(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047726
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】蒸し器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/16 20060101AFI20220317BHJP
A47J 27/04 20060101ALI20220317BHJP
A47J 27/05 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
A47J27/16 E
A47J27/04 B
A47J27/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153655
(22)【出願日】2020-09-14
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】592181440
【氏名又は名称】株式会社マルゼン
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(72)【発明者】
【氏名】石川 智行
(72)【発明者】
【氏名】水科 宏基
【テーマコード(参考)】
4B054
4B055
【Fターム(参考)】
4B054AA06
4B054AB03
4B054AC08
4B054BA01
4B055AA22
4B055BA29
4B055BA61
(57)【要約】
【課題】調理の作業効率を向上できるとともに、できばえの悪い調理品を無くすことができる蒸し器1を提供する
【解決手段】蒸し器1は、複数の被調理物9を蒸気で蒸す調理室5と、被調理物9を載せて調理室5に置かれるトレー7・8を備える。トレー7・8に、被調理物9の容器91の収まる被調理物セット穴7j・8j(
図2)が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被調理物(9)を蒸気で蒸す調理室(5)と、
前記被調理物(9)を載せて前記調理室(5)に置かれるトレー(7・8)と、
を備え、
前記トレー(7・8)に、被調理物(9)の容器(91)の収まる被調理物セット穴(7j・8j)が形成されていることを特徴とする蒸し器(1)。
【請求項2】
前記トレー(7・8)の前記被調理物セット穴(7j・8j)が、特定の被調理物(9)の容器(91)がピッタリと嵌まる形状とされているとともに、特定の被調理物が密に並ぶ該被調理物専用のトレーであることを特徴とする請求項1記載の蒸し器(1)。
【請求項3】
被調理物(9)を蒸気で蒸す調理室(5)と、
前記調理室(5)内に収まるとともに同室外に引き出し可能なドロワー(4)と、
を備え、
さらに、前記ドロワー(4)上に置かれ、前記被調理物(9)を載せる、手前奥方向に分割された、同方向にスライド可能な複数のトレー(7・8)を備えることを特徴とする蒸し器(1)。
【請求項4】
前記トレー(7・8)に、被調理物(9)の容器(91)の収まる被調理物セット穴(7j・8j)が形成されていることを特徴とする請求項3記載の蒸し器(1)。
【請求項5】
前記トレー(7・8)の下面に、摺動性の良い材料製の脚(8x)が配設されていることを特徴とする請求項3又は4記載の蒸し器(1)。
【請求項6】
前記複数のトレー(7・8)が前記ドロワー(4)上で奥手前に並んで置かれた場合、一方のトレー(8)上の被調理物セット穴(8j)と、他方のトレー(7)上の被調理物セット穴(7j)とが、互い違いとなって並列することを特徴とする請求項4記載の蒸し器(1)。
【請求項7】
前記トレー(7・8)が左右に立設された取っ手(7m・8m)を有し、複数のトレーの取っ手同士を重ねて上下に積み重ね可能であることを特徴とする請求項1~6いずれか1項記載の蒸し器(1)。
【請求項8】
前記トレー(7・8)が左右に立設された取っ手(7m・8m)を有し、複数のトレーの取っ手同士を重ねて上下に段積み可能であり、
段積みされたトレーの左右又は奥手前方向のズレ止めが設けられており、
前記脚(8x)が、ズレ止め用の部材としても利用されることを特徴とする請求項5記載の蒸し器(1)。
【請求項9】
各部を収容する本体(2)と、
該本体(2)内の上部及び中部に配設された、被調理物(9)を収容して蒸気で蒸す調理室(5)と、
該調理室(5)に蒸気を供給する蒸気発生器気(62)を収容する本体下部(6)と、を備える蒸し器(1)であって、
さらに、
前記本体(2)の天板(21)の下面に設けられている通風路空間(21c・21d)、
前記本体下部(6)に配置されたファン(12)、及び、
前記ファン(12)と前記通風路空間(21c・21d)とを繋ぐダクト(26)、
からなる天板温度上昇抑制手段を備えることを特徴とする蒸し器(1)。
【請求項10】
