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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047706
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】気液接触塔の施工方法
(51)【国際特許分類】
   C10K 1/08 20060101AFI20220317BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20220317BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
C10K1/08
E04G23/08 D
E04G23/08 E
E04G23/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153626
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】川上 敦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 学
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匡介
(72)【発明者】
【氏名】葉山 大介
(72)【発明者】
【氏名】石川 真也
(72)【発明者】
【氏名】安樂 諒太
【テーマコード(参考)】
2E176
4H060
【Fターム(参考)】
2E176AA11
2E176DD22
2E176DD28
4H060AA01
4H060BB02
4H060BB21
4H060DD11
4H060DD21
4H060FF04
4H060FF11
(57)【要約】
【課題】気液接触塔の内部の施工を行うに際し、高い安全性を維持しながら、作業効率を十分に向上することが可能な気液接触塔の施工方法を提供すること。
【解決手段】コークス炉ガスG1を処理し、内部に充填材50を備える気液接触塔100の施工方法であって、気液接触塔100の塔頂部を切り離して塔本体部110を開放する開放工程と、塔本体部110の内部の施工を行う施工工程と、を有する、気液接触塔100の施工方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉ガスを処理し、内部に充填材を備える気液接触塔の施工方法であって、
前記気液接触塔の塔頂部を切り離して塔本体部を開放する開放工程と、
前記塔本体部の内部の施工を行う施工工程と、を有する、気液接触塔の施工方法。
【請求項2】
前記開放工程における前記塔頂部の切り離しを無火気切断工法で行う、請求項1に記載に気液接触塔の施工方法。
【請求項3】
前記開放工程における前記塔頂部の切り離しを、ワイヤーソー装置、セーバーソー装置、及び水圧切断装置からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いて行う、請求項1又は2に記載に気液接触塔の施工方法。
【請求項4】
前記施工工程では、前記気液接触塔の外部で組み立てた組立体を、前記塔頂部を切り離して形成された開口から前記塔本体部の内部に搬入して設置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の気液接触塔の施工方法。
【請求項5】
前記開放工程で切り離した前記塔頂部を前記塔本体部の上端に接合する復旧工程を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の気液接触塔の施工方法。
【請求項6】
前記復旧工程では、前記塔頂部と前記塔本体部とを接続する接続部材を用いて、前記塔頂部と前記塔本体部との位置合わせを行う、請求項5に記載の気液接触塔の施工方法。
【請求項7】
前記開放工程の前に、前記塔頂部に接続されるダクトを支持する支持部材を前記塔本体部に取り付ける準備工程を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の気液接触塔の施工方法。
【請求項8】
