローバルシステムタイマの値が、ポインタ701が指すセグメントエントリに書き込まれる。
【0086】
その後、
図6のステップ601において、第2の状態及び関連付けられた状態時間の決定は、ポインタ701の値を単純に減分し、ポインタ701の値がゼロよりも小さくなる場合には折り返すことによって実行されてもよい。加えて、第2の状態及び状態時間は、オペレータが時間閾値を超えた第2の状態を特定できるようにオペレータに表示されてもよい。
【0087】
図8は、
図6を参照して上述した処理が実行された後にオペレータに提供されてもよい例示的な診断ディスプレイ800を示す。ディスプレイ800は、状態機械500の複数の状態間の関連付けを描写する簡略化された論理フロー
図800aを含む。現在アクティブな状態は、色の変化又は他の方法を介して論理フロー
図800a内で視覚的に強調表示されてもよいが、初期状態は、状態S0の周囲の二重の四角によって描写される。
【0088】
ディスプレイ800の部分800bには、現在アクティブな状態、典型的には現在の状態と同じになるであろう現在アクティブな状態の後に要求される(「次」)状態、現在アクティブな状態の前の状態、及び現在アクティブな状態に関連付けられた状態時間が表示される。状態機械500の現在アクティブな状態が状態S4である場合、部分800bは、状態遷移がアクティブであったか否かに応じて、「ステップ」が「S4」、「次」が「S4」、「S2」又は「S0」とし、「最後」が「S2」、「タイマ」が状態S4の状態時間である値を表示する。ディスプレイ800の部分800cには、現在アクティブな状態に到達するために状態機械が辿る遷移経路が表示される。例えば、状態機械500の現在アクティブな状態が状態S4である場合、部分800cに表示される遷移経路は、S0(古い)、S1、S2、S4(新しい)であってもよい。
【0089】
したがって、ディスプレイ800は、産業機械の内部状態及び内部状態に関連する技術的状態若しくは事象に関する情報をオペレータに提供する。状態機械の内部状態のいかなる変化も自動的に検出され、オペレータに提示されて、オペレータにシステムの故障の特定及び解決など、システムとの対話を促す。
【0090】
例えば、ディスプレイ800は、現在アクティブな状態に到達するために状態機械が辿る遷移経路及び遷移経路の各状態に関連付けられた状態時間と一緒に、産業機械の動作をモデル化した状態機械の現在アクティブな状態に関する情報をオペレータに提供する。ディスプレイ800で使用することにより、オペレータは、産業機械が予想よりも長い時間作動した状態機械の遷移経路における状態を特定できる。このように、オペレータは、状態に関連付けられた動作を分析することによって、産業機械の故障を診断できる。
【0091】
加えて、産業機械が特定の状態でデッドロックされている場合、ディスプレイ800は、オペレータに産業機械を異なる状態に強制的に遷移させることも可能である。例えば、ディスプレイ800のセクション800bの「次」エントリは、システム内のデッドロックをなくすか、又は特定の状態に関連付けられた動作をトリガするために、状態ジャンプを強制的に行うように変更されてもよい。すなわち、例えば、システムが「供給一時停止」状態S4でデッドロックされている場合、オペレータは、状態機械を状態S2又は状態S0に遷移させるように強制することができる。場合によっては、オペレータは、状態機械800aの論理フロー図に基づいて、産業機械をどの状態に強制的に遷移させるかを決定できる。
図8では、オペレータが強制状態構造変数を設定することによって状態ジャンプ又は遷移を強制することを可能にするのは、セクション800bの「次」エントリであるが、この機能は、別のユーザインタフェース要素(例えば、
図8に描かれる別のユーザインタフェース、又は
図8に描かれていないユーザインタフェース)によって提供されてもよいことが理解されるであろう。したがって、ディスプレイ800は、産業機械の機能における故障の特定及び解決の両方において、オペレータを支援する。
【0092】
状態遷移のさらなる視覚化が提供されてもよい。状態遷移が、
