(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047504
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】ビスカルバゾール誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 209/86 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
C07D209/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132915
(22)【出願日】2021-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2020152523
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中重 雄一
(72)【発明者】
【氏名】松浦 隆
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の選択的な製造方法を提供する。
【解決手段】例えば、トルエンおよびp-トルエンスルホン酸一水和物存在下、9-フルオレノン1モルに対し、2.4モル以上の9-エチルカルバゾールで表される化合物とを反応させる工程を含む、下記化合物の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
(式中、R
1は、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示す。R
2は、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示す。R
3は、水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基又はアリール基を示す。mは、0~8の整数を示す。mが2以上の場合、複数あるR
1は互いに同一であっても異なっていてもよい。nは、0~7の整数を示す。nが2以上の場合、複数あるR
2は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表される化合物の製造方法であって、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素及びエステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物、並びに酸存在下、下記一般式(2):
【化2】
(式中、R
1及びmは上述の通りである。)
で表される化合物と、上記一般式(2)で表される化合物1モルに対し、2.4モル以上の下記一般式(3):
【化3】
(式中、R
2、R
3及びnは上述の通りである。)
で表される化合物とを反応させる工程を含む、製造方法。
【請求項2】
上記有機化合物が、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物である、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体は、該誘導体とリンカー化合物(例えば、1,4-ビス(ジメトキシメチル)ベンゼン等)とを縮合させて得られる共重合物が優れた耐エッチング性を有することから、ハードマスク用組成物の原材料として有用な化合物である〔韓国特許公開第2019-0001377号公報(特許文献1)〕。
【0003】
しかしながら、フルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の有用な製造方法は知られておらず、9-フルオレノンとカルバゾール類とを反応させてこれらの重合物を得る方法が知られているのみであった〔国際公開第WO2010/147155号(特許文献2)〕。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国特許公開第2019-0001377号公報
【特許文献2】国際公開第WO2010/147155号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の選択的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定条件下で下記一般式(2)で表される化合物(9-フルオレノン類)と下記一般式(3)で表される化合物(カルバゾール類)とを反応させることにより、前記課題が解決可能であることを見出した。具体的には、本発明は以下の発明を含む。
【0007】
〔1〕
下記一般式(1):
【0008】
【化1】
(式中、R
1は、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示す。R
2は、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示す。R
3は、水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基又はアリール基を示す。mは、0~8の整数を示す。mが2以上の場合、複数あるR
1は互いに同一であっても異なっていてもよい。nは、0~7の整数を示す。nが2以上の場合、複数あるR
2は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表される化合物の製造方法であって、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素及びエステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物、並びに酸存在下、下記一般式(2):
【0009】
【化2】
(式中、R
1及びmは上述の通りである。)
で表される化合物と、上記一般式(2)で表される化合物1モルに対し、2.4モル以上の下記一般式(3):
【0010】
【化3】
(式中、R
2、R
3及びnは上述の通りである。)
で表される化合物とを反応させる工程を含む、製造方法。
【0011】
〔2〕
上記有機化合物が、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物である、〔1〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、9-フルオレノン類とカルバゾール類との多量体(上記特許文献2記載の重合物を含む)及びその他不純物を抑制することができるため、上記一般式(1)で表される化合物を選択的に製造することが可能となる。また、その結果、上記一般式(1)で表される化合物を高収率かつ高純度で製造することが可能となる。
【0013】
