(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047607
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】ガスリーク検知装置、ガスリーク検知の設定方法、ガスリーク検知方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 3/26 20060101AFI20220317BHJP
G01M 3/00 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
G01M3/26 A
G01M3/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153483
(22)【出願日】2020-09-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000130178
【氏名又は名称】株式会社コスモ計器
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 昭男
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 理
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA44
2G067BB02
2G067BB04
2G067BB25
2G067BB28
2G067CC04
2G067DD03
(57)【要約】
【課題】ガスリーク検知の信頼性を向上させる。
【解決手段】本発明のガスリーク検知装置は、定流量制御弁、加圧制御弁、供給側ガス回路、マスタ側ガス回路、ワーク側ガス回路、等圧弁、排気弁、テスト圧センサ、差圧センサを備える。定流量制御弁は、定流量のガスの供給を制御する。加圧制御弁は、テスト圧のガスの供給を制御する。供給側ガス回路は、定流量制御弁と加圧制御弁とに接続される。マスタ側ガス回路には、マスタが接続される。ワーク側ガス回路には、ワークが接続される。等圧弁は、供給側ガス回路とマスタ側ガス回路との間の開閉、および供給側ガス回路とワーク側ガス回路との間の開閉を行う。排気弁は、ワーク側ガス回路と外部との間の開閉を行う。テスト圧センサは、供給側ガス回路内の圧力を検出する。差圧センサは、マスタ側ガス回路とワーク側ガス回路との差圧を検出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定流量のガスの供給を制御する定流量制御弁と、
テスト圧のガスの供給を制御する加圧制御弁と、
前記定流量制御弁と前記加圧制御弁とに接続された供給側ガス回路と、
マスタと接続されるマスタ側ガス回路と、
ワークと接続されるワーク側ガス回路と、
前記供給側ガス回路と前記マスタ側ガス回路との間の開閉、および前記供給側ガス回路と前記ワーク側ガス回路との間の開閉を行う等圧弁と、
前記ワーク側ガス回路と外部との間の開閉のみを行う排気弁と、
前記供給側ガス回路内の圧力を検出するテスト圧センサと、
前記マスタ側ガス回路と前記ワーク側ガス回路との差圧を検出する差圧センサと、
を備えるガスリーク検知装置。
【請求項2】
定流量のガスの供給を制御する定流量制御弁と、
テスト圧のガスの供給を制御する加圧制御弁と、
前記定流量制御弁と前記加圧制御弁とに接続された供給側ガス回路と、
マスタと接続されるマスタ側ガス回路と、
ワークと接続されるワーク側ガス回路と、
前記供給側ガス回路と前記マスタ側ガス回路との間の開閉、および前記供給側ガス回路と前記ワーク側ガス回路との間の開閉を行う等圧弁と、
前記マスタ側ガス回路と外部との間を閉に保った状態で前記ワーク側ガス回路と外部との間の開閉を行うことができる排気弁と、
前記供給側ガス回路内の圧力を検出するテスト圧センサと、
前記マスタ側ガス回路と前記ワーク側ガス回路との差圧を検出する差圧センサと、
を備えるガスリーク検知装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のガスリーク検知装置であって、
前記定流量のガスの供給には、ソニックノズルを用いる
ことを特徴とするガスリーク検知装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のガスリーク検知装置であって、
前記排気弁はノーマリー・オープンの空気作動弁である
ことを特徴とするガスリーク検知装置。
【請求項5】
請求項4記載のガスリーク検知装置であって、
前記等圧弁はノーマリー・クローズの空気作動弁である
ことを特徴とするガスリーク検知装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のガスリーク検知装置を用いたガスリーク検知の設定方法であって、
良品ワークを前記ワーク側ガス回路に接続し、前記等圧弁を開き、前記排気弁を閉じた状態とし、
第1所定時間だけ前記定流量制御弁を開いてガスを供給したときの前記テスト圧センサで検出する圧力にしたがって等価内容積を求め、大リーク用基準容積とし、
前記等価内容積に基づいて前記良品ワークが接続された前記ワーク側ガス回路の等価内容積を求め、ワーク側基準容積とする
ことを特徴とするガスリーク検知の設定方法。
【請求項7】
請求項1記載のガスリーク検知装置を用いたガスリーク検知方法であって、
良品ワークを前記ワーク側ガス回路に接続し、前記等圧弁を開き、前記排気弁を閉じた状態で、第1所定時間だけ前記定流量制御弁を開いてガスを供給することによって求めた等価内容積を大リーク用基準容積とし、
検査対象ワークを前記ワーク側ガス回路に接続しておき、
前記等圧弁を開き、前記排気弁を閉じた状態で、前記定流量制御弁を第1所定時間だけ開いてガスを供給して閉じ、前記テスト圧センサで圧力を検出し、検出した圧力に基づいて求めた等価内容積を、前記大リーク用基準容積と比較することでリークの有無を検知する第1リーク検知ステップと、
前記等圧弁を開き、前記排気弁を閉じた状態で、前記加圧制御弁を第2所定時間だけ開いてガスを供給して閉じ、前記テスト圧センサで圧力を検出し、検出した圧力の変化があらかじめ定めた正常の範囲かを確認することでリークの有無を検知する第2リーク検知ステップと、
