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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047680
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】撚り戻し工具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/06 20060101AFI20220317BHJP
   H02G 1/12 20060101ALI20220317BHJP
   B26B 27/00 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
H02G1/06
H02G1/12 009
B26B27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153594
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】520180998
【氏名又は名称】株式会社エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠一
【テーマコード(参考)】
3C061
5G352
5G353
【Fターム(参考)】
3C061AA41
3C061BA03
5G352CK03
5G352CK04
5G353AA14
5G353AC02
5G353CA01
(57)【要約】
【課題】 撚り線の撚りを戻すと共に曲がった各単位ケーブルを真っ直ぐに延ばすことが容易な撚り戻し工具を提供すること。
【解決手段】 複数本の単位ケーブル2を互いに撚り合わせた撚り線の撚りを戻す撚り戻し工具1であって、回動軸Tで互いに回動可能に連結され互いに対向面4aを有した下側把持部材4A及び上側把持部材4Bと、下側把持部材の対向面に並んだ複数の挿入孔5と、下側把持部材の対向面に並んだ複数の単位ケーブル用溝部6とを備え、上側把持部材が、複数の挿入孔に挿通された状態で複数の単位ケーブル用溝部内に載置された複数の単位ケーブルを、下側把持部材と上側把持部材との互いの対向面を近接又は接触させた際に、上方から押圧可能な複数の挟持用凸部7を対向面に有している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の単位ケーブルを互いに撚り合わせた撚り線の撚りを戻す撚り戻し工具であって、
回動軸で互いに回動可能に連結され互いに対向面を有した下側把持部材及び上側把持部材と、
前記下側把持部材の対向面に並んで設けられ前記複数の単位ケーブルを挿入する挿入口を一方の開口部側に有した複数の挿入孔と、
前記下側把持部材の対向面に並んで設けられ前記複数の挿入孔の他方の開口部側に配されて前記挿入孔の軸線に沿って延在し前記単位ケーブルを載置可能な複数の単位ケーブル用溝部とを備え、
前記下側把持部材と前記上側把持部材とが、互いの前記対向面を近接又は接触させる方向に回動可能とされ、
前記上側把持部材が、前記複数の挿入孔に挿通された状態で前記複数の単位ケーブル用溝部内に載置された前記複数の単位ケーブルを、前記下側把持部材と前記上側把持部材との互いの前記対向面を近接又は接触させた際に、上方から押圧可能な複数の挟持用凸部を前記対向面に有していることを特徴とする撚り戻し工具。
【請求項2】
請求項1に記載の撚り戻し工具において、
前記挿入孔が、前記挿入口から前記他方の開口部まで内径が漸次小さく形成されたテーパ形状とされていることを特徴とする撚り戻し工具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の撚り戻し工具において、
前記撚り線が、その周囲を外側被覆部で被われ、
前記下側把持部材の前記対向面に、前記撚り線を載置可能な剥離用溝部が形成され、
