(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047782
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】ロボット装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153750
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 真也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 朋也
(72)【発明者】
【氏名】石川 智巳
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707DS01
3C707HS21
3C707KS21
3C707KS35
3C707KX10
3C707LV22
(57)【要約】
【課題】液体の供給を受けて作動すると共に関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる一対の人工筋肉に適正に液体を供給して当該人工筋肉を含むロボット装置の効率を向上させる。
【解決手段】本開示のロボット装置は、関節を介して連結された2つのリンクと、それぞれ液体の供給を受けて作動すると共に互いに対をなして当該2つのリンクを相対的に回動させる第1および第2人工筋肉と、液体供給装置とを含み、当該液体供給装置は、第1および第2人工筋肉のうち、重力の作用によりロボット装置に加えられる力に抗して収縮力を発生する一方に液体を供給する第1ポンプと、第1および第2人工筋肉の他方に液体を供給する第2ポンプとを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節を介して連結された2つのリンクと、それぞれ液体の供給を受けて作動すると共に互いに対をなして前記2つのリンクを相対的に回動させる第1および第2人工筋肉とを含むロボット装置であって、
前記第1および第2人工筋肉のうち、重力の作用により前記ロボット装置に加えられる力に抗して収縮力を発生する一方に前記液体を供給する第1ポンプと、前記第1および第2人工筋肉の他方に前記液体を供給する第2ポンプとを含む液体供給装置を備えるロボット装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット装置において、
前記第2ポンプの最大吐出圧力は、前記第1ポンプの最大吐出圧力よりも低いロボット装置。
【請求項3】
請求項1に記載のロボット装置において、
前記第2ポンプの最大吐出圧力は、前記第1ポンプの最大吐出圧力と同一であるロボット装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のロボット装置において、
前記液体供給装置は、
前記第1ポンプからの前記液体の圧力を調圧して第1の元圧を生成する第1レギュレータバルブと、
前記第2ポンプからの前記液体の圧力を調圧して第2の元圧を生成する第2レギュレータバルブと、
前記第1レギュレータバルブからの前記第1の元圧を調圧して前記第1および第2人工筋肉の前記一方に供給する第1調圧バルブと、
前記第2レギュレータバルブからの前記第2の元圧を調圧して前記第1および第2人工筋肉の前記他方に供給する第2調圧バルブと、
を含むロボット装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のロボット装置において、
前記液体供給装置は、前記第1ポンプからの前記液体を前記第1人工筋肉に供給すると共に前記第2ポンプからの前記液体を前記第2人工筋肉に供給する第1状態と、前記第1ポンプからの前記液体を前記第2人工筋肉に供給すると共に前記第2ポンプからの前記液体を前記第1人工筋肉に供給する第2状態とを選択的に形成する切替バルブを含むロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、それぞれ液体の供給を受けて作動すると共に関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる一対の人工筋肉を含むロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マッキベン型の人工筋肉(流体圧アクチュエータ)として、流体の圧力によって膨張および収縮する円筒状のチューブと、所定方向に配向されたコードを編み込んだ構造体であって当該チューブの外周面を覆うスリーブとを含むアクチュエータ本体部と、アクチュエータ本体部の軸方向において当該アクチュエータ本体部の端部を封止する封止機構とを含むものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる人工筋肉によれば、チューブ内に流体を供給して当該チューブを径方向に膨張させると共に軸方向に収縮させて引張力を得ることができる。
【0003】
また、従来、両端部が栓体で閉じられたゴムチューブおよび当該ゴムチューブを覆う網体を含む2つのゴム人工筋を含む関節装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この関節装置は、2つのゴム人工筋に加えて、基台と、支持部材を介して基台により支持されたプーリと、プーリに固定されたアームと、プーリの回転中立に対して両側に位置するように基台に取り付けられると共にゴム人工筋の一端がそれぞれ連結される2つの係止ブラケットと、2つのゴム人工筋の他端に連結されると共にプーリに巻き掛けられるロープとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-35930号公報
