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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047625
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】圧電タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20220317BHJP
   H02N 2/18 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
B60C19/00 F
H02N2/18
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153512
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】509294922
【氏名又は名称】ムネカタインダストリアルマシナリー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【弁理士】
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】海野 雄士
(72)【発明者】
【氏名】金澤 彰裕
(72)【発明者】
【氏名】桑田 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】玉野 明義
【テーマコード(参考)】
3D131
5H681
【Fターム(参考)】
3D131BC31
3D131LA06
3D131LA20
3D131LA28
5H681AA12
5H681BB08
5H681DD23
5H681EE10
(57)【要約】
【課題】圧電素子を構成する電極の剥離や割れを抑制して、圧電タイヤとしての耐久性の向上を図る。
【解決手段】圧電タイヤ1Aは、タイヤ本体2と、塗布型圧電部3と、回路ユニット4とを有する。塗布型圧電部3は、タイヤ本体2に塗布され、タイヤ本体2の接地面に生じた歪みに応じた電力を生成する。回路ユニット4は、タイヤ本体2に設けられ、塗布型圧電部3によって生成された電力で駆動する。圧電部3として塗布型のものを用いることで、圧電部3がタイヤ本体2に密着し、圧電部3を構成する電極の剥離や割れを抑制できる。その結果、タイヤ本体2の歪みに対する追従性を損なうことなく、圧電タイヤ1Aとしての耐久性が向上する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電タイヤにおいて、
タイヤ本体と、
前記タイヤ本体に塗布され、前記タイヤ本体の接地面に生じた歪みに応じた電力を生成する塗布型圧電部と、
前記タイヤ本体に設けられ、前記塗布型圧電部によって生成された電力で駆動する回路ユニットと
を有することを特徴とする圧電タイヤ。
【請求項2】
前記塗布型圧電部は、前記タイヤ本体の接地部裏面に塗布されていることを特徴とする請求項1に記載された圧電タイヤ。
【請求項3】
前記塗布型圧電部が前記タイヤ本体に直接接触しないように、前記塗布型圧電部と前記タイヤ本体との間に介在する樹脂層をさらに有することを特徴とする請求項2に記載された圧電タイヤ。
【請求項4】
前記塗布型圧電部の幅方向の長さは、日本自動車タイヤ協会規格の最大荷重負荷時接地幅の70%以上かつ150%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された圧電タイヤ。
【請求項5】
前記塗布型圧電部の周方向の長さは、日本自動車タイヤ協会規格の最大荷重負荷時接地長の40%以上かつ90%以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載された圧電タイヤ。
【請求項6】
前記塗布型圧電部は、前記タイヤ本体の周方向および幅方向の少なくとも一方における異なる位置に複数設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載された圧電タイヤ。
【請求項7】
前記複数の塗布型圧電部は、それぞれの周方向の長さが異なることを特徴とする請求項6に記載された圧電タイヤ。
【請求項8】
前記複数の塗布型圧電部は、それぞれの幅方向の長さが異なることを特徴とする請求項6に記載された圧電タイヤ。
【請求項9】
前記複数の塗布型圧電部は、所定の形状を前記タイヤ本体の周方向に伸張した形状を有することを特徴とする請求項7に記載された圧電タイヤ。
【請求項10】
前記回路ユニットは、検知対象の状態を検知するセンサの信号を外部に無線で送信する無線回路を有することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載された圧電タイヤ。
