(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047555
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】パパイヤの増産方法
(51)【国際特許分類】
A01G 17/00 20060101AFI20220317BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20220317BHJP
【FI】
A01G17/00
A01G9/02 101J
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153393
(22)【出願日】2020-09-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】520257810
【氏名又は名称】一般財団法人地球大学校
(74)【代理人】
【識別番号】100076082
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 康文
(72)【発明者】
【氏名】金城 信夫
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NA10
2B327NB01
2B327NC02
2B327NC21
2B327ND01
2B327NE02
2B327RA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】食料難に貢献できるパパイヤの収穫量を増やすことを目的とする。
【解決手段】パパイヤの苗から成長するまでの成長過程で必要とされる培土や肥料成分を得るために少なくとも2種類の径の異なる竹籠A,B,C入り混合土を用い、苗から成長する過程で、より小径の竹籠をより大径の竹籠の中央に配設するので、育苗期に適した肥料成分は最小径の竹籠A中の混合土に混ぜておき、成長期に適した肥料成分は中径の竹籠B中の混合土に混ぜておき、結実期に適した肥料成分は最大径の竹籠C中の混合土に混ぜておくので、各成長段階に合った肥料成分にするための制御が可能となり、理想的に品質が一定したパパイヤを生産提供できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パパイヤの苗から成長するまでの成長過程で必要とされる培土や肥料成分を得るために少なくとも2種類の径の異なる竹籠入り混合土を用い、苗から成長する過程で、より小径の竹籠をより大径の竹籠の中央に配設することを特徴とするパパイヤの増産方法。
【請求項2】
前記の竹籠に入れた混合土と大地との間が土で接しないように炭を介在させることを特徴とする請求項1記載のパパイヤの増産方法。
【請求項3】
円筒形の竹製の壁部の上にドーム形の屋根を有する居宅の中に前記の2種類の竹籠入り混合土を配設することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパパイヤの増産方法。
【請求項4】
パパイヤの木が苗から成木に達するまで各竹籠の順に竹籠中の混合土で成育した後に、樹体が前記ハウスの屋根に到達する前に、樹体の土壌面から30~40cmの高さで切り戻しを行なうことにより、側枝を発生させ、この側枝を同一混合土により引き続き最適に栽培することを特徴とする請求項1、請求項2に又は請求項3に記載のパパイヤの増産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、世界の食料難に貢献できるパパイヤの増産方法に関し、収穫量を増やすことを目的とする。
【背景技術】
【0002】
世界的に見た場合、人口増加に食料の増産が追いつかず、食料不足の国が問題となっている。
本発明は、パパイヤの増産技術の画期的な向上により、世界的な食料不足にも寄与てきると信じている。この画期的な増産技術の向上は、果実の生産効果の顕著なパパイヤにおいて、その弱点を克服してパパイヤの樹の成長時期に対応したり肥料を選択供給することで理想的な栽培を実現し、収穫量を増やすことを目的とする。
