(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047712
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】光学モジュール保持機構,光学ユニット及び携帯型情報端末
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20220317BHJP
【FI】
G03B5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153637
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松久 治可
【テーマコード(参考)】
2K005
【Fターム(参考)】
2K005AA20
2K005BA52
2K005CA04
2K005CA14
2K005CA23
2K005CA34
2K005CA40
2K005CA45
2K005CA53
(57)【要約】
【課題】2以上の方向に変位される光学モジュールの、各方向に対する変位量の均一化を図る。
【解決手段】光学モジュール保持機構は、光学モジュールが収容されるホルダ枠40と、ホルダ枠40を収容するケースと、ホルダ枠40をケースに対して回転させる駆動機構と、を有し、ケースの底部内面と対向するホルダ枠40の底部外面に、ケースに対するホルダ枠40の回転角度を規定するストッパ面41が設けられる。ストッパ面41上の複数の点を通る半径R1の仮想円を第1仮想円C1とし、ストッパ面41上の複数の点を通る半径R2(≠R1)の仮想円を第2仮想円C2とし、光軸方向を高さ方向としたとき、第1仮想円C1上の各点の高さは同一であり、第2仮想円C2上の各点の高さは同一である一方、第1仮想円C1上の各点の高さと、第2仮想円C2上の各点の高さとは異なる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学モジュールが収容される可動部材と、
前記可動部材を収容する固定部材と、
前記光学モジュールが備える光学素子の光軸と平行な仮想直線と交差する軸を回転軸として前記可動部材が前記固定部材に対して回転可能となるように、前記可動部材を前記固定部材に対して支持する支持機構と、
前記可動部材を前記固定部材に対して回転させる駆動機構と、を有し、
互いに対向する前記可動部材の底部外面と前記固定部材の底部内面とのいずれか一方に、前記固定部材に対する前記可動部材の回転角度を規定するストッパ面が設けられ、
前記仮想直線上の一点からの距離がR1である前記ストッパ面上の複数の点を通る仮想円を第1仮想円とし、
前記仮想直線上の前記一点からの距離がR2(≠R1)である前記ストッパ面上の複数の点を通る仮想円を第2仮想円とし、
前記仮想直線の方向を高さ方向としたとき、
前記第1仮想円が通る前記ストッパ面上の各点の高さは同一であり、
前記第2仮想円が通る前記ストッパ面上の各点の高さは同一であり、
前記第1仮想円が通る前記ストッパ面上の各点の高さと、前記第2仮想円が通る前記ストッパ面上の各点の高さとは異なる、光学モジュール保持機構。
【請求項2】
前記ストッパ面が前記可動部材の前記底部外面に設けられ、
前記R2は前記R1よりも大であり、
前記第2仮想円が通る前記ストッパ面上の各点は、前記第1仮想円が通る前記ストッパ面上の各点よりも、前記高さ方向において前記固定部材の前記底部内面から離間している、請求項1に記載の光学モジュール保持機構。
【請求項3】
前記可動部材は、前記ストッパ面と同一面側に設けられた凸部を有し、
前記凸部は、前記高さ方向において前記ストッパ面から突出しており、
前記凸部の先端面は、平坦である、請求項2に記載の光学モジュール保持機構。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光学モジュール保持機構と、
前記光学モジュール保持機構の前記可動部材に収容された光学モジュールと、
一端が前記光学モジュールに接続されたフレキシブル配線基板と、を有し、
前記光学モジュールは、前記光学素子としてのレンズと、前記レンズによって結像された被写体像を撮像する撮像素子と、を含む、光学ユニット。
【請求項5】
前記光学モジュール保持機構の前記固定部材には、前記フレキシブル配線基板を収容する収容部が設けられ、
前記収容部は、前記フレキシブル配線基板が固定される座面を含む天井面と、当該天井面と前記高さ方向において対向する床面と、を備え、