前記第2リーク検知ステップ終了後に、前記等圧弁を閉じ、前記排気弁を閉じた状態で、あらかじめ定めた時間前記差圧センサで圧力差を検出し、検出した圧力差を確認する第3リーク検知ステップと、
前記等圧弁を開き、前記排気弁を開き、前記定流量制御弁を開いてガスを供給した状態で、前記差圧センサで検出した圧力差が正常な範囲かを確認する差圧センサ感度確認ステップと、
を実行するガスリーク検知方法。
【請求項8】
請求項2記載のガスリーク検知装置を用いたガスリーク検知方法であって、
良品ワークを前記ワーク側ガス回路に接続し、前記等圧弁を開き、前記排気弁を閉じた状態で、第1所定時間だけ前記定流量制御弁を開いてガスを供給することによって求めた等価内容積を大リーク用基準容積とし、
検査対象ワークを前記ワーク側ガス回路に接続しておき、
前記等圧弁を開き、前記排気弁を閉じた状態で、前記定流量制御弁を第1所定時間だけ開いてガスを供給して閉じ、前記テスト圧センサで圧力を検出し、検出した圧力に基づいて求めた等価内容積を、前記大リーク用基準容積と比較することでリークの有無を検知する第1リーク検知ステップと、
前記等圧弁を開き、前記排気弁を閉じた状態で、前記加圧制御弁を第2所定時間だけ開いてガスを供給して閉じ、前記テスト圧センサで圧力を検出し、検出した圧力の変化があらかじめ定めた正常の範囲かを確認することでリークの有無を検知する第2リーク検知ステップと、
前記第2リーク検知ステップ終了後に、前記等圧弁を閉じ、前記排気弁を閉じた状態で、あらかじめ定めた時間前記差圧センサで圧力差を検出し、検出した圧力差を確認する第3リーク検知ステップと、
前記等圧弁を開き、前記マスタ側ガス回路と外部との間を閉に保った状態で前記ワーク側ガス回路と外部との間が開となるように前記排気弁を開き、前記定流量制御弁を開いてガスを供給した状態で、前記差圧センサで検出した圧力差が正常な範囲かを確認する差圧センサ感度確認ステップと、
を実行するガスリーク検知方法。
【請求項9】
請求項7または8記載のガスリーク検知方法であって、
良品ワークを接続したときの前記ワーク側ガス回路の等価内容積をワーク側基準容積とし、
前記第3リーク検知ステップでは、前記差圧センサで検出した圧力差を前記ワーク側ガス回路の圧力の変化として前記ワーク側基準容積を用いて、仮に温度が一定としたときの仮想の漏れ流量Q2を求め、仮想の漏れ流量Q2に基づいてリークの有無を検知する
ことを特徴とするガスリーク検知方法。
【請求項10】
請求項6記載のガスリーク検知の設定方法、請求項7から9記載のガスリーク検知方法のいずれかをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスリーク検知の信頼性を向上させるガスリーク検知装置、ガスリーク検知の設定方法、ガスリーク検知方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
加圧された気体を検査対象ワークに供給することによって検査対象ワークからの気体の漏れの有無を検査する機器として種々のガスリーク検知装置が知られている(特許文献1,非特許文献1参照)。
図1を参照して、ガスリーク検知装置900のアウトラインを説明する。使用する気体の種類に限定は無いが、この例では気体は空気である。したがって、エアリーク検知装置という呼称が適切である。しかし、一般性を喪失しないために、ガスリーク検知装置という呼称を使用する。
【0003】
ガスリーク検知装置900は、減圧弁210と、圧力センサ213と、第1制御弁221と、第2制御弁223と、第3制御弁225と、第1ガス回路21と、第2ガス回路22と、第3ガス回路23と、第4ガス回路24と、第5ガス回路25と、第6ガス回路26と、差圧センサ250と、圧力センサ253と、処理装置910と、サイレンサー40を含んでいる。第1制御弁221は、この例では、一つの吸気ポートと二つの排気ポートを持つノーマリー・クローズの弁である。第2制御弁223は、この例では、二つの吸気ポートと一つの排気ポートを持つノーマリー・オープンの弁である。第3制御弁225は、この例では、一つの吸気ポートと一つの排気ポートを持つノーマリー・オープンの弁である。弁の制御は公知であるからその説明を省略する。この例では、処理装置910が各制御弁を制御する。
【0004】
ガス供給源200は、加圧されたガスを第1ガス回路21の一端に供給する。第1ガス回路21の他端は、ガスリーク検知装置900の一次圧力の安定を保つための減圧弁210の一端に接続されている。第1ガス回路21は、例えば金属管である。
【0005】
減圧弁210の他端は第2ガス回路22の一端に接続しており、第2ガス回路22の他端は第1制御弁221の吸気ポートに接続している。第2ガス回路22は、例えば金属管である。なお、ガスリーク検知装置900の一次圧力を測定するための圧力センサ213が、第2ガス回路22に接続されている。圧力センサ213の測定値は処理装置910に入力される。
【0006】
第3ガス回路23の一端は、第1制御弁221の一方の排気ポートに接続している。第3ガス回路23の他端には、検査対象ワーク32が接続される。第3ガス回路23は、第1制御弁221と検査対象ワーク32とを連絡する管路の他に二つの管路を持つ。これら二つの管路は、第1制御弁221と検査対象ワーク32とを連絡する管路から分岐している。一方の管路の端部は、差圧センサ250の一端に接続している。他方の管路の端部は、第2制御弁223の一方の吸気ポートに接続している。このように、第3ガス回路23は、第1制御弁221と第2制御弁223と差圧センサ250と検査対象ワーク32とを連絡している。第3ガス回路23は例えば金属管である。
【0007】
第4ガス回路24の一端は、第1制御弁221の他方の排気ポートに接続している。第4ガス回路24の他端には、漏れの無い参照対象物であるマスタ33が接続される。第4ガス回路24は、第1制御弁221とマスタ33とを連絡する管路の他に二つの管路を持つ。これら二つの管路は、第1制御弁221とマスタ33とを連絡する管路から分岐している。一方の管路の端部は、差圧センサ250の他端に接続している。他方の管路の端部は、第2制御弁223の他方の吸気ポートに接続している。このように、第4ガス回路24は、第1制御弁221と第2制御弁223と差圧センサ250とマスタ33とを連絡している。第4ガス回路24は例えば金属管である。差圧センサ250の測定値は処理装置910に入力される。
