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特開2022-47781液体供給装置、人工筋肉および人工筋肉の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047781
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】液体供給装置、人工筋肉および人工筋肉の検査方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/06 20060101AFI20220317BHJP
   F15B 15/10 20060101ALI20220317BHJP
   F15B 1/26 20060101ALI20220317BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
F15B21/06
F15B15/10 H
F15B1/26
B25J19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153749
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 真也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 朋也
(72)【発明者】
【氏名】梅林 宏江
【テーマコード(参考)】
3C707
3H081
3H082
3H086
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CT05
3C707HS21
3C707HS27
3H081AA18
3H081BB05
3H081CC21
3H081CC24
3H081CC29
3H081DD07
3H081HH10
3H082AA21
3H082AA30
3H082BB02
3H082CC05
3H082DA02
3H082DA16
3H082DB26
3H082DB33
3H082EE06
3H086AA26
3H086AB06
3H086AC03
3H086AE02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液体が供給される人工筋肉のチューブの劣化や破損の予兆を事前に検出可能にする方法の提供。
【解決手段】液体供給装置は、内部に液体が供給されると共に当該内部の液圧の上昇に応じて径方向に膨張するチューブを含む人工筋肉に液体を供給する液体供給装置であって、蛍光物質FAが混入された液体OfをチューブTの内部に供給するものであり、人工筋肉の検査に際しては、蛍光物質が混入されている液体をチューブの内部に供給すると共に、当該人工筋肉にブラックライトBLを照射する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体が供給されると共に前記内部の液圧の上昇に応じて径方向に膨張するチューブを含む人工筋肉に前記液体を供給する液体供給装置であって、
蛍光物質が混入された前記液体を前記チューブの前記内部に供給する液体供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体供給装置において、
前記蛍光物質が混入された前記液体を貯留するタンクと、
前記タンク内の前記液体を吸引して吐出するポンプと、
前記ポンプからの前記液体の圧力または流量を調整して前記人工筋肉に供給する液体調整部とを含む液体供給装置。
【請求項3】
内部に液体が供給されると共に前記内部の液圧の上昇に応じて径方向に膨張するチューブを含む人工筋肉において、
前記チューブの少なくとも外表面上に形成された蛍光物質を含む発光層を備える人工筋肉。
【請求項4】
内部に液体が供給されると共に前記内部の液圧の上昇に応じて径方向に膨張するチューブを含む人工筋肉の検査方法であって、
蛍光物質が混入されている前記液体を前記チューブの前記内部に供給すると共に、前記人工筋肉にブラックライトを照射する人工筋肉の検査方法。
【請求項5】
内部に液体が供給されると共に前記内部の液圧の上昇に応じて径方向に膨張するチューブを含む人工筋肉の検査方法であって、
前記チューブの少なくとも外表面上に蛍光物質を含む発光層を形成しておき、前記人工筋肉にブラックライトを照射する人工筋肉の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内部の液圧の上昇に応じて径方向に膨張するチューブを含む人工筋肉に液体を供給する液体供給装置、人工筋肉および人工筋肉の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マッキベン型の人工筋肉(流体圧アクチュエータ)として、流体の圧力によって膨張および収縮する円筒状のチューブと、所定方向に配向されたコードを編み込んだ構造体であって当該チューブの外周面を覆うスリーブとを含むアクチュエータ本体部と、アクチュエータ本体部の軸方向において当該アクチュエータ本体部の端部を封止する封止機構とを含むものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる人工筋肉によれば、チューブ内に流体を供給して当該チューブを径方向に膨張させると共に軸方向に収縮させて引張力を得ることができる。
【0003】
また、従来、両端部が栓体で閉じられたゴムチューブおよび当該ゴムチューブを覆う網体を含む2つのゴム人工筋を含む関節装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この関節装置は、2つのゴム人工筋に加えて、基台と、支持部材を介して基台により支持されたプーリと、プーリに固定されたアームと、プーリの回転中立に対して両側に位置するように基台に取り付けられると共にゴム人工筋の一端がそれぞれ連結される2つの係止ブラケットと、2つのゴム人工筋の他端に連結されると共にプーリに巻き掛けられるロープとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-35930号公報
