(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047568
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】支持装置、支持方法および加工方法
(51)【国際特許分類】
B21D 39/02 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
B21D39/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153413
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】390020477
【氏名又は名称】トライエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003373
【氏名又は名称】特許業務法人石黒国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100124752
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】岡 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】東 和也
(72)【発明者】
【氏名】曲田 吉史
(72)【発明者】
【氏名】前田 侑斗
(57)【要約】
【課題】2つのローラによりワークの被加工部位を挟んでヘム加工するためにワークを支持する支持装置に関し、汎用性を高める。
【解決手段】支持装置1は、複数のアーム30と保持部31とを備える。まず、保持部31は、それぞれのアーム30に取り付けられ、ワーク2の表面に吸い付いてワーク2を保持する。また、保持部31は、ワーク2の表面に吸い付く吸着部32を有し、吸着部32がワーク2の表面に吸い付くときにワーク2の表面の形状に応じて変形し、吸着部32がワーク2の表面から離れるときに、ワーク2の表面に吸い付く前の形状に復元する。これにより、保持部31は、吸い付く表面の形状に応じて変形の態様を変えることで、ワーク2に対する保持能力を維持することができる。このため、支持装置1により、汎用性を高めることができる。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのローラによりワークの被加工部位を挟んでヘム加工するために前記ワークを支持する支持装置において、
複数のアームと、
それぞれのアームに取り付けられ、前記ワークの表面に吸い付いて前記ワークを保持する保持部とを備え、
前記保持部は、前記ワークの表面に吸い付く吸着部を有し、この吸着部が前記ワークの表面に吸い付くときに前記ワークの表面の形状に応じて変形し、前記吸着部が前記ワークの表面から離れるときに、前記ワークの表面に吸い付く前の形状に復元することを特徴とする支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の支持装置において、
複数のアームを着脱自在に保持するベースを備えることを特徴とする支持装置。
【請求項3】
請求項2に記載の支持装置において、
前記ベースを2つ備えることを特徴とする支持装置。
【請求項4】
請求項3に記載の支持装置において、
前記2つのベースに接続する複数の接続アームを備え、
この接続アームは、前記2つのベースの両方に着脱自在であることを特徴とする支持装置。
【請求項5】
2つのローラによりワークの被加工部位を挟んでヘム加工するために前記ワークを支持する支持方法において、
この支持方法に用いられる支持装置は、
複数のアームと、
それぞれのアームに取り付けられ、前記ワークの表面に吸い付いて前記ワークを保持する保持部とを備え、
前記保持部は、前記ワークの表面に吸い付く吸着部を有し、この吸着部が前記ワークの表面に吸い付くときに前記ワークの表面の形状に応じて変形し、前記吸着部が前記ワークの表面から離れるときに、前記ワークの表面に吸い付く前の形状に復元し、
前記被加工部位を挟む両側の内、一方のローラが配置される側を一方側、他方のローラが配置される側を他方側と定義すると、
前記支持方法では、
前記保持部を、前記ワークの表面の内、前記一方側の表面に、前記一方側から吸い付かせることを特徴とする支持方法。
【請求項6】
請求項5に記載の支持方法において、
前記支持装置は、前記複数のアームを着脱自在に保持するベースを備え、
このベースを、前記複数のアームが接続した状態で、前記ワークの前記一方側に配置するとともに、前記保持部を、前記ワークの表面の内、前記一方側の表面に吸い付かせることを特徴とする支持方法。
【請求項7】
請求項6に記載の支持方法において、
前記支持装置は、前記複数のアームを着脱自在に支持する2つのベースを備え、
前記支持方法では、
一方のベースを、前記複数のアームが接続した状態で、前記ワークの前記一方側に配置するとともに、前記一方のベースに接続するアームに取り付けられた保持部を、前記ワークの表面の内、前記一方側の表面に吸い付かせ、
