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特開2022-47911風力発電設備、雷サージ吸収装置および雷サージ吸収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047911
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】風力発電設備、雷サージ吸収装置および雷サージ吸収方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/30 20160101AFI20220317BHJP
   H05F 3/04 20060101ALI20220317BHJP
   H02G 13/00 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
F03D80/30
H05F3/04 G
H02G13/00 040
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153962
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】511019144
【氏名又は名称】株式会社落雷抑制システムズ
(71)【出願人】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡
(72)【発明者】
【氏名】松本 敏男
【テーマコード(参考)】
3H178
5G067
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB43
3H178CC02
3H178CC14
3H178DD51X
5G067AA70
5G067DA02
5G067DA33
(57)【要約】
【課題】本発明は、インパルス信号としての雷電流を生じさせる落雷による損傷を軽減することができる風力発電設備を提供する、ことを課題としている。
【解決手段】
本発明の風力発電設備1は、立設された支柱5と、この支柱5に回転可能に装着された複数のブレード7と、このブレードの回転軸に装着されたハブHとを備えた風力発電設備であって、前記ブレード7から前記ハブHに亘りインピーダンス線路8が設けられ、前記ハブHに前記インピーダンス線路8と接続されている接地線11が設けられ、前記インピーダンス線路8が、前記ブレード7をレセプタとする落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換する、ことを特徴とする。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設された支柱と、この支柱に回転可能に装着された複数のブレードと、このブレードの回転軸に装着されたハブとを備えた風力発電設備であって、
前記ブレードから前記ハブに亘りインピーダンス線路が設けられ、
前記ハブに前記インピーダンス線路と接続されている接地線が設けられ、
前記インピーダンス線路が、前記ブレードをレセプタとする落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換する、ことを特徴とする風力発電設備。
【請求項2】
前記インピーダンス線路が、金属発熱体からなる電気抵抗体を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の風力発電設備。
【請求項3】
前記金属発熱体が、Ni-Cr合金からなる、ことを特徴とする請求項2に記載の風力発電設備。
【請求項4】
前記金属発熱体が、Fe-Cr-Al合金からなる、ことを特徴とする請求項2に記載の風力発電設備。
【請求項5】
前記インピーダンス線路が、非金属発熱体からなる電気抵抗体を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の風力発電設備。
【請求項6】
前記非金属発熱体が、SiCを主成分とするセラミクスからなる、ことを特徴とする請求項5に記載の風力発電設備。
【請求項7】
前記非金属発熱体が、グラファイトを主成分とするセラミクスからなる、ことを特徴とする請求項5に記載の風力発電設備。
【請求項8】
前記インピーダンス線路が、粉末を絶縁体に設けてなる電気抵抗体を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の風力発電設備。
【請求項9】
前記電気抵抗体が、非線形抵抗体を含む前記粉末を前記絶縁体に設けてなる、ことを特徴とする請求項8に記載の風力発電設備。
【請求項10】
前記非線形抵抗体が、ZnOを主成分とするセラミクスからなる、ことを特徴とする請求項9に記載の風力発電設備。
【請求項11】
前記絶縁体は、支持絶縁筒からなる、ことを特徴とする請求項8~請求項10の何れか一項に記載の風力発電設備。
【請求項12】
