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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047980
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】地盤掘削装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20220317BHJP
   E21B 3/02 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
E21D9/06 301M
E21B3/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154059
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】504077308
【氏名又は名称】安斎 聡
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安斎 聡
【テーマコード(参考)】
2D054
2D129
【Fターム(参考)】
2D054AC02
2D054BA03
2D054FA01
2D129AB05
2D129AB21
2D129BA19
2D129DA11
2D129DC23
2D129FA01
2D129FA08
2D129HB03
(57)【要約】
【課題】回転刃の摩耗を抑制し、各部品の寿命を延ばし、孔管頻度を下げることでメンテナンスにかかる時間を少なくすることができる地盤掘削装置を提供する。
【解決手段】地盤掘削装置1は、地盤を掘削する回転刃2と、地盤を掘削する際に、回転刃2に対して潤滑液を噴出する潤滑液噴出装置3と、潤滑液に酸素を供給する酸素供給装置5とを備え、酸素供給装置5は、高圧状態の酸素を微細気泡として潤滑液に酸素を供給する気泡発生媒体6を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削する回転刃と、
地盤を掘削する際に、前記回転刃に対して潤滑液を噴出する潤滑液噴出装置と、
前記潤滑液に酸素を供給する酸素供給装置とを備え、
前記酸素供給装置は、高圧状態の酸素を微細気泡として潤滑液に酸素を供給する気泡発生媒体を有する、
地盤掘削装置。
【請求項2】
前記地盤掘削装置はシールド掘進機であり、
前記回転刃を複数備えた掘削カッターと、
前記掘削カッターが取り付けられる筒状の隔壁と、
前記隔壁によって形成される掘削室と、
前記隔壁に開口される排泥土口と、
注入材と掘削土を混合して潤滑剤として高濃度泥水を作成する高濃度泥水設備と、
一端が前記排泥土口に連通され、前記掘削室内の掘削土砂を排出する排泥土導入管と、
掘削土砂を地上へ搬送する排泥土搬送管と、を有する地盤掘削装置であって、
前記潤滑液噴出装置は、
前記高濃度泥水設備から前記掘削カッターの前方に高濃度泥水を潤滑液として噴出する第一の噴出装置と、
前記高濃度泥水設備から前記隔壁の外周部に高濃度泥水を潤滑液として噴出する第二の噴出装置と、を有し、
前記酸素供給装置の前記気泡発生媒体は、前記高濃度泥水設備において、注入材と掘削土を混合する際に、高圧状態の酸素を微細気泡として高濃度泥水中へ放出するものであり、
前記気泡発生媒体は、炭素系の多孔質素材で形成されている、
請求項1に記載の地盤掘削装置。
【請求項3】
前記潤滑液噴出装置は、
前記隔壁の外周部に滑剤プラントに貯蔵された固結型滑剤を噴出する第三の噴出装置を有し、
前記気泡発生媒体は、滑剤プラントにおいて固結型滑剤に高圧状態の酸素を微細気泡として放出する、
請求項2に記載の地盤掘削装置。
【請求項4】
前記地盤掘削装置は土壌改良用のボーリング装置であり、
上下方向に延伸した回転ロッドと
前記回転ロッドの下端に設けられ、前記回転刃を複数備えた回転ビットとを備え、
前記潤滑液噴出装置は、前記回転ビットの前方に潤滑液を噴出し、
