IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社木村技研の特許一覧

<>
  • 特開-洗浄装置 図1
  • 特開-洗浄装置 図2
  • 特開-洗浄装置 図3
  • 特開-洗浄装置 図4
  • 特開-洗浄装置 図5
  • 特開-洗浄装置 図6
  • 特開-洗浄装置 図7
  • 特開-洗浄装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048002
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/34 20060101AFI20220317BHJP
   E03D 5/10 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
E03D1/34
E03D5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154097
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000155333
【氏名又は名称】株式会社木村技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 朝映
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AA03
2D039BA02
2D039BA11
2D039DA04
2D039EA01
(57)【要約】
【課題】タンク式の洗浄装置において、便器洗浄時の節水を図ると共に、排水管を洗浄する洗浄水の充分な量の貯水を可能にする。
【解決手段】便器洗浄用の洗浄水を貯める第一貯水槽と、便器及び前記便器に接続された排水管を洗浄する前記洗浄水を貯める第二貯水槽と、前記第一貯水槽と前記第二貯水槽との間に設けられ、開状態で前記第一貯水槽と前記第二貯水槽とを連通する連通弁と、前記第一貯水槽に設けられ、前記放水経路に前記洗浄水を放水するための洗浄弁と、前記連通弁及び前記洗浄弁の開閉を制御する弁制御部とを備え、前記弁制御部が、便器洗浄の開始時に前記連通弁を閉状態とし、前記洗浄弁を開状態として、前記第一貯水槽内の前記洗浄水を前記放水経路に放水させ、排水管洗浄の開始時に、前記連通弁及び前記洗浄弁を開状態として、前記第一貯水槽内の前記洗浄水及び前記第二貯水槽内の前記洗浄水を前記放水経路に放水させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の放水経路に洗浄水を放水する洗浄装置であって、
便器洗浄用の前記洗浄水を貯める第一貯水槽と、
前記便器及び前記便器に接続された排水管を洗浄する前記洗浄水を貯める第二貯水槽と、
前記第一貯水槽と前記第二貯水槽との間に設けられ、開状態で前記第一貯水槽と前記第二貯水槽とを連通する連通弁と、
前記第一貯水槽に設けられ、前記放水経路に前記洗浄水を放水するための洗浄弁と、
前記連通弁及び前記洗浄弁の開閉を制御する弁制御部と、
を備え、
前記弁制御部が、便器洗浄の開始時に前記連通弁を閉状態とし、前記洗浄弁を開状態として、前記第一貯水槽内の前記洗浄水を前記放水経路に放水させ、排水管洗浄の開始時に、前記連通弁及び前記洗浄弁を開状態として、前記連通弁を介して前記第二貯水槽内の前記洗浄水を前記第一貯水槽内へ流入させ、前記第一貯水槽内の前記洗浄水及び前記第二貯水槽内の前記洗浄水を前記放水経路に放水させる洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄装置が、一つの貯水タンクを備え、
前記貯水タンクの少なくとも内側下部の空間が、仕切り壁によって二分され、その空間の一方を前記第一貯水槽とし、他方を前記第二貯水槽とした請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記仕切り壁の高さを調整する調整機構を備え、前記仕切り壁の高さによって、便器洗浄時に放水する前記洗浄水の量を調整する請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記弁制御部が、前記便器洗浄の終了時に前記洗浄弁を閉状態とし、前記連通弁を開状態として前記第二貯水槽内の前記洗浄水を前記第一貯水槽内へ流入させる請求項1~3の何れか1項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記第二貯水槽内の水位に応じて前記第一貯水槽内へ前記洗浄水を供給する給水部を備え、
