(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047746
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/40 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
A47C7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153693
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】横山 剛士
(72)【発明者】
【氏名】近藤 駿介
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084EC01
3B084EC06
(57)【要約】
【課題】複数のリブが形成された背シェルの前面にクッションを配置した背もたれを有する椅子の座り心地を簡素な構成で向上する。
【解決手段】椅子は、背シェル17の前面に背クッション18を配置した背もたれ4を有している。そして、背シェル17の前面に複数のリブ24,25を備えるとともに、背シェル17の前面と背クッション18との間に、隣り合うリブ24,25の間の開口26を塞ぐカバー部材30を介在させている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背シェルの前面にクッションを配置した背もたれを有する椅子であって、
前記背シェルの前面に複数のリブを備えるとともに、
前記背シェルの前面と前記クッションとの間に、隣り合う前記リブの間の開口を塞ぐカバー部材を介在させている、
椅子。
【請求項2】
前記カバー部材は、プラスチックシート、不織布シート又は厚紙で形成されている、
請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記クッションに接合されるとともに、前記背シェルの前面に設けた係合部に係合する被係合部を有している、
請求項1又は2に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背シェルの前面にクッションを配置した背もたれを有する椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背もたれを有する椅子において、背もたれの前面に表皮材で覆ったクッションを設ける構成は良く行われている(例えば特許文献1,2を参照)。
【0003】
特許文献1の椅子は、外装部品としての背アウターシェルと、背の剛性を保つためのリブを備えた背インナーシェルが別部品として備わっており、背インナーシェルの前面にクッションを配置している。一方、特許文献2の椅子は、背アウターシェル(背シェル)が強度メンバーの為、背アウターシェルの前面に多数のリブを備えるとともに、背アウターシェルの前面にクッションを配置している。
【0004】
しかしながら、特許文献1の椅子は、特許文献2のような背インナーシェルを備えない椅子と比べて、コスト面で劣る。一方、特許文献2の椅子は、使用者が、クッションを通してリブの存在を感じ、心地に悪影響を与える虞がある。もっとも、リブの存在を感じにくい程度に硬いクッションを用いたり、分厚いクッションを用いれば、上記の虞は解消できるものの、それと引き換えに心地が悪くなったり、コストが嵩んだり、分厚い背もたれになって外観を損なうなどの懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-84856号公報
【特許文献2】特開2014-90993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような現状を改善すべく成されたものであり、複数のリブが形成された背シェルの前面にクッションを配置した背もたれを有する椅子の座り心地を簡素な構成で向上することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、背シェルの前面にクッションを配置した背もたれを有する椅子であって、前記背シェルの前面に複数のリブを備えるとともに、前記背シェルの前面と前記クッションとの間に、隣り合う前記リブの間の開口を塞ぐカバー部材を介在させているものである。
【0008】
本発明の椅子によれば、背シェルの前面に形成される隣り合うリブの間の開口をカバー部材で塞ぐことで、使用者がリブの存在を感じにくくすることができるので、簡素な構成で座り心地を良くして使用感を向上できる。
【0009】
本発明の椅子において、前記カバー部材は、プラスチックシート、不織布シート又は厚紙で形成されているようにしてもよい。
【0010】
このような態様によれば、カバー部材を低コストかつ軽量に形成できるとともに、背もたれの外観を損なうことなく座り心地を向上できる。
【0011】
本発明の椅子において、前記カバー部材は、前記クッションに接合されるとともに、前記背シェルの前面に設けた係合部に係合する被係合部を有しているようにしてもよい。
【0012】
このような態様によれば、クッションとカバー部材とを例えば縫着又は接着にて接合して一体化するとともに、カバー部材の被係合部を背シェルの係合部に係合することで、背シェルへのクッション及びカバー部材の取付作業時に位置合わせが容易になって作業効率が向上するとともに、使用によるクッション及びカバー部材の位置ずれを防止して良好な座り心地を維持できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の椅子は、複数のリブが形成された背シェルの前面にクッションを配置した背もたれを有する椅子の座り心地を簡素な構成で向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態を示す図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図2】同実施形態を示す図で、(A)は背面図、(B)は背シェルを露出させて後ろから見た側面図である。