図8Aに示す表示1202を提供するように処理され、x軸線が時間を表し、y軸線がアクティブなステップ番号を表す場合、エラーの決定は容易になり得る。産業機械で使用するために提供されるインタフェースの種類では、表示1202の2点間の時間を容易に求めることができないことがある。これに関して、それぞれがディスプレイ1202に沿ってオペレータによって移動可能な、論理アナライザスタイルのカーソル機能1204a及び1204bが提供されてもよい。システムは、カーソル1204a、1204bによって示される期間を自動的に計算して出力してもよく、これにより、オペレータは、状態機械が特定の状態に費やした時間をより容易に求めることができる。
【0093】
図9は、状態機械の機能をさらに詳細に実行、閲覧及び診断するのに適したコンピュータ900を示す。コンピュータ900は、診断システムと考えられてもよい。コンピュータ900は、ランダムアクセスメモリの形態をとる揮発性メモリ900bに格納された命令を読み出して実行するように構成されたCPU900aを備えていることが見てとれる。揮発性メモリ900bは、CPU900aによって実行される命令と、それらの命令によって使用されるデータとを格納する。
【0094】
コンピュータ900は、例えばハードディスクドライブ又はソリッドステートドライブ900cの形態の不揮発性ストレージをさらに備える。コンピュータ900は、コンピュータ900に関連して使用される周辺装置が接続されたI/Oインタフェース900dをさらに備える。より詳細には、ディスプレイ900eは、状態機械のグラフ表示又はコンピュータ900からの任意の出力を表示するように構成される。入力デバイスもI/Oインタフェース900dに接続されている。そのような入力デバイスは、キーボード900f及びマウス900g、又はディスプレイ900eに取り付けられたタッチスクリーンを含んでもよく、これらは、オペレータのコンピュータ900との対話を可能にする。入力デバイス(900f、900g及び900e)は、オペレータがシステム100と対話することを可能にする。加えて、I/Oインタフェース900dは、産業機械の1つ又は複数のセンサに接続されてもよい。例えば、産業機械がリベットシステムである場合、I/Oインタフェース900dは、テープ位置センサ、リベット存在センサ(センサ300iなど)などに接続されてもよい。
【0095】
ネットワークインタフェース900hにより、他のコンピューティングデバイスとの間でデータを受信及び送信するためにコンピュータ900を適切なコンピュータネットワークに接続することが可能になる。CPU900a、揮発性メモリ900b、固定記憶装置(ディスク/フラッシュ)900c、I/Oインタフェース900d及びネットワークインタフェース900hは、バス900iによって互いに接続されている。
【0096】
図9に示すコンポーネントの配置は例示的なものであり、本明細書に記載される技術の文脈内で他の配置が使用されてもよいことが理解されるであろう。
【0097】
産業機械を制御する状態機械のシーケンスの重要な部分は、システムのセンサ及びアクチュエータに関連付けられたI/O信号の状態に影響される。産業機械を診断する方法は、状態機械に関連付けられた動作に関して記載されているが、本明細書に記載される技術は、状態機械に関連付けられた動作、産業機械に関連付けられたI/O信号、又は実際にはその両方に基づいて状態機械を診断するために使用できることが理解されるであろう。
【0098】
しかし、受信するI/O信号の数が多くなり得、各I/O信号がほんの短い持続時間だけ持続することがある。上述のように、典型的には産業機械で使用するために提供されるインタフェースは、他のコンピューティングデバイスで使用されるディスプレイと比較して比較的遅いリフレッシュレートを有することが多く、信号の持続時間が短すぎてディスプレイで認識できないことがある。したがって、既存のインタフェースで動作し、高価なインタフェースハードウェアとの交換を必要としない診断ツール及び方法を提供することが望ましい。
【0099】