他方のベースを、前記複数のアームが接続した状態で、前記ワークの前記他方側に配置するとともに、前記他方のベースに接続するアームに取り付けられた保持部を、前記ワークの表面の内、前記他方側の表面に吸い付かせることを特徴とする支持方法。
【請求項8】
請求項7に記載の支持方法において、
前記支持装置は、前記2つのベースに接続する複数の接続アームを備え、
前記支持方法では、
前記一方、他方のベースを、それぞれ前記ワークの前記一方側、前記他方側に配置するとともに、前記一方、他方のベースに接続するアームに取り付けられた保持部を、それぞれ、前記ワークの表面の内、前記一方側、前記他方側の表面に吸い付かせた状態で、前記ワークの外側から前記複数の接続アームを前記2つのベースに接続することを特徴とする支持方法。
【請求項9】
請求項8に記載の支持方法により支持されたワークの加工方法において、
前記被加工部位をヘム加工するときには、前記複数の接続アームの内、少なくとも1つを前記2つのベースから離脱させ、その後、順次、前記2つのベースから離脱させる接続アームを切り替えることを特徴とする加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークの被加工部位をヘム加工するためにワークを支持する支持装置、および、支持方法、ならびに、この支持方法により支持されたワークの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、自動車のボディ等の生産工程では、インナパネルおよびアウタパネルからなるワークの被加工部位を、ロボットに装着したローラによりヘム加工する加工方法が周知である(例えば、特許文献1参照。)。このようなヘム加工では、ワークの形状に応じた下型を製作しておき、下型の上にワークを載せる。そして、ローラと下型とにより被加工部位を挟むとともに、ローラを3次元的に移動させつつ、ローラから被加工部位に対して加工力を加える。このとき、下型が被加工部位を受けることで、被加工部位をヘム加工することができる。
【0003】
このため、特許文献1の加工方法によれば、ワークの形状ごとに下型を準備する必要があり、汎用性が低い。そこで、下型を用いることなく、被加工部位を受けてローラによるヘム加工を可能にする加工装置が考えられている(例えば、特許文献2参照。)。
特許文献2によれば、被加工部位を受ける受けローラ、および、受けローラに受けられている被加工部位に対して加工力を及ぼす加工ローラが設けられ、受けローラは、3次元空間的に位置が固定され、加工ローラは、受けローラに対し回転軸同士を平行に保ちつつ、接近したり、離れたりすることができるように組み付けられている。
【0004】
さらに、特許文献2によれば、ワークを保持しながら3次元的に移動させることができる支持装置を備える。この支持装置は、ロボット、および、ロボットに装着されたアタッチメントを備え、このアタッチメントには、被加工部位を受けローラおよび加工ローラにより挟みつつワークを移動させることができる保持機構が設けられている。このため、特許文献2によれば、下型を用いることなく、被加工部位をヘム加工することができる、とされている。
【0005】
ところで、特許文献2の保持機構は、クッション性の材料からなる複数のパネル受けを、それぞれアームの先端に装着してワーク表面の複数の個所に配置することで、ワークを位置決めする。このため、特許文献1の支持装置は、下型を必要としないものの、パネル受けの配置をワークの形状に応じて変更する必要があり、汎用性が低いと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-305357号公報
【特許文献2】特開平7-132327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、2つのローラによりワークの被加工部位を挟んでヘム加工するためにワークを支持する支持装置に関し、汎用性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の支持装置は、2つのローラによりワークの被加工部位を挟んでヘム加工するためにワークを支持するものであり、複数のアームと、次のような保持部とを備える。すなわち、保持部は、それぞれのアームに取り付けられ、ワークの表面に吸い付いてワークを保持する。そして、保持部は、ワークの表面に吸い付く吸着部を有し、吸着部がワークの表面に吸い付くときにワークの表面の形状に応じて変形し、吸着部がワークの表面から離れるときに、ワークの表面に吸い付く前の形状に復元する。
【0009】
また、被加工部位を挟む両側の内、一方のローラが配置される側を一方側、他方のローラが配置される側を他方側と定義すると、本開示の支持方法では、保持部を、ワークの表面の内、一方側の表面に、一方側から吸い付かせる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ヘム加工装置の全体構成図である(実施例)。
【
図2】ワークの被加工部位を示す説明図である(実施例)。
【
図3】ヘム加工装置の要部を示す説明図である(実施例)。
【