前記ファン(12)は、前記調理室(5)の下方に収まることを特徴とする請求項9記載の蒸し器(1)。
【請求項11】
各部を収容する本体(2)と、
該本体(2)内の上部及び中部に配設された、被調理物(9)を収容して蒸気で蒸す調理室(5)と、
該調理室(5)に蒸気を供給する蒸気発生器(62)と、
前記調理室(5)の温度を検知する温度センサ(59)と、
該センサからの温度信号を受けて各部を制御する制御部(63)と、
該制動部(63)に蒸し器の動作条件を指示する操作部(67)と、
を備え、
調理温度、調理時間、及び、保温時間を設定可能であり、
さらに、所定の保温時間に到達した場合に、調理人に知らせる報知手段を備えることを特徴とする蒸し器(1)。
【請求項12】
蒸気調理室(5)内に収まるとともに同室外に引き出し可能なドロワー(4)上に、手前奥方向に複数に分割されて置かれ、 被調理物(9)の容器(91)の収まる被調理物セット穴(8j)が形成されていることを特徴とするトレー(7・8)。
【請求項13】
前記トレー(7・8)の下面に、摺動性の良い材料製の脚(8x)が配設されていることを特徴とする請求項12記載のトレー(7・8)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶碗蒸しなどの蒸し料理を一度に大量に蒸すことができる、業務厨房用の蒸し器に関する。特には、蒸し器調理の作業効率を向上できる、あるいは、できばえの悪い調理品を無くすことができる、などの特長を有する蒸し器に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な蒸し料理である「茶碗蒸し」を例にとって説明する。昨今、和食レストランや回転寿司店のサイドメニューとして、「茶碗蒸し」が人気メニューとなっており、そのメニュー数(主要具材の種類など)も増えてきている。
【0003】
チェーン店など、大量の茶碗蒸しを提供する厨房における、現状の「茶碗蒸し」の調理作業工程は、次のようなものである。
(ア)まず、多数の容器(茶碗)を調理台の上に並べる。
(イ)容器の中にエビやギンナン等の様々な具材を投入する。
(ウ)容器の中に卵液を注ぐ。
(エ)蒸し器の加熱調理室から引き出したドロワーの上に、仕込み終えた容器を一個ずつ並べる。
(オ)ドロワーを蒸し器の調理室内に押し入れ、同室内に蒸気を供給して、加熱調理を開始する。
(カ)加熱調理完了後は、調理室内の温度は保温とする。
(キ)お客さんの注文に応じて、ドロワーを引き出し、一個ずつ容器を取り出して、お客さんに提供する。
【0004】
(1)現状の問題点1;「茶碗蒸し」の取り扱い
「茶碗蒸し」の仕込み時には、液体状の卵液を扱うので、中身は流動的である。また、蒸しあがった後も、茶碗蒸しは、非常に柔らかい。そのため、調理仕込み中や、調理室への投入・取り出し時、茶碗が倒れたりしないよう、また中身が型崩れしたりしないよう、調理人は、細心の注意を払って容器を取り扱わなければならない。ところが、仕込みから取り出し行程における容器やドロワーの扱い方によっては、容器が転倒したり、衝撃で凝固した卵液が型崩れし、茶碗蒸しの商品価値を損ねたりすることが頻繁に起きている。
【0005】
(2)現状の問題点2;本体天板の温度
ドロワー式・電気蒸し器の本体天板は、加熱調理室から発生する蒸気熱が輻射熱として、また、熱伝導の影響により、約60℃に上昇する。店舗形態においては、本体天板上部の平滑なスペースを、刺身や野菜等の仕込みに利用したいところである。しかしながら、本体天板が高温になるため、食材の傷みを懸念して、仕込みスペースとして利用できないのが現状である。よって、本体天板上部のスペースは、皿類や棚といった、熱影響を受けても問題ない備品類の置き場として利用されている。
【0006】
(3)現状の問題点3;「茶碗蒸し」の調理時間,保温時間,廃棄時間
一般的な120g の「茶碗蒸し」の調理では、立ち上げを開始し、約80℃に到達してからその温度帯で14分程度の蒸し加熱を行うことが望ましいとされている。しかし、加熱室に配置する容器の数量や食材の種類・状態によって、80℃に到達した時点の判定や、その温度帯で14分の加熱の時間管理は、調理人の感覚的な手法に委ねられている。
よって、多くの調理人は調理途中で卵液の固まり具合を菜箸等で突き刺して確認したり、また、確実な卵液の凝固を求めて14分以上加熱してしまい、すだち(卵液内の水分が水蒸気となりブツブツ穴となった状態)が発生し、茶碗蒸しの美観や食感を損ねたりしてしまうことがある。
【0007】
上記の問題(1)~(3)に関して、本発明者らの知る限りでは、有効な具体的解決方法を提案している文献は、見当たらない。下記の特許文献1は、蒸し器の調理室内の天井に水滴が付くのを防止することを課題としている。特許文献2は、蒸し器の棚皿を傾斜させたり、上下の棚皿の間隔を変更できる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-75292