【特許文献2】特開昭63-216691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような人工筋肉は、容易に軽量化することができるものであり、作動流体として作動油等の液体を用いることで、モータや油圧シリンダに比べて力/自重比をより大きくすることが可能となる。ただし、人工筋肉のチューブが破損してしまうと、当該チューブから液体が流出してしまい、人工筋肉を含む装置のみならず周囲環境にも影響を与えてしまうおそれがある。従って、液体により駆動される人工筋肉の活用を促進させるためには、人工筋肉のチューブの劣化や破損の予兆を事前に検出可能にする必要がある。
【0006】
そこで、本開示は、液体が供給される人工筋肉のチューブの劣化や破損の予兆を事前に検出可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の液体供給装置は、内部に液体が供給されると共に前記内部の液圧の上昇に応じて径方向に膨張するチューブを含む人工筋肉に前記液体を供給する液体供給装置であって、蛍光物質が混入された前記液体を前記チューブの前記内部に供給するものである。
【0008】
本開示の液体供給装置は、人工筋肉のチューブを径方向に膨張させながら軸方向に収縮させるべく、蛍光物質が混入された液体を当該チューブの内部に供給するものである。これにより、人工筋肉に対して外側から比較的長い波長をもった紫外光であるブラックライトを照射すれば、劣化により薄肉化したチューブの一部や、破断に至っていない亀裂が生じているチューブの一部等の周辺の液体に含まれる蛍光物質からの光(蛍光)を外部から確認することができる。この結果、本開示の液体供給装置によれば、人工筋肉に対して外側からブラックライトを照射して蛍光物質からの光の有無を確認することで、人工筋肉のチューブの劣化や破損の予兆を事前に精度よく検出することが可能となる。
【0009】
本開示の人工筋肉は、内部に液体が供給されると共に前記内部の液圧の上昇に応じて径方向に膨張するチューブを含む人工筋肉において、前記チューブの少なくとも外表面上に形成された蛍光物質を含む発光層を含むものである。
【0010】
本開示の人工筋肉に比較的長い波長をもった紫外光であるブラックライトを照射した際には、劣化により薄肉化したチューブの一部や、チューブに生じた破断に至っていない亀裂等の周辺における発光層の発光状態が正常部分とは異なることになる。従って、本開示の人工筋肉では、当該人工筋肉に対して外側からブラックライトを照射して発光層の発光状態を確認することで、チューブの劣化や破損の予兆を事前に精度よく検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示のロボット装置を示す概略構成図である。
図2】本開示のロボット装置を示す拡大図である。
図3】本開示のロボット装置の液体供給装置を示す概略構成図である。
図4】目標圧力設定マップを例示する説明図である。
図5】本開示の液体供給装置から液体が供給される人工筋肉の検査手順を説明するための模式図である。
図6】本開示の液人工筋肉の検査手順を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
図1は、本開示のロボット装置1を示す概略構成図であり、図2は、ロボット装置1を示す拡大図である。これらの図面に示すロボット装置1は、ロボットアーム(ロボット本体)2と、液体供給装置10と、装置全体を制御する制御装置100とを含む。ロボットアーム2は、複数(本実施形態では、3つ)の関節(ピン結合部)J1,J2,J3と、複数(本実施形態では、3つ)のアーム(リンク)3と、関節J1,J2,J3ごとに例えば偶数個(本実施形態では、4つ)ずつ設けられる人工筋肉としての複数の液圧アクチュエータMと、先端側のアーム3の手先に取り付けられる把持部としてのハンド部(ロボットハンド)4とを含む多関節アームである。ハンド部4は、対象となる物体(以下、「把持対象」という。)を把持するように制御装置100により制御される。また、液体供給装置10は、制御装置100により制御されて各液圧アクチュエータMに液体としての作動油(作動流体)を給排する。これにより、ロボットアーム2を油圧(液圧)により駆動してハンド部4を所望の位置に移動させることができる。
【0014】
ロボットアーム2の各液圧アクチュエータMは、図2に示すように、作動油の圧力によって膨張および収縮するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含む、いわゆるマッキベン型の人工筋肉である。チューブTは、高い耐油性をもった例えばゴム材等の弾性材により円筒状に形成されており、当該チューブTの両端部は、封止部材Cにより封止されている。チューブTの基端側(液体供給装置10側、図2中下端側)の封止部材Cには、作動油の出入口IOが形成されている。編組スリーブSは、所定方向に配向された複数のコードを互いに交差するように編み込むことにより円筒状に形成されており、軸方向および径方向に収縮可能である。編組スリーブSを形成するコードとしては、繊維コード、高強度繊維、極細のフィラメントによって構成される金属製コード等を採用することができる。かかる液圧アクチュエータMのチューブT内に上記出入口IOから作動油を供給してチューブT内の作動油の圧力を高めることで、チューブTは、編組スリーブSの作用により径方向に膨張すると共に軸方向に収縮し、内部の作動油の圧力に応じた収縮力を発生する。
