(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047814
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】車両のピラー構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/04 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
B62D25/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153806
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】安田 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】野上 貴司
(72)【発明者】
【氏名】今田 光彦
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB55
3D203CA02
3D203CA25
3D203CA29
3D203CA53
3D203CB04
3D203CB09
3D203CB22
3D203DA55
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で強度を向上させて側突時における乗員の安全性を向上させる車両のセンターピラーを提供する。
【解決手段】車両側部を上下方向に延び、上部に位置するインナアッパーピラー10と下部に位置するインナロアピラー11とを接続して構成されたインナピラー3を有する車両のセンターピラー2において、インナロアピラー11はインナアッパーピラー10よりも強度が低い部材で形成され、インナアッパーピラー10とインナロアピラー11とのラップ部12において、少なくとも1か所でボルトによってインナアッパーピラー10とインナロアピラー11とを締結する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部を上下方向に延び、上部に位置するアッパーピラーと下部に位置するロアピラーとを接続して構成されたピラー部材を有する車両のピラー構造であって、
前記ロアピラーは前記アッパーピラーよりも強度が低い部材で形成され、
前記アッパーピラーと前記ロアピラーとは、互いの接続箇所において締結部材によって締結されていることを特徴とする車両のピラー構造。
【請求項2】
前記締結部材がボルトであることを特徴とする請求項1に記載の車両のピラー構造。
【請求項3】
前記ピラー部材は、上方に向かって車両後方に傾斜しており、
前記接続箇所のうち車両後方側に位置する前記接続箇所において、前記締結部材のみによって前記アッパーピラーと前記ロアピラーとが締結され、車両前方側に位置する前記接続箇所において前記アッパーピラーと前記ロアピラーとが溶接によって接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両のピラー構造。
【請求項4】
前記アッパーピラーに沿って上下方向に延び、前記アッパーピラーを支持する第1のリンフォースを備え、
前記第1のリンフォースにおける上部位置において前記アッパーピラーと前記第1のリンフォースとが溶接によって固定され、前記第1のリンフォースにおける下部位置において前記アッパーピラーと前記第1のリンフォースとは固定されていないことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両のピラー構造。
【請求項5】
前記アッパーピラーの上部に、シートベルト装置におけるシートベルトアンカーの設置部を補強する第2のリンフォースが備えられ、
前記第1のリンフォースは、前記第2のリンフォースの設置部付近において前記アッパーピラーと溶接により固定されていることを特徴とする請求項4に記載の車両のピラー構造。
【請求項6】
前記第1のリンフォースにおける前記下部位置において、前記アッパーピラーと前記第1のリンフォースとは車幅方向に離間して配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載の車両のピラー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車幅方向側部に位置するピラーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、強度部材に高張力鋼板(ハイテン材)のような強度の高い部材を使用している車両が増加しており、更に強度の高い超高張力鋼板(スーパーハイテン材)を採用する車両も提供されてきている。
例えば、車両の車幅方向側部に配置されるピラーに、強度の高いハイテン材等を使用することで、ピラーの強度を向上させて特に側突時における安全性を向上させるとともに、車両の軽量化を図ることができる。