【0008】
第5ガス回路25の一端は第2制御弁223の排気ポートに接続しており、第5ガス回路25の他端は第3制御弁225の吸気ポートに接続している。なお、圧力センサ253が、第5ガス回路25に接続されている。第5ガス回路25は例えば金属管である。圧力センサ253の測定値は処理装置910に入力される。
【0009】
第6ガス回路26の一端は第3制御弁225の排気ポートに接続しており、第6ガス回路26の他端に、ガスリーク検知装置900からの排気音を小さくするサイレンサー40が取り付けられている。
【0010】
上述の構成によると、第1制御弁221が開いた状態のとき、ガス供給源200と第1ガス回路21と第2ガス回路22と第3ガス回路23と第4ガス回路24が互いに連絡する。第1制御弁221が閉じた状態のとき、第2ガス回路22と第3ガス回路23との間の連絡が遮断され、且つ、第2ガス回路22と第4ガス回路24との間の連絡が遮断される。つまり、第1制御弁221が閉じた状態のとき、ガス供給源200からのガスは、第3ガス回路23と第4ガス回路24に供給されない。
【0011】
第2制御弁223が開いた状態のとき、第3ガス回路23と第4ガス回路24と第5ガス回路25が互いに連絡する。第2制御弁223が閉じた状態のとき、第3ガス回路23と第5ガス回路25との間の連絡が遮断され、且つ、第4ガス回路24と第5ガス回路25との間の連絡が遮断される。
【0012】
第3制御弁225が開いた状態のとき、第5ガス回路25と第6ガス回路26が互いに連絡する。第3制御弁225が閉じた状態であるとき、第5ガス回路25と第6ガス回路26との間の連絡が遮断される。
【0013】
処理装置910はプログラムに従って、第1、第2及び第3の制御弁221,223,225の動作を制御し、圧力センサ213によって検出される供給圧と圧力センサ253によって検出されるテスト圧を観測し、かつ、所定のタイミングで差圧センサ250によって得られた検出差圧に基づいて検査対象ワーク32からの気体の漏れの有無を判定する。
【0014】
ガスリーク検知装置900の動作手順は、次のとおりである。処理装置910が何も制御していない状態(初期状態)は、第1制御弁221が閉じ、第2制御弁223と第3制御弁225が開いた状態である。このとき、第3ガス回路23,第4ガス回路24,第5ガス回路25,第6ガス回路26は、大気圧になる。また、第2ガス回路22の圧力は、減圧弁210によって所定の圧力に設定されている。この状態において、第4ガス回路24にマスタ33が接続され、第3ガス回路23に検査対象ワーク32が接続される。
【0015】
処理装置910は、第2制御弁223を開いた状態にしたまま第3制御弁225を閉じた状態にした後で、第1制御弁221を予め決められた時間だけ開いた状態にする。この結果、ガス供給源200の加圧空気が第1ガス回路21と、第2ガス回路22と、第3ガス回路23と、第4ガス回路24を通してマスタ33と検査対象ワーク32に供給される。
【0016】
次に、処理装置910は、第2制御弁223と第3制御弁225の状態を変更せず、第1制御弁221を閉じた状態にし、あらかじめ定めた時間だけ圧力変動の減少を待つ。この間に圧力センサ253が圧力降下を検出した場合、処理装置910は「検査対象ワーク32はリークを有する」と判定する。
【0017】
この工程に続いて、処理装置910は、第1制御弁221と第3制御弁225を閉じた状態にしたまま、第2制御弁223を閉じた状態にする。処理装置910は差圧センサ250が検出する差圧を観測する。検査対象ワーク32に穴が開いていれば、検査対象ワーク32から空気が漏れて、第3ガス回路23の圧力と第4ガス回路24の圧力との間に圧力差が生じる。つまり、第3ガス回路23の圧力が第4ガス回路24の圧力より低くなる。したがって、第2制御弁223を閉じてからあらかじめ定めた時間が経過した後に、差圧センサ250が、あらかじめ定めた第1基準値より大きな差圧を検出した場合は、処理装置910は「検査対象ワーク32はリークを有する」と判定し、テストを終了する。あらかじめ定めた時間が経過した後に第1基準値より大きな差圧が検出されなかった場合には、処理装置910は、その時点で差圧センサ250の検出出力を0にリセットし、圧力検出レンジを感度の高いレンジに切り替えて差圧検出を続行する。処理装置910は、あらかじめ定めた時間が経過した後に、検出差圧が第2基準値以下であれば「検査対象ワーク32には漏れが無い」と判定し、第2基準値より大であれば「検査対象ワーク32はリークを有する」と判定し、検査を終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2014/184895号パンフレット
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】総合カタログ、株式会社コスモ計器、[令和2年8月28日検索]、インターネット〈https://www.cosmo-k.co.jp/document-download/〉.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
何らかの異常が生じているガスリーク検知装置を用いたガスリーク検知の結果は、信頼できない。また、検査対象ワークをガスリーク検知装置に取り付けるために、シーリングと接続の両方を同時に達成するクランプが使用されるので、ガスリーク検知装置が正常に機能しているとしても、クランプに何らかの異常がある場合のガスリーク検知の結果も、信頼できない。また、ある検査対象ワークの内容積が他の検査対象ワークの内容積と異なる場合も、漏れ検出感度が変化するので、信頼性が低下する。
【0021】
ガスリーク検知の信頼性を検証するために、例えば、精確な微少漏れ発生器をガスリーク検知装置に取り付けたときの漏れ検出感度を測定することが行われている。しかし、この検証は実質的にガスリーク検知であるので、通常のガスリーク検知と同じ程度の時間がかかる。さらに、厳密に言えば検査対象ワークのガスリーク検知を実際に行う環境での検証ではない。このため、このような検証は、多数回のガスリーク検知ごとに実行されるのが通例である。したがって、検証によって何らかの異常の存在が判明した場合、前回の検証から今回の検証までに実施された全てのガスリーク検知の信頼性が損なわれる。
