(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047900
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】魚フィーレ骨抜き取りシステム
(51)【国際特許分類】
A22C 25/16 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
A22C25/16
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153944
(22)【出願日】2020-09-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】395013164
【氏名又は名称】土佐電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】岡村 斉
(72)【発明者】
【氏名】横山 一
(72)【発明者】
【氏名】山内 貴智
(72)【発明者】
【氏名】増田 純弥
(72)【発明者】
【氏名】中矢 有一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 岬
(72)【発明者】
【氏名】戒田 健一
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011KA01
4B011KD01
4B011KE09
4B011KE13
(57)【要約】
【課題】魚フィーレに対する骨の位置を一本一本認識させ、骨の周りの魚身に傷をつけることなく骨だけを抜き取ることができる魚フィーレ骨抜き取りシステムを提供すること。
【解決手段】本発明の魚フィーレ骨抜き取りシステムは、魚フィーレ21をパレット20に載置し、パレット20を移動させることでパレット20に載置した魚フィーレ21から骨を抜き取り、パレット20に載置した魚フィーレ21を撮像する第1撮像工程3Aと、第1撮像工程3Aで撮像された第1撮像画像により骨が存在する領域を特定する骨領域特定工程13Aと、骨領域特定工程13Aで特定された領域を撮像する第2撮像工程3Bと、第2撮像工程3Bで撮像された第2撮像画像により骨の位置を特定する骨位置特定工程13Bと、骨位置特定工程13Bで特定された骨の外方端部を骨抜きチャック42にて掴み、骨抜きチャック42の移動により骨を抜く骨抜き工程3Cとを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚フィーレをパレットに載置し、前記パレットを移動させることで前記パレットに載置した前記魚フィーレから骨を抜き取る魚フィーレ骨抜き取りシステムであって、
前記パレットに載置した前記魚フィーレを撮像する第1撮像工程と、
前記第1撮像工程で撮像された第1撮像画像により前記骨が存在する領域を特定する骨領域特定工程と、
前記骨領域特定工程で特定された前記領域を撮像する第2撮像工程と、
前記第2撮像工程で撮像された第2撮像画像により前記骨の位置を特定する骨位置特定工程と、
前記骨位置特定工程で特定された前記骨の外方端部を骨抜きチャックにて掴み、前記骨抜きチャックの移動により前記骨を抜く骨抜き工程と
を有する
ことを特徴とする魚フィーレ骨抜き取りシステム。
【請求項2】
前記骨領域特定工程における前記領域を、機械学習によって特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステム。
【請求項3】
前記骨抜き工程の後に、前記魚フィーレに前記骨が残存していないかを検査する検査工程を、
有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステム。
【請求項4】
前記検査工程では、X線画像を用いる
ことを特徴とする請求項3に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステム。
【請求項5】
前記検査工程では、赤外線画像を用いる
ことを特徴とする請求項3に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステム。
【請求項6】
前記検査工程において前記骨が残存していないと判断した場合には、前記魚フィーレを載せた前記パレットを良品格納場所に移動し、
