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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047703
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】インク検知装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
B41J2/175 309
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153620
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】金田 裕
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA29
2C056EB51
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】インクタンクに貯留しているインクを適切に検知する。
【解決手段】インクタンク5内に設けられるインク検知針3と、インクタンク5内にインクが保持されていない状態におけるインク検知針3の入出力信号の位相差データをインクなし時位相差データとして記憶するメモリ212と、メモリ212に記憶されたインクなし時位相差データと、インク検知針3の入出力信号の位相差データとに基づいて、インクタンク5内のインクの有無を検知するCPU211とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクタンク内に設けられるインク検知手段と、
前記インクタンク内にインクが保持されていない状態における前記インク検知手段の入出力信号の位相差データをインクなし時位相差データとして記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたインクなし時位相差データと、前記インク検知手段の入出力信号の位相差データとに基づいて、前記インクタンク内のインクの有無を検知するインク有無検知手段と、
を備えたことを特徴とするインク検知装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクタンクに貯留しているインクを検知するインク検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置や孔版印刷装置は、インクタンクを備えており、このインクタンクに貯留されたインクを用いて用紙に印刷する。
【0003】
適切に印刷するためには、インクタンクに貯留されたインク量を適切に制御する必要があり、そのためには、インクタンクに貯留されたインクの量を適切に把握する必要がある。
【0004】
特許文献1には、センサ電極とグランド電極とからなる可変容量コンデンサを設け、可変容量コンデンサの容量の変化と対応してロジックICの出力が変化することで、容器内の液体や粉粒体といった内容物の残量を検知する静電容量センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-214925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、対象物の静電容量が数pFと小さい場合には誤検知のリスクが高いという問題がある。例えば、インクセンサ基板と検知針(アンテナ)を分離して電線で接続する場合、電線の引き回し、金属部品との距離によっても容量が変わる。電子部品は公差を持っておりばらつきが発生する。また環境温度や経年劣化によっても微小な静電容量が変化する。
【0007】
このため製品を使用しているうちに誤動作が発生することがありうる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、誤動作の少ないインク検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るインク検知装置の特徴は、
インクタンク内に設けられるインク検知手段と、
前記インクタンク内にインクが保持されていない状態における前記インク検知手段の入出力信号の位相差データをインクなし時位相差データとして記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたインクなし時位相差データと、前記インク検知手段の入出力信号の位相差データとに基づいて、前記インクタンク内のインクの有無を検知するインク有無検知手段と、
を備えたことにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るインク検知装置の特徴によれば、インクタンクに貯留しているインクを適切に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例におけるインク検知装置の概略構成を示した図である。
図2】本発明の一実施例におけるインク検知装置の機能構成を示した図である。