これに対し、パパイヤの栽培方法として、特許文献1のように施設内で均一な高品質の果実生産を安定かつ確実に行うことができ、しかも同一個体で収穫の長期化が可能となるパパイヤの栽培方法が提案されている。すなわち、わい性種パパイヤを茎頂点培養して得た雌株苗または両性株苗を、透水性、通気性の良好な培地で、個体ごとに地床から隔離して施設内で養液栽培を行い、パパイヤを栽培し、このようにして生育した樹体が施設の屋根に達した時点で、主幹基部から切り戻し、新たに発生した側枝を引き続き同一培地により施設内で養液栽培することで、新たに苗を植え替えるのに比べて再収穫時期を早めることができるとともに、同一個体から長期にわたる収穫が可能となるパパイヤの栽培方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植物は、成長のそれぞれの段階で必要とする肥料が異なる。従って、特許文献1のような方法では、新しい苗から果実の収穫までの各成長季に応じた成分を施肥できないので、苗や苗から成長する過程で栽培不良に遭遇すると、新たに発生した側枝を引き続き栽培して果実を生産しても、期待した成果が得られない。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、パパイヤの樹の各成長期に応じた施肥や栽培方法を制御するために、大径、中径、小径と3種類の外径の異なる竹籠入りの混合土を使い分ける方法を採る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、パパイヤの苗から成長するまでの成長過程で必要とされる培土や肥料成分を得るために少なくとも2種類の径の異なる竹籠入り混合土を用い、苗から成長する過程で、より小径の竹籠をより大径の竹籠の中央に配設することを特徴とするパパイヤの増産方法である。
【0006】
請求項2は、前記の竹籠に入れた混合土と大地との間が土で接しないように炭を介在させることを特徴とする請求項1記載のパパイヤの増産方法である。前記炭には木炭と竹炭が実用的だが、可能であれば竹炭が好適である。
【0007】
請求項3は、円筒形の竹製の壁部の上にドーム形の屋根を有する居宅の中に前記の3種類の竹籠入り混合土を配設したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパパイヤの増産方法である。
【0008】
請求項4は、パパイヤの木が苗から成木に達するまで竹籠A、竹籠B、竹籠Cの順に混合土で成育した後に、樹体が前記ハウスの屋根に到達する前に、樹体の土壌面から30~40cmの高さで切り戻しを行なうことにより、側枝を発生させ、この側枝を同一混合土により引き続き最適に栽培することを特徴とする請求項1、請求項2に又は請求項3に記載のパパイヤの増産方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1のように、パパイヤの苗から成長するまでの成長過程で必要とされる培土や肥料成分を得るために少なくとも2種類の径の異なる竹籠入り混合土を用い、苗から成長する過程で、より小径の竹籠をより大径の竹籠の中央に配設するので、育苗期に適した肥料成分は最小径の竹籠中の混合土に混ぜておき、成長期に適した肥料成分は中径の竹籠中の混合土に混ぜておき、結実期に適した肥料成分は最大径の竹籠中の混合土に混ぜておくことで、各成長段階に合った肥料成分にするための制御が可能となり、理想的に品質が一定したパパイヤを生産し提供できる。更に、大径の竹籠を車輪にして回転できパパイヤの木の移動が容易になり、また大径の竹籠を支点にして倒すと、パパイヤの木を低くできるので、パパイヤの木や果実の手入れや管理が容易になる。
【0010】
パパイヤの樹は、土壌を介して伝染する病原菌の影響を受けて根腐れしたり、土壌菌に左右され易い。従って、請求項2のように、前記の竹籠に入れた混合土と大地との間が、菌に強い炭を介在させて土壌菌を遮断し、土壌菌を伝染させる土で接しないようにしている。
【0011】
前記居宅の中に前記の3種類の竹籠入り混合土を有してパパイヤを栽培している。パパイヤの育つ地域は、台風が多いので、パパイヤを生産する農家も台風に強い作りが望ましいが、請求項3のように、円筒形の竹製の壁部の上にドーム形の屋根を有する居宅は、家屋の壁部が円筒形のため、強風の風当たりが悪く、強風を受け難い。また竹製のため、強度に強い。屋根はドーム形のため風が反れ易く台風対策となり、強風が当たり難く反れ易い形状をしている。このような台風に強い居宅の中に前記の3種類の竹籠入り混合土でパパイヤを生産しているので、居ながらにして能率良くパパイヤ生産できる。