【0003】
しかしながら、車両の鋼板の接合部に多く使用されるスポット溶接は、溶接の熱により溶接部の強度が低下する虞があり、特に高張力鋼板においてスポット溶接を行うと溶接個所の強度が大きく低下する虞がある。
そこで、特許文献1では、高張力鋼板を使用した車両のセンターピラーにおいて、インナピラーとアウタピラーとの接合部を覆う補強板を設け、補強板とインナピラーあるいはアウタピラーとを接着材で固定する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両のピラーについては、上記特許文献1のように、インナピラーとアウタピラーのように複数の部材を溶接して形成することが一般的である。更に、センターピラーのように車両の客室の側方を上下方向に延びるピラーにおいては、上下に分割した部材を溶接して構成するものもある。
そして、このように上下分割した部材を接続して構成する車両のピラーにおいて、簡単な構成で強度を向上させる車両のピラー構造が要求されている。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、簡単な構成で強度を向上させて側突時における乗員の安全性を向上させる車両のピラー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の車両のピラー構造は、車両側部を上下方向に延び、上部に位置するアッパーピラーと下部に位置するロアピラーとを接続して構成されたピラー部材を有する車両のピラー構造であって、前記ロアピラーは前記アッパーピラーよりも強度が低い部材で形成され、前記アッパーピラーと前記ロアピラーとは、互いの接続箇所において締結部材によって締結されていることを特徴とする。
【0008】
これにより、車両のピラー部材がアッパーピラーとアッパーピラーより強度の低いロアピラーを接続して構成されることで、側突時にロアピラーが屈曲して衝撃を吸収する一方、アッパーピラーの屈曲が抑制されて車内への侵入が抑えられ、乗員を保護することができる。
そして、側突時に大きな負荷を受けるアッパーピラーとロアピラーとの接続箇所において締結部材によって締結されることで、溶接による接続箇所を減少させて、溶接によるアッパーピラーとロアピラーとの接続箇所の強度低下を防止することができる。
【0009】
好ましくは、前記締結部材がボルトであるとよい。
これにより、アッパーピラーとロアピラーとをボルトによって締結して接続することができる。
好ましくは、前記ピラー部材は、上方に向かって車両後方に傾斜しており、前記接続箇所のうち車両後方側に位置する前記接続箇所において前記締結部材のみによって前記アッパーピラーと前記ロアピラーとが締結され、車両前方側に位置する前記接続箇所において前記アッパーピラーと前記ロアピラーとが溶接によって接続されているとよい。
【0010】
これにより、ピラー部材が上方に向かって車両後方に傾斜しているので、側突時においてアッパーピラーとロアピラーとの接続箇所のうち車両後方側の接続箇所が大きく負荷を受ける可能性が高くなるが、当該接続箇所をボルトによって締結することで接続箇所の溶接による強度低下を防止して破断を抑制することができる。
好ましくは、前記アッパーピラーに沿って上下方向に延び、前記アッパーピラーを支持する第1のリンフォースを備え、前記第1のリンフォースにおける上部位置において前記アッパーピラーと前記第1のリンフォースとが溶接によって固定され、前記第1のリンフォースにおける下部位置においては前記アッパーピラーと前記第1のリンフォースとは溶接によって固定されていないとよい。
【0011】
これにより、ロアピラーとの接続箇所から遠く側突時に大きな負荷を受けにくい第1のリンフォースの上部位置では、例え溶接によってアッパーピラーと第1のリンフォースとの接続箇所の強度が低下していても、当該接続箇所の破断は抑制される。一方、第1のリンフォースの下部位置では溶接による接続が行われないので、例え側突時に大きな負荷を受けたとしても第1のリンフォースの下部位置における第1のリンフォース及びアッパーピラーの破断を抑制することができる。
【0012】
好ましくは、前記アッパーピラーの上部に、シートベルト装置におけるシートベルトアンカーの設置部を補強する第2のリンフォースが備えられ、前記第1のリンフォースは、前記第2のリンフォースの設置部付近において前記アッパーピラーと溶接により固定されているとよい。
これにより、第1のリンフォース及び第2のリンフォースによって、ピラー部材の上部の強度を向上させることができる。
【0013】
好ましくは、前記第1のリンフォースにおける前記下部位置において、前記アッパーピラーと前記第1のリンフォースとは車幅方向に離間して配置されているとよい。