前記上側把持部材が、前記下側把持部材と前記上側把持部材との互いの前記対向面を近接又は接触させた際に、前記剥離用溝部内に載置された前記撚り線を上方から押圧可能で前記外側被覆部の一部に切り込み可能な剥離用刃部を有していることを特徴とする撚り戻し工具。
【請求項4】
請求項3に記載の撚り戻し工具において、
前記単位ケーブル用溝部と前記剥離用溝部との間に、前記回動軸が設けられ、
前記回動軸よりも前記単位ケーブル用溝部側に、前記下側把持部材と前記上側把持部材とを離間させる方向に付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする撚り戻し工具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の撚り戻し工具において、
前記下側把持部材及び前記上側把持部材の少なくとも一方の前記対向面に、前記下側把持部材と前記上側把持部材との互いの前記対向面を近接又は接触させた際に、互いの前記対向面の間隔を調整可能な間隔調整部が形成されていることを特徴とする撚り戻し工具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の撚り戻し工具において、
前記下側把持部材の前記対向面に、前記撚り線を載置可能な切断用凸部が形成され、
前記上側把持部材が、前記下側把持部材と前記上側把持部材との互いの前記対向面を近接又は接触させた際に、前記切断用凸部に載置された前記撚り線を上方から押圧して切断可能な切断用刃部を有していることを特徴とする撚り戻し工具。
【請求項7】
請求項6に記載の撚り戻し工具において、
前記切断用刃部が、前記単位ケーブル用溝部よりも前記回動軸側に近く配されていることを特徴とする撚り戻し工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の単位ケーブルを互いに撚り合わせた撚り線の撚りを戻す撚り戻し工具である。
【背景技術】
【0002】
複数の単位ケーブルを撚り合わせた撚り線、例えばLANケーブル等は、通常2本の単位ケーブルが互いに撚れて1つの撚り線となっていると共に、この撚り線がさらに3つ束ねられて全部で6本の単位ケーブルで構成されている。また、LANケーブル等は、これら6本の単位ケーブル(3つの撚り線)の周囲が樹脂の被覆材で被われている。
【0003】
一般的に、このような撚り線を通信機器等のコネクタに接続する場合、撚り合わされた複数の単位ケーブルのままだと、接続作業がし難いことから、撚り合わされた複数の単位ケーブルを撚り戻す作業を行っている。この撚り戻す作業は、現場で作業者が手作業で行うことが多いが、撚り線の撚り戻し用の工具も提案されている。
【0004】
従来、例えば特許文献1には、複数本の単位ケーブルを一体的に撚り合わせた状態からその撚りを戻して、当該単位ケーブルの1線を他線から離すための電力用ケーブルの撚り戻し工具であって、互いに撚り合わされている各単位ケーブルの相互間に挿入して撚り戻しを行う撚り戻し棒と、各単位ケーブルの撚りを戻した状態を保持する撚り戻し状態保持部材とを備えた電力用ケーブルの撚り戻し工具が記載されている。
【0005】
この撚り戻し工具では、撚り戻し棒を、単位ケーブルと単位ケーブルの間に強制的に挿入し、両単位ケーブルの間をこじ開けるようにし、さらに撚り戻し棒を、ケーブルの撚りを戻す方向に回転させて、各単位ケーブルのそれぞれの撚りを戻し、各単位ケーブルの間に隙間が生じるようにすることで、撚り戻しを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-71915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、上記従来の技術では、撚り戻し棒を撚り合った2つの単位ケーブルの間に挿入してこじ開け、回転させることで、撚りを戻そうとしているが、各単位ケーブルに撚りのクセが残っているため、それぞれ真っ直ぐな状態とならず、各単位ケーブルが曲がった状態になってしまう問題があった。そのため、現場で作業者が指や爪等による手作業で、単位ケーブル1本毎に真っ直ぐな状態に直してからコネクタ等への接続作業を行う必要があり、手間であると共に複数の撚り線の接続を行うには作業時間が増大してしまう問題があった。