【特許文献2】特開平10-286176
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、調理の作業効率を向上できる、あるいは、できばえの悪い調理品を無くすことができる、などの特長を有する蒸し器を提供することを目的とする。あるいは、天板の温度を下げて、天板の上面で多様な調理作業を行うことができる蒸し器を提供することを目的とする。あるいは、調理温度や調理時間などの条件を自動的に設定でき、安定した調理品質を確保できる蒸し器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この「課題を解決するための手段」、及び、「特許請求の範囲」においては、添付図各部の参照符号を括弧書きして示すが、これは単に参考のためであって、権利範囲を添付図のものに限定する意図はない。
【0011】
本発明の第一の蒸し器(1)は、 複数の被調理物(9)を蒸気で蒸す調理室(5)と、 前記被調理物(9)を載せて前記調理室(5)に置かれるトレー(7・8)と、を備え、 前記トレー(7・8)に、被調理物(9)の容器(91)の収まる被調理物セット穴(7j・8j)が形成されていることを特徴とする。
【0012】
トレーに被調理物セット穴(7j・8j)を設けたので、被調理物容器(91)を確実に保持することができ、トレーが移動時の衝動や振動を受けても、容器(91)が転倒したりすることがない。また、トレーの上の多数の容器の仕込み作業や、蒸し器への移動作業を、円滑かつ一度に行うことができる。また、調理提供時、被調理物の蒸し器からの取り出し時の、ドロワー引き出し時に発生する振動により容器が転倒したりする心配を、払拭できる。
【0013】
この被調理物セット穴(7j・8j)は、特定の被調理物(例えば茶碗蒸し)の容器がピッタリと嵌まる形状とし、かつ、トレーを、特定の被調理物が密に並ぶ、特定の被調理物専用のトレーとすることが好ましい。調理仕込み時、調理人は専用トレーの穴に容器を配置していくことで、容器の個数を仕込み作業の都度数えて、加熱室に収容できる容器の数を最大とするよう注意を払う必要が無くなる。そして、トレー上で仕込み終えた容器は、安定した状態で一度に調理室へ移動することができる。
【0014】
また、仕込み時に、手やスプーンなどが容器に触れても、容器が動かない安定した状態で、具材や卵液を容器内に投入していくことができる。すなわち、本発明のトレー・蒸し器は、被調理物の仕込み、及び、蒸し器への出し入れにおける作業効率を大幅に改善することができるとともに、調理品の品質向上に大いに寄与できる。
【0015】
本発明の第二の蒸し器(1)は、 被調理物(9)を蒸気で蒸す調理室(5)と、 前記調理室(5)内に収まるとともに同室外に引き出し可能なドロワー(4)と、を備え、
さらに、前記ドロワー(4)上に置かれ、前記被調理物(9)を載せる、手前奥方向に分割された、同方向にスライド可能な複数のトレー(7・8)を備えることを特徴とする。ここで、手前奥方向とは、ドロワーを引き出す方向・押し込む方向である。
【0016】
トレーを複数に分割することにより、一度に複数の被調理物を移動する場合のトレーの重量を軽くすることができる。また、奥のトレーを手前の位置で下ろしてから奥にスライドさせるなどにより、各トレーの重心を調理人から近い位置でトレーを取り扱うことができ、トレーの持ち上げ・移動や、ドロワー上への下ろし・持ち上げの作業性を改良できる。また、調理人の労力・負担を低減できる。
【0017】
さらに、トレーを奥手前方向に分割することにより、出来上がった被調理物(茶碗蒸しなど、保温状態)を、任意の個数取り出して、お客さんに提供しやすくなる。すなわち、手前側のトレー上の被調理物が全て提供済みとなったときに、手前側のトレー(8)(
図1参照)を調理室(5)外に取り出し、奥側のトレー(7)を手前側に引く。そうすれば、ドロワーの手前に来た被調理物を、ドロワーを少し引き出せば取り出せるので、すぐに楽に取り出しやすい。
【0018】
もしトレーを手前奥に分割していない場合は、ドロワーの奥にある被調理物を取り出す際に、ドロワーをいっぱいに引き出さなくてはならない。そして、調理人は、体を、引き出したドロワーの手前側に置いて、上体を奥側にかがめ、手を延ばして、体から遠い位置の被調理物を取り出すことになる。したがって、時間もかかるし、調理人の体にかかる負担も大きい。
【0019】
本発明においては、トレー(7・8)奥手前にスライドしやすくするため、トレーの下面(四隅と中央の5箇所など)に、摺動性の良い材料製(テフロン製等)の脚(8x)が配設されていることが好ましい。また、トレーの材質はコストを考慮し、板金一体仕様とすることが好ましい。
【0020】