標準的な診断ツールの問題の例として、産業機械のセンサが、対象とする状態を検出するときに、10ミリ秒間だけI/O信号(例えば、ハイ信号)を提供し、産業機械が100ミリ秒の画面更新速度のディスプレイ(ディスプレイ900eなど)を備える場合、平均して、そのセンサからの10のうちの1つのI/O信号だけ、ひいては検出するには短すぎるかもしれない短い持続時間(100ミリ秒)の間だけ表示され得る。そのため、オペレータは、故障の事前警告を提供でき、故障が発生したか又は重大になる前にオペレータが改善策を講じることを可能にできる信号を見逃すことがある。本明細書に記載されるいくつかの例示的実施態様では、診断システムは、センサによって現在提供される信号に加えて、センサの状態履歴を監視するように構成されてもよい。診断システムは、オペレータが、短い持続時間の故障を表し得る事象を処理するのに十分な時間を与え、産業機械の継続的で誘導的な動作及び保守を支援するために使用されてもよい診断出力を提供するように構成されてもよい。
【0100】
図10は、標準的な方法に従って産業機械のセンサ又はアクチュエータ(図示せず)からのI/O信号に対する診断システム(システム900など)による診断情報の生成、及び本明細書に記載される技術に従って同じI/O信号に対する改善された診断情報の生成の例を概略的に示す。
図10において、時間は、ページの左から右に描かれている。ディスプレイ(例えばディスプレイ900e)のリフレッシュは、矢印1002によって示されており、各矢印1002a~1002gは、ディスプレイのそれぞれのリフレッシュを示す。リフレッシュ動作の下に示されているのは、産業機械のセンサから受信したI/O信号1004である。I/O信号1004の下には、リフレッシュ時の信号の現在の状態を表示する公知の方法によって提供される標準的な診断出力1006が示されている。診断出力1006の下には、本明細書に記載される技術に従って生成された改良された診断出力1008が示されており、改良された診断出力1008の下には、状態事象1010a~1010fの変化があり、これらは、後の分析及び表示のために変化が生じた時間t
a~t
fと共に、任意選択で履歴データアレイに記録されてもよい。
【0101】
図10に描かれている期間内では、信号1004は、信号がハイである間の3つの期間1004a~cを含む。例えば、信号は、産業機械の監視される場所での消耗部品(例えば、リベット)の存在を示してもよい。信号1004はバイナリであるように図示されているが、診断情報が生成される信号は、他の任意の形態を取ってもよく、例えば、連続的、段階的などであってもよいことが理解されるであろう。
【0102】
第1のハイ信号期間1004aは、リフレッシュ1002aの後だがリフレッシュ1002bの前に生じる。診断情報1006は、最後のディスプレイリフレッシュ動作時の信号1004の性質をオペレータに示す。リフレッシュ動作1002a及び1002b時には、信号1004はローであるため、リフレッシュ動作1002bに続いて、診断情報1006はロー信号の存在を示す。そのため、ハイ信号1004aに関連して診断情報1006によってオペレータに有用な診断が提供されないことが見てとれる。監視される潜在的に多数のセンサ及び信号が受信される速度を考えると、ハイ信号1004aが産業機械の故障を予見していた場合、診断情報1006は、その故障を特定又は診断するにあたってオペレータを支援しないことが理解されるであろう。
【0103】
第2のハイ信号期間1004bは、リフレッシュ1002cの時間と重なる。そのため、診断情報1006aがオペレータに提供されて、ハイ信号1004bを示す。診断情報1006aは次のリフレッシュ1002dまで持続し、その時点で信号1004はローであるため、診断情報1006が信号1004がローであることを示すことに戻る。最後のハイ信号1004cは、リフレッシュ1002dの後に受信されるが、リフレッシュ1002eの前に終了する。そのため、単一の高出力1006aが両方の事象をカバーするため、診断情報1006はハイ信号1004cに関する情報を提供しない。
【0104】
改良された診断信号1008を生成するために、診断システムは、信号1004の状態変化情報を所定の持続時間維持するように構成されている。信号の状態変化(
図10のひし形により表される)時、状態インジケータは、状態の変化を反映するように更新される。状態インジケータは、診断システム900のメモリ900bに格納されてもよい。
【0105】
状態変化の更新は、改良された診断信号1008に含まれる状態変化の表示を可能にするのに十分な所定の期間、典型的には、2回のリフレッシュ期間に相当するように示されている1~2秒程度、又は
