(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048076
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】距離計
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
G01C3/06 120Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092051
(22)【出願日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】2020 2 1999572.2
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520373361
【氏名又は名称】株式会社ACT
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】栄 順二
(72)【発明者】
【氏名】王 建
【テーマコード(参考)】
2F112
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA02
2F112CA12
2F112GA05
(57)【要約】
【課題】対象物までの目標距離に対応する目標ポイントを簡単かつ確実に把握することができる距離計を提供することを目的とする。
【解決手段】距離計1は、レーザーを出射して、対象物Rで反射してきたレーザーを入射するセンサ部2と、センサ部2におけるレーザーの出射および入射に基づいて、基準ポイントKから対象物Rまでの実寸距離Lを測定する測定部3と、目標ポイントTから対象物Rまでの目標距離Hが入力される入力部4と、ハウジング8の正面においてレーザーの光軸方向に沿って並んで設けられる指示部52と、各部を制御する制御部6とを備える。制御部6は、指示部52が目標ポイントTに位置するとき、測定部3により測定された実寸距離Lと入力部4により入力された目標距離Hとに基づいて、指示部52における目標ポイントTの位置を特定し、指示部52に対して目標ポイントTの位置を指示させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを有し、所定の伝播体を用いて対象物に対する距離を測定する距離計であって、
所定の伝播体を出射して、対象物で反射してきた伝播体を入射するセンサ部と、
前記センサ部における伝播体の出射および入射に基づいて、基準ポイントから対象物までの実寸距離を測定する測定部と、
目標ポイントから対象物までの目標距離が入力される入力部と、
前記ハウジングの表面および/または側面において伝播体の伝播方向に沿って展設される指示部と、
前記測定部、前記入力部および前記指示部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記指示部が目標ポイントに位置するとき、前記測定部により測定された実寸距離と前記入力部により入力された目標距離とに基づいて、前記指示部における目標ポイントの位置を特定し、前記指示部に対して目標ポイントの位置を指示させることを特徴とする距離計。
【請求項2】
前記制御部は、前記測定部により測定された実寸距離と前記入力部により入力された目標距離との差分を算出して、基準ポイントの位置に実寸距離と目標距離の差分を加算または減算することにより、前記指示部における目標ポイントの位置を特定する請求項1に記載の距離計。
【請求項3】
前記指示部は、所定の伝播体の伝播方向に沿って並んで設けられた複数の発光部を備え、
前記制御部は、前記指示部に対して目標ポイントに位置する前記発光部を発光させることにより目標ポイントの位置を指示させる請求項1または請求項2に記載の距離計。
【請求項4】
前記制御部は、前記指示部が目標ポイントに位置しないとき、前記測定部により測定された実寸距離と前記入力部により入力された目標距離とに基づいて、前記指示部に対する目標ポイントの方向を特定し、前記指示部に対して目標ポイントの方向を指示させる請求項1から請求項3のいずれかに記載の距離計。
【請求項5】
音声および/または振動を出力する報知部を備え、
前記制御部は、実寸距離が目標距離と一致したとき、前記報知部に対して音声および/または振動を出力させる請求項1から請求項4のいずれかに記載の距離計。
【請求項6】
前記ハウジングは、構造物に着脱可能に固定するための固定部が設けられている請求項1から請求項5のいずれかに記載の距離計。
【請求項7】
前記ハウジングは、複数のマーキング用の溝部が所定の伝播体の伝播方向に沿って形成されている請求項1から請求項6のいずれかに記載の距離計。
【請求項8】