【請求項11】
前記回路ユニットは、前記圧電部によって生成された電力を蓄え、当該蓄えられた電力を前記回路ユニットに供給する蓄電部を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載された圧電タイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの接地面の歪みに応じた電力を生成する圧電タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、発電装置を備えたタイヤが開示されている。この発電装置は、複数の発電素子と、蓄電器とを備えている。それぞれの発電素子は、伸縮性のある2つの電極と、これらの間に挟まれた弾性高分子化合物(誘電エラストマー)とを有する。弾性高分子化合物は、タイヤに生じた歪みに基づいて、電極間に電位差を生じさせる。蓄電器は、発電素子に生じた電気エネルギーを蓄積する。複数の発電素子は、タイヤ内部の少なくとも一方の側面において、回転軸を中心とした円周上に設けられている。それぞれの発電素子は、回転するタイヤが接地することによって生じる圧縮による歪みと、伸張による歪みとが同時に加わらないように、周方向の長さが設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-223054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1において、圧電素子(発電素子)を構成する2つの電極は、誘電エラストマーの両面に接着することによって、あるいは、スパッタリングや蒸着することによって形成される。しかしながら、このような手法によって形成された電極は、耐久性に難がある。車両の走行時には、比較的大きなタイヤの歪みが高周期で繰り返され、このようなタイヤ固有の過酷な使用状況に由来して、電極の剥離や割れが生じ易いからである。
【0005】
本発明の目的は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電素子を構成する電極の剥離や割れを抑制して、圧電タイヤとしての耐久性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、本発明は、タイヤ本体と、塗布型圧電部と、回路ユニットとを有する圧電タイヤを提供する。塗布型圧電部は、タイヤ本体に塗布され、タイヤ本体の接地面に生じた歪みに応じた電力を生成する。回路ユニットは、タイヤ本体に設けられ、塗布型圧電部によって生成された電力で駆動する。
【0007】
ここで、本発明において、上記塗布型圧電部は、タイヤ本体の接地部裏面に塗布されていることが好ましい。また、塗布型圧電部がタイヤ本体に直接接触しないように、塗布型圧電部とタイヤ本体との間に介在する樹脂層を設けてもよい。また、上記塗布型圧電部の幅方向の長さは、日本自動車タイヤ協会規格の最大荷重負荷時接地幅の70%以上かつ150%であることが好ましい。さらに、上記塗布型圧電部の周方向の長さは、日本自動車タイヤ協会規格の最大荷重負荷時接地長の40%以上かつ90%以下であることが好ましい。
【0008】
本発明において、上記塗布型圧電部は、タイヤ本体の周方向および幅方向の少なくとも一方における異なる位置に複数設けられもよい。この場合、複数の塗布型圧電部は、それぞれの周方向の長さが異なっていてもよいし、それぞれの幅方向の長さが異なっていてもよい。また、複数の塗布型圧電部は、所定の形状をタイヤ本体の周方向および幅方向の少なくとも一方に伸張した形状を有していてもよい。
【0009】
本発明において、上記回路ユニットは、検知対象の状態を検知するセンサの信号を外部に無線で送信する無線回路を有していてもよい。また、上記回路ユニットは、圧電部によって生成された電力を蓄え、蓄えられた電力を回路ユニットに供給する蓄電部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タイヤ本体に設けられる圧電部を塗布型とすることで、タイヤ本体に密着し、かつ、タイヤ本体の歪みに対して柔軟に追従する。これにより、塗布型圧電部を構成する電極の剥離や割れを抑制でき、圧電タイヤとしての耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る圧電タイヤの概略図
図2】圧電タイヤの断面図
図3】圧電部における起電力の説明図
図4】タイヤの幅方向におけるFEM解析の特性図
図5】タイヤ回転時の出力電圧データを示す図
図6】回路ユニットの構成図
図7】第2の実施形態に係る圧電タイヤの概略図
図8】複数の圧電部の配置図
図9】第1の変形例に係る複数の圧電部の配置図