前記施工工程では、前記塔本体部の内部における構造物の改造及び前記充填材の交換の少なくとも一方を行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の気液接触塔の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は気液接触塔の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄の副原料となるコークスを製造する過程で発生するコークス炉ガス(COG)は、不純物を含有するため、ガス精製設備において、脱硫、脱アンモニア、脱ナフタリン及び脱軽油等の種々の精製処理が施される。例えば、特許文献1では、充填材が充填された充填層を有する予冷塔、及び、充填材が充填された充填層を有する脱硫塔を用いて、コークス炉ガスを脱硫する技術が提案されている。このように充填材を用いて気液接触を行う各種塔では、経年で内部に固形分が付着したり、各種部材の劣化が進行したりするため、定期的な点検、交換、及び更新等の作業を行う必要がある。これらの作業は、塔に設けられている点検用のマンホールから作業員が内部に入って行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-229736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コークス炉ガスは可燃性ガスであるため、気液接触塔の内部での作業には送気マスクの装着等、相応の安全上の対策が必要となる。一方で、気液接触塔の側面に設けられている、塔内部の構造物の搬出及び搬入を行うマンホールのサイズには制限がある。このため、充填材の支持部材及び液分散板等の構造物の解体作業及び組立作業は、気液接触塔の内部で行う必要がある。気液接触塔の内部での作業は、作業スペースを十分に確保することが困難であるうえに、安全性を十分に確保しつつ行う必要があるため非効率であり、長期間で多くの労力が必要となっている。
【0005】
そこで、本開示では、気液接触塔の内部の施工を行うに際し、高い安全性を維持しながら、作業効率を十分に向上することが可能な気液接触塔の施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、コークス炉ガスを処理し、内部に充填材を備える気液接触塔の施工方法であって、気液接触塔の塔頂部を切り離して塔本体部を開放する開放工程と、塔本体部の内部の施工を行う施工工程と、を有する、気液接触塔の施工方法を提供する。
【0007】
上記施工方法では、気液接触塔の塔頂部を切り離して塔本体部を開放していることから、塔本体部の上端に開口を設けることができる。このため、塔本体部の内部の照度を確保し換気を十分に行って内部作業の安全性を高めることができる。また、当該開口から、内部の構造物の搬出及び搬入を、揚重クレーンを用いて行うことが可能となる。これによって、内部の構造物を大きなサイズのまま吊り出せるようになるため、内部で行う作業を低減できるとともに、搬出及び搬入も纏めて行うことが可能となる。したがって、作業効率を十分に向上することができる。
【0008】
上記開放工程における塔頂部の切り離しを無火気切断工法で行ってよい。これによって、気液接触塔の内部の清掃作業を行う前であっても、高い安全性を維持しながら塔頂部を切り離すことができる。そして、塔頂部を切り離した後に、内部の清掃作業を行うことが可能となるため、清掃作業の安全性及び効率性を高めることができる。
【0009】
上記開放工程における塔頂部の切り離しを、ワイヤーソー装置、セーバーソー装置、及び水圧切断装置からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いて行ってよい。これによって、気液接触塔の内部の清掃作業を行う前であっても、高い安全性を維持しながら塔頂部を切り離すことができる。塔頂部を切り離す前に内部の清掃作業を行うことも可能ではあるものの、このように塔頂部を切り離した後に内部の清掃作業を行うことによって、清掃作業の安全性及び効率性を高めることができる。
【0010】
上記施工工程では、気液接触塔の外部で組み立てた組立体を、塔頂部を切り離して形成された開口から塔本体部の内部に搬入して設置してもよい。これによって、作業効率を一層向上することができる。また、組立体を予め製作しておけば、施工の工期を一層短縮することができる。
【0011】
上述の施工方法は、開放工程で切り離した塔頂部を塔本体部の上端に接合する復旧工程を有していてよい。これによって、部材を有効利用して施工に伴うコストを低減することができる。
【0012】
上記復旧工程では、塔頂部と塔本体部とを接続する接続部材を用いて、塔頂部と塔本体部との位置合わせを行ってもよい。これによって、施工前後で塔頂部の高さが変化することを抑制できる。このため、塔頂部に取り付けられるダクト等の付帯設備の復旧を円滑に行うことができる。
【0013】
上記開放工程の前に、塔頂部に接続されるダクトを支持する支持部材を前記塔本体部に取り付ける準備工程を有していてよい。これによって、ダクトを塔本体部から取り外すことなく施工工程を行うことが可能となる。したがって、ダクトの取り外し及び復旧の作業が削減され、作業効率を一層向上することができる。