前記絶縁体は、不織布からなる、ことを特徴とする請求項8~請求項10の何れか一項に記載の風力発電設備。
【請求項13】
前記インピーダンス線路が、液状抵抗体を絶縁体に設けてなる電気抵抗体を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の風力発電設備。
【請求項14】
前記電気抵抗体が、海水からなる前記液状抵抗体をホースからなる前記絶縁体に封入してなる、ことを特徴とする請求項13に記載の風力発電設備。
【請求項15】
前記インピーダンス線路が、可撓性を有する電気抵抗体を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の風力発電設備。
【請求項16】
前記インピーダンス線路が、電気抵抗体にコイルが並列接続されてなる素子を備える、ことを特徴とする請求項1~請求項15の何れか一項に記載の風力発電設備。
【請求項17】
前記インピーダンス線路が、複数の電気抵抗体が空隙を挟んで非接触に隣接することでなる素子を備える、ことを特徴とする請求項1~請求項16の何れか一項に記載の風力発電設備。
【請求項18】
前記インピーダンス線路が、前記素子が直並列に多段接続されてなる、ことを特徴とする請求項16または請求項17に記載の風力発電設備。
【請求項19】
雷サージ吸収装置であって、インピーダンス線路を備え、
前記インピーダンス線路は、風力発電設備を構成するブレードおよびハブに亘り設けられ、前記風力発電設備を構成する接地線と接続されている、ことを特徴とする雷サージ吸収装置。
【請求項20】
前記インピーダンス線路は、電気抵抗体にコイルが並列接続されてなる素子を備える、ことを特徴とする請求項19に記載の雷サージ吸収装置。
【請求項21】
前記インピーダンス線路は、複数の電気抵抗体が空隙を挟んで非接触に隣接することでなる素子を備える、ことを特徴とする請求項19または請求項20に記載の雷サージ吸収装置。
【請求項22】
雷サージ吸収方法であって、風力発電設備を構成するブレードに設けられたインピーダンス線路に、前記ブレードをレセプタとする落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換させる工程を含む、ことを特徴とする雷サージ吸収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電設備に係わり、特に、風力発電設備における雷サージを吸収して、風力発電設備を雷害から保護する機能を備えた風力発電設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
落雷は大気中で起こる放電現象であり、雷放電には雲内放電、雲間放電、雲―大地間放電等がある。雷放電で大きな被害を出すのは雲―大地間放電(以下落雷)である。落雷は雷雲(雲底)と大地または大地等に建設された構造物との間の電界強度が非常に大きくなり、その電荷が臨界状態となって大気の絶縁破壊強度を超えたときに発生する現象である。
【0003】
ところで、近年、再生可能エネルギーによる発電装置として、風力発電設備が取り上げられている。
【0004】
この風力発電設備は、支柱の上部にナセルによって覆われた発電機を設置し、この発電機に、この発電機を回転駆動するための複数のブレードを装着した構成となっている。前記ブレードは、大型のものでは60mを超える長さを有している。
【0005】
このように、風力発電設備の上部が雷雲に近い位置に位置させられ、特に、前記ブレードの先端が雷雲に最も近い位置に位置させられることから、このブレード先端に落雷しやすい。
【0006】
特許文献1によれば、風車翼において被雷し易いとされる翼先端部では保護層自体が落雷に対するレセプタとして機能するとともに、翼先端部から翼根に亘っては上記保護層自体が雷電流を導くダウンコンダクタとして機能するような、風車翼保護構造およびその形成方法についての発明が開示されている。
【0007】
特許文献1記載の発明によれば、風車翼などを含むような風力発電設備そのものについて、雷電流を安全に大地に放電できるような設備構造を実現することができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の発明のような、風車翼やブレードなどに導電性金属箔のようなダウンコンダクタを設ける構造では、インパルス信号としての雷電流による風力発電設備の損傷を好適に防止できない恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-218863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、インパルス信号としての雷電流を生じさせる落雷による損傷を軽減することができる風力発電設備を提供する、ことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の風力発電設備は、立設された支柱と、この支柱に回転可能に装着された複数のブレードと、このブレードの回転軸に装着されたハブとを備えた風力発電設備であって、前記ブレードから前記ハブに亘りインピーダンス線路が設けられ、前記ハブに前記インピーダンス線路と接続されている接地線が設けられ、前記インピーダンス線路が、前記ブレードをレセプタとする落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換する、ことを特徴とする。