前記検査工程において前記骨が残存していると判断した場合には、不良回数を示す不良係数を加算するとともに、前記不良係数が所定回数に達していないときは、前記魚フィーレを載せた前記パレットを再び前記骨抜き工程に移動させ、
前記検査工程において前記骨が残存していると判断した場合であっても、前記不良係数が前記所定回数に達しているときは、前記魚フィーレを載せた前記パレットを不良品格納場所に移動する
ことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステム。
【請求項7】
前記パレットには、
前記パレットの位置及び傾きの少なくともいずれかを計測するための3個以上の基準マークと、
前記パレットを特定できるマーカーが付与されており、
前記パレットには、前記基準マークを隠さないように前記魚フィーレを1枚載せ、
前記魚フィーレを載せた前記パレットを、前記第1撮像工程、前記第2撮像工程、及び前記骨抜き工程に移動させ、
前記第1撮像工程、前記第2撮像工程、及び前記骨抜き工程では、前記基準マークを読み取ることで座標補正を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステム。
【請求項8】
前記パレットには、
前記パレットの位置及び傾きの少なくともいずれかを計測するための3個以上の基準マークと、
前記パレットを特定できるマーカーが付与されており、
前記パレットには、前記基準マークを隠さないように前記魚フィーレを1枚載せ、
前記魚フィーレを載せた前記パレットを、前記第1撮像工程、前記第2撮像工程、前記骨抜き工程、及び前記検査工程に移動させ、
前記第1撮像工程、前記第2撮像工程、前記骨抜き工程、及び前記検査工程では、前記基準マークを読み取ることで座標補正を行い、
前記不良品格納場所の前記パレットを移動する不良品作業場所には、
前記マーカーを読み取る装置と、
前記マーカーで特定される前記パレットに載置された前記魚フィーレの検査結果を表示するディスプレイと
を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚身、とくに3枚におろした魚の半身から小骨、ピンボーンを正確に抜き取る魚フィーレ骨抜き取りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在日本において、サーモンの市場は年間40万トンを超える需要がある。日本でのサケ・サーモン生産はその多くが天然漁獲によるものであり、一般的に「天然物」好きな日本人の嗜好に合致しているが、一方で寄生虫等の課題があり「生食用」に適していない。この産業構造によって輸入が増加しており、「生食用」加工品は「加熱用」加工品に比べ一般的に高付加価値であることを鑑みれば、結果として日本の生産者、加工会社に利益としての付加価値が落ちにくい状況である。
サケ・サーモンは日本人に特に定着した魚種の一つであること、及び天然漁獲量は資源制約などから増加させることは難しく「生食用」として不適であることから、国内では、サケ・サーモン養殖が拡大傾向にあり、輸入品から国産品への一部シフトが期待されている。
サーモンの加工工程は、うろこ取り・ヘッドカット・三枚おろし・スキンナー・ピンボーン除去からなる。現在、うろこ取り・ヘッドカット・三枚おろし・スキンナーにおいては既存の水産加工機械を用いて、サーモンのサイズに関わらず自動化が可能である。しかしながら、サーモンの上神経骨(小骨もしくはピンボーン)の骨抜き作業は、いまだ人手に頼っているのが現状であり、多大な労力を要している。ピンボーンを自動で抜き取る機器も考案されているが様々な課題がある。参考文献に沿って説明する。
特許文献1は、魚フィーレのピンボーンを、巻き込むように回転する一組のベルトに挟ませることにより、抜く装置である。しかしながら魚の形状、骨のある位置に個体差のばらつきがあるため、ベルトに対して骨が位置ずれしている場合、骨のない部分をベルトに挟み込み骨の取り残しが発生する場合がある。
特許文献2は、魚フィーレから突出したピンボーンに対して、特定の挟持部材でそのピンボーンをはさみ抜き取る仕組みのため、埋もれている骨や、魚フィーレ個体差により挟持部材とピンボーンの位置がずれた場合は、うまく抜けなかったり、取り残しが発生する。
特許文献3は、魚フィーレに対して回転ローラーを押しあて、魚フィーレの進行方向と反対方向に回転ローラーを回転させ、そのローラーは骨を通過させる網のような構造でできており、その網に骨を通過させることによりピンボーンを引き抜くものであるが、ピンボーンがフィーレから突出している必要がある。
