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特開2022-47749タグホルダ、及び、IDタグの取付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047749
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】タグホルダ、及び、IDタグの取付構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/38 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
B65D19/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153697
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】隅田 晃雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 侑也
【テーマコード(参考)】
3E063
【Fターム(参考)】
3E063AA04
3E063BA05
3E063BB04
3E063CA01
3E063DA05
3E063EE01
3E063EE03
3E063FF01
3E063FF20
(57)【要約】
【課題】IDタグ、及び、運搬具の損傷を抑制しつつ、比較的容易にIDタグの取外し作業を行うことのできるタグホルダ、及び、IDタグの取付構造を提供する。
【解決手段】タグホルダ31は、パレット1の挿入開口部25を塞ぐようにして設けられる略板状のベース部32と、ベース部32の下面から下方に延出する側壁部33と、パレット1の被係止部28に係止状態とされる係止部34とを備える。ベース部32の下面側には、側壁部33の下縁部よりも上方において、IDタグ21の上面と対向し、IDタグ21の上方向の変位を規制する規制部40が設けられる。ベース部32には、工具を挿入可能な操作開口部45が設けられ、係止部34は、操作開口部45を介してベース部32の下面側に挿入された工具の先端部を掛けて係止部34を被係止部28から離間させる側に変位可能とする掛け部38を備える。係止部34は、規制部40よりも上方に位置している。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IDタグを運搬具に設けられたタグ収容部に収容して取付けるためのタグホルダにおいて、
前記タグ収容部を上方に開口させ、前記IDタグの前記タグ収容部への挿入を許容する挿入開口部を塞ぐようにして設けられる略板状のベース部と、
前記ベース部の下面から下方に延出する側壁部と、
前記運搬具の被係止部に係止状態とされる係止部とを備え、
前記ベース部の下面側には、前記側壁部の下縁部よりも上方において、前記IDタグの上面と対向し、前記IDタグの上方向の変位を規制する規制部が設けられ、
前記ベース部には、工具を挿入可能な操作開口部が設けられ、
前記係止部は、前記操作開口部を介して前記ベース部の下面側に挿入された工具の先端部を掛けて前記係止部を前記被係止部から離間させる側に変位可能とする掛け部を備え、
前記係止部は、前記規制部よりも上方に位置していることを特徴とするタグホルダ。
【請求項2】
前記係止部は、前記ベース部の下面から下方に延出する係止片と、前記係止片から前記ベース部の外周側に突出する係止突部とを備え、
前記係止片には、前記係止突部の上方において貫通孔が設けられ、
前記掛け部は、前記貫通孔の下縁部から上方に突出して設けられ、
前記タグホルダを前記運搬具に取付けた状態において、前記掛け部と、前記運搬具との間に空間が形成され、当該空間は、前記貫通孔、及び、前記操作開口部に対して連通していることを特徴とする請求項1に記載のタグホルダ。
【請求項3】
前記側壁部、及び、前記係止部は、それぞれ複数設けられるとともに、前記ベース部の中央部を中心とした回転対称位置に配置され、
前記規制部は、前記ベース部の下面から下方に延出する複数のリブの下縁部により構成され、
前記リブは、所定の前記側壁部のうち前記ベース部の内周側の面から延出して、延出方向先端縁が別の前記リブと連結されるとともに、前記側壁部からの延出方向中間位置において、さらに別の前記リブの延出方向先端縁と連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタグホルダ。
【請求項4】
前記ベース部は、平面視略正方形をなす前記挿入開口部、及び、前記IDタグに対応して平面視略正方形をなし、
前記側壁部、及び、前記係止部は、それぞれ複数設けられるとともに、前記ベース部の中央部を中心とした回転対称位置に配置され、
前記IDタグの側面と対向し、前記IDタグの水平方向の変位を規制する水平規制部を備え、
前記タグ収容部に収容された前記IDタグの上面の側辺部が、前記ベース部の側辺部に平行となる平行状態、及び、前記タグ収容部に収容された前記IDタグの上面の側辺部が、前記ベース部の側辺部に対して約45度傾く傾斜状態のどちらにおいても、前記水平規制部により前記IDタグの水平方向における変位を規制可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のタグホルダ。
【請求項5】
前記タグホルダは、前記タグ収容部に先に挿入された前記IDタグが正規の収容状態の姿勢よりも傾斜した仮収容状態の姿勢とされている場合に、前記タグホルダを前記運搬具に取付けることで前記IDタグの姿勢を前記正規の収容状態の姿勢に矯正する矯正手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のタグホルダ。
【請求項6】
上記請求項4又は5に記載のタグホルダを具備するIDタグの取付構造において、