また、理由は定かではないが、上記一般式(1)においてR3がアルキル基である場合には、他の置換基に比して9-フルオレノン類とカルバゾール類との多量体がより生成しやすい傾向にあるところ、本発明によれば、R3がアルキル基である場合であっても該多量体の生成を抑制することができ、上記一般式(1)で表される化合物を選択的に得られることから、特に本発明の製造方法は、R3が分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基である上記一般式(1)で表される化合物の製造に好適な方法である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<フルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体>
本発明の製造方法で製造されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【0015】
【0016】
上記一般式(1)中、R1はフルオレン環の1~8位における置換基であり、該置換基として例えば、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基、アリール基又はハロゲン原子が挙げられる。R1における分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。これら置換基の中でも、アリール基、ハロゲン原子が好ましい。また、R1の置換位置としては、フルオレン環の2位、7位が好ましい。
【0017】
上記一般式(1)中、mは、0~8の整数、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、特に好ましくは0を示す。mが2以上の場合、複数あるR1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
上記一般式(1)中、R2はカルバゾール環の1、2、4~8位(なお、フルオレン環との結合位置を3位とする。)における置換基であり、該置換基として例えば、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基、アリール基又はハロゲン原子が挙げられる。R2における分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子としては、R1と同じものが挙げられる。これら置換基の中でも、アリール基、ハロゲン原子が好ましい。R2の置換位置としては、カルバゾール環の2位、6位、7位が好ましい。
【0019】
上記一般式(1)中、nは0~7の整数、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、特に好ましくは0を示す。nが2以上の場合、複数あるR2は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0020】
上記一般式(1)中、R3は、水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基又はアリール基を示す。R3における分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基及びアリール基としては、R1と同じものが挙げられる。なお、上記の通り、本発明の製造方法は、特にR3が分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基である上記一般式(1)で表される化合物の製造に好適な方法であることから、R3は分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基であることが好ましい。
【0021】
<本発明の製造方法>
本発明の、上記一般式(1)で表される化合物の製造方法は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素及びエステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物、並びに酸存在下、下記一般式(2):
【0022】
【化5】
(式中、R
1及びmは上述の通り。)
で表される化合物(9-フルオレノン類)と、上記一般式(2)で表される化合物1モルに対し、2.4モル以上の下記一般式(3):
【0023】
【化6】
(式中、R
2、R
3及びnは上述の通り。)
で表される化合物(カルバゾール類)とを反応させる工程(以下、反応工程と称することもある。)を含むことを特徴とする。以下、反応工程について詳述する。
【0024】
反応工程において、上記一般式(3)で表されるカルバゾール類の使用量(下限)は、上記一般式(2)で表される9-フルオレノン類1モルに対し、2.4モル以上、好ましくは3.0モル以上、特に好ましくは4.0モル以上である。2.4モル以上使用することで、上記一般式(1)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体を選択的に製造することができる。また、上限については、例えば、20モル以下、好ましくは10モル以下である。
【0025】
反応工程で使用される有機化合物としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素及びエステル類が挙げられる。脂肪族炭化水素は、鎖状、環状のどちらであってもよく、鎖状の脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられ、環状の脂肪族炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。ハロゲン化脂肪族炭化水素としては、鎖状、環状のどちらであってもよく、鎖状のハロゲン化脂肪族炭化水素としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられ、環状のハロゲン化脂肪族炭化水素としては、例えば、クロロシクロヘプタン、クロロシクロヘキサンが挙げられる。ハロゲン化芳香族炭化水素としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、乳酸メチル、乳酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、安息香酸ブチル、安息香酸メチル、酢酸フェニル等が挙げられる。これら有機化合物の中でも、反応速度をより向上させることができることから、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物の存在下に反応工程を行うことが好ましい。これら有機化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