前記便器洗浄の終了時に前記第二貯水槽内の前記洗浄水が前記第一貯水槽内へ流入して前記洗浄水の水位が低下した場合に、前記給水部が給水を開始し、
前記第一貯水槽内へ給水した前記洗浄水が仕切り壁を越えて前記第二貯水槽内へ流入し、前記第二貯水槽内の水位が所定高さに達した場合に、前記給水部が前記給水を停止する請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記排水管洗浄の終了時に、前記弁制御部が前記洗浄弁及び前記連通弁を閉状態とし、前記給水部が前記第一貯水槽内へ給水を開始し、
前記第一貯水槽内へ給水した前記洗浄水が前記仕切り壁を越えて前記第二貯水槽内へ流入し、前記第二貯水槽内の水位が所定高さに達した場合に、前記給水部が前記給水を停止する請求項5に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記第一貯水槽内の水位を検出する水位センサを備え、
前記便器洗浄の開始後、前記水位センサによって検出した前記第一貯水槽内の水位が所定の洗浄終了位置まで低下した場合に、前記弁制御部が、前記便器洗浄の終了時になったと判定して前記洗浄弁を閉状態とし、前記連通弁を開状態とし、
前記水位センサによって検出した前記第一貯水槽内の水位が前記洗浄終了位置よりも高い位置に設定された連通終了位置に達した場合に、前記弁制御部が、前記連通弁を閉状態とする請求項4~6の何れか1項に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記第一貯水槽内の水位を検出する水位センサを備え、
前記弁制御部が、前記水位センサによって検出した前記第一貯水槽内の水位に応じて前記洗浄弁又は前記連通弁の開閉を制御する請求項1~6の何れか1項に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク式の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗便器としては、給水管の水圧をそのまま利用するフラッシュバルブ式や、給水管から給水された水を一旦タンクに貯め、タンク内に貯めた水を一気に排出することで洗浄を行うタンク式のものが、挙げられる。フラッシュバルブ式の水洗便器は、給水管の口径が大きく且つ給水の圧力が高い大容量の給水管が要求されるため、主に連続使用が想定される大規模な建物に採用される。一方、タンク式の水洗便器は、要求される給水管の口径や圧力が高くなく、一般家庭や小規模な店舗など、種々の建物で広く採用されている。
【0003】
また、近年の傾向として、水洗便器は、洗浄水の量を抑え、水資源の消費抑制や排水の処理負荷軽減などを図る節水型のものが求められている。
【0004】
特許文献1では、大用及び小用の洗浄水を正確に放水し、無駄な放水を無くすことで節水できるようにした洗浄装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-127192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンビニエンスストアやファミリーレストランなど、道路沿いに建てられた店舗、いわゆる路面店では、道路側に大きな駐車場を設け、この駐車場を挟んで道路から離れた位置に店舗を設けることが多い。この場合、店舗内のトイレから、道路の下に埋設さている公共の排水管までを横引き管でつないで排水することになるが、トイレから公共の排水管までの距離が長くなると共に、横引き管の排水勾配が小さくなってしまう。このため、便器から排出された汚物が、公共の排水管まで搬送されず、横引き管内に残って詰まりや虫を発生させるといった問題が生じることがある。特に、節水型のトイレは、一度に流す洗浄水の量が少ないため、汚物が横引き管内に残りやすく、この問題を生じさせ易い傾向がある。なお、便器の使用時だけでなく、定期的に洗浄水を流すことで、横引き管内の汚物等を洗浄して詰まりを防止することや排水管内を清潔にすることも考えられるが、この場合も節水型のタンク式水洗便器では、一度に流すことができる洗浄水の量が少ないため、充分に洗浄できないことがある。