【0022】
このような問題に鑑みて、本発明は、ガスリーク検知の信頼性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明のガスリーク検知装置は、定流量制御弁、加圧制御弁、供給側ガス回路、マスタ側ガス回路、ワーク側ガス回路、等圧弁、排気弁、テスト圧センサ、差圧センサを備える。定流量制御弁は、定流量のガスの供給を制御する。加圧制御弁は、テスト圧のガスの供給を制御する。供給側ガス回路は、定流量制御弁と加圧制御弁とに接続される。マスタ側ガス回路には、マスタが接続される。ワーク側ガス回路には、ワークが接続される。等圧弁は、供給側ガス回路とマスタ側ガス回路との間の開閉、および供給側ガス回路とワーク側ガス回路との間の開閉を行う。排気弁は、ワーク側ガス回路と外部との間の開閉を行う。テスト圧センサは、供給側ガス回路内の圧力を検出する。差圧センサは、マスタ側ガス回路とワーク側ガス回路との差圧を検出する。
【0024】
本発明のガスリーク検知方法は、上述のガスリーク検知装置を用いる。あらかじめ、良品ワークをワーク側ガス回路に取り付け、等圧弁を開き、前記排気弁を閉じた状態で、第1所定時間だけ定流量制御弁を開いてガスを供給することによって求めた等価内容積を大リーク用基準容積とする。そして、検査対象ワークをワーク側ガス回路に接続しておく。ガスリーク検知方法は、第1リーク検知ステップ、第2リーク検知ステップ、第3リーク検知ステップ、差圧センサ感度確認ステップを実行する。第1リーク検知ステップでは、等圧弁を開き、排気弁を閉じた状態で、定流量制御弁を第1所定時間だけ開いてガスを供給して閉じ、テスト圧センサで圧力を検出し、検出した圧力に基づいて求めた等価内容積を、大リーク用基準容積と比較することでリークの有無を検知する。第2リーク検知ステップでは、等圧弁を開き、排気弁を閉じた状態で、加圧制御弁を第2所定時間だけ開いてガスを供給して閉じ、テスト圧センサで圧力を検出し、検出した圧力の変化があらかじめ定めた正常の範囲かを確認することでリークの有無を検知する。第3リーク検知ステップでは、第2リーク検知ステップ終了後に、等圧弁を閉じ、あらかじめ定めた時間前記差圧センサで圧力差を検出し、検出した圧力差を確認して、リークの有無を検知する。差圧センサ感度確認ステップでは、等圧弁を開き、排気弁を開き、定流量制御弁を開いてガスを供給した状態で、差圧センサで検出した圧力差が正常な範囲かを確認する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のガスリーク検知装置およびガスリーク検知方法によれば、検査対象ワークをガスリーク検知装置に取り付けた状態でガスリーク検知装置を検査できるので、ガスリーク検知の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来のガスリーク検知装置の機能構成例を示す図。
【
図2】実施例1のガスリーク検知装置の機能構成例を示す図。
【
図3】定流量制御弁を用いた処理のときの実施例1のガスリーク検知装置のガス回路の状態を示す図。
【
図4】ガスリーク検知装置を用いたガスリーク検知の設定方法の処理フローを示す図。
【
図5】ガスリーク検知装置を用いたガスリーク検知方法の処理フローを示す第1の図。
【
図6】実施例1のガスリーク検知装置を用いたガスリーク検知方法の処理フローを示す第2の図。
【
図7】等圧弁と排気弁を閉じたときの実施例1のガスリーク検知装置のガス回路の状態を示す図。
【
図8】等圧弁と排気弁を開き、定流量制御弁を開いたときの実施例1のガスリーク検知装置のガス回路の状態を示す図。
【
図9】定流量制御弁、等圧弁の制御弁、排気弁の制御弁、差圧センサによって形成されるガス回路の等価回路を示す図。
【
図10】パイプ内径φ0.5のソニックノズルの場合の一次圧(ゲージ圧)と差圧の例を示す図。
【
図11】変形例1のガスリーク検知装置の機能構成例を示す図。
【
図12】定流量制御弁を用いた処理のときの変形例1のガスリーク検知装置のガス回路の状態を示す図。
【
図13】等圧弁と排気弁を閉じたときの変形例1のガスリーク検知装置のガス回路の状態を示す図。
【
図14】等圧弁を開き、マスタ側ガス回路と外部との間を閉に保った状態でワーク側ガス回路と外部との間を開にし、定流量制御弁を開いたときの変形例1のガスリーク検知装置の状態を示す図。
【
図15】変形例1のガスリーク検知装置を用いたガスリーク検知方法の処理フローを示す第2の図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。説明では、防塵用フィルタ、オートリークキャリブレーター(差圧変化を漏れ流量変化に変換するための装置)など、実際には使用されるが実施例の説明と理解において非本質的な構成要素を省略している。例えば、説明で使用している「接続」との用語は、当該「接続」との用語に係る構成要素が直接的に(換言すれば、他の構成要素を介さずに)接続されていることに限定する意味ではなく、実際の必要に応じて、当該「接続」との用語に係る構成要素が間接的に(換言すれば、他の構成要素を介して)接続されている場合も許容することを含意する。
【実施例0028】
<ガスリーク検知装置の構成>
図2に、実施例1のガスリーク検知装置の機能構成例を示す。ガスリーク検知装置100は、テスト圧調圧弁311、一次圧調圧弁312、一次圧圧力センサ313、テスト圧センサ353、差圧センサ250、定流量制御弁326、加圧制御弁321、等圧弁325、排気弁329、供給源ガス回路71、加圧ガス回路72、ワーク側ガス回路73、マスタ側ガス回路74、供給側ガス回路75、排気ガス回路76、一次圧ガス回路77、サイレンサー40、処理装置110を含む。供給源ガス回路71、加圧ガス回路72、ワーク側ガス回路73、マスタ側ガス回路74、供給側ガス回路75、排気ガス回路76、一次圧ガス回路77には、金属管を用いればよい。
【0029】
