(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047654
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153564
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 信次
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE11
4C601LL25
(57)【要約】
【課題】超音波診断装置において、電動部品を用いることなく、1つの操作部に対する操作によって、操作パネルの高さ位置を変更する上下運動機構を含む複数の運動機構の運動を制限する複数のロック機構の制限状態を変更可能とする。
【解決手段】操作パネル16を上下運動させる平行リンク30の運動を制限するガススプリング32に作用するワイヤWa、操作パネル16を第1回転運動させる回転支柱26の運動を制限する第1ロックピン34に作用するワイヤWb、操作パネル16を第2回転運動させる載置台18の運動を制限する第2ロックピン38に作用するワイヤWc、及び、操作パネル16を前後運動させるスライド板28Bの運動を制限する第3ロックピン44に作用するワイヤWdは、ワイヤ中継機構50を介して操作部22に接続される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータからの指示の入力を受け付ける操作パネルと、
前記操作パネルの高さ位置を変更する上下運動を行う上下運動機構を含む、前記操作パネルの位置又は姿勢を変更するための複数の運動機構と、
前記複数の運動機構の運動を制限する複数のロック機構と、
1つの操作部と、
前記操作部と、前記複数のロック機構それぞれとを接続するワイヤと、
を備え、
前記操作部が前記オペレータによって操作されると、前記ワイヤの作用によって、前記複数のロック機構による制限状態が変更される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記複数の運動機構は、
前記上下運動機構と、
前記操作パネルから離間して鉛直方向に伸びる第1鉛直軸を中心に水平面において前記操作パネルを回転させる第1回転運動を行う第1回転運動機構と、
前記第1鉛直軸よりも前記操作パネルに近い位置で鉛直方向に伸びる第2鉛直軸を中心に水平面において前記操作パネルを回転させる第2回転運動を行う第2回転運動機構と、
前記操作パネルの前後位置を変更する前後運動を行う前後運動機構と、
を含み、
前記複数のロック機構は、
前記上下運動を制限する上下ロック機構と、
前記第1回転運動を制限する第1回転ロック機構と、
前記第2回転運動を制限する第2回転ロック機構と、
前記前後運動を制限する前後ロック機構と、
を含み、
前記操作部が前記オペレータによって操作されると、前記ワイヤの作用によって、前記上下ロック機構、前記第1回転ロック機構、前記第2回転ロック機構、及び前記前後ロック機構による制限状態が変更される、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記ワイヤは、前記複数のロック機構のそれぞれと、ワイヤ中継機構とを接続する複数のワイヤからなる第1部分と、前記ワイヤ中継機構と前記操作部とを接続する単一のワイヤからなる第2部分とを有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記操作部は、前記ワイヤが接続されるワイヤ接続部と、前記オペレータが力を加える入力部とを有し、前記オペレータによって前記入力部に力が加えられることで操作部回転軸を中心に回転し、
前記操作部回転軸と前記ワイヤ接続部との間の距離は、前記操作部回転軸と前記入力部との間の距離よりも短い、
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記操作部は、左右方向に伸長した形状であり、前記ワイヤが接続されるワイヤ接続部と、前記ワイヤ接続部の左右側にそれぞれ設けられた前記オペレータが力を加える入力部とを有し、前記オペレータによって前記入力部に力が加えられることで前後方向に移動する、
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記複数のロック機構の少なくとも1つは、ロック穴と、前記ロック穴に嵌合することで運動を制限するロックピンとから構成され、
前記ロック穴の側壁は、開口に向かって徐々に穴径が大きくなるように傾斜した側壁傾斜部分を有し、
前記ロックピンの側面は、嵌合状態において前記ロック穴の側壁傾斜部分に対向するテーパ部を有する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記ロック穴の側壁は、前記側壁傾斜部分の手前及び奥側に設けられ、穴径が一定となるように深さ方向に伸びる側壁非傾斜部分を有し、
前記ロックピンの側面は、前記テーパ部の基端側及び先端側に設けられ、嵌合状態において前記側壁非傾斜部分に対向するストレート部を有する、
ことを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、オペレータからの指示の入力を受け付ける操作パネルを有する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器として用いられる超音波診断装置は、超音波画像の形成処理などを行う装置本体と、超音波画像などを表示するメインディスプレイと、医師などのオペレータからの指示の入力を受け付ける操作パネルとを有するのが一般的である。操作パネルは、スイッチ、ポインティングデバイス、回転つまみなどを有する。また、操作パネルは、指示入力のための種々の情報を表示するサブディスプレイを有していてもよい。
【0003】