【0015】
図1および図2に示すように、複数のアーム3のうち、最基端側(最も液体供給装置10側)のアーム3は、関節J1を介してリンクとしての支持部材5により回動自在に支持される。また、2つのアーム3同士が、関節J2またはJ3を介して互いに回動自在に連結される。更に、各アーム3の先端部(手先側の端部)には、連結部材6が固定されている。図示するように、支持部材5は、最基端側の関節J1に対応した複数(4つ)の液圧アクチュエータMの基端側の封止部材Cを回動自在に支持する。また、各アーム3の連結部材6は、基端側に位置する関節J1またはJ2に対応した複数(4つ)液圧アクチュエータMの先端側(手先側)の封止部材Cを回動自在に支持する。更に、各連結部材6は、先端側に位置する関節J2またはJ3に対応した複数(4つ)液圧アクチュエータMの基端側の封止部材Cを回動自在に支持する。
【0016】
より詳細には、支持部材5は、関節J1に対応した2つの液圧アクチュエータMの基端側の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持する。また、最基端側のアーム3の連結部材6は、関節J1に対応した当該2つの液圧アクチュエータMの先端側の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。更に、支持部材5は、関節J1に対応した残り2つの液圧アクチュエータMの基端側の封止部材Cを上記第1の連結軸と平行に延びる第3の連結軸を介して回動自在に支持する。また、最基端側のアーム3の連結部材6は、関節J1に対応した当該残り2つの液圧アクチュエータMの先端側の封止部材Cを上記第2の連結軸と平行に延びる第4の連結軸を介して回動自在に支持する。同様に、関節J2またはJ3を介して互いに連結される2つのアーム3の連結部材6も、上述のような複数の連結軸を介して、当該関節J2またはJ3に対応した複数(4つ)の液圧アクチュエータMの対応する封止部材Cを回動自在に支持する。
【0017】
これにより、関節J1-J3の関節軸から手先側(ハンド部4側)に延びる各アーム3の両側には、液圧アクチュエータMが本実施形態では2つずつ対応するアーム3と平行に配列される。そして、各アーム3の一側に配置される2つの液圧アクチュエータMは、1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第1の人工筋肉(一方の拮抗筋)AM1(図3参照)を構成し、各アーム3の他側に配置される2つの液圧アクチュエータMは、当該第1の人工筋肉AM1と対をなす1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第2の人工筋肉(他方の拮抗筋)AM2(図3参照)を構成する。ただし、第1の人工筋肉AM1を構成する液圧アクチュエータMの数と、第2の人工筋肉AM2を構成する液圧アクチュエータMの数とが異なっていてもよい。また、本実施形態において、1つの関節J1,J2またはJ3に対して設けられる複数(4つ)の液圧アクチュエータMは、互いに同一の諸元を有する。ただし、1つの関節J1,J2またはJ3に対応した複数の液圧アクチュエータMの諸元は、必ずしも同一である必要はなく、例えば、第1の人工筋肉AM1を構成する液圧アクチュエータMの諸元と、第2の人工筋肉AM2を構成する液圧アクチュエータMの諸元とが異なっていてもよい。更に、各アーム3は、中空に形成されており、各アーム3の内部には、液体供給管としての複数のホースH(図2における破線参照)が配置される。各ホースHは、対応する液圧アクチュエータMの基端側の封止部材Cに形成された出入口IOに接続され、各液圧アクチュエータMのチューブT内には、ホースHを介して液体供給装置10からの作動油(油圧)が供給される。
【0018】
従って、制御装置100により液体供給装置10を制御することで、第1の人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMのチューブT内の油圧と、第1の人工筋肉AM1と対をなす第2の人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMのチューブT内の油圧とを互いに異ならせることができる。これにより、4つの液圧アクチュエータMすなわち対をなす(一組の)第1および第2の人工筋肉AM1,AM2から連結部材6を介して各アーム3に力(回転トルク)を伝達し、支持部材5または基端側のアーム3に対して各アーム3を回動させて関節J1-J3の関節角度を変化させることが可能となる。本実施形態において、第1の人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMと、第1の人工筋肉AM1と対をなす第2の人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMとは、チューブTが所定量(例えば、自然長の10%程度)だけ軸方向に収縮した状態を初期状態として液体供給装置10からの油圧により拮抗駆動される。
【0019】
ロボット装置1の液体供給装置10は、図1に示すように、作動油貯留部(液体貯留部)を画成するタンク11と、当該タンク11を上下方向に延びる回動軸(図1における一点鎖線参照)の周りに回動自在に支持するベース部12とを含む。タンク11は、例えば上端および下端が閉鎖された筒体であり、内部に作動油を貯留可能なものである。本実施形態において、タンク11内に貯留される作動油Ofには、比較的長い波長(例えば、315-400nm)をもった紫外光であるブラックライトの照射に応じて発光する例えばナフタルイミド系添加剤といった蛍光物質(蛍光剤)FAが混入されている(図3参照)。また、ロボットアーム2の支持部材5は、図2に示すように、タンク11の上壁部11uに図示しないボルト等を介して固定される。すなわち、ロボットアーム2は、液体供給装置10のタンク11(上壁部11u)により支持される。