前記酸素供給装置の前記気泡発生媒体は、前記潤滑液噴出装置において、高圧状態の酸素を微細気泡として潤滑液中へ放出するものであり、
前記気泡発生媒体は、炭素系の多孔質素材で形成されている、
請求項1に記載の地盤掘削装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤掘削装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中にトンネルを構築する際には、地盤掘削装置として密閉式のシールド掘進機が用いられる。掘進機の代表的なものとしては、泥水式のシールド掘進機や、泥土圧式のシールド掘進機が挙げられる。泥水式のシールド掘進機は、掘進方向の掘削面(切羽)に泥水圧を作用させて切羽の安定を図りつつ掘削を行うものである。一方、泥土圧式のシールド掘進機は、掘削土砂を泥土化し、それに所定の圧力(泥土圧)を与えて切羽の安定を図りつつ掘削を行うものである。
【0003】
また、泥濃式のシールド掘進機においては、泥水式の掘進工法と泥土圧式の掘進工法の長所を生かすものである。泥濃式のシールド掘進機は、高濃度の泥水を切羽やテールボイドに作用させて、止水性の高い土砂性状の構築を行い、地山の緩み防止を図るものである。泥濃式のシールド掘進工法においては、他の工法よりも大きな掘削断面となり、推進時の推進管周面摩擦力が低くなり、長距離の推進および曲線が多いもしくは曲線角度が大きい場合の施工において優位性を保つ。
【0004】
泥濃式のシールド掘進機においては、掘削土の50~150%程度の注入材を注入撹拌することで掘削土を液状化して高濃度泥水を作成する。さらに、エアーピンチバルブを開閉することで掘削室圧を地下水圧+0.02~0.05MPaの範囲で保持しながら掘進排土する。そして、大気圧下の機内に排出された液状土は吸引排泥装置にて排泥土搬送管から地上の吸引タンクに搬出される。
【0005】
注入材が含まれる高濃度泥水は、掘削カッターの前方に排出される。また、注入材が含まれる高濃度泥水はテールボイドから隔壁の外周部に向けても噴出される。注入材は、シリカ材を含む水を主成分とした液体であり、注入材と掘削土を混合することで液状化して高濃度泥水を作成し、当該高濃度の泥水を切羽やテールボイドに作用させて、止水性の高い土砂の構築を行うものである。
【0006】
しかし、従前の注入材では、液状化した高濃度の泥水と切羽との間に摩擦が発生し、切羽の摩耗や、回転式の掘削カッターへの負荷がかかっていた。そこで、潤滑性を高めることのできる注入材が望まれていた。
また、トンネルを構築する地盤によっては、硫化水素が発生することがある。硫化水素は、切羽をはじめとした金属製の部品を腐食させて劣化させる。これにより、シールド掘進機の寿命が短縮するおそれがあった。そのため、硫化水素を還元することのできる注入材が求められていた。
【0007】
また、地盤改良を行う際に、地盤を切削して円孔を設け、切削と同時に当該円孔に硬化剤を注入することで円柱状の改良体を造成する土壌改良工法において、地盤を切削する地盤掘削装置としてボーリング装置が用いられる。ボーリング装置は、回転ロッドと回転ロッドの下端に設けられた回転ビットと、を備える。地盤を切削する際には、回転ロッドを回転させて回転ビットを回転駆動し、所定の深度まで削孔する。
【0008】
この場合、回転ビットと切削土との間に摩擦が発生し、回転ビットの摩耗や、回転ロッドへの負荷がかかっていた。そこで、回転ビットの切削時に切削土との潤滑性を高めることのできる潤滑剤が望まれていた。また、改良を要する地盤によっては、硫化水素が発生することがある。硫化水素は、回転刃をはじめとした金属製の部品を腐食させて劣化させる。これにより、ボーリング装置の寿命が短縮するおそれがあった。