前記タグホルダを前記IDタグの上部、及び、下部に対応してそれぞれ前記運搬具に取付けることで前記IDタグが保持されることを特徴とするIDタグの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IDタグの運搬具への取付けに使用されるタグホルダ、及び、タグホルダを使用したIDタグの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、IDタグをパレット等の運搬具に取付ける場合に、IDタグをタグホルダに装着し、当該タグホルダを運搬具に取付けることが知られている。例えば、IDタグをタグホルダ(ブラケット)に対してリベットで固定し、タグホルダを運搬具(パレット)に対してリベットで固定するといった技術がある(例えば、特許文献1等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-244773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の構成を採用する場合であって、IDタグに交換の必要が生じた場合(例えば、電池内蔵型のIDタグの電池残量がなくなった場合)には、タグホルダを運搬具に固定しているリベットを除去し、IDタグをタグホルダに固定しているリベットを除去する必要がある。このため、IDタグの取外し作業が比較的困難になることが懸念されるとともに、運搬具やIDタグの損傷を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、IDタグ、及び、運搬具の損傷を抑制しつつ、比較的容易にIDタグの取外し作業を行うことのできるタグホルダ、及び、IDタグの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0007】
手段1.IDタグを運搬具に設けられたタグ収容部に収容して取付けるためのタグホルダにおいて、
前記タグ収容部を上方に開口させ、前記IDタグの前記タグ収容部への挿入を許容する挿入開口部を塞ぐようにして設けられる略板状のベース部と、
前記ベース部の下面から下方に延出する側壁部と、
前記運搬具の被係止部に係止状態とされる係止部とを備え、
前記ベース部の下面側には、前記側壁部の下縁部よりも上方において、前記IDタグの上面と対向し、前記IDタグの上方向の変位を規制する規制部が設けられ、
前記ベース部には、工具を挿入可能な操作開口部が設けられ、
前記係止部は、前記操作開口部を介して前記ベース部の下面側に挿入された工具の先端部を掛けて前記係止部を前記被係止部から離間させる側に変位可能とする掛け部を備え、
前記係止部は、前記規制部よりも上方に位置していることを特徴とするタグホルダ。
【0008】
手段1によれば、工具を操作開口部に挿入し、当該工具の先端部を掛け部に掛けることで、比較的容易に係止部を被係止部から離間させる側に変位させることができる。従って、係止部の係止状態を解除して、タグホルダ、ひいては、IDタグを運搬具から取外す際の作業性の向上等を図ることができる。また、係止部は、規制部よりも上方に位置していることから、上記のように、工具を使用してタグホルダを運搬具から取外す際に、工具がIDタグに接触し難くすることができ、結果として、IDタグの損傷等を防止することができる。
【0009】
尚、本手段では、タグホルダが取付けられる挿入開口部が運搬具の上側に位置する場合の構成を示す意図であり、例えば、タグホルダが取付けられる挿入開口部が運搬具の下側に位置する(タグホルダが運搬具の下側に位置する向きで運搬具が設置されている)場合には、各種構成が上下逆になるものとする。
【0010】
手段2.前記係止部は、前記ベース部の下面から下方に延出する係止片と、前記係止片から前記ベース部の外周側に突出する係止突部とを備え、
前記係止片には、前記係止突部の上方において貫通孔が設けられ、
前記掛け部は、前記貫通孔の下縁部から上方に突出して設けられ、
前記タグホルダを前記運搬具に取付けた状態において、前記掛け部と、前記運搬具との間に空間が形成され、当該空間は、前記貫通孔、及び、前記操作開口部に対して連通していることを特徴とする手段1に記載のタグホルダ。
【0011】
手段2によれば、操作開口部に挿入した工具の先端部を掛け部に引っ掛け易くすることができ、工具の操作開口部の開口縁との当接部を支点とし、工具の先端部を作用点として、梃子の要領で係止部の係止状態を比較的容易に解除することができる。また、掛け部と、運搬具との間には空間が形成されているため、例えば、掛け部と運搬具(例えば、被係止部)とが略当接している場合のように、工具の先端部を掛け部と運搬具との間に無理やりにねじ込む等といった事態を回避することができる。従って、工具の先端部を掛け部に引っ掛ける作業を行う際に掛け部や運搬具が損傷等するといった事態を抑止することができる。
【0012】
手段3.前記側壁部、及び、前記係止部は、それぞれ複数設けられるとともに、前記ベース部の中央部を中心とした回転対称位置に配置され、
前記規制部は、前記ベース部の下面から下方に延出する複数のリブの下縁部により構成され、
前記リブは、所定の前記側壁部のうち前記ベース部の内周側の面から延出して、延出方向先端縁が別の前記リブと連結されるとともに、前記側壁部からの延出方向中間位置において、さらに別の前記リブの延出方向先端縁と連結されていることを特徴とする手段1又は2に記載のタグホルダ。
【0013】
手段3によれば、複数の側壁部、及び、係止部が回転対称位置に設けられることにより、タグホルダをベース部の中央部を中心としたn回対称形状のような形状とすることが可能であり、この場合、挿入開口部に対してn通りの向きでタグホルダを取付けることが可能となる。従って、作業者が無作為に手に取ったタグホルダを、挿入開口部に取付可能な姿勢(向き)とする作業を比較的容易なものとすることができる。結果として、タグホルダを運搬具に取付ける取付作業性の向上等を図ることができる。
【0014】
また、互いに連結された複数(少なくとも3本)のリブの下縁部により規制部が構成され、当該複数のリブはそれぞれ側壁部と連結されている。このため、規制部の上下方向における位置を係止部よりも下方としつつ、規制部の強度を高めることができ、タグホルダの取付状態の安定化等を図ることができる。さらに、側壁部の強度等についても高めることができ、側壁部の変形や損傷等を抑止することができる。
【0015】
手段4.前記ベース部は、平面視略正方形をなす前記挿入開口部、及び、前記IDタグに対応して平面視略正方形をなし、
前記側壁部、及び、前記係止部は、それぞれ複数設けられるとともに、前記ベース部の中央部を中心とした回転対称位置に配置され、
前記IDタグの側面と対向し、前記IDタグの水平方向の変位を規制する水平規制部を備え、
前記タグ収容部に収容された前記IDタグの上面の側辺部が、前記ベース部の側辺部に平行となる平行状態、及び、前記タグ収容部に収容された前記IDタグの上面の側辺部が、前記ベース部の側辺部に対して約45度傾く傾斜状態のどちらにおいても、前記水平規制部により前記IDタグの水平方向における変位を規制可能に構成されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のタグホルダ。