図3】本発明に係るインク検知装置におけるインクの有無検知処理に関するタイミングチャートを示した図である。
図4】本発明の実施例1であるインク検知装置におけるタイミングチャートである。
図5】本発明の実施例1であるインク検知装置におけるキャリブレーションの処理内容を説明したフローチャートである。
図6】本発明の実施例1であるインク検知装置におけるインク検知判定の処理内容を説明したフローチャートである。
図7】本発明の実施例1であるインク検知装置の稼働中におけるキャリブレーションの処理内容を説明したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0013】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
(インク検知装置1の構成)
以下に添付図面を参照して、本発明に係るインク検知装置の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例におけるインク検知装置の概略構成図を示した図であり、図2は、本発明の一実施例におけるインク検知装置の機能構成を示した図である。
【0016】
図1図2に示すように、インク検知装置1は、インクセンサ基板2と、インク検知針3と、電線4とを有している。
【0017】
インク検知針3は、インクタンク5内に保持されたインクIKのインク量を測定可能な位置に設けられている。インク検知針3は、一方の端部が電線4を介してインクセンサ基板2に接続されている。
【0018】
インクセンサ基板2は、図示しないホストコントローラにインク検知の有無を伝えるためのコネクタ25と、電線4を接続するコネクタ26とを備えている。なお、このコネクタ25,26は、必須の構成ではなく、ホストコントローラにインクセンサ基板2を取り込む、あるいはインクセンサ基板2上に電線4を半田付けして構成するようにしてもよい。
【0019】
インク検知針3は、例えば、コンタクト(汎用コネクタに使用する端子)を利用できる。他には導電性の針状あるは板状のステンレス部材などに半田付けや電線4の銅線部をかしめることで構成するようにしてもよい。なお、電線4をフレームに這わすと、浮遊容量が形成される。
【0020】
図2に示すように、インクセンサ基板2には、マイクロコンピュータ21と、ロジックIC22と、固定抵抗23と、ロジックIC24とが設けられている。
【0021】
マイクロコンピュータ21は、CPU211と、メモリ212と、入力ポート213と、出力ポート214とを備えている。
【0022】
マイクロコンピュータ21は、出力ポート214からロジックIC22および固定抵抗23を介して、インク検知針3に電気的に接続されており、インク検知針3に0(V)から5(V)に変化するパルス信号を出力することができる。
【0023】
また、固定抵抗23のインク検知針3側の端子は、インクセンサ基板2内で、マイクロコンピュータ21の入力ポート213に接続されている。
【0024】
なお、図示しないが、インク検知装置1内でインクIKを保持するインクタンク5の金属部とインクセンサ基板2のGND(グランド)は装置の板金等のフレームを経由して電気的に接続されている。
【0025】
この構成により、図2に示すように、インクセンサ基板2上の固定抵抗23とインクの持つ静電容量CによりRC積分回路が形成される。したがって、インク検知針3に触れたインクIKの静電容量Cにより、出力ポート214から出力した信号に対して、入力ポート213に入力される信号はRC時定数に依存する時間遅延が発生する。
【0026】
なお、マイクロコンピュータ21は本実施形態において必須の構成ではなく、例えば、自励式の発振回路などパルスを出力できればよく、単純なハードウェアのみでも構成可能である。ロジックIC22,24も、インクセンサ基板2上にて遅延時間の確認には有用であるが必須の構成ではない。すなわち、出力ポート214側のロジックIC22はマイクロコンピュータ21のポートの駆動能力が十分であれば不要である。また、入力ポート213側のロジックIC24はRC積分回路でなまった波形をデジタル信号に波形成形することで遅延時間を観測しやすくできるが、直接入力ポート213に接続する、あるいは他のハードウェアでも同等の機能を実現するようにしてもよい。
【0027】
なお、RC積分回路の形成にあたって、インクIKを金属製のケースに入れる必要はなく、インクIKとインク検知針3間で電気回路が形成できればよい。例えば、孔版印刷機の様にスキージローラとドクターローラ間に保持されたインクであっても、スキージローラやドクターローラがドラムの板金フレームを経由していれば検知可能である。
【0028】
メモリ212は、インクタンク5内にインクIKが保持されていない状態におけるインク検知針3の入出力信号の位相差データをインクなし時位相差データとして記憶する。
【0029】
CPU211は、各信号の入出力を制御する。また、CPU211は、インクタンク5内にインクIKが保持されていない状態におけるインク検知針3の入出力信号の位相差データを取得し、インクなし時位相差データとしてメモリ212に記憶させる。
【0030】