反応工程において、上記有機化合物の使用量は、上記一般式(2)で表される9-フルオレノン類1重量部に対し、例えば、1~100重量部、より選択的に上記一般式(1)で表される化合物を製造することが可能となることから、好ましくは5~20重量部である。
【0027】
反応工程においては無機酸、有機酸等各種の酸が使用可能である。無機酸としては、例えば、硫酸、塩化水素、塩酸、リン酸、ヘテロポリ酸(例えば、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸等)、ゼオライト、粘土鉱物等が挙げられる。有機酸としては、例えば、有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等)、イオン交換樹脂等が挙げられる。これら酸の中でも、硫酸、有機スルホン酸、塩化水素、塩酸、ヘテロポリ酸が好ましい。これら酸は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、酸であるメルカプタン類は、下記するメルカプタン類に属するものとする。
【0028】
反応工程において酸の使用量は、上記一般式(2)で表されるフルオレノン類1重量部に対し、例えば、0.01~1.0重量部、好ましくは0.05~0.5重量部である。
【0029】
また、反応工程を実施する際、反応速度をより向上させる観点から、メルカプタン類を併用してもよい。使用可能なメルカプタン類としては、例えば、メルカプト基含有カルボン酸類、アルキルメルカプタン類、アラルキルメルカプタン類及びこれらの塩類等が挙げられる。メルカプト基含有カルボン酸類としては、例えば、チオ酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオシュウ酸、メルカプトコハク酸、メルカプト安息香酸等が挙げられる。アルキルメルカプタン類としては、例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n-プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等のC1-16アルキルメルカプタン等が挙げられる。これら含硫黄化合物の中でも、工業的な取扱性の良さの観点から、メルカプト基含有カルボン酸類、アルキルメルカプタン類が好ましく、n-ドデシルメルカプタン、チオ酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、n-プロピルメルカプタン、n-ブチルメルカプタンがより好ましい。これらメルカプタン類は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
メルカプタン類を使用する場合、その使用量は、上記一般式(2)で表される9-フルオレノン類1モルに対し、例えば、0.01~0.5モル、好ましくは0.05~0.3モルである。
【0031】
反応工程は、例えば、40~130℃、好ましくは50~100℃で実施される。また、十分な反応速度を得る観点から、必要に応じて、常圧又は減圧還流下、脱水しながら反応工程を実施してもよい。
【0032】
反応工程終了後、得られた反応混合物から、必要に応じて、慣用の方法、例えば、中和、水洗、吸着処理等の後処理や、これらを組み合わせた後処理を行った後、慣用の方法、例えば、抽出、濃縮、晶析、濾過、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により、上記一般式(1)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体を分離することができる。
【実施例0033】
以下、実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。なお、例中、各成分の生成率、純度及び含有率は、下記条件で分析したHPLCの面積百分率値である。
【0034】
(1)HPLC測定
装置:島津製作所製 LC-20AD、
カラム:XBridge Shield RP18(3.5μm、4.6mmφ×250mm)、
移動相:純水/アセトニトリル(アセトニトリル70%(5min hold)→100%(20min)→100%(15min hold)、
流量:1.0ml/min、
カラム温度:40℃、
検出波長:UV 254nm。
<反応混合物の測定方法>
10mLメスフラスコに反応混合物約0.1mLを入れ、アセトニトリルでメスアップした液をサンプル液とした。得られたサンプル液について、上記条件でHPLC測定を行った。なお、面積百分率値を算出する際、反応に使用した有機化合物(溶媒)と上記一般式(3)で表されるカルバゾール類のピークは除外した。
<結晶の測定方法>
10mLメスフラスコに結晶約100mgを入れ、アセトニトリルでメスアップした液をサンプル液とした。得られたサンプル液について、上記条件でHPLC測定を行った。
【0035】
<実施例1>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 50.0g(0.277モル)、9-エチルカルバゾール 271g(1.39モル)、n-ドデシルメルカプタン 5.62g(0.0278モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 10.6g(0.0557モル)及びトルエン 250gを仕込み、内圧を26.7kPaまで減圧した後に内温が80℃となるまで昇温した。昇温後、同内圧、同温度で還流脱水しながら8時間撹拌した後、反応混合物をHPLCにて分析し、原料である9-フルオレノンが消失していることを確認した。また、目的とする以下式(4):
【0036】
【化7】
で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の生成率は91.4%、多量体の生成率は0.6%であり、その他不純物は8.0%であった。
得られた反応混合物を50℃以下まで冷却し、トルエン250g、メタノール50.0g及びピリジン11.0gを加え撹拌した後、20℃に冷却した。冷却後、析出した結晶を濾別し減圧乾燥(70℃、2.7kPa)することで、上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の結晶143g(有姿収率93.4%、HPLC純度99.4%)を得た。また、多量体の含有率は0.2%であり、その他不純物は0.4%であった。
【0037】