【0016】
手段4によれば、複数の側壁部、及び、係止部が回転対称位置に設けられることにより、タグホルダを運搬具に取付ける取付作業性の向上等を図ることができる。
【0017】
また、IDタグを運搬具に取付ける場合に、ベース部の側辺部と、IDタグの上面の側辺部とが平行となる平行状態に必ずしもする必要がなく、ベース部の側辺部と、IDタグの上面の側辺部とが互いに交差する方向に延在していても、タグホルダを使用して、IDタグの水平方向における変位を規制しつつ、IDタグを運搬具に取付可能とされている。従って、IDタグを運搬具に取付ける場合に、上下方向に延びる軸線を中心とする回転方向において、運搬具、及び、タグホルダと、IDタグとの相対向きを気にしなくても済み、IDタグの取付作業性の向上等を図ることができる。
【0018】
手段5.前記タグホルダは、前記タグ収容部に先に挿入された前記IDタグが正規の収容状態の姿勢よりも傾斜した仮収容状態の姿勢とされている場合に、前記タグホルダを前記運搬具に取付けることで前記IDタグの姿勢を前記正規の収容状態の姿勢に矯正する矯正手段を備えていることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載のタグホルダ。
【0019】
手段5によれば、タグホルダを運搬具に取付けるだけで、仮収容状態のIDタグの姿勢を正規の収容状態の姿勢とすることができる。これにより、例えば、作業者が挿入開口部に指先を差し入れてIDタグを正規の収容状態の姿勢とするといった作業を行わなくても済む。結果として、IDタグの取付作業性の向上等をより一層図ることができる。
【0020】
尚、「前記側壁部は、前記タグホルダの前記運搬具への取付状態において、前記タグ収容部の内面に当接、又は、近接し、前記水平規制部の下部は、下方に向けて前記ベース部の外周側に傾斜し、前記側壁部の内面に連接する傾斜部とされ、前記矯正手段は、前記側壁部のうち前記水平規制部よりも下方に位置する部位と、前記傾斜部とを備えていること」としてもよい。当該構成を具備するタグホルダを、IDタグが略鉛直方向に対いて傾いた姿勢で仮収容状態とされているタグ収容部に挿入することで、側壁部の下端部が、タグ収容部の内面と、タグホルダとの間に進入するとともに、IDタグの傾斜部との当接部位がベース部の内周側に案内され、IDタグが正規の収容状態の姿勢となるように傾動変位させられる。従って、タグホルダを取付けるだけで仮収容状態の姿勢にあるIDタグを正規の収容状態の姿勢へと矯正するといった作用効果がより確実に奏される。
【0021】
手段6.上記手段4又は5に記載のタグホルダを具備するIDタグの取付構造において、
前記タグホルダを前記IDタグの上部、及び、下部に対応してそれぞれ前記運搬具に取付けることで前記IDタグが保持されることを特徴とするIDタグの取付構造。
【0022】
手段6によれば、タグホルダを上下一対で使用してIDタグを運搬具に取付可能であることから、例えば、運搬具においてIDタグの下部を保持可能とする構成を設ける場合に比べ、運搬具の簡素化、生産性の向上、及び、製造コストの抑制等を図ることができる。また、異なる形状のタグホルダを用意する場合に比べて、タグホルダを使用してIDタグを運搬具に取付ける際の利便性の向上を図ることができる。さらに、タグホルダによりIDタグの上部、及び、下部のそれぞれにおいて水平方向の変位を防止することができ、タグホルダの取付状態の安定化等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】パレットの斜視図である。
図2】タグ収容部を示す一部断面を含む部分拡大斜視図である。
図3】タグ収容部を示す部分拡大断面図である。
図4】タグホルダの上面側の斜視図である。
図5】タグホルダの下面側の斜視図である。
図6】IDタグの斜視図である。
図7】上構成部の挿入開口部に対応してタグホルダを取付ける過程を示す一部断面を含む部分拡大斜視図である。
図8】IDタグが収容状態とされたタグ収容部を示す部分拡大断面図である。
図9】IDタグが収容状態とされたタグ収容部の上部(図8の上部)を示す部分拡大断面図である。
図10】IDタグが仮収容状態とされている場合に、上構成部の挿入開口部に対応してタグホルダを取付ける過程を示す部分拡大断面図である。
図11】平行状態におけるIDタグと、タグホルダとの相対位置関係を示す側面図である。
図12】傾斜状態におけるIDタグと、タグホルダとの相対位置関係を示す側面図である。
図13図11のA-A線断面図である。
図14図11のB-B線断面図である。
図15図12のC-C線断面図である。
図16図12のD-D線断面図である。
図17】平行状態と傾斜状態との中間の状態にあるIDタグと、タグホルダとの相対位置関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、運搬具としてのパレット1は、平面視略矩形状(平面視略正方形状)をなしている。また、パレット1は、パレット1の相対する一対の側辺部にそれぞれ沿って設けられる一対の側柱部2と、パレット1の中央部を通るようにして、一対の側柱部2と平行して設けられる中央柱部3と、各側柱部2、及び、中央柱部3の上端部間を連結する上デッキ部4と、各側柱部2、及び、中央柱部3の下端部間を連結する下デッキ部5とを備えている。加えて、各側柱部2と中央柱部3との間には、フォークリフト等のフォークを差込み可能なフォーク差込み部6が設けられている。本実施形態では、パレット1の外周面を構成する4つの側面のうち2つの側面からフォークを差込み可能な2方差しタイプのパレットとなっている。
【0025】
また、本実施形態では、側柱部2、中央柱部3、及び、上デッキ部4の上面によって物品を載置可能な「載置面7」が構成されている。さらに、側柱部2、中央柱部3、及び、下デッキ部5の下面によって、パレット1が設置される床面等の設置面に接地する「接地面8」が構成されている。加えて、載置面7と、接地面8とは、互いに平行して延在している。
【0026】
また、パレット1は、側柱部2、及び、中央柱部3の上側半分と、上デッキ部4とを具備する上構成部9と、側柱部2、及び、中央柱部3の下側半分と、下デッキ部5とを具備する下構成部10とを備えている。上構成部9、及び、下構成部10は、それぞれポリプロピレンにより一体的に形成されている。本実施形態の上構成部9、及び、下構成部10は、互いに同一形状で、同一の大きさに構成されている。そして、上構成部9の側柱部2、及び、中央柱部3の下縁部と、下構成部10の側柱部2、及び、中央柱部3の上縁部とが熱溶着(又は、振動溶着)されることにより、上構成部9と下構成部10とが一体化され、本実施形態のパレット1が構成されている。