【
図3】背もたれ及び傾動フレームを示す分離斜視図である。
【
図7】(A)は
図5のVIIA-VIIA視断面図、(B)は
図5のVIIB-VIIB視断面図である。
【
図8】背シェルの下部と補助プレートとを分離して示す斜視図である。
【
図10】(A)は
図5のV-V視断面図、(B)は補助プレート取付け前の断面図である。
【
図11】(A)は
図5のXIA-XIA視断面図、(B)は
図5のXIB-XIB視断面図である。
【
図12】(A)は押さえ部材を取り外して示す背シェルの斜視図、(B)は
図5のXIIB-XIIB視断面図である。
【
図13】背シェルと傾動フレームとの接続状態を示す分離斜視図であり、互いの姿勢を変えて前から見た図である。
【
図14】背シェルと傾動フレームとを分離して斜め後ろから見た斜視図である。
【
図15】(A)は傾動フレームとバックカバーとの分離斜視図、(B)はバックカバーの斜視図、(C)は傾動フレームを前から見た部分斜視図である。
【
図16】(A)は
図5のXVIA-XVIA 視断面図、(B)は
図5のXVIB-XVIB視断面図である。
【
図17】ロック機構取付部を示す正面図であり、(A)は何も取り付けていない状態、(B)はロック機構を取り付けた状態、(C)はカバー体を取り付けた状態を示す。
【
図18】ロック機構取付部とカバー体とを分離して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用するが、この前後左右の文言は着座した人を基準にしている。正面視方向は着座した人と対峙した方向であり、従って、正面視での左右と着座した人から見た左右とは逆になる。
【0016】
(1).椅子の概略
まず、主として
図1~
図6を参照して椅子の概要を説明する。本実施形態は事務用等に多用されている回転椅子に適用しており、椅子は、ガスシリンダより成る脚支柱を有する脚装置1と、脚支柱の上端に固定したベース2と、ベース2の上に配置した座3と、着座した人がもたれ掛かり得る背もたれ4とを備えている。
【0017】
例えば
図5に明示するように、ベース2には、左右のアーム5aを備えた傾動フレーム5が後傾動自在に連結されている。また、
図1(B)に示すように、ベース2には、座3が固定された座受け体6が後退動自在に連結されており、座受け体6は、傾動フレーム5のアーム5aに相対回動可能に連結されている。従って、座3は、背もたれ4と連動して後退しつつ少し後傾する。
【0018】
なお、座3は、樹脂製の座インナーシェルの上面にクッションを配置してこれを表皮材で覆った構造になっており、座インナーシェルが、直接に又は座アウターシェルを介して座受け体6に固定されている。
【0019】
また、
図1~
図3から理解できるように、傾動フレーム5は、弓形に湾曲して上向きに延びる左右の背支柱部7を備えており、背支柱部7と基部8とは、正面視(及び背面視)で上向きに反るように滑らかに連続している。また、傾動フレーム5は、内向き稜線9と外向き稜線10と後ろ向き稜線11とを有して、大まかには三角形の断面形状を成している。従って、傾動フレーム5は、
図3に現れている前面12と、
図2に現れている傾斜状外周面14及び傾斜状内周面13とを有しており、傾斜状外周面14及び傾斜状内周面13とは山形に交叉して後ろ向き稜線11に至っている。
【0020】
また、傾動フレーム5のうち基部8と背支柱部7とから成る部分は、左右両端に向かって細くなっている。このため、傾斜状外周面14及び傾斜状内周面13は、左右中間部が最も幅広で、左右両端に向かって幅が狭くなっている。左右の背支柱部7の外面には、バックカバー16が着脱可能に取り付けられている。図示は省略するが、背支柱部7の外面には、バックカバー16を取り外して、オプション品としての肘掛けを取り付けることが可能である。傾動フレーム5は、合成樹脂製を採用しているが、アルミダイキャスト品とすることも可能である。
【0021】
(2).背もたれの構成
図3~
図6等に示すように、背もたれ4は、背シェル17と、背シェル17の前面に配置した背クッション18と、背シェル17及び背クッション18を覆う下向き開口袋状の表皮材19とを備えている。本実施形態では、背もたれ4は左右対称に設けられている。すなわち、背シェル17、背クッション18及び表皮材19は、それぞれ左右対称に設けられている。
【0022】
背シェル17は、合成樹脂製であり、起立配置される板状の背面メンバー20と、背面メンバー20の左右端部から前向きに延出した左右のサイドメンバー21と、左右のサイドメンバー21の上端同士又は下端同士を連結する左右横長のアッパーメンバー22及びロアメンバー23とを有する。ロアメンバー23は、傾動フレーム5の基部8及び背支柱部7の前面に重なるようにして傾動フレーム5と連結可能に構成されている。
【0023】
図4等に示すように、背シェル17の前面には、背面メンバー20の前面部に前向きに立設された複数の縦リブ24と横リブ25とが格子状に設けられて、背シェル17の強度を確保しながら軽量化が図られている。これにより、背シェル17の前面には、隣り合う縦リブ24の間及び隣り合う横リブ25の間に多数の開口26が形成されている。