本発明の第三の蒸し器(1)は、 被調理物(9)を蒸気で蒸す調理室(5)と、 前記調理室(5)内に収まるとともに同室外に引き出し可能なドロワー(4)と、 を備え、 さらに、前記ドロワー(4)上に置かれ、前記被調理物(9)を載せる、手前奥方向に分割された複数のトレー(7・8)を備えるとともに、 前記トレー(7・8)に、被調理物(9)の容器(91)の収まる被調理物セット穴(8j)が形成されていることを特徴とする。
本発明のトレー(7・8)は、 蒸気調理室(5)内に収まるとともに同室外に引き出し可能なドロワー(4)上に手前奥方向に複数に分割されて置かれ、 被調理物(9)の容器(91)の収まる被調理物セット穴(8j)が形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の第三の蒸し器は、第一の蒸し器の特徴と、第三の蒸し器の特徴を併せ持つものである。この場合、前記複数のトレー(7・8)が前記ドロワー(4)上で奥手前に並んで置かれた場合、一方のトレー(8)上の被調理物セット穴(8j)と、他方のトレー(7)上の被調理物セット穴(7j)とが、互い違い(千鳥模様状)となって並列することが好ましい。一方のトレー上の隣接する被調理物同士の隙間に、他方のトレー上の被調理物が割り込む関係となり、多数の被調理物を一層密にトレー上(調理室内)に配列できる。
【0022】
本発明の蒸し器におけるトレー(7・8)は、トレー左右に直立している取っ手(7m・8m)を有し、複数のトレーの取っ手同士を重ねて段積みできる仕様とすることが好ましい。省スペースで複数段分の仕込みが行える。そして、段積みしたトレーがずれないように、左右・奥手前方向のズレ止めを設けることが好ましい。
【0023】
本発明の第四の蒸し器(1)は、 各部を収容する本体(2)と、 該本体(2)内の上部及び中部に配設された、被調理物(9)を収容して蒸気で蒸す調理室(5)と、 該調理室(5)に蒸気を供給する蒸気発生器気(62)を収容する本体下部(6)と、を備え、 さらに、 前記本体(2)の天板(21)の下面に設けられている通風路空間(21c・21d)、 前記本体下部(6)に配置されたファン(12)、及び、 前記ファン(12)と前記通風路空間(21c・21d)とを繋ぐダクト(26)、からなる天板温度上昇抑制手段を備えることを特徴とする。
【0024】
すなわち、本発明の第四の蒸し器は、天板の下面と調理室の上の間(隙間)に空気を流す冷却層(断熱層)を設けることで、天板の温度上昇を抑える。天板(21)の冷却風は、本体下部あるいは底部から、調理室の床近くの空気を取入れ、上記ダクト(26)に空気を通し、天板下面に空気を流す。通風経路には、調理中の調理室からの輻射熱によるエアーの温度上昇を抑えるため、断熱材を貼る構造とすることが好ましい。
【0025】
本体下部あるいは底部に吸気位置を設けるのは、一般的にも厨房室内には幾つもの熱機器が稼働し、輻射熱や排気熱が放出される環境上、本体下部付近にあるエアーの温度が最も低い状態であり、天板の冷却効果を高めることができるためである。ここで、ファン(12)は、調理室(5)の下方に収まるように配置することが好ましい。そうすると、蒸し器の間口寸法が従来品より広がらず、コンパクトな蒸し器を提供できる。
【0026】
本発明の第四の蒸し器(1)においては、通風路空間(21c・21d)が、 前記ダクト(26)の接続された、比較的幅狭の前記天板21の手前部分に沿う手前空気通路(21c)と、
該手前空気通路の反ダクト側に接続され、奥方向かつ左右方向に広がって、天板奥縁から排気される中央奥通風路(21d)と、 からなることが好ましい。
【0027】
すなわち、天板(21)の温度上昇特性として、開閉操作を伴うドロワー(4)の手前上部付近(手前縁部分)が最も高くなる傾向であるので、天板の手前縁部分に低温の空気が高い流速で流れるようにすることが好ましい。これにより、温度が高くなり、調理人の手が触れることの多い天板手前縁部分を効果的に昇温抑制できる。
【0028】
本発明の第五の蒸し器(1)は、 各部を収容する本体(2)と、 該本体(2)内の上部及び中部に配設された、被調理物(9)を収容して蒸気で蒸す調理室(5)と、 該調理室(5)に蒸気を供給する蒸気発生器(62)と、 前記調理室(5)の温度を検知する温度センサ(59)と、 該センサからの温度信号を受けて各部を制御する制御部(63)と、 該制動部(63)に蒸し器の動作条件を指示する操作部(67)と、 を備え、
調理温度、調理時間、及び、保温時間を設定可能であり、 さらに、所定の保温時間に到達した場合に、調理人に知らせる報知手段を備えることを特徴とする。
【0029】
一般的な「茶碗蒸し」の調理では、約80℃に到達してからその温度帯で14 分程度の蒸し加熱が求められているが、冷凍食材や冷蔵卵液の入った「茶碗蒸し」が、容器の数が多いい場合や少ない場合によって、80℃への到達時間が変わる。また、食材の品質維持の時間管理においては、3時間の保温を経過した「茶碗蒸し」は廃棄処理することが望ましいとされている。