【特許文献2】特開昭63-216691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように対をなす2つの人工筋肉を用いることで、関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させることができる。ただし、人工筋肉を含む装置の構造によっては、重力の作用により当該装置に加えられる力が一対の人工筋肉の一方の出力に対して抵抗となり、当該一対の人工筋肉に適正に液体を供給しないと装置全体の効率が悪化するおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は、液体の供給を受けて作動すると共に関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる一対の人工筋肉に適正に液体を供給して当該人工筋肉を含むロボット装置の効率を向上させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のロボット装置は、関節を介して連結された2つのリンクと、それぞれ液体の供給を受けて作動すると共に互いに対をなして前記2つのリンクを相対的に回動させる第1および第2人工筋肉とを含むロボット装置であって、前記第1および第2人工筋肉のうち、重力の作用により前記ロボット装置に加えられる力に抗して収縮力を発生する一方に前記液体を供給する第1ポンプと、前記第1および第2人工筋肉の他方に前記液体を供給する第2ポンプとを含む液体供給装置を含むものである。
【0008】
本開示のロボット装置において、関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる第1および第2人工筋肉の一方は、重力の作用によりロボット装置に加えられる力に抗して収縮力を発生し、当該第1および第2人工筋肉の一方では、収縮力を発生させるのに要求される液体の圧力または流量が増加する傾向となる。これに対して、第1および第2人工筋肉の他方では、上記一方に比べて、収縮力を発生させるのに要求される液体の圧力または流量が減少する傾向となる。従って、第1ポンプから第1および第2人工筋肉の一方に液体を供給すると共に、第1ポンプとは異なる第2ポンプから第1および第2人工筋肉の他方に液体を供給すれば、第1および第2人工筋肉の一方に要求される液体の圧力または流量を良好に確保しつつ、第1および第2人工筋肉の他方に対応した第2ポンプからの液体の圧力または流量を低下させることが可能となる。これにより、第1および第2人工筋肉に単一のポンプから液体を供給する場合に比べて、漏れ量を含むロボット装置における液体の消費流量を低減化し、第2ポンプの消費エネルギを削減することができる。この結果、液体の供給を受けて作動すると共に関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる対をなす第1および第2人工筋肉に適正に液体を供給して当該第1および第2人工筋肉を含むロボット装置の効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示のロボット装置を示す概略構成図である。
【
図3】本開示のロボット装置の液体供給装置を示す概略構成図である。
【
図4】目標圧力設定マップを例示する説明図である。
【
図5】本開示のロボット装置に適用可能な他の液体供給装置を示す概略構成図である。
【
図6】本開示のロボット装置に適用可能な更に他の液体供給装置を示す概略構成図である。
【
図7】本開示のロボット装置に適用可能な他の液体供給装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示のロボット装置1を示す概略構成図であり、
図2は、ロボット装置1を示す拡大図である。これらの図面に示すロボット装置1は、ロボットアーム(ロボット本体)2と、液体供給装置10と、装置全体を制御する制御装置100とを含む。ロボットアーム2は、複数(本実施形態では、3つ)の関節(ピン結合部)J1,J2,J3と、複数(本実施形態では、3つ)のアーム(リンク)3と、関節J1,J2,J3ごとに例えば偶数個(本実施形態では、4つ)ずつ設けられる人工筋肉としての複数の液圧アクチュエータMと、先端側のアーム3の手先に取り付けられる把持部としてのハンド部(ロボットハンド)4とを含む多関節アームである。ハンド部4は、対象となる物体(以下、「把持対象」という。)を把持するように制御装置100により制御される。また、液体供給装置10は、制御装置100により制御されて各液圧アクチュエータMに液体としての作動油(作動流体)を給排する。これにより、ロボットアーム2を油圧(液圧)により駆動してハンド部4を所望の位置に移動させることができる。
【0012】
ロボットアーム2の各液圧アクチュエータMは、
図2に示すように、作動油の圧力によって膨張および収縮するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含む、いわゆるマッキベン型の人工筋肉である。チューブTは、高い耐油性をもった例えばゴム材等の弾性材により円筒状に形成されており、当該チューブTの両端部は、封止部材Cにより封止されている。チューブTの基端側(液体供給装置10側、
図2中下端側)の封止部材Cには、作動油の出入口IOが形成されている。編組スリーブSは、所定方向に配向された複数のコードを互いに交差するように編み込むことにより円筒状に形成されており、軸方向および径方向に収縮可能である。編組スリーブSを形成するコードとしては、繊維コード、高強度繊維、極細のフィラメントによって構成される金属製コード等を採用することができる。かかる液圧アクチュエータMのチューブT内に上記出入口IOから作動油を供給してチューブT内の作動油の圧力を高めることで、チューブTは、編組スリーブSの作用により径方向に膨張すると共に軸方向に収縮し、内部の作動油の圧力に応じた収縮力を発生する。
【0013】
図1および
図2に示すように、複数のアーム3のうち、最基端側(最も液体供給装置10側)のアーム3は、関節J1を介してリンクとしての支持部材5により回動自在に支持される。また、2つのアーム3同士が、関節J2またはJ3を介して互いに回動自在に連結される。更に、各アーム3の先端部(手先側の端部)には、連結部材6が固定されている。図示するように、支持部材5は、最基端側の関節J1に対応した複数(4つ)の液圧アクチュエータMの基端側の封止部材Cを回動自在に支持する。また、各アーム3の連結部材6は、基端側に位置する関節J1またはJ2に対応した複数(4つ)液圧アクチュエータMの先端側(手先側)の封止部材Cを回動自在に支持する。更に、各連結部材6は、先端側に位置する関節J2またはJ3に対応した複数(4つ)液圧アクチュエータMの基端側の封止部材Cを回動自在に支持する。
【0014】