【0027】
加えて、上デッキ部4の下面側、及び、下デッキ部5の上面側には、補強リブ11が格子状に設けられている。さらに、各側柱部2、及び、中央柱部3は、それぞれの外周面を構成する略四角筒状の周壁部12と、周壁部12の内側において格子状に設けられ、周壁部12と連結されている内壁部13(図2図7等参照)とを備えている。尚、上構成部9と、下構成部10とが溶着されることで、上構成部9、及び、下構成部10の周壁部12同士が溶着されるだけでなく、内壁部13同士も、適宜、溶着されるようになっている。
【0028】
さて、図1図7等に示すように、パレット1には、平面視でパレット1の中央部、すなわち、中央柱部3において、パレット1に載置される物品等に関する情報が記憶されたIDタグ21(RFIDタグ、ICタグ、電子タグ、非接触タグ等と呼ばれる場合もある)を収容するタグ収容部22が設けられている。本実施形態のIDタグ21は、電池を内蔵したアクティブ型IDタグにより構成されている。また、図6に示すように、IDタグ21は略直方体形状をなし、その長手方向が上下方向(略鉛直方向)となるようにして、タグ収容部22に収容される。特に、本実施形態では、IDタグ21の上面、及び、下面が略正方形状となっている。さらに、IDタグ21のうち、面同士の境界となる部位はR面取り形状とされている。
【0029】
また、図2図3図7等に示すように、タグ収容部22は、上構成部9により構成される部位であって、IDタグ21の上部を収容する上収容部23と、下構成部10により構成される部位であって、IDタグ21の下部を収容する下収容部24とを備えている。
【0030】
上収容部23には、タグ収容部22を上方に開口させ、載置面7側からIDタグ21のタグ収容部22への挿入を許容する平面視略正方形状の挿入開口部25が設けられている。図1に示すように、挿入開口部25の開口縁部は、パレット1(載置面7)の側辺部に対して45度傾いて延在しており、挿入開口部25の中央部は、パレット1(載置面7)の中央部と一致するように構成されている。さらに、図3図7等に示すように、上収容部23は、挿入開口部25の周縁部から下方に延びる略四角筒状の補助壁部26を備えている。補助壁部26の下縁部は、上構成部9の下端部(周壁部12、及び、内壁部13の下縁部)と同じ高さとされている。
【0031】
上記のように、上構成部9、及び、下構成部10は、同一形状であり、下収容部24についても、タグ収容部22を下方に開口させる挿入開口部25が設けられるとともに、挿入開口部25の周縁部から上方に延びる略四角筒状の補助壁部26を備えている。そして、上収容部23の補助壁部26の下縁部と、上収容部23の補助壁部26の上縁部とが溶着されている。尚、上収容部23の補助壁部26の下縁部の内面側、及び、下収容部24の補助壁部26の上縁部の内面側には切欠き部27が設けられている。これにより、上収容部23の補助壁部26と、下収容部24の補助壁部26とを溶着した場合に生じ得る溶着バリが、タグ収容部22に収容されたIDタグ21に接触することを防止している。
【0032】
また、図2図7等に示すように、上収容部23、及び、下収容部24には、それぞれ補助壁部26を構成する各壁部から補助壁部26の内方側に突出する被係止部28が設けられている。上収容部23の被係止部28は、補助壁部26を構成する各壁部を補助壁部26の内方側から見て右側の位置にそれぞれ設けられるとともに、上面が補助壁部26の内方側に向けて下方傾斜し、下面が略水平方向に延びている。下収容部24の被係止部28は、補助壁部26を構成する各壁部を補助壁部26の内方側から見て左側の位置にそれぞれ設けられるとともに、下面が補助壁部26の内方側に向けて上方傾斜し、上面が略水平方向に延びている。
【0033】
また、図1図7図8等に示すように、本実施形態のパレット1は、各挿入開口部25に対応して、タグ収容部22に収容されたIDタグ21を保持して脱落を防止するタグホルダ31を取付可能に構成されている。以下、上構成部9の挿入開口部25に対応して取付けられるタグホルダ31について説明する。尚、本実施形態では、同一形状、及び、同一の大きさのタグホルダ31が、上構成部9の挿入開口部25、及び、下構成部10の挿入開口部25に対応してそれぞれ取付けられる。
【0034】
図4図5等に示すように、タグホルダ31は、挿入開口部25を塞ぐようにして設けられる略正方形板状のベース部32と、ベース部32の下面の各側辺部に沿って下方に延出する側壁部33と、パレット1の被係止部28に係止状態とされる係止部34とを備えている。本実施形態のタグホルダ31は、ポリプロピレンにより一体的に形成されている。
【0035】
図5図9等に示すように、ベース部32の外周縁は、下方に向けてベース部32の内周側に傾斜している。図2図9等に示すように、本実施形態の挿入開口部25の開口縁は、載置面7との境界部がR面取り形状とされており、これに対応して、ベース部32の外周縁についても若干湾曲している。当該構成により、ベース部32を載置面7から上方に突出させることなくタグホルダ31を取付可能となっている。
【0036】
図4等に示すように、側壁部33は、ベース部32の下面の各側辺部のうち、当該各側辺部をベース部32の外周側から見て右側の部位からそれぞれ下方に延出する略矩形板状をなしている。図9等に示すように、タグホルダ31の取付状態においては、側壁部33の外面が、補助壁部26の内面に対して略当接状態とされる。
【0037】
図4図5図7等に示すように、係止部34は、ベース部32の下面の各側辺部のうち、当該各側辺部をベース部32の外周側から見て左側の部位に対して若干ベース部32の内周側に変位した位置からそれぞれ下方に延出する係止片35と、各係止片35の下端部からベース部32の外周側に突出する係止突部36とを備えている。図4等に示すように、4つの係止部34のうちベース部32の相対する一対の側辺部に対応して設けられた係止部34に関し、係止突部36の上面側には、略水平方向に延び、被係止部28の下面に係止状態とされる部位が設けられ、係止突部36の下面は、ベース部32の内周側に向けて下方傾斜している。尚、本実施形態では、他の係止部34については、係止突部36の上面がベース部32の外周側に向けて若干下方傾斜するようになっている。