これにより、車両走行時に第1のリンフォースとアッパーピラーとが接触せずに、きしみ音等の発生を抑制することができる。一方、側突時には、第1のリンフォースはアッパーピラーと接触して荷重を受け、第1のリンフォースの下部位置におけるセンターピラーの強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両のピラー構造によれば、側突時にアッパーピラーとロアピラーとの接続部において、溶接による接続箇所を減少させて、溶接による強度低下を抑制することができるので、側突時におけるピラー部材の強度を向上させて破断し難くし乗員の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両のセンターピラーの部品及びその形状を示す斜視図である。
【
図2】インナアッパーピラーとインナアウタピラーとの接続部の構造を示す側面図である。
【
図3】インナアッパーピラー及びインナリンフォースを車幅方向外側から視た側面図である。
【
図4】インナアッパーピラー及びインナリンフォースを車幅方向内側から視た側面図である。
【
図5】インナアッパーピラーとインナリンフォースとの上部接続部におけるセンターピラーの横断面図である。
【
図6】インナリンフォースの下部におけるセンターピラーの横断面図である。
【
図7】側突時におけるセンターピラーの変形例を示す車体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両1のセンターピラー2の部品及び構造を示す斜視図である。なお、
図1では、車両1の左側のセンターピラー2を図示している。
図1に示すように、本発明のピラー構造を採用したセンターピラー2は、横断面がハット型のインナピラー3(ピラー部材)とアウタピラー4とを開口部を合わせて、横断面が箱状になるように構成されている。更に、インナピラー3とアウタピラー4との間には、補強部材として断面がハット型のインナリンフォース5(第1のリンフォース)とヒンジリンフォース6が設けられている。インナピラー3、アウタピラー4、インナリンフォース5及びヒンジリンフォース6といったセンターピラー2の各部品は、超高張力鋼板(スーパーハイテン材)あるいは高張力鋼板(ハイテン材)で形成されている。
【0017】
アウタピラー4及びインナピラー3は、車両1の車幅方向側部において上下方向に延び、車体の上部構造体であるルーフサイドレール7と、車体の下部構造体であるロッカレール8との間を連結するように設けられている。また、アウタピラー4及びインナピラー3は、上方に向かうに伴ってわずかに車両後方に傾斜している。
アウタピラー4は、センターピラー2の車外側の部材であって、上端部がルーフサイドレール7の車外側の部材7aに溶接によって固定され、下端部がロッカレール8の車外側の部材8aに溶接によって固定されている。
【0018】
インナピラー3は、センターピラー2の車内側の部材であって、上端部がルーフサイドレール7の車内側の部材7bに溶接によって固定され、下端部がロッカレール8の車内側の部材8bに溶接によって固定されている。
インナリンフォース5は、インナピラー3の車幅方向外側に隣接して配置され、インナピラー3の上下方向中間部から上端部近傍まで上下方向に延びるように形成されている。
【0019】
ヒンジリンフォース6は、アウタピラー4とインナリンフォース5の間に配置され、アウタピラー4の上端部近傍から下端部近傍まで上下方向に延びるように形成されている。
インナピラー3は、上部に位置するインナアッパーピラー10(アッパーピラー)と、下部に位置するインナロアピラー11(ロアピラー)の2つの部材を上下方向に並べて互いに接続して構成されている。
【0020】
インナアッパーピラー10は、センターピラー2に隣接した車両1の座席に着座した乗員の腰部より上方に位置し、インナロアピラー11は当該乗員の腰部の上下位置及びその下方に位置する。
また、インナロアピラー11は、インナアッパーピラー10よりも強度が低く設定されている。
【0021】
図2は、本実施形態に係るインナアッパーピラー10とインナロアピラー11との接続部の構造を示す側面図である。
図2は、インナアッパーピラー10及びインナロアピラー11を車内側から車幅方向外方に向かって視た図である。
図2に示すように、インナアッパーピラー10の下部とインナロアピラー11の上部が重なり合い、当該重なり合った部位であるラップ部12をスポット溶接13及びボルト14(締結部材)によって固定している。
【0022】
ラップ部12の車両前後方向前部及び中間部では、適宜間隔をおいて数か所、スポット溶接13によってインナアッパーピラー10とインナロアピラー11とが固定されている。一方、ラップ部12の車両前後方向後部では、例えば2か所ボルト14によってインナアッパーピラー10とインナロアピラー11とが固定されている。
図3は、インナアッパーピラー10及びインナリンフォース5を車幅方向外側から視た側面図である。
図4は、インナアッパーピラー10及びインナリンフォース5を車幅方向内側から視た側面図である。