図10】第2の変形例に係る複数の圧電部の配置図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る圧電タイヤの概略図である。この圧電タイヤ1Aは、自動車に装着されるが、形状やサイズは異なるものの、オートバイや自転車などの各種車両に対して広く適用できる。圧電タイヤ1Aは、通常のタイヤと同様、ゴムなどの弾性体で形成されたタイヤ本体2を主体とし、これに圧電部3および回路ユニット4が付加されている。
【0013】
圧電部3は、タイヤ本体2の接地部裏面に設けられており、タイヤ本体2の接地面に生じた歪みに応じた電力を生成する。この圧電部3は、上下に配置される一対の電極と、これらの間に介在する圧電膜とを有する。本実施形態では、圧電部3として、タイヤ本体2の内面に塗布されたもの、すなわち、塗布型圧電部を用いている。塗布の態様としては、例えば、シルク印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、バーコーターによる塗布、スプレーコーティング(例えば、特開2018-157950公報を参照)などが挙げられ、接着、スパッタリング、蒸着は除外される。
【0014】
具体的には、タイヤ本体2の内面には、下部電極が塗布されており、この下部電極の上部には、圧電膜が形成されている。圧電膜としては、好ましくは、柔軟性のあるポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン(VDF)と3フッ化エチレン(TrFE)の共重合体(P(VDF-TrFE))などの樹脂系圧電材料が用いられる。そして、圧電膜の上部には、下部電極と同様の手法を用いて、上部電極が形成されている。
【0015】
圧電部3として、塗布型のものを用いることで、接着、スパッタリング、蒸着といった塗布型でないものと比較して、タイヤ本体2への密着性が向上する。これにより、タイヤ本体2の歪みに対する追従性を確保しつつ、圧電部3を構成する電極の剥離や割れを抑制できる。
【0016】
また、図2に示すように、圧電部3とタイヤ本体2との間に、樹脂層5を介在させてもよい。一般に、タイヤ本体2には硫黄成分が含まれており、経時変化によって、硫黄成分がタイヤ本体2の表面に浮き出てくる現象(ブリードアウト)が知られている。圧電部3がタイヤ本体2の裏面と直接接触している場合、タイヤ本体2の表面に浮き出た硫黄成分によって圧電部3が侵され、劣化や変質を招くおそれがある。この問題を解決するために、圧電部3がタイヤ本体2と直接接触しないようにするための保護層として、両者の間に樹脂層5を介在させる。樹脂層5は、タイヤ本体2から容易に剥離しないように塗布によって形成することが好ましく、硫黄成分を含まないものが望ましい。
【0017】
図3は、圧電部3における起電力の説明図である。一般に、圧電部3が塗布型であるか否かを問わず、圧電部3を構成する単一の検知面の特性として、歪みの方向が局所的に異なる場合、例えば、歪みが加わっている圧縮エリアAと、歪みが緩和されている伸張エリアBとが混在する場合、圧縮エリアAでは一方の極性(例えばマイナス)の起電力が生じる反面、伸張エリアBでは他方の極性(例えばプラス)の起電力が生じる。これにより、双方の極性の起電力が相殺され、圧電部3全体としての起電力の低下を招く。全体の起電力が最大となるのは、検知面が一方の極性のエリアのみで占められている状態である。また、全体の起電力が最小となるのは、エリアA,Bとが半々に混在した状態であり、この場合、プラスの起電力とマイナスの起電力とが完全に相殺され、全体の起電力は0になる。したがって、圧縮/伸張の混在(換言すれば、プラス/マイナスの起電力の相殺)を避け、圧電部3に掛かる歪みが圧縮のみ、または、伸張のみとなるような塗布の寸法を設定すれば、全体の起電力を最大化できる(発電量の確保)。このことは、タイヤの周方向および幅方向の如何を問わず、該当する。
【0018】
具体的には、圧電部3の幅方向の長さについては、発明者が実験やシミュレーションを通じて検討した結果、日本自動車タイヤ協会規格(JATMA)の最大荷重負荷時接地幅の70%以上かつ150%以下の数値範囲にすることが好ましい。ここで、タイヤのリム、荷重、内圧などは、JATMAによって規定された規格から引用することとし、これらの値はタイヤの種類毎に一意に定まる。
【0019】
図4は、タイヤ内面における幅方向の歪みをFEM解析(有限要素法解析)した図である。同図において、横軸は、接地幅を100%とした時の接地中心からの距離を%で表示したものである。ここで、「接地幅」とは、タイヤを適用リムに装着し、規定の空気圧とし、静止した状態で平板に対してタイヤを垂直に置き、規定の質量に対応する負荷を加えたときの平板との接触面におけるタイヤ軸方向最大直線距離をいう。空気圧や負荷能力については、本規格に予め規定されている。縦軸は、幅方向の歪(%)であり、プラスが伸張、マイナスが圧縮である。タイヤに付加する荷重はJATMA最大荷重の25%、58%、100%で解析した。同図から判るように、幅方向の歪分布は接地中心を基準として左右対称(タイヤの表側、裏側で対称)となっている。