【0007】
そこで、本発明は、タンク式の洗浄装置において、便器洗浄時の節水を図ると共に、排水管洗浄時に排水管を洗浄する充分な量の放水が可能な洗浄装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る洗浄装置は、
便器の放水経路に洗浄水を放水する洗浄装置であって、
便器洗浄用の前記洗浄水を貯める第一貯水槽と、
前記便器及び前記便器に接続された排水管を洗浄する前記洗浄水を貯める第二貯水槽と、
前記第一貯水槽と前記第二貯水槽との間に設けられ、開状態で前記第一貯水槽と前記第二貯水槽とを連通する連通弁と、
前記第一貯水槽に設けられ、前記放水経路に前記洗浄水を放水するための洗浄弁と、
前記連通弁及び前記洗浄弁の開閉を制御する弁制御部と、
を備え、
前記弁制御部が、便器洗浄の開始時に前記連通弁を閉状態とし、前記洗浄弁を開状態として、前記第一貯水槽内の前記洗浄水を前記放水経路に放水させ、排水管洗浄の開始時に、前記連通弁及び前記洗浄弁を開状態として、前記連通弁を介して前記第二貯水槽内の前記洗浄水を前記第一貯水槽内へ流入させ、前記第一貯水槽内の前記洗浄水及び前記第二貯水槽内の前記洗浄水を前記放水経路に放水させる。
【0009】
前記洗浄装置は、一つの貯水タンクを備え、
前記貯水タンクの少なくとも内側下部の空間が、仕切り壁によって二分され、その空間の一方を前記第一貯水槽とし、他方を前記第二貯水槽としてもよい。
【0010】
前記洗浄装置は、前記仕切り壁の高さを調整する調整機構を備え、前記仕切り壁の高さによって、便器洗浄時に放水する前記洗浄水の量を調整してもよい。
【0011】
前記洗浄装置は、前記弁制御部が、前記便器洗浄の終了時に前記洗浄弁を閉状態とし、前記連通弁を開状態として前記第二貯水槽内の前記洗浄水を前記第一貯水槽内へ流入させてもよい。
【0012】
前記洗浄装置は、前記第二貯水槽内の水位に応じて前記第一貯水槽内へ前記洗浄水を供給する給水部を備え、
前記便器洗浄の終了時に前記第二貯水槽内の前記洗浄水が前記第一貯水槽内へ流入して前記洗浄水の水位が低下した場合に、前記給水部が給水を開始し、
前記第一貯水槽内へ給水した前記洗浄水が前記仕切り壁を越えて前記第二貯水槽内へ流入し、前記第二貯水槽内の水位が所定高さに達した場合に、前記給水部が前記給水を停止してもよい。
【0013】
前記洗浄装置は、前記排水管洗浄の終了時に、前記弁制御部が前記洗浄弁及び前記連通弁を閉状態とし、前記給水部が前記第一貯水槽内へ給水を開始し、
前記第一貯水槽内へ給水した前記洗浄水が前記仕切り壁を越えて前記第二貯水槽内へ流入し、前記第二貯水槽内の水位が所定高さに達した場合に、前記給水部が前記給水を停止してもよい。
【0014】
前記洗浄装置は、前記第一貯水槽内の水位を検出する水位センサを備え、
前記便器洗浄の開始後、前記水位センサによって検出した前記第一貯水槽内の水位が所定の洗浄終了位置まで低下した場合に、前記弁制御部が、前記便器洗浄の終了時になったと判定して前記洗浄弁を閉状態とし、前記連通弁を開状態とし、
前記水位センサによって検出した前記第一貯水槽内の水位が前記洗浄終了位置よりも高い位置に設定された連通終了位置に達した場合に、前記弁制御部が、前記連通弁を閉状態としてもよい。
【0015】
前記洗浄装置は、前記第一貯水槽内の水位を検出する水位センサを備え、
前記弁制御部が、前記水位センサによって検出した前記第一貯水槽内の水位に応じて前記洗浄弁又は前記連通弁の開閉を制御してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タンク式の洗浄装置において、便器洗浄時の節水を図ると共に、排水管洗浄時に排水管を洗浄する充分な量の放水が可能な洗浄装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】店舗に設けられたトイレの配置を示す図である。