図10では200ms持続する。状態インジケータは、任意の適切な形態をとってもよいが、
図10に示す信号1004のようなバイナリ信号の場合、状態インジケータは、便利で効率的に、標準的な診断ビットに追加される単一ビットの形態をとり得ることが理解されるであろう。表示が持続する時間の長さは、I/Oデバイスから受信する信号の性質、さらにはディスプレイデバイスのリフレッシュレートにも依存することがさらに理解されるであろう。
【0106】
一例として、
図10及び
図11を参照して、改良された診断信号は、第1の部分1008a及び第2の部分1008bを含む。診断信号の第1の部分1008aは、I/O信号の状態インジケータの現在値(又は最後のリフレッシュポイントでの値)を示し、標準診断1006と同様にサンプリングすることができるが、第2の部分1008bは、ディスプレイリフレッシュ動作に先行する期間中に信号1004が変化したかどうかを示し、標準診断状態1008aと一緒にサンプリングされる。
図11を参照すると、状態インジケータを保守するために診断システムによって実行される処理が示されている。処理は2つの部分を有し、それぞれがI/Oデバイスの状態インジケータを更新するために実質的に同時に動作することが見てとれる。ステップ1102では、診断システムは状態変化が発生したかどうかを判断する。
図11では判断として描かれているが、判断のメカニズムは、能動的(例えば「プル」)又は受動的(例えば「プッシュ」)のいずれであってもよいことが理解されるであろう。ステップ1102の処理は、I/Oデバイスからの信号が変化したと判断されるまで実行され、その時点で処理はステップ1104に進み、状態インジケータは変化を反映するように更新される。処理は、ステップ1104から、I/O信号の変化を監視し続けるステップ1102に戻る。同時に、ステップ1106の処理は、(ステップ1104で記録された最後の時刻に基づいて)状態インジケータが最後に更新されてから所定の期間が経過したかどうかを判断する。判断が否定的である間、処理はステップ1106に留まる。状態インジケータが最後に更新されてから所定の時間が経過したと判断されると、処理はステップ1108に進み、ここで状態インジケータはデフォルト状態にリセットされる。
【0107】
次に、
図10を参照しながら、
図11の処理を例として説明する。第1のハイ信号1004aに先立って、状態インジケータはデフォルト状態にあり、この場合、信号1004がローであることを示す。これは、改良された診断信号1008がローであることを示すことによって、
図10に描かれている。ハイ信号1004aが出ると、ステップ1102で信号が変化したと判断され、処理はステップ1104に進み、ここでハイ信号の受信を示すように状態インジケータが更新され、更新時刻が記録される。処理はステップ1104からステップ1102に戻る。
【0108】
本実施例の目的のために、ハイ信号1004aの受信とハイ信号1004bの受信との間に、ステップ1106の処理は、処理がステップ1106に留まっているように所定の期間が経過していないと判断することが想定される。そのため、リフレッシュ動作1002b時には、所定の期間はまだ経過していないため、状態インジケータがハイ信号を受信したことを依然として示す。改良された診断信号は状態インジケータの状態を示すように構成されているため、リフレッシュ動作1002bにおいて、改良された診断信号1008の部分1008aが更新されてハイ信号を示す。描写及び診断信号1006aとの区別を明確にするために、部分1008aは、(塗りつぶされたブロックではなく)単一の線として示されているが、
図10は、単なる概略図であり、改良された診断の情報内容を表示する特定の方法ではなく、その情報を描写していると理解されるべきである。診断信号1006と同様に、改良された診断信号1008は、I/O信号1004の電流値を示す部分1008bをさらに含む。そのため、I/O信号1004のハイ信号は終了したが、オペレータは、信号1004aは受信したが、ディスプレイの直近のリフレッシュの前に通過したと依然として判断することができる。
【0109】