従来、操作パネルが運動機構によって支持され、運動機構の動作によって操作パネルの姿勢(すなわち位置及び向きの少なくとも一方)が変更可能となっている超音波診断装置が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、操作パネルの高さを変更する昇降機構と、操作パネルの左右方向のスライド運動を行う左右スライド機構と、操作パネルの前後方向のスライド運動を行う前後スライド機構と、操作パネルの水平回転運動を行う回転機構とを含む複数の運動機構によって操作パネルの姿勢を変更可能な超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その姿勢を変更可能に操作パネルを支持する運動機構は、操作パネルの姿勢を維持するためのロック機構を備えているのが一般的である。ロック機構は、各運動機構それぞれに設けられるのが一般的である。例えば、特許文献1に記載された超音波診断装置においては、左右スライド機構の運動を制限(ロック)するロック機構と、前後スライド機構の運動を制限するロック機構が記載されている。
【0007】
複数のロック機構が設けられている場合、1つの操作部に対する操作によって複数のロック機構の制限状態が変更可能であるのが望ましい。制限状態の変更とは、運動機構の運動が制限されていない状態(アンロック状態)と、運動機構の運動が制限されている状態(ロック状態)との間で相互に状態変化することを意味する。
【0008】
特許文献1に記載された超音波診断装置では、操作パネルの前側に配置されたリリースレバーによって、左右スライド機構及び前後スライド機構の制限状態を変更することができている。しかしながら、1つの操作部に対する操作によって、より多くのロック機構の制限状態の変更、特に、操作パネルの高さ位置を変更する上下運動機構を含む複数の運動機構の運動を制限する複数のロック機構の制限状態を変更可能であるのが望ましい。特許文献1に記載された超音波診断装置では、上述のリリースレバーによって昇降機構のロック機構の制限状態まで変更可能であることは記載されていない。従来、昇降機構のロック機構の制限状態の変更は、フットペダルなどによって行われる場合があり、特許文献1に記載された超音波診断装置においても、リリースレバーとは別途設けられた、フットペダルなどの他の操作部に対する操作によって昇降機構のロック機構の制限状態が変更されると解される。
【0009】
なお、1つの操作部に対する操作に応じて、モータなどの電動部品が動作することで、上下運動機構を含む複数の運動機構の運動を制限する複数のロック機構の制限状態を変更することも考えられる。
【0010】
本発明の目的は、超音波診断装置において、電動部品を用いることなく、1つの操作部に対する操作によって、操作パネルの高さ位置を変更する上下運動機構を含む複数の運動機構の運動を制限する複数のロック機構の制限状態を変更可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る超音波診断装置は、オペレータからの指示の入力を受け付ける操作パネルと、前記操作パネルの高さ位置を変更する上下運動を行う上下運動機構を含む、前記操作パネルの位置又は姿勢を変更するための複数の運動機構と、前記複数の運動機構の運動を制限する複数のロック機構と、1つの操作部と、前記操作部と、前記複数のロック機構それぞれとを接続するワイヤと、を備え、前記操作部が前記オペレータによって操作されると、前記ワイヤの作用によって、前記複数のロック機構による制限状態が変更される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、超音波診断装置において、電動部品を用いることなく、1つの操作部に対する操作によって、操作パネルの高さ位置を変更する上下運動機構を含む複数の運動機構の運動を制限する複数のロック機構の制限状態を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る超音波診断装置の外観斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る可動支持機構の側面から見た一部断面図である。
【
図4】第1回転運動機構及び第1回転ロック機構を示す底面図である。
【
図5】第1ロックピンと第1ロック穴の拡大図である。
【
図10】各ロック機構から伸びる各ワイヤの引き回し経路を示す図である。
【
図11】操作部及びワイヤ中継機構を示す平面図である。
【
図12】操作部及びワイヤ中継機構の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10の外観斜視図である。超音波診断装置10は、装置本体12、メインディスプレイ14、及び操作パネル16を含んで構成される。また、超音波診断装置10は、装置本体12に接続され、被検体に対して超音波の送受波を行う超音波プローブ(不図示)が含まれる。本明細書においては、
図1に示されるように、装置本体12の幅方向がX軸で表され、X軸の正方向を「右」、X軸の負方向を「左」と呼ぶ。また、装置本体12の奥行方向がY軸で表され、Y軸の正方向を「後」、Y軸の負方向を「前」と呼ぶ。また、装置本体12の高さ方向がZ軸で表され、Z軸の正方向を「上」、Z軸の負方向を「下」と呼ぶ。
【0015】
装置本体12は、超音波プローブに対して、被検体に超音波を送信させるための送信信号を送信する。また、装置本体12は、超音波プローブからの受信信号に基づいて、超音波画像の形成処理を行う。メインディスプレイ14は、装置本体12が形成した超音波画像などを表示するものである。
【0016】
操作パネル16は、スイッチ、ポインティングデバイス、回転つまみなどを有し、医師などのオペレータからの指示の入力を受け付けるものである。特に、操作パネル16は、被検体の超音波診断のためにオペレータによって操作されるものである。本実施形態では、操作パネル16は、上述のスイッチなどの操作子が配置される平板状の操作盤16Aと、指示の入力に関する種々の情報が表示されるサブディスプレイ16Bと、とを含んで構成されている。サブディスプレイ16Bは、操作盤16Aの後端部から上方向に向かって立設するように設けられる。操作パネル16は載置台18の上に載置される。載置台18は、上側面がやや前方向を向くように前後に傾斜した平板状の部材であり、載置台18の上側面に操作盤16Aが載置される。これにより、操作盤16Aがやや前方向を向くように傾斜し、オペレータは、操作盤16Aの操作をより行いやすくなっている。操作パネル16が載置台18に載置されている以上、操作パネル16と載置台18との位置関係は固定であるため、載置台18の運動あるいは姿勢は、操作パネル16の運動あるいは姿勢と同義である。
【0017】