【0024】
また、背シェル17には、着座者の腰部の支持高さを調節するためのランバーサポート装置101が取り付けられている。ランバーサポート装置101は、背クッション18に後ろから当たるランバーサポート体102と、ランバーサポート体102を上下動操作するための操作具としての操作レバー103と、操作レバー103を高さ調節自在に保持するロック機構104とを備えている。ランバーサポート体102及びロック機構104は背シェル17の前面側(背シェル17の内部)に設けられる一方、操作レバー103は背シェル17を貫通して背シェル17の背面側に設けられる。なお、ランバーサポート体102、操作レバー103及びロック機構104は合成樹脂製である。
【0025】
図3及び
図6等に示すように、背シェル17の前面には、縦リブ24及び横リブ25の前側に背クッション18が配設されている。縦リブ24及び横リブ25の先端部は、サイドメンバー21、アッパーメンバー22及びロアメンバー23の前面から背面側へ段落ちした位置に設けられており、背クッション18は、サイドメンバー21、アッパーメンバー22及びロアメンバー23で囲まれた空間に嵌り込んでいる。背クッション18は例えばポリウレタン製のスラブウレタンである。
【0026】
背クッション18の背面の上半部には、縦リブ24及び横リブ25の間の開口26を塞ぐカバー部材30が取り付けられている。カバー部材30は、例えばポリプロピレンシートなどのプラスチックシート製であり、背クッション18の背面の左右縁部位及び上縁部位に沿って縫着されることで、背クッション18に固定されている。
【0027】
カバー部材30の上縁部位には、左右方向に並ぶ複数の係合穴(被係合部)30aが設けられている。そして、これらの係合穴30aが背シェル17の前面上部に突設した複数の係合突起(係合部)31に掛け止めされることで、背クッション18の上部が背シェル17に位置ずれすることなく取り付けられる。なお、互いに係合するカバー部材30の係合穴30aと背シェル17の係合突起31とに関し、凹凸関係は逆であってもよい。例えば、背シェル17に凹状又は穴状の係合部を設け、カバー部材30に上記係合部に係合する凸状又は爪状の被係合部を設けてもよい。
【0028】
隣り合う縦リブ24及び横リブ25の間の開口26をカバー部材30で塞ぐことで、使用者が縦リブ24及び横リブ25の存在を感じにくくすることができるので、背シェル17の前面と背クッション18との間にカバー部材30を介在させるという簡素な構成で座り心地を良くして使用感を向上できる。また、背クッション18に密度が低いスラブウレタン等を採用しても、縦リブ24及び横リブ25による不快感を感じにくくすることができるため、コストを抑制するメリットもある。
【0029】
また、カバー部材30は、座3に着座した使用者が背もたれ4に凭れかかったときに、縦リブ24及び横リブ25によって背クッション18の背面に加わる力を分散させる。したがって、リブ形状に沿った背クッション18の背面への力の集中を防止でき、背クッション18の劣化を低減できる。そして、カバー部材30は、リブ24,25のリブ形状が背クッション18の背面に転写されるのを防止できるとともに、経年劣化などで背クッション18の弾性力が小さくなっても、背クッション18越しにリブ24,25のリブ形状が表張地材19a(表皮材19)に浮き出ることを防止できるので、背もたれ4の見栄えを維持できる。
【0030】
このように、カバー部材30に、背クッション18の位置ずれを防止する機能と、隣り合う縦リブ24及び横リブ25の間の開口26を塞ぐ機能とを設けることによって、部材点数を増やすことなく、コスト上昇も抑制できる。
【0031】
また、背クッション18の背面の下縁部位には、プラスチックシートからなる左右横長の下縁部材32が縫着等によって取り付けられている。下縁部材32には左右方向に並ぶ複数の係合穴32aが設けられており、これらの係合穴32aが背シェル17の前面下部に突設した複数の係合突起33に掛け止めされることで、背クッション18の下部が背シェル17に位置ずれすることなく取り付けられる。
【0032】
なお、本実施形態では、下縁部材32は背クッション18の下縁部位に沿って左右横長の帯状に設けられているが、このような構成に対して下縁部材32の上縁部を上向きに延伸して、下縁部材32が背シェル17下部において縦リブ24及び横リブ25の間の開口26を塞ぐようにしてもよい。この場合、下縁部材32がランバーサポート体102と重なり合ってもよい。なお、ランバーサポート装置101はオプション品であり、背もたれ4にランバーサポート装置101を設けない場合には、
図17(C)に示すように、背シェル17の前面に設けたロック機構104を収容する凹部(ロック機構取付部46)はカバー体111にて塞がれる。
【0033】
図5及び
図7等に示すように、背面メンバー20の背面で構成される背シェル17の背面部27は、左右縁部位27aが背シェル17の側面部28(サイドメンバー21の左右外側面)の後端部位28aに連続している。
図7に示すように、背シェル17において、背面部27の左右縁部位27aは、側面部28の後端部位28aが後ろ向きに突出するように、前向きに凹んでいる。
【0034】
背面部27の上縁部位27bは、アッパーメンバー22の上面にて構成される背シェル17の上面部29の後端部位29aに連続している。
図6及び
図8に示すように、アッパーメンバー22は背面メンバー20の上部よりも後ろ側に突設している。すなわち、背面部27の上縁部位27bは、上面部29の後端部位29aが後ろ向きに突出するように、前向きに凹んでいる。
【0035】