【0008】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、撚り線の撚りを戻すと共に曲がった各単位ケーブルを真っ直ぐに延ばすことが容易な撚り戻し工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る撚り戻し工具は、複数本の単位ケーブルを互いに撚り合わせた撚り線の撚りを戻す撚り戻し工具であって、回動軸で互いに回動可能に連結され互いに対向面を有した下側把持部材及び上側把持部材と、前記下側把持部材の対向面に並んで設けられ前記複数の単位ケーブルを挿入する挿入口を一方の開口部側に有した複数の挿入孔と、前記下側把持部材の対向面に並んで設けられ前記複数の挿入孔の他方の開口部側に配されて前記挿入孔の軸線に沿って延在し前記単位ケーブルを載置可能な複数の単位ケーブル用溝部とを備え、前記下側把持部材と前記上側把持部材とが、互いの前記対向面を近接又は接触させる方向に回動可能とされ、前記上側把持部材が、前記複数の挿入孔に挿通された状態で前記複数の単位ケーブル用溝部内に載置された前記複数の単位ケーブルを、前記下側把持部材と前記上側把持部材との互いの前記対向面を近接又は接触させた際に、上方から押圧可能な複数の挟持用凸部を前記対向面に有していることを特徴とする。
【0010】
この撚り戻し工具では、上側把持部材が、複数の挿入孔に挿通された状態で複数の単位ケーブル用溝部内に載置された複数の単位ケーブルを、下側把持部材と上側把持部材との互いの対向面を近接又は接触させた際に、上方から押圧可能な複数の挟持用凸部を対向面に有しているので、複数の挿入孔に撚り合っていた複数の単位ケーブルを挿入することで、撚りを戻すことができる。また、ケーブル用溝部と挟持用凸部とで挟持された状態のまま複数の単位ケーブルを、複数の挿入孔から引き抜くことで、撚れて曲がっていた複数の単位ケーブルを容易にかつ同時に真っ直ぐに延ばすことができる。
【0011】
第2の発明に係る撚り戻し工具は、第1の発明において、前記挿入孔が、前記挿入口から前記他方の開口部まで内径が漸次小さく形成されたテーパ形状とされていることを特徴とする。
すなわち、この撚り戻し工具では、挿入孔が、挿入口から他方の開口部まで内径が漸次小さく形成されたテーパ形状とされているので、テーパ形状によって単位ケーブルの先端がガイドされることで、各単位ケーブルを容易に対応する挿入孔に挿入することができる。
【0012】
第3の発明に係る撚り戻し工具は、第1又は第2の発明において、前記撚り線が、その周囲を外側被覆部で被われ、前記下側把持部材の前記対向面に、前記撚り線を載置可能な剥離用溝部が形成され、前記上側把持部材が、前記下側把持部材と前記上側把持部材との互いの前記対向面を近接又は接触させた際に、前記剥離用溝部内に載置された前記撚り線を上方から押圧可能で前記外側被覆部の一部に切り込み可能な剥離用刃部を有していることを特徴とする。
この撚り戻し工具では、上側把持部材が、下側把持部材と上側把持部材との互いの対向面を近接又は接触させた際に、剥離用溝部内に載置された撚り線を上方から押圧可能で外側被覆部の一部に切り込み可能な剥離用刃部を有しているので、一つの工具で撚り戻し作業だけでなく外側被覆部の剥ぎ取り作業も行うことができる。すなわち、剥離用溝部と剥離用刃部との間に撚り線を挟むと共に剥離用刃部で外側被覆部に切り込みを入れることで、外側被覆部を剥ぎ取り易くなる。特に、剥離用溝部と剥離用刃部との間に撚り線を挟んだ状態で撚り線を回転させると、剥離用刃部で全周にわたって外側被覆部に切り込みを入れることができ、外側被覆部を容易に剥ぎ取ることが可能になる。