【0012】
パパイヤの木が苗から成木に達するまで竹籠A、B、Cの順に混合土で成長した後は、樹体が前記ハウスの屋根に到達する恐れがある。その場合に備えて請求項4のように、樹体の土壌面から30~40cmの高さで切り戻しをなうことにより、側枝を発生させ、この側枝を同一混合土により引き続き最適に栽培し、パパイヤを結実させ増産する。
なお、竹籠の混合土に植えたパパイヤの木は、竹籠を倒せばパパイヤの木が傾斜して低くなるので、収穫などの作業が容易になる。従って、居宅の2階で作業すると便利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による竹籠の斜視図であり、小、中、大と外径の異なる3種類の竹籠を同心円状に配置して使用する。
【
図2】パパイヤの木の各成長段階に応じた各竹籠の使用時の縦断面図である。
【
図4】本発明によるパパイヤ農家の居宅の屋根を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示す居宅の側面の骨組みを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明によるパパイヤの増産方法が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。
図1は本発明による竹籠の斜視図であり、小、中、大と外径の異なる3種類の竹籠A、B、Cを同心円状に配置して使用するが、各竹籠A、B、Cは籠であるから無数の隙間が空いているので、パパイヤの木の根から出た髭は容易に外側に通過できる。底は無くても良いが、土が漏れない程度の粗目に編んだ編底でもよい。ただし、小石や炭の層を詰めて土壌菌が伝染するのを阻止している。底無しにして小石や炭の層を設けても良い。
これらの竹籠A、B、Cには、パパイヤ用として独自に混合した0成長段階で肥料成分の異なる混合土を入れておく。そしてその中に前記の3種類の竹籠入りの混合土1~3を有していてパパイヤを栽培している。
【0015】
具体的には、最小の竹籠(フィルムポット)Aには、中心軸にフィルムを張ってから、混合土1を入れて、育苗ポットとする。この混合土1は、クチャ土(弱アルカリ性)10%±5~15%、培養土(パパイヤ専用肥料)10%±5 ~15%、竹炭養液10%±4~15%である。竹炭( 殺菌力)70%±60~80で、竹組み籠(編目)粗目4cm)の組成である。
中枠すなわち中径の大きさの竹籠Bに入れる混合土2は、クチャ土(弱アルカリ性)20%±10~30%、培養土(パパイヤ専用肥料)20%±4~15%、竹炭養液(殺菌力)10%±4~15%である。そして、竹組み籠(編目)粗目2.5 cm)の組成である。
外枠すなわち最も大きい竹籠Cに入れる混合土3は、クチャ土(弱アルカリ性)40%±30~50%、培養土(パパイヤ専用肥料)30%±20~40%、竹炭( 殺菌力)30%±20~40から成る。外側の竹組み籠Cは、編目を締める作用をする。
【0016】
パパイヤ専用肥料とは特にアミノ酸効果を狙ったもので、以下の4つの特長を有する。
a.パパイヤの開花、結実を促進し、作物の甘味やうまみ、色艶を良くする。
b.アミノ酸は直接植物に吸収され、蛋白質に取り込まれる。
c.日照不足や低温、病原菌に強い抵抗力を持つ作物を作る。
d.土壌微生物が増殖し、団粒化を促進し、通気性、保湿を高める。
【0017】
なお、竹籠に収納した混合土から土壌菌が伝染しないように、竹籠の底全体に大小の鉢底石を敷き詰めるなどの手法で、土以外の材質で土壌を遮断するのが好ましい。
【0018】
パパイヤの木の苗Pを植えた育苗ポットAを中枠Bの中央に配置し、この中枠Bを最大径の籠すなわち外枠Cの中央に配置し、数日の時間が経つと
図2、
図3の状態に成長する。
図2は縦断面図、
図3は水平断面図である。中央の育苗ポットAに生えているパパイヤの苗Pのひげ4が、育苗ポットAから中枠竹籠Bの混合土を経由して外枠竹籠C中の混合土3に達している。このように、中央の育苗ポットAから中枠竹籠Bの混合土2を経由して外枠竹籠C中の混合土3に達するまでに、成分の異なる各混合土1、2、3を経ることで、パパイヤの木Pの成長の時期に対応した成分が吸収されて最適に成長する。