【0020】
ベース部12は、ロボットアーム2およびタンク11の下方に位置するようにロボット装置1の設置箇所に固定されるか、あるいは図示しない無人搬送車(AGV)に搭載(固定)される。また、ベース部12は、タンク11を上記回動軸の周りに回動させる図示しない回動ユニットを支持している。これにより、回動ユニットを作動させることで、ロボットアーム2およびタンク11を当該回動軸の周りに一体に回動させることが可能となる。回動ユニットは、液体供給装置10から供給される油圧により駆動される揺動モータであってもよく、電動モータ等を含むものであってもよい。
【0021】
更に、液体供給装置10は、図3に示すように、タンク11およびベース部12に加えて、液体供給源としてのポンプ13と、タンク11内に配置される図示しないバルブボディと、元圧生成バルブ14と、それぞれ複数の調圧弁(調圧装置すなわち液体調整部)としての第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152と、それぞれ複数の供給遮断部としての第1および第2供給遮断弁161,162とを含む。ポンプ13、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152並びに第1および第2供給遮断弁161,162は、何れも制御装置100により制御される。第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152と、第1および第2供給遮断弁161,162とは、関節J1,J2,J3ごとにそれぞれ1つずつ設けられる。
【0022】
ポンプ13は、例えば電動ポンプであり、タンク11内に貯留された作動油Ofを吸引して吐出口から吐出する。ポンプ13は、タンク11内に配置されるポンプ部と、電動モータおよび減速ギヤ機構とを有すると共にタンク11内またはタンク11外に配置される駆動部とを含む。元圧生成バルブ14は、図示しない信号圧生成バルブからの信号圧に応じてポンプ13から吐出される作動油Ofの一部をドレン(調圧)して元圧を生成し、元圧をバルブボディに形成された油路(液体通路)L0に供給する。元圧生成バルブ14の信号圧生成バルブとしては、例えば、制御装置100による通電制御されるリニアソレノイドバルブが用いられる。
【0023】
第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152は、制御装置100により通電制御される電磁部15eやスプール15s、スプール15sを電磁部15e側(図3中上側)に付勢するスプリングSP等を含み、バルブボディ内に配置される。また、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152は、バルブボディの油路L0に連通する入力ポート15iと、入力ポート15iと連通可能な出力ポート15oと、出力ポート15oに連通するフィードバックポート15fと、出力ポート15oと連通可能なドレンポート15dとを含む。
【0024】
本実施形態において、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152は、電磁部15eに電流が供給される際に開弁する常閉弁であり、各電磁部15eは、印加される電流に応じてスプール15sを軸方向に移動させる。これにより、電磁部15e(コイル)への給電により当該電磁部15eからスプール15sに付与される推力と、スプリングSPの付勢力と、出力ポート5oからフィードバックポート5fに供給された油圧によりスプール5sに作用する電磁部5e側への推力とをバランスさせることで、元圧生成バルブ14(ポンプ13)側から入力ポート15iに供給されて出力ポート15oから流出する作動油を所望の圧力に調圧することができる。また、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152のドレンポート15dは、図3に示すように、それぞれ油路L3を介してタンク11内の作動油貯留部に連通する。
【0025】
第1および第2供給遮断弁161,162は、互いに同一の構造を有する電磁式スプール弁(電磁弁)であり、図3に示すように、入力ポート16i、第1および第2出力ポート16oa,16obを有するスリーブと、当該スリーブの内部に軸方向に摺動自在(移動自在)に配置される図示しないスプールと、制御装置100により通電制御されてスプールを移動させる電磁部16eと、スプールを電磁部16e側に付勢する図示しないスプリングとをそれぞれ含む。第1供給遮断弁161の入力ポート16iは、バルブボディに形成された油路を介して第1リニアソレノイドバルブ151の出力ポート15oに接続され、第2供給遮断弁162の入力ポート16iは、バルブボディに形成された油路を介して第2リニアソレノイドバルブ152の出力ポート15oに接続される。
【0026】
また、第1供給遮断弁161の第1出力ポート16oaは、油路L11を介して対応する上記第1の人工筋肉AM1を構成する一方の液圧アクチュエータM(チューブT)の作動油の出入口IOに接続される。更に、第1供給遮断弁161の第2出力ポート16obは、油路L12を介して当該第1の人工筋肉AM1を構成する他方の液圧アクチュエータM(チューブT)の作動油の出入口IOに接続される。また、第2供給遮断弁162の第1出力ポート16oaは、油路L21を介して対応する上記第2の人工筋肉AM2を構成する一方の液圧アクチュエータM(チューブT)の作動油の出入口IOに接続される。更に、第2供給遮断弁162の第2出力ポート16obは、油路L22を介して当該第2の人工筋肉AM2を構成する他方の液圧アクチュエータM(チューブT)の作動油の出入口IOに接続される。