図5は、インナアッパーピラー10とインナリンフォース5との上部接続部におけるセンターピラー2の横断面図である。
図6は、インナリンフォース5の下部におけるセンターピラー2の横断面図である。なお、
図3は、インナアッパーピラー10及びインナリンフォース5を、車幅方向外側からわずかに車両後方より視た図である。
図5は
図3に記載したA-A部の断面図である。
図6は、
図3に記載したB-B部の断面図である。
【0023】
図3~5に示すように、インナアッパーピラー10とインナリンフォース5とは、インナリンフォース5の上部位置5aにおいて、スポット溶接によって互いに固定されている。インナアッパーピラー10とインナリンフォース5との溶接部21は、インナリンフォース5の車両前後方向の両端部近傍を上下方向に各一列、例えば数cm間隔で並んでいる。
【0024】
インナアッパーピラー10の上部には、座席30のシートベルト装置におけるシートベルトアンカーを支持する箇所を補強するためのベルトリンフォース20(第2のリンフォース)が設けられている。ベルトリンフォース20は、インナアッパーピラー10の車両前後方向幅に合わせて車両前後方向に延びる数cm程度の上下幅の鋼板部材であって、本実施形態では、上下方向に間隔をおいて2か所設けられている。
【0025】
インナアッパーピラー10とインナリンフォース5との溶接部21は、ベルトリンフォース20より上方に、詳しくは2個のベルトリンフォース20のうち下方に位置するベルトリンフォース20よりも上方に位置している。
インナアッパーピラー10の車両前後方向中央部は、インナリンフォース5側に向かって車幅方向外方に僅かに突出し、この突出部22がインナリンフォース5の車両前後方向両端部のフランジ部23の間に挿入されて、インナアッパーピラー10とインナリンフォース5との車両前後方向の相対的な位置決めがされている。
【0026】
一方、
図3、4、6に示すように、インナリンフォース5の下部位置5bにおいては、インナアッパーピラー10とインナリンフォース5とは溶接されていない。更に、インナリンフォース5の下部位置5bにおいて、インナアッパーピラー10とインナリンフォース5とは例えば5mm程度の間隔Ldをおいて配置されている。
また、インナリンフォース5とヒンジリンフォース6は合わせてアウタピラー4に、上下方向に間隔をおいて数か所、スポット溶接によって位置決め用として固定されている(
図6中の溶接部25)。
【0027】
インナリンフォース5はインナアッパーピラー10を補強し、センターピラー2の上部を補強する。ヒンジリンフォース6は、センターピラー2全体、特にインナアッパーピラー10とインナロアピラー11との接続部を補強する。
インナピラー3とアウタピラー4とは、車両前後方向両端部のフランジ部26において、スポット溶接によって固定されている。この両端部の各フランジ部26におけるスポット溶接は、所定間隔(例えば数cm)の間隔をあけて、インナピラー3及びアウタピラー4上下方向の略全域に亘って行われている。
【0028】
センターピラー2については、例えば以下の手順で製作を行う。
始めに、ベルトリンフォース20が固定されたインナアッパーピラー10と、インナロアピラー11とを、ボルト14及びスポット溶接13によって接続して、インナピラー3を製作する。
次に、製作したインナピラー3にインナリンフォース5の上部をスポット溶接で固定する(溶接部21)。
【0029】
次に、インナピラー3の上端部とルーフレール7の車内側の部材7bとを溶接によって固定し、インナピラー3の下端部とロッカレール8の車内側の部材8bとを溶接によって固定する。
一方、アウタピラー4とヒンジリンフォース6とをスポット溶接で数か所固定する(溶接部25)。
【0030】
次に、アウタピラー4の上端部とルーフレール7の車外側の部材7aとを溶接によって固定し、アウタピラー4の下端部とロッカレール8の車外側の部材8aとを溶接によって固定する。
最後に、インナピラー3とアウタピラー4の各フランジ部26をスポット溶接で固定して、センターピラー2の製作及び取り付けを終了する。
【0031】
図7は、側突時におけるセンターピラー2の変形例を示す車体の縦断面図である。
以上のように、本実施形態の車両1のセンターピラー2は、インナピラー3が上部と下部の2分割構造になっており、下部のインナロアピラー11の強度が上部のインナアッパーピラー10の強度より低く設定されている。
図7に示すように、センターピラー2付近を側突された場合には、センターピラー2が車幅方向内方に向かって屈曲して衝撃を吸収するが、比較的強度の高いインナアッパーピラー10は大きく屈曲せず、比較的強度の低いインナロアピラー11が斜め下方に大きく屈曲する。これにより、センターピラー2に隣接した座席30に着座する乗員Mの腰部より上部に対してインナアッパーピラー10の接近が抑制されて、乗員Mを保護することができる。