特許文献4は、魚フィーレにローラーを押し当てることによりピンボーンを突出させ、その状態を維持した状態で、爪のような治具によりピンボーンを引き抜く構造であるが、魚の形状、骨のある位置に個体差のばらつきがあるため、治具位置に対して骨が位置ずれしている場合、骨の取り残しが発生する場合がある。
以上述べたように、これらの装置は対象の骨を、魚身表面に対して垂直に刺さっている骨に限定されていたり、ピンボーンを突出させるため骨抜き装置で魚身を押さえたりするため、身を変形させるという課題がある。さらにそれらの装置に共通している課題は、骨の位置を特定した後骨を抜いているのではなく、骨のありそうな位置に対して骨抜きを行っているため、骨の取り残しが発生したり、周りの身に触ったりし、場合により傷つけることも考えられ、魚フィーレが廃棄される場合もある。そのためサーモンの骨抜きは人手が主流であり、これらの問題により現状自動化ができていない。
特許文献5は、骨の位置を画像で確認しているが、魚フィーレの大きさ、形状のばらつき、骨の位置、方向のばらつきなどがあり、通常のカメラと直行ロボットだけでは対応するのは難しく、骨の位置の3次元的計測や、その計測により骨の刺さっている方向も認識し、その方向に沿って3次元的動きにより骨を抜き取るということはできないという課題がある。そのため無理に骨を抜いて身を痛めたり、取り残しが発生したりする場合があるが、それに対するリカバリーが十分でなく、全自動システムという形態にはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4955036号公報
【特許文献2】特開2001-61404号公報
【特許文献3】特公平07-063300号公報
【特許文献4】特許第4078281号公報
【特許文献5】特許第6006568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明と同じように魚フィーレの骨を自動で抜く装置として特許文献1から4が提案されている。しかしこれらの装置は対象の骨を、魚身表面に対して垂直に刺さっている骨に限定されていたり、骨抜き装置と魚身を接触させるため魚身を押さえたり、下から持ち上げたりするため身を変形させるという課題がある。さらにそれらの装置に共通している課題は、骨の位置を特定した後骨を抜いているのではなく、骨のありそうな位置に対して骨抜きを行っているため、骨の取り残しが発生したり、周りの身に触ったりし、場合により傷つけることも考えられ、魚フィーレが廃棄される場合もある。
そのためサーモンの骨抜きは人手が主流であり、これらの問題により現状自動化ができていない。
近年、主要都市のバックヤードでは、従業員確保が難しく、さらに熟練された工員の不足もあり、骨抜き作業を含めた、高次加工が産地に求められている。しかし、産地での熟練された工員の確保も、工員の高齢化とともに年々厳しくなっており、産地加工場の機械化、無人化が要望されている。さらに、全世界においても日本食ブームが加速しており、冷凍のお刺身カットや冷凍の寿司ネタの需要が年々増えている。
しかしながら魚身を傷つけないように骨だけを抜くのではなく、骨の周りの身に触れて、場合により身を傷つけることも考えられる。さらに最近の骨なし切り身の需要増に対応して、アジ、タイなどの小型の魚の骨抜きも要求されており、様々な魚の種類、サイズに対応した全自動骨抜きシステムが求められているが、そのような課題を解決できるシステムはいまだにない状況である。
【0005】
本発明は、魚フィーレに対する骨の位置を一本一本認識させ、骨の周りの魚身に傷をつけることなく骨だけを抜き取ることができる魚フィーレ骨抜き取りシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の魚フィーレ骨抜き取りシステムは、魚フィーレをパレットに載置し、前記パレットを移動させることで前記パレットに載置した前記魚フィーレから骨を抜き取る魚フィーレ骨抜き取りシステムであって、前記パレットに載置した前記魚フィーレを撮像する第1撮像工程と、前記第1撮像工程で撮像された第1撮像画像により前記骨が存在する領域を特定する骨領域特定工程と、前記骨領域特定工程で特定された前記領域を撮像する第2撮像工程と、前記第2撮像工程で撮像された第2撮像画像により前記骨の位置を特定する骨位置特定工程と、前記骨位置特定工程で特定された前記骨の外方端部を骨抜きチャックにて