【0027】
本実施形態において、第1および第2供給遮断弁161,162は、電磁部16eに供給される電流に応じて、完全連通状態、第1部分連通状態、第2部分連通状態および完全遮断状態を選択的に形成する。第1および第2供給遮断弁161,162が完全連通状態を形成した際には、入力ポート16iと第1および第2出力ポート16oa,16obの双方とが連通する。第1および第2供給遮断弁161,162が第1部分連通状態を形成した際には、入力ポート16iと第2出力ポート16obとが連通すると共に入力ポート16iと第1出力ポート16oaとの連通が遮断される。第1および第2供給遮断弁161,162が第2部分連通状態を形成した際には、入力ポート16iと第1出力ポート16oaとが連通すると共に入力ポート16iと第2出力ポート16obとの連通が遮断される。第1および第2供給遮断弁161,162が完全遮断状態を形成した際には、入力ポート16iと第1および第2出力ポート16oa,16obとの連通が遮断される。
【0028】
ロボット装置1の制御装置100は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイクロコンピュータや各種ロジックIC等(何れも図示省略)を含む。制御装置100は、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152の下流側で油路L0における作動油Ofの圧力を検出する図示しない元圧センサ、第1、第2リニアソレノイドバルブ151,152並びに第1、第2供給遮断弁161,162の電源の電圧を検出する図示しない電圧センサの検出値等を入力する。制御装置100は、元圧センサにより検出される油路L0における油圧が目標値になるように、ポンプ13をデューティ制御すると共に、元圧生成バルブ14の信号圧生成バルブの電磁部に供給される電流を制御する。
【0029】
また、制御装置100は、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152から各液圧アクチュエータMに要求に応じた油圧が供給されるように第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152への電流指令値を設定し、当該電流指令値に基づいて各電磁部15eに供給される電流を制御する。更に、制御装置100は、ロボット装置1を作動させる間、基本的に、第1および第2供給遮断弁161,162が上述の完全連通状態を形成するように各電磁部16eに供給される電流を制御する。また、制御装置100は、第1リニアソレノイドバルブ151の電磁部15eを流れる電流を検出する電流検出部と、第2リニアソレノイドバルブ152の電磁部15eを流れる電流を検出する電流検出部とを含み(何れも図示省略)、各電流検出部により検出される電流を監視する。
【0030】
更に、制御装置100は、各液圧アクチュエータMにおける油圧を検出する図示しない圧力センサからの検出値に応じて、第1部分連通状態または第2部分連通状態を形成するように第1および第2供給遮断弁161,162の該当するものを制御する。これにより、破損等により第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152の何れかに対応した2つの液圧アクチュエータMの一方から作動油Ofが流出した場合に、当該2つの液圧アクチュエータMの他方に継続して作動油Ofを供給してロボットアーム2の挙動の乱れを抑えつつ、破損した液圧アクチュエータMからの作動油Ofの更なる流出を良好に抑制することが可能となる。また、制御装置100により完全遮断状態を形成するように第1および第2供給遮断弁161,162の該当するものを制御することで、第1または第2リニアソレノイドバルブ151,152からそれに対応した2つの液圧アクチュエータMへの作動油Ofの供給を遮断したり、当該2つの液圧アクチュエータMからの作動油Ofの流出を規制してロボットアーム2の意図しない動作の発生を抑制したりすることができる。
【0031】
ロボット装置1のハンド部4を把持対象まで移動させ、ハンド部4に把持対象を把持させて移送させる際、ロボットアーム2の作動開始に先立って(ハンド部4の移動開始前に)、制御装置100は、ハンド部4の把持対象の位置や、ユーザにより与えられるハンド部4の移動中の目標速度および目標加速度に基づいて、当該ハンド部4の最終的な目標位置である目標到達位置(3次元座標)と、ハンド部4の初期位置から目標到達位置までの軌道であって複数の目標位置すなわち経由位置(3次元座標)を含む目標軌道とを設定する。また、制御装置100は、ロボットアーム2に設けられた複数の関節角度センサ7(図1参照)の対応する何れかにより検出される関節J1-J3の関節角度θ1,θ2,θ3とロボットアーム2(ロボット装置1)の諸元(アーム3の寸法等)とに基づいて、ハンド部4(予め定められた基準点)の現在位置(3次元座標)を導出する。以下、“i”を関節の番号として(ただし、本実施形態において、i=1,2,3である。)、i番目の関節を“関節Ji”といい、関節Jiの関節角度を“θi”という。
【0032】
更に、制御装置100は、関節J1-J3ごとに、関節Jiを介して連結される2つのアーム3(アーム3および支持部材5)を相対的に回動させるための関節トルクの目標値(目標駆動力)である目標トルクTtag(i)を設定する。目標トルクTtag(i)は、ハンド部4が現在位置から目標位置まで移動するように関節Jiを介して連結された2つのアーム3等を相対的に回動させる関節トルクTj(i)と、ロボットアーム2の姿勢を維持するのに必要な重力補償トルクTc(i)との和として導出される。また、制御装置100は、少なくともロボット装置1すなわちハンド部4の目標位置に基づいて、関節J1-J3ごとに、関節Jiがもつべき剛性、すなわち関節Jiを介して連結される2つのアーム3等(リンク)を単位角度だけ相対的に回動させるのに必要な力(トルク)であって、当該2つのアーム3等を相対的に回動させようとする外力に対する関節Jiの動きにくさを示す目標剛性R(i)を設定する。