載置台18は、可動支持機構20によって支持される。可動支持機構20は、運動可能な複数の運動機構を含んで構成されている。これにより、載置台18は、その姿勢(位置及び向きの少なくとも一方)が変更可能に支持される。特に、載置台18は、可動支持機構20によって、装置本体12の上方空間において姿勢が変更可能に支持される。また、可動支持機構20に含まれる各運動機構は、運動を制限するロック機構を備えている。ロック機構の制限状態の変更(すなわち運動を制限しないアンロック状態及び運動を制限するロック状態との間における相互の状態変化)は、オペレータの操作によって行われる。可動支持機構20に含まれる複数のロック機構の制限状態の変更は、載置台18の前端部、左右方向略中央に設けられた操作部22をオペレータが操作することによって行われる。可動支持機構20に含まれる各運動機構、各ロック機構、及び操作部22の詳細については後述する。
【0018】
図2は、本実施形態に係る可動支持機構20を示す側面図である。
図2においては、その一部が断面図となっている。可動支持機構20は、大別して、上述の載置台18、装置本体12から立設する固定支柱24(
図1参照、
図2では不図示)、固定支柱24に接続される回転支柱26、載置台18を回転可能に支持する可動基部28、及び、回転支柱26と可動基部28とを接続する平行リンク30を含んで構成される。
【0019】
固定支柱24は、装置本体12の後端部の左右方向略中央から上方向に立設している柱状の部材である。固定支柱24は、装置本体12に固定的に設けられている。また、固定支柱24は運動機構ではないため運動しない。
【0020】
回転支柱26は、上下方向に伸長する柱状の部材である。回転支柱26は、固定支柱24の上側に接続される。詳しくは、回転支柱26の下端が固定支柱24の上端に接続される。ここで、回転支柱26は、固定支柱24(すなわち装置本体12)に対して回転可能に接続される。具体的には、回転支柱26は、載置台18(すなわち操作パネル16)から離間して鉛直方向に延びる第1鉛直軸としての回転軸AX1を中心に水平面において回転可能に接続される。
【0021】
可動基部28は、略直方体の形状を有する部材である。具体的には、可動基部28は、直方体の形状を有する箱部28Aと、箱部28Aのすぐ上方において水平に設けられる板状部材であるスライド板28Bとを含んで構成される。スライド板28Bは、箱部28Aに対して前後方向に移動(スライド)可能に箱部28Aに接続される。
図2には、スライド板28Bが最も後側に位置した状態が示されており、その状態において、スライド板28Bは、箱部28Aの上側面をちょうど覆うようになっている。
【0022】
スライド板28Bに対して、載置台18が水平面において回転可能に接続される。具体的には、載置台18は、上述の回転軸AX1よりも載置台18(すなわち操作パネル16)に近い位置にて鉛直方向に延びる第2鉛直軸としての回転軸AX2を中心に水平面において回転可能に接続される。
【0023】
平行リンク30は、細長形状の部材であり平行に設けられる2つのリンク30A及び30Bを含んで構成される。平行リンク30の一端は回転支柱26に接続され、一端から水平方向に離間した他端は可動基部28の後端部、左右方向略中央に接続される。これにより、可動基部28は、回転支柱26から水平方向に離間した位置に支持される。平行リンク30は、回転支柱26に対して、垂直面において所定の角度範囲内で回転可能に接続され、同様に、可動基部28に対して、垂直面において所定の角度範囲内で回転可能に接続される。平行リンク30が回転支柱26に対して垂直面において回転運動を行うことで、可動基部28が上下に運動する。すなわち、可動基部28の高さ位置が変更される。また、それに伴って、平行リンク30が可動基部28に対して垂直面において回転することで、可動基部28の高さ位置が変更させる際に、可動基部28(特にスライド板28B)の姿勢が水平に保たれる。
【0024】
可動支持機構20が有する上記各部は、階層構造を有している。すなわち、載置台18(すなわち操作パネル16)は、スライド板28Bに対して回転軸AX2を中心に回転運動可能であるところ、スライド板28B自体が前後に運動するため、スライド板28Bが前後に運動することで、載置台18も前後に運動することになる。また、スライド板28Bを含む可動基部28は、平行リンク30の回転運動により上下に運動するため、平行リンク30が回転運動することで、スライド板28B及び載置台18も上下に運動することになる。さらに、平行リンク30は、回転支柱26の回転軸AX1を中心とした回転運動により水平面において回転運動するため、回転支柱26が回転運動することで、平行リンク30、スライド板28B、及び載置台18も水平面を回転運動することになる。
【0025】
このように、本実施形態に係る可動支持機構20においては、平行リンク30が操作パネル16の高さ位置を変更する上下運動を行う上下運動機構として機能し、回転支柱26が回転軸AX1を中心に水平面において操作パネル16を回転させる第1回転運動を行う第1回転運動機構として機能し、載置台18が回転軸AX2を中心に水平面において操作パネル16を回転させる第2回転運動を行う第2回転運動機構として機能し、スライド板28Bが操作パネル16の前後位置を変更する前後運動を行う前後運動機構として機能する。
【0026】
可動支持機構20においては、回転支柱26の回転軸AX1は操作パネル16から離間しているから、第1回転運動によって、操作パネル16は、回転軸AX1を中心とした比較的大きな径の円周上を移動することになる。一方、載置台18の回転軸AX2は、回転軸AX1よりも操作パネル16に近い位置にある(これには回転軸AX2が操作パネル16を通る場合も含む)から、第2回転運動によって、主に、操作パネル16の向きが変更される。
【0027】
以下、各運動機構の詳細と、各運動機構にそれぞれ設けられるロック機構について説明する。
【0028】
上下運動機構は上述の平行リンク30であるところ、平行リンク30には、その垂直面における回転運動をサポートするガススプリング32が設けられている。
図3にガススプリング32の側面図が示されている。ガススプリング32は、密閉され内部に圧縮ガスが充填されたシリンダ32Aと、シリンダ32Aに挿入されたロッド32Bとを含んで構成される。シリンダ32A内の圧縮ガスの反力によってロッド32Bに対してシリンダ32Aから延出する方向に力が働き、これによりスプリング機能を発揮する。当該スプリング機能によって平行リンク30の回転運動、特に、可動基部28の位置を上げる場合における回転運動がサポートされる。
【0029】