前記座面は、当該座面と前記床面との間隔が前記光学モジュールから離間するに連れて次第に拡大するように傾斜している、請求項4に記載の光学ユニット。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光学ユニットを備えた携帯型情報端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、様々な光学機器が開発され、実用化されている。それら光学機器の1つとして、変位可能に保持された光学モジュールや、そのような光学モジュールを備える光学ユニットが知られている。例えば、特許文献1には、光学素子の1つであるレンズが収容されたレンズバレルを保持する可動部と、可動部に対してレンズの光軸方向に離間して配置された固定部と、可動部を固定部に対して光軸方向と直交する方向に変位可能に支持する複数のサスペンションワイヤと、を備える光学モジュール(レンズ駆動装置)が記載されている。
【0003】
また、特許文献1には、上記レンズ駆動装置と、上記レンズ駆動装置が備えるレンズバレルに収容されているレンズによって結像された被写体像を撮像する撮像部と、を備える光学ユニット(カメラモジュール)が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載されているカメラモジュールが備えるレンズ駆動装置は、撮像部によって撮影される画像の振れを補正する機能を有している。具体的には、レンズ駆動装置は、レンズバレルを介してレンズを保持している可動部を光軸方向と直交する1つ又は2つ以上の方向に変位させることにより、カメラモジュールが搭載されている機器(例えば、スマートフォン等の携帯型情報端末)の揺れに起因する画像の振れを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像の振れを補正するために光学素子や光学素子を保持する保持部材等が様々な方向に変位する場合、これらの変位量が全方位に対して均一であることが好ましい。例えば、光学素子や保持部材等が2以上の方向に回転や傾斜する場合、全ての方向に対する最大回転角度や最大傾斜角度が同一又は実質的に同一であることが好ましい。
【0007】
本発明の目的は、2以上の方向に変位される光学モジュールの、各方向に対する変位量の均一化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態の光学モジュール保持機構は、光学モジュールが収容される可動部材と、前記可動部材を収容する固定部材と、前記光学モジュールが備える光学素子の光軸と平行な仮想直線と交差する軸を回転軸として前記可動部材が前記固定部材に対して回転可能となるように、前記可動部材を前記固定部材に対して支持する支持機構と、前記可動部材を前記固定部材に対して回転させる駆動機構と、を有する。そして、互いに対向する前記可動部材の底部外面と前記固定部材の底部内面とのいずれか一方に、前記固定部材に対する前記可動部材の回転角度を規定するストッパ面が設けられる。ここで、前記仮想直線上の一点からの距離がR1である前記ストッパ面上の複数の点を通る仮想円を第1仮想円とし、前記仮想直線上の前記一点からの距離がR2(≠R1)である前記ストッパ面上の複数の点を通る仮想円を第2仮想円とし、前記仮想直線の方向を高さ方向としたとき、前記第1仮想円が通る前記ストッパ面上の各点の高さは同一であり、前記第2仮想円が通る前記ストッパ面上の各点の高さは同一であり、前記第1仮想円が通る前記ストッパ面上の各点の高さと、前記第2仮想円が通る前記ストッパ面上の各点の高さとは異なる。
【0009】
他の一実施形態の光学モジュール保持機構では、前記ストッパ面が前記可動部材の前記底部外面に設けられる。また、前記R2は前記R1よりも大であり、前記第2仮想円が通る前記ストッパ面上の各点は、前記第1仮想円が通る前記ストッパ面上の各点よりも、前記高さ方向において前記固定部材の前記底部内面から離間する。
【0010】
他の一実施形態の光学モジュール保持機構では、前記可動部材は、前記ストッパ面と同一面側に設けられた凸部を有する。そして、前記凸部は、前記高さ方向において前記ストッパ面から突出しており、前記凸部の先端面は、平坦である。
【0011】
一実施形態の光学ユニットは、前記光学モジュール保持機構と、前記光学モジュール保持機構の前記可動部材に収容された光学モジュールと、一端が前記光学モジュールに接続されたフレキシブル配線基板と、を有する。また、前記光学モジュールは、前記光学素子としてのレンズと、前記レンズによって結像された被写体像を撮像する撮像素子と、を含む。