【0033】
次いで、制御装置100は、関節J1-J3ごとに、ハンド部4の現在位置に応じた関節Jiの関節角度θiに基づいて、当該関節Jiに対応した上記第1の人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMの収縮率Cr1(i)と、関節Jiに対応した上記第2の人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMの収縮率Cr2(i)とを設定する。収縮率Cr1(i),Cr2(i)は、それぞれ該当する液圧アクチュエータMのチューブTの軸方向における自然長に対する収縮したチューブTの軸長の割合を示す。加えて、制御装置100は、関節J1-J3ごとに、目標トルクTtag(i)と目標剛性R(i)とに基づいて、関節Jiを介して連結された2つのアーム3等を目標トルクTtag(i)で相対的に回動させる際に当該関節Jiに対応した複数(一対)の液圧アクチュエータMに要求される収縮力Fc1(i),Fc2(i)を算出する。収縮力Fc1(i)は、各関節Jiに対応した第1の人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMのチューブTの収縮により発生させるべき力であり、収縮力Fc2(i)は、各関節Jiに対応した第2の人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMのチューブTの収縮により発生させるべき力である。
【0034】
収縮率Cr1(i),Cr2(i)および収縮力Fc1(i),Fc2(i)を算出した後、制御装置100は、図4に例示する目標圧力設定マップから収縮率Cr1(i)と収縮力Fc1(i)とに対応した圧力を適宜線形補間を行いながら導出して上記第1の人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMの目標圧力Ptag1(i)に設定する。更に、制御装置100は、当該目標圧力設定マップから収縮率Cr2(i)と収縮力Fc2(i)とに対応した圧力を導出して上記第2の人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMの目標圧力Ptag2(i)に設定する。図4の目標圧力設定マップは、人工筋肉としての液圧アクチュエータMの静特性を示すものであり、液圧アクチュエータMに供給される油圧ごとに、チューブTの収縮率と当該チューブTが発生する収縮力との関係を規定するように予め実験・解析を経て作成されたものである。このように、チューブTの収縮率Cr1(i),Cr2(i)および収縮力Fc1(i),Fc2(i)に対応した圧力を目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)に設定することで、ロボットアーム2への要求に応じて目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を精度よく設定することが可能となる。
【0035】
そして、制御装置100は、設定した目標圧力Ptag1(i)およびPtag2(i)を第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152の電磁部15eへの電流指令値(目標電流)に直接変換し、当該電流指令値に基づいて第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152を制御(PWM制御)する。これにより、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152から目標圧力Ptag1(i)またはPtag2(i)に応じた油圧が各液圧アクチュエータMのチューブTに供給され、人工筋肉としての各液圧アクチュエータMに供給される油圧を検出するセンサを用いることなく、各液圧アクチュエータMを要求に対して応答性よく高精度に作動させることが可能となる。この結果、複数の液圧アクチュエータMにより各アーム3を回動させてロボット装置1のハンド部4を所望の位置に移動させることができる。
【0036】
なお、各関節Jiの目標剛性R(i)は、少なくともロボット装置1すなわちハンド部4の現在位置に基づいて設定されてもよく、収縮率Cr1(i),Cr2(i)は、ロボット装置1のハンド部4の目標位置に応じた各関節Jiの目標角度に基づいて設定されてもよい。また、少なくともロボット装置1のハンド部4の目標位置または現在位置に基づいて関節Jiに対応した上記第1および第2の人工筋肉AM1,AM2の一方を構成する2つの液圧アクチュエータMに発生させる第1収縮力が設定されてもよく、目標トルクTtag(i)と当該第1収縮力とに基づいて当該第1および第2の人工筋肉AM1,AM2の他方を構成する2つの液圧アクチュエータMに発生させる第2収縮力が設定されてもよい。更に、ロボット装置1において、目標トルクTtag(i)等に応じて、予め定められた一定の圧力が関節Jiに対応した第1および第2の人工筋肉AM1,AM2の一方を構成する2つの液圧アクチュエータMの目標圧力である第1目標圧力に設定されてもよく、目標トルクTtag(i)と第1目標圧力とに基づいて当該第1および第2の人工筋肉AM1,AM2の他方を構成する2つの液圧アクチュエータMの目標圧力である第2目標圧力が設定されてもよい。
【0037】