ハウジングを有するコンピュータを所定の伝播体を用いて対象物に対する距離を測定する距離計として機能させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
所定の伝播体を出射して、対象物で反射してきた伝播体を入射するセンサ部、
前記センサ部における伝播体の出射および入射に基づいて、基準ポイントから対象物までの実寸距離を測定する測定部、
目標ポイントから対象物までの目標距離が入力される入力部、
前記ハウジングの表面および/側面において伝播体の伝播方向に沿って展設される指示部、
前記測定部、前記入力部および前記指示部を制御し、前記指示部が目標ポイントに位置するとき、前記測定部により測定された実寸距離と前記入力部により入力された目標距離とに基づいて、前記指示部における目標ポイントの位置を特定し、前記指示部に対して目標ポイントの位置を指示させる制御部として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に対する距離を測定する距離計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マンション等の鉄筋コンクリート構造物を建設する際には、まず鉄筋コンクリートにより床部・壁部・柱部・天井部を構築し、つぎに床部・壁部・柱部・天井部に沿って生活用の配管を設ける。この配管は、各フロアにおいて空間を確保しやすい天井付近に設けられることが多い。
【0003】
このように配管を天井付近に設ける際には、まず該当フロア上のコンクリート製の天井部に下側から多数のアンカーボルトを打ち込むことにより、多数のアンカーボルトがフロアの天井部から鉛直下方に延びた状態とする。そして、配管を設ける位置をアンカーボルトにマーキングするために、アンカーボルト上のポイントと、水平に設けられているフロア下の床部との間の距離を測定する。このマーキングの位置が不正確であると、配管が適正な高さからずれることになるため、マーキングの位置には正確性が要求される。特に配管に水を流通させる場合は、配管の適度な流通性を確保するために、配管に精密な勾配をつける必要があり、マーキングの位置にはより高度な正確性が要求される。
【0004】
そこで従来から、対象物に対する距離を高い精度で測定するハンディタイプのレーザー距離計が知られている。このようなレーザー距離計は、対象物にレーザーを出射し、対象物からの反射光を入射することにより対象物と間の実寸距離を測定し、測定した実寸距離を表示部にデジタル表示する(特許文献1参照)。これによれば、床部にレーザーを出射し、床部からの反射光を入射することにより、レーザー距離計と床部との間の距離を高い精度で測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のレーザー距離計は、表示部に表示される実寸距離に基づいてマーキングしていたため、マーキングが容易ではなかった。具体的には、マーキングの際に、手ブレにより表示部の実寸距離が時々刻々と切り替わり、表示部の表示に基づいて目標距離に対応する目標ポイントをマーキングするのが困難であった。
【0007】
このため、マーキングのたびに、表示部の表示を確認しながら距離計の位置調整を正確に行うとともに、目標ポイントにおいて手ブレを極力抑制することが必要となり、これらの手間に伴う時間ロスと作業員の疲弊が発生していた。
【0008】
特に、建築物が大型でアンカーボルトが相当数となる場合は、この時間ロスと疲弊が積み重なって非常に大きな時間ロス・疲弊となり、工事の進捗を遅らせ、工事日程・工事費用に多大な無駄が生じていた。
【0009】
なお、このような問題は、レーザー距離計のみならず、超音波などのその他の伝播体を用いた距離計においても同様に生じていた。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、対象物までの目標距離に対応する目標ポイントを簡単かつ確実に把握することができる距離計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、ハウジングを有し、所定の伝播体を用いて対象物に対する距離を測定する距離計であって、所定の伝播体を出射して、対象物で反射してきた伝播体を入射するセンサ部と、前記センサ部における伝播体の出射および入射に基づいて、基準ポイントから対象物までの実寸距離を測定する測定部と、目標ポイントから対象物までの目標距離が入力される入力部と、前記ハウジングの表面および/または側面において伝播体の伝播方向に沿って展設される指示部と、前記測定部、前記入力部および前記指示部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記指示部が目標ポイントに位置するとき、前記測定部により測定された実寸距離と前記入力部により入力された目標距離とに基づいて、指示部における目標ポイントの位置を特定し、指示部に対して目標ポイントの位置を指示させることを特徴とする。