供給源ガス回路71は、加圧されたガスを供給するガス供給源200、テスト圧調圧弁311の吸気ポート、一次圧調圧弁312の吸気ポートに接続される。供給源ガス回路71は、加圧されたガスをテスト圧調圧弁311と一次圧調圧弁312に供給する役割を果たす。加圧ガス回路72は、テスト圧調圧弁311の排気ポート、加圧制御弁321の吸気ポートに接続される。テスト圧調圧弁311は、ガス供給源200から供給されたガスを、テスト用の圧力に調圧し、加圧ガス回路72に供給する。一次圧ガス回路77は、一次圧調圧弁312の排気ポート、定流量制御弁326の吸気ポートに接続される。一次圧調圧弁312は、定流量制御弁326から定流量のガスが供給できるようにガスの圧力を調整する。一次圧圧力センサ313は、一次圧ガス回路77のガスの圧力を検出する。
【0030】
供給側ガス回路75は、定流量制御弁326の排気ポート、加圧制御弁321の排気ポート、等圧弁325の吸気ポートに接続される。なお、供給側ガス回路75内の定流量制御弁326の排気ポート付近に逆流防止弁330を備えてもよい。テスト圧センサ353は、供給側ガス回路75内の圧力を検出する。マスタ側ガス回路74は、等圧弁325の排気ポート、マスタ33に接続される。ワーク側ガス回路73は、等圧弁325の排気ポート、排気弁329の吸気ポート、検査対象ワーク32に接続される。排気ガス回路76は、排気弁329の排気ポートとサイレンサー40に接続される。サイレンサー40は、排気音を小さくする。
【0031】
加圧制御弁321は、供給側ガス回路75へのテスト圧のガスの供給を制御する。等圧弁325は、制御弁323と制御弁324を有する。制御弁323は、供給側ガス回路75とワーク側ガス回路73との間の開閉を行う。制御弁324は、供給側ガス回路75とマスタ側ガス回路74との間の開閉を行う。制御弁323と制御弁324は、ノーマリー・クローズである。制御弁323と制御弁324には、空気作動弁でも電磁弁でも用いることはできるが、空気作動弁を用いた方が好ましい。排気弁329は、制御弁327を有する。制御弁327は、ワーク側ガス回路73と外部との間の開閉を行う。制御弁327は、ノーマリー・オープンである。制御弁327には、空気作動弁でも電磁弁でも用いることはできるが、テスト圧と大気圧の差圧が加わる弁なので空気作動弁を用いた方が好ましい。差圧センサ250は、マスタ側ガス回路74とワーク側ガス回路73との差圧を検出する。逆流防止弁330は、テスト圧を一次圧よりも高くする場合に逆流を防ぐための弁であり、電磁弁を用いればよい。また、テスト圧が一次圧よりも常に低いのであれば逆流防止弁330は不要である。
【0032】
処理装置110には、一次圧圧力センサ313、テスト圧センサ353、差圧センサ250が検出した圧力が入力される。そして、処理装置110は、定流量制御弁326、加圧制御弁321、等圧弁325、排気弁329、逆流防止弁330を制御する。
【0033】
<ガスリーク検知装置の検査の原理>
定流量制御弁326は、定流量のガスの供給を制御する。定流量制御弁326は、例えば、電磁弁322と定流量ガス回路78とソニックノズル380で構成すればよい。ソニックノズル380(臨界ノズル、音速ノズルなどとも呼称される)の一例として、特許文献1に開示された臨界ノズル(ネジ式パイプ)を挙げることができる。ソニックノズル380は、一次圧力(絶対圧p
1)と二次圧力(絶対圧p
2)の比が臨界値以下であるとき、ソニックノズル380を流れるガスの速さが音速になる特徴を持つ。例えば、パイプ内径φ0.5のネジ式パイプの臨界値は約0.481であり、この条件下でソニックノズル380は定流量のガスを吐出する。数式で表現すると、式(1)の関係のときに定流量になる。具体例として、一次圧力p
1が400kPa(ゲージ圧300kPa)のとき、192kPa(ゲージ圧92kPa)以下の二次圧力p
2において、ソニックノズル380は定流量のガスを吐出する。また、パイプ内径φ0.5のソニックノズル380によるとソニックノズル380の標準大気圧に換算された流量Qは10L/minである。このように、ソニックノズル380について、一次圧力(絶対圧p
1)における標準大気圧に換算された流量Qは既知である。
【数1】
【0034】
ソニックノズル380の流量は一次圧力に比例する。一次圧力(絶対圧)がp
xである場合の流量Qは、式(2)によって計算できる。式(2)は、p
x=p
1の場合にも成立する。式(2)の矢印は、右辺のQの値が、左辺のQの値に変更されることを意味している。
【数2】
【0035】
上述のとおりソニックノズル380の一次圧力(絶対圧p
x)が決まるとソニックノズル380の標準大気圧に換算された流量Q[L/min]も決まるので、ソニックノズル380によって供給される標準大気圧に換算されたガスの体積V
T[L]は式(3)で計算される。T[s]は、ガス供給時間、つまり、ソニックノズル380が作動している時間である。ガスリーク検知装置100は異常の有無を検査するので、ガス供給時間T[s]として0.01s~1s程度の短時間が想定される。
【数3】
【0036】
図3に、定流量制御弁326を用いた処理のときのガスリーク検知装置100のガス回路の状態を示す。この状態は、等圧弁325は開き、排気弁329は閉じた状態である。この状態では、ワーク側ガス回路73、マスタ側ガス回路74、供給側ガス回路75で、閉じられたガス回路80が形成されている。閉じられたガス回路80の体積をV
E[L]とし、標準大気圧値をP
0とし、閉じられたガス回路80にソニックノズル380によって標準大気圧に換算された体積V
T[L]のガスを供給した後の閉じられたガス回路80における圧力値をP
Aとしたとき、式(4)が成立する。閉じられたガス回路80の体積V
Eは、ガスリーク検知装置100に取り付けられた物(つまり良品ワークあるいは検査対象ワーク32)と差圧センサ250のそれぞれの内圧による容積変化を含む体積であり、当業者によって例えば閉じられたガス回路80の「等価内容積」などと呼称される。P
A≠P
0の場合、式(5)が成立する。P
A=P
0の場合は、ソニックノズル380によって供給されたガスのほぼ全部がガス回路80から漏れていることを意味し、ガス回路80に亀裂等の不具合があることがわかる。
【数4】
【0037】
したがって、良品ワークを用いることによって形成された閉じられたガス回路80にソニックノズル380を経由して体積VTのガスが供給された後の閉じられたガス回路80における圧力値PG(絶対圧)と、検査対象ワーク32を用いることによって形成された閉じられたガス回路80にソニックノズル380を経由して体積VTのガスが供給された後の閉じられたガス回路80における圧力値PT(絶対圧)とを比較することによって、ガスリーク検知装置100の感度異常の有無を検査できる。当該圧力値PG(絶対圧)と当該圧力値PT(絶対圧)との差異が大きいならば、ガスリーク検知装置100の異常を認めることができる。この異常は、例えば、ガス回路80に生じた亀裂、良品ワークの容積と異なる検査対象ワーク32の容積、検査対象ワーク32の大きな漏れ、クランプの不具合、などに由来するであろう。