なお、土壌菌が伝染しないように、各混合土1、2、3は砂利石の層の上に載せてある。また、少なくとも外枠竹籠Cが丸いと、パパイヤの成木Pを回転させて移動でき、黒腐れ病などの病が発生した時の移動が容易であり、またパパイヤ栽培を終えて最終処理地点まで移動する際の回転移動ができる。
【0019】
前記のように、パパイヤの木Pが苗から成木に達するまで竹籠A、B、Cの順に混合土1~3で成長した後は、樹体が居宅などのハウスの屋根に到達した時点で又は屋根に到達する前に、樹体の主幹の土壌面から約30~40cm程度上方の基部から切り戻しを行うことにより側枝を発生させ、この側枝を同一混合土3により引き続き最適に栽培して結実させる。
【0020】
前記各混合土1、2、3には、パパイヤの栽培の邪魔に成らない時期に、コスモスや向日葵などを栽培して開花を楽しむことが可能であり、パパイヤ栽培の合間に各花で癒される効果がある。以上の実施例では、3種類の竹籠を用いたが、2種類に減らすこともできる。
【0021】
図4は、前記ドーム型ハウスの側面斜視図、
図5は製作途中のトーム型屋根を示す斜視図である。パパイヤは沖縄県のような熱帯乃至亜熱帯の地域で育つ。しかし、台風の発生地域と重なるため、ハウスも台風に強い造りでないと維持できない。本発明では、居宅を含め、ハウスは風当たりの弱いドーム型にしてある。
【0022】
図4のように、屋根Rをドーム型にしてあるが、ドーム型にするため、
図5のように、竹材6を放射状に配置すると共に円錐状とし、中央のみ球面状7にしてある。そして、テント8を被せてある。側壁Wは、竹材9を菱状に編んで、菱編にしてあり、全体的に円筒状にしてある。このように、側壁Wは円筒状にしてあるので、風圧をまともに受けることは無く、両外側に反れるため、台風に成っても被害を受けることは少ない。また、屋根Rは円錐面と球面状とでドーム型にしてあるため、風圧は上側や両外側に反れる。その結果、屋根に暴風を受けても、風圧から受ける被害は少なく、このハウスを居宅として使用したり、パパイヤの増産を前記ハウスの中で管理するのに最適である。竹は撓り易いので、引っ張り強度や曲げ強度が強く台風に強いが、竹が入手困難な場合は木材や合成樹脂材、鉄材を代用しても良い。なお、壁Wは、風が通り易いように、
図4・5のように竹を編んで、風圧の一部は隙間を通過して逃げ、残りの風圧を受ける構成にしてもよい。なお、風圧を全部受ける場合は、台風(暴風)ネットを使用し、隙間は設けない。
【0023】
ドーム型のハウスに代えて、通常のハウスの風当たりの強い領域のみ、防虫ネットや暴風ネットを張る構造も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、外径の異なる大、中、小と3種類の竹籠入り混合土でパパイヤを育て、果実を出荷するので、パパイヤの木の各成長段階に適応した肥料成分を選択し制御でき、最適的なパパイヤ栽培が可能となる。また、本発明のパパイヤを栽培する農家の居宅は、台風予防に適し、パパイヤの成長に対応した栽培によって、理想的な増産が可能となる。大径の竹籠を車輪のようにして回転させると、移動が容易になる。
【符号の説明】
【0025】
A 小径の混合土入りの竹籠
B 中径の混合土入りの竹籠
C 大径の混合土入りの竹籠
P パパイヤの木
1~3 混合土
4 ひげ
R 屋根
5 円錐面
6 竹材
7 球面状部
8 テント
W 側壁
9 竹材
【手続補正書】
【提出日】2020-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パパイヤの苗から成長するまでの成長過程で必要とされる培土や肥料成分を得るために少なくとも2種類の径の異なる竹籠入り混合土を用い、苗から成長する過程で、より小径の竹籠をより大径の竹籠の中央に配設することを特徴とするパパイヤの増産方法。
【請求項2】
前記の竹籠に入れた混合土と大地との間が土で接しないように炭を介在させることを特徴とする請求項1記載のパパイヤの増産方法。
【請求項3】
円筒形の竹製の壁部の上にドーム形の屋根を有する居宅の中に前記の少なくとも2種類の竹籠入り混合土を配設することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパパイヤの増産方法。
【請求項4】