図4】第1加工ローラ、第2加工ローラおよび受けローラそれぞれの回転軸の位置を示す説明図である(実施例)。
【
図5】第1加工ローラの公転の様子を示す説明図である(実施例)。
【
図6】受けローラと支持体との組み合わせの変形品を示す説明図である(実施例)。
【
図7】第1加工ローラと受けローラとによる第1段階の加工を示す説明図である(実施例)。
【
図8】第2加工ローラと受けローラとによる第2段階の加工を示す説明図である(実施例)。
【
図10】保持部によりワークを保持する状態を示す説明図である(実施例)。
【
図11】支持装置によりワークを支持する状態を一方のベースの方から視た説明図である(実施例)。
【
図12】支持装置によりワークを支持する状態を他方のベースの方から視た説明図である(実施例)。
【
図14】
図9において一部のアームおよび接続アームを除去した状態のXI矢視図である(実施例)
【
図15】アウタ側配置部の組み立ての様子を示す説明図である(実施例)。
【
図16】インナ側配置部の組み立ての様子を示す説明図である(実施例)。
【
図17】アウタ側配置部とインナ側配置部とでワークを挟んで支持する様子を示す説明図である(実施例)。
【
図18】アウタ側配置部、インナ側配置部およびワークの一体物に接続アームを接続する様子を、他方のベースの方から視て示す説明図である(実施例)。
【
図19】アウタ側配置部、インナ側配置部およびワークの一体物に接続アームを接続する様子を、側方から視て示す説明図である(実施例)。
【
図20】離脱時加工範囲を示す説明図である(実施例)。
【
図21】受けローラと支持体との組み合わせの変形品を示す説明図である(変形例)。
【
図23】保持部によりワークを保持する状態を示す説明図である(実施例)。
【
図25】支持装置によりワークを支持する状態を側方から視た説明図である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態の支持装置を、以下の実施例に基づき説明する。
【実施例0012】
〔実施例の構成〕
実施例1の支持装置1の構成を、図面を用いて説明する。
支持装置1は、2つのローラによりワーク2の被加工部位3を挟んでヘム加工するためにワーク2を支持するものであり、多関節のロボット4、および、制御装置6等とともに、ヘム加工装置100を構成する(
図1等参照。)。
【0013】
ここで、ロボット4は、関節に電動モータが組み付けられた周知の構造を有し、例えば、水平面と平行な設置面9に設置されている。また、ロボット4の先端には、ローラ等の、ワーク2をヘム加工するための各種の機能部がエンドエフェクタ4Eとして装着されている。また、制御装置6は、ロボット4や支持装置1等の動作を制御するものであり、周知のマイクロコンピュータを含んで構成されている。
【0014】
また、ワーク2は、例えば、自動車のボディ等の生産工程で加工されるものであり、アウタパネル11にインナパネル12を重ねて、アウタパネル11の周縁部を、インナパネル12の側に略90°折り曲げたものである(
図2等参照。)。また、被加工部位3は、例えば、アウタパネル11の内、略90°折り曲げられた周縁部、および、周縁部の手前側の部分、ならびに、インナパネル12の周縁部である(以下、アウタパネル11の内、略90°折り曲げられた周縁部を折り曲げ部13と呼ぶことがある。また、周縁部の手前側の部分を受け部14と呼ぶことがある。)。
【0015】
そして、2つのローラの内、一方のローラを折り曲げ部13に当接させるとともに、他方のローラを受け部14に当接させることで、2つのローラにより被加工部位3を挟んでヘム加工する。これにより、インナパネル12の周縁部が折り曲げ部13と受け部14とに挟み込まれる(
図7および
図8等参照。)。
以下、支持装置1の説明に先立ち、ローラ等のヘム加工に係わる部分(以下、ヘム加工部100Aと呼ぶことがある。)について説明する。なお、ヘム加工部100Aは、2つのローラにより被加工部位3を挟んでヘム加工するときに、例えば、2段階に分けて被加工部位3をヘム加工するものである。
【0016】
まず、ヘム加工部100Aは、次の第1、第2駆動部16、17を備える。
第1駆動部16は、2段階の内、先の第1段階で被加工部位3を加工するときに使用される2つのローラの内、一方のローラを、2つのローラの回転軸を含む平面Xに垂直な中心軸αの周囲に公転させる(
図4および
図5等参照。)。また、第1駆動部16は、ロボット4の先端に装着されてロボット4のエンドエフェクタ4Eの1つをなすものであり、例えば、電動モータ、タイミングベルトおよびプーリー等により構成される周知の駆動機構である。そして、第1駆動部16は、制御装置6による制御により、動作を制御される。
【0017】
第2駆動部17は、2段階の内、後の第2段階で被加工部位3を加工するときに使用される2つのローラの内、一方のローラを、自身の回転軸と垂直な方向へ平行移動させる。また、第2駆動部17は、第1駆動部16とともに、ロボット4の先端に装着されてエンドエフェクタ4Eの1つをなすものであり、例えば、電動モータおよびボールネジ等により構成される周知の駆動機構である。そして、第2駆動部17は、制御装置6による制御により、動作を制御される。