【0013】
第4の発明に係る撚り戻し工具は、第3の発明において、前記単位ケーブル用溝部と前記剥離用溝部との間に、前記回動軸が設けられ、前記回動軸よりも前記単位ケーブル用溝部側に、前記下側把持部材と前記上側把持部材とを離間させる方向に付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする。
すなわち、この撚り戻し工具では、回動軸よりも単位ケーブル用溝部側に、下側把持部材と上側把持部材とを離間させる方向に付勢する付勢部材が設けられているので、特に力を加えない状態で、付勢部材により剥離用溝部側の2つの対向面が互いに近接又は接触した状態となる。したがって、特に手で力を加えなくても、付勢部材の付勢力により剥離用溝部と剥離用刃部との間に配した撚り線を挟むことができ、外側被覆部を剥ぎ取り作業がより容易となる。
【0014】
第5の発明に係る撚り戻し工具は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記下側把持部材及び前記上側把持部材の少なくとも一方の前記対向面に、前記下側把持部材と前記上側把持部材との互いの前記対向面を近接又は接触させた際に、互いの前記対向面の間隔を調整可能な間隔調整部が形成されていることを特徴とする。
すなわち、この撚り戻し工具では、下側把持部材及び上側把持部材の少なくとも一方の対向面に、下側把持部材と上側把持部材との互いの対向面を近接又は接触させた際に、互いの対向面の間隔を調整可能な間隔調整部が形成されているので、間隔調整部を単位ケーブル用溝部の近傍に設けることで、単位ケーブル用溝部と挟持用凸部との間隔を単位ケーブルの太さ等に対応した間隔に適宜調整することができる。また、間隔調整部を剥離用溝部の近傍に設けることで、剥離用溝部と剥離用刃部との間隔を撚り線の太さや外側被覆部の厚さ等に対応した間隔に適宜調整することができる。
【0015】
第6の発明に係る撚り戻し工具は、第1から第5の発明のいずれかにおいて、前記下側把持部材の前記対向面に、前記撚り線を載置可能な切断用凸部が形成され、前記上側把持部材が、前記下側把持部材と前記上側把持部材との互いの前記対向面を近接又は接触させた際に、前記切断用凸部に載置された前記撚り線を上方から押圧して切断可能な切断用刃部を有していることを特徴とする。
すなわち、この撚り戻し工具では、上側把持部材が、下側把持部材と上側把持部材との互いの対向面を近接又は接触させた際に、切断用凸部に載置された撚り線を上方から押圧して切断可能な切断用刃部を有しているので、一つの工具で撚り戻し作業だけでなく撚り線の切断作業も行うことができる。すなわち、切断用凸部と切断用刃部との間に撚り線を挟み、下側把持部材と上側把持部材との互いの対向面を近接又は接触させる方向に力を加えることで、切断用刃部で撚り線を切断することができる。
【0016】
第7の発明に係る撚り戻し工具は、第6の発明において、前記切断用刃部が、前記単位ケーブル用溝部よりも前記回動軸側に近く配されていることを特徴とする。
すなわち、この撚り戻し工具では、切断用刃部が、単位ケーブル用溝部よりも回動軸側に近く配されているので、てこの原理によって単位ケーブル用溝部側よりも切断用刃部で撚り線を強く挟むことができ、容易に切断することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る撚り戻し工具によれば、上側把持部材が、複数の挿入孔に挿通された状態で複数の単位ケーブル用溝部内に載置された複数の単位ケーブルを、下側把持部材と上側把持部材との互いの対向面を近接又は接触させた際に、上方から押圧可能な複数の挟持用凸部を対向面に有しているので、互いに撚れて曲がっていた複数の単位ケーブルを容易にかつ同時に真っ直ぐに延ばすことができる。