【0012】
これによれば、距離計の指示部が目標ポイントに位置するとき、指示部が目標ポイントの位置を指示するため、ユーザは目標ポイントの位置を簡単かつ確実に把握することができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記測定部により測定された実寸距離と前記入力部により入力された目標距離との差分を算出して、基準ポイントの位置に実寸距離と目標距離の差分を加算または減算することにより、指示部における目標ポイントの位置を特定してもよい。これによれば、制御部により指示部における目標ポイントの位置を精度良く特定することができる。
【0014】
また、前記指示部は、所定の伝播体の伝播方向に沿って並んで設けられた複数の発光部を備え、前記制御部は、前記指示部に対して目標ポイントに位置する前記発光部を発光させることにより目標ポイントの位置を指示させてもよい。これによれば、簡易な構成にして、ユーザは発光している発光部を参照することにより目標ポイントの位置を簡単かつ確実に把握することができる。
【0015】
また、前記制御部は、前記指示部が目標ポイントに位置しないとき、前記測定部により測定された実寸距離と前記入力部により入力された目標距離とに基づいて、指示部に対する目標ポイントの方向を特定し、指示部に対して目標ポイントの方向を指示させてもよい。これによれば、距離計の指示部が目標ポイントに位置しないとき、指示部が目標ポイントの方向を指示するため、ユーザは目標ポイントの方向を簡単かつ確実に把握することができ、距離計を目標ポイントに速やかに移動させて設置することが可能となる。
【0016】
また、音声および/または振動を出力する報知部を備え、前記制御部は、実寸距離が目標距離と一致したとき、報知部に対して音声および/または振動を出力させてもよい。これによれば、距離計の実寸距離が目標距離と一致すると、報知部が音声および/または振動を出力するため、ユーザは距離計の基準ポイントが目標ポイントに到達したことを視覚以外の聴覚や触覚でも把握することができる。
【0017】
また、前記ハウジングは、構造物に着脱可能に固定するための固定部が設けられてもよい。これによれば、ハウジングが固定部によりアンカーボルト等の構造物に固定されるため、距離計の実寸距離が手ブレ等で変動することがなくなり、一定の実寸距離の基づいて簡単かつ正確にマーキングすることができる。
【0018】
また、前記ハウジングは、複数のマーキング用の溝部が所定の伝播体の伝播方向に沿って形成されてもよい。これによれば、マーキングペンのペン先を該溝部に沿わせることにより、ペン先をブレさせることなく容易にマーキングすることができる。
【0019】
また、本発明は、上記目的を達成するために、ハウジングを有するコンピュータを所定の伝播体を用いて対象物に対する距離を測定する距離計として機能させるコンピュータプログラムであって、コンピュータを、所定の伝播体を出射して、対象物で反射してきた伝播体を入射するセンサ部、前記センサ部における伝播体の出射および入射に基づいて、基準ポイントから対象物までの実寸距離を測定する測定部、目標ポイントから対象物までの目標距離が入力される入力部、前記ハウジングの表面および/側面において伝播体の伝播方向に沿って展設される指示部、前記測定部、前記入力部および前記指示部を制御し、前記指示部が目標ポイントに位置するとき、前記測定部により測定された実寸距離と前記入力部により入力された目標距離とに基づいて、指示部における目標ポイントの位置を特定し、指示部に対して目標ポイントの位置を指示させる制御部として機能させることを特徴とする。
【0020】
これによれば、携帯情報端末などのコンピュータに本コンピュータプログラムをインストールすることにより、携帯情報端末などのコンピュータを距離計として用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、距離計が目標距離を基準とした所定の距離範囲内に入ったとき、指示部が目標距離に対応する目標ポイントの位置を指示するため、ユーザは目標ポイントの位置を簡単かつ確実に把握することができる。このため、建設現場や工事現場等などにおいて複数の施工物に目標ポイントの位置を効率的にマーキングすることができ、ひいては大型建築物等におけるマーキングによる時間ロスと作業員の疲弊を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る距離計を示す斜視図である。
【
図3】