また、CPU211は、メモリ212に記憶されたインクなし時位相差データと、新たに取得したインク検知針3の入出力信号の位相差データとに基づいて、インクタンク5内のインクの有無を検知する。
【0031】
図3は、本発明に係るインク検知装置におけるインクの有無検知処理に関するタイミングチャートを示した図である。
【0032】
図3の波形D101に示すように、CPU211の指示に基づいて、出力ポート214からは0(V)から5(V)、あるいは5(V)から0(V)を繰り返すパルス波形、いわゆる方形波が出力されている。ここでは、t1時点において電圧が0(V)から5(V)となり、t4時点において電圧が5(V)から0(V)となり、t5時点において電圧が0(V)から5(V)となり、t6時点において電圧が5(V)から0(V)となっている。なお、出力の電圧を5(V)としているが、電圧は5(V)である必要はなく、3.3(V)や、あるいは5(V)以上の電圧でも構わない。また、周期的な方形波でなく単パルスでもよいが、繰り返し位相差を測定し平均化して測定誤差を小さくすることが望ましい。
【0033】
ロジックIC24に入力されるパルス波形は、波形D102のように、インク検知針3にインクIKが触れていない場合、多少の波形なまりが生じる。また、入力ポート213に入力される波形は、D103に示すようにΔT1だけ時間遅延を持つパルス波形として入力される。
【0034】
これは、ロジックIC22,24自体が持つ遅延の影響やデジタル信号に波形成形するときの閾値電圧のばらつき、インクセンサ基板2上のパターンやインク検知針3の電線4と装置フレーム間の浮遊容量の影響を受けるためである。
浮遊容量はインク検知針3の電線4の引き回し、例えば、電線4とフレームとの密着具合などで変化する。
【0035】
これらの理由のため、インク検知針にインクが触れていない時の信号の位相差を基準として、インク検知針に触れた時の信号の位相差により、インク有無を判断することが望ましい。また、製品組み立て後に基準の位相差を測定することで、ばらつきを吸収するキャリブレーションが行える。
【0036】
インク検知針3にインクIKが付着すると、RC積分回路で出力波形がなまり、ロジックIC24でデジタル信号に波形成形されると出力信号からの位相差が発生する。したがって、キャリブレーション時の位相差と、インク検知針にインクが付着したときの位相差を比較することでインクの有無を検知することが可能になる。
【0037】
図3に示した例では、インク検知針3のインク非接触時では位相差ΔT1(インクなし時位相差データ)であり、インク検知針3のインク接触時では位相差ΔT2(位相差データ)となる。この位相差ΔT1と位相差ΔT2とを利用してインクの有無を検知することができる。
【0038】
そこで、CPU211は、メモリ212に記憶されたインクなし時位相差データと、新たに取得したインク検知針3の入出力信号の位相差データとに基づいて、インクタンク5内のインクの有無を検知する。
【0039】
なお、インク検知針3にインクが付着した場合であっても、インクIKの残量が減少し、インク検知針3と残インクが離間した場合には、RC積分回路が切断されるため、信号の位相差は減少し、インクIKは非検知となる。
【0040】
このように安価および単純な構成で精度のよいインクIKの検知を行うことができ、製品ばらつきを吸収するキャリブレーションが自動化できる。また、高湿となる孔版印刷機のドラム内にはインク検知針および電線のみを入れればよいので防湿剤が不要になる。
【0041】
<実施例1>
本発明の実施例1であるインク検知装置1について説明する。
【0042】
図4は、本発明の実施例1であるインク検知装置1におけるタイミングチャートである。
【0043】
図4に示すように、出力ポート214の波形D201に対して、インク接触時の入力ポート213の波形D203は、信号遅延が発生する(説明のために遅延量を強調してある)。
【0044】
出力ポート214の波形D201の立ち上がりのt11時点を基準にして、インク非接触時の入力ポート213の波形D202の立ち上がり時点t12まで間に、クロック波形が何パルス入るかを計測し記憶しておく。そして、インク接触時の入力ポート213の波形D203の立ち上がり時点t13まで間に、クロック波形が何パルス入るかを計測することで、両波形の位相差が検知できる。
【0045】
具体的には、出力ポートD201の波形の立ち上がりの時点t11から、インク非接触時の立ち上がりのt12時点までクロックD204を例えば「6」パルス分カウントしたとする。この「6」パルス分のずれが、回路や電線引き回しの影響による遅延分となる。この「6」パルスをインク検知前にあらかじめメモリ212に記憶しておく。
【0046】
インク検知針3がインクIKに接触した場合、入力ポート213波形D203はより遅延し、t11時点からt13時点までの間のクロックD204において、例えば「18」パルス分の遅延が発生する。したがって、元々の遅延量「6」パルス分を差し引いた、「12」パルス分がインク接触による遅延増加量になる。
【0047】