【0012】
他の一実施形態の光学ユニットでは、前記光学モジュール保持機構の前記固定部材には、前記フレキシブル配線基板の前記折り曲げ部を収容する収容部が設けられる。前記収容部は、前記フレキシブル配線基板が固定される座面を含む天井面と、当該天井面と前記高さ方向において対向する床面とを備え、前記座面は、当該座面と前記床面との間隔が前記光学モジュールから離間するに連れて次第に拡大するように傾斜している。
【0013】
一実施形態の携帯型情報端末は、前記光学ユニットを備える。
【発明の効果】
【0014】
各方向に対する変位量の均一化が図られた光学モジュールや、かかる光学モジュールを備える光学ユニットが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】ケールに対して回転(傾斜)したホルダ枠を示す説明図である。
【
図9】フレキシブル配線基板の折り曲げ部の収容状態を示す説明図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る光学ユニットを備える携帯型情報端末の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、同一又は実質的に同一の構成や要素には同一の符号を用いる。また、一度説明した構成や要素については、原則として再度の説明は行わない。
【0017】
図1,
図2に示されている光学ユニット1は、スマートフォン,タブレット型PC,ノート型PC等の携帯型情報端末に搭載されるカメラユニットである。
図1中で符号Lが付されている一点鎖線は、後述する光学モジュール10が備える光学素子の光軸と平行な仮想直線を示している。尚、本実施形態では、光学モジュール10が備える光学素子の光軸と仮想直線Lとは一致している。
【0018】
図2中で符号L1が付されている一点鎖線は、
図1に示されている仮想直線Lと交差する第1軸線を示しており、符号L2が付されている一点鎖線は、仮想直線L及び第1軸線L1と交差する第2軸線を示している。また、
図1,
図2において、Z軸方向は光軸方向であり、X軸方向はヨーイングの回転軸方向であり、Y軸方向はピッチングの回転軸方向である。
【0019】
<光学ユニットの全体構成>
図1,
図2に示されるように、光学ユニット1は、光学モジュール10と、一端が光学モジュール10に接続されたフレキシブル配線基板20と、光学モジュール10を保持する光学モジュール保持機構30と、有する。
【0020】
<光学モジュール>
図1~
図3に示されるように、光学モジュール10は、光学素子としてのレンズ11やレンズ11によって結像された被写体像を撮像する撮像素子等を含むカメラモジュールである。
図3に示されるように、レンズ11は、矩形箱形のハウジング12の上面から突出しており、ハウジング12内には、AF(オートフォーカス)機能を実現するためにレンズ11を進退させるアクチュエータ等が収容されている。また、ハウジング12の下方には撮像素子等が搭載された基板13が配置されている。尚、
図1に示されている仮想直線Lと一致している既述の光軸は、レンズ11の光軸である。
【0021】
<光学モジュール保持機構の全体構成>
図1~
図3に示されている光学モジュール保持機構30は、ヨーイング及びピッチングを補正する機能を備えている。つまり、本実施形態の光学ユニット1は、手振れ補正機能を有するカメラユニットである。
【0022】
図3に示されるように、光学モジュール保持機構30は、光学モジュール10が収容される可動部材40と、可動部材40が収容される固定部材50と、可動部材40を支持する支持機構60と、可動部材40を駆動する駆動機構70と、を有する。
【0023】
<可動部材及び固定部材>
図4に示されるように、可動部材40は、全体として矩形枠状の外観を呈する樹脂成形体である。固定部材50も樹脂成形体であって、可動部材40の外形に対応した収容空間51を備えている。以下の説明では、可動部材40を「ホルダ枠40」と呼び、固定部材50を「ケース50」と呼ぶ場合がある。
【0024】
ホルダ枠40は、ケース50の収容空間51の内側に
図4に示されている向きで収容されており、ホルダ枠40の底部外面41の少なくとも一部と、ケース50の底部内面52の少なくとも一部とは互いに対向している。もっとも、通常、ホルダ枠40の底部外面41とケース50の底部内面52とは接触していない。つまり、ホルダ枠40は、フローティング状態でケース50に収容されている。