図1の距離計の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図1の距離計の使用状態を示す模式図である。
【
図6】
図1の距離計の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る距離計について
図1~
図6を参照しつつ説明する。
【0024】
距離計1は、
図1および
図2に示すように、伝播体としてのレーザーにより対象物に対する距離を測定するハンディタイプの計測器である。この距離計1は、例えば建設現場・工事現場等において対象物Rに対する設置物の位置をマーキングする際等に使用される。
【0025】
なお、本実施形態では、
図1のX軸方向を長さ方向(レーザーの光軸方向(伝播方向))、Y軸方向を幅方向、Z軸方向を厚さ方向という。また、対象物R(床部)との間の距離を測定するに際して、目標とする距離を目標距離Hといい、実際の距離を実寸距離Lという。また、距離計1における測定の基準となるポイントを基準ポイントKといい、対象物Rから目標距離H離れたマーキングの目標となるポイントを目標ポイントTという。また、「近接側」とは距離計1の対象物Rに対して長さ方向に近接する側をいい、「遠隔側」とは対象物Rに対して長さ方向に遠隔となる側をいう。
【0026】
前記距離計1は、
図3に示すように、レーザーを出射および入射するセンサ部2と、センサ部2におけるレーザーの出射および入射に基づいて対象物Rとの実寸距離Lを測定する測定部3と、目標ポイントTから対象物Rまでの目標距離Hが入力される入力部4と、目標距離Hおよび/または実寸距離Lに関する出力を行う出力部5と、測定部3、入力部4および出力部5を制御する制御部6と、各部に電力を供給する電源部7と、各部を収容するハウジング8とを備えている。
【0027】
前記センサ部2は、ハウジング8の長さ方向の近接側端部に設けられ、対象物Rに対してレーザーを出射して、対象物Rで反射してきた反射光を入射するセンサである。センサ部2は、
図4に示すように、レーザーを対象物Rに出射する出射部21と、出射部21を駆動させるドライバ22と、出射部21により出射されたレーザーの対象物Rからの反射光を入射する入射部23と、入射した反射光による信号を増幅するアンプ24と、各部を制御するコントローラ25を備えている。
【0028】
前記測定部3は、センサ部2の出射部21から対象物Rに出射したレーザーと、対象物Rから入射部23に入射した反射光の位相差に基づいて、出射部21と対象物Rとの間の実測距離lを算出し、算出した実測距離lと出射部21の基準ポイントKからのオフセット距離dとを加算して実寸距離Lを測定する。なお、本実施形態では、基準ポイントKは、ハウジング8の長さ方向の中央であって、後述する指示部52の長さ方向の中央に設定されている。
【0029】
前記入力部4は、
図1および
図2に示すように、ハウジング8の長さ方向の中央部から遠隔側端部の間に設けられ、+ボタン41と-ボタン42とセットボタン43からなる。入力部4は、+ボタン41が押されると目標距離Hの入力を5mm刻みで増加させ、-ボタン42が押されると目標距離Hの入力を5mm刻みで減少させ、セットボタン43が押されると目標距離Hの入力を確定させて制御部6に送信する。なお、セットボタン43は、電源ボタンとしても使用され、起動前に短く押されると電源部7と各部の接続をONにし、起動後に長く(2秒間以上)押されると電源部7と各部の接続をOFFにする。
【0030】
前記出力部5は、目標距離Hおよび実寸距離Lを表示する表示部51と、目標距離Hに位置する目標ポイントTの位置または方向を指示する指示部52と、目標距離Hと実寸距離Lの特定の関係を報知する報知部53とを備えている。
【0031】
前記表示部51は、
図1および
図2に示すように、ハウジング8の長さ方向の中央部から近接側端部の間に設けられた液晶パネルである。本実施形態では、表示部51は、電源ボタンとしてセットボタン23が押された後であって目標距離Hの入力が確定する前には目標距離Hを表示する一方、再度セットボタン23が押され、目標距離Hの入力が確定した後には実寸距離Lを表示する。
【0032】
前記指示部52は、ハウジング8の正面部81の幅方向の一方端部において、レーザーの光軸方向に沿って所定長さhに展設されている。具体的には、指示部52は、レーザーの光軸方向に沿って所定長さhに並んで設けられた9個の発光部52a~52iを備える。なお、本実施形態において、所定長さhは90mmである。
【0033】
これらの発光部52a~52iは、ハウジング8の長さ方向の中央の基準ポイントKに中央発光部52eが配置され、基準ポイントKの近接側にピッチPで4個の近接側発光部52a~52dが配置され、基準ポイントKの遠隔側にピッチPで4個の遠隔側発光部52f~52iが配置されている。なお、本実施形態において、ピッチPは10mmである。