【0012】
このような構成とすることにより、本発明は、雷撃時の電圧および放電エネルギーをインピーダンス線路および接地線で分担させることができる。
この結果、ブレードを含む風力発電設備の損傷を低減することができる。
【0013】
また、このような構成とすることにより、本発明は、雷撃時の発熱をインピーダンス線路に亘って分散させることができる。
この結果、本発明は、ブレードにおいて局所加熱を防止することができる。
【0014】
前記インピーダンス線路が、金属発熱体からなる電気抵抗体を備える構成とすることができる。
【0015】
このような構成とすることにより、本発明は、金属発熱体を介して、雷撃時の放電エネルギーを熱エネルギーに変換し雷サージが持つエネルギーを吸収することができる。
この結果、本発明は、風力発電設備の損傷を防止することができる。
【0016】
前記金属発熱体が、Ni-Cr合金からなる、ことを特徴とする。
【0017】
このような構成とすることにより、本発明は、風力発電設備における雷対策において、1100℃帯の最高使用温度を実現することができる。
この結果、本発明は、ブレードにおいて放電エネルギーにかかる熱エネルギーへの変換を好適に実現することができる。
【0018】
前記金属発熱体が、Fe-Cr-Al合金からなる、ことを特徴とする。
【0019】
このような構成とすることにより、本発明は、風力発電設備における雷対策において、1300℃程度の最高使用温度を実現することができる。
この結果、本発明は、ブレードにおいて放電エネルギーにかかる熱エネルギーへの変換を好適に実現することができる。
【0020】
前記インピーダンス線路が、非金属発熱体からなる電気抵抗体を備える、ことを特徴とする。
【0021】
このような構成とすることにより、本発明は、非金属発熱体を介して、放電エネルギーを熱エネルギーに変換し雷サージを吸収することができる。
この結果、本発明は、風力発電設備の損傷を防止することができる。
【0022】
前記非金属発熱体が、SiCを主成分とするセラミクスからなる、ことを特徴とする。
【0023】
このような構成とすることにより、本発明は、風力発電設備における雷対策において、1600℃程度の最高使用温度を実現することができる。
この結果、本発明は、ブレードにおいて放電エネルギーにかかる熱エネルギーへの変換を好適に実現することができる。
【0024】
前記非金属発熱体が、グラファイトを主成分とするセラミクスからなる、ことを特徴とする。
【0025】
このような構成とすることにより、本発明は、例として黒鉛電極の部材を電気抵抗体として採用することができるため、熱伝導率が高く、耐熱性に優れ、衝撃にも強いインピーダンス線路を実現することができる。
【0026】
前記インピーダンス線路が、粉末を絶縁体に設けてなる電気抵抗体を備える、ことを特徴とする。
【0027】
このような構成とすることにより、本発明は、インピーダンス線路のメンテナンス性を含む製作性を向上することができる。
【0028】
前記電気抵抗体が、非線形抵抗体を含む前記粉末を前記絶縁体に設けてなる、ことを特徴とする。
【0029】
このような構成とすることにより、本発明は、低電圧領域では抵抗値が一定であるが所定の閾値電圧以上の場合抵抗値が低下するインピーダンス線路を実現することができる。
この結果、本発明は、ブレードを含む風力発電設備において、落雷にかかるサージ吸収特性を向上することができる。
【0030】
前記非線形抵抗体が、ZnOを主成分とするセラミクスからなる、ことを特徴とする。
【0031】
このような構成とすることにより、本発明は、タブルショットキーバリアを有する非線形抵抗体を、安価に製作性に優れた形態で実現することができる。
この結果、本発明は、低電圧領域では抵抗値が一定であるが所定の閾値電圧以上の場合抵抗値が低下するインピーダンス線路を実現することができる。
【0032】
前記絶縁体は、支持絶縁筒からなる、ことを特徴とする。
【0033】
このような構成とすることにより、本発明は、上記電気抵抗体を封入してなるインピーダンス線路を、単位構造の集合体として構築することができる。
この結果、本発明は、ブレードにおけるインピーダンス線路について、直並列回路を簡易に構築可能に製作性に優れた形態で実現することができる。
【0034】
前記絶縁体は、不織布からなる、ことを特徴とする。
【0035】
このような構成とすることにより、本発明は、絶縁体に電気抵抗体を塗布することでインピーダンス線路を実現することができる。