したがって、インクの有無検知を行うためのインク検知閾値Th1を、例えば、「8」パルスなどと予め設定しておくことによって、このインク検知閾値Th1と測定したパルス数の大小を比較することで、インク有無を判定できる。
【0048】
このインク検知閾値Th1となるパルス数は、検知対象とするインクIKを用いて予め実験などで決定しておく。また、上限側の異常検知閾値Th2として、例えば「30」パルスなどを決めておくことで、インク検知ではあり得ない、例えば結露し水滴などが付着した場合や、インク検知針3や電線4がフレームとショートした場合などの異常を検知することもできる。
【0049】
<本発明の実施例1であるインク検知装置1の作用>
図5は、本発明の実施例1であるインク検知装置1におけるキャリブレーションの処理内容を説明したフローチャートである。キャリブレーションは、インク検知を行う前に、基板や部品および製造組立のばらつきを相殺するため実行される。なお、キャリブレーションは1回の測定ではなく、例えば10回測定を行い、平均化することが望ましい。
【0050】
図5に示すように、CPU211は、ループカウンタを0に初期化し(ステップS101)、10回に満たない場合は、繰り返し位相差を測定する(ステップS103)。
【0051】
CPU211は、出力信号をオンにすると同時にマイクロコンピュータ21に内蔵されている図示しないパルスカウンタを0に初期化し(ステップS105)、クロックパルスの、パルス数カウントを開始する。パルス数カウントはパルスカウンタにより、マイクロコンピュータ21の内部で生成したクロックD204を所定の時間だけカウントする。入力ポート213の信号変化をソフトウェアで監視することでも可能であるが、効率の向上および測定精度の向上のため、マイクロコンピュータ21の割込み機能を使用することが望ましい。割込み機能を使用すると、入力信号が変化した場合にマイクロコンピュータ21内で入力信号が変化した通知が発生する。
【0052】
ステップS107において、割込み通知が来ると(YES)、パルスカウンタの値をメモリ212に保存し、ループカウンタを1つだけ増加させ、出力信号を一旦、オフにする(ステップS109)。
【0053】
このクロックパルス計測処理を10回繰り返すとループを抜け、CPU211は、ステップS111の処理に移行し、平均化処理を進める(ステップS111)。具体的には、10回測定したクロックパルス数を加算し、10で除算することで求めてもいいし、例えば、10個の測定値のうち、最大値と最小値を省いた残りの8個の測定値を用いてもよい。
【0054】
CPU211は、平均値を求めた後、この値をキャリブレーション値として使用するため、メモリ212に保存する(ステップS113)。
【0055】
図6は、本発明の実施例1であるインク検知装置1におけるインク検知の処理内容を説明したフローチャートである。なお、図6に示すフローチャートでは、繰り返し測定を行うことによる平均化や多数決の処理を記載していないが、測定誤差を低減したり、外来ノイズなどによる誤動作を防止したりするためには複数回測定を実施した後に判断することが好ましい。
【0056】
図6に示すように、インク検知時もキャリブレーション時と同様に、CPU211は、まず出力信号をオンにし、パルスカウンタを0にしてから、入力ポート変化の割込み通知を待つ(ステップS201)。
【0057】
割込み通知が来ると(ステップS203;YES)、CPU211は、パルスカウンタの値を読み出し(ステップS205)、予めメモリ212に保存していたキャリブレーション値を減算することで、位相差差分ΔT3を算出する(ステップS207)。
【0058】
CPU211は、この位相差差分と、予め実験などで求めたインク検知閾値Thと比較する(ステップS209)。
【0059】
比較の結果、位相差差分がインク検知閾値Th1より小さいと判定された場合(YES)、CPU211は、インクは非検知、すなわち、インクなしと判断する(ステップS213)。
【0060】
位相差差分がインク検知閾値Th1以上と判定された場合(NO)、CPU211は、位相差差分と予め定められた異常検知閾値Th2と比較する(ステップS211)。
【0061】
比較の結果、位相差差分が異常検知閾値Th2より大きいと判定された場合(YES)、CPU211は、結露などにより水滴が付いたり、想定外にインクが供給されオーバーフローしているとみなし、異常を検知したと判断し、装置の動作を停止させる(ステップS215)。
【0062】
位相差差分が異常検知閾値Th2以下であると判定された場合(NO)、CPU211は、インク検知針3にインクが付着したとみなしインクを検知したと判断する(ステップS217)。
【0063】
なお、上述したフローチャートによればキャリブレーションは装置を稼働させる前に行っておくように説明したが、インクの静電容量は微小であり、誤動作を起こしやすいため、また、経年劣化などでの誤検知を防止するため、装置の稼働中でもキャリブレーションが行えることが望ましい。
【0064】
通常の動作では、インク非検知と判断した場合は直ちにインク供給を開始するように制御するが、印刷装置が動作中に、または専用のキャリブレーションモードを用意してキャリブレーションを実行することが出来る。