【0018】
ここで、第1駆動部16により駆動されるローラと、第2駆動部17により駆動されるローラとは、別体である(以下、第1駆動部16により駆動されるローラを第1加工ローラ19と呼ぶことがある。また、第2駆動部17により駆動されるローラを第2加工ローラ20と呼ぶことがある。)。
【0019】
また、ヘム加工部100Aは、次の受けローラ21を備える。
すなわち、受けローラ21は、第1段階で、第1加工ローラ19とともに被加工部位3を挟むローラであり、かつ、第2段階で、第2加工ローラ20とともに被加工部位3を挟むローラである。
【0020】
そして、第1加工ローラ19、第2加工ローラ20、および、受けローラ21は、第1、第2駆動部16、17とともに、ロボット4の先端に装着されエンドエフェクタ4Eをなす。また、第1加工ローラ19、および、第2加工ローラ20は、受けローラ21を挟むように配置されている。
【0021】
より具体的には、第1加工ローラ19、第2加工ローラ20、および、受けローラ21それぞれの回転軸は、同一の平面X上に含まれ、受けローラ21の回転軸は、第1、第2加工ローラ19、20それぞれの回転軸により挟まれている(
図4および
図5等参照。)。以下、第1、第2加工ローラ19、20、および、受けローラ21それぞれの回転軸を回転軸19α、20α、21αと呼ぶことがある。
【0022】
さらに、第1駆動部16による第1加工ローラ19の公転駆動に関し、第1加工ローラ19の公転の中心軸αは上記のように平面Xに垂直である。そして、第1加工ローラ19の回転軸19αは、中心軸αの周囲に、平面X上で公転する(
図4および
図5等参照。)。また、実施例の中心軸αは、第1加工ローラ19の回転面と平面Xとの2本の交線の内、受けローラ21の回転面に近い方の交線Lcの一方端Lceにおいて、平面Xに交差している。
【0023】
このため、第1駆動部16の動作により、回転軸19aは、平面X上で一方端Lceを中心に公転し、また、交線Lcは、平面X上で一方端Lceを中心に回転する。なお、一方端Lceとは、交線Lcの両端の内、第1駆動部16に近い方の端である。
また、第2駆動部17による第2加工ローラ20の平行移動に関し、第2加工ローラ20の回転軸20αは平面X上で平行移動する。
【0024】
以上により、第1段階では、受けローラ21の回転面で受け部14を受けつつ、第1加工ローラ19の回転面を折り曲げ部13に押し当てて、エンドエフェクタ4Eを3次元的に移動させる(
図7等参照。)。これにより、折り曲げ部13を受け部14に対して所望の角度の位置まで曲げる。また、第2段階では、受けローラ21の回転面で受け部14を受けつつ、第2加工ローラ20の回転面を折り曲げ部13に押し当てて、エンドエフェクタ4Eを3次元的に移動させる(
図8等参照。)。これにより、折り曲げ部13を受け部14に対して0°の位置まで曲げる。
【0025】
さらに、ヘム加工装置100は、次の支持体23を備える。
すなわち、支持体23は、受けローラ21を回転自在に支持するとともに、受けローラ21の回転軸21αと平行な方向に移動することで所定の被接続部24に接続されるものである。
【0026】
ここで、支持体23は、ロボット4の先端で受けローラ21を回転自在に支持するための部品である。また、被接続部24は、ロボット4の先端に固定されており、支持体23を被接続部24に接続することで、受けローラ21は、ロボット4の先端に回転自在に装着される。そして、支持体23が被接続部24に接続された状態で、第1段階で第1加工ローラ19と受けローラ21とにより被加工部位3を挟み、第2段階で第2加工ローラ20と受けローラ21とにより被加工部位3を挟んで加工を行う。
【0027】
また、受けローラ21と支持体23との組み合わせには、受けローラ21の径が異なる変形品が複数存在し、これら変形品は、次の基準を満たすように設けられている(
図6等参照。)。すなわち、変形品同士は、受けローラ21と被加工部位3とが接触する位置Pと接続軸25αとの距離Lが互いに等しくなるように設けられている。ここで、接続軸25αとは、支持体23の内、被接続部24に接続する接続部25に設定される軸であり、受けローラ21の回転軸αと平行に設定されるものである。
【0028】
実施例の接続部25は、例えば、互いに平行に設けられた棒状の2本の円筒部25a、25bであり、被接続部24には、円筒部25a、25bがそれぞれ嵌る2つの嵌合穴24a、24bが設けられている。また、円筒部25a、25bには、それぞれ嵌合穴24a、24bに対する抜け止めが設けられている。そして、接続部25の態様は変形品同士で共通しており、接続軸25αは、例えば、一方の円筒部25aの中心軸として設定されている。
【0029】
ここで、実施例における受けローラ21と支持体23との組み合わせの変形品27A、27Bを例示する。変形品27A、27B間では、受けローラ21の径に関し、変形品27Aの方が変形品27Bよりも小さい。また、回転軸21αの位置に関し、変形品27Aの方が変形品27Bよりも、受けローラ21の径が小さい分だけ位置Pの方に偏っている。