【0038】
さらに、図4図9等に示すように、係止片35には、係止突部36の上方において貫通孔37が設けられている。また、係止部34は、貫通孔37の下縁部のうちベース部32の内周側の部位から上方に突出する掛け部38を備えている。掛け部38は、貫通孔37の左右の側縁部と連結されるとともに、掛け部38の内面は、係止片35の内面と面一とされ、掛け部38の外面は、係止片35の外面よりもベース部32の内周側の位置において、掛け部38の内面と略平行に(略鉛直方向に)延在している。尚、上面において略水平方向に延在する部位を有しない係止突部36を具備する係止部34に関しては、掛け部が省略されている。
【0039】
加えて、係止片35のうち貫通孔37の両側方位置には、ベース部32の外周側に突出する支持突部39が設けられている。ベース部32の内外方向において、各係止部34の係止突部36、及び、支持突部39の係止片35からの突出方向先端部は、側壁部33の外面とほぼ同じ位置とされている。また、係止部34の下端部は、側壁部33の下縁部よりも上方に位置している。
【0040】
さらに、図5に示すように、4つずつ設けられた側壁部33、及び、係止部34は、ベース部32の中央部を中心とした回転対称位置に配置されている。加えて、図5図9等に示すように、ベース部32の下面側には、側壁部33の下縁部よりも上方において、IDタグ21の上面と対向し、IDタグ21の上方向の変位を規制する規制部40が設けられている。本実施形態の規制部40は、ベース部32の下面から下方に延出する複数のリブ41の下縁部により構成されている。当該リブ41は、所定の側壁部33のうちベース部32の内周側の面(内面)から当該側壁部33に対して直交する方向に延出して、延出方向先端縁が別のリブ41と連結されるとともに、側壁部33からの延出方向中間位置において、さらに別のリブ41の延出方向先端縁と連結されている(4本のリブ41を風車状に設けることで規制部40を構成している)。本実施形態では、係止部34は、規制部40よりも上方に位置している。
【0041】
また、図5図9等に示すように、タグホルダ31は、タグ収容部22に収容されたIDタグ21の側面と対向し、IDタグ21の水平方向の変位を規制する水平規制部42を備えている。本実施形態では、水平規制部42についても、前記リブ41により構成されている。つまり、リブ41のうちベース部32の中央部側であって、IDタグ21の上面と対向する範囲については、ベース部32から下方への突出長が比較的短く構成される。これに対し、リブ41のうち側壁部33との連接部側であって、IDタグ21の上面と対向しない範囲については、ベース部32から下方への突出長が比較的長く構成され、当該突出長が長く構成された範囲のうちベース部32の内周側の縁部により水平規制部42が構成されている。
【0042】
また、水平規制部42は、側壁部33の下縁部よりも上方に設けられている。さらに、水平規制部42は、当該水平規制部42の上側部位であって、略鉛直方向に延びる鉛直部43と、水平規制部42の下側部位であって、下方に向けてベース部32の外周側に傾斜し、側壁部33の内面に連接する傾斜部44とを備えている。
【0043】
IDタグ21をパレット1に取付ける場合には、先ず、下構成部10(下収容部24)の挿入開口部25に対応してタグホルダ31を取付ける。尚、上記のように、上構成部9、及び、下構成部10は同形状であり、床面等の設置面に設置した場合に上側に位置する方が上構成部9とされる。また、上構成部9の挿入開口部25に対応してタグホルダ31を取付けた後、パレット1を上下反対向きとすることで、下構成部10にタグホルダ31を取付けた状態とすることとしてもよい。
【0044】
続いて、IDタグ21の長手方向が上下方向となるようにしてIDタグ21を上構成部9(上収容部23)の挿入開口部25に挿入させる。このとき、IDタグ21の下面が、下構成部10に取付けられたタグホルダ31の水平規制部42の傾斜部44に当接した場合には、当該傾斜部44により、IDタグ21の下部が下構成部10に取付けられたタグホルダ31の規制部40側に案内される。
【0045】
タグ収容部22に挿入されたIDタグ21は、作業者が上構成部9の挿入開口部25を介して指先でIDタグ21を操作する等して、図7に示すように、IDタグ21を、当該IDタグ21の下部が下構成部10に取付けられたタグホルダ31に(簡易的に)保持される正規の収容状態の姿勢とすることも可能である。この場合、タグホルダ31の下面が、下構成部10に取付けられたタグホルダ31の規制部40と略平行に当接して支持され、IDタグ21の4側面が下構成部10に取付けられたタグホルダ31の4つの水平規制部42(鉛直部43)にそれぞれ当接、又は、近接し、上デッキ部4に対して略垂直となる方向に延びる姿勢とされる。
【0046】
但し、IDタグ21をタグ収容部22に単に挿入しただけでは、図10に示すように、IDタグ21は上デッキ部4(載置面7)に対して垂直となる方向(略鉛直方向)に対して傾斜した姿勢となる仮収容状態とされる場合がある。本実施形態では、仮収容状態にあるIDタグ21は、当該IDタグ21の下面と側面との境界部が、下構成部10に取付けられたタグホルダ31の規制部40に当接し、IDタグ21の上面と側面との境界部が、上構成部9の挿入開口部25を介してタグ収容部22に挿入されるタグホルダ31の下面側に設けられたIDタグ21の姿勢を矯正する矯正手段としての側壁部33の下部、及び、水平規制部42の傾斜部44に対して接触し得る姿勢(例えば、上面と側面との境界部が上収容部23の補助壁部26の内面に当接した姿勢)となっている。
【0047】
IDタグ21が仮収容状態にある場合に、上構成部9の挿入開口部25を介してタグホルダ31の側壁部33等をタグ収容部22(上収容部23)に挿入させることで、IDタグ21の上面の側辺部と、補助壁部26との間に対して、タグホルダ31の側壁部33の下端部が進入し、続いて、水平規制部42の傾斜部44が進入し、IDタグ21の傾斜部44との当接部位がベース部32の内周側に案内される。これにより、IDタグ21の傾きが略鉛直方向となるように矯正され(正規の収容状態の姿勢となるように傾動変位させられ)、水平規制部42によりIDタグ21の水平方向への変位が規制された状態とされる。
【0048】