【0030】
本発明の第五の蒸し器(1)においては、温度センサーによる基板制御・ソフトを採用し、調理温度や調理時間,保温時間を設定できる仕様を採用した。廃棄時間については、例えば3時間の保温時間に到達した際、ブザーや警告灯(67b)などの報知手段で、作業者へ確実に知らせる。これにより、被調理物の状態に応じた適切な条件で調理を行うことができる。また、被調理物の味・触感・衛生状態が好適な状態で茶碗蒸しなどのメニューをお客さんに提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施の形態に係る蒸し器1の全体構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1の蒸し器1のトレー8の構成を示す図である。
図2(A)はトレー8全体の斜視図である。
図2(B)は、トレー8の上に置かれた茶碗蒸し(被調理物)9のセット状態を示す正面断面図である。
【
図3】
図1の蒸し器1のトレー8の構造を示す底面図である。
【
図4】茶碗蒸し9を配列セットしたトレー7・8を上下に積み重ねた状態の斜視図である。
【
図5】上下に重ねたトレー7・8の横方向のズレ止め構造を模式的に示す側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る蒸し器1の天板冷却構造を示す図であって、(A)は全体構成を模式的に示す正面図であり、(B)は天板21の通風路空間の構成を示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る蒸し器1の調理室温度の制御系を示す模式的なブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
1;蒸し器、2;本体、
21;天板、21b;上面、21c;手前空気通路(通風路空間)、
21d;開口、21f;中央奥通風路(通風路空間)、21x;排気口
4・4´;ドロワー、41;底板、43;側リブ、45;前板、49;取っ手
5・5´;調理室、51;仕切り、59・59´;温度センサ
6;本体下部、62・62´;蒸気発生器、63;制動部、64・64´;ヒーター、
67;操作部、67b;ブザーや警告灯、69;空気受け入れ室、69b;通気孔、
7・8;トレー、7b・8b;底板、7f・8f;リブ、7j・8j;被調理物セット穴、
7k・8k;蒸気通し孔、7m・8m;取っ手、8mh;段部、8mk;段壁、
7r・8r;上立片(立上げガイド)、7s・8s;ブラケット(内平片)
7x・7xs・8x;脚
9;被調理物(茶碗蒸し)、91;容器(茶碗)、91b;胴、91f;裾、91j;高台
93;蓋、93b;ツマミ、93j;外縁
12;ファン
【発明の実施の形態】
【0033】
以下、添付図を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。各図において矢印で示す各方向は、「上」・「下」は地球重力に沿う方向である。「手前」はドロワー4を引き出す方向であり、「奥」はドロワー4を蒸し器1内に押し込む方向である。「左」・「右」は、蒸し器1の手前側に立つ調理人から蒸し器1に向かって見た左右の方向である。
まず、本発明の実施の形態に係る蒸し器1の全体構成を、その模式的な斜視図である
図1を参照しつつ説明する。
【0034】
図1の蒸し器1は、直方体状のケーシングである本体2を有する業務厨房用のものである。同蒸し器1は、上下二段の調理室5、及び、その中に出し入れされるドロワー4・4´を有する。下のドロワー4´の下の本体下部6は、蒸気発生器や制御部、天板空冷用のファンなどが配置されている(
図6(A)を参照しつつ後述する)。
【0035】
蒸し器1の本体2の上面21bは、天板21の上面であって、長方形の平たい面である。天板21の内部(上面の下)には、通風路(
図6を参照しつつ後述)が設けられており、同上面21bの温度上昇を抑制している。天板21の左奥の隅には、蒸気排出口23が配置されている。この蒸気排出口23には、調理室5・5´からのダクト(図示されず)が繋がっており、同口23から、用済みの蒸気が厨房排気ダクト(図示されず)に排出される。
【0036】
調理室5・5´は、蒸し器本体2内の空間に上下二段に設けられている。なお、
図1においては、上の調理室5のみ明示されている。下の調理室5´は、下のドロワー4´が収まっている空間である。上下の調理室5・5´の間は、仕切り51で仕切られている。各調理室5・5´には、本体下部6内の蒸気発生器から、個別に、蒸気が供給される。
【0037】
ドロワー4は、被調理物9を支える底板41や、底板41の手前に接続された前板45などを有する。底板41の左右端部には、補強用の側リブ43が立設されている。前板45は、調理室5の手前を塞ぐものである。また、前板45の手前側の中央部には、ドロワー4を引き出すための取っ手49が取り付けられている。ドロワー4の左右には、図示は省略されているが、ドロワー4を奥手前方向にスライド自在に保持するレールが設けられている。レールは、従来製品と同様のものであってよい。