背シェル17において、上面部29の左右端は側面部28の上端に連続しており、そして、上面部29の後端部位29aの左右端は、側面部28の後端部位28aの上端に連続している。これにより、背シェル17の背面には、左右の側面部28の後端部位28a及び上面部29の後端部位29aが連なった下向き開口の略コ字形の稜部が設けられている。
【0036】
背面部27は、左右中央部位27cが側面視で側面部28の後端部位28aよりも後方に位置するとともに、左右縁部位27aから左右中央部位27cに向かって緩やかに湾曲している。これにより、背面部27に平面視で後ろ向き凸状の丸みをもたせている。
【0037】
図6~
図9に示すように、表皮材19は袋状に形成されており、背シェル17と背クッション18は、袋状の表皮材19で覆われている。表皮材19は、表張地材19aと裏張地材19bとで構成され、表張地材19aと裏張地材19bの左右縁部位同士及び上縁部位同士が縫合されることで袋状に形成されている。表張地材19aと裏張地材19bとの縫い合わせ部19cは、背シェル17の側面部28及び上面部29に沿うように設けられている。
【0038】
表張地材19aは、布材19dと、布材19dの裏面に積層された補助クッション19eとで構成されている。補助クッション19eは、例えば厚みが2~3mm程度の薄いウレタンシートからなり、布材19dの裏面に縫合等によって積層されている。
【0039】
裏張地材19bは、例えば布材で形成される。裏張地材19bには、ランバーサポート装置101の操作レバー103のレバー軸103aを上下方向に案内する上下縦長筒状のレバーガイド105が挿通される穴が設けられている。レバーガイド105は、裏張地材19bの穴の縁部(輪郭部)を隠すようにして、当該穴の周囲部位を背面部27に押さえつける。
【0040】
図6等に示すように、表皮材19には、表張地材19a、裏張地材19bそれぞれの下縁部位に、表張地縁部材34、裏張地縁部材35が縫着等にて取り付けられている。表張地縁部材34は、背シェル17のロアメンバー23の裏面に突設された係止突起36に掛け止めされている。裏張地縁部材35は、背シェル17の背面側下部に、ロアメンバー23に被さるようにして取り付く補助プレート41に突設された係止突起42に掛け止めされている。
【0041】
図5及び
図8等に示すように、補助プレート41は、合成樹脂製であり、背面視で下向き凸状に湾曲するとともに、平面視で後向き凸状に湾曲した左右横長板状に設けられており、背シェル17の背面部27の下部に段落ち状に設けられた補助プレート保持部51に取り付けられている。背シェル17の背面部27の下部には、補助プレート保持部51の左右外側に、左右方向に延びる左右一対の補助プレート支軸52が設けられている。一方、補助プレート41の左右端部には、補助プレート支軸52に背面側から弾性に抗して嵌合する係合爪部43が形成されている。したがって、補助プレート41は、補助プレート支軸52の軸心回りに回動可能に設けられている。
【0042】
また、背シェル17の補助プレート保持部51の左右中央部位に左右一対の係合穴53が設けられている。一方、補助プレート41の左右中央部位には、左右の係合穴53に対応する左右一対の係止爪部44が設けられている。
図10に示すように、係止爪部44は、側面視で略V字形の形態を有し、V字状の2辺のうち一辺が補助プレート保持部51に固着される一方、他辺が自由端となって弾性変形可能になっている。
図10(A)に示すように、係止爪部44を背シェル17の係合穴53に背面側から嵌め込むことで、係止爪部44の自由端の左右縁部に設けた係止部44aが、係合穴53に設けた左右の係合部53aに係合して、補助プレート41が背シェル17に保持される。
【0043】
さて、背シェル17への表皮材19の取付け時には、袋状の表皮材19を背シェル17の上部から被せ、表張地材19aの下部をロアメンバー23の下周縁部に巻き回すようにして表張地縁部材34を係止突起36に掛け止めする。また、補助プレート41の左右の係合爪部43を背シェル17の補助プレート支軸52に連結し、
図10(B)に示すように、裏張地材19bの下部を補助プレート41の下周縁部に巻き回すようにして裏張地縁部材35を係止突起42に掛け止めする。その後、補助プレート41を補助プレート保持部51に向けて回動させて係合爪部43を係合穴53に嵌入して、補助プレート41を補助プレート保持部51に固定する(
図10(A)参照)。これにより、表皮材19は背シェル17にピンと張った状態に保持される。
【0044】
図7に示すように、背シェル17の背面部27の左右縁部位27aは、側面部28の後端部位28aに連続するとともに、前向きに凹んでいることから、側面部28の後端部位28aが後ろ向きに突出した形状になっている。これにより、裏張地材19bは、背面部27の前向き凹状の左右縁部位27aには接触しないので、裏張地材19bにおいて背シェル17の側面部28と背面部27との境界を覆う部分に明確な角が出やすくなっている。
【0045】
また、背シェル17において、上面部29の後端部位29aが後ろ向きに突出するように背面部27の上縁部位27bが前向きに凹んでいることから、裏張地材19bにおいて背シェル17の上面部29と背面部27との境界を覆う部分にも、裏張地材19bの角が出やすくなっている。さらに、本実施形態の椅子では、裏張地材19bを背面部27の上縁部位27bに押さえ付ける押さえ部材37を備えることで、上面部29の後端部位29aに沿った裏張地材19bの角を強調するようにしている。
【0046】
図1、
図2、
図6、
図11及び