【0038】
体積VT[L]は、ガス供給時間T[s]によって制御される。ガス供給時間T[s]は、例えば、所定の圧力変化ΔP=PA-P0を発生させるために式(3)から予め計算された値として、あるいは、圧力変化ΔPを発生させたときの実際のガス供給時間として定められる。
【0039】
本発明では、ガス供給時間T[s]が0.01s~1s程度の短時間であり、かつ、ソニックノズル380によって供給されるガスの圧力は閉じられたガス回路80内を音速で伝播するので、閉じられたガス回路80内の圧力は短時間で安定する。また、ソニックノズル380によって供給されるガスの体積VT[L]と比較して閉じられたガス回路80の体積VEが十分に大きい場合、ガスが供給されることによる断熱変化の影響は極めて小さいと言える。クランプを用いて検査対象ワーク32をガスリーク検知装置100に取り付けることによって検査対象ワーク32の変形が生じるとしても、この変形は、通常、短時間で安定する。したがって、ガスリーク検知装置100の異常の有無を検査するために必要な時間は、検査対象ワーク32のガスリーク検知に必要な時間よりも、十分に短い。
【0040】
<ガスリーク検知方法>
図4に、ガスリーク検知装置を用いたガスリーク検知の設定方法の処理フローを示す。
図5と
図6に、ガスリーク検知装置を用いたガスリーク検知方法の処理フローを示す。ガスリーク検知装置100を用いたガスリーク検知の設定方法は、まず、良品ワークをワーク側ガス回路73に接続し、処理装置110が以下のように実行する。等圧弁325を開き、排気弁329を閉じた状態とする。そして、処理装置110は、第1所定時間T
1だけ定流量制御弁326を開いてガスを供給したときのテスト圧センサ353で検出する圧力にしたがって等価内容積を求め、大リーク用基準容積とする。また、処理装置110は、供給側ガス回路75とマスタ側ガス回路74の設計寸法などを用いて、大リーク用基準容積から良品ワークが接続されているワーク側ガス回路73の等価内容積を求め、ワーク側基準容積とする。
【0041】
より詳細には、ワークの品質検査に求められるテスト圧を考慮して、圧力のしきい値を決定する(S110)。このしきい値は、等価内容積を確認するためのしきい値であり、テスト圧よりは低い圧力に適宜決定すればよい。ワーク側ガス回路73に、良質ワークを接続する。「良品ワーク」とは、検査対象ワークと同じ種類のワークであって、リークが生じるような穴のないワークを意味している。そして、処理装置110が、等圧弁325を開き、良品ワークが接続されているワーク側ガス回路73、マスタ側ガス回路74、供給側ガス回路75を大気圧にした後、排気弁329を閉じる(S120)。なお、逆流防止弁330を備えている場合は、逆流防止弁330は開いた状態にする。ステップS120の処理が終了すると、大気圧の閉じられたガス回路80が形成されている(
図3の状態になる)。処理装置110は、第1所定時間T
1だけ定流量制御弁326を開いてガスを供給する(S130)。第1所定時間T
1の初期値は、例えば、電磁弁322の最小応答時間とすればよい。処理装置110は、テスト圧センサ353が検知した圧力が、ステップS110で決定したしきい値を超えているかを確認する(S140)。
【0042】
ステップS140がNoの場合、処理装置110は、テスト圧センサ353が検知した圧力に基づいて、しきい値を超えるために必要な第1所定時間T1を計算し、修正する(S150)。処理装置110は、排気弁329を開き、良品ワークが接続されているワーク側ガス回路73とマスタ側ガス回路74と供給側ガス回路75を大気圧にした後、排気弁329を閉じる(S160)。ステップS160の処理で、ステップS120が終了したときと同じ状態になる。そして、ステップS130を修正した第1所定時間T1で行い、ステップS140を繰り返す。ステップS150で計算した第1所定時間T1にしたがって実行しているので、通常は2回目のステップS140はYesとなる。仮にNoとなった場合は、ステップS150,S160,S130,S140を繰り返せばよい。
【0043】
ステップS140がYesの場合、処理装置110は、時間T1とテスト圧センサ353が検出した圧力から、良品ワークが接続されているワーク側ガス回路73とマスタ側ガス回路74と供給側ガス回路75で形成された閉じられたガス回路80の等価内容積を算出し、大リーク用基準容積として記録しておく(S170)。また、マスタ側ガス回路74、供給側ガス回路75、等圧弁325の内容積は既知なので、処理装置110は、閉じられたガス回路80の等価内容積からマスタ側ガス回路74、供給側ガス回路75、等圧弁325の容積を考慮して、良品ワークが取り付けられたワーク側ガス回路73の等価内容積を求め、ワーク側基準容積として記録しておく(S180)。より具体的には、等圧弁325内の容積も考慮した上で、マスタ側ガス回路74と供給側ガス回路75の設計寸法などからマスタ側ガス回路74の容積と供給側ガス回路75の容積を求め、
ワーク側基準容積
=大リーク用基準容積-(マスタ側ガス回路74の容積+供給側ガス回路75の容積)
のようにワーク側基準容積を求めればよい。
【0044】
図4を用いて説明したように、処理装置110は、あらかじめ大リーク用基準容積とワーク側基準容積とを設定しておく。そして、検査対象ワークをワーク側ガス回路73に接続しておく。
図5と
図6で示すガスリーク検知方法では、処理装置110が、第1リーク検知ステップ(S210,S220,S230,S240)、第2リーク検知ステップ(S250,S260,S270)、第3リーク検知ステップ(S280,S290)、差圧センサ感度確認ステップ(S300,S310)を実行する。その後、処理装置110は、定流量制御弁326を閉じ、等圧弁325と排気弁329を開き、ワーク側ガス回路73、マスタ側ガス回路74、供給側ガス回路75の圧力を大気圧にする(S320)。排気弁329(制御弁327)はノーマリー・オープンなので、処理装置110が排気弁329の制御をやめれば、排気弁329はステップS320の状態になる。そして、処理装置110は、等圧弁325を閉じる(S330)。等圧弁325(制御弁323と制御弁324)はノーマリー・クローズなので、処理装置110が等圧弁325の制御をやめれば、等圧弁325はステップS330の状態になる。つまり、処理装置110がガスリーク検知装置100への制御をやめるとステップS330の状態になる。