続いて、図5を参照しながら、ロボット装置1における各液圧アクチュエータ(人工筋肉)Mの検査手順について説明する。
【0038】
ロボット装置1の各液圧アクチュエータMの検査は、ロボット装置1(ロボットアーム2)の動作停止時あるいは作動中に行われる。検査に際して、各液圧アクチュエータMのチューブTの内部には、上述の蛍光物質FAを含む作動油Ofが当該チューブTの内周面の概ね全体に接触する程度に供給されていればよい。また、チューブT内の油圧は、対応するアーム3等を回動させることができる程度まで高められる必要はない。そして、図5に示すように、各液圧アクチュエータMの全体に対してブラックライト照射装置50から比較的長い波長をもった紫外光であるブラックライト(紫外光)BLを照射する。更に、カメラ(撮像装置)55により各液圧アクチュエータMのブラックライトBLが照射された部分を順次撮像して複数の検査画像データを得る。
【0039】
このように、チューブTの内部に蛍光物質FAを含む作動油Ofが供給された状態で、液圧アクチュエータMに対して外側からブラックライトBLを照射すれば、劣化により薄肉化されたチューブTの一部あるいは破断に至っていない亀裂が生じているチューブTの一部等である劣化部Tdの周辺の作動油Ofに含まれる蛍光物質FAからの光(蛍光)を編組スリーブS越しに外部から確認することができる。従って、液体供給装置10を含むロボット装置1では、上述のカメラ(撮像装置)55により取得された複数の検査画像データを用いて蛍光物質FAからの光の有無を確認することで、各液圧アクチュエータMのチューブTの劣化や破損の予兆を事前に精度よく検出することが可能となる。
【0040】
また、カメラ(撮像装置)55により取得された複数の検査画像データに画像処理を施して蛍光物質FAからの光(蛍光)が確認されたか否かを判定することで、チューブTの劣化や破損の予兆の検出精度をより向上させることができる。ただし、液圧アクチュエータMの検査に際しては、必ずしもカメラ55等の撮像装置により当該液圧アクチュエータMのブラックライトBLが照射された部分を撮像する必要はない。すなわち、液圧アクチュエータMのブラックライトBLが照射された部分を編組スリーブS越しに外部から作業員の目視により確認して、チューブTの劣化や破損の予兆の有無を判別してもよい。
【0041】
図6は、上記ロボット装置1に適用され得る本開示の人工筋肉としての他の液圧アクチュエータMxを示す概略構成図である。同図に示す液圧アクチュエータMxでは、チューブTxの外周面(外表面)上に紫外光であるブラックライトBLの照射に応じて発光する蛍光物質(蛍光剤)を含む発光層FLが形成されている。発光層FLは、チューブTの外周面に蛍光塗料を塗布することに形成されたものであってもよく、チューブTxの外周面に蛍光物質を含む樹脂等を成膜することにより形成されたものであってもよい。また、チューブTxの全体が蛍光物質を含む素材により形成されてもよい。そして、液圧アクチュエータMxには、作動流体として、蛍光物質を含まない一般的な作動油Oが液体供給装置10から供給される。
【0042】
液圧アクチュエータMxの検査も、ロボット装置1(ロボットアーム2)の動作停止時あるいは作動中に行われる。この場合も、各液圧アクチュエータMxのチューブTxの内部には、作動油Oが当該チューブTxの内周面の概ね全体に接触する程度に供給されていればよい。また、チューブTx内の油圧は、対応するアーム3等を回動させることができる程度まで高められる必要はない。そして、図6に示すように、液圧アクチュエータMxの全体に対してブラックライト照射装置50からブラックライトBLを照射する。更に、カメラ(撮像装置)55により各液圧アクチュエータMxのブラックライトBLが照射された部分を順次撮像して複数の検査画像データを得る。
【0043】
かかる液圧アクチュエータMxでは、劣化により薄肉化されたチューブTの一部あるいは破断に至っていない亀裂が生じているチューブTの一部等である劣化部Tdの周辺で、発光層FLの表面形状に変化を生じて当該発光層FLの外周面における単位面積当たりの蛍光物質の量が減少(変化)する。これにより、チューブTxに劣化部Tdが存在している場合、ブラックライトBLの照射に応じた劣化部Td周辺における発光層FLの発光状態が正常部分とは異なることになる。従って、液圧アクチュエータMxを含むロボット装置1では、カメラ(撮像装置)55により取得された複数の検査画像データを用いて発光層FLの発光状態を確認することで、液圧アクチュエータMxのチューブTxの劣化や破損の予兆を事前に精度よく検出することが可能となる。
【0044】
また、カメラ(撮像装置)55により取得された複数の検査画像データに画像処理を施して発光層FLの発光状態が変化している部分の存否を判定することで、チューブTxの劣化や破損の予兆の検出精度をより向上させることができる。ただし、液圧アクチュエータMxの検査に際しても、必ずしもカメラ55等の撮像装置により当該液圧アクチュエータMxのブラックライトBLが照射された部分を撮像する必要はない。すなわち、液圧アクチュエータMxのブラックライトBLが照射された部分を編組スリーブS越しに外部から作業員の目視により確認して、チューブTxの劣化や破損の予兆の有無を判別してもよい。
【0045】
以上説明したように、ロボット装置1の液体供給装置10は、液圧アクチュエータMのチューブTを径方向に膨張させながら軸方向に収縮させるべく、蛍光物質FAが混入された作動油(液体)Ofを当該チューブTの内部に供給するものである。
【0046】