さらに、図9等に示すように、係止部34を被係止部28に係止状態として、タグホルダ31が上構成部9の挿入開口部25に対応して取付けられることにより、IDタグ21は、IDタグ21の4側面が上構成部9に取付けられたタグホルダ31の水平規制部42(鉛直部43)に当接、又は、近接状態とされ、タグホルダ31の上面が、上構成部9に取付けられたタグホルダ31の規制部40に当接、又は、近接した姿勢とされる。以上のようにして、IDタグ21は、その上部、及び、下部が、上下一対のタグホルダ31により保持された正規の収容状態とされるようになっている。
【0049】
尚、上構成部9にタグホルダ31を取付けた状態では、ベース部32の外周縁と、挿入開口部25の開口縁とが上下に略当接するとともに、各係止部34の支持突部39の下面と、各被係止部28の上面とが略当接する。これにより、タグホルダ31がタグ収容部22の内側に没入するといった事態が防止されるようになっている。
【0050】
さらに、本実施形態では、タグ収容部22に収容されたIDタグ21の上面の側辺部が、ベース部32の側辺部(挿入開口部25の開口縁の各側縁部)に平行となる平行状態(図11図13参照)、及び、タグ収容部22に収容されたIDタグ21の上面の側辺部が、ベース部32の側辺部(挿入開口部25の開口縁の各側縁部)に対して約45度傾く傾斜状態(図12図15参照)のどちらにおいても、水平規制部42によりIDタグ21の水平方向における変位を規制可能に構成されている。尚、便宜上、図13図17では、上構成部9に取付けられるタグホルダ31の側壁部33、及び、水平規制部42を側壁部33a、及び、水平規制部42aとして示し、下構成部10に取付けられるタグホルダ31の側壁部33、及び、水平規制部42を側壁部33b、水平規制部42bとして示す。
【0051】
すなわち、図11図13図14に示すように、平行状態では、各側壁部33(側壁部33a、33b)からベース部32の内周側に延出するリブ41(水平規制部42a、42bを構成する部位)が、IDタグ21の各側面に対して略直交する方向に延在し、水平規制部42a、42bがIDタグ21の各側面に当接、又は、近接する。尚、平行状態において各タグホルダ31の4つ全ての水平規制部42(水平規制部42a、42b)の鉛直部43がIDタグ21の側面に当接するような場合には、IDタグ21の下部を下構成部10に取付けられたタグホルダ31に保持させるだけで、IDタグ21の相対的な回動変位がほぼ(IDタグ21を回動させる力が加えられなければ)防止される。但し、本例では、平行状態においても、水平規制部42(水平規制部42a、42b)と、IDタグ21との間に若干の隙間を形成可能となっている。このため、図14に示すように、上構成部9にタグホルダ31を取付けていない状態において、IDタグ21の各側面のうち下構成部10に取付けられたタグホルダ31の水平規制部42bに当接、又は、近接している部位から離れている側の側辺部をタグ収容部22の外方側に変位させるような格好でIDタグ21を回動させる力が加えられると、IDタグ21が回動変位してしまう可能性がある(図17参照)。この点、図13に示すように、上構成部9にタグホルダ31を取付けることで、IDタグ21の各側面が、上下のタグホルダ31の水平規制部42a、42bにより、当該各側面の横幅方向において互いに距離を隔てた2点で支持されることとなり、IDタグ21の回動変位が確実に規制されるようになっている。
【0052】
その一方で、図12図15図16に示すように、傾斜状態では、各側壁部33(側壁部33a、33b)からベース部32の内周側に延出するリブ41(水平規制部42a、42bを構成する部位)が、IDタグ21の各側面に対して略直交する方向に対して傾斜した方向に延在し、水平規制部42a、42bの側辺部(リブ41のうち、ベース部32の内周側の端縁と、側面とでなす角部)が、IDタグ21の側面に当接、又は、近接する。この場合、図16に示すように、上構成部9にタグホルダ31を取付けていない状態において、IDタグ21の各側面が、下構成部10に取付けられたタグホルダ31の水平規制部42bの側辺部から離間する側にIDタグ21を回動させる力が加えられると、IDタグ21が回動変位してしまう可能性がある(図17参照)。この点、図15に示すように、上構成部9にタグホルダ31を取付けることで、IDタグ21の各側面が、上下のタグホルダ31の水平規制部42a、42bにより、当該各側面の横幅方向において互いに距離を隔てた2点で支持されることとなり、IDタグ21の回動変位が確実に規制されるようになっている。
【0053】
さらに、図17に示すように、上構成部9のタグホルダ31が取付けられていない状態において、タグ収容部22に収容されたIDタグ21が平行状態、及び、傾斜状態の中間の状態にある場合、上構成部9にタグホルダ31を取付けることで、当該タグホルダ31の水平規制部42aの傾斜部44により、平行状態、及び、傾斜状態のうち近い状態となる方にIDタグ21の姿勢が矯正されることとなる。つまり、IDタグ21をタグ収容部22に挿入する際に、IDタグ21を平行状態、又は、傾斜状態としておかなくても、上構成部9にタグホルダ31を取付けることで、IDタグ21を平行状態、又は、傾斜状態としてタグホルダ31により保持されたパレット1への取付状態とすることが可能となっている。
【0054】
また、図4図7等に示すように、ベース部32には、各係止部34に対してベース部32の内周側に隣接、又は、近接した位置において、所定の工具(例えば、マイナスドライバー等)を挿入可能とする操作開口部45が設けられている。特に、係止突部36の上面において略水平方向に延在する部位を有する係止部34に対応して設けられた操作開口部45には、操作開口部45を一部略円弧状に拡幅させることで形成された目印部46が設けられている。本実施形態の目印部46は、対応する係止部34の横幅方向略中央部に対応する位置に設けられている。
【0055】
また、図9に示すように、本実施形態では、タグホルダ31をパレット1に取付けた状態において、係止部34の掛け部38と、パレット1(被係止部28)との間に空間が形成されるよう構成されている。当該空間は、貫通孔37を介して、操作開口部45と連通している。IDタグ21をパレット1から取外す場合には、目印部46を有する操作開口部45を介して工具の先端部を係止部34の貫通孔37に挿入して掛け部38の外面側に引っ掛ける。そして、掛け部38を補助壁部26の内周側に変位させるようにして係止片35を弾性変形させることで、係止部34を被係止部28から離間させる側(係止部34を被係止部28との係止状態が解除される側)に変位させることができる。このように、係止部34(係止突部36)と被係止部28との係止状態を解除して、タグホルダ31をパレット1から取外すことにより、タグホルダ31が取外された操作開口部45を介してIDタグ21を取外すことが可能となっている。