【0038】
ドロワー4の底板41の上には、本実施形態の特徴部分であるトレー7・8が搭載される。
図1では、奥側のトレー7は、ドロワー4に載った状態で描かれており、手前側のトレー8は、これからドロワー4に載せようとしている状態に描かれている。この例では、二台のトレー7・8は、外形寸法は互いに同じであるが、載せる被調理物9(以下、実施形態の説明では茶碗蒸し)の個数は、トレー7が17個、トレー8が16個である(詳細後述)。なお、これらのトレーは、特定の容器を用いる茶碗蒸しをドロワー4上(調理室内)に密に配置できるよう、特定被調理物の専用のものとなっている。
【0039】
トレーの構造について、
図2を参照しつつ説明する。
図2(A)は、
図1の蒸し器1のトレー8(手前の上に描かれているもの)の斜視図である。このトレー8は、長方形の底板8bと、その左右両端から立ち上がる持ち手8mを有する。底板8bの手前側及び奥側の端縁には、補強(変形防止)のためのリブ8fが形成されている。なお、この実施形態のトレーの材質は、コストを考慮し、板金一体仕様とした。ワイヤー仕様では溶接等の生産コストが発生する。
【0040】
トレー8の底板8bには、茶碗蒸し9の容器(茶碗91)の底近くの部分が収まる被調理物セット穴8jが形成されている。同穴8jは、奥手前方向に3列、左右方向に5個あるいは6個、配列されている。奥手前に隣り合う穴8jの列は、穴位置が穴ピッチの半分ずつズレた千鳥状になっている。これは、隣接する被調理物9の干渉を避けつつ、より多くの穴8jをトレー8上に配列するためである。なお、この実施形態では、茶碗91の形から、茶碗91の底付近をセット穴8jにセットしているが、茶碗91の形態によっては、その中部や上部をセットするようにしてもよい。
【0041】
図2(B)は、トレー8の上に置かれた茶碗蒸し9の容器のセット状態を示す正面断面図である。茶碗蒸し9の容器は、茶椀91と、その蓋93からなる。この茶椀91は、茶碗蒸し用の代表的な形状のものであり、略円筒状の胴91b、その下につながる下つぼまりの裾91f、その下のリング状の高台91jの各部を有する。
【0042】
トレー8のセット穴8jは、円形であって、その径は、茶椀91の高台91jの径より少し大きい。そして、セット状態で、穴8jの上縁は、茶椀91の裾91fの下部に接している。高台91jは、底板8bの下面から下に出ている。ただし、底板8bは、トレー脚8x(詳細は後述)により、ドロワーの底板から浮いており、高台91jの高さはトレー脚8xの厚さより低いので、高台91jの底はドロワー底板には接していない。
【0043】
容器9の蓋93は、その上部にツマミ93bが突出している。トレー8の取っ手8mの高さは、セット状態の蓋93のツマミ93bの高さより高い。なお、
図4を参照しつつ後述するが、トレー取っ手8mの上端の内側には、ブラケット8sが突出しており、ここに別のトレーを上積みできる(仕込み時の際など)。この上積み状態では、当然のことながら、上のトレーは被調理物9と干渉しない。蓋93の外縁93jは、茶碗91の胴91bよりも外側に張り出している(径大である)。隣接するセット穴8jの間隔は、同穴8jにセットされる隣り合う被調理物の上記の蓋外縁93jが接しない寸法となっている。
【0044】
この実施形態の蒸し器1においては、トレー8に被調理物セット穴8jを設けたので、被調理物容器91を確実に保持することができ、トレー8が、移動時の衝動や振動を受けても、容器91が転倒したりすることがない。また、トレー8の上の多数の容器91の仕込み作業や、蒸し器への移動作業を、円滑かつ一度に行うことができる。また、調理提供時、被調理物の蒸し器からの取り出し時においては、ドロワー4引き出し時に発生する振動により容器91が転倒したりする心配を、払拭できる。
【0045】
本実施形態では、トレー8を、特定の形状の茶碗蒸し9が密に並ぶ、特定の被調理物専用のトレーとしている。そのため、調理仕込み時に、調理人は専用トレー8の穴8jに容器91を配置していけばよい。これにより、従来のように、容器の個数を仕込み作業の都度数えて、加熱室に収容できる容器を最大にする注意を払う必要はない。そして、トレー上で仕込み終えた容器は、安定した状態で一度に調理室への移動が可能である。
【0046】
また、仕込み時に、手やスプーンなどが容器91に触れても、容器が動かない安定した状態で、具材や卵液を容器内に投入していくことができる。すなわち、本実施形態のトレー・蒸し器は、茶碗蒸し(被調理物)の仕込み、及び、蒸し器への出し入れにおける作業効率を大幅に改善することができるとともに、調理品の品質向上に大いに寄与できる。
【0047】