【0025】
<支持機構>
図3に示されている支持機構60は、仮想直線L(
図1)と交差する1または複数の軸を回転軸としてホルダ枠40がケース50に対して回転可能となるように、ホルダ枠40を支持する。具体的には、支持機構60は、
図1,
図2に示されているX軸及びY軸を回転軸としてホルダ枠40がケース50に対して回転可能となるように、ホルダ枠40を支持する。つまり、支持機構60は、光学モジュール10を収容しているホルダ枠40をヨーイング方向及びピッチング方向に回転可能に支持する。
【0026】
図3に示されるように、支持機構60は、ジンバル61や支持部材62等から構成されている。
図1,
図2に示されるように、ジンバル61は、レンズ11を取り囲む円形開口部63aが形成されたジンバル本体63と、ジンバル本体63の四隅に設けられた4本の腕を有する。一対の腕64a,64bは、ジンバル本体63の一組の対角にそれぞれ設けられ、他の一対の腕は65a,65b、ジンバル本体63の他の一組の対角にそれぞれ設けられている。
図2に示されるように、ジンバル61は、腕64a,64bが第1軸線L1に沿って配置され、腕65a,65bが第2軸線L2に沿って配置されるように搭載されている。尚、ジンバル61のそれぞれの腕64a,64b,65a,65bは、ジンバル本体63に対して光軸方向に略90度折り曲げられている。また、それぞれの腕64a,64b,65a,65bの端部には、半球状の凹部が形成されている。
【0027】
再び
図3を参照する。ジンバル61の2本の腕64a,64bは、2つの支持部材62を介してケース50に接続されており、ジンバル61の他の2本の腕65a,65bは、他の2つの支持部材62を介してホルダ枠40に接続されている。
【0028】
図4に示されるように、収容空間51の向かい合う2つの角には挿入溝53が設けられており、それぞれ挿入溝53内に支持部材62(
図3)が配置されている。
図1,
図2に示されているジンバル61の腕64a,64bは、
図4に示されている挿入溝53内であって、かつ、
図3に示されている支持部材62の手前(内側)に挿入されている。
【0029】
図4に示されるように、ホルダ枠40の向かい合う2つの角には挿入溝42が設けられており、それぞれ挿入溝42内に支持部材62(
図3)が配置されている。
図1,
図2に示されているジンバル61の腕65a,65bは、
図4に示されている挿入溝42内であって、かつ、
図3に示されている支持部材62の手前(内側)に挿入されている。
【0030】
尚、
図3に示されるように、それぞれの支持部材62には金属製のボール62aが溶接されている。そして、
図4に示されている挿入溝53内に配置されている支持部材62に溶接されているボール62aは、当該挿入溝53に挿入されたジンバル61の腕64a,64bに形成されている半球状の凹部に嵌合している。また、挿入溝42内に配置されている支持部材62に溶接されているボール62aは、当該挿入溝42に挿入されたジンバル61の腕65a,65bに設けられている半球状の凹部に嵌合している。
【0031】
以上のように、ジンバル61は、ケース50に支持されている。同時に、ジンバル61は、光学モジュール10を収容しているホルダ枠40を保持している。言い換えれば、光学モジュール10を収容しているホルダ枠40は、ケース50に支持されているジンバル61にぶら下がっている。この結果、ホルダ枠40及びこれに収容されている光学モジュール10は、ヨーイング方向及びピッチング方向に回転可能となっている。
【0032】
<駆動機構>
図3に示されている駆動機構70は、ヨーイング及びピッチングを補正するために、光学モジュール10を収容しているホルダ枠40をケース50に対して回転させる。より具体的には、駆動機構70は、
図1,
図2に示されているX軸及びY軸を回転軸として、ホルダ枠40をケース50に対して回転させる。
【0033】
図3に示されるように、駆動機構70は、巻線コイル(空芯コイル)71a,71b、磁石72a,72b、配線基板73a,73b等から構成されている。
図4に示されるように、ホルダ枠40の隣り合う2つの側壁の外面には、磁石装着溝43a,43bがそれぞれ形成されている。
図3に示されている磁石72aは、
図4に示されている磁石装着溝43aに取り付けられ、