そのため、硫化水素による腐食を防ぐことのできる潤滑材が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6370954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題に鑑み、回転刃の摩耗を抑制し、各部品の寿命を延ばし、孔管頻度を下げることでメンテナンスにかかる時間を少なくすることができる地盤掘削装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、本発明においては、地盤を掘削する回転刃と、地盤を掘削する際に、前記回転刃に対して潤滑液を噴出する潤滑液噴出装置と、潤滑液に酸素を供給する酸素供給装置とを備え、酸素供給装置は、高圧状態の酸素を微細気泡として潤滑液に酸素を供給する気泡発生媒体を有するものである。
【0013】
また、本発明においては、地盤掘削装置はシールド掘進機であり、回転刃を複数備えた掘削カッターと、掘削カッターが取り付けられる筒状の隔壁と、隔壁によって形成される掘削室と、隔壁に開口される排泥土口と、注入材と掘削土を混合して潤滑剤として高濃度泥水を作成する高濃度泥水設備と、一端が前記排泥土口に連通され、前記掘削室内の掘削土砂を排出する排泥土導入管と、掘削土を地上へ搬送する排泥土搬送管と、を有する地盤掘削装置であって、潤滑液噴出装置は、高濃度泥水設備から前記掘削カッターの前方に高濃度泥水を潤滑液として噴出する第一の噴出装置と、高濃度泥水設備から隔壁の外周部に高濃度泥水を潤滑液として噴出する第二の噴出装置と、を有し、酸素供給装置の前記気泡発生媒体は、高濃度泥水設備において、注入材と掘削土を混合する際に、高圧状態の酸素を微細気泡として高濃度泥水中へ放出するものであり、気泡発生媒体は、炭素系の多孔質素材で形成されているものである。
【0014】
また、本発明においては、潤滑液噴出装置は、隔壁の外周部に滑剤プラントに貯蔵された固結型滑剤を噴出する第三の噴出装置を有し、気泡発生媒体は、滑剤プラントにおいて固結型滑剤に高圧状態の酸素を微細気泡として放出するものであってもよい。
【0015】
また、本発明においては、地盤掘削装置は土壌改良用のボーリング装置であり、上下方向に延伸した回転ロッドと回転ロッドの下端に設けられ、前記回転刃を複数備えた回転ビットとを備え、潤滑液噴出装置は、前記回転ビットの前方に潤滑液を噴出し、酸素供給装置の前記気泡発生媒体は、前記潤滑液噴出装置において、高圧状態の酸素を微細気泡として潤滑液中へ放出するものであり、気泡発生媒体は、炭素系の多孔質素材で形成されているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
本発明においては、高濃度泥水に微細気泡を混入することで掘削カッターと掘削土および隔壁と掘削土の間の潤滑性が高まり、掘削カッターの回転刃の摩耗が抑制される。よって各部品の交換頻度が下がり掘進工法において縦坑と縦坑の距離を伸ばすことができる。さらにメンテナンス時間が少なくなり、工期の短縮に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一の実施形態に係る地盤掘削装置を示す正面概略図。
図2】本発明の第二の実施形態に係るシールド掘進機を示す正面概略図。
図3】本発明の第三の実施形態に係る超高圧噴流装置を示す正面概略図。
図4】本発明の第三の実施形態に係る超高圧噴流装置の掘削ビットを示す正面概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0020】
地盤掘削装置1は、地盤を掘削することにより地中にトンネルを構築し、または、土壌改良を行う際に用いる装置である。図1に示すように、地盤掘削装置1は、地盤を掘削する回転刃2と、地盤を掘削する際に、回転刃2に対して潤滑液を噴出する潤滑液噴出装置3とを備える。回転刃2は、推進方向を軸心として回転する回転体4上に複数配置されており、回転体4の回転によって、回転刃2を回転させて地盤を掘削するものである。潤滑剤噴出装置3は、回転刃2と地盤との間の潤滑性をよくするための潤滑液を噴出する装置である。
【0021】
潤滑液噴出装置3は、潤滑液を噴出するノズル3aと潤滑液を貯蔵する貯蔵容器3bとを備える。