ガススプリング32は、ロック部32Cを有するロック付きガススプリングである。ロック部32Cは、シリンダ32Aに対するロッド32Bの挿入及び延出を制限するロック機能を発揮する。ロック部32Cによりロッド32Bの移動が制限されると平行リンク30の回転運動が制限される。つまり、ガススプリング32が上下ロック機構としての機能を発揮する。
【0030】
ロック部32CにはワイヤWaが接続されている。詳しくは後述するが、ワイヤWaは操作部22(
図1又は
図2参照)に向かって伸びている。ワイヤWaが(
図3における右下方向に)引っ張られると、ロック部32Cのロック機能は解除され、ロッド32Bの移動の制限が解除され、すなわち、平行リンク30の回転運動の制限が解除される。ロック部32Cには、スプリングなどによってロック部32Cを
図3における左上方向に付勢する付勢力を付加する機構が設けられており、ワイヤWaに引っ張り力が加えられていない場合、当該付勢力によってロック部32Cのロック機能が有効となり、ロッド32Bの移動が制限され、すなわち、平行リンク30の回転運動が制限される。なお、ロック部32Cは2段てこ構造となっており、当該2段てこ構造のてこ比を変更することで、ロック解除のために必要なワイヤWaを引っ張る力を低減することが可能となっている。
【0031】
図4は、固定支柱24と、第1回転運動機構としての回転支柱26との接続部の底面図である。
図4において、固定支柱24の図示は一部を除いて省略されている。
【0032】
固定支柱24の上側面には、当該上側面から上方向に突出する円筒形状のステータ24Aが設けられている。一方、回転支柱26の下側面には、当該下側面から下方向に突出する同じく円筒形状のロータ26Aが設けられている。ロータ26Aの内径は、ステータ24Aの外径よりも少しだけ大きくなっている。ステータ24Aがロータ26Aに嵌合することで、回転支柱26は、固定支柱24に対して、回転軸AX1(ステータ24A及びロータ26Aの円筒中心線)を中心に回転可能に接続される。具体的には、回転支柱26が回転すると、ステータ24Aの周りをロータ26Aが回転する。
【0033】
ロータ26Aの側面には、円周方向に沿って並ぶ複数の第1ロック穴26Aaが設けられている。
【0034】
ロータ26Aの側方には、第1ロックピン34が設けられている。第1ロックピン34は、ロータ26Aの径方向に伸長する細長形状を有しており、ロータ26Aの径方向に沿って移動可能となっている。これにより、ロータ26Aの側面に設けられた第1ロック穴26Aaに第1ロックピン34の先端が嵌合可能となっている。
図4には、第1ロックピン34が第1ロック穴26Aaに嵌合した状態が示されている。第1ロック穴26Aaに第1ロックピン34が嵌合することで、ロータ26A(すなわち回転支柱26)の回転運動が制限される。すなわち、第1ロック穴26Aa及び第1ロックピン34が第1回転ロック機構としての機能を発揮する。ロータ26Aの側面に円周方向に沿って第1ロック穴26Aaが複数設けられていることで、回転支柱26を複数の回転位置(姿勢)においてロックすることが可能となっている。
【0035】
第1ロックピン34の基端(ロータ26Aとは反対側の端部)は、第1中継部材36のピン接続部36Aに接続されている。本実施形態では、ピン接続部36Aは第1中継部材36の一端となっている。第1中継部材36は、水平方向に伸長した形状を有しており、鉛直方向に伸びる回転軸AX3を中心に水平面において回転可能に固定支柱24に取り付けられている。また、第1中継部材36のワイヤ接続部36BにはワイヤWbが接続されている。本実施形態では、ワイヤ接続部36Bは第1中継部材36の他端となっている。ワイヤWa同様、ワイヤWbも操作部22に向かって伸びている。ワイヤWbは、ステータ24A(及びロータ26A)の中央貫通孔から回転支柱26の内部に入って操作部22に向かう。
【0036】
ワイヤWbが前方向(
図4における右方向に)引っ張られると、第1中継部材36は
図4における反時計回りに回転し、すなわちピン接続部36Aが後方向に移動する。これにより、第1ロックピン34が後方向、つまりロータ26Aの中心から離れる方向に移動し、第1ロックピン34の第1ロック穴26Aaへの嵌合が外れ、ロータ26A、すなわち回転支柱26の回転運動の制限が解除される。第1ロックピン34は、不図示のスプリング(ばね)により、ロータ26Aの中心方向に向かって付勢されている。したがって、ワイヤWbに引っ張り力が加えられていない場合、当該スプリングの付勢力により、第1ロックピン34がロータ26Aの中心方向に移動し、第1ロックピン34が第1ロック穴26Aaへ嵌合し、回転支柱26の回転運動が制限される。
【0037】
好適には、第1ロック穴26Aaの側壁は、開口に向かって徐々に穴径が大きくなるように傾斜した側壁傾斜部分を有し、これに応じて、第1ロックピン34の先端の側面は、先端から基端へ向かって徐々に径が大きくなるように傾斜したテーパ部34Aを有しているのが望ましい。嵌合状態において、第1ロックピン34のテーパ部34Aは、第1ロック穴26Aaの側壁傾斜部分に対向する。これにより、第1ロックピン34の先端が第1ロック穴26Aaから抜ける際に、第1ロックピン34の側面と第1ロック穴26Aaの側壁との間の摩擦力を小さくすることができる。ひいては、第1回転運動のロックを解除するために必要なワイヤWbの引っ張り力が低減される。また、第1ロック穴26Aaの側壁傾斜部分、及び、第1ロックピン34のテーパ部34Aは、ロック時における固定支柱24に対する回転支柱26のがたつきを抑制するという効果も奏する。これにより、操作パネル16のがたつきも抑制されることになり、操作パネル16の操作性が向上される。
【0038】
第1ロックピン34にテーパ部34Aを設け第1ロック穴26Aaに側壁傾斜部分を設けた場合、第1ロックピン34が第1ロック穴26Aaに入ろうとしたときに、テーパ部34Aが第1ロック穴26aの側壁傾斜部分に当たることとなる。このときに、オペレータによって回転支柱26が回転運動させられると、側壁傾斜部分からテーパ部34Aが押され、第1ロックピン34に対して第1ロック穴26Aaから抜ける方向に力が加わることになる。これを抑制するため、