【0020】
FEM解析において、接地中心から接地幅の±36%(全体で72%)の位置までは、荷重3条件とも歪はマイナスである。72%に、外乱要素やサイズによるバラツキなどを考慮した70%以上であれば、荷重の大きさの如何を問わず、歪はマイナス領域となる。また、接地中心から接地幅の±72%(全体で144%)の位置までをみると、荷重25%および58%の条件では歪は概ねマイナス領域であるが、荷重100%条件では歪がプラス領域となる部位が存在し、全体ではプラスとマイナスが混在する形となる。144%に、外乱要素やサイズによるバラツキなどを考慮した150%以下であれば、荷重が小さい条件(リアタイヤの定積時やブレーキング時など)でマイナス領域のみとなる。
【0021】
一方、圧電部3の周方向の長さについては、発明者が実験やシミュレーションを通じて検討した結果、JATMAの最大荷重負荷時接地長の40%以上かつ90%以下とすることが好ましい。
【0022】
図5は、圧電部3を塗布したタイヤに荷重を付加し、回転させた際の出力電圧データを示す図である。横軸は時間、縦軸は出力電圧である。ここで「接地長」とは、タイヤを適用リムに装着し、規定の空気圧とし、静止した状態で平板に対してタイヤを垂直に置き、規定の質量に対応する負荷を加えたときの平板との接触面におけるタイヤ周方向最大直線距離をいう。本例で塗布した圧電部は、接地長を100%とした時の周方向長さを54%、81%、108%の3水準で、幅方向長さは同一である。電圧の時系列波形から判るように、圧電部が接地するより前から、また接地から出た後も電圧が発生している。また、周方向長さが異なっても、概ね相似形の波形となっている。
【0023】
同図における電圧レベルを比較すると、接地長さ81%が最も大きく、54%がそれに次ぎ、108%が最も小さい。108%の圧電部は、圧電素子量が3水準の中で最も多いにも拘らず電圧レベルが小さいのは、図3で示したように、一つの圧電素子内に歪が圧縮/伸張の領域が混在し、起電力がプラス/マイナスで相殺されて、全体の起電力が低下しているためである。したがって、起電力を確保するためには塗布する圧電部の周方向長さを接地長未満(接地長比100%未満)とすることが必要である。一方、荷重付加によりタイヤが変形する周方向長さは、最も外側である接地部が最も長く、トレッド部材の厚みがあるためタイヤ内面部が最も短くなる。同図の電圧データでは、周方向長さ81%が最も大きくなっており、100%未満で、かつ81%に外乱要素やサイズによるバラツキなどを考慮した90%以下であれば、一つの圧電素子内で歪がプラス/マイナスの領域が混在することがなくなる。
【0024】
一方、実走行時の荷重は25~100%程度の範囲で変動する。JATMAの最大荷重の25%における接地長は100%荷重時の47%程度であり、このような条件下で1つの圧電部3内でプラス/マイナスの相殺が生じないようにするには、下限を40%とする。すなわち、40%という下限値は、荷重が小さい場合(空積時やリアタイヤのブレーキング時など)、最大荷重における接地長の47%まで短くなることから、それをカバー可能な値である。
【0025】
回路ユニット4は、タイヤ本体2に設けられ、圧電部3によって生成された電力で駆動する。図6は、回路ユニット4の構成図である。この回路ユニット4は、検知対象物の状態を検知するセンサ類の出力を外部に無線で出力する機能を備えており、処理回路6と、無線回路7と、蓄電部8とを有する。本実施形態では、センサ類として、圧力センサ9aと、加速度センサ9bと、温度センサ9cとが設けられており、これらはタイヤ本体2の内部や回路ユニット4上といった適宜の箇所に配置されている。圧力センサ9aは、タイヤ本体2内の圧力(空気圧)を検知する。加速度センサ9bは、回転に伴うタイヤ本体2の加速度を検知する。また、温度センサ9cは、タイヤ本体2内の温度を検知する。
【0026】
処理回路6は、複数のセンサ9a~9cの出力信号に対してAD変換やノイズ除去などの信号処理を施し、処理後の信号を無線回路7に出力する。無線回路7は、センサ9a~9cの処理済信号を外部(例えば、車内側のコンピュータ)に無線で送信する。また、蓄電部8は、充電可能な電池を備え、圧電部3によって生成された電力を蓄える。そして、蓄えられた電力は、回路ユニット4における処理回路6および無線回路7に供給される。
【0027】