掴み、前記骨抜きチャックの移動により前記骨を抜く骨抜き工程とを有することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステムにおいて、前記骨領域特定工程における前記領域を、機械学習によって特定することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステムにおいて、前記骨抜き工程の後に、前記魚フィーレに前記骨が残存していないかを検査する検査工程を、有することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステムにおいて、前記検査工程では、X線画像を用いることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項3に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステムにおいて、前記検査工程では、赤外線画像を用いることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステムにおいて、前記検査工程において前記骨が残存していないと判断した場合には、前記魚フィーレを載せた前記パレットを良品格納場所に移動し、前記検査工程において前記骨が残存していると判断した場合には、不良回数を示す不良係数を加算するとともに、前記不良係数が所定回数に達していないときは、前記魚フィーレを載せた前記パレットを再び前記骨抜き工程に移動させ、前記検査工程において前記骨が残存していると判断した場合であっても、前記不良係数が前記所定回数に達しているときは、前記魚フィーレを載せた前記パレットを不良品格納場所に移動することを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステムにおいて、前記パレットには、前記パレットの位置及び傾きの少なくともいずれかを計測するための3個以上の基準マークと、前記パレットを特定できるマーカーが付与されており、前記パレットには、前記基準マークを隠さないように前記魚フィーレを1枚載せ、前記魚フィーレを載せた前記パレットを、前記第1撮像工程、前記第2撮像工程、及び前記骨抜き工程に移動させ、前記第1撮像工程、前記第2撮像工程、及び前記骨抜き工程では、前記基準マークを読み取ることで座標補正を行うことを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項6に記載の魚フィーレ骨抜き取りシステムにおいて、前記パレットには、前記パレットの位置及び傾きの少なくともいずれかを計測するための3個以上の基準マークと、前記パレットを特定できるマーカーが付与されており、前記パレットには、前記基準マークを隠さないように前記魚フィーレを1枚載せ、前記魚フィーレを載せた前記パレットを、前記第1撮像工程、前記第2撮像工程、前記骨抜き工程、及び前記検査工程に移動させ、前記第1撮像工程、前記第2撮像工程、前記骨抜き工程、及び前記検査工程では、前記基準マークを読み取ることで座標補正を行い、前記不良品格納場所の前記パレットを移動する不良品作業場所には、前記マーカーを読み取る装置と、前記マーカーで特定される前記パレットに載置された前記魚フィーレの検査結果を表示するディスプレイと
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の魚フィーレ骨抜き取りシステムによれば、魚フィーレに対する骨の位置を一本一本認識させ、骨の周りの魚身に傷をつけることなく骨だけを抜き取ることができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例1による魚フィーレ骨抜き取りシステムを示す工程図
【
図2】同魚フィーレ骨抜き取りシステムで用いるパレットを示す構成図
【
図3】同魚フィーレ骨抜き取りシステムの作業場所を示す構成図
【
図4】本発明の実施例2による魚フィーレ骨抜き取りシステムの作業場所を示す構成図
【