図5に示すように、第1ロック穴26Aaの側壁は、側壁傾斜部分の手前と奥側に設けられ、穴径が一定となるように深さ方向に伸びる側壁非傾斜部分を有し、第1ロックピン34の側面は、テーパ部34Aの基端側と先端側に設けられ、嵌合状態において側壁非傾斜部分に対向するストレート部34Bを有していてもよい。換言すれば、第1ロックピン34の先端に、径が一定であり、ストレート部34Bを側面とするストレート先端部分34Cを設けるようにしてもよい。これにより、第1ロック穴26Aaから第1ロックピン34に加わる第1ロック穴26Aaから抜ける方向への力が低減され、第1ロックピン34の抜けを抑制することができる。
【0039】
第1回転運動のロックを解除するために必要なワイヤWbの引っ張り力を低減する観点からは、第1中継部材36において、ピン接続部36Aから回転軸AX3までの距離よりも、ワイヤ接続部36Bから回転軸AX3までの距離を長くするようにしてもよい。こうすることにより、てこの原理によって第1回転運動のロックを解除するため(第1ロックピン34を移動させるため)に必要なワイヤWbの引っ張り力が低減される。
【0040】
図6は、可動基部28と、載置台18の一部が示された斜視図である。
図6において手前側(左下側)が後ろであり、奥側(右上側)が前である。
【0041】
スライド板28Bの左右方向中央部の後側部分には、U字型の切り欠き28Baが設けられている。そして、切り欠き28Baには、垂直方向に伸びる平面視において円形の孔が設けられた固定部材28Bbが取り付けられている。一方、載置台18の下側面、詳しくは、下側面の左右方向略中央の後端近傍には、当該下側面から下方向に突出する略円筒形状のロータ18Aが設けられている。固定部材28Bbに設けられた孔の内径は、ロータ18Aの外径よりも少しだけ大きくなっている。ロータ18Aが固定部材28Bbの孔に嵌合することで、載置台18は、スライド板28Bに対して、回転軸AX2(固定部材28Bbの孔及びロータ18Aの円筒中心線)を中心に回転可能に接続される。具体的には、載置台18が回転すると、固定部材28Bbに設けられた孔に挿入されたロータ18Aが回転する。
【0042】
ロータ18Aは、その上端から側方に突出するフランジ18Aaを有している。平面視においてフランジ18Aaの外辺は、回転軸AX2を中心とする円弧となっており、フランジ18Aaはアーチ形状となっている。フランジ18Aaには、回転軸AX2を中心とした円周方向に沿って並ぶ複数の第2ロック穴18Abが設けられている。
【0043】
図7は、ロータ18Aと固定部材28Bbの接続部、すなわち、載置台18とスライド板28Bの接続部を示す側面断面図である。フランジ18Aaの下方には、第2ロックピン38が設けられている。第2ロックピン38は、上下方向に伸長する細長形状を有しており、上下方向に移動可能となっている。これにより、フランジ18Aaに設けられた第2ロック穴18Abに第2ロックピン38の先端が嵌合可能となっている。
図7には、第2ロックピン38が第2ロック穴18Abに嵌合した状態が示されている。第2ロック穴18Abに第2ロックピン38が嵌合することで、ロータ18A(すなわち載置台18)の回転運動が制限される。すなわち、第2ロック穴18Ab及び第2ロックピン38が第2回転ロック機構としての機能を発揮する。第2ロック穴18Abが複数設けられていることで、載置台18を複数の回転位置(姿勢)においてロックすることが可能となっている。
【0044】
第2ロックピン38の基端(フランジ18Aaとは反対側の端部)は、第2中継部材40のピン接続部40Aに接続されている。本実施形態では、ピン接続部40Aは第2中継部材40の一端となっている。第2中継部材40は、垂直面(YZ平面)において一方向に伸長した形状を有しており、水平方向(X軸方向;左右方向)に伸びる回転軸AX4を中心に垂直面において回転可能に固定部材28Bbに取り付けられている。つまり、第2ロックピン38及び第2中継部材40は、スライド板28B(及び載置台18)の前後移動と共に前後に移動する。また、第2中継部材40のワイヤ接続部40BにはワイヤWcが接続されている。本実施形態では、ワイヤ接続部40Bは第2中継部材40の他端となっている。ワイヤWa及びWb同様、ワイヤWcも操作部22に向かって伸びている。ワイヤWcは、ロータ18Aの中央貫通孔(及び固定部材28Bbの孔)を通って載置台18に設けられた操作部22に向かう。
【0045】
ワイヤWcが上方向に引っ張られると、第2中継部材40は
図7における時計回りに回転し、すなわちピン接続部40Aが下方向に移動する。これにより、第2ロックピン38が下方向、つまりフランジ18Aaからら離れる方向に移動し、第2ロックピン38の第2ロック穴18Abへの嵌合が外れ、ロータ18A、すなわち載置台18の回転運動の制限が解除される。第2ロックピン38は、スプリング42により、上方向つまりフランジ18Aa側に向かって付勢されている。したがって、ワイヤWcに引っ張り力が加えられていない場合、スプリング42の付勢力により、第2ロックピン38が上方向に移動し、第2ロックピン38が第2ロック穴18Abへ嵌合し、載置台18の回転運動が制限される。
【0046】
好適には、第2ロック穴18Abの側壁は、下側開口に向かって徐々に穴径が大きくなるように傾斜した側壁傾斜部分を有し、これに応じて、第2ロックピン38の先端の側面は、先端から基端へ向かって徐々に径が大きくなるように傾斜したテーパ部38Aを有しているのが望ましい。嵌合状態において、第2ロックピン38のテーパ部38Aは、第2ロック穴18Abの側壁傾斜部分に対向する。これにより、第2ロックピン38の先端が第2ロック穴18Abから抜ける際に、第2ロックピン38の側面と第2ロック穴18Abの側壁との間の摩擦力を小さくすることができる。ひいては、第2回転運動のロックを解除するために必要なワイヤWcの引っ張り力が低減される。また、第2ロック穴18Abの側壁傾斜部分、及び、第2ロックピン38のテーパ部38Aは、ロック時におけるスライド板20Bに対する載置台18のがたつきを抑制するという効果も奏する。これにより、操作パネル16のがたつきも抑制されることになり、操作パネル16の操作性が向上される。
【0047】
また、第1ロック穴26Aa同様、第2ロック穴18Abの側壁は、側壁傾斜部分の手前と奥側に設けられ、穴径が一定となるように深さ方向に伸びる側壁非傾斜部分を有していてもよく、第1ロックピン34同様、第2ロックピン38の側面は、テーパ部38Aの基端側と先端側にストレート部を有していてもよい(
図5参照)。
【0048】