この結果、本発明は、ブレードにおけるインピーダンス線路について、フレキシブルに、裁断可能に、製作性に優れた形態で実現することができる。
【0036】
前記インピーダンス線路が、液状抵抗体を絶縁体に設けてなる電気抵抗体を備える、ことを特徴とする。
【0037】
このような構成とすることにより、本発明は、インピーダンス線路を構成する電気抵抗体として、液体を用いることができる。
この結果、本発明は、ブレードにおけるインピーダンス線路について、搬送性に優れた形態で、製作性に優れた形態で実現することができる。
【0038】
前記電気抵抗体が、海水からなる前記液状抵抗体をホースからなる前記絶縁体に封入してなる、ことを特徴とする。
【0039】
このような構成とすることにより、本発明は、インピーダンス線路を構成する電気抵抗体として、海水を用いることができる。
この結果、本発明は、ブレードにおけるインピーダンス線路について、洋上において、製作性に優れた形態で実現することができる。
【0040】
前記インピーダンス線路が、可撓性を有する電気抵抗体を備える、ことを特徴とする。
【0041】
このような構成とすることにより、本発明は、ブレードの回転により発生し得る、インピーダンス線路の接触不良を防止することができる。
この結果、本発明は、インピーダンス線路が設けられたブレードにおいて、損傷を防止することができる。
【0042】
前記インピーダンス線路が、電気抵抗体にコイルが並列接続されてなる素子を備える、ことを特徴とする。
【0043】
このような構成とすることにより、本発明は、例として電気抵抗体にインダクタであるコイルを巻きつけインピーダンス線路を実現することができる。
また、このような構成とすることにより、本発明は、高周波領域において電気抵抗が支配的となるようなインピーダンス線路を実現することができる。
この結果、本発明は、ブレードにおいて、サージ吸収効果に優れたインピーダンス線路を、コンパクトに製作性に優れた形態で実現することができる。
【0044】
前記インピーダンス線路が、複数の電気抵抗体が空隙を挟んで非接触に隣接することでなる素子を備える、ことを特徴とする。
【0045】
このような構成とすることにより、本発明は、落雷により過大な電圧が発生したときに放電ギャップを介して導通するような電気抵抗体を含む素子を、インピーダンス線路に導入することができる。
この結果、本発明は、材料によらず、非線形性を有する電気抵抗体をインピーダンス線路に導入し優れたサージ吸収効果を実現することができる。
【0046】
前記インピーダンス線路が、前記素子が直並列に多段接続されてなる、ことを特徴とする。
【0047】
このような構成とすることにより、本発明は、ブレードを含む風力発電設備において、耐圧および放電耐量を向上することができる。
【0048】
雷サージ吸収装置であって、インピーダンス線路を備え、前記インピーダンス線路は、風力発電設備を構成するブレードおよびハブに亘り設けられ、前記風力発電設備を構成する接地線と接続されている、ことを特徴とする。
【0049】
前記インピーダンス線路は、電気抵抗体にコイルが並列接続されてなる素子を備える、ことを特徴とする。
【0050】
前記インピーダンス線路は、複数の電気抵抗体が空隙を挟んで非接触に隣接することでなる素子を備える、ことを特徴とする。
【0051】
本発明の雷サージ吸収方法は、風力発電設備を構成するブレードに設けられたインピーダンス線路に、前記ブレードをレセプタとする落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換させる工程を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、インパルス信号としての雷電流を生じさせる落雷による損傷を軽減することができる風力発電設備を提供することができる。ここで、インパルス信号とは、サージ性信号である、と把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】第1の実施形態の風力発電設備を示す正面図である。
図2】第1の実施形態の支柱上部の構造を示す概略斜視図である。
図3】第1の実施形態を示すインピーダンス線路8の概要図である。
図4】第2の実施形態を示すインピーダンス線路8の概要図である。
図5】第3の実施形態を示すインピーダンス線路8の概要図である。
図6】第4の実施形態を示すインピーダンス線路8の概要図である。
図7】第5の実施形態を示すインピーダンス線路8の概要図である。
図8】第6の実施形態を示すインピーダンス線路8の概要図である。
図9】第7の実施形態を示すインピーダンス線路8の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本明細書は、本発明の一の実施形態について、以下に、詳細に説明する。なお、本発明の一の実施形態における構成は、その構成要素が実現する作用効果について、作用効果を実現する構成要素だけでなく、作用効果を構成要素に実現させる工程を適宜、示すものである。
