(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047614
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】ベンチュリ効果を利用した、圧入ガスと圧入水の圧送システム
(51)【国際特許分類】
F04F 5/46 20060101AFI20220317BHJP
B01F 23/2326 20220101ALI20220317BHJP
B01F 25/30 20220101ALI20220317BHJP
E21B 43/00 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
F04F5/46 A
B01F3/04 F
B01F5/04
E21B43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153494
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】591090736
【氏名又は名称】石油資源開発株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 好弘
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 利仁
【テーマコード(参考)】
3H079
4G035
【Fターム(参考)】
3H079AA14
3H079AA23
3H079BB10
3H079CC21
3H079DD03
3H079DD22
4G035AB20
4G035AC22
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】
圧入ガスと圧入水を一つの高圧ポンプで昇圧し、坑内に圧入する方法の提供。
【解決手段】
一つの高圧ポンプより圧入水と圧入ガスを昇圧する方法で、圧入水を高圧ポンプにより昇圧しベンチュリチューブに圧送する工程と、昇圧された圧入水をベンチュリチューブ内の高圧水ノズルより高圧水ジェットとして噴射することにより、高圧水ジェット周囲にベンチュリ効果による負圧を発生させ、圧入ガスをベンチュリチューブ内に引き込むとともに、引き込まれた高速の圧入ガスはベンチュリチューブ内で減速しながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換し、最終的にベンチュリチューブ内の圧力と同じ圧力まで昇圧され、圧入水と混合し気液混合流体となる工程と、昇圧された気液混合流体を気液分離装置まで圧送し、圧入水と圧入ガスに分離する工程からなる。
【選択図】図-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧入水を高圧ポンプにより昇圧しベンチュリチューブに圧送する工程と、
昇圧された圧入水をベンチュリチューブ内の高圧水ノズルより高圧水ジェットとして噴射することにより、高圧水ジェット周囲にベンチュリ効果による負圧を発生させ、圧入ガスをベンチュリチューブ内に引き込むとともに、引き込まれた高速の圧入ガスはベンチュリチューブ内で減速しながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換し、最終的にベンチュリチューブ内の圧力と同じ圧力まで昇圧され、圧入水と混合し気液混合流体となる工程と、
昇圧された気液混合流体を気液分離装置まで圧送し、圧入水と圧入ガスに分離する工程と、
からなる、
一つの高圧ポンプより圧入水と圧入ガスを昇圧する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスポンプ等の複雑な貯留・圧送システムを使用する必要がない、ベンチュリ効果を利用した圧入ガスと圧入水の圧送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策は、世界中の国々にとって、全力で取り組むべき重要な課題であり、2015年にパリで開かれた「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」が合意され、2016年11月に発効された。パリ協定では、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べ20℃より十分低く保つとともに、上昇幅を1.5℃に抑える努力を追求すること」、「今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を達成するために、最新の科学に従って早期の削減を行う」などの重要項目が含まれている。その結果、世界の二酸化炭素回収・貯留技術(Carbon Dioxide Capture and Storage、以下、本明細書においてはCCSと略記する)や二酸化炭素回収・貯留有効利用技術(Carbon Dioxide Capture, Utilization and Storage、以下、本明細書においてはCCUSと略記する)の導入が、脱温暖化への対応策の一つとして早急な対応が求められる。
しかし、CCSやCCUSは二酸化炭素(Carbon Dioxide、以下、本明細書においてはCO2ガスと略記する)の大幅削減が可能な技術として期待が大きい一方で、ガスポンプ等の複雑な貯留・圧送システムを必要とするため、事業性が見通し難いことがある。特にCCSは、世界的な普及は期待通りには進んでおらず、技術の不確実性や、貯留の安全性への懸念、法規制の未整備、等々幾つかあるが、特にコスト増加により事業性が見通し難いことがある。また、CCSやCCUS技術に限らず、ガスポンプ等の複雑な貯留・圧送システムを必要としない安価なシステムを求める動きがある。このため、ガスポンプ等の複雑な貯留・圧送システムを必要としない、投下資金回収に掛かるコストを補填することを目指す手法が注目を集めるようになっている。
【0003】
このようなことから、CCUS技術の一つである石油増進回収技術(Enhanced Oil Recovery、以下、本明細書においてはEORと略記する) を利用した石油貯留層へCO2ガスを含むガスを圧入する技術は技術的に確実性のある手法であり、地球温暖化対策であるCO2ガスを地下貯留することができるとともに、石油回収率を上げながら経済的な効果を上げられることもあり、各国のCCUS技術の普及において必要不可欠な要素となっている。また、同様にガスポンプ等の複雑な貯留・圧送システムを使用する業種においても、ガスポンプ等の圧送システムを省略できることは、経済的な効果を上げられることを示す。
【0004】