第2回転運動のロックを解除するために必要なワイヤWcの引っ張り力を低減する観点からは、第2中継部材40において、ピン接続部40Aから回転軸AX4までの距離よりも、ワイヤ接続部40Bから回転軸AX4までの距離を長くするようにしてもよい。こうすることにより、てこの原理によって第2回転運動のロックを解除するため(第2ロックピン38を移動させるため)に必要なワイヤWcの引っ張り力が低減される。
【0049】
図8は、可動基部28の平面視である。
図8において下側が後ろであり、上側が前である。
図8においてはスライド板28Bの図示が省略されており、すなわち、
図8は箱部28Aの平面図である。箱部28Aの内部の左右側には、それぞれ、前後方向に伸長するレール28Cが設けられている。スライド板28Bの下側面の左右側には、それぞれ、前後方向に伸長し、レール28Cに嵌合する溝(不図示)が設けられている。スライド板28Bの当該溝がレール28Cに嵌合することで、スライド板28Bは、箱部28Aに対して前後方向に運動可能に接続される。
【0050】
図9は、スライド板28Bの前後運動を制限する前後ロック機構を示す斜視図である。箱部28Aに設けられたレール28C、詳しくは、右側(
図8では左側)のレール28Cの内側(左側(
図8では右側))側面には、前後方向に沿って並ぶ複数の第3ロック穴28Caが設けられている。
【0051】
第3ロック穴28Caが設けられたレール28Cの、第3ロック穴28Ca側の側方には、第3ロックピン44が設けられている。第3ロックピン44は、左右方向に伸長する細長形状を有しており、左右方向に沿って移動可能となっている。これにより、レール28Cの側面に設けられた第3ロック穴28Caに第3ロックピン44の先端が嵌合可能となっている。第3ロック穴28Caに第3ロックピン44が嵌合することで、スライド板28Bの前後運動が制限される。すなわち、第3ロック穴28Ca及び第3ロックピン44が前後ロック機構としての機能を発揮する。
【0052】
第3ロックピン44は、後述する第3中継部材46を介して台座48に接続される。台座48はスライド板28Bに取り付けられる。つまり、第3ロックピン44、第3中継部材46、及び台座48は、スライド板28Bと一体となって前後方向に移動する。前後方向に伸長するレール28Cの側面に前後方向に並ぶ複数の第3ロック穴28Caが複数設けられていることで、スライド板28Bを複数の位置においてロックすることが可能となっている。
【0053】
第3ロックピン44の基端(レール28Cとは反対側の端部)は、第3中継部材46のピン接続部46Aに接続されている。第3中継部材46は、水平方向に伸長した形状を有しており、鉛直方向に伸びる回転軸AX5を中心に水平面において回転可能に台座48に取り付けられている。また、第3中継部材46のワイヤ接続部46BにはワイヤWdが接続されている。本実施形態では、回転軸AX5が第3中継部材46の一端にあり、ワイヤ接続部46Bが第3中継部材46の他端にあり、ピン接続部46Aは、回転軸AX5とワイヤ接続部46Bの間にある。
【0054】
ワイヤWa~Wc同様、ワイヤWdも操作部22に向かって伸びている。ワイヤWdは、ワイヤWc同様、載置台18のロータ18Aの中央貫通孔(及びスライド板28Bの固定部材28Bbの孔)(
図6参照)の中央貫通孔を通って載置台18に設けられた操作部22に向かう。
【0055】
ワイヤWdが左方向(
図9における右下方向に)引っ張られると、第3中継部材46は
図9における時計回りに回転し、すなわちピン接続部46Aが左方向に移動する。これにより、第3ロックピン44が左方向、つまりレール28Cから離れる方向に移動し、第3ロックピン44の第3ロック穴28Caへの嵌合が外れ、スライド板Bの前後運動の制限が解除される。第3ロックピン44は、不図示のスプリングにより、レール28C側に向かって付勢されている。したがって、ワイヤWdに引っ張り力が加えられていない場合、当該スプリングの付勢力により、第3ロックピン44がレール28C側に移動し、第3ロックピン44が第3ロック穴28Caへ嵌合し、スライド板28Bの前後運動が制限される。
【0056】
好適には、第3ロック穴28Caの側壁は、開口に向かって徐々に穴径が大きくなるように傾斜した側壁傾斜部分を有し、これに応じて、第3ロックピン44の先端の側面は、先端から基端へ向かって徐々に径が大きくなるように傾斜したテーパ部44Aを有しているのが望ましい。嵌合状態において、第3ロックピン44のテーパ部44Aは、第3ロック穴28Caの側壁傾斜部分に対向する。これにより、第3ロックピン44の先端が第3ロック穴28Caから抜ける際に、第3ロックピン44の側面と第3ロック穴28Caの側壁との間の摩擦力を小さくすることができる。ひいては、前後運動のロックを解除するために必要なワイヤWdの引っ張り力が低減される。また、第3ロック穴28Caの側壁傾斜部分、及び、第3ロックピン44のテーパ部38Aは、ロック時における箱部28Aに対するスライド板28Bのがたつきを抑制するという効果も奏する。これにより、操作パネル16のがたつきも抑制されることになり、操作パネル16の操作性が向上される。
【0057】
また、第1ロック穴26Aa同様、第3ロック穴28Caの側壁は、側壁傾斜部分の手前と奥側に設けられ、穴径が一定となるように深さ方向に伸びる側壁非傾斜部分を有していてもよく、第1ロックピン34同様、第3ロックピン44の側面は、テーパ部44Aの基端側と先端側にストレート部を有していてもよい(
図5参照)。
【0058】
また、本実施形態では、ピン接続部46Aから回転軸AX5までの距離よりも、ワイヤ接続部46Bから回転軸AX5までの距離が長くなっているから、てこの原理によって前後運動のロックを解除するため(第3ロックピン44を移動させるため)に必要なワイヤWdの引っ張り力が低減される。
【0059】
可動支持機構20に含まれる各運動機構、及び、各運動機構にそれぞれ設けられるロック機構の詳細は以上の通りである。
図10には、各ロック機構から載置台18の操作部22に向かって伸びるワイヤWa~Wdの引き回し経路が示されている。
【0060】
上下ロック機構としてのガススプリング32のロック部32Cから伸びるワイヤWaは、
図10において実線で示されている。ワイヤWaは、ロック部32Cから、平行リンク30の内部を通って可動基部28の箱部28Aに入り、箱部28Aから載置台18のロータ18Aの中央貫通孔を通って載置台18に入る。
【0061】