より詳細には、支持部材5は、関節J1に対応した2つの液圧アクチュエータMの基端側の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持する。また、最基端側のアーム3の連結部材6は、関節J1に対応した当該2つの液圧アクチュエータMの先端側の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。更に、支持部材5は、関節J1に対応した残り2つの液圧アクチュエータMの基端側の封止部材Cを上記第1の連結軸と平行に延びる第3の連結軸を介して回動自在に支持する。また、最基端側のアーム3の連結部材6は、関節J1に対応した当該残り2つの液圧アクチュエータMの先端側の封止部材Cを上記第2の連結軸と平行に延びる第4の連結軸を介して回動自在に支持する。同様に、関節J2またはJ3を介して互いに連結される2つのアーム3の連結部材6も、上述のような複数の連結軸を介して、当該関節J2またはJ3に対応した複数(4つ)の液圧アクチュエータMの対応する封止部材Cを回動自在に支持する。
【0015】
これにより、関節J1-J3の関節軸から手先側(ハンド部4側)に延びる各アーム3の両側には、液圧アクチュエータMが本実施形態では2つずつ対応するアーム3と平行に配列される。そして、各アーム3の一側に配置される2つの液圧アクチュエータMは、1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第1の人工筋肉(一方の拮抗筋)AM1(
図3参照)を構成し、各アーム3の他側に配置される2つの液圧アクチュエータMは、当該第1の人工筋肉AM1と対をなす1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第2の人工筋肉(他方の拮抗筋)AM2(
図3参照)を構成する。ただし、第1の人工筋肉AM1を構成する液圧アクチュエータMの数と、第2の人工筋肉AM2を構成する液圧アクチュエータMの数とが異なっていてもよい。また、本実施形態において、1つの関節J1,J2またはJ3に対して設けられる複数(4つ)の液圧アクチュエータMは、互いに同一の諸元を有する。ただし、1つの関節J1,J2またはJ3に対応した複数の液圧アクチュエータMの諸元は、必ずしも同一である必要はなく、例えば、第1の人工筋肉AM1を構成する液圧アクチュエータMの諸元と、第2の人工筋肉AM2を構成する液圧アクチュエータMの諸元とが異なっていてもよい。更に、各アーム3は、中空に形成されており、各アーム3の内部には、液体供給管としての複数のホースH(
図2における破線参照)が配置される。各ホースHは、対応する液圧アクチュエータMの基端側の封止部材Cに形成された出入口IOに接続され、各液圧アクチュエータMのチューブT内には、ホースHを介して液体供給装置10からの作動油(油圧)が供給される。
【0016】
従って、制御装置100により液体供給装置10を制御することで、第1の人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMのチューブT内の油圧と、第1の人工筋肉AM1と対をなす第2の人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMのチューブT内の油圧とを互いに異ならせることができる。これにより、4つの液圧アクチュエータMすなわち対をなす(一組の)第1および第2の人工筋肉AM1,AM2から連結部材6を介して各アーム3に力(回転トルク)を伝達し、支持部材5または基端側のアーム3に対して各アーム3を回動させて関節J1-J3の関節角度を変化させることが可能となる。本実施形態において、第1の人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMと、第1の人工筋肉AM1と対をなす第2の人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMとは、チューブTが所定量(例えば、自然長の10%程度)だけ軸方向に収縮した状態を初期状態として液体供給装置10からの油圧により拮抗駆動される。
【0017】
ロボット装置1の液体供給装置10は、
図1に示すように、作動油貯留部(液体貯留部)を画成するタンク11と、当該タンク11を上下方向に延びる回動軸(
図1における一点鎖線参照)の周りに回動自在に支持するベース部12とを含む。タンク11は、例えば上端および下端が閉鎖された筒体であり、内部に作動油を貯留可能なものである。本実施形態において、ロボットアーム2の支持部材5は、
図2に示すように、タンク11の上壁部11uに図示しないボルト等を介して固定される。すなわち、ロボットアーム2は、液体供給装置10のタンク11(上壁部11u)により支持される。
【0018】
ベース部12は、ロボットアーム2およびタンク11の下方に位置するようにロボット装置1の設置箇所に固定されるか、あるいは図示しない無人搬送車(AGV)に搭載(固定)される。また、ベース部12は、タンク11を上記回動軸の周りに回動させる図示しない回動ユニットを支持している。これにより、回動ユニットを作動させることで、ロボットアーム2およびタンク11を当該回動軸の周りに一体に回動させることが可能となる。回動ユニットは、液体供給装置10から供給される油圧により駆動される揺動モータであってもよく、電動モータ等を含むものであってもよい。
【0019】
更に、液体供給装置10は、
図3に示すように、タンク11およびベース部12に加えて、液体供給源としての第1ポンプ131および第2ポンプ132と、タンク11内に配置される図示しないバルブボディと、第1レギュレータバルブ(第1元圧生成バルブ)141と、第2レギュレータバルブ(第2元圧生成バルブ)142と、それぞれ複数の調圧弁(調圧装置)としての第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152とを含む。第1および第2ポンプ131,132、第1および第2レギュレータバルブ141,142、並びに第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152は、何れも制御装置100により制御される。また、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152は、関節J1,J2,J3ごとにそれぞれ1つずつ設けられる。
【0020】