酸素供給装置5は、潤滑液に酸素を供給する装置である。酸素供給装置5は、高圧状態の酸素を微細気泡として潤滑液に酸素を供給する気泡発生媒体6を有する。潤滑液を噴射することにより、回転刃2と地盤との間の潤滑性が向上し、回転刃2の耐久性が向上するだけでなく、作業時間の短縮を図ることが可能となる。
【0022】
次に、本発明の一実施形態にかかる地盤掘削装置としてのシールド掘進機11の全体構成について図2を用いて説明する。
【0023】
シールド掘進機11は、地中にトンネルを構築する際に用いられる装置であり、掘進方向の掘削面に泥水圧を作用させて回転刃の安定を図りつつ掘削を行う装置である。
シールド掘進機11は、泥濃式の掘削方法で掘削するものであり、掘削土の50~150%程度の注入材を注入撹拌することで掘削土を液状化して高濃度泥水を作成する。
【0024】
シールド掘進機11は、掘削カッター12と、掘削カッター12が取り付けられる筒状の隔壁13と、隔壁13によって形成される掘削室14と、隔壁13に開口される排泥土口15と、注入材と掘削土を混合して高濃度泥水を作成する高濃度泥水設備16と、潤滑液噴出装置である第一の噴出装置17A、第二の噴出装置17B、第三の噴出装置17Cと、を備える。また、シールド掘進機11は、一端が排泥土口15に連通され、掘削室14内の掘削土を排出する排泥土導入管19と、掘削土を地上へ搬送する排泥土搬送管20と、を有する。
【0025】
泥濃式の掘削方法においては、掘削室14の内圧を地下水圧+0.02~0.05MPaの範囲で保持しながら掘進する。そして、排出された液状の掘削土は排泥土搬送管20から地上の吸引タンク21に搬出される。
【0026】
シールド掘進機11の掘削カッター12は、円盤部材31と、円盤部材31に同心円状に配置された複数の回転刃32とを備える。円盤部材31は、掘進方向に対して軸方向が平行となるように設けられている。掘削カッター12を回転することにより、地盤を回転刃32で掘削する。
【0027】
高濃度泥水設備16は、吸引タンク21に搬出された掘削土と、注入材とを混濁することで、第一の噴出装置17A及び第二の噴出装置17Bから噴出する高濃度泥水を作成する設備である。注入材は、シリカ材を含む水を主成分とした液体であり、注入材と掘削土を混合することで液状化して高濃度泥水を作成する。
【0028】
ここで、第一の噴出装置17Aから噴出される高濃度泥水は、第二の噴出装置17Aから噴出される高濃度泥水よりも注入材の割合が多くなるように構成されている。このように構成することにより、第一の噴出装置17Aから噴出する高濃度泥水は、地山を掘削しやすくし、掘削土の流動性を高めることが可能となる。また、第二の噴出装置17Bから噴出する高濃度泥水は、隔壁外周部の摩擦を軽減することが可能となる。
【0029】
第一の噴出装置17Aは、潤滑液噴出装置の一形態であり、高濃度泥水設備16から掘削カッター12の前方に高濃度泥水を潤滑液として噴出する装置である。第一の噴出装置17Aは、潤滑液を噴出するノズルを備え、高濃度泥水設備16において作成された高濃度泥水を掘削カッター12の前方に向けて噴出する。掘削カッター12の前方に向けて噴出された高濃度泥水と掘削土が混合されながら掘削カッター12によって切削される。この際、微細気泡が掘削カッター12と掘削土との間に存在することで、掘削土と掘削カッター12との接触機会が低減し、潤滑性を高めるものである。
【0030】
第二の噴出装置17Bは、潤滑液噴出装置の一形態であり、高濃度泥水設備16から隔壁13の外周部に高濃度泥水を潤滑液として噴出する。第二の噴出装置17Bは、隔壁13の外周部に設けられたノズルを備え、高濃度泥水設備16において作成された高濃度泥水を隔壁の外周に向けて噴出する。
【0031】
第三の噴出装置17Cは、潤滑液噴出装置の一形態であり、隔壁13の外周部に固結型滑剤を噴出する。固結型滑剤は、滑剤プラント33において貯蔵された複数の液体を混合することによりゲル化する滑剤であり、滑剤がゲル化することにより、地下水等による希釈が発生せず、長期間の滑剤効果を得ることができる。また、注入後ゲル化することで空隙を充填し、未掘削地山が崩壊しにくくなる。