パパイヤの木が苗から成木に達するまでに、最小の竹籠、次により大径の竹籠の順に竹籠中の混合土で成育した後に、樹体が前記居宅の屋根に到達する前に、樹体の土壌面から30~40cmの高さで切り戻しを行なうことにより、側枝を発生させ、この側枝を同一混合土により引き続き栽培することを特徴とする請求項3に記載のパパイヤの増産方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、世界の食料難に貢献できるパパイヤの増産方法に関し、収穫量を増やすことを目的とする。
【背景技術】
【0002】
世界的に見た場合、人口増加に食料の増産が追いつかず、食料不足の国が問題となっている。
本発明は、パパイヤの増産技術の画期的な向上により、世界的な食料不足にも寄与てきると信じている。この画期的な増産技術の向上は、果実の生産効果の顕著なパパイヤにおいて、その弱点を克服してパパイヤの樹の成長時期に対応したり肥料を選択供給することで理想的な栽培を実現し、収穫量を増やすことを目的とする。
これに対し、パパイヤの栽培方法として、特許文献1のように施設内で均一な高品質の果実生産を安定かつ確実に行うことができ、しかも同一個体で収穫の長期化が可能となるパパイヤの栽培方法が提案されている。すなわち、わい性種パパイヤを茎頂点培養して得た雌株苗または両性株苗を、透水性、通気性の良好な培地で、個体ごとに地床から隔離して施設内で養液栽培を行い、パパイヤを栽培し、このようにして生育した樹体が施設の屋根に達した時点で、主幹基部から切り戻し、新たに発生した側枝を引き続き同一培地により施設内で養液栽培することで、新たに苗を植え替えるのに比べて再収穫時期を早めることができるとともに、同一個体から長期にわたる収穫が可能となるパパイヤの栽培方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植物は、成長のそれぞれの段階で必要とする肥料が異なる。従って、特許文献1のような方法では、新しい苗から果実の収穫までの各成長季に応じた成分を施肥できないので、苗や苗から成長する過程で栽培不良に遭遇すると、新たに発生した側枝を引き続き栽培して果実を生産しても、期待した成果が得られない。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、パパイヤの樹の各成長期に応じた施肥や栽培方法を制御するために、大径、中径、小径と3種類の外径の異なる竹籠入りの混合土を使い分ける方法を採る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、パパイヤの苗から成長するまでの成長過程で必要とされる培土や肥料成分を得るために少なくとも2種類の径の異なる竹籠入り混合土を用い、苗から成長する過程で、より小径の竹籠をより大径の竹籠の中央に配設することを特徴とするパパイヤの増産方法である。
【0006】
請求項2は、前記の竹籠に入れた混合土と大地との間が土で接しないように炭を介在させることを特徴とする請求項1記載のパパイヤの増産方法である。前記炭には木炭と竹炭が実用的だが、可能であれば竹炭が好適である。
【0007】
請求項3は、円筒形の竹製の壁部の上にドーム形の屋根を有する居宅の中に前記の少なくとも2種類の竹籠入り混合土を配設したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパパイヤの増産方法である。
【0008】
請求項4は、パパイヤの木が苗から成木に達するまで竹籠A、竹籠B、竹籠Cの順に混合土で成育した後に、樹体が前記居宅の屋根に到達する前に、樹体の土壌面から30~40cmの高さで切り戻しを行なうことにより、側枝を発生させ、この側枝を同一混合土により引き続き栽培することを特徴とする請求項3に記載のパパイヤの増産方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1のように、パパイヤの苗から成長するまでの成長過程で必要とされる培土や肥料成分を得るために少なくとも2種類の径の異なる竹籠入り混合土を用い、苗から成長する過程で、より小径の竹籠をより大径の竹籠の中央に配設するので、育苗期に適した肥料成分は最小径の竹籠中の混合土に混ぜておき、成長期に適した肥料成分は中径の竹籠中の混合土に混ぜておき、結実期に適した肥料成分は最大径の竹籠中の混合土に混ぜておくことで、各成長段階に合った肥料成分にするための制御が可能となり、理想的に品質が一定したパパイヤを生産し提供できる。更に、大径の竹籠を車輪にして回転できパパイヤの木の移動が容易になり、また大径の竹籠を支点にして倒すと、パパイヤの木を低くできるので、パパイヤの木や果実の手入れや管理が容易になる。