【0055】
〈第1の実施形態〉
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1において、符号1は、本実施形態に係わる風力発電設備1を示す。
【0056】
本実施形態の風力発電設備1は、発電を行なう風車2と、この風車2において発電された電力を、送電線3を介して送電する送電設備4とによって構成されている。
【0057】
前記風車2は、図1および図2に示すように、地面Eに立設された支柱5と、この支柱5の上部に設けられた、発電機G、変速機I、変速機Iの回転軸Sの途中に設けられた回転電気接点C、および、回転軸Sの先端に放射状に設けられたハブHとこれらを覆って設けられたナセル6と、各ハブHのそれぞれにフランジを介して回転可能に接続された複数のブレード7と、ブレード7からハブHに亘りインピーダンス線路8が設けられる。
【0058】
前記インピーダンス線路8は、ブレード7に埋設し、ブレード7内部に配線されているダウンコンダクタに代えて設けられる。
インピーダンス線路8は、ブレード7内部に設けられてよく、ブレード7内部において配線されてよく、ブレード7内部において配索されてよく、ブレード7を構成する構造物に設けられてよく、ブレード7を構成する構造物に巻き付けられてよく、ブレード7を構成する構造物に貼り付けられてよく、ブレード7を構成する構造物に係合されてよく、ブレード7を構成する構造物に螺着されてよく、その一部がブレード7に表出してもよい。
インピーダンス線路8は、そのブレード7に表出するレセプタ9と電気的に接続される。
前記レセプタ9は、ブレード7の先端に位置してよく、ブレード7の胴部に位置してよく、その位置に制限はなく、その数量に制限はない。
【0059】
前記ブレード7は、グラスファイバー等の繊維強化プラスチックによって形成される。図3に示すように、ブレード7は、ハブHに亘りインピーダンス線路8が設けられ、その基部にフランジが設けられ、ブレード7の延伸方向に沿って延伸するロッドがその内部に設けられる。ブレード7は、このフランジがハブHに設けられているフランジに多数のボルト・ナットによって締結されることにより、ハブHに放射状に固定される。
【0060】
このように構成された本実施形態に係わる風力発電設備1では、風力エネルギーを複数のブレード7によって回転運動に変換し、この回転運動によって発電機Gを駆動することにより発電を行なう。
【0061】
前記インピーダンス線路8は、電気抵抗体10を備える。
電気抵抗体10は、金属発熱体10a(図示せず)からなり、箔状であってよく、線状であってよく、帯状であってよく、平編状であってよく、その形状に制限はなく、その先端に接続のための丸形やL字型等の端子を備えてよい。
金属発熱体10aは、Fe、Cr、Al、Cu、Ni、Cu-Ni合金、Cu-Mn合金、Ni-Al合金、Ni-Cr合金、および、Fe-Cr-Al合金を含む群から選択される電熱線材料からなり、その材料に制限はない。
【0062】
前記インピーダンス線路8は、端子を介して、ブレード7に表出するレセプタ9に螺着されているとともに、ハブH、回転軸S、および、回転電気接点Cを介して接地線11に電気的に接続されて地面Eに電気的に接続されている。
また、前記インピーダンス線路8は、例として、ブレード7において、ブレード7またはブレード7に設けられた構造物に締結されたサドルバンドなどの配管支持金具により固定されてよく、ブレード7または当該構造物に直接、締結などされることで固定されてよく、その固定手法に制限はない。
【0063】
このように、インピーダンス線路8は、ブレード7上のレセプタ9を介して伝搬する放電エネルギーの一部を、インピーダンス線路8が備える電気抵抗体10を介して、ジュール効果により、熱エネルギーに変換する。
【0064】
このとき、雷撃時の放電エネルギーの一部が熱エネルギーとして消費され、ブレード7が加熱されるが、同時に、回転運動などにより空冷されることで風力発電設備1の損傷が低減される、と把握することができる。
【0065】
また、このように、インピーダンス線路8は、雷撃時の電圧および放電エネルギーを接地線11との間で分担することができ、かつ雷撃時の発熱箇所をブレード7の全長にわたり分散させることができ、ブレード7の局所加熱を防止することができる。
【0066】
インピーダンス線路8の抵抗値は、抵抗値が小さいことに起因する、電気抵抗体10が分担する電圧の減少と、それにともなうサージ吸収効果の低下と、を回避するよう選定される。
【0067】
また、このように、抵抗値が大きいことに起因する、電気抵抗体10の電圧降下の増大と、それにともなうブレード7内の放電発生と、を回避する。
【0068】
〈第2の実施形態〉
以下、本発明の第2の実施形態について、図4を参照して説明する。
【0069】
前記インピーダンス線路8は、電気抵抗体10を備える。