上述したように、第2のハイ信号1004bは、改良された診断信号の第2の部分1008bが更新されて、I/O信号1004の現在の状態(リフレッシュ時)を反映するように、リフレッシュ動作1002cと一時的に一致する。加えて、処理1102は、信号1004bが受信されたと判断し、ステップ1104では、状態インジケータが更新され(この場合は保守され)、更新時刻が記録される。
【0110】
本実施例の目的のために、ハイ信号1004bの受信とハイ信号1004cの受信との間に、ステップ1106の処理では、処理がステップ1106に留まっているように所定の期間が経過していないと判断することが想定される。そのため、次のリフレッシュ1002dでは、改良された診断信号は、依然としてハイ信号を受信したことを示しているが、ここではでは、リフレッシュ1002d時にI/O信号がローであったことを示している。
【0111】
本実施例の目的のために、ハイ信号1004cの受信とリフレッシュ1002eとの間に、ステップ1106の処理は、処理がステップ1106からステップ1108に進み、状態インジケータがデフォルト状態にリセットされるように、所定の期間が経過したと判断することが想定される。そのため、リフレッシュ1002eにおいて、両方の部分1008a、1008bが低値を示すように改良された診断信号1008が更新される。
【0112】
所定の期間の状態変化の表示を記録することにより、診断信号をオペレータに提供することができ、それにより、オペレータは、産業機械内のI/O信号の現在及び過去の状態をより正確に診断することができ、したがって、産業機械内の故障又は故障の可能性をより正確に、タイムリーに診断することができることは、上記から理解されるであろう。
【0113】
図12は、改良された診断信号1008が産業機械のオペレータに表示され得る方法の一例を示す。
図12は、
図10に示されているのと同じI/O信号1004及びリフレッシュ動作1002を示すが、それらの信号が、グラフィカルヒューマンマシンインタフェース(HMI)において標準診断インジケータランプ1014及び改良された診断インジケータランプ1016に表示され得る方法を示す。特に、標準診断インジケータランプは、「オフ」1014a又は「オン」1014bの2つのモードのうちの1つで動作することが見てとれる。したがって、標準診断インジケータランプは、診断信号1006によって提供される情報を表すことができる。しかし、対照的に、I/O信号1004がローであり、過去の所定の期間内にハイ信号を受信していないことを示す「静的オフ」モード1016aと、I/O信号1004がローであるが、過去の所定の期間内に状態の変化がアクティブであったことを示す「変化ありオフ」モード1016bと、最後のリフレッシュ時に信号がハイであり、過去の所定の期間中に信号の変化が生じたことを示す「変化ありオン」モード1016cと、最後のリフレッシュ時にI/O信号1004がハイであり、過去の所定の期間中に変化していないことを示す「静的オン」モード1016dとの4つの動作モードを有する改良された診断インジケータが提供されてもよい。
図12の例では、「変化あり」の状態は、インジケータランプを取り囲む太い外側のリングによって示されるが、追加の診断情報を表示する任意の手段が使用されてもよく、最後のリフレッシュに対するオン/オフ状態がインジケータランプの内側の色を介して示されていることが理解されるであろう。
【0114】
実際のI/O信号1004は、状態変化診断データから再構築され、再構築されたI/O信号1012としてユーザインタフェースに提供されてもよい。特に、診断履歴を使用して、信号の状態を表す複数の線を描くことによって、信号の変化を表示してもよい。線の水平座標は、表示開始時刻(t
start)及び表示終了時刻(t
end)と比較して信号が変化した時間の相対位置に対応し、垂直座標は、その期間中の信号の状態に依存する。例えば、
図10に示す再構築されたI/O信号1012を表示するために、各期間の開始時の信号の状態によって定義される位置を有する様々な時間値(t
start、t
1~t
6、t
end)の間に7本の横線と、t
a~t
fにおける状態の変化を表す6本の縦線とを含む13本の線が描かれていてもよい。この表示は、市販のプログラマブルHMIの能力の範囲外ではない。
【0115】