第1および第2ポンプ131,132は、何れも電動ポンプであり、タンク11内に配置されるポンプ部と、電動モータおよび減速ギヤ機構とを有すると共にタンク11内またはタンク11外に配置される駆動部とをそれぞれ含む。第1および第2ポンプ131,132は、それぞれタンク11内に貯留された作動油を吸引して吐出口から吐出する。本実施形態において、第1ポンプ131(高圧ポンプ)は、ロボット装置1の複数の液圧アクチュエータMに要求される最大油圧に応じた最大吐出圧力を有するものである。これに対して、第2ポンプ132(低圧ポンプ)は、第1ポンプ131の最大吐出圧力よりも低い最大吐出圧力を有するものである。
【0021】
第1レギュレータバルブ141は、信号圧生成バルブSL1からの信号圧に応じて第1ポンプ131から吐出される作動油の一部をドレン(調圧)して第1の元圧を生成し、当該第1の元圧をバルブボディに形成された油路(液体通路)L1に供給する。第1レギュレータバルブ141の信号圧生成バルブSL1は、制御装置100による通電制御されるリニアソレノイドバルブである。第2レギュレータバルブ142は、信号圧生成バルブSL2からの信号圧に応じて第2ポンプ132から吐出される作動油の一部をドレン(調圧)して第1の元圧以下の第2の元圧を生成し、当該第2の元圧をバルブボディに形成された油路(液体通路)L2に供給する。第2レギュレータバルブ142の信号圧生成バルブSL2も、制御装置100による通電制御されるリニアソレノイドバルブである。
【0022】
第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152は、制御装置100により通電制御される電磁部15eやスプール15s、スプール15sを電磁部15e側(
図3中上側)に付勢するスプリングSP等を含み、バルブボディ内に配置される。また、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152は、入力ポート15iと、入力ポート15iと連通可能な出力ポート15oと、出力ポート15oに連通するフィードバックポート15fと、出力ポート15oと連通可能なドレンポート15dとを含む。
【0023】
本実施形態において、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152は、電磁部15eに電流が供給される際に開弁する常閉弁であり、各電磁部15eは、印加される電流に応じてスプール15sを軸方向に移動させる。また、第1リニアソレノイドバルブ(第1調圧バルブ)151の入力ポート15iは、バルブボディの油路L1に連通し、第2リニアソレノイドバルブ(第2調圧バルブ)152の入力ポート15iは、バルブボディの油路L2に連通する。これにより、電磁部15e(コイル)への給電により当該電磁部15eからスプール15sに付与される推力と、スプリングSPの付勢力と、出力ポート5oからフィードバックポート5fに供給された油圧によりスプール5sに作用する電磁部5e側への推力とをバランスさせることで、第1または第2レギュレータバルブ141,142(第1または第2ポンプ131,132)から入力ポート15iに供給されて出力ポート15oから流出する作動油を所望の圧力に調圧することができる。
図3に示すように、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152のドレンポート15dは、それぞれ油路L3を介してタンク11内の作動油貯留部に連通する。
【0024】
ここで、ロボット装置1のロボットアーム2の手先には、ハンド部4に作用する重力による鉛直下方への力Fg(
図1参照)が加えられ、ハンド部4が把持対象を把持している際には、ロボットアーム2の手先に加えられる鉛直下方への力は更に大きくなる。また、ロボット装置1の作動中、ハンド部4は、
図1に示すように、すべてのアーム3およびすべての液圧アクチュエータMの水平方向における片側(
図1における左側)に常時位置する。このため、本実施形態のロボット装置1では、各アーム3の一側に配置される2つの液圧アクチュエータM、すなわち第1人工筋肉AM1が、ハンド部4(および把持対象)への重力の作用によりロボット装置1に加えられる力Fgに抗して収縮力を発生する。これに対して、各アーム3の他側に配置される2つの液圧アクチュエータM、すなわち第2人工筋肉AM2は、ハンド部4への重力の作用によりロボット装置1に加えられる力Fgに抗することなく収縮力を発生する。
【0025】
これにより、第1人工筋肉AM1では、チューブTに収縮力を発生させるのに要求される作動油の圧力(あるいは流量)が増加する傾向となるのに対して、第2人工筋肉AM2では、チューブTに収縮力を発生させるのに要求される作動油の圧力(あるいは流量)が低下する傾向となる。これを踏まえて、本実施形態のロボット装置1では、
図3に示すように、高圧側の第1ポンプ131に対応した第1リニアソレノイドバルブ151の出力ポート15oが、バルブボディに形成された油路(液体通路)やホースH等を介して対応する第1人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMの作動油の出入口IOに接続される。また、
図3に示すように、低圧側の第2ポンプ132に対応した第2リニアソレノイドバルブ152の出力ポート15oは、バルブボディに形成された油路(液体通路)やホースH等を介して対応する第2人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMの作動油の出入口IOに接続される。
【0026】
ロボット装置1の制御装置100は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイクロコンピュータや各種ロジックIC等(何れも図示省略)を含む。制御装置100は、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152の下流側で油路L1またはL2における作動油の圧力を検出する図示しない複数の元圧センサ、信号圧生成バルブSL1,SL2および第1、第2リニアソレノイドバルブ151,152の電源の電圧を検出する図示しない電圧センサの検出値等を入力する。制御装置100は、元圧センサにより検出される油路L1,L2における油圧が目標値になるように、第1および第2ポンプ131,132をデューティ制御すると共に、第1および第2レギュレータバルブ141,142の信号圧生成バルブSL1,SL2の電磁部に供給される電流を制御する。また、制御装置100は、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152から各液圧アクチュエータMに要求に応じた油圧が供給されるように第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152への電流指令値を設定し、当該電流指令値に基づいて各電磁部15eに供給される電流を制御する。更に、制御装置100は、第1リニアソレノイドバルブ151の電磁部15eを流れる電流を検出する電流検出部と、第2リニアソレノイドバルブ152の電磁部15eを流れる電流を検出する電流検出部とを含み(何れも図示省略)、各電流検出部により検出される電流を監視する。