【0045】
第1リーク検知ステップでは、まず、検査対象ワーク32をワーク側ガス回路73に接続する。処理装置110は、等圧弁325を開き、ワーク側ガス回路73とマスタ側ガス回路74と供給側ガス回路75を大気圧にした後、排気弁329を閉じた状態にする(S210)。なお、逆流防止弁330を備えている場合は、逆流防止弁330は開いた状態にする。処理装置110は、定流量制御弁326を第1所定時間T1だけ開いてガスを供給して閉じる(S220)。処理装置110は、テスト圧センサ353で圧力を検出し、検出した圧力に基づいて等価内容積を求める(S230)。処理装置110は、検出した圧力に基づいて求めた等価内容積を、大リーク用基準容積と比較することでリークの有無を検知する(S240)。ガスリーク検知装置100自体と検査対象ワークを取り付けた部分に何らかの大きな漏れがあれば検出した圧力は低くなり、求めた等価内容積が大リーク用基準容積よりも大きくなる。また、検査対象ワークの内容積が良品ワークや他の検査対象ワークの内容量とあらかじめ定めた許容範囲以上異なると、求めた等価内容積と大リーク用基準容積との比が、あらかじめ定めた許容範囲に対応する比の範囲外になる。ステップS240では、求めた等価内容積と大リーク用基準容積との比の許容範囲を定めてリークの有無を検知すれば、ガスリーク検知装置100自体と検査対象ワークを取り付けた部分からのリークだけでなく、検査対象ワークの内容積の異常も、検査対象ワークを接続するたびに検知できる。
【0046】
第2リーク検知ステップでは、処理装置110は、等圧弁325を開き、排気弁329を閉じた状態で、加圧制御弁321を第2所定時間T2だけ開いてガスを供給して閉じる(S250)。また、逆流防止弁330を備えている場合は、ステップS250の加圧制御弁321を開く前に逆流防止弁330を閉じておけばよい。第2所定時間T2は、検査対象ワーク32およびガスリーク検知装置100に大きな異常がなければ、この処理によって、ワーク側ガス回路73、マスタ側ガス回路74、供給側ガス回路75の圧力がテスト圧になるように定めればよい。処理装置110は、テスト圧センサ353で圧力を検出し、検出した圧力の変化を確認する(S260)。処理装置110は、圧力の変化があらかじめ定めた正常の範囲かを確認することでリークの有無を検知する(S270)。通常、加圧制御弁321を開いてワーク側ガス回路73、マスタ側ガス回路74、供給側ガス回路75の圧力をテスト圧まで上昇させると、気体の断熱変化により温度が上昇する。そして、その後は、温度は下がっていく。ステップS270では、温度が下がることによる圧力の低下を考慮してリークの有無を検知する。
【0047】
第3リーク検知ステップでは、処理装置110は、第2リーク検知ステップ終了後に、等圧弁325を閉じる(S280)。ステップS280を行うと、
図7に示した状態になる。
図7は、等圧弁325と排気弁329を閉じたときのガス回路の状態を示す図である。検査対象ワーク32が接続されているワーク側ガス回路73が閉じられたガス回路81であり、マスタ側ガス回路74が閉じられたガス回路82である。処理装置110は、等圧弁325を閉じ、排気弁329を閉じた状態で、所定の時間、差圧センサ250で圧力差を検出し、検出した圧力差を確認する(S290)。所定の時間は、ワーク側ガス回路73の気体の温度がリークを確認するために十分な程度安定するまでの時間とすればよい。また、確認の際には、処理装置110は設定しているワーク側基準容積も考慮すればよい。より具体的には、ステップS290において差圧センサ250で検出した圧力差の変化をワーク側ガス回路73の圧力変化と仮定し、仮に温度が一定としたときの仮想の漏れ流量を、ワーク側基準容積を用いて求めQ
2[L/min]とする。処理装置110は、仮想の漏れ流量であるQ
2に基づいてリークの有無を検知すればよい。
【0048】
差圧センサ感度確認ステップでは、処理装置110は、等圧弁325を開き、排気弁329を開き、定流量制御弁326を開いてガスを供給した状態にする(S300)。なお、逆流防止弁330を備えている場合は、逆流防止弁330は開いた状態にする。
図8は、等圧弁325を開き、排気弁329を開き、定流量制御弁326を開いた状態を示す図である。
図9は、定流量制御弁326、等圧弁325の制御弁323、排気弁329の制御弁327、差圧センサ250によって形成されるガス回路の等価回路を示す図である。定流量制御弁326からは定流量Iのガスが流れる。マスタ側ガス回路74側には排気弁がないので、マスタ側ガス回路74の圧力は供給側ガス回路75と同じである。そのため、
図9では制御弁324は省略している。定流量Iのガスは、制御弁323,327を通過して排気ガス回路76から排気される。ワーク側ガス回路73の圧力は、制御弁323の抵抗による影響を受け、V(=I×R
1)だけ供給側ガス回路75よりも低くなる。処理装置110は、差圧センサ250で検知する差圧がVと一致、もしくはVとの誤差が許容範囲内であれば、差圧センサ250は正常と判断する(S310)。それ以外の場合は、処理装置110は、差圧センサ250は正常でないと判断する。
図10はパイプ内径φ0.5のソニックノズルの場合の一次圧(ゲージ圧)と差圧の例を示している。なお、一次圧と差圧の関係は、制御弁323にも依存することを注意されたい。したがって、ガスリーク検知装置100は、毎回のガスリーク検知の際に差圧センサ250の感度が正常であることも確認できる。その後は、処理装置110は、上述のようにステップS320,S330を実行する。
【0049】