【0032】
酸素供給装置37の気泡発生媒体38は、高濃度泥水設備16において、注入材と掘削土を混合する際に、高圧状態の酸素を微細気泡として高濃度泥水中へ放出するものである。
高圧状態の酸素とは、大気圧よりも0~1.5MPa高い圧力を有する酸素のことであり、調圧バルブによって圧力が調整された酸素が高濃度泥水中へと放出される。
【0033】
気泡発生媒体38は、直径数nm~数十μmの細かな孔を多数有している。また、気泡発生媒体38は導電体であり、気泡発生媒体38から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である気泡発生媒体38を通過する際に超微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0034】
気泡発生媒体38は炭素系の多孔質素材で構成される。炭素系の多孔質素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材であり、無機質の素材である。また、炭素系の多孔質素材の表面には、厚さ数nmの膜が形成されている。前記膜はケイ素を含む無機質の膜で形成されている。ここで微細気泡とは、常温常圧下においてサイズ(直径)が100μm未満の気泡を意味する。
【0035】
このように構成することにより、シールド掘進機11が、円盤部材31を回転させて回転刃32で地盤を掘削する際に、第三の噴出装置17Cから噴出する固結型滑剤内に微細気泡が含まれることとなる。微細気泡は、固結型滑剤内で弾けることで、隔壁13の外周部における摩擦を低減させるものである。
【0036】
また、地盤によっては、掘進することで地盤内の硫化水素が坑道内に噴出することがある。硫化水素は、シールド掘進機11の各部品を硫化させて劣化させる。しかし、高濃度泥水に酸素が微細気泡として含まれることにより、硫化水素を硫黄と水に分解することができるので、各部品の硫化を抑止することができる。これにより、各部品の寿命が延び、メンテナンス時間の短縮を図ることができる。
【0037】
また、シールド掘進機11が、地盤を掘削する際に、隔壁13の外周側に向かって第二の噴出装置17Bから噴出する高濃度泥水内に微細気泡が含まれることとなる。微細気泡は、高濃度泥水内で弾けることで、隔壁13と地盤との間に気体の層を作り、潤滑性を向上させるものである。
【0038】
また、滑剤用気泡発生媒体37は、滑剤プラント33において、注入材と掘削土を混合する際に、高圧状態の酸素を微細気泡として固結型滑剤へ放出するものである。
【0039】
このように構成することにより、二つの液が混合する速度が速くなり素早くゲル状の滑剤となる。また、シールド掘進機11が、地盤を掘削する際に、隔壁13の外周側に向かって第三の噴出装置17Cから噴出する滑剤内に微細気泡が含まれることとなる。微細気泡は、高濃度泥水内で弾けることで、隔壁と地盤との間に気体の層を作り、潤滑性を向上させるものである。
【0040】
また、別の実施形態においては、地盤掘削装置としてのボーリング装置41の全体構成について図3および図4を用いて説明する。
ボーリング装置41は、地盤改良を行う際に、地盤を切削して円孔を設け、当該円孔に硬化剤を注入することで円柱状の改良体を造成する土壌改良工法において、地盤を切削する装置である。
【0041】
ボーリング装置41は、回転ロッド42と回転ロッド42の下端に設けられた回転ビット43と、を備える。
地盤を切削する際には、まず回転ロッド42を回転させて回転ビット43を回転駆動し、所定の深度まで削孔する。掘削された泥土は円孔の外部に搬出される。円孔を作成後に、当該円孔に硬化剤を注入することで円柱状の改良体を造成する土壌改良を行うものである。
【0042】