【0010】
パパイヤの樹は、土壌を介して伝染する病原菌の影響を受けて根腐れしたり、土壌菌に左右され易い。従って、請求項2のように、前記の竹籠に入れた混合土と大地との間が、菌に強い炭を介在させて土壌菌を遮断し、土壌菌を伝染させる土で接しないようにしている。
【0011】
前記居宅の中に前記の3種類の竹籠入り混合土を有してパパイヤを栽培している。パパイヤの育つ地域は、台風が多いので、パパイヤを生産する農家も台風に強い作りが望ましいが、請求項3のように、円筒形の竹製の壁部の上にドーム形の屋根を有する居宅は、家屋の壁部が円筒形のため、強風の風当たりが悪く、強風を受け難い。また竹製のため、強度に強い。屋根はドーム形のため風が反れ易く台風対策となり、強風が当たり難く反れ易い形状をしている。このような台風に強い居宅の中に前記の3種類の竹籠入り混合土でパパイヤを生産しているので、居ながらにして能率良くパパイヤ生産できる。
【0012】
パパイヤの木が苗から成木に達するまで竹籠A、B、Cの順に混合土で成長した後は、樹体が前記居宅の屋根に到達する恐れがある。その場合に備えて請求項4のように、樹体の土壌面から30~40cmの高さで切り戻しを行うことにより、側枝を発生させ、この側枝を同一混合土により引き続き最適に栽培し、パパイヤを結実させ増産する。
なお、竹籠の混合土に植えたパパイヤの木は、竹籠を倒せばパパイヤの木が傾斜して低くなるので、収穫などの作業が容易になる。従って、居宅の2階で作業すると便利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による竹籠の斜視図であり、小、中、大と外径の異なる3種類の竹籠を同心円状に配置して使用する。
【
図2】パパイヤの木の各成長段階に応じた各竹籠の使用時の縦断面図である。
【
図4】本発明によるパパイヤ農家の居宅の屋根を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示す居宅の側面の骨組みを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明によるパパイヤの増産方法が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。
図1は本発明による竹籠の斜視図であり、小、中、大と外径の異なる3種類の竹籠A、B、Cを同心円状に配置して使用するが、各竹籠A、B、Cは籠であるから無数の隙間が空いているので、パパイヤの木の根から出た髭は容易に外側に通過できる。底は無くても良いが、土が漏れない程度の粗目に編んだ編底でもよい。ただし、小石や炭の層を詰めて土壌菌が伝染するのを阻止し- 居る。底無しにして小石や炭の層を設けても良い。
これらの竹籠A、B、Cには、パパイヤ用として独自に混合した0成長段階で肥料成分の異なる混合土を入れておく。そしてその中に前記の3種類の竹籠入りの混合土1~3を有していてパパイヤを栽培している。
【0015】
具体的には、最小の竹籠(フィルムポット)Aには、中心軸にフィルムを張ってから、混合土1を入れて、育苗ポットとする。この混合土1は、クチャ土(弱アルカリ性)10%±5~15%、培養土(パパイヤ専用肥料)10%±5 ~15%、竹炭養液10%±4~15%である。竹炭( 殺菌力)70%±60~80で、竹組み籠(編目)粗目4cm)の組成である。
中枠すなわち中径の大きさの竹籠Bに入れる混合土2は、クチャ土(弱アルカリ性)20%±10~30%、培養土(パパイヤ専用肥料)20%±4~15%、竹炭養液(殺菌力)10%±4~15%である。そして、竹組み籠(編目)粗目2.5 cm)の組成である。
外枠すなわち最も大きい竹籠Cに入れる混合土3は、クチャ土(弱アルカリ性)40%±30~50%、培養土(パパイヤ専用肥料)30%±20~40%、竹炭( 殺菌力)30%±20~40から成る。外側の竹組み籠Cは、編目を締める作用をする。
【0016】
パパイヤ専用肥料とは特にアミノ酸効果を狙ったもので、以下の4つの特長を有する。
a.パパイヤの開花、結実を促進し、作物の甘味やうまみ、色艶を良くする。
b.アミノ酸は直接植物に吸収され、蛋白質に取り込まれる。