したがって、本発明の撚り戻し工具では、互いに撚り合った撚り線の曲がった各単位ケーブルを容易に真っ直ぐに延ばすことができ、作業者の手間や作業時間を削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る撚り戻し工具の一実施形態において、後端側が開いた状態を示す斜視図である。
図2】本実施形態において、後端側が閉じた状態の撚り戻し工具を示す斜視図である。
図3】本実施形態において、後端側が開いた状態の撚り戻し工具を示す右側面図である。
図4】本実施形態において、後端側が閉じた状態の撚り戻し工具を示す右側面図である。
図5】本実施形態において、後端側が開いた状態の撚り戻し工具を示す左側面図である。
図6】本実施形態において、後端側が閉じた状態の撚り戻し工具を示す左側面図である。
図7】本実施形態において、撚り線を示す断面図(a)、撚り戻し前の一対の単位ケーブルを示す平面図(b)、撚り戻し後の一対の単位ケーブルを示す平面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る撚り戻し工具の一実施形態を、図1から図7を参照しながら説明する。
【0020】
本実施形態の撚り戻し工具1は、図1から図6に示すように、複数本の単位ケーブル2を互いに撚り合わせた撚り線3の撚りを戻す撚り戻し工具であって、回動軸Tで互いに回動可能に連結され互いに対向面4aを有した下側把持部材4A及び上側把持部材4Bと、下側把持部材4Aの対向面4aに並んで設けられ複数の単位ケーブル2を挿入する挿入口を一方の開口部側に有した複数の挿入孔5と、下側把持部材4Aの対向面4aに並んで設けられ複数の挿入孔5の他方の開口部側に配されて挿入孔5の軸線に沿って延在し単位ケーブル2を載置可能な複数の単位ケーブル用溝部6とを備えている。
【0021】
上記下側把持部材4Aと上記上側把持部材4Bとは、回動軸Tを介して互いの対向面4aを近接又は接触させる方向に回動可能とされている。
なお、上側把持部材4B及び下側把持部材4Aは、それぞれ樹脂による射出成形で形成されている。
上側把持部材4Bは、複数の挿入孔5に挿通された状態で複数の単位ケーブル用溝部6内に載置された複数の単位ケーブル2を、下側把持部材4Aと上側把持部材4Bとの互いの対向面4aを近接又は接触させた際に、上方から押圧可能な複数の挟持用凸部7を対向面4aに有している。
【0022】
上記挿入孔5は、挿入口から他方の開口部まで内径が漸次小さく形成されたテーパ形状とされている。なお、挿入孔5の挿入口は、撚り戻し工具1の右側面に配されている。
本実施形態では、挿入孔5,単位ケーブル用溝部6及び挟持用凸部7がそれぞれ2つずつ設けられている。
上記撚り線3は、図7の(a)に示すように、その周囲を外側被覆部3aで被われている。
【0023】
なお、本実施形態では、2本の単位ケーブル2が撚り合って1つの撚り線3を構成し、図7の(a)に示すように、複数の撚り線3の周囲を樹脂の外側被覆部3aが被ってケーブル線11を構成している。
図7の(a)では、外側被覆部3a内に2つの撚り線3(全部で4本の単位ケーブル2)を図示したが、例えば一般的なLANケーブルでは、外側被覆部3a内に6本の単位ケーブル2が2本毎に撚り合った3つの撚り線3で構成されている。
また、各単位ケーブル2は、信号線である芯線(図示略)と、芯線を被う樹脂の芯線被覆部とで構成されている。
【0024】
上記下側把持部材4Aの対向面4aには、外側被覆部3aで被われた撚り線3(ケーブル線11)を載置可能な剥離用溝部8aが形成されている。
また、上側把持部材4Bは、下側把持部材4Aと上側把持部材4Bとの互いの対向面4aを近接又は接触させた際に、剥離用溝部8a内に載置された撚り線3(ケーブル線11)を上方から押圧可能で外側被覆部3aの一部に切り込み可能な剥離用刃部8bを有している。
【0025】
上記剥離用溝部8aは、下側把持部材4Aの先端側に配され、溝幅が異なる2つが並んで形成されている。