図12等に示すように、に示すように、背もたれ4の背面側上部の左右中央部位には、裏張地材19b(表皮材19)を背シェル17の背面部27の上縁部位27bに押さえ付ける押さえ部材37が設けられている。押さえ部材37は左右横長で側断面視で略L字形の形態を有し、後縁部に設けた手掛け部37aが下向きに突出した姿勢で背面部27の上縁部位27bに取り付けられる。
【0047】
図11及び
図12に示すように、押さえ部材37は、背シェル17の背面部27の上縁部位27bの左右中央部位に上向きに段落ちして形成されたオプション取付部61に取り付けられる。オプション取付部61は、左右方向に並んで前後に開口した3つの係合穴62と、係合穴62の下方で後向きに突設された表皮材押え部63と、隣り合う係合穴62の間及び係合穴62の左右外側に設けられて上下方向に開口した4つのねじ挿通孔64を有している。背シェル17のアッパーメンバー22には、ねじ挿通孔64の上方に設けたナット保持部65内に、ナット66が配設されている。
【0048】
押さえ部材37の上部には、オプション取付部61の係合穴62に係合する3つの係合爪38が前向きに突設され、押さえ部材37の左右縁部位には左右のねじ挿通孔39が上下方向に開口している。
【0049】
押さえ部材37は、下方からねじ挿通孔39、ねじ挿通孔64に挿通してナット66にねじ込まれる左右のねじ40にて、裏張地材19bを挟み込んでオプション取付部61に固着される。裏張地材19bには、オプション取付部61の4つのねじ挿通孔64に対応する箇所と、押さえ部材37の3つの係合爪38に対応する箇所とに穴を形成されている。
【0050】
押さえ部材37の取付け時には、係合爪38を裏張地材19bの穴を介してオプション取付部61の係合穴62に係合させるとともに、ねじ挿通孔39をオプション取付部61のねじ挿通孔64に位置合わせするように、押さえ部材37をオプション取付部61に裏張地材19bを介在させつつ押し付ける。そして、ねじ40をナット66にねじ込んで、押さえ部材37をオプション取付部61に固着する。
【0051】
これにより、裏張地材19bの上部は、上縁部位27bに設けたオプション取付部61に押さえ部材37の前縁部位37b及び上面部位37cによって押し付けられるので、背シェル17の上面部29の後端部位29aを覆う部分の裏張地材19bの角を明確にして強調することができる。なお、背面部27の上縁部位27bにおいて、オプション取付部61から離れた左右縁部位では、
図11(B)に示すように、裏張地材19bが上縁部位27bから少し浮き上がった状態になるが、上縁部位27bは前向きに凹んでいるので、上面部29の後端部位29aを覆う裏張地材19bの部分に明確な角がでる。
【0052】
また、押さえ部材37を備えない場合であっても、背シェル17において背面部27の上縁部位27bは上面部29の後端部位29aが後ろ向きに突出するように前向きに凹んでいることから、裏張地材19bが上縁部位27bに接触せず、背シェル17の上面部29の後端部位29aに沿って裏張地材19bの角が出やすくなっている。
【0053】
なお、本実施形態では、押さえ部材37は、下向きに延出して人が手を引っ掛けることが可能な手掛け部37aを備えたものであるが、例えば、ハンガーやヘッドレスト等のオプション品をオプション取付部61に取り付けることも可能である。そして、当該オプション品にて裏張地材19bを背シェル17の背面部27の上縁部位27bに押し付けて、上面部29の後端部位29aに沿って裏張地材19bの角を明確かつ強調して出すことができる。
【0054】
(3).背シェルと傾動フレームとの連結構造
次に、背シェル17と傾動フレーム5との連結構造を説明する。図面は、主として
図13~
図16を参照する。
【0055】
例えば
図13に示すように、傾動フレーム5における基部8の前面12には、前向きに開口したメイン凹部75が形成されており、メイン凹部75の内部に、縦横に延びる多数の補強リブ76を形成している。また、基部8の左右中間部(メイン凹部75の左右中間部)には、後傾動自在な傾動レーム5を任意の後傾角度で固定するための背角度固定用ガスシリンダ33a(
図1(B)及び
図2参照)の後端部を取り付けるためのセンター凹部77が形成されている。センター凹部77は、リブで囲われた状態になっている。
【0056】
同じく
図13に示すように、背シェル17のロアメンバー23に、左右一対の位置決め突起84を後ろ向きに突設している一方、傾動フレーム5の基部8には、位置決め突起84が手前から嵌入する位置決め穴78(
図16(A)も参照)を形成している。位置決め穴78はリブで囲われた構造になっている。位置決め突起84はかなり大きな突出寸法であり、これが殆どクリアランスのない状態で位置決め穴78に嵌合していることにより、背シェル17は、後ろ向きの荷重をしっかりと支える状態で傾動フレーム5に取り付けられる。
【0057】
更に、傾動フレーム5における背支柱部7の上端部に、手前と上方とに開口したサイド凹部79を形成している一方、背シェル17におけるロアメンバー23の左右上端部に、サイド凹部79にきっちり嵌合するサイド突起80を形成して、サイド突起80とサイド凹部79とが、ボルト88及びナット89で締結されている。位置決め突起84は、背支柱部7の軸線方向O3(
図1(B)参照)と略同じ方向に傾斜している。
【0058】
サイド凹部79及びサイド突起80は切頭角錐状の形態を成しており、サイド突起80に、ナット89が回転不能に保持される横向きのポケット穴81を形成するとともにポケット穴81に連通するボルト挿通穴82を形成している一方、サイド凹部79の底板には、ボルト挿通穴85が空いている。
【0059】