【0056】
以上詳述したように、本実施形態によれば、上構成部9に取付けられたタグホルダ31の操作開口部45に対して工具(例えば、マイナスドライバー)を挿入し、当該工具の先端部を係止部34の掛け部38に掛けることで、比較的容易に係止部34を被係止部28から離間させる側に変位させることができる。従って、係止部34の係止状態を解除して、タグホルダ31、ひいては、IDタグ21をパレット1から取外す際の作業性の向上等を図ることができる。また、係止部34は、規制部40よりも上方に位置していることから、上記のように、工具を使用してタグホルダ31をパレット1から取外す際に、工具がIDタグ21に接触し難くすることができ、結果として、IDタグ21の損傷等を防止することができる。加えて、係止部34の全体が規制部40よりも上方に位置することで、掛け部38を係止部34のうち極力下端部に近い位置に設けることが可能となり、係止部34の係止状態を解除する際に係止片35を比較的弾性変形し易くすることができる。
【0057】
特に、係止部34の係止片35に貫通孔37が設けられ、掛け部38は、貫通孔37の下縁部から上方に突出して設けられている。このため、操作開口部45に挿入した工具の先端部を掛け部38(掛け部38の外面側)に引っ掛け易くすることができ、工具の操作開口部45の開口縁との当接部を支点とし、工具の先端部を作用点として、梃子の要領で係止部34の係止状態を比較的容易に解除することができる。また、掛け部38と、パレット1との間には空間が形成されているため、例えば、掛け部38とパレット1(例えば、被係止部28)とが略当接している場合のように、工具の先端部を掛け部38とパレット1との間に無理やりにねじ込む等といった事態を回避することができる。従って、工具の先端部を掛け部38に引っ掛ける作業を行う際に掛け部38やパレット1が損傷等するといった事態を抑止することができる。
【0058】
さらに、4つずつ設けられた側壁部33、及び、係止部34が回転対称位置に設けられることにより、タグホルダ31はベース部32の中央部を中心とした4回対称形状に近い形状となっており、挿入開口部25に対して4通りの向きでタグホルダ31を取付けることが可能となる。従って、作業者が無作為に手に取ったタグホルダ31を、挿入開口部25に取付可能な姿勢(向き)とする作業を比較的容易なものとすることができる。結果として、タグホルダ31をパレット1に取付ける取付作業性の向上等を図ることができる。
【0059】
また、互いに連結された4本のリブ41の下縁部により規制部40が構成され、当該複数のリブ41はそれぞれ側壁部33と連結されている。このため、規制部40の上下方向における位置を係止部34よりも下方としつつ、規制部40の強度を高めることができ、タグホルダ31の取付状態の安定化等を図ることができる。さらに、側壁部33の強度等についても高めることができ、側壁部33の変形や損傷等を抑止することができる。
【0060】
加えて、IDタグ21をパレット1に取付ける場合に、ベース部32の側辺部(挿入開口部25の開口縁の側辺部)と、IDタグ21の上面の側辺部とが平行となる平行状態に必ずしもする必要がなく、ベース部32の側辺部(挿入開口部25の開口縁の側辺部)と、IDタグ21の上面の側辺部とが互いに交差する方向に延在していても、タグホルダ31を使用して、IDタグ21の水平方向における変位(スライド変位、回動変位の両方)を規制しつつ、IDタグ21をパレット1に取付可能とされている。従って、IDタグ21をパレット1に取付ける場合に、上下方向に延びる軸線を中心とする回転方向において、パレット1、及び、タグホルダ31と、IDタグ21との相対向きを気にしなくても済み、IDタグ21の取付作業性の向上等を図ることができる。
【0061】
また、タグホルダ31をパレット1に取付けるだけで、仮収容状態のIDタグ21の姿勢(鉛直方向に対して傾いた姿勢)を正規の収容状態の姿勢(略鉛直方向に延びる姿勢)とすることができる。これにより、例えば、作業者が挿入開口部25に指先を差し入れてIDタグ21を正規の収容状態の姿勢とするといった作業を行わなくても済む。結果として、IDタグ21の取付作業性の向上等をより一層図ることができる。
【0062】
尚、タグ収容部22の内寸は、IDタグ21の外寸よりも大きく構成されているため、IDタグ21をタグ収容部22に挿入させる際に挿入させ易く、IDタグ21を交換する際にIDタグ21を取出し易い上、IDタグのサイズが大きくなった場合にも、パレット1の形状を変更することなく(タグホルダ31を変更することで)対応することができる。このような構成を採用する場合には、仮収容状態のIDタグ21が鉛直方向に対して傾斜した姿勢となる可能性がある上、4つの側壁部33により囲まれる部位の内寸が、IDタグ21の外寸よりも一回り大きく構成されることとなるが、水平規制部42の傾斜部44により、仮収容状態にあるIDタグ21を正規の収容状態の姿勢とされる側に案内する(IDタグ21の上部をベース部32の内周側に向けて側壁部33から離間させる)ことができる上、水平規制部42の鉛直部43により、正規の収容状態にあるIDタグ21を確実に保持することができる。
【0063】
また、タグホルダ31を上下一対で使用してIDタグ21をパレット1に取付可能であることから、例えば、パレット1においてIDタグ21の下部を保持可能とする構成を設ける場合に比べ、パレット1の簡素化、生産性の向上、及び、製造コストの抑制等を図ることができる。さらに、異なる形状のタグホルダを用意する場合に比べて、タグホルダ31を使用してIDタグ21をパレット1に取付ける際の利便性の向上を図ることができる。加えて、パレット1によりIDタグ21の上部、及び、下部のそれぞれにおいて水平方向の変位を防止することができ、タグホルダ31の取付状態の安定化等を図ることができる。
【0064】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0065】
(a)上記実施形態では、操作開口部45は、ベース部32において各係止部34(係止片35)が連結されている部位に対してベース部32の内周側に近接する位置に設けられているが、例えば、ベース部32のうち各係止部34の係止片35の一部(例えば、係止片35の横幅方向中央部)の直上の位置を含む範囲に設けられ、貫通孔37は、当該操作開口部45と連続して設けられることとしてもよい。当該構成を採用する場合にも、操作開口部45に対して工具を挿入し、当該工具の先端部を貫通孔37の下縁部から上方に突出する掛け部38に掛け、係止部34を被係止部28から離間させる側に変位させる(係止片35を弾性変形させる)ことができる。