【0027】
続いて、上述のロボット装置1の動作について説明する。ロボット装置1のハンド部4を把持対象まで移動させ、当該把持対象をハンド部4に把持させて移送させる際、制御装置100は、油路L1,L2における油圧がそれぞれについて予め定められた値になるように、第1および第2ポンプ131,132をデューティ制御すると共に、第1および第2レギュレータバルブ141,142の信号圧生成バルブSL1,SL2を制御する。更に、制御装置100は、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152から各液圧アクチュエータMに要求に応じた油圧が供給されるように第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152への電流指令値を設定し、当該電流指令値に基づいて各電磁部15eに供給される電流を制御する。
【0028】
より詳細には、制御装置100は、ロボットアーム2の作動開始に先立って(ハンド部4の移動開始前に)、ハンド部4の把持対象の位置や、ユーザにより与えられるハンド部4の移動中の目標速度および目標加速度に基づいて、当該ハンド部4の最終的な目標位置である目標到達位置(3次元座標)と、ハンド部4の初期位置から目標到達位置までの軌道であって複数の目標位置すなわち経由位置(3次元座標)を含む目標軌道とを設定する。また、制御装置100は、複数の関節角度センサ7の対応する何れかにより検出される関節J1-J3の関節角度θ1,θ2,θ3とロボットアーム2(ロボット装置1)の諸元(アーム3の寸法等)とに基づいて、ハンド部4(予め定められた基準点)の現在位置(3次元座標)を導出する。以下、“i”を関節の番号として(ただし、本実施形態において、i=1,2,3である。)、i番目の関節を“関節Ji”といい、関節Jiの関節角度を“θi”という。
【0029】
更に、制御装置100は、関節J1-J3ごとに、関節Jiを介して連結される2つのアーム3(アーム3および支持部材5)を相対的に回動させるための関節トルクの目標値(目標駆動力)である目標トルクTtag(i)を設定する。目標トルクTtag(i)は、ハンド部4が現在位置から目標位置まで移動するように関節Jiを介して連結された2つのアーム3等を相対的に回動させる関節トルクTj(i)と、ロボットアーム2の姿勢を維持するのに必要な重力補償トルクTc(i)との和として導出される。また、制御装置100は、少なくともロボット装置1すなわちハンド部4の目標位置に基づいて、関節J1-J3ごとに、関節Jiがもつべき剛性、すなわち関節Jiを介して連結される2つのアーム3等(リンク)を単位角度だけ相対的に回動させるのに必要な力(トルク)であって、当該2つのアーム3等を相対的に回動させようとする外力に対する関節Jiの動きにくさを示す目標剛性R(i)を設定する。
【0030】
次いで、制御装置100は、関節J1-J3ごとに、ハンド部4の現在位置に応じた関節Jiの関節角度θiに基づいて、当該関節Jiに対応した上記第1人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMの収縮率Cr1(i)と、関節Jiに対応した上記第2人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMの収縮率Cr2(i)とを設定する。収縮率Cr1(i),Cr2(i)は、それぞれ該当する液圧アクチュエータMのチューブTの軸方向における自然長に対する収縮したチューブTの軸長の割合を示す。加えて、制御装置100は、関節J1-J3ごとに、目標トルクTtag(i)と目標剛性R(i)とに基づいて、関節Jiを介して連結された2つのアーム3等を目標トルクTtag(i)で相対的に回動させる際に当該関節Jiに対応した複数(一対)の液圧アクチュエータMに要求される収縮力Fc1(i),Fc2(i)を算出する。収縮力Fc1(i)は、各関節Jiに対応した第1人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMのチューブTの収縮により発生させるべき力であり、収縮力Fc2(i)は、各関節Jiに対応した第2人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMのチューブTの収縮により発生させるべき力である。
【0031】
収縮率Cr1(i),Cr2(i)および収縮力Fc1(i),Fc2(i)を算出した後、制御装置100は、
図4に例示する目標圧力設定マップから収縮率Cr1(i)と収縮力Fc1(i)とに対応した圧力を適宜線形補間を行いながら導出して上記第1人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMの目標圧力Ptag1(i)に設定する。更に、制御装置100は、当該目標圧力設定マップから収縮率Cr2(i)と収縮力Fc2(i)とに対応した圧力を導出して上記第2人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMの目標圧力Ptag2(i)に設定する。
図5の目標圧力設定マップは、人工筋肉としての液圧アクチュエータMの静特性を示すものであり、液圧アクチュエータMに供給される油圧ごとに、チューブTの収縮率と当該チューブTが発生する収縮力との関係を規定するように予め実験・解析を経て作成されたものである。このように、チューブTの収縮率Cr1(i),Cr2(i)および収縮力Fc1(i),Fc2(i)に対応した圧力を目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)に設定することで、ロボットアーム2への要求に応じて目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を精度よく設定することが可能となる。