図14から理解できるように、傾動フレーム5における背支柱部7のうちサイド凹部79の下方部は後ろ向きに開口したバック凹部83になっており、ボルト88は、バック凹部83に連続した補助凹部83aからサイド凹部79の底板に挿通されている。
【0060】
背シェル17は、位置決め突起84と位置決め穴78との嵌まり合いによって位置決めされているため、左右2本のボルト88のみによる締結であっても、傾動フレーム5に対して強固に固定されている。また、サイド突起80とサイド凹部79とは切頭三角錐状になっているため、ボルト88を締め込むと、サイド突起80がサイド凹部79に対してしっかりと密着する。その結果、背シェル17は、2本のボルト88によってガタ付きがない状態で傾動フレーム5に強固に固定される。
【0061】
図16に示すように、背シェル17と傾動フレーム5とを連結した状態で、背シェル17の背面部27(背面メンバー20)は傾動フレーム5の傾斜状内周面13の上方に配置される。
【0062】
図8及び
図9に示すように、背シェル17の背面下部には、背面部27の下部に設けた補助プレート保持部51の下縁部から前向きに延びてロアメンバー23の上縁部に繋がる底面部71が設けられている。底面部71は左右方向に延びて設けられており、左右中央部が下向き凸状になるように湾曲している。
【0063】
底面部71には、下向きに突出した4つの後傾防止突起72が設けられている。後傾防止突起72は、係合穴53よりも左右外側で、平面視で位置決め突起84を挟むように、左右2つずつ設けられている。後傾防止突起72は、傾動フレーム5の傾斜状内周面13に対向配置される傾斜面部73を備えている。
【0064】
図16(B)に示すように、背シェル17と傾動フレーム5とを連結した状態で、背シェル17に設けた後傾防止突起72の傾斜面部73が傾動フレーム5の傾斜状内周面13に対向配置されることで、傾動フレーム5に対する背シェル17の後傾が抑制され、背シェル17に対する後ろ向きの荷重をしっかりと支えるように構成されている。なお、
図2及び
図16等に示すように、背もたれ4を背面側から見て、後傾防止突起72及び傾動フレーム5の内向き稜線9は、裏張地材19bで覆われた補助プレート41で隠れるので、見栄えが良い。
【0065】
上述のように、背シェル17は、位置決め突起84と位置決め穴78との嵌まり合いによって位置決めされる。そして、
図16(A)に示すように、位置決め突起84の上面と、該上面と対向する位置決め穴78の天面とで、傾動フレーム5に対する背シェル17の前傾が抑制されるとともに、位置決め突起84の下面と、該下面と対向する位置決め穴78の底面とで、傾動フレーム5に対する背シェル17の後傾が抑制されている。その上で、
図16(B)に示すように、傾動フレーム5の傾斜状内周面13に対向配置される後傾防止突起72によって、さらに強固に背シェル17の後傾を抑制している。
【0066】
このように、傾動フレーム5を、背シェル17に設けた上下の突部(位置決め突起84と後傾防止突起72)で上下に挟み込んだ構成にすることによって、傾動フレーム5に対する背シェル17の後傾が的確に抑制されている。これにより、例えば着座者が背もたれ4に凭れかかることで、背もたれ4及び傾動フレーム5が後傾するとともに背もたれ4に後ろ向きの負荷がかかったときの傾動フレーム5と背シェル17との連結強度を向上でき、背もたれ4の耐久性を向上できる。
【0067】
(4).バックカバーの取り付け構造
傾動フレーム5には、前向きに開口したサイド凹部79と後ろ向きに開口したバック凹部83とが形成されているため、傾動フレーム5の基部8と背支柱部7とを全体として見ると、前向きに開口したサイド凹部79とメイン凹部75との間に、後ろ向きに開口したバック凹部83が存在している。
【0068】
図15(A)から理解できるように、バック凹部83は、概ね四角形であって底部に向けて断面積が縮小するテーパ形状になっており、開口縁には若干の幅の段部97が形成されている。段部97は、バック凹部83の下方まで広がっている。
【0069】
バック凹部83に取り付くバックカバー16は、傾動フレーム5の段部97に嵌合するようになっており、上向きの第1係合爪90と、背支柱部7のバック凹部83に入り込む一対の第2係合爪91と、バック凹部83よりも下方において前向きに突出した2本の第3係合爪92とにより、傾動フレーム5に取り付けられている。
【0070】
傾動フレーム5の背支柱部7の上端部には、第1係合爪90が嵌まり込んで係合する一対の第1係合穴93が形成されて、背支柱部7のうちバック凹部83の内部には、第2係合爪91が弾性変形してから係合する第2係合穴94が形成されて、バック凹部83よりも下方の部位には、第3係合爪92が弾性変形してから係合する一対の第3係合穴95が形成されている。第3係合穴95は、段部97に形成されている。
【0071】
第1係合穴93は後ろ向きのみに開口した袋状になっており、第1係合爪90は、上向きにスライドさせることによって第1係合穴93に係合する。従って、バックカバー16の上端は、上向きずれ不能及び後ろ向き起こし不能に保持される。他方、第2係合穴94及び第3係合穴95は前後に開口している。一対の第2係合爪91は、鉤部の姿勢が相違しており、弾性変形して倒れる方向が相違している。従って、抜け防止効果が高い。一対の第3係合爪92の鉤部は同じ向きになっている。
【0072】