【0014】
上記施工工程では、上記塔本体部の内部における構造物の改造及び充填材の交換の少なくとも一方を行ってよい。内部の構造物の改造及び/又は充填材の交換を行う場合、塔本体部から搬出、及び塔本体部に搬入される構造物及び/又は充填材が増加するとともに、塔本体部に設けられている点検用のマンホールよりも搬出及び搬出される部材のサイズが大きくなる傾向にある。上記施工方法では、塔本体部の上端に形成された開口によって、構造物及び/又は充填材の搬出及び搬入を行うことが可能であるため、塔本体部の内部における構造物の改造及び/又は充填材の交換を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
気液接触塔の内部の施工を行うに際し、高い安全性を維持しながら、作業効率を十分に向上することが可能な気液接触塔の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係る施工方法が適用される気液接触塔を模式的に示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る施工方法の準備工程を説明するための図である。
図3図3は、一実施形態に係る施工方法の開放工程を説明するための図である。
図4図4(A)及び図4(B)は、吊り上げ用のワイヤと塔頂部との接続方法の一例を示す図である。
図5図5は、一実施形態に係る施工方法の施工工程を説明するための図である。
図6図6は、一実施形態に係る施工方法の施工工程を説明するための図である。
図7図7は、一実施形態に係る施工方法の施工工程を説明するための図である。
図8図8は、一実施形態に係る施工方法の復旧工程を説明するための図である。
図9図9は、一実施形態に係る施工方法の復旧工程で復旧された塔本体部及び塔頂部の接合部の近傍を示す図である。
図10図10は、一実施形態に係る施工方法の復旧工程において塔本体部及び塔頂部の位置合わせ方法を示す図である。
図11図11は、一実施形態に係る施工方法の復旧工程において、塔頂部と塔本体部が溶接部によって接合された後の接合部の近傍を拡大して示す断面図である。
図12図12は、塔頂部と塔本体部の接合部の一例を示す断面図である。
図13図13は、一実施形態に係る施工方法の復旧工程において塔頂部と塔本体部の接合した後の作業内容を説明するための図である。
図14図14は、一実施形態に係る施工方法が適用された後、運転開始(再開)時の気液接触塔を模式的に示す図である。
図15図15は、支持部材によるダクトの支持構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、場合により図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0018】
図1は、一実施形態に係る気液接触塔の施工方法が適用される気液接触塔の一例を模式的に示す図である。気液接触塔100は、充填材50が設けられ、コークス炉ガスG1と液体とを向流接触させる塔本体部110と、塔本体部110の下部に接続されコークス炉ガスG1を導入するガス導入管10と、塔本体部110の側部に接続され液体L1を供給する液導入管42と、塔本体部110の上部に接続されコークス炉ガスG1と液体L1とが接触して得られる処理ガスG2を導出するダクト20と、を備える。塔本体部110の下部に接続され、コークス炉ガスG1と液体L1とが接触して得られる処理液L2を導出する液導出管12と、を備える。塔本体部110の頂部には、可燃性ガスG3を排出する排気管30が接続されている。排気管30は、通常の運転時には閉止されていてよい。コークス炉ガスG1の供給量が余剰である場合等に、排気管30から可燃性ガスG3が排出される。
【0019】
気液接触塔100は、例えば、コークス炉ガスのガス精製設備の脱硫塔であってよく、当該ガス精製設備において、脱硫塔の上流側に設けられる予冷塔(ダイレクトクーラ)、ベンゾールスクラバ、アンモニアスクラバ、ナフタリンスクラバ、又は、脱硫塔の下流側に設けられる冷却塔(ファイナルクーラ)であってもよい。脱硫塔である場合、液体L1としてアミン等の吸収液を用い、コークス炉ガスG1に含まれる硫化物を吸収してよい。予冷塔又はナフタリンスクラバである場合、液体L1としてタール及びアンモニアを含有する水を用いて、コークス炉ガスG1に含まれるナフタリンを吸収してよい。気液接触塔100は、液導出管12から処理液L2として、例えば、硫化物、又はナフタリンを含有する液体を排出してよい。処理液L2は、別途設けられる再生塔で再生され循環使用されてよい。予冷塔、ベンゾールスクラバ、又はナフタリンスクラバで得られた処理ガスG2は、脱硫塔にコークス炉ガスG1として導入してよい。