ランプ1016は、例えば、1つ若しくは複数の電球(LEDなど)によって提供されてもよく、又はLCDディスプレイデバイスなどのディスプレイデバイス上で生成されたユーザインタフェースの一部であってもよい。同様に、上記はシステム900を参照して説明したが、
図11を参照して説明される処理は、1つ又は複数のFPGA又はASICによる方法を含む任意の便利な方法で実施されてもよいことが理解されるであろう。
【0116】
多数のI/O信号を監視するときにシステムに課される処理負荷を最小限にするために、いくつかの実施態様では、
図14(4ビット値の例)に示すように、データは信号ごとに検査されるのではなく、信号のグループに対して並行して検査される。いくつかの用途では、I/O信号は、8ビット、16ビット、32ビット又はそれ以上の値に結合され得、(個々の信号の変化ではなく)これらの結合された値の変化は、タイムスタンプと一緒に履歴アレイに格納される。一般に、監視するビット数が多くなればなるほど、必要とされる履歴アレイは大きくなる。多くの用途では、32個の信号の変化を記録するには128エレメントのアレイで十分であろう。
【0117】
診断データの高速かつ効率的な検索及び使用を可能にするために、
図15に示すように、結合されたI/O信号値は、履歴リングバッファに格納されてもよい。I/O信号変化バッファの動作は、状態機械データに関連して
図7を参照して説明したのと同様の方法であってもよい。I/O信号変化バッファは、I/O信号データ(又は上述のように結合されたI/O信号)のエントリ及びそれらの変化の時刻を格納してもよい。I/O信号変化の時刻は、I/O信号の値(又は結合されたI/O信号の値)が以前の値から変化する度に、状態機械バッファ700と同じグローバルタイマを用いて記録されてもよい。
【0118】
リアルタイムで見ることができる診断信号の表示を可能にするために必要な計算量を最小限にするために、診断出力信号は診断履歴バッファ内に格納されてもよい。例えば、診断履歴バッファは、さらなる先入れ先出しデータ構造(診断FIFO)を含んでもよい。診断FIFOは、I/O信号変化バッファの更新と並行して更新されてもよい。診断FIFOへのポインタは、現在の診断出力(すなわち、診断FIFOの現在の「スロット」が出力されている)を決定し、ポインタは、所定の「診断ティック」期間の後に増分される(また、各スロットを通って増分された後に折り返す)。診断ティックは、診断HMI表示期間又はリフレッシュ期間(一般には、例えば2秒)及び診断FIFOのスロット数に基づいて決定されてもよい。例えば、診断ティックは、診断表示期間及びスロット数の合計であってもよく、例えば、2秒の診断更新及び4つのFIFOスロットであれば、各スロットは0.5秒間表示される。
【0119】
図14に示す例を再度参照すると、4つのI/O信号(信号1~信号4)のサブセットは、各I/O信号のそれぞれのビットを有する単一の診断値に結合される(
図16を参照して以下に最も明確に描かれ、説明される)。指定された期間内のこの単一の診断値の変化を使用して、診断FIFOバッファに含まれるデータ、したがって、オペレータに出力される診断信号が変更される。特に、現在及び以前のI/O値のバイナリXOR結果によって検出されるように、単一の診断信号が変化するとき(例えば、
図14に示すように)、この値が非ゼロであれば、診断FIFOの各スロットに論理的にORされる。これにより、監視されるI/O信号のうちの1つへのいかなる変化も、それがどれだけ高速で生じたかにかかわらず、たとえリフレッシュの遅いヒューマンマシンインタフェースであっても、最低3つの期間の間表示できることが保証される。診断ティックごとに(すなわち、所定の頻度で)、現在のスロットに格納されたデータは減衰され(例えば、現在のスロットがゼロになってもよい)、診断FIFOへのポインタが増分され、現在表示されている診断が新たにインデックスされたスロットに設定される。これにより、単一の状態変化がより長い期間(最大4つの診断ティック)表示されることが保証される。
【0120】
この方法を使用して、(特に、診断値が、新しい履歴値(及び関連付けられた時間)をI/O変化バッファに格納する必要があるかどうかを判断するために以前に生成されたものであれば)システムに比較的軽い負荷を課しながら、4スロットの診断FIFOアレイ、ポインタ変数及び単一のタイマを使用して、32(又はそれ以上)の信号の診断表示を実行できる。