図4に示すように、電気抵抗体10は、金属発熱体10aに代えて、非金属発熱体10bを絶縁体10cに封入してなり、その先端に丸形およびL字型等の端子を備えてよく、互いにばねを介して接続されてよい。
非金属発熱体10bは、SiC、MoSiO、および、ZrOを含む群から選択される材料を主成分とするセラミクスからなり、粉末であってよく、焼結体であってよく、その材料に制限はない。
絶縁体10cは、非金属発熱体10bを封入可能な支持絶縁筒等の容器であり、その形状に制限はなく、その寸法に制限はなく、その材料に制限はなく、可撓性を有してよい。
【0070】
このように、非金属発熱体10bを絶縁体10cに封入してなる電気抵抗体10を用いてインピーダンス線路8を形成することで、金属発熱体10aと比較して加工が難しい非金属発熱体10bについても、インピーダンス線路8の形成において、そのメンテナンス性を含む製作性を向上することができ、金属発熱体10aを用いる場合より高い温度帯へ対応することができる。
【0071】
また、非金属発熱体10bは、グラファイトを主成分とするセラミクスからなってよく、黒鉛電極の態様をとってよい。
【0072】
また、インピーダンス線路8は、絶縁体10cに封入されない非金属発熱体10bからなってよい。
【0073】
非金属発熱体10bは、導電性ゲル、導電性ゴム、および、導電性エラストマーなどの可撓性を有する導電性構造物であってよい。
【0074】
〈第3の実施形態〉
以下、本発明の第3の実施形態について、図5を参照して説明する。
【0075】
前記インピーダンス線路8は、電気抵抗体10を備える。
図5に示すように、電気抵抗体10は、第2の実施形態における非金属発熱体10bに代えて、非金属発熱体10dを絶縁体10cに封入してなる。
非金属発熱体10dは、ZnOを含む群から選択される非線形抵抗体材料を主成分とするセラミクスからなり、粉末であってよく、焼結体であってよく、多孔質体であってよく、その材料および比率に制限はない。
【0076】
このように、低電圧領域では抵抗値が一定であるが所定の閾値以上の場合抵抗値が低下することで、雷撃時において、所定の閾値以上の電圧についてその放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換し、サージ吸収効果を向上する。
【0077】
〈第4の実施形態〉
以下、本発明の第4の実施形態について、図6を参照して説明する。
【0078】
前記インピーダンス線路8は、電気抵抗体10を備える。
電気抵抗体10は、図6に示すように、非金属発熱体10bに代えて、非金属発熱体10eを絶縁体10cに封入してなる。
非金属発熱体10eは、海水等の液状抵抗体である。
絶縁体10cは、ホース等の可撓性を有する容器であり、その形状に制限はなく、その寸法に制限はない。
【0079】
このように、搬送性に優れた非金属発熱体10eである海水等を用いて、製作性に優れた形態で電気抵抗体10を形成する。
【0080】
これにより、例えば洋上の風力発電設備1において、電気抵抗体10を構成する材料としての液状抵抗体を適宜、供給し、高温となった液状抵抗体を適宜、排水し、好適に液状抵抗体を循環させながら落雷対策を行う。
【0081】
〈第5の実施形態〉
以下、本発明の第5の実施形態について、図7を参照して説明する。
【0082】
前記インピーダンス線路8は、電気抵抗体10を備える。
図7に示すように、電気抵抗体10は、絶縁体10cに代えて、絶縁体10fに非金属発熱体10bまたは10dを塗布してなる。
絶縁体10fは、不織布等の布であり、その材料および材質に制限はない。
【0083】
このように、布状の絶縁体10fに非金属発熱体10bまたは10dを塗布することで、製作性に優れた形態で電気抵抗体10を形成する。
【0084】
これにより、風力発電設備1において回転運動するブレード7の空気抵抗を損なうことなく、サージ吸収効果をブレード7に付与する。
【0085】
〈第6の実施形態〉
以下、本発明の第6の実施形態について、図8を参照して説明する。
【0086】
前記インピーダンス線路8は、図8に示すように、第1~5の実施形態に例示される電気抵抗体10にコイル15が並列接続されてなる素子16を備え、素子16が直並列(直列および/または並列)に多段接続されてなる。
コイル15は、例えば金属材料であり、その材料および寸法に制限はない。
素子16は、電気抵抗体10にコイル15が巻きつけられてなり、コイル15等のインダクタが電気抵抗体10に並列接続されてなる。
【0087】
このように、1以上の素子16を構成する電気抵抗体10の電気抵抗R、および、1以上の素子16を構成するコイル15のリアクタンスLに基づき決定される変曲点を基準として、高周波領域において電気抵抗Rが支配的となるようなインピーダンス線路8をブレード7上に実現する。
【0088】
これにより、落雷にかかる周波数に応じたサージ吸収特性の調整や設計を、ブレード7上のインピーダンス線路8において柔軟に行う。