図3に示されている磁石72bは、
図4に示されている磁石装着溝43bに取り付けられている。
【0034】
図4に示されるように、収容空間51にホルダ枠40が収容されたときに、ホルダ枠40の磁石装着溝43a,43bが形成されている側壁と対向するケース50の側壁には、コイル装着部54a,54bが形成されている。そして、
図3に示されている巻線コイル71aは、
図4に示されているコイル装着部54aに取り付けられ、
図3に示されている巻線コイル71bは、
図4に示されているコイル装着部54bに取り付けられている。よって、ケース50にホルダ枠40が収容されると、巻線コイル71aと磁石72aとが対向し、巻線コイル71bと磁石72bとが対向する。また、
図3に示されている巻線コイル71aには配線基板73aが接続され、巻線コイル71bには配線基板73bが接続されている。
【0035】
図示は省略されているが、配線基板73a,73b上には、光学モジュール10のヨーイング状態やピッチング状態を監視するための磁気センサ(例えば、ホール素子)が搭載されている。駆動機構70は、光学モジュール10のヨーイングやピッチングを示す検知信号に基づいてホルダ枠40を回転させる。例えば、光学ユニット1が搭載される携帯型情報端末に搭載されているジャイロセンサから出力されるジャイロ信号が上記検知信号として利用される。また、配線基板73aや配線基板73bに搭載されている専用のジャイロセンサから出力されるジャイロ信号が上記検知信号として利用されることもある。いずれにしても、駆動機構70は、検知信号に基づいて巻線コイル71a,71bに電力を供給し、ホルダ枠40を回転させる。より具体的には、光学モジュール10のヨーイングやピッチングが打ち消される方向に当該光学モジュール10が変位するように、ホルダ枠40を回転させる。
【0036】
<ストッパ面>
図4に示されているホルダ枠40は、ケース50に収容され、かつ、ケース50内で回転する。つまり、ホルダ枠40は、ケース50内で2以上の方向に傾く(チルトする。)。一方、ホルダ枠40の底部外面41とケース50の底部内面52とは互いに対向している。よって、
図5に示されるように、ケース50内でホルダ枠40がある程度回転すると、ホルダ枠40の底部外面41とケース50の底部内面52とが互いに接触し、ホルダ枠40のそれ以上の回転が規制される。つまり、ホルダ枠40の底部外面41とケース50の底部内面52の少なくともいずれか一方は、ケース50に対するホルダ枠40の回転角度(傾斜角度)を規定するストッパ面として機能し得る。
【0037】
本実施形態では、ホルダ枠40の底部外面41が上記ストッパ面として機能する。そこで、以下の説明では、ホルダ枠40の底部外面41を「ストッパ面41」と呼ぶ場合がある。また、ケース50の底部内面52を「受け面52」と呼ぶ場合がある。
【0038】
本実施形態では、ストッパ面41と受け面52との接触状態を全方位(ホルダ枠40の全周)において均一又は略均一とすべく、受け面52を平面とする一方、ストッパ面41を円錐面としてある。つまり、ストッパ面41は、
図1に示されている仮想直線L(=光軸)と交差する仮想直線Lと平行でも垂直でもない直線を、仮想直線Lを回転軸として回転させて得られる曲面(回転面)の一部である。
【0039】
要するに、
図6に示されるように、ストッパ面41は、径方向外側に行くに連れて受け面52から次第に離間するように傾斜している。言い換えれば、
図1に示されている仮想直線Lの方向(=光軸方向)を高さ方向としたとき、受け面52に対するストッパ面41の高さは、径方向外側に行くに連れて次第に高くなっている。
【0040】
ここで、ストッパ面41の態様をより詳しく説明するために2つの仮想円を定義する。
図7に示されるように、仮想直線L上の一点Pからの距離がR1であるストッパ面41上の複数の点を通る仮想円を第1仮想円C1とする。また、仮想直線L上の一点Pからの距離がR2(≠R1)であるストッパ面41上の複数の点を通る仮想円を第2仮想円C2とする。つまり、第1仮想円C1は、点Pを中心とする半径R1の円であり、第2仮想円C2は、点Pを中心とする半径R2の円である。尚、
図7では、ストッパ面41を明瞭にすべく、ストッパ面41にドットパターンを付してある。
【0041】
ストッパ面41は上記のような円錐面の一部である。したがって、
図1に示されている仮想直線Lの方向(=光軸方向)を高さ方向としたとき、