【0034】
より詳細に説明すると、ハウジング8の長さ方向の中央(基準ポイントK)に中央発光部52eが配置され、基準ポイントKから10mm近接側の位置に発光部52dが配置され、基準ポイントKから20mm近接側の位置に発光部52cが配置され、基準ポイントKから30mm近接側の位置に発光部52bが配置され、基準ポイントKから40mm近接側の位置に発光部52aが配置されている。また、基準ポイントKから10mm遠隔側の位置に発光部52fが配置され、基準ポイントKから20mm遠隔側の位置に発光部52gが配置され、基準ポイントKから30mm遠隔側の位置に発光部52hが配置され、基準ポイントKから40mm遠隔側の位置に発光部52iが配置されている。なお、本実施形態では、中央発光部52eは、他の発光部52a~52d、52f~52iより大きく形成されている。
【0035】
前記報知部53は、ハウジング8の背面側に設けられ、音声を出力するブザーからなる。この報知部53は、後述するように、距離計1の実寸距離Lと目標距離Hが一致したときに音声を出力する。
【0036】
前記制御部6は、前記指示部52が目標ポイントTに位置するとき、前記測定部3により測定された実寸距離Lと前記入力部4により入力された目標距離Hとに基づいて、指示部52における光軸方向の目標ポイントTの位置を特定し、指示部52に対して目標ポイントTの位置を指示させる。なお、本実施形態において、指示部52が目標ポイントTに位置するときとは、
図5に示すように、距離計1の指示部52の全体が目標ポイントTを中央とする長さ方向2hの範囲内に位置するときをいう。
【0037】
具体的には、前記測定部3により測定された実寸距離Lと前記入力部4により入力された目標距離Hとの差分を算出して、基準ポイントKの位置に実寸距離Lと目標距離Hの差分を加算または減算することにより、指示部52における目標ポイントTの位置を特定する。そして、前記指示部52に対して目標ポイントTに位置する前記発光部52x(xはa~iのいずれか)を発光させることにより目標ポイントTの位置を指示させる。なお、目標ポイントTに位置する発光部52xとは、目標ポイントTに対して光軸方向にP/2の長さの範囲内にある発光部52xをいう。
【0038】
より具体的に説明すると、前記制御部6は、
図5に示すように、実寸距離Lと目標距離Hの差分X=実寸距離L-目標距離H(mm)を算出して、指示部52が目標ポイントTに位置する-h/2≦X<h/2(mm)の場合、指示部52における目標ポイントTの位置を発光部52xにより指示する。例えば、-45≦X<-35(mm)の場合、目標ポイントTに位置する発光部52aを発光させる。同様に、-35≦X<-25(mm)の場合、発光部52bを発光させ、-25≦X<-15(mm)の場合、発光部52cを発光させ、-15≦X<-5(mm)の場合、発光部52dを発光させ、-5≦X<5(mm)の場合、発光部52eを発光させ、5≦X<15(mm)の場合、発光部52fを発光させ、15≦X<25(mm)の場合、発光部52gを発光させ、25≦X<35(mm)の場合、発光部52hを発光させ、35≦X<45(mm)の場合、発光部52iを発光させる。
図5左はX=0の場合を表し、
図5中央はX=45の場合を表し、
図5左はX=-45の場合を表している。
図5の各図において、発光している発光部52xを黒塗りで表している。
【0039】
なお、前記制御部6は、互いに隣り合う発光部52a~52i同士の中央が目標ポイントTに位置する場合(X=-35,-25,-15,-5,5,15,25,35のいずれかのとき)、当該隣り合う発光部52a~52i同士を交互に発光させてもよい。
【0040】
これによれば、距離計1の指示部52が目標ポイントTに位置するとき、指示部52が目標ポイントTの位置を指示するため、ユーザは目標ポイントTの位置を簡単かつ確実に把握することができる。また、前記測定部3により測定された実寸距離Lと前記入力部4により入力された目標距離Hとの差分を算出して、基準ポイントKの位置に実寸距離Lと目標距離Hの差分を加算または減算するため、制御部6により指示部52における目標ポイントTの位置を精度良く特定することができる。また、目標ポイントTに位置する前記発光部52x(xはa~iのいずれか)を発光させるため、簡易な構成にして、ユーザは発光している発光部52xを参照することにより目標ポイントTの位置を簡単かつ確実に把握することができる。
【0041】