図2】実施形態に係るトイレの構成を示す正面図である。
図3】実施形態に係るトイレの構成を示す側面図である。
図4】洗浄装置の詳細図である。
図5】連通弁の開閉機構を及び水量の調整機構示す図である。
図6】水量調整動作の説明図である。
図7】便器洗浄時の動作を説明する図である。
図8】排水管洗浄時の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〈第一実施形態〉
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、実施の形態は本発明の一例であり、本発明の構成は以下の例には限られない。
【0019】
図1は、店舗に設けられたトイレ1の配置を示す図、図2は、本実施形態に係るトイレ1の構成を示す正面図、図3は、本実施形態に係るトイレ1の構成を示す側面図、図4は、洗浄装置の詳細図である。
【0020】
図1に示すように、大きな道路2に面して建てられたコンビニエンスストアやファミリーレストランなどの店舗3は、車両で来店し易いように、道路側に大きな駐車場4を設け、この駐車場4を挟んで道路2から離れた位置に配置されることが多い。この場合、店舗3の敷地において道路2との境界付近に、汚水桝5が設けられ、トイレ1と汚水桝5とを駐車場下に敷設した横引き管(排水管)6で接続し、トイレ1から排出された汚水を横引き管6及び汚水桝5を介して、道路2の下に埋設さている下水道本管7へ排水する。このように汚水桝5とトイレ1との距離が離れると、横引き管6の水勾配が小さくなり、横引き管6内に汚物が滞留し易くなる。このため、本実施形態の洗浄装置は、主にトイレ1の便器を洗浄する場合と、横引き管を含む排水管系統を洗浄する場合とで、選択的に洗浄水の量を変えて洗浄することができるようにしている。
【0021】
図2図3に示すように、トイレ1は、便器10や、洗浄装置20を備えている。図2図3の便器10は、使用者が上面の便座11に座って排便する洋式便器の例を示している。なお、便器10は、洋式に限らず、和式便器であってもよい。便器10は、トイレ1の床又は壁に埋設された排水管8と接続可能な位置に配置され、ボルト等で固定される。
【0022】
便器10は、陶製の本体12の上部に椀形状のボール部13が設けられ、このボール部13の上縁に洗浄水の流路を形成するリム部14が設けられている。また、ボール部13の上には、便座11が開閉可能に取り付けられている。
【0023】
便器10の上側後部には、洗浄水配管と接続する受水口15が設けられ、この受水口15と連通した吐出口がリム部14の後部に設けられている。受水口15から洗浄水が流入すると、洗浄水が吐水口からリム部14に沿ってボール部13内に放出され、ボール部13の前側に回り込みつつボール部13の内壁に沿って落下し、汚物を押し流すように洗浄する。
【0024】
また、便器10は、ボール部13の排出口16と接続された排水トラップ17や、排水トラップ17と排水管8とを接続する排水流路18を備えている。本実施形態では、これら受水口15、リム部14、ボール部13、排水トラップ17、排水流路18が、便器10の放水経路である。
【0025】
図4に示すように、洗浄装置20は、便器10の放水経路に洗浄水を放水する装置であり、貯水タンク200や、洗浄弁23、連通弁24、弁制御部25、洗浄水配管26、操作部27、ボールタップ28、流量計29等を備えている。
【0026】
貯水タンク200は、便器洗浄用の洗浄水を貯める第一貯水槽21と、便器10に接続された排水管(横引き管等)を洗浄する排水管洗浄用の洗浄水を貯める第二貯水槽22を有する二槽式のタンクである。貯水タンク200は、図4に示すように、少なくとも内側下部の空間が、仕切り壁210によって左右に二分され、その空間の一方を第一貯水槽21とし、他方を第二貯水槽22としている。本実施形態における第一貯水槽21の容量は、4.8L(リットル)、第二貯水槽22の容量は、15Lである。なお、この要領は、必要な洗浄水の量に応じて任意に設定でき、例えば、第一貯水槽21の容量を3L~6L、第二貯水槽22の容量を10L~20Lとしてもよい。
【0027】
洗浄弁23は、第一貯水槽21に設けられ、開状態で放水経路に洗浄水を放水し、閉状態で洗浄水の放水を止める。