【0030】
次に、支持装置1について説明する(
図9~
図20等参照。)。
支持装置1は、第1加工ローラ19と受けローラ21とにより、また、第2加工ローラ20と受けローラ21とにより、被加工部位3を挟んで加工することができるように、ワーク2を支持するものである。つまり、支持装置1は、下型を用いることなくワーク2を支持するものであり、複数のアーム30と、次のような保持部31とを備える。
【0031】
すなわち、保持部31は、それぞれのアーム30に取り付けられ、ワーク2の表面に吸い付いてワーク2を保持する。そして、保持部31は、ワーク2の表面に吸い付く吸着部32を有し(
図9および
図10等参照。)、吸着部32がワーク2の表面に吸い付くときにワーク2の表面の形状に応じて変形し、吸着部32がワーク2の表面から離れるときに、ワーク2の表面に吸い付く前の形状に復元する。
【0032】
ここで、吸着部32は、例えば、ゴム製の吸着パッドであり、吸着パッドの内側を真空引きするための蛇腹状の筒体が一体化している。なお、蛇腹状の筒体もゴム製であり、自在に変形する。
また、保持部31は、吸着部32とともに、次のような変形部33を有する。変形部33は、ワーク2の表面の内、吸着部32が吸い付いた部分の周囲の形状に倣って変形する部分である。
【0033】
実施例の変形部33は、複数の当接棒33a、当接棒33aを付勢する付勢手段33b、ならびに、当接棒33aおよび付勢手段33bを保持する保持器33c等を有する。
【0034】
まず、複数の当接棒33aは、吸着部32を外周側から包囲する円筒を形成するように、保持器33cに保持されている。ここで、保持器33cは、円筒状の壁部を有し、内周に吸着部32を収容する。また、壁部には、当接棒33aおよび付勢手段33bを収容する収容孔33dが周方向に等角度間隔で、複数、設けられている。また、付勢手段33bは、例えば、コイルスプリングである。そして、収容孔33dの底側から付勢手段33bおよび当接棒33aを順次に収容し、当接棒33aを収容孔33dから突き出させる。
【0035】
これにより、吸着部32において真空引きされて吸着部32がワーク2の表面に吸い付くと、複数の当接棒33aは、吸着部32が吸い付いた部分の周囲に当接し、それぞれ、当接する部位の形状に応じて、収容孔33dの底側に押されて付勢手段33bを弾性圧縮する。このため、変形部33は、吸着部32が吸い付いた部分の周囲の形状に倣って変形する。さらに、吸着部32において真空引きの状態が解除されてワーク2が取り除かれると、付勢手段33bの付勢力により、元の形状に復元する。
【0036】
また、支持装置1は、次のような2つのベース35A、35Bを備える(
図11~
図14等参照。)。
すなわち、ベース35A、35Bは、それぞれ複数のアーム30を着脱自在に保持するものであり、例えば、一方のベース35Aは扁平な正八角柱状の形態を有し、他方のベース35Bは扁平な直方体状の形態を有する。
【0037】
そして、ベース35A、35Bの側面、および、アーム30の一端には、ベース35Aとアーム30とが着脱自在となるように、また、ベース35Bとアーム30とが着脱自在となるように、着脱機構が設けられている。具体的には、ベース35A、35Bの側面には、着脱機構の一方を担うマスター側のパーツ36Aが設けられている。また、アーム30の一端には、着脱機構の他方を担うアダプタ側のパーツ36Bが設けられている。
【0038】
より具体的には、マスター側、アダプタ側のパーツ36A、36Bそれぞれには、凹凸嵌合を形成する凸側、凹側の構造が設けられ、また、パーツ36Aには、パーツ36Bに嵌まっている状態でパーツ36Bに対する締結力を増減する構成が設けられている。なお、この締結力は、例えば、制御装置6からの指令に応じて圧力空気の流出入により増減される。
【0039】
また、ベース35Aでは、例えば、正八角形の各辺の位置それぞれにパーツ36Aが設けられ、8つの箇所でアーム30の着脱が可能である。また、ベース35Bでは、例えば、長方形の各辺の中央それぞれにパーツ36Aが設けられ、さらに、長辺の中央に設けられたパーツ36Aの両側にパーツ36Aが設けられ、8つの箇所でアーム30の着脱が可能である。
【0040】
さらに、支持装置1は、次のような接続アーム38を、複数、備える。
すなわち、接続アーム38は、略コの字状に設けられ、両端にアダプタ側のパーツ36Bが設けられている。そして、接続アーム38は、ベース35A、35Bを連結するために使用され、ベース35A、35Bの両方に接続する。
【0041】
続いて、実施例の支持装置1を用いたワーク2の支持方法を説明する。
ここで、被加工部位3を挟む両側の内、アウタパネル11の側をアウタ側、インナパネル12の側をインナ側と定義する(
図17等参照。)。
【0042】
実施例の支持方法では、支持装置1の内、アウタ側、インナ側それぞれの側に配置されるアウタ側、インナ側配置部40、41を組み立てる(
図15~
図17等参照。)。
まず、アウタ側配置部40は、例えば、ベース35Aの8つのパーツ36Aの1つおきに、つまり、8つのパーツ36Aの内、4つのパーツ36Aに、アーム30のパーツ36Bを締結したものである。