また、上記剥離用刃部8bは、2つの剥離用溝部8aの両方にわたって剥離用溝部8aの延在方向に直交して刃先が配されている。
この剥離用刃部8bは、刃先が上側把持部材4Bの対向面4aから突出するように上側把持部材4Bの左側面にネジ止めされている。
【0026】
単位ケーブル用溝部6と剥離用溝部8aとの間には、回動軸Tが設けられている。
この回動軸Tよりも単位ケーブル用溝部6側には、下側把持部材4Aと上側把持部材4Bとを離間させる方向に付勢する付勢部材9が設けられている。
上記付勢部材9は、上端が上側把持部材4Bの対向面4aに固定されていると共に下端が下側把持部材4Aの対向面4aに固定されているコイルばねである。
【0027】
なお、本実施形態では、回動軸Tより単位ケーブル用溝部6側が後端側であり、回動軸Tより剥離用溝部8a側が先端側とされている。
したがって、上側把持部材4Bと下側把持部材4Aとは、付勢部材9により回動軸Tより後端側が開くように付勢されている。すなわち、作業者による力が加わっていない状態では、付勢部材9の付勢力により撚り戻し工具1の後端側が開いた状態となり、上側把持部材4Bと下側把持部材4Aとの両後端側を片手で握って、互いの後端側の対向面4aが近接又は接触する方向に力を加えると、前記付勢力に抗して撚り戻し工具1の後端側が閉じる。
【0028】
また、上側把持部材4Bの後端部には、親指等を挿通可能な指用孔4bが形成されている。
例えば、この指用孔4bに親指を挿入した状態で、上側把持部材4Bと下側把持部材4Aとの両後端側を付勢部材9の付勢力に反して片手で把持することで、上側把持部材4Bと下側把持部材4Aとの後端側の互いの対向面4aを近接又は接触させることができる。
【0029】
下側把持部材4A及び上側把持部材4Bの少なくとも一方の対向面4aには、下側把持部材と上側把持部材との互いの対向面4aを近接又は接触させた際に、互いの対向面4aの間隔を調整可能な第1間隔調整部10A及び第2間隔調整部10Bが形成されている。
上記第1間隔調整部10Aは、剥離用溝部8aの近傍であって下側把持部材4Aの先端側に設けられ、上側把持部材4Bの対向面4aに向けて突出している突出部材である。
第1間隔調整部10Aは、下側把持部材4Aに形成された雌ねじ孔に螺着させた雄ねじ部材によるねじ構造を採用している。すなわち、第1間隔調整部10Aは、下側把持部材4Aの下面側から回動させることで、外側被覆部3aを剥離する際の撚り線3(ケーブル線11)に太さに応じてその突出量が調整可能となっている。
【0030】
上記第2間隔調整部10Bは、単位ケーブル用溝部6の近傍であって上側把持部材4Bの後端側に設けられ、下側把持部材4Aの対向面4aに向けて突出している突出部材である。
第2間隔調整部10Bは、上側把持部材4Bに形成された雌ねじ孔に螺着させた雄ねじ部材によるねじ構造を採用している。すなわち、第2間隔調整部10Bは、上側把持部材4Bの上面側から回動させることで、撚り戻しを行う際の単位ケーブル2の太さや硬さ等に応じてその突出量が調整可能となっている。
【0031】
下側把持部材4Aの対向面4aには、撚り線3(ケーブル線11)を載置可能な切断用凸部11aが形成されている。
切断用凸部11aは、下側把持部材4Aの左側に下側把持部材4Aに沿って直線状に延在した突条部である。
また、上側把持部材4Bは、下側把持部材4Aと上側把持部材4Bとの互いの対向面4aを近接又は接触させた際に、切断用凸部11aに載置された撚り線3(ケーブル線11)を上方から押圧して切断可能な切断用刃部11bを有している。
【0032】
上記切断用刃部11bは、金属で形成され、切断用凸部11aの幅全体にわたって刃先が配されていると共に、刃先が上側把持部材4Bの対向面4aから突出するように上側把持部材4Bの左側面にネジ止めされている。
また、切断用刃部11bは、単位ケーブル用溝部6よりも回動軸T側に近く配されている。
上記剥離用刃部8bは、金属で形成され、刃先が上側把持部材4Bの対向面4aから突出するように上側把持部材4Bの左側面にネジ止めされている。