【0020】
液導入管42の先端には、例えば散水ノズルが取り付けられており、液体L1がスプレイされてよい。液導入管42から導入される液体L1と、ガス導入管10から導入されるコークス炉ガスG1との接触効率を上げるため、塔本体部110には、内部の構造物(内部構造物)として、充填材50を支持する支持体52と、トレイ54が設けられている。充填材50は、格子状に組まれた木製の充填材であってよく、プラスチック製又は金属製の充填材であってよい。トレイ54は、例えば集液板であってよく、液分散板であってもよい。
【0021】
塔本体部110の内壁、内部構造物及び充填材50には、コークス炉ガスG1及び液体L1に同伴して塔本体部110に流入する固形分が付着する。また、塔本体部110の内壁、溶接部、及び内部構造物の腐食が経時的に進行する。このため、定期的に塔本体部110の清掃、及び点検を行う必要がある。また、場合によっては、補修、交換又は改造を行う場合もある。本開示における塔本体部の内部の施工とは、塔本体部の内部の清掃、点検、補修、交換及び改造の少なくとも一つを行うことを意味する。
【0022】
気液接触塔100の施工方法は、気液接触塔100の定常運転を停止し、塔本体部110の内部を開放するための準備を行う準備工程と、気液接触塔100の塔頂部を切り離して塔本体部110を開放する開放工程と、塔本体部110の内部の施工を行う施工工程と、開放工程で切り離した塔頂部を塔本体部110に接合する復旧工程を有する。
【0023】
準備工程では、気液接触塔100へのコークス炉ガスG1及び液体L1の供給を停止し、塔本体部110の内部に残留する残留液を排出する。塔本体部110内部の蒸気洗浄を行ってもよい。その後、図2に示すように、塔本体部110の側面に沿って、作業用の足場70を設置する。図2では足場70は総足場となっているが、塔本体部110の外周に設けられる階段等を用いて必要な部分にのみ足場を設けてもよい。ガス導入管10、液導出管12及びダクト20のぞれぞれと、塔本体部110との縁切りを行うために、各接続部に仕切り板25を取り付ける。排気管30にも仕切り板25を設け、可燃性ガスの逆流を防止する。マンホールの蓋44を取り外してマンホールによって塔本体部110の内部の換気を行う。なお、図1,2に示されるマンホールの蓋44は1つのみであるが、マンホールは任意の位置に複数設けられていてよい。塔頂部112に接続されるダクト20には、ダクト20を支持する支持部材60を取り付ける。支持部材60は、塔頂部112よりも下方において、ダクト20と塔本体部110とを接続して、ダクト20を支持する。
【0024】
開放工程では、図3に示すように、排気管30を塔頂部112から取り外し、クレーンで吊って撤去する。その後、塔頂部112を切り離し、クレーンで吊って撤去する。塔頂部112を切り離すことによって塔本体部110が開放される。これによって、可燃物が付着している塔本体部110の内部の換気が促進されるとともに、内部の照度を確保することができる。したがって、高い安全性を維持しつつ内部での作業効率を向上することができる。
【0025】
塔頂部112の切り離しは、塔本体部110を無火気切断工法で切断して行うことができる。無火気切断工法で行うことによって、安全性を一層高めることができる。無火気切断工法は、例えば、ワイヤーソー装置、セーバーソー装置、又は水圧切断装置等を用いて行うことができる。ワイヤーソー装置を用いることによって、低コスト且つ短時間で切断することができる。セーバーソー装置を用いることによって、ワイヤーソー装置よりもさらに低いコストで切断することができる。水圧切断装置は、短時間で水平に切断することができる。また、切断面が綺麗であり、切断に伴って削り取られる部分を小さくすることができる。このため、切断前と復旧後の塔頂部の高さ変動を十分に小さくすることができる。
【0026】
排気管30及び塔頂部112をクレーンで吊る際、クレーンと排気管30及び塔頂部112とを接続するワイヤ77を用いる。ワイヤ77は、図4に示すように、塔頂部112の天板に溶接されたピース部材75にワイヤ77を取り付けてもよい。図4(A)は、塔頂部112に溶接されているピース部材75の側面図であり、図4(B)は、ピース部材75の正面図である。ピース部材75の貫通孔75aにワイヤ77を挿通することによって両者が接続されている。排気管30にも同様のピース部材が溶接されており、このピース部材とワイヤとを接続して排気管30を吊ってよい。
【0027】