【0043】
また、インナ側配置部41は、例えば、ベース35Bの8つのパーツ36Aの内、2つの長辺の両端に、つまり、8つのパーツ36Aの内、4つのパーツ36Aに、アーム30のパーツ36Bを締結したものである。
以下、ベース35A、35Bに接続するアーム30を、それぞれアーム30A、30Bと呼ぶことがある。
【0044】
次に、アウタ側配置部40を、ワーク2のアウタ側に配置するとともに、アーム30Aの保持部31を、アウタパネル11の表面に吸い付かせる。また、インナ側配置部41を、ワーク2のインナ側に配置するとともに、アーム30Bの保持部31を、インナパネル12の表面に吸い付かせる(
図17等参照。)。
【0045】
さらに、アーム30Aの保持部31、アーム30Bの保持部31を、それぞれアウタ、インナパネル12の表面に吸い付かせた状態で、ワーク2の外側から4つの接続アーム38をベース35A、35Bに接続する。このとき、ベース35A、35Bそれぞれで残りの4つのパーツ36Aに、接続アーム38のパーツ36Bを締結する(
図18および
図19等参照。)。
【0046】
その後、ワーク2、接続アーム38およびアウタ側、インナ側配置部40、41の一体物、つまり、ワーク2を支持した支持装置1を、例えば、ロボット4と同一の設置面9上に配置したターンテーブル43に取り付け(
図1等参照。)、被加工部位3に対するヘム加工を開始する。このとき、例えば、アウタ側配置部40を構成するベース35Aをターンテーブル43に取り付ける。つまり、アウタ側配置部40を設置面9の側に配置して設置面9の側から支持し、インナ側配置部41を、接続アーム38を介して設置面9の側から支持する。
【0047】
〔実施例の加工方法〕
次に、実施例の支持装置1を用いたワーク2の加工方法を説明する。
まず、被加工部位3をヘム加工するときには、4つの接続アーム38の間で、ベース35A、35Bから離脱させる接続アーム38を、順次、切り替える(以下、4つの接続アーム38を、それぞれ、接続アーム38A、38B、38C、38Dと呼ぶことがある。)。
【0048】
ここで、被加工部位3の全範囲は、接続アーム38A、38B、38C、38Dごとに設定された離脱時加工範囲3A、3B、3C、3Dに分割されている(
図20等参照。)。離脱時加工範囲3Aとは、接続アーム38Aがベース35A、35Bから離脱して残りの接続アーム38B、38C、38Dがベース35A、35Bに接続している状態で加工が可能な範囲であり、他の離脱時加工範囲3B、3C、3Dについても同様に設定されている。
【0049】
そして、例えば、まず、接続アーム38Aを、ベース35A、35Bから離脱させ、インナ側配置部41を、接続アーム38B、38C、38Dを介して設置面9の側から支持する状態にする。この状態で、エンドエフェクタ4Eを離脱時加工範囲3Aに近付け、離脱時加工範囲3Aに第1段階の加工を施す。
【0050】
このとき、第1加工ローラ19を、予め、第1駆動部16に対する制御により、第1段階の加工に適した位置まで公転させておく。例えば、第1段階で折り曲げ部13を受け部14に対して45°の位置まで曲げる場合、第1加工ローラ19を、第1駆動部16により中心軸αの周囲に公転させ、第1加工ローラ19および受けローラ21それぞれの回転軸19α、21α同士が形成する角度を45°に合わせておく。
【0051】
そして、離脱時加工範囲3Aにおいて、例えば、受けローラ21を受け部14に当接させるとともに、第1加工ローラ19を折り曲げ部13に当接させた状態で、エンドエフェクタ4Eを移動させ第1段階の加工を進める(
図7等参照。)。その後、離脱時加工範囲3Aにおいて、第1段階の加工を終えたら、エンドエフェクタ4Eを離脱時加工範囲3Aから後退させる。
【0052】
続いて、接続アーム38Aを、再度、ベース35A、35Bに接続するとともに、接続アーム38Bをベース35A、35Bから離脱させ、インナ側配置部41を、接続アーム38A、38C、38Dを介して設置面9の側から支持する状態にする。そして、エンドエフェクタ4Eを離脱時加工範囲3Bに近付け、離脱時加工範囲3Bに第1段階の加工を施す。以下、同様の操作を、接続アーム38C、38Dおよび離脱時加工範囲3C、3Dに対して繰り返す。
【0053】
その後、離脱時加工範囲3A、3B、3C、3D全てにおいて第1段階の加工を終えたら、例えば、ロボット4の先端を180°回転させて第1加工ローラ19の位置と第2加工ローラ20の位置とを反転させる。そして、離脱時加工範囲3A、3B、3C、3Dの順で、離脱時加工範囲3A、3B、3C、3Dに第2段階の加工を施す。
【0054】
すなわち、まず、接続アーム38Aを、ベース35A、35Bから離脱させ、インナ側配置部41を、接続アーム38B、38C、38Dを介して設置面9の側から支持する状態にする。この状態で、反転後のエンドエフェクタ4Eを離脱時加工範囲3Aに近付け、離脱時加工範囲3Aに第2段階の加工を施す。なお、第2段階の加工では、受けローラ21を受け部14に当接させるとともに、第2加工ローラ20を折り曲げ部13に当接させた状態で、エンドエフェクタ4Eを移動させる(