また、剥離用刃部8bは、回転軸Tであって第1間隔調整部材10Aと回転軸Tの間によりも先端側に配されている。
【0033】
このように本実施形態の撚り戻し工具1には、切断作業と被覆剥離作業と撚り戻し作業とを1つの工具で可能なように、切断用刃部11b,切断用凸部11a,剥離用刃部8b,剥離用溝部8a,挿入孔5,単位ケーブル用溝部6,挟持用凸部7が一体に形成されている。
【0034】
次に、本実施形態の撚り戻し工具1を用いて撚り線3の撚り戻し及び単位ケーブル2の撚りのクセを直す作業について説明する。
【0035】
まず、後端側が開いた状態の撚り戻し工具1において、図7の(a)に示す撚り線3(ケーブル線11)を、切断したい位置で切断用凸部11a上に載置した状態で、上側把持部材4Bと下側把持部材4Aとの後端側を握って互いの後端側の対向面4aが近づくように力を加えることで、切断用凸部11aと切断用刃部11bとで撚り線3(ケーブル線11)を挟み、切断を行う。
【0036】
次に、上側把持部材4Bと下側把持部材4Aとの後端側を握って撚り戻し工具1の先端側を開いた状態にし、外側被覆部3aを剥がしたい位置で、切断した撚り線3(ケーブル線11)を剥離用溝部8a内に載置する。そして、上側把持部材4Bと下側把持部材4Aとの後端側の握りを弱め、付勢部材9の付勢力により撚り戻し工具1の先端側を閉じることで、剥離用溝部8aと剥離用刃部8bとで撚り線3(ケーブル線11)を挟み、剥離用刃部8bによって外側被覆部3aに切れ込みを入れる。この際、挟まれた撚り線3(ケーブル線11)を回動させることで、全周にわたって外側被覆部3aに切れ込みを入れる。
【0037】
このように切れ込みを入れた外側被覆部3aを撚り線3(ケーブル線11)から剥がすと、複数の撚り線3が露出する。これらの撚り線3は、図7の(b)に示すように、単位ケーブル2が2本毎に撚り合って構成されている。なお、互いに撚り合った2本の単位ケーブル2を、互いに引き離しても撚りのクセが残って曲がった状態となる。
次に、後端側が開いた状態で、撚り線3の互いに撚り合った2つの単位ケーブル2の先端を2つの挿入孔5に押し込んで挿入すると共に、挿入孔5を貫通した各単位ケーブル2をそれぞれ挿入孔5先の単位ケーブル用溝部6内に載置する。
【0038】
この状態で、撚り戻し工具1の後端側を握って、互いに後端側の対向面4aを近づけるように上側把持部材4Bと下側把持部材4Aとに力を加え、単位ケーブル用溝部6内の各単位ケーブル2を挟持用凸部7で上から押さえる。さらに、単位ケーブル用溝部6と挟持用凸部7とに挟持された各単位ケーブル2をその状態のまま各挿入孔5から引き抜くと、撚りのクセが残って曲がっていた各単位ケーブル2が、図7の(c)に示すように、真っ直ぐに延ばされる。
【0039】
このように本実施形態の撚り戻し工具1では、上側把持部材4Bが、複数の挿入孔5に挿通された状態で複数の単位ケーブル用溝部6内に載置された複数の単位ケーブル2を、下側把持部材4Aと上側把持部材4Bとの互いの対向面4aを近接又は接触させた際に、上方から押圧可能な複数の挟持用凸部7を対向面4aに有しているので、複数の挿入孔5に撚り合っていた複数の単位ケーブル2を挿入することで、撚りを戻すことができる。また、単位ケーブル用溝部6と挟持用凸部7とで挟持された状態のまま複数の単位ケーブル2を、複数の挿入孔5から引き抜くことで、撚れて曲がっていた複数の単位ケーブル2を容易にかつ同時に真っ直ぐに延ばすことができる。
【0040】
また、挿入孔5が、挿入口から他方の開口部まで内径が漸次小さく形成されたテーパ形状とされているので、テーパ形状によって単位ケーブル2の先端がガイドされることで、各単位ケーブル2を容易に対応する挿入孔5に挿入することができる。