【0032】
そして、制御装置100は、設定した目標圧力Ptag1(i)およびPtag2(i)を第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152の電磁部15eへの電流指令値(目標電流)に直接変換し、当該電流指令値に基づいて第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152を制御(PWM制御)する。これにより、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152から目標圧力Ptag1(i)またはPtag2(i)に応じた油圧が各液圧アクチュエータMのチューブTに供給され、人工筋肉としての各液圧アクチュエータMに供給される油圧を検出するセンサを用いることなく、各液圧アクチュエータMを要求に対して応答性よく高精度に作動させることが可能となる。この結果、複数の液圧アクチュエータMにより各アーム3を回動させてロボット装置1のハンド部4を所望の位置に移動させることができる。
【0033】
また、ロボット装置1において、各第1人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMは、ハンド部4(および把持対象)への重力の作用によりロボット装置1に加えられる力Fgに抗して収縮力を発生する。これに対して、各第2人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMは、ハンド部4への重力の作用によりロボット装置1に加えられる力Fgに抗することなく収縮力を発生する。従って、各第1人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMでは、収縮力を発生させるのに要求される油圧が増加する傾向となり、各第2人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMでは、第1人工筋肉AM1に比べて、収縮力を発生させるのに要求される油圧が減少する傾向となる。このため、ロボット装置1では、関節J1,J2またはJ3を介して連結された2つのアーム3等を相対的に回動させる複数(4つ)の液圧アクチュエータMのうち、一方の第1人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMに高圧側の第1ポンプ131からの作動油が供給される。また、他方の第2人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMには、低圧側の第2ポンプ132からの作動油が供給される。
【0034】
すなわち、高圧側の第1ポンプ131と低圧側の第2ポンプ132とを含む液体供給装置10によれば、第1人工筋肉AM1に要求される油圧を良好に確保しつつ、第2人工筋肉AM2に対応した第2ポンプ132に出力させるべき油圧を低下させることが可能となる、これにより、第1および第2人工筋肉AM1,AM2に単一のポンプから作動油を供給する場合に比べて、漏れ量を含むロボット装置1における作動油の消費流量を低減化し、第2ポンプ132の消費電力(消費エネルギ)を削減することができる。この結果、関節J1-J3に対応した第1および第2人工筋肉AM1,AM2を構成する複数の液圧アクチュエータMに適正に作動油(油圧)を供給してロボット装置1の効率を向上させることが可能となる。
【0035】
更に、ロボット装置1では、第1ポンプ131からの比較的高い油圧を減圧して第2人工筋肉AM2を構成する液圧アクチュエータMに供給する必要がなくなり、第2ポンプ132として、第1ポンプ131よりも低い最大吐出圧力を有するものを採用することができる。これにより、ロボット装置1における作動油の消費流量を良好に低減化しつつ、第2ポンプ132を小型化して装置全体の大型化を抑制することが可能となる。
【0036】
また、ロボット装置1の液体供給装置10は、第1ポンプ131からの作動油の圧力を調圧して第1の元圧を生成する第1レギュレータバルブ141と、第2ポンプ132からの作動油の圧力を調圧して第2の元圧を生成する第2レギュレータバルブ142と、第1レギュレータバルブ141からの第1の元圧を調圧して対応する第1人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMに供給する第1リニアソレノイドバルブ151と、第2レギュレータバルブ142からの第2の元圧を調圧して対応する第2人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMに供給する第2リニアソレノイドバルブ152とを含む。これにより、第1および第2レギュレータバルブ141,142により第1および第2ポンプ131,132からの油圧の脈動を抑えることができるので、第1および第2人工筋肉AM1,AM2を構成する複数の液圧アクチュエータMに供給される作動油の圧力を第1または第2リニアソレノイドバルブ151,152により要求に応じた目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)に精度よく調圧することが可能となる。
【0037】
ただし、
図5に示す液体供給装置10Bのように、第1および第2レギュレータバルブ141,142並びに信号圧生成バルブSL1,SL2が省略されてもよく、第1および第2ポンプ131,132の吐出口が油路L1またはL2を介して第1または第2リニアソレノイドバルブ151,152の入力ポート15iに接続されてもよい。かかる液体供給装置10Bでは、第1および第2ポンプ131,132の回転数を制御して第1および第2の元圧を調整することができる。また、液体供給装置10Bでは、第1ポンプ131と第1リニアソレノイドバルブ151との間で油路L1に第1のアキュムレータ(蓄圧器)161が接続されてもよく、第2ポンプ132と第2リニアソレノイドバルブ152との間で油路L2に第2のアキュムレータ(蓄圧器)162が接続されてもよい。
【0038】
図6は、上記ロボット装置1に適用可能な他の液体供給装置10Cを示す概略構成図である。なお、液体供給装置10Cの構成要素のうち、上述の液体供給装置10等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0039】