図3は、セット穴8jが5か所-6か所-5か所=計16か所のトレー8の底面図である。トレー底板8bには、セット穴8jの他に、小さい蒸気通し孔8kが多数開けられている。これらの蒸気通し孔8kにより、トレー上の調理室5内の全ての茶碗蒸し9の周りに、満遍なく蒸気が流通する。
【0048】
トレー底板8bの下面には、テフロン製のトレー脚8xが、四隅(トレー脚8xs)、及び中央に(トレー脚8xc)、下方に突出するように取り付けられている(
図2(B)・
図5も参照)。これらのトレー脚8xの存在により、ドロワー4の底板41の上面で、トレー8が滑りやすい状態となっている。また、
図5を参照しつつ後述するように、隅のトレー脚8xsは、トレー8を上下に積み重ねた状態で、トレーの奥手前方向ズレ止めの作用も果たす。
【0049】
図3の下部には、想像線で、もう一枚(他方)のトレー7も描かれている。この他方のトレー7は、セット穴7jが6か所-5か所-6か所、計17か所のタイプである。そして、奥手前に隣接するセット穴8jとセット穴7jとは、中心位置が、穴ピッチpの半分p/2だけズレている。これは、両セット穴8j・7jに配置される複数の容器9の蓋93の外縁93j(
図2(B)参照)同士が触れないようにして、できるだけトレーに搭載可能な容器9の数を増やすためである。なお、トレー7・8はセット穴7j・8jの配置状態を除いて、同様の形態であり、各部の符号の最後のアルファベット字が同じものは、実質同じ形状・作用の部位である(例えば底板7b・8bなど)。
【0050】
本実施形態においては、調理室外に引き出し可能なドロワー4の上に置くトレー7・8が、奥手前に二枚分割になっている。これは、一度に複数の容器を移動する場合の重量を考慮した結果である。また、調理完了した茶碗蒸し(保温状態)を、任意の個数取り出して、お客さんに提供しやすくするためである。
【0051】
すなわち、ドロワーの手前にある茶碗蒸しは、ドロワーを少し引き出せば、取り出せるので、すぐに、かつ楽に取り出せる。一方、ドロワー4の奥にある茶碗蒸しを取り出すには、ドロワーをいっぱいに引き出さなくてはならない。そして、調理人は、自分の体を、引き出したドロワーの手前側に置いて、上体を奥側にかがめ、手を延ばして茶碗蒸しを取り出すことになる。したがって、時間もかかるし、調理人の体にかかる負担も大きい。
【0052】
そこで、トレーを奥手前に二分割とし、手前側のトレー上の茶碗蒸しが全て提供済みとなったときに、手前側のトレー8(
図1参照)を取り出し、奥側のトレー7を手前側に引く。そして、空になったドロワーの手前部に、奥にあった二台目のトレーを手前側に置き、その上の茶碗蒸しを、お客さんの注文に応じて取り出し、提供する。なお、前述のとおり、トレー7・8の底のトレー脚7x・8xの存在により、ドロワー4の底板の上面で、トレー7・8は、適当な滑りやすい状態となっている。しかし、ドロワー4上に、二枚のトレー7・8を並べた状態では、トレーはドロワーの側リブ43(
図1)の内側にほぼピッタリと収まるので、トレーの滑りは規制される。
【0053】
次に、トレー7・8を、調理台の上などにおいて、上下に積み重ねる構成について説明する。
図4は、茶碗蒸し9を配列セットしたトレー7・8を上下に積み重ねた状態の斜視図である。
図5は、上下に重ねたトレー7・8の横方向のズレ止め構造を模式的に示す側面図である。この実施形態のトレー7・8は、左右に直立している取っ手7m・8mに重ねて段積みできる仕様であり、省スペースで複数段分の仕込みが行える。
【0054】
図4において、上下2枚に重ねられたトレー7・8上には、仕込まれた茶碗蒸し9が配列されている。トレー7・8の左右の取っ手7m・8mの上端部には、内側に少し突出する内平片(ブラケット)7s・8sと、上側に少し突出する上立片(立上げガイド)7r・8rとが取り付けられている(
図2(B)の右上部も参照)。内平片7s・8sの上面に、トレーの底板の左右端部が載る。そして、上立片7r・8rの内面に、トレーの取っ手7m・8mの外面が当たって、左右方向のズレ止めになる。
【0055】
積み重ねられたトレーの手前奥方向のズレ止めは、
図5に示すように、トレー脚(テフロン製)7xsと取っ手8mの上部の段壁8mkの当接により行う。すなわち、取っ手8mの手前奥の上部は、一段低い段部8mhが形成されている。この段部8mh に、上側のトレー7の脚7xsが入り込む。そして、同脚7xsの内側が段壁8mkに当たってトレー7の手前奥側のズレ止めになる。
【0056】
次に、
図6を参照しつつ、本発明の実施形態に係る蒸し器1の天板冷却構造について説明する。
図6(A)は全体構成を模式的に示す正面図であり、
図6(B)は天板21の通風路の構成を示す斜視図である。この蒸し器1は、天板温度上昇抑制手段を備え、同手段は、本体2の天板21の下面に設けられている通風路空間21c・21d、本体下部6に配置されたファン12、及び、同ファン12と前記通風路空間21c・21dとを繋ぐダクト26を具備する。この実施形態の蒸し器1では、天板21の下面と調理室の上の間(隙間)に空気を流す冷却層(断熱層)を設けることで、天板の温度上昇を抑える。