図5】本発明の実施例3による魚フィーレ骨抜き取りシステムの作業場所を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の魚フィーレ骨抜き取りシステムは、パレットに載置した魚フィーレを撮像する第1撮像工程と、第1撮像工程で撮像された第1撮像画像により骨が存在する領域を特定する骨領域特定工程と、骨領域特定工程で特定された領域を撮像する第2撮像工程と、第2撮像工程で撮像された第2撮像画像により骨の位置を特定する骨位置特定工程と、骨位置特定工程で特定された骨の外方端部を骨抜きチャックにて掴み、骨抜きチャックの移動により骨を抜く骨抜き工程とを有するもので、魚フィーレに対する骨の位置を一本一本認識させ、骨の周りの魚身に傷をつけることなく骨だけを抜き取ることができる。
【実施例0010】
図1は本発明の実施例1による魚フィーレ骨抜き取りシステムを示す工程図である。
投入場所1ではパレット20(
図2参照)に魚フィーレ21(
図2参照)を載置する。投入場所1で魚フィーレ21が載置されたパレット20はコンベア11で移動され、パレット合流場所2に移動する。
投入場所1では、パレット20のマーカー22(
図2参照)を読み取り、通信回線12を経由してシステムコンピュータ13に送られる。これによりパレット20のマーカー22情報と魚フィーレ21とが特定される。マーカー22の読み取り装置及び読取方法は、非接触での磁気情報読取が適しているがその他の方法でもよい。投入場所1からパレット20が合流場所2に移動すると、投入場所1では、ほぼ同時に新たなパレット20に新たな魚フィーレ21が載置される。
魚フィーレ21を搭載していないパレット20は、パレット20を複数枚格納できるストッカーから自動供給することが好ましいが、人が供給してもよい。
パレット合流場所2は、リトライ投入場所でもあり、リトライコンベア10からリトライのためのパレット20が、投入場所1からのパレット20と、ぶつからないように制御される。リトライのためのパレット20がリトライコンベア10に存在する場合には、投入場所1からのパレット20と、リトライコンベア10からのパレット20とが交互に合流場所2に供給され、作業場所3に移動する。
【0011】
作業場所3では、第1撮像工程3Aと第2撮像工程3Bと骨抜き工程3Cとを有する。
第1撮像工程3Aでは、パレット20に載置した魚フィーレ21を撮像し、システムコンピュータ13では、第1撮像工程3Aで撮像された第1撮像画像により骨が存在する領域を特定する(骨領域特定工程13A)。
第2撮像工程3Bでは、骨領域特定工程13Aで特定された領域を撮像し、システムコンピュータ13では、第2撮像工程3Bで撮像された第2撮像画像により骨の位置を特定する(骨位置特定工程13B)。
骨抜き工程3Cでは、骨位置特定工程13Bで特定された骨の外方端部を骨抜きチャック42にて掴み、骨抜きチャック42の移動により骨を抜く。
作業場所3では、このようにして、パレット20上に搭載された魚フィーレ21の骨が1本1本抜かれる。詳しくは後述の
図2以降で説明する。
【0012】
骨抜き工程3Cが終わったパレット20は検査場所4に移動する。検査場所4ではX線もしくは赤外線にて骨の抜き残しがあるかないかを画像により判断する(検査工程)。判定結果は検査場所4で読み取られたマーカー22の情報とともに通信回線12経由でシステムコンピュータ13に送られ、マーカー22の情報と骨抜き結果が特定される。判定結果には少なくとも、同一魚フィーレ21に対して不良と判断された回数、残った骨の場所情報が含まれている。良品分岐場所5でマーカー22を読み取り、もしあらかじめ決められたすべての骨が抜き取られている場合は、良品分岐場所5から良品格納場所7に移動する。良品格納場所7は良品と判断された魚フィーレ21が搭載されたパレット20を格納する良品ストッカー群である。格納しないで常に取り出すようなシステムにすることも可能である。良品分岐場所5でマーカー22を読み取り、不良の場合は、不良リトライ分岐場所6に移動する。すなわち不良リトライ分岐場所6で読み取られたマーカー22により、このパレット20の搭載された魚フィーレ21は何回不良と判断されたかを、あらかじめ決められた回数と照らし合わせ、決められた回数に達している場合は不良品格納場所8に移動する。不良品格納場所8は不良品と判断された魚フィーレ21が搭載されたパレット20を格納する不良品ストッカーである。格納しないで常に取り出すようなシステムにすることもできるし、作業者17による不良品作業場所16に移動するようなシステムにすることもできる。不良リトライ分岐場所6で読み取られたマーカー22により、このパレット20に搭載された魚フィーレ21の不良回数が決められた回数に達していない場合は、リトライコンベア10に移動し、合流場所2に送られる。
【0013】