図6に示す液体供給装置10Cにおいて、第1および第2ポンプ131C,132Cは、何れも上記第1ポンプ131と同一の諸元を有するものである。すなわち、第1および第2ポンプ131C,132Cの最大吐出圧力は、互いに同一であり、かつ上記第1ポンプ131の最大吐出圧力と同一である。かかる態様においても、ハンド部4への重力の作用によりロボット装置1に加えられる力Fgに抗することなく収縮力を発生する第2人工筋肉AM2に対応した第2ポンプ132Cからの作動油の圧力を低下させて当該第2ポンプ132Cの消費電力を低減化することが可能となる。従って、液体供給装置10Cによっても、関節J1-J3に対応した第1および第2人工筋肉を構成する複数の液圧アクチュエータMに適正に作動油(油圧)を供給してロボット装置1の効率を向上させることが可能となる。
【0040】
また、液体供給装置10Cにおいても、第1および第2レギュレータバルブ141,142により第1および第2ポンプ131C,132Cからの油圧の脈動を抑えることができる。従って、液体供給装置10Cによっても、第1および第2人工筋肉AM1,AM2を構成する複数の液圧アクチュエータMに供給される作動油の圧力を第1または第2リニアソレノイドバルブ151,152により要求に応じた目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)に精度よく調圧することが可能となる。
【0041】
更に、液体供給装置10Cでは、第1ポンプ131Cおよび第1レギュレータバルブ141(信号圧生成バルブSL1)並びに第2ポンプ132Cおよび第2レギュレータバルブ142(信号圧生成バルブSL2)を制御することで、第1および第2ポンプ131C,132Cからの油圧を選択的に低下させることができる。従って、液体供給装置10Cによれば、重力の作用によりロボット装置1に加えられる力Fgに抗して収縮力を発生する人工筋肉が、例えばロボット装置1(ロボットアーム2)の状態(姿勢)に応じて第1人工筋肉AM1と第2人工筋肉AM2との間で変化する場合であっても、第1および第2人工筋肉AM1,AM2に対して要求に応じた油圧を適正に供給してロボット装置1の効率を向上させることが可能となる。
【0042】
ただし、液体供給装置10Cから、第1および第2レギュレータバルブ141,142並びに信号圧生成バルブSL1,SL2が省略されてもよく、第1および第2ポンプ131C,132Cの吐出口が油路L1またはL2を介して第1または第2リニアソレノイドバルブ151,152の入力ポート15iに接続されてもよい。この場合、第1および第2ポンプ131C,132Cの回転数を制御して第1および第2の元圧を調整することができる。また、液体供給装置10Cから第1および第2レギュレータバルブ141,142等が省略された場合、第1ポンプ131Cと第1リニアソレノイドバルブ151との間で油路L1に第1のアキュムレータ(蓄圧器)が接続されてもよく、第2ポンプ132Cと第2リニアソレノイドバルブ152との間で油路L2に第2のアキュムレータ(蓄圧器)が接続されてもよい。
【0043】
図7は、上記ロボット装置1に適用可能な更に他の液体供給装置10Dを示す概略構成図である。なお、液体供給装置10Dの構成要素のうち、上述の液体供給装置10等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
図7に示す液体供給装置10Dは、
図3の液体供給装置10に対して、信号圧出力バルブとしてのオンオフソレノイドバルブ17と、切替バルブ18とが追設されたものに相当する。オンオフソレノイドバルブ17および切替バルブ18は、関節J1,J2,J3ごとにそれぞれ1つずつ設けられる。オンオフソレノイドバルブ17は、制御装置100により通電制御される電磁部と、油路L1あるいはL2に連通する入力ポートと、出力ポートとをそれぞれ含む。オンオフソレノイドバルブ17は、電磁部への通電に応じて入力ポートに供給される作動油を出力ポートに流出させることにより信号圧を出力する。
【0045】
切替バルブ18は、スプール180および当該スプール180を付勢するスプリング181を含むスプールバルブであり、バルブボディ内に配置される。また、切替バルブ18は、第1入力ポート18iaと、第2入力ポート18ibと、第1出力ポート18oaと、第2出力ポート18obと、信号圧入力ポート18cとを含む。第1入力ポート18iaは、バルブボディに形成された油路を介して第1レギュレータバルブ141の出力ポートに連通し、第2入力ポート18ibは、バルブボディに形成された油路を介して第2レギュレータバルブ142の出力ポートに連通する。第1出力ポート18oaは、油路L1を介して対応する第1リニアソレノイドバルブ151の入力ポート15iに連通し、第2出力ポート18obは、油路L2を介して対応する第2リニアソレノイドバルブ152の入力ポート15iに連通する。信号圧入力ポート18cは、バルブボディに形成された油路を介して対応するオンオフソレノイドバルブ17の出力ポートに連通する。
【0046】
切替バルブ18のスプール180は、対応するオンオフソレノイドバルブ17からの信号圧が信号圧入力ポート18cに供給されていないときに、スプリング181の付勢力により第1入力ポート18iaと第1出力ポート18oaとを連通させると共に第2入力ポート18ibと第2出力ポート18obとを連通させる第1状態(
図7における実線参照)を形成する。また、切替バルブ18のスプール180は、電磁部の通電により対応するオンオフソレノイドバルブ17からの信号圧が信号圧入力ポート18cに供給されるときに、スプリング181の付勢力に抗して第1入力ポート18iaと第2出力ポート18obとを連通させると共に第2入力ポート18ibと第1出力ポート18oaとを連通させる第2状態(
図7における点線参照)を形成する。
【0047】