【0121】
図16は、図の左側の垂直タイムラインによって示される期間、4つの信号(信号#0~#3)のセットについての診断FIFO内に格納された診断信号の変化の例を示す。
図16を参照すると、最初の期間(1)では、監視されるI/O信号に変化が生じておらず、診断FIFOの各スロット内の値は「0000」であることが見てとれる。現在インデックスされているスロットはスロット0である。時刻(2)では、信号#2の変化により、結合されたI/O信号値の中の信号#2に対応するビットがハイに設定される。新たに設定されたビット値は、診断FIFOの全スロットにORされる。したがって、ここでの診断出力は「0100」である。時刻(3)にて診断ティックが発生し、現在インデックスされているスロットがゼロになり、ポインタがスロット1に更新される。診断出力は「0100」のままである。
【0122】
時刻(4)にてさらに診断ティックが発生し、スロット1がゼロになり、ポインタはスロット2に増分される。診断出力は「0100」のままである。時刻(5)では、I/O信号#1の変化により、I/O信号#1に対応するビットがハイに設定され、新たに設定されたビットが診断FIFOの全スロットにORされる。したがって、スロット0及びスロット1は値「0010」を取り、スロット2及び3は値「0110」を有する。したがって、診断出力は「0110」である。時刻(6)では、I/O信号#3の変化により、I/O信号#3に対応するビットがハイに設定され、新たに設定されたビットがFIFOの各スロットにORされる。したがって、スロット0及び1は「1010」を格納し、スロット2及び3は「1110」を格納する。したがって、診断出力は「1110」である。
【0123】
時刻(7)では、診断ティックは現在インデックスされているスロット2をゼロにし、ポインタをスロット3へと増分する。したがって、診断出力は「1110」のままである。時刻(8)では、診断ティックはスロット3をゼロにし、ポインタはスロット0へと折り返す。したがって、ここでの診断出力は「1010」である。時刻(9)では、さらなる診断ティックはスロット0をゼロにし、ポインタをスロット1へと増分するため、診断出力は「1010」のままである。時刻10では、診断ティックはスロット1をゼロにし、ポインタをスロット2へと増分する。ここで、診断出力(及び実際には診断FIFOのスロットすべての値)は「0000」である。
【0124】
各種状態機械及び診断されるシステム内I/Oについて格納される履歴変化データを用いて、機械の動作を監視し、システムが最適な性能で稼働しているときに抽出したデータと比較して、プロセス内でのばらつきが発生している箇所を判断できる。
【0125】
図13を参照すると、上述したスプロケット供給状態機械500は、供給ソレノイド出力信号及びノーズスイッチ入力信号と共に表示される。
図13のディスプレイは、スプロケット供給状態機械、供給ソレノイド出力信号及びノーズスイッチ入力信号のそれぞれの履歴に格納された各種状態変化事象から生成される。それぞれがグローバルタイム基準値で格納されているため、システム内の様々なソースからの信号は、利用可能なデータ量に応じて任意の2つの時間インデックスの間に表示されてもよい。例えば
図13では、人間の目及び脳は、このタイプのデータ表示におけるパターンを拾い出すことに特に適応しているため、通常供給プロセス、低速供給プロセス又は故障した供給プロセスによって生じるデータ内のばらつきを見ることが可能である。いくつかの実施態様では、可動カーソル線1204a及び1204bは、システム内の異なる動作間の時間間隔を選択して表示するために、出力に重ねられている。カーソルは、ユーザインタラクションをより効率的にするために、状態又はI/O信号が変化した時刻に自動的にスナップしてもよい。
【0126】
いくつかの構成例では、故障条件の発生は、故障条件が発生する度に、対応するタイムスタンプと共に関連するすべての状態機械及びI/O信号データの履歴の内容のコピーの生成を自動的にトリガしてもよい。このようにして、故障が発生する直前のシステムの最大状態量を分析のためにキャプチャできる。