本実施例では、取り残し骨のある魚フィーレ21を載せた不良パレット群を不良品格納場所8として示している。不良品格納場所8の不良品ストッカーは不良品ストッカー格納場所15に運ばれる。不良品作業場所16は不良品ストッカー格納場所15に運ばれた不良品ストッカーから1枚のパレット20を取り出して載せる場所であり、ここでパレット20のマーカー22を読み取り、不良情報をディスプレイ14に表示する。作業者17は、ディスプレイ14の表示内容に沿って、取り残した骨を抜き取る。不良品格納場所8を不良品作業場所16としてもよい。
【0014】
図2は本実施例による魚フィーレ骨抜き取りシステムで用いるパレットの構成図である。
図2では、パレット20の上に魚フィーレ21が載っている状態を示している。基準マーク23は3個以上設けることが好ましく、パレット20の位置及び傾きの少なくともいずれかを計測する。なお、図示しないが、パレット20上方に基準マーク23の座標を計測できる計測センサーを配置し、計測センサーで基準マーク23の座標を計測することにより、パレット20の計測センサーの位置に対する座標を特定することができる。パレット20が移動して他の作業場所3に移った場合でも、これと同様に計測センサーにより移動してきたパレット20の基準マーク23を読み取ることにより、パレット20の位置が特定される。そのため、パレット20の停止位置がずれた場合でも、パレット20に置かれた魚フィーレ21の形状は、基準マーク23のあるすべての作業場所で、その基準マーク23を読み取ることにより、魚フィーレ21の形状をすべての作業場所で共有することができる。すべての作業場所においてパレット20の停止位置がずれない、もしくは許容範囲内のずれの場合はこの基準マーク23を使って座標の補正を行う必要はない。したがってパレット20の停止位置のずれが生じない方法で作業を行う環境が実現できれば、この基準マーク23をなくすことも可能である。
【0015】
マーカー22はパレット20を特定するものであり、パレット20に載っている魚フィーレ21も特定できる。本実施例では、作業場所3にパレット20が搬入されたとき、基準マーク23とほぼ同時にマーカー22も読み取られ、LANまたは無線LANによる通信回線12で、その読み取られたマーカー22の内容はシステムコンピュータ13に送られる。検査場所4においては、パレット20上のマーカー22に対応した検査結果がシステムコンピュータ13に送られる。良品分岐場所5においては、マーカー22情報からシステムコンピュータ13は不良リトライ分岐場所6に送るべきか、良品格納場所7に送るべきか判断する。不良品作業場所16においても同様であり、システムコンピュータ13がマーカー22に対応した検査結果をディスプレイ14に表示する。
【0016】
図3は本実施例による魚フィーレ骨抜き取りシステムの作業場所を示す構成図である。
第1撮像工程3Aは、コンベア11でパレット20が搬入されると、基準マーク23とマーカー22が読み取られ、システムコンピュータ13に情報が転送される。3次元センサー36は、高さ情報及び輝度情報をライン状に計測し、魚フィーレ21全体の3次元座標を取り込む。高さ情報を読み取らない場合は2次元カメラを使うこともできる。3次元センサー36はレール44に搭載され、レール44に沿って移動しながら計測を行うものである。本実施例ではコンベア11の移動方向37に対向する方向に移動する。魚フィーレ21全体もしくは決められた領域の計測が終了すると、システムコンピュータ13に3次元情報が転送され、魚フィーレ21の骨のありそうな部分もしくは部分群を特定する。なお、システムコンピュータ13とは別の画像処理コンピューターを用い、画像処理によって特定することもでき、特定した座標をシステムコンピュータ13に転送してもよい。また、画像処理コンピュータ、システムコンピュータ13内、もしくはそれらに付属するコンピューターにおいて、画像処理の代わりに機械学習させたニューラルネットワークで処理することもできる。その場合撮像された画像をメモリーに蓄積し、蓄積された画像をさらに機械学習させることにより認識の精度を向上させることも可能である。そして基準マーク23、マーカー22情報などとともにシステムコンピュータ13が管理しているメモリーに、魚フィーレ21の骨のありそうな部分もしくは部分群がそれらの領域を表す座標として格納される。3次元の計測終了とほぼ同時に魚フィーレ21の搭載されたパレット20は第2撮像工程3Bに搬入される。
【0017】
