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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048120
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/42 20060101AFI20220317BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20220317BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220317BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
B32B27/42
B32B7/06
B32B27/00 L
B32B27/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147422
(22)【出願日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2020153467
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】笠原 康宏
(72)【発明者】
【氏名】城本 幸志
(72)【発明者】
【氏名】上岡 武則
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK36
4F100AK36C
4F100AK42
4F100AK42D
4F100AK53
4F100AK53A
4F100AR00
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA22
4F100CA22B
4F100EH46
4F100GB41
4F100JB13
4F100JB13C
4F100JG03
4F100JG03B
4F100JG04
4F100JG04B
4F100JK06
4F100JK15
4F100JK15C
4F100JL14
4F100JL14C
(57)【要約】
【課題】
本発明は、樹脂フィルムのキャスト製膜時の離型フィルムからの浮き上がりや膜剥がれが抑制され、製膜後の離型フィルムからの樹脂フィルムの剥離性が良好であって、剥離の際の剥離帯電を抑制し、外観検査がし易く、樹脂フィルム厚み均一性および平滑性の高い樹脂フィルムを製造することができる離型フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】
基材フィルムの少なくとも一方の面に基材フィルム側から順に帯電防止層および離型層を有する離型フィルムであって、該帯電防止層は導電性高分子を含有し、該離型層を構成する樹脂中にメラミン樹脂を80質量%以上含有し、前記離型層の表面粗さ(Sa)が10nm未満である離型フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも一方の面に基材フィルム側から順に帯電防止層および離型層を有する離型フィルムであって、該帯電防止層は導電性高分子を含有し、該離型層を構成する樹脂中にメラミン樹脂を80質量%以上含有し、前記離型層の表面粗さ(Sa)が10nm未満である離型フィルム。
【請求項2】
基材フィルムの一方の面にのみ基材フィルム側から順に帯電防止層および離型層を有し、離型フィルムの離型層を有さない側の面である非離型層面の表面粗さ(Sa)が5~30nmである請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
離型フィルムの離型層を有する側の面である離型層面と粘着テープとの剥離力が、1.0~5.0N/18mmである請求項1または2記載の離型フィルム。
【請求項4】
離型フィルムの離型層を有する側の面である離型層面をPETフィルムに圧着させた後、前記離型フィルムを剥離させた直後の、前記離型層面の帯電量が-1.5~1.5kVである請求項1~3のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項5】
層間絶縁シート製造工程用離型フィルムとして用いられる請求項1~4のいずれかに記載の離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型フィルムに関する。さらに詳しくは、非シリコーンで優れた離型特性を有する、エポキシ樹脂フィルムなどの層間絶縁シート製造工程(キャスト製膜)に好適な離型フィルム(支持フィルム)に関する。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、樹脂フィルムのキャスト製膜用工程フィルム(支持フィルム)、セラミックコンデンサーのグリーンシート成形用工程フィルム、粘着シートの保護フィルム、あるいは感光性樹脂層(フォトレジスト層)の支持基材や保護フィルム等として利用されている。
【0003】
樹脂フィルムのキャスト製膜用工程フィルム(離型フィルム)として、基材フィルム上にシリコーン樹脂からなる離型層を備えた離型フィルムが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、基材フィルム上にメラミン樹脂からなる離型層を備えた離型フィルムが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-6079号公報
【特許文献2】特開2014-151448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、光学用途に使用される樹脂フィルムは、厚みが均一で樹脂フィルム表面の平滑性が高いことが好ましい。しかし、樹脂フィルムのキャスト製膜において、上記特許文献1~2に記載された離型フィルムを用いても、樹脂フィルムを離型フィルムから剥離する際の剥離帯電による作業性の悪化や、樹脂フィルムの厚みの均一性を十分に高めることができないという問題がある。
【0007】
また、キャスト製膜による樹脂フィルムの製膜工程において、樹脂フィルムの離型フィルムからの浮き上がりや膜剥がれを抑制するために、離型フィルムと樹脂フィルムとが適度に密着していることが好ましい。一方、製膜後の離型フィルムから樹脂フィルムを剥離する工程においては、離型フィルムと樹脂フィルムとが比較的容易に剥離できることが好ましい。
【0008】
そこで、本発明の目的は、樹脂フィルムのキャスト製膜時の離型フィルムからの浮き上がりや膜剥がれが抑制され、製膜後の離型フィルムからの樹脂フィルムの剥離性が良好であって、剥離の際の剥離帯電を抑制し、外観検査がし易く、樹脂フィルム厚み均一性および平滑性の高い樹脂フィルムを製造することができる離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。
[1]基材フィルムの少なくとも一方の面に基材フィルム側から順に帯電防止層および離型層を有する離型フィルムであって、該帯電防止層は導電性高分子を含有し、該離型層を構成する樹脂中にメラミン樹脂を80質量%以上含有し、前記離型層の表面粗さ(Sa)が10nm未満である離型フィルム。
[2]基材フィルムの一方の面にのみ基材フィルム側から順に帯電防止層および離型層を有し、離型フィルムの離型層を有さない側の面である非離型層面の表面粗さ(Sa)が5~30nmである[1]に記載の離型フィルム。
[3]離型フィルムの離型層を有する側の面である離型層面と粘着テープとの剥離力が、1.0~5.0N/18mmである[1]または[2]記載の離型フィルム。
[4]離型フィルムの離型層を有する側の面である離型層面をPETフィルムに圧着させた後、前記離型フィルムを剥離させた直後の、前記離型層面の帯電量が-1.5~1.5kVである[1]~[3]のいずれかに記載の離型フィルム。