図8等参照。)。
【0055】
ここで、第2段階の加工では、第2加工ローラ20を、第2駆動部17に対する制御により、自身の回転軸20αに垂直な方向へ移動させながら、被加工部位3に作用する加圧力を調節する。つまり、第2段階の加工では、エンドエフェクタ4Eを移動させながら、第2加工ローラ20と受けローラ21との距離を操作しつつ、被加工部位3に作用する加圧力を調節する。これにより、離脱時加工範囲3Aにおいて、加圧力を調節しつつ折り曲げ部13を受け部14に対して0°の位置まで曲げていく。その後、離脱時加工範囲3Aにおいて、第2段階の加工を終えたら、エンドエフェクタ4Eを離脱時加工範囲3Aから後退させる。
【0056】
続いて、接続アーム38Aを、再度、ベース35A、35Bに接続するとともに、接続アーム38Bをベース35A、35Bから離脱させ、インナ側配置部41を、接続アーム38A、38C、38Dを介して設置面9の側から支持する状態にする。そして、エンドエフェクタ4Eを離脱時加工範囲3Bに近付け、離脱時加工範囲3Bに第2段階の加工を施す。以下、同様の操作を、接続アーム38C、38Dおよび離脱時加工範囲3C、3Dに対して繰り返す。
【0057】
〔実施例の効果〕
実施例の支持装置1は、2つのローラによりワーク2の被加工部位3を挟んでヘム加工するためにワーク2を支持するものであり、複数のアーム30と、次のような保持部31とを備える。すなわち、保持部31は、それぞれのアーム30に取り付けられ、ワーク2の表面に吸い付いてワーク2を保持する。
【0058】
また、保持部31は、ワーク2の表面に吸い付く吸着部32を有し、吸着部32がワーク2の表面に吸い付くときにワーク2の表面の形状に応じて変形し、吸着部32がワーク2の表面から離れるときに、ワーク2の表面に吸い付く前の形状に復元する。
これにより、ワーク2の品種切り替えにより吸着部32が吸い付く表面の形状が変わっても、保持部31は、表面の形状に応じて変形の態様を変えることで、ワーク2に対する保持能力を維持することができる。このため、支持装置1により、汎用性を高めることができる。
【0059】
また、支持装置1によれば、アーム30は、ベース35A、35Bに着脱自在に保持されている。
これにより、アーム30として様々な形状のバリエーションを準備しておくことで、品種切り替え等により、支持すべきワーク2の形態が大幅に変わっても、アーム30を切り替えることで、ワーク2に対する保持能力を維持することができる。このため、支持装置1の汎用性を、更に高めることができる。
【0060】
また、支持装置1は、2つのベース35A、35Bを備える。
これにより、実施例のワーク2のように、ワーク2を被加工部位3の両側から保持する必要がある場合に、ワーク2の両側の表面形状が大きく変更されても、両側の表面に対する保持能力を維持することができる。
【0061】
また、支持装置1は、ベース35A、35Bの両方に接続する接続アーム38を備え、接続アーム38は、ベース35A、35Bの両方に着脱自在である。そして、実施例の支持方法によれば、アウタ側、インナ側配置部40、41のアーム30に取り付けられた保持部31を、それぞれ、アウタ、インナパネル11、12の表面に吸い付かせた状態で、ワーク2の外側から接続アーム38をベース35A、35Bに接続する。
【0062】
これにより、ワーク2に開口部2Aが存在しない場合に、アウタ側、インナ側配置部40、41を両方とも設置面9の側から支持することができる。
つまり、ワーク2に開口部2Aが存在する場合(
図24および
図25等参照。)、ベース35A、35Bを接続する柱体45を開口部2Aに通すことで、アウタ側、インナ側配置部40、41を両方とも、設置面9の側から支持することができる。
【0063】
しかし、ワーク2に開口部2Aが存在しない場合、インナ側配置部41を、柱体45を用いて設置面9の側から支持することができない。
そこで、ワーク2の外側から接続アーム38をベース35A、35Bに接続することにより、ワーク2に開口部2Aが存在しない場合でも、アウタ側配置部40を設置面9の側に配置して支持し、インナ側配置部41を、接続アーム38を介して設置面9の側から支持することができる。このため、ワーク2に開口部2Aが存在しない場合でも、アウタ側、インナ側配置部40、41を両方とも、設置面9の側から支持することができる。
【0064】
さらに、実施例の加工方法によれば、被加工部位3をヘム加工するときに、4つの接続アーム38A、38B、38C、38Dの間で、ベース35A、35Bから離脱させるものを、順次、切り替える。
これにより、エンドエフェクタ4E等と接続アーム38との立体干渉を回避しながら、ヘム加工を行うことができる。
【0065】
〔変形例〕
実施例は具体的な一例を開示するものであり、本発明は、実施例に限定されない。
例えば、実施例のヘム加工部100Aは、第1、第2加工ローラ19、20、および、受けローラ21を1個ずつ備え、受けローラ21は、第1、第2段階の両方の加工で使用されていたが、ローラの態様は、このような態様に限定されない。