かかる液体供給装置10Dでは、切替バルブ18(スプール180)が第1状態を形成する際に、高圧側の第1ポンプ131からの作動油が各第1人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMに供給され、低圧側の第2ポンプ132からの作動油が各第2人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMに供給される。また、切替バルブ18(スプール180)が第2状態を形成する際には、高圧側の第1ポンプ131からの作動油が各第2人工筋肉AM1を構成する2つの液圧アクチュエータMに供給され、低圧側の第2ポンプ132からの作動油が各第1人工筋肉AM2を構成する2つの液圧アクチュエータMに供給される。従って、液体供給装置10Dによれば、重力の作用によりロボット装置1に加えられる力Fgに抗して収縮力を発生する人工筋肉が、例えばロボット装置1(ロボットアーム2)の状態(姿勢)に応じて第1人工筋肉AM1と第2人工筋肉AM2との間で変化する場合であっても、オンオフソレノイドバルブ17を制御することで第1および第2人工筋肉AM1,AM2に対して要求に応じた油圧を適正に供給し、ロボット装置1の効率を向上させることが可能となる。
【0048】
また、液体供給装置10Dから、第1および第2レギュレータバルブ141,142並びに信号圧生成バルブSL1,SL2が省略されてもよく、第1および第2ポンプ131,132の吐出口が油路L1またはL2を介して第1または第2リニアソレノイドバルブ151,152の入力ポート15iに接続されてもよい。この場合、第1および第2ポンプ131,132の回転数を制御して第1および第2の元圧を調整することができる。更に、液体供給装置10Dから第1および第2レギュレータバルブ141,142等が省略された場合、第1ポンプ131と第1リニアソレノイドバルブ151との間で油路L1に第1のアキュムレータ(蓄圧器)が接続されてもよく、第2ポンプ132と第2リニアソレノイドバルブ152との間で油路L2に第2のアキュムレータ(蓄圧器)が接続されてもよい。
【0049】
なお、ロボット装置1において、各関節Jiの目標剛性R(i)は、少なくともロボット装置1すなわちハンド部4の現在位置に基づいて設定されてもよく、収縮率Cr1(i),Cr2(i)は、ロボット装置1のハンド部4の目標位置に応じた各関節Jiの目標角度に基づいて設定されてもよい。また、少なくともロボット装置1のハンド部4の目標位置または現在位置に基づいて関節Jiに対応した上記第1および第2人工筋肉AM1,AM2の一方を構成する2つの液圧アクチュエータMに発生させる第1収縮力が設定されてもよく、目標トルクTtag(i)と当該第1収縮力とに基づいて当該第1および第2人工筋肉AM1,AM2の他方を構成する2つの液圧アクチュエータMに発生させる第2収縮力が設定されてもよい。更に、ロボット装置1において、目標トルクTtag(i)等に応じて、予め定められた一定の圧力が関節Jiに対応した第1および第2人工筋肉AM1,AM2の一方を構成する2つの液圧アクチュエータMの目標圧力である第1目標圧力に設定されてもよく、目標トルクTtag(i)と第1目標圧力とに基づいて当該第1および第2人工筋肉AM1,AM2の他方を構成する2つの液圧アクチュエータMの目標圧力である第2目標圧力が設定されてもよい。
【0050】
また、液体供給装置10,10B,10C,10Dにおいて、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152が、電磁部に供給される電流に応じた信号圧を出力するリニアソレノイドバルブ(あるいはオンオフソレノイドバルブ)と、当該信号圧に応じて作動油Ofを調圧するコントロールバルブとで置き換えられてもよい。更に、第1および第2リニアソレノイドバルブ151,152は、対応する液圧アクチュエータMに供給される液圧(油圧)が目標圧力になるように制御される流量制御弁で置き換えられてもよい。また、液体供給装置10は、水等の作動油以外の液体を液圧アクチュエータMに供給するように構成されてもよい。
【0051】
更に、上記実施形態において、人工筋肉としての液圧アクチュエータMは、内部に作動油が供給されると共に当該内部の油圧の上昇に応じて径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含むマッキベン型の人工筋肉であるが、ロボット装置1における液圧アクチュエータMの構成は、これに限られるものではない。すなわち、液圧アクチュエータMは、液体が供給された際に径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブを含むものであればよく、例えば弾性体により形成された内側筒状部材と、弾性体により形成されると共に内側筒状部材の外側に同軸に配置され外側筒状部材と、内側筒状部材と外側筒状部材との間に配置された繊維層とを含む軸方向繊維強化型の液圧アクチュエータ(例えば、特開2011-137516号参照)であってもよい。
【0052】
そして、ロボット装置1は、少なくとも1つの液圧アクチュエータMとハンド部4とを有するロボットアーム2を含むものに限られず、少なくとも1つの液圧アクチュエータMと、例えばドリルビット等の工具や例えばスイッチ等を押圧する押圧部材といったハンド部4以外の要素が手先に取り付けられたロボットアームとを含むものであってもよい。また、ロボット装置1は、歩行ロボットや、ウェアラブルロボット等であってもよい。更に、ロボットアーム2は、1つの関節と、当該関節に対応した第1および第2人工筋肉AM1,AM2とを含むものであってもよい。また、関節Jiを介して連結された2つのアーム3等のすべてに必ずしも対をなす複数の液圧アクチュエータ(人工筋肉)Mが設けられる必要はなく、何れか1組の2つのアーム3等に、1つまたは複数の液圧アクチュエータMと、当該液圧アクチュエータMと拮抗するように配置されるスプリングやゴム材等の弾性体とが連結されてもよい。
【0053】
また、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示の発明は、人工筋肉を含むロボット装置の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 ロボット装置、2 ロボットアーム、3 アーム、4 ハンド部、5 支持部材、10,10B,10C,10D 液体供給装置、131,131C 第1ポンプ、132,132C 第2ポンプ、141 第1レギュレータバルブ、142 第2レギュレータバルブ、151 第1リニアソレノイドバルブ(調圧バルブ)、152 第2リニアソレノイドバルブ(調圧バルブ)、17 オンオフソレノイドバルブ、18 切替バルブ、100 制御装置、AM1 第1人工筋肉、AM2 第2人工筋肉、M 液圧アクチュエータ、S 編組スリーブ、SL1,SL2 信号圧生成バルブ、T チューブ。