第2撮像工程3Bでは、第1撮像工程3Aと同様に、基準マーク23とマーカー22が読み取られ、システムコンピュータ13に情報が転送される。多関節ロボット38は、その先端部には照明39及びカメラ40が搭載されている。システムコンピュータ13はマーカー22情報に対応した、さらに基準マーク23で校正された魚フィーレ21の骨のありそうな部分もしくは部分群の座標を多関節ロボット38に転送する。転送された情報により骨のありそうな場所に多関節ロボット38に搭載された照明39及びカメラ40が移動し、撮像を行う。
第2撮像工程3Bでは、画像処理コンピューターに画像情報が転送され、魚フィーレ21の骨もしくは骨群を特定し、特定した座標をシステムコンピュータ13に転送する。第1撮像工程3Aにおいて、3次元センサー36ではなく、2次元カメラを用いた場合は、カメラ40の代わりに、高さ情報も同時にとれるカメラを使うか、もしくはカメラ40とは別に高さセンサーを追加して、3次元座標としてシステムコンピュータ13に転送する。第1撮像工程3Aの場合と同様、設備投資、生産タクトの関係で画像情報をシステムコンピュータ13に転送して、画像処理を行っても構わないし、画像処理の代わりに機械学習させたニューラルネットワークで処理することもできる。その場合も第1撮像工程3Aの場合と同様、撮像された画像をメモリーに蓄積し、蓄積された画像をさらに機械学習させることにより認識の精度を向上させることも可能である。そして基準マーク23、マーカー22情報とともにシステムコンピュータ13が管理しているメモリーに、魚フィーレ21の骨もしく骨群が格納される。認識された骨は、骨抜きチャック42が骨を抜くために挟む骨の場所を座標としてシステムコンピュータ13が管理するメモリーに格納されている。また座標だけでなく、骨の刺さっている方向も一緒にメモリーに格納されている場合もある。骨を抜く方向は基本的には魚の頭の方向であるが、個体差により方向が異なっている場合や、魚身と骨が強く絡みつき骨を抜きにくい場合、骨の刺さっている方向に沿って抜くと抜きやすい場合があるからである。
【0018】
画像計測終了とほぼ同時に魚フィーレ21の搭載されたパレット20は、骨抜き工程3Cに搬入される。
第1撮像工程3A及び第2撮像工程3Bと同様に、基準マーク23とマーカー22が読み取られ、システムコンピュータ13に情報が転送される。多関節ロボット41は、その先端部には骨抜きチャック42が搭載されている。システムコンピュータ13はマーカー22情報に対応した、さらに基準マーク23で校正された魚フィーレ21の骨の部分もしくは部分群の座標を多関節ロボット41に転送する。転送された情報により骨のある部分に骨抜きチャック42が移動し骨を抜く。この骨抜き工程3Cを決められた骨の数だけ繰り返す。結果をシステムコンピュータ13に転送し、骨抜き工程3Cが終了後は検査工程にパレット20が移動される。
【0019】
第2撮像工程3Bに多関節ロボット38が使われている理由は、魚フィーレ21は3次元的な形状であるため、その形状に沿った位置に照明39、カメラ40を配置することにより精度の高い計測が可能となる。例えば魚フィーレ21の表面に垂直な位置で計測することにより、全面にピントが合うと同時に画像歪などが軽減される。また骨抜き工程3Cに多関節ロボット41が使われている理由は、魚フィーレ21に刺さっている骨は、基本的には魚の頭の方向を向いているが、ばらつきがある。骨は魚の身に絡んでいるため骨の向いている方向に抜くことによりスムースに抜ける。様々な方向に骨を抜くため骨抜きチャック42は多関節ロボット41に搭載され、骨の外方端部を骨抜きチャック42にて掴む。
【0020】
カメラ40を取り付けた更なる利点として、カメラ40の画像を利用して、カメラ40を前後に動かす機構によりピント合わせを行うことにより、ピントが合った場合はカメラ40と対象画像、例えば抜くべき骨、までの距離が一定になり、これにより骨抜きチャック42までの距離もわかるようになり、骨の位置まで正確に骨抜きチャック42を誘導することができる。カメラ40でピントを合わせて距離を計測する代わりに、カメラ40を3次元センサー36に変更するか、もしくはカメラ40とは別に高さセンサーを追加して、3次元座標を取ることも可能である。
【0021】