このように、本実施形態によれば、タイヤ本体2に設けられる圧電部3として塗布型のものを用いることで、圧電部3がタイヤ本体2に密着するため、圧電部3を構成する電極の剥離や割れを抑制できる。その結果、、タイヤ本体2の歪みに対する追従性を損なうことなく、圧電タイヤ1Aとしての耐久性の向上を図ることができる。この点、例えば、フィルムの貼り付けなどの塗布以外の方法で圧電素子を形成した場合、柔軟な素材でできたタイヤの大きな歪みに追従することが難しく、圧電素子を構成する電極の剥離や割れが生じ易い。また、デバイス型の発電素子を取り付けた場合、ひずみ方や重心に偏りが生じ易い。これらの問題は、塗布型の圧電部3を用いることで、有効に解消できる。
【0028】
また、本実施形態によれば、圧電部3の幅方向の長さをJATMAの最大荷重負荷時接地幅の70%以上かつ150%以下、および/または、圧電部3の周方向の長さをJATMAの最大荷重負荷時接地長の40%以上かつ90%以下とすることで、発電量を有効に確保することが可能となる。
【0029】
なお、上述した第1の実施形態において、圧電部3は、回路ユニット4に電力を供給する用途で用いられるが、それ以外に、出力電圧の変化によってタイヤ本体2の接地状態を検知するセンサ用途で用いることも可能である。この点は、次に述べる第2の実施形態についても同様である。
【0030】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態に係る圧電部3を複数配置した圧電タイヤについて説明する。図7は、第2の実施形態に係る圧電タイヤの概略図である。なお、第1の実施形態と同一の部材については同一の符号を付して、ここでの説明を省略する。
【0031】
この圧電タイヤ1Bは、タイヤ本体2の接地部裏面に設けられた複数の圧電部3a~3cを備えている。これらの圧電部3a~3cは、所定の形状を有しており、タイヤ本体2の接地面に生じた歪みに応じた電力を個別に生成する。複数の圧電部3a~3cを間隔を空けて配置することで、全体としての発電量(出力電圧)を増大させることができる。なお、本実施形態では、3つの圧電部3a~3cを配置しているが、その配置数は任意である。また、圧電タイヤ1Bの全体的な重量バランスなどの観点から、複数の圧電部3a~3cをタイヤ本体2の全周に亘って均等に配置してもよい。
【0032】
図8は、複数の圧電部3a~3cの配置図である。複数の圧電部3a~3cは、タイヤ本体2の周方向における互いに異なる位置に設けられている。圧電部3a~3cは、いずれも矩形状をベースとしているが、これをタイヤ本体2の周方向に伸張した形状を有する。すなわち、タイヤ本体2の幅方向の長さは同一だが、周方向の長さはLa,Lb,Lcといった如く互いに異っている(La>Lb>Lc)。
【0033】
周方向の長さが異なる複数の圧電部3a~3cを塗布する目的は、上述した第1の実施形態と同様、発電量を確保するためである。タイヤの接地長は荷重に比例し、実走行では、荷重がJATMAの最大荷重付加時の25%から100%の範囲で変動する。また、圧電部3a~3cの圧縮/伸張も荷重に依存する。すなわち、周方向長さが大、かつ、荷重が大の場合、伸張のみとなり、起電力が大きくなる。また、周方向長さが大、かつ、荷重が小の場合、圧縮/伸張が混在して起電力のロスが生じる。一方、荷重が小の場合、周方向長さが短い圧電部は伸張のみなので、周方向長さが長い圧電部よりも起電力が大きくなる。よって、周方向長さが異なる圧電体3a~3cを複数塗布することで、どのような荷重条件であっても起電力を有効に確保できる。
【0034】
複数の圧電部3a~3cの形状は、矩形状に限定されるものではなく、接地状態におけるタイヤ本体2の歪み形状を考慮した上で、適宜の形状を採用することができる。例えば、図9に示すように、ひし形をベースとし、これをタイヤ本体2の周方向に伸張した形状であってもよい。また、図10に示すように、2つの台形を線対称に配置した形状をベースとして、これをタイヤ本体2の周方向に伸張した形状であってもよい。
【0035】
このように、本実施形態によれば、タイヤ本体2の周方向において、長さの異なる複数の圧電部3a~3cを設けることで、荷重条件に関わりなく、発電量を有効に確保できる。
【0036】
なお、上述した第2の実施形態では、タイヤ本体2の周方向に着目した例について説明したが、これに代えて、複数の圧電部をタイヤ本体2の幅方向の異なる位置に設けてもよいし、あるいは、周方向および幅方向の双方に併設してもよい。この場合、幅方向に設けられる複数の圧電部は、周方向の場合と同様、タイヤ本体2の幅方向に伸張した形状であってもよい。
【0037】
さらに、本発明は、圧電タイヤという物の発明のみならず、タイヤ本体2への塗布によって圧電部3,3a~3cを形成するといった圧電タイヤの製造方法として捉えることもできる。
【符号の説明】
【0038】
1A,1B 圧電タイヤ
2 タイヤ本体
3,3a~3c 圧電部
4 回路ユニット
5 樹脂層
6 処理回路
7 無線回路
8 蓄電部
9a 圧力センサ
9b 加速度センサ
9c 温度センサ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10