塔頂部112を切り離し、内部が十分に換気されると、施工工程を行うことができる。施工工程では、作業員が塔本体部110の内部に入って作業を行ってよい。例えば、マンホール45又は塔本体部110の上端に形成された開口80から作業員が内部に入り、塔本体部110内の内部構造物及び充填材50の一部を必要に応じて解体又は取り外し、マンホール45又は開口80から搬出する。解体及び搬出する内部構造物及び充填材50は特に限定されない。本実施形態では、図3に示される充填材50を解体して搬出する。充填材50は円滑に小型化できるため、マンホール45からの搬出を円滑に行うことができる。なお、充填材50の量が多い場合は、開口80から搬出してもよい。本実施形態のように内部構造物及び充填材50を解体及び搬出することは必須ではなく、別の実施形態では、解体及び搬出を行わず、内部作業として清掃又は点検のみを行ってもよい。
【0028】
図5に示されるように、充填材50を搬出してスペースを確保した後、支持体52及びトレイ54を補強する支柱56を設置する。そして、塔本体部110の内部に足場71を設置する。足場材は、マンホール45又は開口80から塔本体部110の内部に搬入することができる。内部の足場71は、支柱56で補強された支持体52、及び底板55の上に組むことができる。足場71を用いて、塔本体部110の内部全体の清掃を行う。清掃によって内壁及び内部構造物に付着する油分等の可燃物を除去することができる。清掃は、例えばサンドブラスト等のブラストで行ってよい。清掃によって油分を除去した後は、塔本体部110の内部で火気を使用することが可能となる。
【0029】
火気作業によって、塔本体部110から、支持体52及びトレイ54等の内部構造物、及び、液導入管42等の付帯設備を取り外した後、図6に示すように、クレーンで吊って撤去する。内部に設置した足場71、支持体52及びトレイ54は、クレーンを用いて開口80から搬出できるため、解体してマンホール45から搬出する場合に比べて、作業効率を大幅に向上することができる。なお、全ての内部構造物を開口80から搬出することは必須ではなく、足場71、内部構造物及びその解体物のサイズ又は重量に応じて、一部をマンホール45から搬出してもよい。また、内部構造物及び付帯設備の全てを撤去することは必須ではなく、一部又は全部を撤去しなくてもよい。
【0030】
撤去完了後、代わりの内部構造物を設置する。設置する内部構造物は、撤去したものを清掃したものであってよく、代替品又は改造品であってよい。本例では、図7に示すように、塔本体部110の内部に、7個のグレーチング57と、2個の液分散板59(ディストリビュータ)を設置する。各グレーチング57及び各液分散板59は、梁部材58によって支持される。各グレーチング57及び各液分散板59、並びにこれらを支持する梁部材58は、下側から足場を使って設置する。上側の梁部材58及びグレーチング57又は液分散板59は、下側の梁部材58及びグレーチング57又は液分散板59を足場として利用して設置してもよい。
【0031】
図7に示すように、この例の施工方法では、内部構造物の改造を行っている。撤去される内部構造物よりも設置される内部構造物の方が多くなっているが、グレーチング57及び液分散板59等を外部で組み立てて組立体とし、塔本体部110の内部にクレーンを使って当該組立体を搬入し設置することができる。したがって、内部構造物が増えても、内部での作業が低減できるため作業効率を向上することができる。液導入管42等の付帯設備もクレーンを使って設置する。内部構造物を全て設置したら、一番上にある液分散板59の上に足場71を設置し、開放工程で切り離した塔頂部112を塔本体部110の上端に接合する復旧工程を行う。
【0032】
図8に示すように、塔頂部112を、ワイヤ77を介してクレーンで吊り、塔頂部112の開口80の真上に位置合わせする。塔頂部112は、切り離す前と同じ高さとなるように塔本体部110と接合されることが好ましい。これによって、塔頂部112とダクト20との接続を円滑に行うことができる。
【0033】
図9は、接続部材90を用いて位置合わせして復旧された塔本体部110及び塔頂部112の接合部90Aの近傍を示す図である。気液接触塔100の塔頂部112と塔本体部110は、接続部材90を用いて位置合わせを行って接合されているため、塔頂部112の高さを高精度に調節することができる。このため、切り離し前後の塔頂部112の高さ変化を十分に小さくすることができる。
【0034】