第1回転ロック機構としての第1ロックピン34が接続された第1中継部材36から伸びるワイヤWbは、
図10において破線で示されている。ワイヤWbは、第1中継部材36から、固定支柱24のステータ24Aの中央貫通孔を通って平行リンク30の内部に入り、平行リンク30を通って可動基部28の箱部28Aに入り、箱部28Aから載置台18のロータ18Aの中央貫通孔を通って載置台18に入る。
【0062】
第2回転ロック機構としての第2ロックピン38が接続された第2中継部材40から伸びるワイヤWcは、
図10において一点鎖線で示されている。ワイヤWcは、第2中継部材40から、載置台18のロータ18Aの中央貫通孔を通って載置台18に入る。
【0063】
前後ロック機構としての第3ロックピン44が接続された第3中継部材46から伸びるワイヤWdは、
図10において二点鎖線で示されている。ワイヤWdは、第3中継部材46から、載置台18のロータ18Aの中央貫通孔を通って載置台18に入る。
【0064】
このように、ワイヤWa~Wdは、そのほとんどが可動支持機構20の外部に露出しないように、可動支持機構20の内部を通って引き回される。
【0065】
図8に示されるように、箱部28Aの内部には、筒状であり、平面視においてU字状に屈曲され、両端部において後側を向く開口28Daを有するワイヤ挿通路28Dが設けられている。ワイヤ挿通路28Dには、ワイヤWa及びWbが挿通される。上述のように、ワイヤWa及びWbは、載置台18のロータ18Aの中央貫通孔を通って載置台18に入るところ、ロータ18Aはスライド板28Bと共に前後運動する。つまり、スライド板28Bの前後運動に伴って、ワイヤWa及びWbの引き回し経路が変動することとなる。そこで、スライド板28Bの前後運動に伴うワイヤWa及びWbの引き回し経路の変動によって、ワイヤWa及びWbがどこかに引っかかったり、操作部22の操作によって引っ張られ難くなるのを抑制すべく、ワイヤWa及びWbをワイヤ挿通路28Dに挿通されることで、ワイヤWa及びWbに余長部を持たせている。また、U字状に屈曲したワイヤ挿通路28Dによれば、スライド板28Bが前後運動しても、ワイヤWa及びWbの屈曲Rを同じに維持することができる。これにより、ワイヤWa及びWbのワイヤ抵抗の変動が抑制され、ワイヤWa及びWbを操作するための力、あるいは、ロック解除のために必要なワイヤWa及びWbの移動量が、スライド板28Bが前後運動に応じて変動することを抑制することができる。
【0066】
なお、ワイヤWc及びWdもロータ18Aを通って載置台18に入るが、ワイヤWcが接続された第2中継部材40、及び、ワイヤWdが接続された第3中継部材46は、スライド板28B(つまりロータ18A)と共に前後運動する。したがって、ロータ18Aが前後運動しても、ロータ18Aと、第2中継部材40及び第3中継部材46との相対的な位置関係は変動せず、ワイヤWc及びWdの引き回し経路はそれほど変動しないため、ワイヤWc及びWdはワイヤ挿通路28Dに挿通させていない。
【0067】
本実施形態では、ワイヤWa~Wdは、載置台18に設けられたワイヤ中継機構50に接続される。
図11は、載置台18の平面図であり、ワイヤ中継機構50と操作部22を示す図である。
図11において、ワイヤ中継機構50、操作部22、及び、それらに関連する部材以外の図示は省略されている。
【0068】
ワイヤ中継機構50は、載置台18に固定される基部50Aと、基部50Aに対して前後方向に移動可能な可動部50Bとを含んで構成される。ワイヤの第1部分としてのワイヤWa~Wdは、可動部50Bの後端部50Baに接続される。これにより、ガススプリング32のロック部32C(
図3参照)と可動部50BとがワイヤWaで接続され、第1中継部材36(
図4参照)と可動部50BとがワイヤWbで接続され、第2中継部材40(
図7参照)と可動部50BとがワイヤWcで接続され、第3中継部材46(
図9参照)と可動部50BとがワイヤWdで接続される。
【0069】
可動部50Bの前端部50Bbにはワイヤの第2部分としてのワイヤWeが接続され、ワイヤWeは前方向に向かって延伸し、プーリ52によってその延伸方向が右やや後方向に変換され、操作部22に接続される。
【0070】
操作部22は、各ロック機構の制限状態を変更するためにオペレータによって操作されるものである。操作部22は、オペレータが載置台18を掴むために載置台18の前端に沿って設けられた、左右に延伸するハンドル54の近傍に設けられる。本実施形態では、ハンドル54の左右方向中央部には、オペレータの手首あるいは手首付近を置くパームレスト56(
図11ではパームレスト56のカバーは不図示であり、その内部が示されている)が設けられており、操作部22の一部がパームレスト56の下側に位置するように設けられる。
【0071】
本実施形態では、操作部22は、左右方向に伸長する長手部分と、長手部分の左側端部から前後方向に伸長する短手部分とが組み合わさった平面視でL字型の形状を有している。長手部分の右側部分は、パームレスト56の下部から右側に突出しており、外側空間に露出している。当該突出部分がオペレータによって力が加えられる入力部22Aである。ワイヤ中継機構50(可動部50B)からのワイヤWeが接続されるワイヤ接続部22Bは、長手部分の左側端部の後端部に位置している。操作部22は、短手部分の前側端に位置している鉛直方向に伸びる操作部回転軸AX6を中心に回転可能に載置台18に取り付けられる。オペレータによって、入力部22Aに力(具体的には前方向への力)が加えられることで、操作部22は、操作部回転軸AX6を中心に、水平面において、平面視で時計回りに回転する。
【0072】
操作部22が回転するとワイヤ接続部22Bが右側に移動し、ワイヤWeが右方向に引っ張られ、プーリ52によってワイヤWeから可動部50Bに前方向の力が加えられ、可動部50Bが前方向に移動させられる。これにより、可動部50Bに接続されたワイヤWa~Wdが前方向に引っ張られる。ワイヤWa~Wdが前方向に引っ張られると、上述のように、ワイヤWa~Wdの作用により、各ロック機構の制限状態(ロック状態)が解除される。
【0073】
操作部22においては、操作部回転軸AX6とワイヤ接続部22Bとの間の距離L1が、操作部回転軸AX6と入力部22A(オペレータが力を加えることができる最も操作部回転軸AX6に近い点)との間の距離L2よりも短くなっている。これにより、てこの原理によって、各ロック機構の制限状態を解除するために入力部22Aに入力することが必要な力が低減される。