【0066】
例えば、第1、第2段階の加工で使用する受け側のローラを個別に設けてもよい。また、受け側のローラを設けずに、第1段階では、第2加工ローラ20を受け側のローラとして使用し、第2段階では、第1加工ローラ19を受け側のローラとして使用してもよい。さらに、1つのローラを第1、第2駆動部16、17の両方で駆動できるようにしておき、このローラと受けローラ21とで被加工部位3を挟んで加工してもよい。
【0067】
また、ヘム加工部100Aによれば、第1加工ローラ19の公転の中心軸αは平面Xに直交するとともに、第1加工ローラ19の回転面と平面Xとの2本の交線の内、受けローラ21の回転面に近い方の交線Lcの一方端Lceにおいて、平面Xに交差していたが、中心軸αの位置はこのような位置に限定されない。
つまり、中心軸αの位置は、回転軸19αの公転により、第1段階の加工後の折り曲げ部13と受け部14との間に形成される角度を変化させることが可能であればよく、例えば、回転軸19αに交差するように中心軸αを設定してもよい。
【0068】
また、ヘム加工部100Aによれば、第1、第2加工ローラ19、20、および、受けローラ21を、1つのロボット4にエンドエフェクタ4Eとして装着し、ワーク2を支持した支持装置1をターンテーブル43に取り付けて、被加工部位3に対するヘム加工を行っていたが、ローラを装着する態様や支持装置1の態様は、このような態様に限定されない。
例えば、ワーク2を支持した支持装置1をロボット4にエンドエフェクタとして装着することで、ワーク2の3次元的な移動の自由度を高めてもよい。
【0069】
また、ヘム加工装置100によれば、受けローラ21と支持体23との組み合わせには、受けローラ21の径が異なる変形品が複数存在し、これら変形品同士は、受けローラ21と被加工部位3とが接触する位置Pと接続軸25αとの距離Lが互いに等しくなるように設けられていたが、受けローラ21と支持体23との組み合わせの態様は、このような態様に限定されない。
【0070】
例えば、
図21に示すように、接続部25を1本の棒状の円筒部で設けるとともに、被接続部24には1つの篏合穴24cを設けて篏合穴24cに1本の接続部25が嵌まるようにし、接続軸25αを受けローラ21の回転軸21αと同軸に設定してもよい。この場合、被接続部24をロボット4に対して移動自在にすることで、受けローラ21の径を変更しても、位置Pを略一定に維持することができる。
【0071】
また、支持装置1の保持部31によれば、変形部33は、複数の当接棒33a、当接棒33aを付勢する付勢手段33b、ならびに、当接棒33aおよび付勢手段33bを保持する保持器33c等により構成されていたが、変形部33の態様は、このような態様に限定されない。
例えば、変形部33を、
図22および
図23に示すような回転部33f、内外嵌合部33g、および、付勢手段33h等により構成してもよい。
【0072】
ここで、回転部33fは、吸着部32を回動自在に支持するものであり、内外嵌合部33gは、例えば、回転部33fに接続する内側部、および、付勢手段33hにより付勢される外側部を有し、内側部と外側部との間に形成される空間を負圧吸引することにより内側部と外側部との締結力を強化するものである。また、付勢手段33hは、外側部を吸着部32の方に向かって付勢するものであり、具体的には、コイルスプリングが採用されている。
【0073】
そして、吸着部32がワーク2の表面に吸い付くと、吸い付いた部位の形状に応じて、回転部33fの動作により吸着部32の回動角が調節され、また、吸い付いた部位の形状に応じて、付勢手段33hが撓んで内外嵌合部33gの長さが調節される。その後、内外嵌合部33gを負圧吸引することで、吸着部32の回動角や内外嵌合部33gの長さが調節された状態で安定する。
【0074】
また、支持装置1によれば、アウタ側、インナ側配置部40、41では、アーム30がベース35A、35Bに着脱自在であったが、ベース35A、35Bを使用せず、アーム30同士をネジ締結等により強固に固定したものをアウタ側、インナ側配置部40、41として用いてもよい。
【0075】
また、支持装置1によれば、ワーク2の外側からベース35A、35Bに接続アーム38を接続することで、インナ側配置部41を設置面9の側から支持していたが、例えば、
図24および
図25に示すように、ワーク2に開口部2Aが存在する場合には、接続アーム38を用いることなく、代わりに、ベース35A、35Bを接続する柱体45を開口部2Aに通すことで、柱体45によりインナ側配置部41を設置面9の側から支持するようにしてもよい。
【0076】
さらに、支持装置1によれば、ベース35A、35Bそれぞれにアーム30を接続したものをアウタ側、インナ側に配置してワーク2を支持していたが、ワーク2の片側のみにアーム30を配置し、ワーク2の片側の表面のみに保持部31を吸着させてワーク2を支持するようにしてもよい。
1 支持装置 2 ワーク 3 被加工部位 19 第1加工ローラ(ローラ) 20 第2加工ローラ(ローラ) 21 受けローラ(ローラ) 30 アーム 31 保持部 32 吸着部