<実施例2>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 5.00g(0.0277モル)、9-エチルカルバゾール 27.1g(0.139モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.56g(0.00278モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 1.06g(0.00557モル)及びへプタン 25.0gを加え、内圧を48.0kPaまで減圧した後に内温が80℃となるまで昇温した。昇温後、同温度で還流脱水しながら2時間撹拌した後、反応混合物をHPLCにて分析を行ったところ、原料である9-フルオレノンが消失していることを確認した。また、目的とする上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の生成率は82.7%、多量体の生成率は3.6%であり、その他不純物は13.7%であった。
得られた反応混合物から減圧濃縮(50℃、2.7kPa)でヘプタンを除去した後に、トルエン50.0g、メタノール5.0g及びピリジン1.10gを加えて撹拌した後、20℃に冷却した。冷却後、析出した結晶を濾別し減圧乾燥(70℃、2.7kPa)することで、上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の結晶 14.2g(有姿収率92.7%、HPLC純度97.3%)を得た。また、多量体の含有率は0.6%であり、その他不純物は2.1%であった。
【0038】
<実施例3>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 5.00g(0.0277モル)、9-エチルカルバゾール 27.1g(0.139モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.56g(0.00278モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 1.06g(0.00557モル)及びシクロヘキサン 25.0gを加え、内圧を85.3kPaまで減圧した後に内温が80℃となるまで昇温した。昇温後、同温度で還流脱水しながら2時間撹拌した後、反応混合物をHPLCにて分析を行ったところ、原料である9-フルオレノンが消失していることを確認した。また、目的とする上記(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の生成率は89.3%、多量体の生成率は7.3%であり、その他不純物は3.4%であった。
得られた反応混合物から減圧濃縮(50℃、2.7kPa)でシクロヘキサンを除去した後に、トルエン50.0g、メタノール5.0g及びピリジン1.10gを加えて撹拌した後、20℃に冷却した。冷却後、析出した結晶を濾別し減圧乾燥(70℃、2.7kPa)することで、上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の結晶 14.7g(有姿収率96.0%、HPLC純度98.9%)を得た。また、多量体の含有率は0.4%であり、その他不純物は0.7%であった。
【0039】
<実施例4>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 5.00g(0.0277モル)、9-エチルカルバゾール 27.1g(0.139モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.56g(0.00278モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 1.06g(0.00557モル)及びモノクロロベンゼン 25.0gを加え、内圧を10.7kPaまで減圧した後に内温が80℃となるまで昇温した。昇温後、同内圧、同温度で還流脱水しながら15時間撹拌した後、反応混合物をHPLCにて分析を行ったところ、原料である9-フルオレノンが消失していることを確認した。また、目的とする上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の生成率は82.7%、多量体の生成率は3.3%であり、その他不純物は14.0%であった。
得られた反応混合物から減圧濃縮(80℃、2.7kPa)でモノクロロベンゼンを除去した後に、トルエン50.0g、メタノール5.0g及びピリジン1.10gを加え撹拌した後、20℃に冷却した。冷却後、析出した結晶を濾別し減圧乾燥(70℃、2.7kPa)することで、上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の結晶 14.0g(有姿収率91.4%、HPLC純度98.8%)を得た。また、多量体の含有率は0.5%であり、その他不純物は0.7%であった。
【0040】
<実施例5>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 5.00g(0.0277モル)、9-エチルカルバゾール 27.1g(0.139モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.56g(0.00278モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 1.06g(0.00557モル)及びジクロロメタン 25.0gを加え、常圧にて内温が40℃となるまで昇温した。昇温後、同温度で還流脱水しながら30時間撹拌した後、反応混合物をHPLCにて分析を行ったところ、原料である9-フルオレノンが消失していることを確認した。また、目的とする上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の生成率は94.2%、多量体の生成率は0.6%であり、その他不純物は5.2%であった。
得られた反応混合物から減圧濃縮(30℃、2.7kPa)でジクロロメタンを除去した後に、トルエン50.0g、メタノール5.0g及びピリジン1.10gを加え撹拌した後、20℃に冷却した。冷却後、析出した結晶を濾別し減圧乾燥(70℃、2.7kPa)することで、上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の結晶 13.3g(有姿収率86.9%、HPLC純度99.0%)を得た。また、多量体の含有率は0.3%であり、その他不純物は0.7%であった。
【0041】
<実施例6>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 5.00g(0.0277モル)、9-エチルカルバゾール 27.1g(0.139モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.56g(0.00278モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 1.06g(0.00557モル)及び酢酸ブチル 25.0gを加え、内圧を32.0kPaまで減圧した後に内温が100℃となるまで昇温した。昇温後、同内圧、同温度で還流脱水しながら30時間撹拌した後、反応混合物をHPLCにて分析を行ったところ、原料である9-フルオレノンが消失していることを確認した。また、目的とする上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の生成率は82.4%、多量体の生成率は3.8%であり、その他不純物は13.8%であった。