一方、前記制御部6は、前記指示部52が目標ポイントTに位置しないとき、前記測定部3により測定された実寸距離Lと前記入力部4により入力された目標距離Hとに基づいて、指示部52に対する目標ポイントTの方向を特定し、指示部52に対して目標ポイントTの方向を指示させる。なお、本実施形態において、指示部52が目標ポイントTに位置しないときとは、
図5において、距離計1の指示部52の一部が目標ポイントTを中央とする長さ方向2hの範囲外に位置するときをいう。
【0042】
具体的には、指示部52が目標ポイントTに位置しないX<-h/2(mm)またはX≧h/2(mm)の場合、指示部52に対する目標ポイントTの方向を発光部52xにより指示する。例えば、X<-45(mm)の場合、目標ポイントTの方向の近接側発光部52a~52dすべてを発光させる。また、X≧45(mm)の場合、目標ポイントTの方向の遠隔側発光部52f~52iすべてを発光させる。なお、差分Xが-45(mm)または45(mm)に近いほど発光周期を短くする等、差分Xに応じて発光周期を調整してもよい。
【0043】
これによれば、距離計1の指示部52が目標ポイントTに位置しないとき、指示部52が目標ポイントTの方向を指示するため、ユーザは目標ポイントTの方向を簡単かつ確実に把握することができ、距離計1を目標ポイントTに速やかに移動させて設置することが可能となる。
【0044】
また、前記制御部6は、距離計1の実寸距離Lと目標距離Hが一致したとき、つまり差分X=0(mm)のとき、報知部53に対して音声を出力させる。これによれば、距離計1の実寸距離Lが目標距離Hと一致すると、報知部53が音声を出力するため、ユーザは距離計1の基準ポイントKが目標ポイントTに到達したことを視覚以外の聴覚でも把握することができる。
【0045】
前記電源部7は、ハウジング8に収容される小型バッテリーからなり、図略の電力供給回路により各部へ電力を供給する。
【0046】
前記ハウジング8は、上述のように、長さ方向の中央が測定の基準となる基準ポイントKとして設定される。
【0047】
また、前記ハウジング8は、正面部81に設けられた発光部52a~52iに隣接する側面部82において、長さ方向に延びる谷状の凹部が形成され、該凹部にアンカーボルト等の構造物に着脱可能に固定するための固定部83が設けられている。本実施形態では、前記固定部83は、長さ方向に延びるゴム磁石であって、該ゴム磁石の磁力によりハウジング8を鉄製のアンカーボルトに着脱可能に固定する。
【0048】
これによれば、ハウジング8が固定部83によりアンカーボルト等の構造物に固定されるため、距離計1の実寸距離Lが手ブレ等で変動することがなくなり、一定の実寸距離Lの基づいて簡単かつ正確にマーキングすることができる。
【0049】
また、前記ハウジング8は、側面部82において、基準ポイントKとその長さ方向(レーザーの光軸方向)の両側にピッチP/2でマーキング用の溝部84が並んで設けられている。これによれば、マーキングペンのペン先をこの溝部84に沿わせることにより、ペン先をブレさせることなく容易にマーキングすることができる。
【0050】
而して、建設現場等などにおいて複数の施工物に目標ポイントTの位置を効率的にマーキングすることができ、ひいては大型建築物等におけるマーキングによる時間ロスと作業員の疲弊を軽減することが可能となる。
【0051】
次に、距離計1の動作について
図6を参照しつつ説明する。
【0052】
まず、前記入力部4は、目標ポイントTから対象物Rまでの目標距離Hの入力を受け付ける(S1)。このとき、入力部4は、+ボタン21が押されると目標距離Hの入力を5mm刻みで増加させ、-ボタン22が押されると目標距離Hの入力を5mm刻みで減少させ、セットボタン23が押されると目標距離Hの入力を確定させて制御部6に送信する。
【0053】
次に、前記センサ部2は、レーザーを出射して、対象物Rで反射してきたレーザーを入射する。
【0054】
次に、前記測定部3は、センサ部2におけるレーザーの出射および入射に基づいて、基準ポイントKから対象物Rまでの実寸距離Lを測定する(S2)。
【0055】
次に、前記制御部6は、前記測定部3により測定された実寸距離Lと前記入力部4により入力された目標距離Hとの差分を算出して、基準ポイントKの位置に実寸距離Lと目標距離Hの差分を加算または減算することにより、指示部52に対する目標ポイントTの位置を特定する(S3)。
【0056】
次に、前記制御部6は、指示部52が目標ポイントTに位置するか判断する(S4)
【0057】