図7に示されている第1仮想円C1が通るストッパ面41上の各点の高さは同一であり、第2仮想円C2が通るストッパ面41上の各点の高さは同一である。一方、第1仮想円C1が通るストッパ面41上の各点の高さと、第2仮想円C2が通るストッパ面41上の各点の高さとは異なる。例えば、第1仮想円C1が通るストッパ面41上の点P1a,P1b,P1cの高さは互いに同一である。また、第2仮想円C2が通るストッパ面41上の点P2a,P2b,P2cの高さは互いに同一である。一方、ストッパ面41上の点P1a,P1b,P1cの高さと、ストッパ面41上の点P2a,P2b,P2cの高さとは異なる。
【0042】
さらに、
図7に示されている第2仮想円C2の半径R2は、第1仮想円C1の半径R1よりも大である(R2>R1)。よって、点P2a,P2b,P2cを含む第2仮想円C2上の各点は、点P1a,P1b,P1cを含む第1仮想円C1上の各点よりも径方向外側に位置している。この場合、点P2a,P2b,P2cを含む第2仮想円C2上の各点の高さは、点P1a,P1b,P1cを含む第1仮想円C1上の各点の高さよりも高い。つまり、第2仮想円C2が通るストッパ面41上の各点は、第1仮想円C1が通るストッパ面41上の各点よりも、高さ方向において受け面52(
図6)から離間している。
【0043】
ストッパ面41を上記のような円錐面としたことにより、ストッパ面41が受け面52と平行な平面である場合に比べ、ホルダ枠40が回転(チルト)したときの、受け面52に対するストッパ面41の接触面積が拡大する。言い換えれば、ホルダ枠40がケース50に対して如何なる方向に円運動した場合であっても、ストッパ面41と受け面52とは、点接触ではなく、線接触する。少なくとも、ストッパ面41と受け面52とが点接触する可能性が大幅に低減される。この結果、ストッパ面41と受け面52との接触状態が全方位(ホルダ枠40の全周)において均一又は略均一となり、ホルダ枠40の最大回転角度(最大傾斜角度)が全方位において同一又は実質的に同一となる。さらに、ストッパ面41と受け面52とが接触している状態におけるホルダ枠40の動作負荷が低減され、ホルダ枠40のスムーズな動作が確保される。また、落下時の衝撃等によってストッパ面41と受け面52とが接触した場合、両面に掛かる圧力が分散され、ホルダ枠40やケース50を含む部品の破損が防止又は抑制される。
【0044】
<凸部>
ホルダ枠40のストッパ面41を上記のような円錐面としたことにより、上記のような種々の有利な効果が得られる。一方、光学ユニット1の組立工程では、ホルダ枠40を安定した状態で作業台等に置けることが好ましい場合がある。そこで、
図8に示されるように、ホルダ枠40のストッパ面41と同一面側に2つ以上の凸部80が設けられている。本実施形態の凸部80は、径方向においてストッパ面41の内側に位置しており、高さ方向においてストッパ面41から突出しており、その先端面81は平坦である。よって、凸部80の平坦な先端面81を支持面として利用することにより、ホルダ枠40を安定した状態で作業台等に置くことができる。尚、
図8では、凸部80の先端面81を明瞭にすべく、先端面81にドットパターンを付してある。
【0045】
<フレキシブル配線基板>
図9に示されるように、フレキシブル配線基板20の長手方向一端は、光学モジュール10の基板13に接続されている。また、フレキシブル配線基板20の長手方向一部には、光学モジュール10に近接する方向(図中左側)と光学モジュール10から離間する方向(図中右側)とに交互に複数回折り返された折り曲げ部21が設けられている。本実施形態における折り曲げ部21には、光学モジュール10に近接する方向に折り返された2つの屈曲部21a,21bと、光学モジュール10から離間する方向に折り返された2つの屈曲部21c,21dと、が含まれている。
【0046】
なお、折り曲げ部21は、光学モジュール10の変位に対するフレキシブル配線基板20の応答性や追従性を向上させ、フレキシブル配線基板20の負荷を低減させる目的で設けられている。よって、折り曲げ部21の有無や態様は、上記目的を踏まえて適宜変更することができる。例えば、上記目的を達成するために必要十分な範囲内で、折り曲げ部21に含まれる屈曲部の向きや回数を変更することができる。また、駆動力が十分に強い場合には、折り曲げ部21を省略することもできる。
【0047】
図1,
図2に示されるように、ケース50には、折り曲げ部21を含むフレキシブル配線基板20の一部を収容する収容部55が設けられている。
図1や