c.日照不足や低温、病原菌に強い抵抗力を持つ作物を作る。
d.土壌微生物が増殖し、団粒化を促進し、通気性、保湿を高める。
【0017】
なお、竹籠に収納した混合土から土壌菌が伝染しないように、竹籠の底全体に大小の鉢底石を敷き詰めるなどの手法で、土以外の材質で土壌を遮断するのが好ましい。
【0018】
パパイヤの木の苗Pを植えた育苗ポットAを中枠Bの中央に配置し、この中枠Bを最大径の籠すなわち外枠Cの中央に配置し、数日の時間が経つと
図2、
図3の状態に成長する。
図2は縦断面図、
図3は水平断面図である。中央の育苗ポットAに生えているパパイヤの苗Pのひげ4が、育苗ポットAから中枠竹籠Bの混合土を経由して外枠竹籠C中の混合土3に達している。このように、中央の育苗ポットAから中枠竹籠Bの混合土2を経由して外枠竹籠C中の混合土3に達するまでに、成分の異なる各混合土1、2、3を経ることで、パパイヤの木Pの成長の時期に対応した成分が吸収されて最適に成長する。
なお、土壌菌が伝染しないように、各混合土1、2、3は砂利石の層の上に載せてある。また、少なくとも外枠竹籠Cが丸いと、パパイヤの成木Pを回転させて移動でき、黒腐れ病などの病が発生した時の移動が容易であり、またパパイヤ栽培を終えて最終処理地点まで移動する際の回転移動ができる。
【0019】
前記のように、パパイヤの木Pが苗から成木に達するまで竹籠A、B、Cの順に混合土1~3で成長した後は、樹体が居宅などのハウスの屋根に到達した時点で又は屋根に到達する前に、樹体の主幹の土壌面から約30~40cm程度上方の基部から切り戻しを行うことにより側枝を発生させ、この側枝を同一混合土3により引き続き最適に栽培して結実させる。
【0020】
前記各混合土1、2、3には、パパイヤの栽培の邪魔に成らない時期に、コスモスや向日葵などを栽培して開花を楽しむことが可能であり、パパイヤ栽培の合間に各花で癒される効果がある。以上の実施例では、3種類の竹籠を用いたが、2種類に減らすこともできる。
【0021】
図4は、前記ドーム型ハウスの側面斜視図、
図5は製作途中のドーム型屋根を示す斜視図である。パパイヤは沖縄県のような熱帯乃至亜熱帯の地域で育つ。しかし、台風の発生地域と重なるため、ハウスも台風に強い造りでないと維持できない。本発明では、居宅を含め、ハウスは風当たりの弱いドーム型にしてある。
【0022】
図4のように、屋根Rをドーム型にしてあるが、ドーム型にするため、
図5のように、竹材6を放射状に配置すると共に円錐状とし、中央のみ球面状7にしてある。そして、テント8を被せてある。側壁Wは、竹材9を菱状に編んで、菱編にしてあり、全体的に円筒状にしてある。このように、側壁Wは円筒状にしてあるので、風圧をまともに受けることは無く、両外側に反れるため、台風に成っても被害を受けることは少ない。また、屋根Rは円錐面と球面状とでドーム型にしてあるため、風圧は上側や両外側に反れる。その結果、屋根に暴風を受けても、風圧から受ける被害は少なく、このハウスを居宅として使用したり、パパイヤの増産を前記ハウスの中で管理するのに最適である。竹は撓り易いので、引っ張り強度や曲げ強度が強く台風に強いが、竹が入手困難な場合は木材や合成樹脂材、鉄材を代用しても良い。なお、壁Wは、風が通り易いように、
図4・5のように竹を編んで、風圧の一部は隙間を通過して逃げ、残りの風圧を受ける構成にしてもよい。なお、風圧を全部受ける場合は、台風(暴風)ネットを使用し、隙間は設けない。
【0023】
ドーム型のハウスに代えて、通常のハウスの風当たりの強い領域のみ、防虫ネットや暴風ネットを張る構造も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、外径の異なる大、中、小と3種類の竹籠入り混合土でパパイヤを育て、果実を出荷するので、パパイヤの木の各成長段階に適応した肥料成分を選択し制御でき、最適的なパパイヤ栽培が可能となる。また、本発明のパパイヤを栽培する農家の居宅は、台風予防に適し、パパイヤの成長に対応した栽培によって、理想的な増産が可能となる。大径の竹籠を車輪のようにして回転させると、移動が容易になる。
【符号の説明】
【0025】
A 小径の混合土入りの竹籠
B 中径の混合土入りの竹籠
C 大径の混合土入りの竹籠
P パパイヤの木
1~3 混合土
4 ひげ
R 屋根
5 円錐面
6 竹材
7 球面状部
8 テント
W 側壁
9 竹材