次に、前記制御部6は、指示部52が目標ポイントTに位置する場合、指示部52に対して目標ポイントTの位置を指示させる(S5)。具体的には、前記制御部6は、実寸距離Lと目標距離Hの差分X=実寸距離L-目標距離H(mm)を算出して、指示部52が目標ポイントTに位置する-h/2≦X<h/2(mm)の場合、指示部52における目標ポイントTの位置を発光部52xにより指示する。例えば、-45≦X<-35(mm)の場合、目標ポイントTに位置する発光部52aを発光させる。同様に、-35≦X<-25(mm)の場合、発光部52bを発光させ、-25≦X<-15(mm)の場合、発光部52cを発光させ、-15≦X<-5(mm)の場合、発光部52dを発光させ、-5≦X<5(mm)の場合、発光部52eを発光させ、5≦X<15(mm)の場合、発光部52fを発光させ、15≦X<25(mm)の場合、発光部52gを発光させ、25≦X<35(mm)の場合、発光部52hを発光させ、35≦X<45(mm)の場合、発光部52iを発光させる。
【0058】
一方、前記制御部6は、指示部52が目標ポイントTに位置しない場合、指示部52に対して目標ポイントTの方向を指示させる(S6)。具体的には、指示部52が目標ポイントTに位置しないX<-h/2(mm)またはX≧h/2(mm)の場合、指示部52に対する目標ポイントTの方向を発光部52xにより指示する。例えば、X<-45(mm)の場合、目標ポイントTの方向の近接側発光部52a~52dすべてを発光させる。また、X≧45(mm)の場合、目標ポイントTの方向の遠隔側発光部52f~52iすべてを発光させる。
【0059】
なお、上記実施形態において、距離計1は、専用の装置で構成するものとしたが、スマートフォンなどの汎用の携帯情報端末で構成してもよい。この場合、携帯情報端末を上記各部の機能として機能させるコンピュータプログラム(アプリケーションソフトウェア)をダウンロードする。
【0060】
また、距離計1は、各部が一のハウジング8に収容されるものとして説明したが、これに限られず、各部が一のハウジングに収容されないものであってもよい。例えば、前記入力部4が、スマートフォン等の携帯端末に設けられる一方、その他のセンサ部2・測定部3・出力部5・制御部6および電源部7が別体の測定器に設けられてもよい。この場合、携帯端末の入力部4により入力された目標距離Hは、有線または無線により別体の測定器に送信される。また、例えば、前記入力部4・出力部5・制御部6および電源部7が、スマートフォン等の携帯端末に設けられる一方、センサ部2が当該携帯端末に着脱可能なアタッチメントに設けられてもよい。この場合、携帯端末にアタッチメントを取り付けるだけで距離計1を構成できるため、経済性や利便性が向上する。
【0061】
また、前記センサ部2は、レーザーを出入射するものとして説明したが、これに限られず、他の伝播体(例えば超音波など)を出入射するものであってもよい。
【0062】
また、前記制御部4は、測定部3により測定された実寸距離Lと入力部4により入力された目標距離Hとの差分を算出して、基準ポイントKの位置に実寸距離Lと目標距離Hの差分を加算または減算することにより、指示部52における目標ポイントKの位置を特定するものとしたが、その他の方法により指示部52における目標ポイントKの位置を特定してもよい。
【0063】
また、前記測定部3は、制御部6と別個に設けられるものとして説明したが、これに限られず、制御部6と一体的に設けられてもよい。
【0064】
また、前記指示部52は、レーザーの光軸方向に沿って並んで設けられた複数の発光部52a~52iからなるものとして説明したが、これに限られず、
図7に示すように、レーザーの光軸方向に沿って展設された液晶画面であってもよい。この場合、指示部52は、液晶表示されるインジケータ52zにより目標ポイントTの位置または方向を指示する。
【0065】
また、前記指示部52は、表示部51と別個に設けられるものとして説明したが、これに限られず、表示部51と一体的に設けられてもよい。例えば、指示部52は、表示部51とともに一の液晶ディスプレイに設けられてもよい。
【0066】
また、前記報知部53は、音声を出力するブザーからなるものとして説明したが、これに限られず、振動を出力するバイブレータからなるものであってもよい。
【0067】
また、前記ハウジング8は、長さ方向の中央が測定の基準となる基準ポイントKとして設定されるものととして説明したが、これに限られず、長さ方向の中央以外の箇所が基準ポイントKとして設定されてもよい。
【0068】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…距離計
2…センサ部
21…出射部
22…ドライバ
23…入射部
24…アンプ
25…コントローラ
3…測定部
4…入力部
41…+ボタン
42…-ボタン
43…セットボタン
5…出力部
51…表示部
52…指示部
52a~52i…発光部
53…報知部
6…制御部
7…電源部
8…ハウジング
81…正面部
82…側面部
83…固定部
84…溝部
T…目標ポイント
K…基準ポイント
R…対象物
H…目標距離
L…実寸距離