これにより、液圧アクチュエータMに対して外側から比較的長い波長をもった紫外光であるブラックライトBLを照射すれば、劣化により薄肉化したチューブTの一部あるいは破断に至っていない亀裂が生じているチューブTの一部等である劣化部Tdの周辺の作動油Ofに含まれる蛍光物質FAからの光(蛍光)を編組スリーブS越しに外部から確認することができる。この結果、本開示の液体供給装置10によれば、液圧アクチュエータMに対して外側からブラックライトBLを照射して蛍光物質FAからの光の有無を確認することで、当該液圧アクチュエータMのチューブTの劣化や破損の予兆を事前に精度よく検出することが可能となる。
【0047】
更に、液体供給装置10は、蛍光物質FAが混入された作動油Ofを貯留するタンク11と、当該タンク11内の作動油Ofを吸引して吐出するポンプ13と、当該ポンプ13からの作動油Ofを調圧して各液圧アクチュエータMに供給する第1および第2リニアソレノイドバルブ(液体調整部)151,512とを含む。これにより、人工筋肉としての液圧アクチュエータMに供給される蛍光物質FAを含む作動油Ofを実圧が目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)になるように精度よく調圧することが可能となる。
【0048】
ただし、液体供給装置10において、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152が、電磁部に供給される電流に応じた信号圧を出力するリニアソレノイドバルブ(あるいはオンオフソレノイドバルブ)と、当該信号圧に応じて作動油Ofを調圧するコントロールバルブとで置き換えられてもよい。また、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152は、対応する液圧アクチュエータMに供給される液圧(油圧)が目標圧力になるように制御される流量制御弁で置き換えられてもよい。更に、液体供給装置10から元圧生成バルブ14が省略されてもよく、ポンプ13により発生させられた油圧を蓄えるアキュムレータ(蓄圧器)が液体供給装置10に設けられてもよい。また、液体供給装置10は、水等の作動油以外の液体を液圧アクチュエータMに供給するように構成されてもよい。
【0049】
また、本開示の人工筋肉としての液圧アクチュエータMxは、内部に蛍光物質を含まない作動油Oが供給されると共に内部の油圧の上昇に応じて径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブTxを含み、チューブTxの少なくとも外表面上に蛍光物質を含む発光層FLが形成されたものである。
【0050】
かかる液圧アクチュエータMxに比較的長い波長をもった紫外光であるブラックライトBLを照射した際には、劣化により薄肉化したチューブTxの一部あるいは破断に至っていない亀裂が生じているチューブTxの一部等である劣化部Tdの周辺における発光層FLの発光状態が正常部分とは異なることになる。従って、液圧アクチュエータMxに対して外側からブラックライトBLを照射して発光層FLの発光状態を確認することで、チューブTxの劣化や破損の予兆を事前に精度よく検出することが可能となる。
【0051】
なお、上記実施形態において、人工筋肉としての液圧アクチュエータM,Mxは、内部に作動油が供給されると共に当該内部の油圧の上昇に応じて径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブT,Txと、当該チューブT,Txを覆う編組スリーブSとを含むマッキベン型の人工筋肉であるが、ロボット装置1における液圧アクチュエータM,Mxの構成は、これに限られるものではない。すなわち、液圧アクチュエータMは、液体が供給された際に径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブを含むものであればよく、例えば弾性体により形成された内側筒状部材と、弾性体により形成されると共に内側筒状部材の外側に同軸に配置され外側筒状部材と、内側筒状部材と外側筒状部材との間に配置された繊維層とを含む軸方向繊維強化型の液圧アクチュエータ(例えば、特開2011-137516号参照)であってもよい。
【0052】
そして、ロボット装置1は、少なくとも1つの液圧アクチュエータMとハンド部4とを有するロボットアーム2を含むものに限られず、少なくとも1つの液圧アクチュエータMと、例えばドリルビット等の工具や例えばスイッチ等を押圧する押圧部材といったハンド部4以外の要素が手先に取り付けられたロボットアームとを含むものであってもよい。また、ロボット装置1は、歩行ロボットや、ウェアラブルロボット等であってもよい。更に、ロボットアーム2は、1つの関節と、当該関節に対応した第1および第2の人工筋肉AM1,AM2とを含むものであってもよい。また、関節Jiを介して連結された2つのアーム3等のすべてに必ずしも対をなす複数の液圧アクチュエータ(人工筋肉)Mが設けられる必要はなく、何れか1組の2つのアーム3等に、1つまたは複数の液圧アクチュエータMと、当該液圧アクチュエータMと拮抗するように配置されるスプリングやゴム材等の弾性体とが連結されてもよい。
【0053】
また、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示の発明は、人工筋肉や当該人工筋肉に液体を供給する液体供給装置の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 液体供給装置、11 タンク、13 ポンプ、151 第1リニアソレノイドバルブ(液体調整部)、152 第2リニアソレノイドバルブ(液体調整部)、50 ブラックライト照射装置、55 カメラ、AM1 第1の人工筋肉、AM2 第2の人工筋肉、BL ブラックライト、FA 蛍光物質、FL 発光層、M,Mx 液圧アクチュエータ(人工筋肉)、S 編組スリーブ、T,Tx チューブ、Td 劣化部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6