【0028】
連通弁24は、第一貯水槽21と第二貯水槽22との間に設けられ、開状態で第一貯水槽21と第二貯水槽とを連通させ、閉状態で第一貯水槽21と第二貯水槽との洗浄水の流通を途絶させる。
【0029】
弁制御部25は、連通弁24及び洗浄弁23の開閉を制御する。弁制御部25は、本体部250や、水位センサ251,252、フロート253,254、連動部255、連通弁駆動部240を有している。また、本体部250は、制御回路256や洗浄弁駆動部257等を有している。
【0030】
フロート253,254は、洗浄水に浮いた状態で上下動可能に水位センサ251,252に取り付けられている。即ち、フロート253,254は、第一貯水槽21の水位に応じて上下する。水位センサ251,252は、このフロート253,254の位置、即ち第一貯水槽21の水位を検知して信号を出力する。例えば、水位センサ251は、第一貯水槽21の水位が下限に達した場合、即ち洗浄水を放出しきった場合に信号を出力する。また、水位センサ252は、第一貯水槽21の水位が連通弁24を制御するための所定位置に達した場合に信号を出力する。
【0031】
操作部27は、トイレの使用者に操作された場合に、洗浄の開始を示す信号(以下、洗浄信号とも称す)を出力する。操作部27は、例えば、押しボタンや、使用者が手をかざしたことを検知するセンサであってもよい。使用者が、例えば排便を終えて、操作部27としての押しボタンを押した場合、又は操作部27に手を場合に、洗浄信号を出力する。ボールタップ28は、弁本体281、吐水口282、及びフロート283を有している。弁本体281は、給水管と吐水口282との間に接続され、弁が開状態のときに給水管から給水された洗浄水を吐水口282から吐水させ、弁が開状態のときに洗浄水の吐水を停止させる。弁本体281は、フロート283の浮沈によって弁を開閉するように構成され、フロート283が貯水タンク200内に貯められた洗浄水に浮いて所定の高さ(満水位置)にある場合には弁を閉じ、これよりもフロート283が下がると弁を開く。本例のボールタップ28は、第一貯水槽21の上側に吐水口282を設け、第二貯水槽22の水面に内にフロート283が浮くように配置されているため、第一貯水槽21への給水又はこの給水の停止を第二貯水槽22の水位によって制御する。
【0032】
流量計29は、洗浄水配管26に流れる洗浄水の量、即ち貯水タンク200から放出された洗浄水の量を計測する。流量計29は、計測した洗浄水の量を示す信号(以下、流量信号とも称す)を弁制御部25や保守担当者の端末へ出力してもよい。これにより、弁制
御部25や保守担当者の端末は、例えば、流量計29で検出した水量が予め設定した水量と異なる場合に洗浄装置20に故障が発生したと判定し、洗浄弁が閉状態のときに洗浄水の流量が零でなければ、漏水が発生したと判定するなど、水量に基づいて異常が発生したことを判定できる。
【0033】
弁制御部25の制御回路256は、水位センサ251,252や、洗浄弁駆動部257、連通弁駆動部240、操作部27、流量計29と電気的に接続されている。これにより制御回路256は、操作部27、水位センサ251,252、又は流量計29からの信号を受け、この信号に応じて洗浄弁駆動部257又は連通弁駆動部240を動作させることにより、洗浄弁23又は連通弁24を開閉させる。
【0034】
洗浄弁駆動部257は、連動部255を上下動させるアクチュエータであり、連動部255を引き上げることで、洗浄弁23を開状態とし、連動部255を下げることで洗浄弁23を閉状態とする。
【0035】
制御回路256は、操作部27から洗浄信号を受けた場合に便器洗浄を開始させ、この便器洗浄の開始時に連通弁24が閉状態、洗浄弁23が開状態となるように制御し、第一貯水槽21内の洗浄水を便器10の放水経路に放水させる。また、制御回路256は、排水管洗浄の開始時に、連通弁24及び洗浄弁23を開状態として、連通弁を介して第二貯水槽22内の洗浄水を第一貯水槽21内へ流入させ、第一貯水槽21内の洗浄水及び第一貯水槽21内の洗浄水を前記放水経路に放水させる。
【0036】