【0066】
また、上記実施形態では、係止片35に貫通孔37が設けられているが、貫通孔37を省略することも可能である。さらに、掛け部38が貫通孔37の下縁部から上方に突出して設けられているが、掛け部38の形状や配置は特に限定されるものではない。例えば、係止片35の下端部、又は、その近傍位置からベース部32の内周側に突出する掛け壁部を設け、当該掛け壁部において上下に貫通する孔(掛け孔)を設けることで、その内面により工具の先端部を引っ掛ける掛け部を構成することとしてもよい。この場合の掛け孔は、係止片35の内面に隣接して設けられることで、係止片35に沿って下降する工具の先端部を掛け孔にスムースに誘導することができる。尚、当該掛け孔に代えて、前記掛け壁部の上面側に凹部、又は、突部を設けることで掛け部を構成することも可能である。
【0067】
(b)上記実施形態では、タグホルダ31において、側壁部33、及び、係止部34が4つずつ回転対称位置に設けられる構成となっているが、特にかかる構成に限定されるものではなく、IDタグ21やタグ収容部22(挿入開口部25)の形状等に応じて適宜変更可能である。例えば、係止部34をベース部32の相対する側辺部に対応して一対のみ設けることとしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態の規制部40の構成についても特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。但し、複数のリブ41同士を互いに複数個所で連結することで、IDタグ21の上面、又は、下面と当接可能な面積を増やすことができ、IDタグ21の収容状態の安定化、規制部40の耐久性の向上等を図ることができる。さらに、リブ41をそれぞれ側壁部33に連結することで、リブ41、及び、側壁部33の強度、及び、剛性を高めることができる。
【0069】
(c)上記実施形態では、係止部34のうち2つが、係止突部36の上面において略水平方向に延在する部位を有しない構成とされているが、係止突部36の上面において略水平方向に延在する部位を有するように構成し、掛け部38についても設けることとしてもよい。さらに、例えば、係止突部36の上面において略水平方向に延在する部位を有しない係止部34に関し、貫通孔37を省略してもよい。
【0070】
また、上記実施形態のベース部32には、係止突部36の上面において略水平方向に延在する部位を有しない係止部34に対応する位置にも工具を挿入可能な大きさの操作開口部45が設けられているが、工具が挿入不可能、又は、挿入し難くなるように、当該操作開口部45を小さくしてもよいし、省略してもよい。さらに、操作開口部45の目印部46の形状や位置を変更したり、省略したりすることも可能である。但し、上記のように、略円弧状の目印部46を対応する係止部34の横幅方向中央部に対応して設けることで、操作開口部45に挿入した工具を目印部46に当てることで、掛け部38の位置を特定して工具の先端部を掛け部38に引っ掛ける作業を行い易くしたり、係止部34を弾性変形させる際に工具の位置ずれを抑制したりすることができる。
【0071】
(d)上記実施形態において、IDタグ21の外形状は特に限定されるものではなく、例えば、略円柱状に構成されていてもよいし、角部を面取り形状としなくてもよい。さらに、IDタグ21は、アクティブ型のICタグに限定されるものではなく、パッシブ型やセミアクティブ型のIDタグであってもよい。加えて、IDタグ21(タグ収容部22)の配置については特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0072】
(e)上記実施形態では、上構成部9、下構成部10、及び、タグホルダ31はポリプロピレンにより構成されているが、ポリエチレン、PET、ポリアミド等その他の樹脂材料により構成されることとしてもよい。また、上記実施形態では、2方差しタイプのパレット1に具体化されているが、4方差しのパレットに適用することも可能である。さらに、例えば、下デッキ部5において、ハンドリフトのフォークの下面側に取付けられたキャスターを接地可能とするキャスター用開口部等の開口部が設けられるようなパレット(片面仕様タイプのパレット)に具体化してもよい。
【0073】
(f)上記実施形態では、タグ収容部22の上収容部23の補助壁部26と、下収容部24の補助壁部26とが互いに連結されているが、上収容部23の補助壁部26と、下収容部24の補助壁部26とが上下に離間するような構成としてもよい。また、上記実施形態では、パレット1の上構成部9、及び、下構成部10が同一形状であり、タグ収容部22がパレット1を上下に貫通し、タグ収容部22の上部及び下部に対してそれぞれタグホルダ31を取付けることでIDタグ21を保持する構成とされているが、特にかかる構成に限定されるものではない。例えば、IDタグ21の下面側を支持する(保持する)構成をパレットに設けることとしてもよい。この場合、パレットに取付けられるタグホルダ31は1つとなる。さらに、上記実施形態では、上構成部9と、下構成部10とが別々に形成された後、互いに溶着されることでパレット1が構成されているが、全体が一体的に構成されるパレット(例えば、下デッキ部5が省略されたようなパレット)に具体化することも可能である。
【0074】
加えて、上記実施形態では、パレット1にIDタグ21が取付けられる構成とされているが、例えば、特定の容器を複数個まとめて載置して運搬するための運搬具や、台車の荷台等に対し、タグホルダ31を使用して、IDタグ21を取付けるような構成に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…パレット、2…側柱部、3…中央柱部、4…上デッキ部、5…下デッキ部、9…上構成部、10…下構成部、21…IDタグ、22…タグ収容部、23…上収容部、24…下収容部、25…挿入開口部、28…被係止部、31…タグホルダ、32…ベース部、33…側壁部、34…係止部、35…係止片、36…係止突部、37…貫通孔、38…掛け部、40…規制部、41…リブ、42…水平規制部、44…傾斜部、45操作開口部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17