【0057】
ファン12は、蒸し器本体2の下部6の右端部に配設されている。なお、本体下部6には、蒸気発生器62や、電気制御部63も配置されている。この実施形態のファン12は、壁取り付け型の軸流ファンである。ファン12は、本体側板25の手前下部隅の内面に取り付けられている。
【0058】
ファン12の左には、空気受け入れ室69が設けられている。同室69の下面には、通気孔69bが開けられている。同通気孔69bから、本体底部の空気を吸気している。これは、一般的にも厨房室内には幾つもの熱機器が稼働し、輻射熱や排気熱が放出される環境上、本体下部付近にあるエアーの温度が最も低い状態であり、天板の冷却効果を高めるためである。
【0059】
ファン12の右側には、ダクト26が配置されている。ダクト26は、比較的薄く長い箱状であって、本体側壁25の手前側に沿って、上に延びている。ダクト26の左側面は断熱材25dが貼られており、調理室5側からの熱を遮蔽している。ダクト26の上端は、天板21下面の手前空気通路21cに繋がっている。ファン12が回転すると、蒸し器本体2の下の空気が、空気受け入れ室69に入り、ダクト26を上がっていく。
【0060】
手前空気通路21cは、上の調理室5・ドロワー4の上の、天板21の下の空間である。手前空気通路21cは、本体2の上前縁に沿って左側に延びており、左側に行くほど幅狭となっている。これは、冷たい空気を天板21の手前部分に集中させるためである。そして、手前空気通路21cは、その左端部(反ダクト側)の開口21dにおいて、中央奥通風路21fに接続されている。同中央奥通風路21fは、奥方向かつ左右方向に広がっており、その奥側は排気口21xにつながっている。これにより、天板21を冷却した風は、本体背面から排気される。
【0061】
上述のように手前空気通路21cが比較的幅狭となっているのは、天板21の温度上昇特性として、開閉操作を伴うドロワー4の手前上部付近(手前縁部分)が最も高くなる傾向であるので、天板21の手前縁部分に低温の空気が高い流速で流れるようにするためである。これにより、温度が高くなり、調理人の手が触れることの多い天板手前縁部分を効果的に昇温抑制できる。
【0062】
本実施形態においては、ファン12は、本体下部6において、上の調理室5(
図1参照)の下方に収まるように配置されている。すなわち、ファン12は、本体2から外に出っ張らない形態となっている。これにより、蒸し器の間口寸法が従来品よりも広がらず、コンパクトな蒸し器を提供できる。
【0063】
図7は、本発明の実施形態に係る蒸し器1の調理室温度制御系を示す模式的なブロック図である。この蒸し器1は、被調理物を収容して蒸気で蒸す二か所の調理室5・5´と、各調理室のそれぞれに蒸気を供給する二台の蒸気発生器62・62´を備えている。各調理室5・5´には、その室内の温度を検知する温度センサ59・59´が配置されている。さらに、蒸し器1は、上記温度センサ59・59´からの温度信号を受けて各部を制御する制御部63、及び、調理人が蒸し器1の設定温度・温度保持時間などを設定する操作部67を備えている。
【0064】
この調理室温度制御系を有する蒸し器1においては、調理温度や調理時間、保温時間を、操作部67において、タッチパネルなどで設定できる。なお、調理室5・5´の温度の制御は、各調理室5・5´に個別の蒸気管60・60´を経て蒸気を送る蒸気発生器62・62´の蒸気発生量をコントロールすることにより、行われる。より具体的には、各蒸気発生器62・62´には、個別にヒーター64・64´が内蔵されており、制動部8は、このヒーター64・64´をON・OFF制御して、各蒸気発生器62・62´の蒸気発生量を制御する。
【0065】
一般的な「茶碗蒸し」の調理では、茶碗蒸しを入れて昇温を開始した調理室5の温度が、約80℃に到達してから、その温度帯で14分程度の蒸し加熱が求められている。しかし、冷凍食材や冷蔵卵液の入った「茶碗蒸し」が、容器の数が多い場合や少ない場合によって、80℃への到達時間が変わる。また、食材の品質維持の時間管理においては、3時間の保温を経過した「茶碗蒸し」は廃棄処理することが望ましいとされている。
【0066】
本実施形態の蒸し器1においては、温度センサ59による基板制御・ソフトを採用し、調理温度や調理時間、保温時間を設定できる仕様を採用した。廃棄時間については、調理完了後に例えば3時間の保温時間に到達した際、ブザーや警告灯などの報知手段67b(操作部67などに設ける)で、作業者へ確実に知らせる。これにより、被調理物の状態に応じた適切な条件で調理を行うことができる。また、被調理物の味・触感・衛生状態が好適な状態で茶碗蒸しなどのメニューをお客さんに提供できる。