【0089】
〈第7の実施形態〉
前記インピーダンス線路8は、図9に示すように、複数の電気抵抗体10が空隙10gを挟んで非接触に隣接することでなる素子16を備える。
素子16は、ブレード7においてダウンコンダクタに代えて設けられ、可撓性を有し中空構造を呈するホースなどの管10hの内部に電気抵抗体10および空隙10gが交互に配置されてなる。なお、管10hの径に制限はない。
電気抵抗体10は円筒状を呈し、例として円筒状の絶縁体10cにSiC粉末などの非金属発熱体10bが封入されてなってよく、その寸法および数量に制限はない。
空隙10gは、例として0.1mm~5.0mmの幅を有し、その長さに制限はなく、マイクロギャップを呈してよく、その雰囲気は大気雰囲気であってよくAr雰囲気であってよく減圧雰囲気であってよい。
【0090】
これにより、インピーダンス線路8は、落雷により所定の閾値以上を呈するような過大な電圧が発生したときに放電ギャップを介して導通し、その放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換することで、優れたサージ吸収効果を実現することができる。
【0091】
また、これにより、素子16を構成する個々の電気抵抗体10の寸法などを標準化することができ、放電ギャップを前提とした素子設計により、スケーラブルにインピーダンス線路8を実現することができ、インピーダンス線路8を長尺化することができる。
【0092】
また、これにより、素子16を構成する個々の電気抵抗体10における放電による劣化を防止し、また発熱を個々の電気抵抗体10において分散させることができるため、インピーダンス線路8の長寿命化を実現することができる。
【0093】
また、これにより、素子16を構成する個々の空隙10gを短絡するような回路設計が可能となり、より柔軟に落雷サージに対するインピーダンス線路8の動作特性を調整することができ、その製作性を向上することができる。
【0094】
前記電気抵抗体10は、その両端に半円状を呈する電極10tを備え、半円状を呈する電極10t同士がアラインメントされてなる。
【0095】
これにより、円筒状を呈する電気抵抗体10の芯出しが容易になり、施工が容易になり、製作性に優れたインピーダンス線路8を実現することができる。
【0096】
また、前記電気抵抗体10は、半円状を呈する電極10tに代えて、凹状または凸状を呈する電極10tがアラインメントされてなってよい。
電極10tの形状は、電極10tのアラインメントが容易になるようなものであれば、その形状に制限はない。
【0097】
前記インピーダンス線路8を構成する素子16は、その内部において複数の電気抵抗体10が空隙10gを挟んで非接触に隣接する管10hにコイル15が巻きつけられてなってよい。
【0098】
これにより、放電ギャップによる導通現象を駆使したサージ吸収効果に加えて、コイル15が有するインダクタンスに起因する周波数特性を駆使したサージ吸収特性を実現することができ、風力発電設備1における落雷による損傷の影響を低減することができる。
【0099】
本発明の一の実施形態において、インピーダンス線路8、または、インピーダンス線路8が設けられたブレード7は、雷サージ吸収装置に相当する。
【0100】
本発明の一の実施形態において、前記インピーダンス線路8は、例として、ラインパルスの代表的な値である100kHzにおいて、0.1~1.0kΩのインピーダンスを示す単位素子の集合体となるよう、その抵抗値やインダクタンスを適宜、設定されてよい。
【0101】
本発明の一の実施形態において、インピーダンス線路8は、偶数本の抵抗線を絶縁筒に右巻と左巻に振り分けてなってよい。
【0102】
本発明の一の実施形態の各構造物の少なくとも1つは、耐熱性を有する。
【0103】
本発明の一の実施形態におけるインピーダンス線路8を構成する材料は適宜、添加物や副生成物などの異物を含んでよい。
【0104】
本発明の一の実施形態では、上述の実施形態1~7などの実施形態の構成の一部を互いに採用するような構成を適宜、採用し得る。
【0105】
本発明の風力発電設備1によれば、落雷による損傷を好適に防止することができる風力発電設備1を実現することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 :風力発電設備
2 :風車
3 :送電線
4 :送電設備
5 :支柱
6 :ナセル
7 :ブレード
8 :インピーダンス線路
9 :レセプタ
10 :電気抵抗体
10a :金属発熱体
10b :非金属発熱体
10c :絶縁体
10d :非金属発熱体
10e :非金属発熱体
10f :絶縁体
10g :空隙
10h :管
10t :電極
11 :接地線
15 :コイル
16 :素子
C :回転電気接点
E :地面
G :発電機
H :ハブ
I :変速機
S :回転軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9