また、上側把持部材4Bが、下側把持部材4Aと上側把持部材4Bとの互いの対向面4aを近接又は接触させた際に、剥離用溝部8a内に載置された撚り線3(ケーブル線11)を上方から押圧可能で外側被覆部3aの一部に切り込み可能な剥離用刃部8bを有しているので、一つの工具で撚り戻し作業だけでなく外側被覆部3aの剥ぎ取り作業も行うことができる。
【0041】
すなわち、剥離用溝部8aと剥離用刃部8bとの間に撚り線3(ケーブル線11)を挟むと共に剥離用刃部8bで外側被覆部3aに切り込みを入れることで、外側被覆部3aを剥ぎ取り易くなる。特に、剥離用溝部8aと剥離用刃部8bとの間に撚り線3(ケーブル線11)を挟んだ状態で撚り線3(ケーブル線11)を回転させると、剥離用刃部8bで全周にわたって外側被覆部3aに切り込みを入れることができ、外側被覆部3aを容易に剥ぎ取ることが可能になる。
【0042】
また、回動軸Tよりも単位ケーブル用溝部6側に、下側把持部材4Aと上側把持部材4Bとを離間させる方向に付勢する付勢部材9が設けられているので、特に力を加えない状態で、付勢部材9により剥離用溝部8a側の2つの対向面4aが互いに近接又は接触した状態となる。したがって、特に手で力を加えなくても、付勢部材9の付勢力により剥離用溝部8aと剥離用刃部8bとの間に配した撚り線3(ケーブル線11)を挟むことができ、外側被覆部3aを剥ぎ取り作業がより容易となる。
【0043】
また、下側把持部材4A及び上側把持部材4Bの少なくとも一方の対向面4aに、下側把持部材4Aと上側把持部材4Bとの互いの対向面4aを近接又は接触させた際に、互いの対向面4aの間隔を調整可能な間隔調整部(第1間隔調整部10A及び第2間隔調整部10B)が形成されているので、第2間隔調整部10Bを単位ケーブル用溝部6の近傍に設けることで、単位ケーブル用溝部6と挟持用凸部7との間隔を単位ケーブル2の太さ等に対応した間隔に適宜調整することができる。
【0044】
また、第1間隔調整部10Aを剥離用溝部8aの近傍に設けることで、剥離用溝部8aと剥離用刃部8bとの間隔を撚り線3(ケーブル線11)の太さや外側被覆部3aの厚さ等に対応した間隔に適宜調整することができる。
また、上側把持部材4Bが、下側把持部材4Aと上側把持部材4Bとの互いの対向面4aを近接又は接触させた際に、切断用凸部11aに載置された撚り線3(ケーブル線11)を上方から押圧して切断可能な切断用刃部11bを有しているので、一つの工具で撚り戻し作業だけでなく撚り線3(ケーブル線11)の切断作業も行うことができる。
【0045】
すなわち、切断用凸部11aと切断用刃部11bとの間に撚り線3(ケーブル線11)を挟み、下側把持部材4Aと上側把持部材4Bとの互いの対向面を近接又は接触させる方向に力を加えることで、切断用刃部11bで撚り線3(ケーブル線11)を切断することができる。
さらに、切断用刃部11bが、単位ケーブル用溝部6よりも回動軸T側に近く配されているので、てこの原理によって単位ケーブル用溝部6側よりも切断用刃部11bで撚り線3(ケーブル線11)を強く挟むことができ、容易に切断することが可能になる。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、2本の単位ケーブルが撚り合った撚り線について撚りを戻すと共に単位ケーブルを真っ直ぐに延ばしたが、3本以上の単位ケーブルが撚り合った撚り線の撚り戻し及び単位ケーブルの延ばし作業を行うように、3つ以上の挿入孔,単位ケーブル用溝及び挟持用凸部を設けた撚り戻し工具としても構わない。
【符号の説明】
【0047】
1…撚り戻し工具、2…単位ケーブル、3…撚り線、3a…外側被覆部、4A…下側把持部材、4B…上側把持部材、4a…下側把持部材と上側把持部材との対向面、5…挿入孔、6…単位ケーブル用溝部、7…挟持用凸部、8a…剥離用溝部、8b…剥離用刃部、9…付勢部材、10A…第1間隔調整部、10B…第2間隔調整部、11a…切断用凸部、11b…切断用刃部、T…回動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7