図9から理解できるように、収容部55は、フレキシブル配線基板20の折り曲げ部21を取り囲むトンネル状に形成されている。
【0048】
図9に示されるように、収容部55は、高さ方向において互いに対向する天井面55aと床面55bとを備えている。天井面55aは、ケース50の本体部から延びるケース50の一部によって形成されている。一方、床面55bは、ケース50の底を塞いでいる板金(カバー56)によって形成されている。
【0049】
図9に示されるように、フレキシブル配線基板20は、収容部55の天井面55aに設けられている座面57に固定(接着)されている。座面57は、収容部55の出口近傍に設けられている。また、座面57は、当該座面57と床面55bとの間隔が光学モジュール10から離間するに連れて次第に拡大するように傾斜している。つまり、座面57は床面55bに対して傾斜しており、その座面57にぶら下がっているフレキシブル配線基板20の折り曲げ部21も床面55bに対して傾斜している。言い換えれば、折り曲げ部21は、床面55bから離間するように引き上げられている。特に、最も低い位置にある屈曲部21aが、光学モジュール10に接続されているフレキシブル配線基板20の一端(接続端部22)よりも高い位置に引き上げられている。この結果、屈曲部21aと床面55bとの間のクリアランスD1が、屈曲部21bと座面57との間のクリアランスD2と同等かそれ以上に拡大されている。つまり、本実施形態に係る光学ユニット1では、フレキシブル配線基板20の床面側への可動範囲と天井面側への可動範囲との均等化が図られている。また、屈曲部21dと天井面55aとの間のクリアランスD3は、座面57が傾斜していない状態に比べて拡大している。そのため、ホルダ枠40と共に光学モジュール10が動き、フレキシブル配線基板20の位置が変動したときに、屈曲部21aは床面55bと接触しにくくなっており、屈曲部21dは天井面55aに接触しにくくなっている。
【0050】
なお、屈曲部21dと近接する収容部55の天井面55aに貫通孔を設けることで、屈曲部21dと天井面55aとをより接触しにくくした実施形態も本発明の実施形態に含まれる。また、屈曲部21aと近接する収容部55の床面55bに貫通孔を設けることで、屈曲部21aと床面55bとをより接触しにくくした実施形態も本発明の実施形態に含まれる。さらに、天井面55aと床面55bの両方に上記のような貫通孔が設けられた実施形態も本発明の実施形態の1つである。
【0051】
図10に、本実施形態に係る光学ユニット1を備える携帯型情報端末(携帯電子機器)の一例を示す。図示されている携帯型情報端末100は、スマートフォンであって、カメラユニットとしての光学ユニット1を備えている。これまでの説明から理解できるように、
図10に示されている携帯型情報端末(スマートフォン)100では、動画像、静止画像を撮影する際に、手振れ等が適切に補正される。
【0052】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、光学モジュールは、ヨーイング方向又はピッチング方向のいずれかの方向にのみ回転可能に保持されていてもよい。また、光学モジュールは、ヨーイング方向,ピッチング方向及び第3の方向(例えば、ローリング方向)に回転可能に保持されていてもよい。
【0053】
本発明における光学モジュールはカメラモジュールに限られず、本発明における光学ユニットはカメラユニットに限られない。
【符号の説明】
【0054】
1…光学ユニット、10…光学モジュール、11…レンズ、12…ハウジング、13…基板、20…フレキシブル配線基板、21…折り曲げ部、21a,21b,21c,21d…屈曲部、22…接続端部、30…光学モジュール保持機構、40…可動部材(ホルダ枠)、41…底部外面(ストッパ面)、42…挿入溝、43a,43b…磁石装着溝、50…固定部材(ケース)、51…収容空間、52…底部内面(受け面)、53…挿入溝、54a,54b…コイル装着部、55…収容部、55a…天井面、55b…床面、56…カバー、57…座面、60…支持機構、61…ジンバル、62…支持部材、62a…ボール、63…ジンバル本体、63a…円形開口部、64a,64b,65a,65b…腕、70…駆動機構、71a,71b…巻線コイル、72a,72b…磁石、73a,73b…配線基板、80…凸部、81…先端面、携帯型情報端末…100、C1…第1仮想円、C2…第2仮想円、D1,D2,D3…クリアランス、L…仮想直線、L1…第1軸線、L2…第2軸線