図5は、連通弁24の開閉機構を及び水量の調整機構示す図である。連通弁24は、外形が略円盤状であり、弁体24Aと弁座24Bとを備えている。弁体24Aは、風車のように扇形の部材を放射状に複数備え、この扇形の部材の間は切欠き部となっている。弁座24Bは、弁体24Aと同様の形状で仕切り壁210に対して固定されている。弁体24Aと弁座24Bとは、同軸に重ねて設けられ、弁体24Aが弁座24Bに対して回転可能に保持されている。
【0037】
連通弁駆動部240は、アクチュエータ241、リンク242、カム243を備えている。リンク242は、一端がカム243に接続され、他端が連通弁24の弁体24Aに接続されている。これによりアクチュエータ241が、カム243を回転させると、リンク242を介して弁体24Aが回転され、この回転駆動によって連通弁24が開閉される。
【0038】
図5(A)は、連通弁24を開いた状態、図5(B)は、連通弁24を閉じた状態を示している。連通弁駆動部240が、連通弁24の弁体24Aを回転させ、図5(A)のように弁体24Aと弁座24Bの切欠き部を重ね、連通弁24を開状態とすると、この切欠き部分(図5中のハッチング部分)を介して第一貯水槽21と第二貯水槽22とが連通させ、第一貯水槽21と第二貯水槽22との洗浄水の流通を可能にさせる。
る。一方、図5(B)のように、図5(A)の状態に対して弁体24Aを45度回転させると、弁体24Aの扇形部材が、弁座24Bの切欠き部分を塞ぐことで、連通弁24を閉状態とし、第一貯水槽21と第二貯水槽22との洗浄水の流通を途絶させる。
【0039】
また、仕切り壁210には、第一貯水槽21と第二貯水槽22とを連通する開口211を備えており、この開口211に対して水量調整ブロック212を着脱できるように構成されている。即ち、この水量調整ブロック212を取り付けた高さによって、第一貯水槽21と第二貯水槽22とを仕切る高さを変えることができる。
【0040】
図6は、水量調整動作の説明図である。図6(A)では、水量調整ブロック212を4つ取り付けて仕切り壁210の高さをH1とし、図6(B)では、水量調整ブロック21
2を2つ取り付けて仕切り壁210の高さをH2としている。
【0041】
便器洗浄時に洗浄弁23が開状態となると、第一貯水槽21内の洗浄水が放出されるが、このとき仕切り壁210を超えて貯水された洗浄水も第一貯水槽21を介して放出される。このため、図6(A)の場合、第一貯水槽21内の洗浄水に加えて、満水位置H0と高さH1の差分W1の洗浄水が放水される。一方、図6(B)の場合、第一貯水槽21内の洗浄水に加えて、満水位置H0と高さH2の差分W2の洗浄水が放水される。このように水量調整ブロック212によって仕切り壁210の高さが変えられ、便器洗浄時に放出される洗浄水の量が変わるため、この高さによって便器洗浄時の水量を適切に設定できる。
【0042】
図7は、便器洗浄時の動作を説明する図である。工程A1は、洗浄弁23及び連通弁24が閉じて満水の状態、即ち洗浄前の初期状態を示している。
【0043】
弁制御部25は、操作部27から洗浄信号を受けた場合に洗浄弁23を開状態として、第一貯水槽21から洗浄水の放出を開始させる(工程A2)。
【0044】
工程A3は、洗浄中の状態を示しており、連通弁24が閉じた状態であるので、第一貯水槽21からのみ洗浄水が放出され、この放出に伴って第一貯水槽21の水位が下がる。なお、仕切り壁210を超えて貯水タンク200内に貯められた洗浄水も第一貯水槽21を介して放出される。即ち、便器洗浄時に放出される洗浄水の量は、第一貯水槽21の4.8Lに、仕切り壁210を超えて貯められた洗浄水を加えたものであり、本例では5.0Lである。
【0045】
放水が終了し、水位が下限に達したことを水位センサ251で検出し、信号(低水位信号)が出力されると、弁制御部25の制御回路256は、洗浄弁23を閉状態とし、連通弁24を開状態とする(工程A4)。これにより第二貯水槽22の洗浄水が連通弁24を介して第一貯水槽21に流入する。
【0046】
第二貯水槽22の洗浄水が第一貯水槽21に移動することで、第一貯水槽21の水位が急速に高まると共に、第二貯水槽22の水位が下がるため、ボールタップ28のフロート283が下がり吐水口282から給水が行われる(工程A5)。
【0047】