図13を再び参照すると、描写されたディスプレイのためのデータは、単一のソースから得られたものであってもよいが、システム内のすべてのデータは、同期された時間値を使用してタイムスタンプされているため、任意の監視された信号又は状態の変化をシステム内の任意の他の監視された信号又は状態を参照して視覚的に検査する方法を示すことが可能であろう。
図17に示す例では、I/O履歴の変化は、産業システムの複数の異なる部分の状態機械履歴と一緒に共通のディスプレイで見ることができることが見てとれる。また、制御されるシステム、この場合ではリベットシステムと、ロボット又は産業用コントローラなどの制御システムとの間を通過する制御信号及び状態信号も、I/O信号として扱われ、内部I/Oと同じ方法で処理してもよいことに注目すべきである。このことにより、各種状態機械とその関連付けられたI/O信号及び制御信号との間のタイミングの相互作用を容易に見ることができる。
【0127】
本明細書に記載される技術は、
図18に示されているように、タイミングの変化をより容易に強調するために異なる期間の信号を重ねることをさらに可能にする。これにより、複雑な動作シーケンスにおけるばらつきをより簡単に可視化することができ、故障の原因、さらにはシステムの動作が劣化していることを示すばらつきを迅速に判断することができる。この分析は、内蔵ユーザインタフェース、又は改良された機能を持つリモート診断システムに転送されるデータを使用して機械で実行できる。これらの比較は自動的にスケジュールが立てられ、機械が最適な性能レベルで動作し、計画外の休止事象の数を最小限に抑えることを保証できる。
【0128】
システムの部品の経時的な動作変化を可視化することによって、重要でないコンポーネントの性能をより容易に評価し、実際の性能に基づいてPM期間又は交換期間を延長することもできる。その通常性能の範囲内で動作するほとんどの部品は、性能の低下をもたらすことがある過度の保守又は他の調整を必要としないが、逆に、システム内で性能低下の兆候を示しているそのPMレベルを満たしていないコンポーネントは、システム全体をより最適な性能レベルに戻すために、元の限界よりも前に調整又は交換されることで利益を得ることができる。システムのコンポーネントに保守が行われると、関連付けられた信号は、最初に指定された性能と、保守が行われる直前の性能レベルとの両方と比較することができる。システムの保守レベルを最適化することによって、システム全体が適切な保守量で必要なレベルで動作していることを保証し、システムのサブコンポーネントの最適な設置寿命をさらに保証する。
【0129】
ここまでいくつかの例示的な実施態様を説明したが、上記は例示的なものであって限定的なものではなく、例として提示されたことは明らかである。特に、本明細書で提示される例の多くが、方法行為又はシステム要素の特定の組み合わせを含むが、これらの行為及びこれらの要素は、同一の目標を達成するために別様に組み合わされてもよい。一実施態様のみに関連して説明された行為、要素及び特徴は、他の実施態様における同様の役割又は実施態様から除外されることを意図されたものではない。
【0130】
本明細書において単数で言及されるシステム及び方法の実施態様又は要素又は行為へのいかなる参照も、複数のこれら要素を含む実施態様を包含してもよく、本明細書の任意の実施態様又は要素又は行為への複数でのいかなる参照も、単一の要素のみを含む実施態様を包含してもよい。単数形又は複数形での言及は、現在開示されているシステム又は方法、それらの構成部品、行為又は要素を単一又は複数の構成に限定することを意図するものではない。任意の行為又は要素が任意の情報、行為又は要素に基づいているという言及は、当該行為又は要素が任意の情報、行為又は要素に少なくとも部分的に基づいている実施形態を包含してもよい。
【0131】
図面、詳細な説明又は請求項の技術的特徴に参照符号が付されている場合、参照符号は、図面、詳細な説明及び請求項の明瞭度を高めるために含まれている。したがって、参照符号もその不在も、請求項の要素の範囲を制限する効果はない。
【0132】
上記実施態様は、記述されたシステム及び方法を限定するものではなく、例示的なものである。したがって、本明細書に記載されるシステム及び方法の範囲は、上記説明よりもむしろ、添付の特許請求の範囲によって示される。
【外国語明細書】