図10は、復旧工程で行う塔頂部112と塔本体部110の位置合わせの方法を示す図である。図10に示されるように、塔本体部110の側面には、開口80の近傍に複数のピース部材91が円周方向に沿って所定の間隔で並ぶように溶接されている。塔頂部112の側面にも、複数のピース部材92が円周方向に沿って所定の間隔で並ぶように溶接されている。塔頂部112を吊るクレーンを操作して、塔頂部112のピース部材91と塔本体部110のピース部材92とが鉛直方向に並ぶように円周方向の位置を調節する。続いて、塔頂部112を吊るクレーンを操作して、鉛直方向における塔頂部112と塔本体部110の間隔を調節する。円周方向の位置と間隔を調節したら、鉛直方向に並ぶピース部材91とピース部材92とを、プレート状の可変ピース金物93を介して連結する。このようにして、塔頂部112と塔本体部110の鉛直方向及び円周方向の位置合わせを行うことができる。
【0035】
可変ピース金物93とピース部材91、及び可変ピース金物93とピース部材92の連結は、ボルト94及びナット95等の固定部材を用いることができる。ここで、ボルト94が挿通される可変ピース金物93の貫通孔93aの鉛直方向に沿う長さは、ピース部材91,92の貫通孔91a,92aの鉛直方向に沿う長さよりも長くてよい。これによって、塔頂部112と塔本体部110の鉛直方向の位置合わせの微調整を円滑に行うことができる。このため、後述する溶接の際のルートギャップの調節も円滑に行うことができる。また、ピース部材91,92の溶接位置がずれて両者の間隔が変動しても、可変ピース金物93を新たに作り直す手間を省くことができる。このように、可変ピース金物93の汎用性を向上することができる。
【0036】
可変ピース金物93、ピース部材91,92、ボルト94及びナット95を備える接続部材90を用いて塔頂部112と塔本体部110の位置合わせを行った後、溶接を行って塔頂部112と塔本体部110を接合する。図11は、塔頂部112と塔本体部110が溶接部97によって接合されたときの接合部90Aの近傍を拡大して示す断面図である。この断面図は、溶接部97で互いに接合された塔頂部112及び塔本体部110を鉛直方向に沿って切断したときの溶接部97及びその近傍の断面を示している。溶接は、塔頂部112及び塔本体部110の円周方向及び高さ方向の位置合わせを、接続部材90を用いて行った後に行うことができる。溶接は、例えばアーク溶接であってよい。可変ピース金物93を備える接続部材90を用いることによって、塔頂部112の下端と塔本体部110の上端とをアーク溶接する際のルートギャップの調節も円滑に行うことができる。
【0037】
塔頂部112と塔本体部110の溶接の際に、図12に示すようにバンド材82を用いてシール溶接で接合してもよい。具体的には、塔本体部110及び塔頂部112の内壁に沿って接合部90Aを内側から覆うようにバンド材82を取り付ける。バンド材82は、両端における溶接部98で塔本体部110及び塔頂部112の内壁に固定される。その後、塔本体部110及び塔頂部112の外側から溶接を行って溶接部97を設ける。これによって、塔頂部112の切り離しの際に削り取られる部分が大きくなっても、塔頂部112の高さを切り離し前と同じ高さに円滑に調節することができる。例えば、削り取られる部分の鉛直方向に沿う長さが10mm以上の場合に、バンド材82を用いてよい。
【0038】
塔頂部112を塔本体部110の上端に接合することによって、両者は一体化する。接合後に、塔頂部112の上面に排気管30を取り付ける。その後、必要に応じて溶接検査及び気密テストを行ってよい。塔本体部110の内部の足場71は、解体してマンホール45から搬出する。また、図13に示すようにマンホール45から塔本体部110の内部に充填材51を搬入し、グレーチング57の上に配置する。なお、充填材51の搬入は、塔頂部112と塔本体部110とを接合する前に行ってもよい。全ての充填材51の搬入が終わったら、マンホール45を蓋44で閉止する。必要に応じて気密検査及び外面塗装を行ってよい。
【0039】
ガス導入管10、液導出管12及びダクト20と塔本体部110との接続部、並びに排気管30に取り付けられていた仕切り板25を取り外した後、窒素ガス等の不活性ガスを導入して、塔本体部110及び各配管内をパージする。このようにして、改造後の気液接触塔100Aの運転が可能な状態となる。
【0040】
図14は、運転開始(再開)時の気液接触塔100Aを模式的に示す図である。図1図14を見比べれば分かるように、気液接触塔100は、内部構造物及び充填材が取り換えられるとともに、液導入管42の数も変更されている。このように内部構造物及び付帯設備を改造する場合、又は充填材を交換する場合には、取り外し、解体、搬出、組み立て、搬入及び取り付けの一連の作業が複雑化するとともに、作業量が多くなる。上記施工方法によれば、塔本体部110の上端に形成された開口80によって、構造物の搬出及び搬入を行うことが可能であるため、塔本体部110の内部における構造物の改造及び充填材の交換を円滑に行うことができる。