【0032】
また、例えインナロアピラー11が乗員Mへ接触したとしても、上半身よりも衝撃耐性の高い腰部に接触するので、安全性を高めることができる。
そして、本実施形態では、インナアッパーピラー10とインナロアピラー11とのラップ部12のうち車両後部において、ボルト14を使用してインナアッパーピラー10とインナロアピラー11とを接続している。これにより、ラップ部12におけるインナアッパーピラー10とインナロアピラー11との接続箇所のうち、スポット溶接個所を低減することができる。
【0033】
ところで、インナアッパーピラー10及びインナロアピラー11といったセンターピラー2の各部品は、高張力鋼板で形成されているので、通常の鋼板よりも部品自体の強度は高くなるものの、溶接部におけるHAZ部(熱影響部)では熱影響により強度が低下して破断し易くなる虞がある。特に、側突時に負荷を受けるセンターピラー2において、インナアッパーピラー10及びインナロアピラー11との接続部は、負荷を大きく受けて溶接部で破断する可能性がある。
【0034】
本実施形態では、インナアッパーピラー10とインナロアピラー11との接続部(ラップ部12)において、スポット溶接箇所を低減することで、溶接による強度低下を抑制し、当該接続部における強度を向上させることができる。これにより、側突に対するセンターピラー2の強度を向上させて破断し難くして安全性を高めることができる。
また、センターピラー2は車両後方側に傾斜しているので、側突時にインナアッパーピラー10とインナロアピラー11との接続部において、車両前方側の部位よりも車両後方側の部位が大きく負荷を受ける。本実施形態では、インナアッパーピラー10とインナロアピラー11との接続部であるラップ部12において、比較的大きく負荷を受けるラップ部12の車両後方側の部位をボルトによって締結することで破断を抑制し、比較的負荷の小さいラップ部12の車両前方側の部位についてはスポット溶接によって固定することで、ボルトによって固定するよりも重量及び部品個数の低減を図ることができる。
【0035】
また、センターピラー2には、インナアッパーピラー10を補強、即ちセンターピラー2の上部を補強するインナリンフォース5が設けられているので、センターピラー2の上部の屈曲が抑制される。したがって、側突時に乗員Mに向かうセンターピラー2の侵入が更に抑制される。
側突時において、インナロアピラー11が屈曲することで、インナアッパーピラー10においては上部よりも下部に集中して負荷を大きく受ける。本実施形態では、インナアッパーピラー10とこれを補強するインナリンフォース5との接続を下部で行わないので、インナアッパーピラー10の下部における溶接による強度低下を抑制し、インナアッパーピラー10の破断を防止することができる。
【0036】
一方、インナアッパーピラー10とインナリンフォース5とは、インナリンフォース5の上部位置でスポット溶接により固定されているので、スポット溶接によりインナアッパーピラー10の当該溶接部の強度が低下していても側突時における破断が抑制される。また、インナアッパーピラー10とインナリンフォース5とは、ベルトリンフォース20の設置部付近でスポット溶接により固定されているので、ベルトアンカーからの荷重をインナアッパーピラー10とともにインナリンフォース5で受けることができ、急停車時や軽度な衝突時等においてベルトアンカーから受ける負荷に対するセンターピラー2の強度を向上させることができる。
【0037】
また、インナアッパーピラー10の下部において、インナアッパーピラー10とインナリンフォース5とは5mm程度の間隔Ldをおいて離間しているので、車両1の通常走行時において、インナアッパーピラー10とインナリンフォース5とが接触せずに、きしみ音等の発生を防止することができる。一方、側突時に車幅方向外方から大きな負荷を受けた場合には、インナアッパーピラー10とインナリンフォース5とが接触して、インナリンフォース5及びインナアッパーピラー10の両方で荷重を受けてセンターピラー2の強度を向上させることができる。
【0038】
本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
例えば、センターピラー2の各部品の詳細な形状については、適宜変更してもよい。また、車両の右側のセンターピラーに本発明を適用してもよいし、センターピラー2以外の車両のピラーに本発明を適用してもよい。
本発明は、車両の車幅方向側部を上下方向に延びるピラーに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 車両
2 センターピラー
3 インナピラー(ピラー部材)
5 インナリンフォース(第1のリンフォース)
10 インナアッパーピラー(アッパーピラー)
11 インナロアピラー(ロアピラー)
14 ボルト(締結部材)
20 ベルトリンフォース(第2のリンフォース)