実施例1のガスリーク検知装置およびガスリーク検知方法によれば、検査対象ワークをガスリーク検知装置に接続した状態で、短時間でガスリーク検知装置を検査できるので、検査対象ワークを取り付けるたびに、毎回、リークテスト系(ガスリーク検知装置自体と検査対象ワークを取り付けた部分)の検査ができる。したがって、多数回の検査対象ワークの検査に対して1回行っていた従来のガスリーク検知装置の検査に比べ、ガスリーク検知の信頼性を向上できる。また、良品ワークを利用して求めた等価内容積を大リーク用基準容積とするので、ある検査対象ワークの内容積が良品の検査対象ワークと異なる場合を検知できる。さらに、実施例1のガスリーク検知の設定方法によれば、上述のガスリーク検知方法を実行できる環境を設定できる。
【0050】
なお、上述の実施例1では検査対象ワークの内側にガスを供給することによって漏れ検査をする内圧式ガスリーク検知を説明したが、本発明は検査対象ワークの外側にガスを供給することによって漏れ検査をする外圧式ガスリーク検知にも適用され得る。外圧式ガスリーク検知の場合、ワーク側ガス回路73に接続されたチャンバーの中に良品ワークまたは検査対象ワーク32が収容される。
[変形例1]
【0051】
実施例1では、排気弁329は、ワーク側ガス回路73と外部との間の開閉を行う制御弁327のみを有していた。変形例1では、排気弁329’は、マスタ側ガス回路74’と外部との間の開閉を行う制御弁328も備える。
図11に、変形例1のガスリーク検知装置の機能構成例を示す。ガスリーク検知装置101は、テスト圧調圧弁311、一次圧調圧弁312、一次圧圧力センサ313、テスト圧センサ353、差圧センサ250、定流量制御弁326、加圧制御弁321、等圧弁325、排気弁329’、供給源ガス回路71、加圧ガス回路72、ワーク側ガス回路73、マスタ側ガス回路74’、供給側ガス回路75、排気ガス回路76’、一次圧ガス回路77、サイレンサー40、処理装置111を含む。また、逆流防止弁330も備えてもよい。ガスリーク検知装置101が、ガスリーク検知装置100と構成として異なる点は、排気弁329’が制御弁328も備える点、マスタ側ガス回路74’が排気弁329’にも接続される点、排気ガス回路76’が制御弁328にも接続される点、処理装置111が制御弁328の制御も行う点である。
【0052】
図12に、定流量制御弁326を用いた処理のときのガスリーク検知装置101のガス回路の状態を示す。この状態は、等圧弁325は開き、排気弁329’は閉じた状態である。この状態では、ガス回路80’が形成される。
図12は、実施例1の
図3に相当する。相違点は、処理装置111が制御弁328の制御も行っていることである。
図13は、等圧弁325と排気弁329’を閉じたときのガス回路の状態を示す図である。この状態では、ガス回路81とガス回路82’が形成される。
図13は、実施例1の
図7に相当する。相違点は、処理装置111が制御弁328の制御も行っていることである。
図14は、等圧弁325を開き、排気弁329’の制御弁328は閉じた状態で制御弁327を開き、定流量制御弁326を開いた状態を示す図である。つまり、排気弁329’は、マスタ側ガス回路74’と外部との間を閉に保った状態でワーク側ガス回路73と外部との間の開閉を行うことができる。
図14は、実施例1の
図8に相当する。
図14の場合も、
図9に示した等価回路が形成される。よって、実施例1と同じように差圧センサ250が正常であるか否かを確認できる。
【0053】
ガスリーク検知装置101を用いたガスリーク検知の設定方法の処理フローは
図4と同じである。ガスリーク検知装置101を用いたガスリーク検知方法の処理フローの
図5の部分は実施例1と同じである。
図4,5に示した処理フローでは、制御弁328は制御弁327と同じように制御される。
図15にガスリーク検知装置101を用いたガスリーク検知方法の処理フロー(
図5)の続きを示す。
図15は、実施例1の
図6に相当する。ステップS301では、
図14に示したように、等圧弁325を開き、排気弁329’の制御弁328は閉じた状態で制御弁327を開いた状態にする。そして、定流量制御弁326を開く。なお、
図4,5,15に示した処理のステップS301以外では、排気弁329を閉じるときは、制御弁327と制御弁328の両方を閉じ、排気弁329を開くときは、制御弁327と制御弁328の両方を開けばよい。
【0054】
変形例1のガスリーク検知装置およびガスリーク検知方法によれば、実施例1と同じように、検査対象ワークをガスリーク検知装置に接続した状態で、短時間でガスリーク検知装置を検査できるので、検査対象ワークを取り付けるたびに、毎回、リークテスト系(ガスリーク検知装置自体と検査対象ワークを取り付けた部分)の検査ができる。したがって、多数回の検査対象ワークの検査に対して1回行っていた従来のガスリーク検知装置の検査に比べ、ガスリーク検知の信頼性を向上できる。また、良品ワークを利用して求めた等価内容積を大リーク用基準容積とするので、ある検査対象ワークの内容積が良品の検査対象ワークと異なる場合を検知できる。さらに、変形例1のガスリーク検知の設定方法によれば、上述のガスリーク検知方法を実行できる環境を設定できる。
【0055】
変形例1でも検査対象ワークの内側にガスを供給することによって漏れ検査をする内圧式ガスリーク検知を説明したが、検査対象ワークの外側にガスを供給することによって漏れ検査をする外圧式ガスリーク検知にも適用され得る。外圧式ガスリーク検知の場合、ワーク側ガス回路73に接続されたチャンバーの中に良品ワークまたは検査対象ワーク32が収容される。
【0056】
[プログラム、記録媒体]
上述の処理装置110が実施する処理は、
図16に示すコンピュータ2000の記録部2020に、各ステップを実行させるプログラムを読み込ませ、制御部2010、入力部2030、出力部2040、表示部2050などに動作させることで実施できる。
【0057】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。
【0058】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0059】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録媒体に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0060】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。