ボーリング装置41は、潤滑液噴出装置45を備える。潤滑液噴出装置45は、回転ビット43の切削時に切削土との潤滑性を高めることのできる潤滑剤を噴出する装置である。潤滑液噴出装置45は、噴射ノズルを備え回転ビット43の近傍に備えられている。
【0043】
酸素供給装置47の気泡発生媒体48は、潤滑液噴出装置45に潤滑液を供給する潤滑液タンク49において、高圧状態の酸素を微細気泡として潤滑液中へ放出するものである。気泡発生媒体48は、直径数μm~数十μmの細かな孔を多数有している。また、気泡発生媒体は導電体であり、気泡発生媒体から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である気泡発生媒体を通過する際に超微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0044】
気泡発生媒体48は炭素系の多孔質素材で構成される。炭素系の多孔質素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材であり、無機質の素材である。また、炭素系の多孔質素材の表面には、厚さ数nmの膜が形成されている。前記膜はケイ素を含む無機質の膜で形成されている。ここで微細気泡とは、常温常圧下においてサイズ(直径)が100μm未満の気泡を意味する。
【0045】
回転ロッド42を回転させて回転駆動させるとき、潤滑液噴出装置45から潤滑液を噴出させる。このように構成することにより、ボーリング装置41が、地盤を掘削する際に、潤滑液噴出装置45から噴出する潤滑液内に微細気泡が含まれることとなる。回転ビット43の前方に向けて噴出された高濃度泥水と掘削土が混合されながら回転ビット43によって切削される。この際、微細気泡が回転ビット43と掘削土との間に存在することで、掘削土と回転ビット43との接触機会が低減し、潤滑性を高めるものである。
【0046】
また、地盤によっては、掘進することで地盤内の硫化水素が坑道内に噴出することがある。硫化水素は、ボーリング装置41の各部品を硫化させて劣化させる。しかし、潤滑液に酸素が微細気泡として含まれることにより、硫化水素を硫黄と水に分解することができるので、各部品の硫化を抑止することができる。これにより、各部品の寿命が延び、メンテナンス時間の短縮を図ることができる。
【0047】
以上のように、地盤掘削装置1は、地盤を掘削する回転刃2と、地盤を掘削する際に、回転刃2に対して潤滑液を噴出する潤滑液噴出装置3と、潤滑液に酸素を供給する酸素供給装置5とを備え、酸素供給装置5は、高圧状態の酸素を微細気泡として潤滑液に酸素を供給する気泡発生媒体6を有するものである。
このように構成することにより、微細気泡として潤滑液に酸素を供給することで地盤掘削装置1の各部材の摩耗が抑制される。これにより、地盤掘削装置1の各部材の交換頻度が下がり掘進する縦坑の距離を伸ばすことができる。また、ボーリングにおいても回転刃2を交換する時間が少なくなる。シールド掘進工法においても同様に工期の短縮を図ることができる。また、微細気泡を用いることで拡散性及び潤滑性が向上するため、潤滑性を向上させるために従来から使われていたベントナイトや拡散剤の使用量を減らすことができるのである。
【0048】
また、地下トンネル工事が深度の浅い箇所で行われる際、硫化水素ガスが地盤から噴出することがあるが、酸素を微細気泡として潤滑剤に混入しながら掘削することで硫化水素を酸化させて硫黄にして、各部材の硫化による劣化を抑えることができる。
【0049】
また、酸素を微細気泡として混入することで、潤滑液の通常の飽和酸素量の8倍の酸素量(40~50mg/L)にする事が可能となり、持続時間も通常の加圧溶解式の高濃度酸素水よりも長く維持できる。
【0050】
高濃度酸素は生物や環境に対して無害で有るため、自然放流時に自然環境への負荷も低くすることができる。
【0051】