また、第3係合爪92の下方に、第3係合穴95に嵌入する補助突起96を前向きに突設している。従って、バックカバー16は、第1係合爪90によって上向き移動不能に保持された状態で、補助突起96によって下向き移動不能に保持されている。従って、バックカバー16は、ガタ付きのない状態にしっかりと取り付けられる。また、バックカバー16は傾動フレーム5の段部97に嵌まっていて、バックカバー16の表面と傾動フレーム5の傾斜状外周面14とは同一面を成す状態になっているため、美観が優れていると共に、引き起こし難くなっている。
【0073】
なお、詳細な説明は省略するが、バック凹部83には、バックカバー16に替えて、肘掛け部材を取り付けることも可能である。本実施形態では、肘掛け部材を取り付けるためのバック凹部83を利用して、背シェル17を傾動フレーム5にボルト88で締結している。すなわち、肘掛け15を取り付けるためのバック凹部83を、背シェル17を固定するためのボルト88の配置空間として利用している。従って、ボルト88の頭が露出することはなくて、美観に優れている。
【0074】
(5).ロック機構取付部へのカバー体の取り付け構造
図4及び
図17(B)等に示すように、背シェル17の前面の左右中央下寄り部位には、ランバーサポート装置101のロック機構104を取り付け可能なロック機構取付部46が設けられている。背もたれ4は、ランバーサポート装置101を設けた仕様と、設けない仕様とに選択可能であり、ランバーサポート装置101を設けない仕様では、ロック機構取付部46はカバー体111にて塞がれる。本実施形態のカバー体111は、本発明のカバー部材の一態様である。
【0075】
ロック機構取付部46は、背面メンバー20の前面部に前向きに立設された複数のリブにて構成されており、正面視略縦長長方形の枠状リブ47と、枠状リブ47内に段落ちして設けられた縦横に延びる複数の段落ちリブ48とを有している。枠状リブ47は、周囲の縦リブ24及び横リブ25と概ね同じ高さ寸法に設けられ、枠状リブ47の先端部は、周囲の縦リブ24及び横リブ25の先端部と面一に連なっている。
【0076】
背もたれ4にランバーサポート装置101を装着した仕様では、略四角形枠状のロック機構104は、枠状リブ47の内側に配設されて段落ちリブ48に支持される。ロック機構104の左右の下角部は、枠状リブ47内の左右の下角寄り位置で段落ちリブ48の上端に設けた左右内向き開口かつ上向き開口の係合部49に嵌め込まれる。また、ロック機構104の上端部の左右中央部位に設けた上向き凸状のフランジ部104aが、枠状リブ47内の上寄り位置で段落ちリブ48の上端に設けた取付け面部50の取付け穴50aに挿通されるねじ106にて固定される。このようにして、ロック機構104はロック機構取付部46に脱落不能に取り付けられる。
【0077】
一方、背もたれ4にランバーサポート装置101を設けない仕様では、
図17(C)及び
図17に示すように、ロック機構取付部46にカバー体111が取り付けられる。カバー体111は、正面視で枠状リブ47の内周よりも少し小さい略四角形板状のカバー本体112と、カバー本体112の一表面(裏面)に立設された縦横複数の支持リブ113、上部係止爪114、及び左右の下部係止爪115を有する。
【0078】
カバー体111をロック機構取付部46に嵌め込み、カバー体111の上部係止爪114を弾性に抗してロック機構取付部46の取付け穴50aに係合するとともに、左右の下部係止爪115を弾性に抗して左右の係合部49に係合する。カバー本体112の上縁部及び下縁部ならびに支持リブ113(特に左右方向に延びる支持リブ113)の先端部が、段落ちリブ48(特に上下方向に延びる段落ちリブ48)の先端部に接触又は近接し、カバー体111の背面メンバー20側への移動が規制される。このように、カバー体111は、ロック機構取付部46に枠状リブ47の開口を塞ぐようにして脱落不能に取り付けられる。
【0079】
すなわち、カバー体111は、隣り合うリブ47,48の間の開口を塞ぐとともに、背シェル17の前面とクッション18との間に介在している。これにより、使用者が枠状リブ47及び段落ちリブ48の存在を感じにくくすることができ、簡素な構成で座り心地を良くして使用感を向上できる。
【0080】
(6).まとめ
図3及び
図6に示すように、上記実施形態の椅子は、背シェル17の前面に背クッション18を配置した背もたれ4を有している。そして、背シェル17の前面に複数のリブ24,25を備えるとともに、背シェル17の前面と背クッション18との間に、隣り合うリブ24,25の間の開口26を塞ぐカバー部材30を介在させているものである。
【0081】
このように、背シェル17の前面に形成される隣り合うリブ24,25の間の開口26をカバー部材30で塞ぐことで、使用者がリブ24,25の存在を感じにくくすることができるので、簡素な構成で座り心地を良くして使用感を向上できる。
【0082】
また、上記実施形態では、カバー部材30はプラスチックシートで形成されているので、カバー部材30を低コストかつ軽量に形成できるとともに、背もたれ4の外観を損なうことなく座り心地を向上できる。なお、背クッション18とリブ24,25との間に介在して開口26を塞ぐカバー部材30は、プラスチックシート製のものに限らず、例えば不織布シートや厚紙など、背クッション18よりも圧縮率(体積変化のしやすさ)が小さい材料で形成されているものを使用できる。そして、カバー部材30として、例えばプラスチックシートや不織布シート、厚紙など、背クッション18よりも圧縮率が小さく、かつ可撓性を有するものを使用すれば、背シェル17の前面(リブ24,25の先端部に沿った面)が湾曲している場合であっても、当該前面の形状に沿ってカバー部材30を容易に配置できる。
【0083】
また、
図3、
図6及び
図11に示すように、カバー部材30は、背クッション18に接合されるとともに、背シェル17の前面に設けた係合突起31に係合する係合穴30aを有している。