【0074】
オペレータが操作部22から手を離すと、すなわち入力部22Aへの力の入力を止めると、各ロック機構に設けられたスプリングの付勢力によってワイヤWa~Wdが後方向に引っ張られる。これにより、各ロック機構の制限状態が形成される。
【0075】
このように、本実施形態によれば、1つの操作部22による操作によって、操作パネル16の上下運動を制限する上下ロック機構、操作パネル16から離間して鉛直方向に伸びる回転軸AX1を中心とした操作パネル16の第1回転運動を制限する第1回転ロック機構、回転軸AX1よりも操作パネル16に近い位置にて鉛直方向に伸びる回転軸AX2を中心とした操作パネル16第2回転運動を制限する第2回転ロック機構、及び、操作パネル16の前後運動を制限する前後ロック機構の4つのロック機構の制限状態を変更することができる。しかも、これらは全てワイヤWa~Weの作用によるものであるから、モータなどの電動部品を用いることがない。
【0076】
1つの操作部への操作によって、多数のロック機構の制限状態をワイヤの作用により変更する場合、操作部へ大きな力を入力しなければならない場合が考えられる。特に、超音波診断装置においては、オペレータは、片手に超音波プローブを持っている場合が多く、他方の片手で操作部を操作しなければならない場合が多いと考えられる。つまり、操作部へはオペレータの握力程度の力しか入力できない場合が多い。この点、本実施形態においては、各ロック機構において、ロック機構の制限状態を解除するために必要な力を低減する工夫がなされているため、オペレータが操作部22に入力することが必要な力が低減されている。
【0077】
図12は、操作部及びワイヤ中継機構の変形例を示す図である。
図12においても、操作部60、ワイヤ中継機構62、及び、それらに関連する部材以外の図示は省略されている。
【0078】
変形例に係る操作部60は、左右方向に伸長した形状を有している。操作部60の右側部分はパームレスト56の下部から右側に突出して外側空間に露出すると共に、操作部60の左側部分もパームレスト56の下部から左側に突出して外側空間に露出している。当該左右の突出部分がオペレータによって力が加えられる入力部60Aである。変形例においては、オペレータは、左右の入力部60Aを両手で把持して操作することが可能である。また、オペレータは、左右の入力部60Aのどちらにも前方向への力を加えることができる。例えば、オペレータが片手に超音波プローブを持っている場合においては他方の片手で入力部60Aを操作することとなるが、その場合、左右の入力部60Aのうち操作し易い方を操作することができる。ワイヤ中継機構62からのワイヤWeが接続されるワイヤ接続部60Bは、操作部60の左右方向の略中央に位置している。操作部60は、入力部60Aに前方向への力が加えられることにより全体が前方向に移動する。
【0079】
変形例においても、ワイヤ中継機構62は、載置台18に固定される基部62Aと、基部62Aに対して前後に移動可能な可動部62Bとを含んで構成される。ワイヤWa~Wdは、可動部62Bの後端部62Baに接続される。
【0080】
変形例においては、可動部62Bの前端部には、左右方向に伸長する第4中継部材62Cの可動部接続部62Caに接続されている。第4中継部材62Cは、その左側端部にある回転軸AX7を中心に回転可能に基部62Aに取り付けられている。第4中継部材62Cの右側端部にあるワイヤ接続部62Cbには、操作部60からのワイヤWeが接続されている。すなわち、可動部接続部62Caは、回転軸AX7とワイヤ接続部62Cbの間に位置している。
【0081】
ワイヤWeが前方向に引っ張られると、第4中継部材62Cは
図12における時計回りに回転し、すなわち可動部接続部62Caが前方向に移動する。これにより、可動部62Bが前方向に移動し、可動部62Bに接続されたワイヤWa~Wdが前方向に引っ張られる。ワイヤWa~Wdが前方向に引っ張られると、上述のように、ワイヤWa~Wdの作用により、各ロック機構の制限状態(ロック状態)が解除される。
【0082】
変形例においては、操作部60は平行移動するため、操作部60において各ロック機構の制限状態を解除するために必要な力を低減させる工夫をすることができない。したがって、変形例では、ワイヤ中継機構62の第4中継部材62Cによって、各ロック機構の制限状態を解除するために必要な力を低減させている。すなわち、第4中継部材62Cにおいて、可動部接続部62Caから回転軸AX7までの距離よりも、ワイヤ接続部62CbBから回転軸AX7までの距離を長くしていることで、てこの原理によって、各ロック機構における制限状態を解除するために必要なワイヤWeの引っ張り力が低減されている。
【0083】
なお、変形例において用いられた第4中継部材62Cは、
図11に示した基本実施形態のワイヤ中継機構50において適用されてもよい。
【0084】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0085】
例えば、本実施形態では、操作パネル16の上下運動を行う上下運動機構として平行リンク30が用いられていたが、例えば、回転支柱26が固定支柱24に沿って上下に運動可能とし、これを上下運動機構としてもよい。回転支柱26と可動基部28とは、運動しないアーム部材などで接続される。この場合であっても当該上下運動機構の上下運動を制限する上下ロック機構としては、ガススプリング32を用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
10 超音波診断装置、16 操作パネル、18 載置台、18A,26A ロータ、18Aa フランジ、18Ab 第2ロック穴、20 可動支持機構、22,60 操作部、22A,60A 入力部、22B ワイヤ接続部、24 固定支柱、24A ステータ、26 回転支柱、26Aa 第1ロック穴、28 可動基部、28A 箱部、28B スライド板、28C レール、28Ca 第3ロック穴、28D ワイヤ挿通路、30 平行リンク、32 ガススプリング、32C ロック部、34 第1ロックピン、34A,38A,44A テーパ部、36 第1中継部材、38 第2ロックピン、40 第2中継部材、44 第3ロックピン、46 第3中継部材、50,62 ワイヤ中継機構、50B,62B 可動部、62C 第4中継部材、Wa,Wb,Wc,Wd,We ワイヤ。