【0041】
気液接触塔100Aには、充填材51が設けられ、コークス炉ガスG1と液体とを向流接触させる塔本体部110と、塔本体部110の下部に接続されコークス炉ガスG1を導入するガス導入管10と、塔本体部110の側部に接続され液体L1を供給する液導入管42と、塔本体部110の上部に接続されコークス炉ガスG1と液体L1とが接触して得られる処理ガスG2を導出するダクト20と、塔本体部110の下部に接続され、コークス炉ガスG1と液体L1とが接触して得られる処理液L2を導出する液導出管12と、を備える。塔本体部110の頂部には、可燃性ガスを排出する排気管30が接続されている。排気管30は、通常の運転時には閉止されていてよい。
【0042】
準備工程でダクト20を支持するために取り付けた支持部材60は、運転再開前に取り外してもよいし、再開後も取り付けられたままであってもよい。図15は、支持部材60によるダクト20の支持構造の一例を示す断面図である。図15は、支持部材60とダクト20の接続部分を、水平方向に沿って切断したときの断面を示している。支持部材60は、ダクト20を取り囲むように設けられる枠体部62と、枠体部62とダクト20とを接続する接続部63と、枠体部62を塔本体部110に連結する連結部64とを備える。連結部64の一端は、塔本体部110の外壁に溶接によって固定される。接続部63の一端はダクト20の外壁に溶接され、他端は枠体部62に溶接される。
【0043】
気液接触塔100の塔頂部に接続され、処理ガスを抜き出すダクト20は、比較的大きいサイズを有する。このようなダクト20を支持する支持部材60を用いることによって、一層高い安全性で気液接触塔100の施工方法を行うことができる。また、気液接触塔100Aは、支持部材60を取り付けたままの状態で運転することができる。このため、気液接触塔100Aの塔頂部を切り離して開放する際に、支持部材60を再び設置する必要はない。なお、支持部材の構造は図15のものに限定されず、ダクト20を支持可能な構造のものを適宜用いることができる。気液接触塔100Aの塔頂部を切り離して開放する場合は、塔頂部と塔本体部の接合部とは異なる位置で切断して塔頂部を切り離してよい。
【0044】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上述の例では、気液接触塔100を気液接触塔100とは異なる内部構造物及び充填材を有する気液接触塔100Aに改造したが、改造をすることは必須ではない。気液接触塔100の塔本体部110の内部の清掃及び点検を行ったうで、塔頂部112と塔本体部110を接合して同じ内部構造物及び充填材を有する気液接触塔100に復旧してもよい。開放工程における塔頂部の切断位置は、ダクト20と塔頂部112との接続位置よりも下側に限定されるものではない。ダクト20と塔頂部112との接続位置よりも上側に十分な高さがあれば、ダクト20よりも上側で塔頂部112を切り離してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示によれば、気液接触塔の内部の施工を行うに際し、高い安全性を維持しながら、作業効率を十分に向上することが可能な気液接触塔の施工方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…ガス導入管,12…液導出管,20…ダクト,25…仕切り板,30…排気管,42…液導入管,44…蓋,45…マンホール,50,51…充填材,52…支持体,54…トレイ,55…底板,56…支柱,57…グレーチング,58…梁部材,59…液分散板,60…支持部材,62…枠体部,63…接続部,64…連結部,70,71…足場,75,91,92…ピース部材,75a,91a,92a,93a…貫通孔,77…ワイヤ,80…開口,82…バンド材,90…接続部材,90A…接合部,93…可変ピース金物,94…ボルト,95…ナット,97,98…溶接部,100,100A…気液接触塔,110…塔本体部,112…塔頂部,G1…コークス炉ガス,G2…処理ガス,G3…可燃性ガス,L1…液体,L2…処理液。
図1
図2
図3
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図5
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図9
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図11
図12
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図14
図15