得られた反応混合物から減圧濃縮(80℃、2.7kPa)で酢酸ブチルを除去した後に、トルエン50.0g、メタノール5.0g及びピリジン1.10gを加え撹拌した後、20℃に冷却した。冷却後、析出した結晶を濾別し減圧乾燥(70℃、2.7kPa)することで、上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の結晶 13.3g(有姿収率86.9%、HPLC純度97.4%)を得た。また、多量体の含有率は0.4%であり、その他不純物は2.2%であった。
【0042】
<比較例1>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 5.00g(0.0277モル)、9-エチルカルバゾール 27.1g(0.139モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.56g(0.00278モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 1.06g(0.00557モル)及び2-プロパノール 25.0gを加え、常圧にて内温が85℃となるまで昇温した。昇温後、同温度で還流しながら30時間撹拌した。撹拌後、反応混合物をHPLCにて分析を行ったが、反応はほとんど進行していなかった。
【0043】
<比較例2>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 1.00g(0.00555モル)、9-エチルカルバゾール 5.42g(0.0278モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.11g(0.000543モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 0.21g(0.00110モル)及びテトラヒドロフラン(THF) 5.0gを加え、常圧にて内温が66℃となるまで昇温した。昇温後、同温度で還流しながら30時間撹拌した。撹拌後、反応混合物をHPLCにて分析を行ったが、反応はほとんど進行していなかった。
【0044】
<比較例3>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 10.0g(0.0555モル)、9-エチルカルバゾール 54.2g(0.278モル)、n-ドデシルメルカプタン 1.12g(0.00553モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 2.11g(0.0111モル)及びシクロペンチルメチルエーテル(CPME) 50.0gを加え、内圧を29.3kPaまで減圧した後に内温が80℃となるまで昇温した。昇温後、同内圧、同温度で還流脱水しながら30時間撹拌した。撹拌後、反応混合物をHPLCにて分析したが、反応はほとんど進行していなかった。
【0045】
<比較例4>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 1.00g(0.00555モル)、9-エチルカルバゾール 5.42g(0.0278モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.11g(0.000543モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 0.21g(0.00110モル)及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF) 5.0gを加え、常圧にて内温が110℃となるまで昇温した。昇温後、同温度で脱水しながら30時間撹拌した。撹拌後、反応混合物をHPLCにて分析したが、反応はほとんど進行していなかった。
【0046】
<比較例5>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 1.00g(0.00555モル)、9-エチルカルバゾール 5.42g(0.0278モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.11g(0.000543モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 0.21g(0.00110モル)及びN-メチルピロリドン(NMP) 5.0gを加え、常圧にて内温が110℃となるまで昇温した。昇温後、同温度で脱水しながら30時間撹拌した。撹拌後、反応混合物をHPLCにて分析したが、反応はほとんど進行していなかった。
【0047】
<比較例6>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 1.00g(0.00555モル)、9-エチルカルバゾール 5.42g(0.0278モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.11g(0.000543モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 0.21g(0.00110モル)及びジメチルスルホキシド(DMSO) 5.0gを加え、常圧にて内温が110℃となるまで昇温した。昇温後、同温度で脱水しながら30時間撹拌した。撹拌後、反応混合物をHPLCにて分析したが、反応はほとんど進行していなかった。
【0048】
<比較例7>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 5.00g(0.0277モル)、9-エチルカルバゾール 27.1g(0.139モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.56g(0.00278モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 1.06g(0.00557モル)及びメチルイソブチルケトン(MIBK) 25.0gを加え、内圧を80.0kPaまで減圧した後に内温が110℃となるまで昇温した。昇温後、同内圧、同温度で脱水しながら5時間撹拌した。撹拌後、反応混合物をHPLCにて分析したところ、原料である9-フルオレノンは消失していたが、目的とする上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の生成率は31.1%、多量体の生成率は6.9%であり、その他不純物は62.0%であった。