第一貯水槽21の水位が、第二貯水槽22の水位と略均衡するように高まり、水位が所定の高さ(連通終了位置)に達したことを水位センサ252で検出して、信号(回復水位信号)が出力されると、弁制御部25の制御回路256は、連通弁24を閉状態とする(工程A6)。この場合、ボールタップ28の吐水口282から給水される洗浄水が、第一貯水槽21に給水されるので、第一貯水槽21の水位のみが上昇する。
【0048】
第一貯水槽21の水位が仕切り壁210の高さに達すると、吐水口282から給水される洗浄水が、仕切り壁210を超えて第二貯水槽22に給水される(工程A7)。この段階で第一貯水槽21が満水になるため、次の便器洗浄が可能になる。
【0049】
第二貯水槽22の水位が、満水の位置まで上昇すると、これに伴ってボールタップ28のフロート283も上昇し、ボールタップ28からの給水が止まり、給水動作が完了して(工程A8)、初期状態に戻る。
【0050】
図8は、排水管洗浄時の動作を説明する図である。排水管が汚れて保守員により洗浄動作を指示された場合や、所定回数便器洗浄を実施した場合に、図8の排水管洗浄を開始する。工程B1は、洗浄弁23及び連通弁24が閉じて満水の状態、即ち洗浄前の初期状態
を示している。
【0051】
弁制御部25は、排水管の洗浄を開始する場合、洗浄弁23及び連通弁24を開状態として、第一貯水槽21及び第二貯水槽22から洗浄水の放出を開始させる(工程B2)。
【0052】
工程B3は、洗浄中の状態を示しており、連通弁24が開いた状態であるので、第一貯水槽21と第二貯水槽22とから一気に洗浄水が放出され、第一貯水槽21及び第二貯水槽22の水位が低下する。本例において、排水管洗浄時に放出される洗浄水の量は20.0Lである。第二貯水槽22の水位が低下し、ボールタップ28のフロート283が下がると吐水口282から給水が行われる。
【0053】
放水が終了し、水位が下限に達したことを水位センサ251で検出して信号(低水位信号)が出力されると、弁制御部25の制御回路256は、洗浄弁23及び連通弁24を閉状態とする(工程B4)。
【0054】
工程B5では、連通弁24が閉じた状態であるので、ボールタップ28から給水される洗浄水は第一貯水槽21に給水され、第一貯水槽21の水位のみが上昇する。
【0055】
第一貯水槽21の水位が上昇し、仕切り壁210の高さに達すると、次の便器洗浄が可能になる(工程B6)。
【0056】
第一貯水槽21の水位が仕切り壁210の高さに達すると、吐水口282から給水される洗浄水が、仕切り壁210を超えて第二貯水槽22に給水される(工程B7)。第二貯水槽22の水位が、満水の位置まで上昇すると、これに伴ってボールタップ28のフロート283も上昇し、ボールタップ28からの給水が止まり、給水動作が完了して(工程B8)、初期状態に戻る。
【0057】
〈実施形態の効果〉
本実施形態によれば、タンク式の洗浄装置でありながら、便器洗浄時には少量の洗浄水を放出し、排水管洗浄時には、便器洗浄時を超えた必要充分な量の洗浄水を放出でき、節水と排水管の洗浄能力とを両立できる。
【0058】
また、便器洗浄後に連通弁を空けて第二貯水槽内の洗浄水を第一貯水槽へ移動させることにより、次に便器洗浄が可能になるまでのタイムラグを短くすることができる。
【0059】
更に、排水管洗浄後は、第一貯水槽を満たすまで第一貯水槽のみに給水することで、次に便器洗浄が可能になるまでのタイムラグを短くすることができる。
【0060】
仕切り壁の高さを調整することで便器洗浄時の水量を調整でき、適切な水量に設定できる。
【0061】
〈その他〉
本発明は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
1 :トイレ
8 :排水管
10 :便器
11 :便座
12 :本体
13 :ボール部
14 :リム部
15 :受水口
16 :排出口
17 :排水トラップ
18 :排水流路
20 :洗浄装置
21 :第一貯水槽
22 :第二貯水槽
23 :洗浄弁
24 :連通弁
25 :弁制御部
26 :洗浄水配管
27 :操作部
28 :ボールタップ
29 :流量計
200 :貯水タンク
210 :仕切り壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8