図には示していないが、検査工程においても、基準マーク23とマーカー22が読み取られ、システムコンピュータ13に情報が転送される。そしてX線もしくは赤外線による画像により、抜き残した骨を判定する。取得した画像は図示していない画像処理コンピューターに転送され、魚フィーレ21の取り残した骨があるかないかを判断し、結果をシステムコンピュータ13に転送する。設備投資、生産タクトの関係で画像処理コンピューターの代わりにシステムコンピュータ13に画像を転送して、処理を行っても構わない。画像処理の代わりに機械学習させたニューラルネットワークで処理することもできる。その場合撮像された画像をメモリーに蓄積し、蓄積された画像をさらに機械学習させることにより認識の精度を向上させることも可能である。判断結果により、取り残しの骨があると判断された場合は、読み取られたマーカー22を通信回線12経由でシステムコンピュータ13に照会することにより、同一魚フィーレ21に対して何回目の検査を行ったかを把握し、その検査回数(以後不良係数という)を1つ増やす。不良係数はパレット20に新規に魚フィーレ21が投入されたとき0にしておく。取り残した骨の場所の座標を、基準マーク23により校正された座標でシステムコンピュータ13に転送する。基準マーク23により校正された座標でシステムコンピュータ13に転送する代わりに、取り残した骨の座標をシステムコンピュータ13に転送し、システムコンピュータ13で基準マーク23により校正された座標に変換しても構わない。またシステムコンピュータ13に座標を転送する場合、取り残した骨の数も転送する。
【0022】
図1に示す、作業場所3に搬入されたパレット20は、マーカー22を読み取ることにより不良係数が1以上の場合、第1撮像工程3Aと第2撮像工程3Bとをパスして、骨抜き工程3Cにおいてシステムコンピュータ13から取り残し骨の校正された座標に基づき、骨抜きを行うこともできる。この時、リトライコンベア10やその他搬送時にパレット20に搭載された魚フィーレ21がパレット20に対して移動した恐れがあると判断される場合は、第1撮像工程3Aと第2撮像工程3Bとをパスすることなく作業を行ってもいいし、第1撮像工程3Aをパスして第2撮像工程3Bから作業を行うこともできる。この場合は、システムコンピュータ13に蓄えられた取り残した骨の座標を使うのではなく、第1撮像工程3Aと第2撮像工程3Bにおいて新たなに計測された骨の座標を用いて骨抜きを行う。
本実施例の新たな利点は、骨を抜いた後に照明39とカメラ40で確認し、抜けてないと判断したとき、再度骨抜きを行わせることができる。抜けてないと判断する方法は、骨のあるべき場所の近傍の画像を撮像し、画像処理を行い、骨を確認する方法もあるが、もう一つの方法として、カメラ40の視野に骨抜きチャック42の先端周辺が映るように工夫しておくことにより、骨を抜いた後、骨抜きチャック42の先端周辺を画像撮影し、画像処理を行うことにより骨の確認をする方法もある。すなわち骨抜きチャック42先端周辺に骨がある場合は骨が抜けていることがわかる。そのためには以前に抜いた骨が骨抜きチャック42先端周辺についたままである場合は正しい判断ができないため、骨を抜いた後骨抜きチャック42から骨を毎回除去しておく必要がある。除去の方法としては骨抜きチャック42先端部分から骨を外した後、洗浄することにより行うことができる。さらに洗浄した後、画像にて骨の存在を確認することも可能である。さらに実施例1では第2撮像工程3Bから骨抜き工程3Cにパレット20が移動するとき、何らかの原因で魚フィーレ21が移動した場合、骨抜き工程3Cの多関節ロボット41に送られた骨の座標との齟齬が生じ、骨抜きがうまくできない場合が考えられるが、先ほど説明したように、再度骨を認識し骨抜きを行うように制御することで、この問題を解決することができる。さらに実施例2では、骨の位置を確認しながら骨抜きチャック42を制御して骨を抜くような制御も可能になり、信頼性を向上させた骨抜きシステムを実現することができる。また実施例2で骨抜きの後の魚フィーレ21の骨残りの確認をすべての骨を抜くごとに行うように制御した場合は、検査工程を省略することも可能である。
実施例2と同様、カメラ40を取り付けた更なる利点として、カメラ40の画像を利用して、カメラ40を前後に動かす機構によりピント合わせを行うことにより、ピントが合った場合はカメラ40と対象画像、例えば抜くべき骨、までの距離が一定になり、これにより骨抜きチャック42までの距離もわかるようになり、骨の位置まで正確に骨抜きチャック42を誘導することができる。カメラ40の代わりに高さ情報を取るセンサーを使うか、もしくはカメラ40とは別に高さセンサーを追加して、3次元座標を取ることもできる。