また、地盤掘削装置はシールド掘進機11であり、回転刃32を複数備えた掘削カッター12と、掘削カッター12が取り付けられる筒状の隔壁13と、隔壁13によって形成される掘削室14と、隔壁13に開口される排泥土口15と、注入材と掘削土を混合して潤滑剤として高濃度泥水を作成する高濃度泥水設備16と、一端が前記排泥土口15に連通され、掘削室14内の掘削土砂を排出する排泥土導入管19と、掘削土砂を地上へ搬送する排泥土搬送管20と、を有する地盤掘削装置であって、潤滑液噴出装置は、高濃度泥水設備16から掘削カッター12の前方に高濃度泥水を潤滑液として噴出する第一の噴出装置17Aと、高濃度泥水設備16から隔壁13の外周部に高濃度泥水を潤滑液として噴出する第二の噴出装置17Bと、を有し、酸素供給装置35の気泡発生媒体36は、高濃度泥水設備16において、注入材と掘削土を混合する際に、高圧状態の酸素を微細気泡として高濃度泥水中へ放出するものであり、気泡発生媒体36は、炭素系の多孔質素材で形成されているものである。
このように構成することにより、第一の噴出装置17Aから噴出する高濃度泥水は、地山を掘削しやすくし、排泥土の流動性を高めることが可能となる。また、第二の噴出装置17Bから噴出する高濃度泥水は、隔壁外周部の摩擦を軽減することが可能となる。
【0052】
また、潤滑液噴出装置は、隔壁13の外周部に滑剤プラント33に貯蔵された固結型滑剤を噴出する第三の噴出装置17Cを有し、気泡発生媒体38は、滑剤プラント33において固結型滑剤に高圧状態の酸素を微細気泡として放出するものである。
このように構成することにより、第三の噴出装置17Cから噴出する固結型滑剤内に微細気泡が含まれることとなる。微細気泡は、固結型滑剤内で弾けることで、隔壁13の外周部における摩擦を低減させるものである。
【0053】
また、地盤掘削装置は土壌改良用のボーリング装置41であり、上下方向に延伸した回転ロッド42と回転ロッド42の下端に設けられ、回転刃を複数備えた回転ビット43とを備え、潤滑液噴出装置45は、回転ビット43の前方に潤滑液を噴出し、酸素供給装置47の気泡発生媒体48は、潤滑液噴出装置45において、高圧状態の酸素を微細気泡として潤滑液中へ放出するものであり、気泡発生媒体48は、炭素系の多孔質素材で形成されているものである。
このように構成することにより、ボーリング工程において、回転ビット43と地盤との間に気体の層を作り、潤滑性を向上させるものである。また、潤滑液に酸素が微細気泡として含まれることにより、硫化水素を硫黄と水に分解することができるので、各部品の硫化を抑止することができる。これにより、各部品の寿命が延び、メンテナンス時間の短縮を図ることができる。
【0054】
なお、本実施形態に係る地盤掘削装置は、シールド掘進機や、ボーリング装置に限定されるものではなく、回転刃を有する掘削機械であれば適用することができる。例えば、グラウンドアンカー工法において、土留杭や受圧盤の背面地盤をボーリング削孔するための削孔機、港湾、河川、湖沼などに堆積した汚染物質を固化処理するために汚染土壌を掘削する深層処理工法用掘削装置にも適用可能である。また、回転ロッドにより計画深度まで削孔した後、ノズルの回転により超高圧硬化剤液を地盤中に回転して噴射させて、地盤を切削すると同時に円柱状の改良体を造成する超高圧噴流装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 地盤掘削装置
2 回転刃
3 潤滑液噴出装置
3a ノズル
3b 貯蔵容器
4 回転体
5 酸素供給装置
6 気泡発生媒体
11 シールド掘進機
12 掘削カッター
13 隔壁
14 掘削室
15 排泥土口
16 高濃度泥水設備
17A 第一の噴出装置(潤滑液噴出装置)
17B 第二の噴出装置(潤滑液噴出装置)
17C 第三の噴出装置(潤滑液噴出装置)
19 排泥土導入管
20 排泥土搬送管
21 吸引タンク
31 円盤部材
32 回転刃
33 滑剤プラント
35 酸素供給装置
26 気泡発生媒体
37 酸素供給装置
38 気泡発生媒体
41 ボーリング装置
42 回転ロッド
43 回転ビット
45 潤滑液噴出装置
47 酸素供給装置
48 気泡発生媒体
49 潤滑液タンク

図1
図2
図3
図4