【0065】
図7は、本発明の実施例1であるインク検知装置1の稼働中におけるキャリブレーションの処理内容を説明したフローチャートである。
【0066】
印刷装置において、印刷する画像によって消費されるインク量はある程度見積もることが出来る。
【0067】
具体的には孔版印刷機であれば、マスターに穿孔する孔の数をカウントすることで、印刷一枚あたりのおおよそのインク消費量が見積もれる。また、プレス圧が可変可能な機構を持つ孔版印刷機の場合は、プレス圧によるインク消費量の補正をかけることでより精度のよいインク消費量を見積もれる。
【0068】
インクジェット印刷機であれば、印刷画像に対応した吐出するインク色に対応するドロップ数(吐出回数)をカウントすることで、一枚当たりのおおよそのインク消費量を見積もることが出来る。
【0069】
したがって、インクありを検知した後、何枚程度印刷するとインク非検知になるかは想定することが出来る。このため、インク検知後に所定枚数の印刷を行った後、位相差が所定の量だけ変化していれば、インク非検知と判断し、インク非検知時の位相差を更新することができる。
【0070】
具体的には、CPU211は、キャリブレーションモードを開始する場合、インクの供給を停止させると(ステップS301:YES)、インクの消費量を推定する(ステップS303)。
【0071】
CPU211は、推定したインクの消費量に基づいて、インク検知針3がオフになる印刷枚数に達したか否かを判定する(ステップS305)。
【0072】
インク検知針3がオフになる印刷枚数に達したと判定した場合(ステップS305;YES)、CPU211は、図5のステップS101~S111の処理と同様に、位相差を測定する(ステップS307)。
【0073】
CPU211は、キャリブレーション値として使用するため、位相差をメモリ212に保存する(ステップS309)。
【0074】
CPU211は、停止していたインクの供給を開始する(ステップS311)。
【0075】
なお、インク検知後に所定枚数の印刷を行っても位相差が所定の量変化しない場合は、インク検知機構に異常が発生したと判断することもできる。
【0076】
また、印刷動作中にキャリブレーションを行う場合は、印刷枚数に対するインク消費量の測定を正確に実施するため、インク供給を停止する必要がある(キャリブレーション中にインク供給すると測定できなくなるため)。
【0077】
これにより、経年劣化での影響や、実際に使用しているインク特性の影響による誤検知の可能性を低減することが出来る。
【0078】
専用のキャリブレーションモードを設ける場合は、サービスマンにより、実際のインク供給状態を目視確認して調整することが可能であるが、動作中にキャリブレーションを行うように所定のインク消費量から、確実にインクが非検知になるまで印刷を繰り返し、その後キャリブレーションを実行するようにしてもよい。
【0079】
また、インク検知のために常時信号を出力しておくと、微小ながらも電気が流れ続けるため、インク有無を検知するときのみに信号出力する、またインクありを検知後は、インク検知のインターバルを長くすることでインク物性に与える影響を最小限にすることが出来る。
【0080】
以上、説明したように、インク非検知の状態でのインク検知手段の入力信号の位相差データをインクなし時位相差データとして記憶し、インク検知手段の入出力信号の位相差データとに基づいて、前記インクタンク内のインクの有無を検知するようにしたので、経年劣化での影響や、実際に使用しているインク特性の影響による誤検知の可能性を低減することが出来る。
【0081】
なお、インク検知装置1は、インクジェット印刷装置や、孔版印刷装置など、液体のインクを用いる印刷装置であればどのような印刷装置にも適用可能である。
【0082】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
【0083】
(付記1)
インクタンク内に設けられるインク検知手段と、
前記インクタンク内にインクが保持されていない状態における前記インク検知手段の入出力信号の位相差データをインクなし時位相差データとして記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたインクなし時位相差データと、前記インク検知手段の入出力信号の位相差データとに基づいて、前記インクタンク内のインクの有無を検知するインク有無検知手段と、
を備えたことを特徴とするインク検知装置。
【0084】
これにより、製品ばらつきを吸収した、安価および単純な構成で精度のよいインクの検知を行うことができ、キャリブレーションが自動化できる。
【符号の説明】
【0085】
1 インク検知装置
2 インクセンサ基板
3 インク検知針(インク検知手段)
4 電線
5 インクタンク
21 マイクロコンピュータ
22,24 ロジックIC
23 固定抵抗
25,26 コネクタ
211 CPU(インク有無検知手段)
212 メモリ(記憶手段)
213 入力ポート
214 出力ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7