【0049】
<比較例8>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 1.00g(0.00555モル)、9-エチルカルバゾール 5.42g(0.0278モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.11g(0.000543モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 0.21g(0.00110モル)及びエチレングリコール 5.0gを加え、常圧にて内温が130℃となるまで昇温した。昇温後、同温度で脱水しながら10時間撹拌した。撹拌後、反応混合物をHPLCにて分析したところ、原料である9-フルオレノンは消失していたが、目的とする上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の生成率は53.9%、多量体の生成率は17.9%であり、その他不純物は28.2%であった。
【0050】
上記実施例1~6及び比較例1~8の結果を以下表1及び表2に示す。
【0051】
【0052】
【0053】
<実施例7>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 5.00g(0.0277モル)、9-エチルカルバゾール 27.1g(0.139モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.56g(0.00278モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物 1.06g(0.00557モル)及びトルエン 100gを加え、内圧を26.7kPaまで減圧した後に内温が80℃となるまで昇温した。昇温後、同内圧、同温度で還流脱水しながら11時間撹拌した後、反応混合物をHPLCにて分析したところ、原料である9-フルオレノンが消失していることを確認した。また、目的とする上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の生成率は85.6%、多量体の生成率は2.1%であり、その他不純物は12.3%であった。
得られた反応混合物から減圧濃縮(50℃、2.7kPa)でトルエンを除去した後に、トルエン50.0g、メタノール5.0g及びピリジン1.10gを加えて撹拌した後、20℃に冷却した。冷却後、析出した結晶を濾別し、上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の結晶 13.5g(有姿収率88.2%、HPLC純度99.2%)を得た。また、多量体の含有率は0.3%であり、その他不純物は0.5%であった。
【0054】
<実施例8>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 10.0g(0.0555モル)と9-エチルカルバゾール 27.1g(0.139モル)、n-ドデシルメルカプタン 1.12g(0.00556モル)、リンタングステン酸 0.50g、トルエン 50.0gを加え、内圧を26.7kPaまで減圧した後、内温が80℃となるまで昇温した。昇温後、同内圧、同温度で還流脱水しながら24時間撹拌した後、反応混合物をHPLCにて分析したところ、原料である9-フルオレノンが消失していることを確認した。また、目的とする上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の生成率は77.8%、多量体の生成率は10.6%であり、その他不純物は11.6%であった。
【0055】
<実施例9>
攪拌機、温度計および冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 1.00g(0.00555モル)と9-エチルカルバゾール 2.71g(0.0139モル)、n-ドデシルメルカプタン 0.11g(0.000543モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物0.21g(0.00110モル)、トルエン 5.0gを加え、内圧を26.7kPaまで減圧した後、内温が80℃となるまで昇温した。昇温後、同内圧、同温度で還流脱水しながら30時間撹拌した後、反応混合物をHPLCにて分析したところ、原料である9-フルオレノンが消失していることを確認した。また、目的とする上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の生成率は79.2%、多量体の生成率は13.0%であり、その他不純物は7.8%であった。
【0056】
<比較例9>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 1.00g(0.00555モル)と9-エチルカルバゾール 2.38g(0.0122モル)、n-ドデシルメルカプタン0.11g(0.000543モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物0.21g(0.00110モル)、トルエン 5.0gを加え、内圧を26.7kPaまで減圧した後、内温が80℃となるまで昇温した。昇温後、同内圧、同温度で還流脱水しながら30時間撹拌を行った。撹拌後、反応混合物をHPLCにて分析したところ、原料である9-フルオレノンの消失は確認できたが、目的とする上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の生成率は50.5%、多量体の生成率は28.4%であり、その他不純物は21.1%であった。
【0057】
<比較例10>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたガラス製反応器に9-フルオレノン 1.00g(0.00555モル)と9-エチルカルバゾール 2.17g(0.0111モル)、n-ドデシルメルカプタン0.11g(0.000543モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物0.21g(0.00110モル)、トルエン 5.0gを加え、内圧を26.7kPaまで減圧した後、内温が80℃となるまで昇温した。昇温後、同内圧、同温度で還流脱水しながら30時間撹拌した。撹拌後、反応混合物をHPLCにて分析したところ、原料である9-フルオレノンの消失は確認できたが、目的とする上記式(4)で表されるフルオレン骨格を有するビスカルバゾール誘導体の生成率は37.3%、多量体の生成率は23.8%であり、その他不純物は38.9%であった。