石油貯留層から石油を採取する方法には、1次から3次の回収法があり、1次回収法は自噴採油と人工採油による採油であり、2次回収法では石油貯留層に水を圧入して油層圧を回復させることにより、産油量の増加を行うものである。1次から2次回収法では、石油の回収率を30%から40%に高めることができると言われている。3次回収法はEORとも呼ばれ、2次回収法適用後に適用される回収法であり、ケミカル攻法、熱攻法、CO2ガスを含むガス攻法、微生物攻法などが知られており、薬剤や熱を石油貯留層内に圧入して石油の流動性増進や水と油間の表面張力を減少させたり、CO2ガスを含む圧入ガスと油の間に超臨界圧下での混合状態(ミシブル状態)を作り出したりすることにより、石油回収率の向上を図る手法である。これらの回収法の適用により、回収率を50%から60%程度に高めることができると言われている。
【0005】
大量のCO2ガスを地下貯留する方法としては、地下の帯水層へのCO2ガス圧入法があり、特許第5315346号においては、CO2ガスタンクに溜められたCO2ガスを圧送システムにより昇圧し、地層に垂直に掘削した注入井から圧入することによりCO2ガスをマイクロバブル化し、地層水にマイクロバブルを分散させることによりCO2ガスを地下貯留することを特徴とする貯留装置及び貯留方法、特許第5399436号では地層に水平に掘削した注入井からCO2ガスを圧送システムにより圧入し、CO2ガスをマイクロバブル化し、地層水にマイクロバブルを分散させることによりCO2ガスを地下貯留することを特徴とする貯留装置及び貯留方法が提案されている。
【0006】
また、特開2008-019644においては、石油または天然ガスの増進回収方法は、地表において注入ガスを注入水の中にマクロバブル化して混合し気液混合流体を作成し、これを圧入井から油層またはガス層に圧入することにより層内の微細な間隙に浸透させ、注入水中のマイクロバブルによって石油またはガスの増進回収を図ることを特徴とする石油または天然ガスの増進回収方法及び増進回収システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5315346号
【特許文献2】特許第5399436号
【特許文献3】特開2008-019644
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、CCUSに供する圧入ガスと圧入水を得るため、ベンチュリ効果を利用して一つの高圧ポンプにより、圧入ガスと圧入水を同時に昇圧し、続いて気液分離装置により圧入ガスと圧入水に分離した後、これを別々に圧送できる圧送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、圧入水を高圧ポンプにより昇圧しベンチュリチューブに圧送する工程と、昇圧された圧入水をベンチュリチューブ内の高圧水ノズルより高圧水ジェットとして噴射することにより、高圧水ジェット周囲にベンチュリ効果による負圧を発生させ、圧入ガスをベンチュリチューブ内に引き込むとともに、引き込まれた高速の圧入ガスはベンチュリチューブ内で減速しながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換し、最終的にベンチュリチューブ内の圧力と同じ圧力まで昇圧され、圧入水と混合し気液混合流体となる工程と、昇圧された気液混合流体を気液分離装置まで圧送し、圧入水と圧入ガスに分離する工程からなる、一つの高圧ポンプより圧入水と圧入ガスを昇圧することを特徴とする。
【0010】
前記圧入ガスは、炭化水素ガス、油田フレアガス、窒素ガス、CO2ガス、燃焼排ガス、及びこれらを混合したガスであることを意味し、圧入ガスにCO2ガスや燃焼ガスを使用する場合、CO2ガスを地下貯留する場合、地球温暖化対策において効果を上げることを特徴とする。
また、圧入水は、上水道水、河川水や海水等が使用されるが、生産井から生産される地層水や圧入水等も上水道水、河川水や海水と混合されることにより再利用される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施により、一つの高圧ポンプにより圧入水を昇圧しベンチュリチューブに圧送することにより、ベンチュリチューブ内でベンチュリ効果が発生するため、圧入水と混合しながら圧入ガスを適切な圧力まで昇圧することが可能となり、ガスポンプ等の複雑な貯留・圧送システムは必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図-1】圧入水と圧入ガスの圧送システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図-1を参照して具体的に説明する。本発明の目的は、一つの高圧ポンプにより圧入ガスと圧入水を気液混合流体として同時に昇圧し、つづいて気液混合流体を気液分離装置により圧入ガスと圧入水に分離することにある。本構成は、図-1に示すとおり、101圧入水タンク、102圧入ガスタンク、103高圧ポンプ、103高圧ポンプにより109圧入水を高圧で噴射することにより、102圧入ガスタンクより110圧入ガスを吸い込み昇圧する104ベンチュリチューブ、104ベンチュリチューブにより昇圧された109圧入水と110圧入ガスの気液混合流体を分離するための107気液分離装置、107気液分離装置により分離された109圧入水を減圧するための108減圧弁が備えられている。
【0014】
図-1に示すとおり、109圧入水は103高圧ポンプにより昇圧されベンチュリチューブに圧送される。昇圧された109圧入水は、104ベンチュリチューブ内の105高圧水ノズルより106高圧水ジェットとして噴射することにより、106高圧水ジェット周囲にベンチュリ効果による負圧を発生させ、その結果として110圧入ガスを104ベンチュリチューブ内に引き込むとともに、引き込まれた高速の110圧入ガスは104ベンチュリチューブ内で減速しながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換し、最終的に104ベンチュリチューブ内の圧力と同じ圧力まで昇圧され、109圧入水と混合し気液混合流体となる。
この気液混合流体は、107気液分離装置まで圧送され、109圧入水と110圧入ガスに分離され、109圧入水については108減圧弁により減圧され、坑井に挿入されているパイプから坑内に圧入される。また、110圧入ガスについては、同様に坑井に挿入されているパイプから坑内に圧入される。
103高圧ポンプにより圧送される109圧入水の圧力に対し、ベンチュリチューブ内に引き込まれた110圧入ガスと圧送された109圧入水が混合した気液混合流体の圧力の割合は、110圧入ガスの圧力によって変化するが、概ね40-50%程度と考えられる。
(注記1:圧入水の圧力と気液混合流体の圧力との関係は、ベンチュリチューブ内の圧力上昇割合=(気液混合流体圧力―吸い込まれる110圧入ガス圧力)/(103高圧ポンプ圧力―気液混合流体圧力))
【符号の説明】
【0015】
101 圧入水タンク
102 圧入ガスタンク
103 高圧ポンプ
104 ベンチュリチューブ
105 高圧水ノズル
106 高圧水ジェット
107 気液分離装置
108 減圧弁
109 圧入水
110 圧入ガス
【図-1】