【0084】
このような構成によれば、背クッション18とカバー部材30とを例えば縫着又は接着にて接合して一体化するとともに、カバー部材30の係合穴30aを背シェル17の係合突起31に係合することで、背シェル17への背クッション18及びカバー部材30の取付作業時に位置合わせが容易になって作業効率が向上するとともに、使用による背クッション18及びカバー部材30の位置ずれを防止して良好な座り心地を維持できる。
【0085】
図17(C)に示すように、背シェル17の前面に形成される隣り合うリブ47,48の間の開口をカバー体111で塞ぐことで、使用者がリブ47,48の存在を感じにくくすることができ、簡素な構成で座り心地を良くして使用感を向上できる。
【0086】
図2に示すように、上記実施形態の椅子は、平面視において、左右方向に延びる背面部27と、左右方向と交差する方向に延びる側面部28とを有する背シェル17の少なくとも側面部28から背面部27にかけて表皮材19で覆った背もたれ4を備えている。そして、背シェル17の側面部28の後端部位28aが後ろ向きに突出するように背面部27の左右縁部位27aが前向きに凹んでいるものである。
【0087】
このような構成により、背シェル17の側面部28から背面部27にかけて張られた表皮材19は、背シェル17の背面部27の前向き凹状の左右縁部位27aには接触しない(
図7参照)ので、表皮材19において背シェル17の側面部28と背面部27との境界を覆う部分(側面部28の後端部位28aを覆う部分)に明確な角が出やすくなる。そして、背もたれ4の側面部と背面部を覆う表皮材19に角を出すことで、背面側から見た背もたれ4に引き締まった外観を得ることができ、意匠性を向上できる。
【0088】
また、
図2に示すように、表皮材19は、背シェル17の上面部29から背面部27にかけて覆っており、背シェル17において、上面部29の後端部位29aが後ろ向きに突出するように背面部27の上縁部位27bが前向きに凹んでおり、上面部29の後端部位29aの左右端は側面部28の後端部位28aの上端に連続している。
【0089】
このような構成により、表皮材19において背シェル17の上面部29と背面部27との境界を覆う部分(上面部29の後端部位29aを覆う部分)にも、表皮材19の角を出すことができる。そして、
図2(A)に示すように、表皮材19に、背もたれ4の背面の左右縁部から上縁部にかけて連続した角を出すことができ、表皮材19で覆われた背もたれ4に優れた意匠性を有する外観を形成できる。
【0090】
さらに、
図2、
図11及び
図12に示すように、表皮材19を背面部27の上縁部位27bに押さえ付ける押さえ部材37が設けられている。
【0091】
このような構成により、背シェル17の上面部29の後端部位29aを覆う部分の表皮材19に、より角を強調することができる。このような押さえ部材37は、例えば、ハンガーやヘッドレスト等のオプション品や、オプション品が取り付かないときのカバー部材によって実現できる。また、押さえ部材37には、人が手を引っ掛けることが可能な手掛け部37aが設けられている。
【0092】
図2(B)及び
図6~
図8に示すように、背シェル17の背面部27は、側面視で左右中央部位27cが側面部28の後端部位28aよりも後方に位置するとともに、左右縁部位27aから左右中央部位27cに向かって緩やかに湾曲しているようにしてもよい。
【0093】
このような構成により、背シェル17において、背面部27の左右中央部位27cが側面部28の後端部位28aよりも後方に位置しつつ、背面部27に後ろ向き凸状の丸みをもたせることで、表皮材19に上記角を形成しながら背シェル17の背面部27を覆う部分に丸みをもたせることができ、柔らかい印象を呈しながらも引き締まった外観を有する背もたれ4を形成できる。
【0094】
本発明は、上記の他にも様々に具体化できる。例えば、カバー部材30は背シェル17の前面の全体(リブ24,25が形成された領域の全体)を覆うようにし、カバー部材30と下縁部材32とを1枚のシートで形成してもよい。この場合、上記実施形態のように背もたれ4にランバーサポート装置101を備えている構成では、ランバーサポート体102の前面にカバー部材30が接触する。そして、カバー部材30を、ランバーサポート体102との間の摩擦力が背クッション18(例えばウレタンシート製)よりも小さくなる材料(プラスチックシートや不織布シート、厚紙など)で形成することで、ランバーサポート体102をスムーズに上下移動させることができるとともに摩擦振動による音を低減でき、使用感が向上する。
【0095】
なお、カバー部材30は、背クッション18に接合されていないものであってもよい。また、リブの延伸方向は、上下方向(縦リブ24)や左右方向(横リブ)に限定されず、斜め方向であってもよいし、正面視で湾曲していてもよい。
【0096】
また、背シェル17の背面下部には、表皮材19の裏張地材19bの下縁部に取り付けた裏張地縁部材35を掛け止めする係止突起42を有する補助プレート41が回動可能に取り付けられているが、裏張地縁部材35を掛け止めするための突起部は、背シェル17に一体的に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0097】
4 背もたれ
17 背シェル
18 背クッション(クッション)
19 表皮材
24 縦リブ(リブ)
25 横リブ(リブ)
30 カバー部材
30a 係合穴(被係合部)
31 係合突起(係合部)
47 枠状リブ(リブ)
48 段落ちリブ(リブ)
111 カバー体(カバー部材)