[5]層間絶縁シート製造工程用離型フィルムとして用いられる[1]~[4]のいずれかに記載の離型フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の離型フィルムは、樹脂フィルムのキャスト製膜において、樹脂フィルムの製膜工程における樹脂フィルムの離型フィルムからの浮き上がりや剥がれが抑制され、樹脂フィルム製膜後の離型フィルムからの剥離性が良好であって、剥離帯電も抑制し、外観検査がし易く、樹脂フィルム厚みの均一性および平滑性の高い樹脂フィルムを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の離型フィルムは、樹脂フィルムのキャスト製膜用工程フィルム(支持フィルム)として好適である。以下、樹脂フィルムのキャスト製膜を例に挙げて説明する。但し、本発明はこれに限定されない。なお、後述のとおり、本発明の離型フィルムは、層間絶縁シート製造工程用離型フィルムとして好適に用いられるが、キャスト製膜法は、層間絶縁シートの製造に好適に用いられる製造方法の一つである。
【0012】
樹脂フィルムのキャスト製膜法(ソルベントキャスト製膜法、溶液流延製膜法ともいう)とは、樹脂溶液を離型フィルムの離型層上にキャスト(流延)して樹脂フィルムを製造する方法である。樹脂フィルムを製膜した後、離型フィルムと樹脂フィルムは剥離される。
【0013】
本発明の離型フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に基材フィルム側から順に帯電防止層および離型層を有する離型フィルムである。
【0014】
本発明の離型フィルムに用いられる基材フィルムとしては、特に限定されず、各種プラスチックフィルムを使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロースフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、アクリルフィルム、環状オレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。
【0015】
これらのプラスチックフィルムの中でも、平滑性が比較的高く、耐熱性が良好であるため、ポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムの中でもポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、さらに二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0016】
基材フィルムの厚みは、30~300μmが好ましく、33~200μmがより好ましく、35~100μmが特に好ましい。
【0017】
基材フィルムは、表面の平滑性が高いことが好ましい。具体的には、基材フィルムの離型層を積層する側の面の表面粗さ(Sa)は、10nm未満が好ましく、7nm未満がより好ましく、5nm未満が特に好ましい。下限は0.1nm程度である。ここで、表面粗さ(Sa)は、後述の実施例の「(1)表面粗さ(Sa)の測定」記載の方法により、測定することができる。
【0018】
基材フィルムは、粒子(フィラー)を含有しても良い。粒子(フィラー)としては、特に限定されないが、二酸化ケイ素や酸化チタンなどが挙げられる。基材フィルムの表面の平滑性を好ましい範囲にするためには、基材フィルム中の粒子(フィラー)の含有量は0.001~5質量%が好ましい。基材フィルム中の粒子(フィラー)の含有量が5質量%以下であると、離型フィルムの表面が荒れにくく、目的とする離型フィルムの表面粗さが得られやすくなる。
【0019】
本発明において、帯電防止層とは、樹脂フィルムを離型フィルムから剥離する際の剥離帯電を抑制するための層のこという。
【0020】
本発明において、帯電防止層は導電性高分子を含有する。ここで、導電性高分子とは、主鎖共役系高分子に少量の電子受容性物質または電子供与性物質が添加されることで電気伝導性を示す高分子の総称である。
【0021】
導電性高分子としては、ポリアセチレンなどの脂肪族共役系高分子、ポリ(p-フェニレン)、ポリフルオレンなどの芳香族共役系高分子、ポリピロール、ポリフラン、ポリチオフェン、アルキレンジオキシポリチオフェンなどの複素環共役系高分子、ポリチエニレンビニレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)などの混合系共役高分子、ポリアニリンなどの含ヘテロ原子共役系高分子などを例示することができる。本発明における導電性高分子は、塗膜の帯電防止性能の発現し易さから複素環共役系高分子であることが好ましく、なかでも安定性に優れたポリチオフェン系導電性高分子であることが好ましく、アルキレンジオキシポリチオフェンがさらに好ましく、なかでもポリスチレンスルホン酸(PSS)でドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が特に好ましい。
【0022】
本発明における帯電防止層は、カルボキシラートアニオン基を有するアクリル系樹脂、メラミン樹脂、多官能アジリジン化合物、および上述の導電性高分子を含む組成物を塗布乾燥して得られる帯電防止層であることが、機械的強度や耐溶剤性に優れた帯電防止層が得られやすいため好ましい。
【0023】
カルボキシラートアニオン基を含有するアクリル系樹脂(以下、単に「アクリル系樹脂」という場合がある)とは、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸に起因するカルボキシラートアニオン基(-COO)を有するアクリル系樹脂である。本発明におけるアクリル系樹脂は、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸モノマーおよび(メタ)アクリル酸アルキルエステルを反応させた共重合体であることが好ましい。
【0024】
α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのα,β-エチレン性モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのα,β-エチレン性ジカルボン酸などを挙げることができる。また、α,β-エチレン性ジカルボン酸の各種アルコールとのモノエステルであってもよい。これらの中で、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸が、アクリル酸、またはメタクリル酸であることが材料の安定供給性の点から好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチルなどの、直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであってもよく、分岐状や環状アルキル基を有するものであってもよい。
【0026】
これら、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸モノマーおよび(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外に、メタ(アクリル)アミド、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどを共重合することができる。
【0027】
本発明におけるアクリル系樹脂は、これらの成分をラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などいずれの方法により重合させたものであってもいいが、ラジカル重合により重合させたものが好ましい。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸におけるカルボキシ基がモノマーの段階であっても重合後であっても良いが、中和剤により中和することで本発明におけるカルボキシラートアニオン基(-COO)を有するアクリル系樹脂とすることができ、水系の溶媒に容易に溶解させることができる。
【0028】
中和剤としては、アンモニア、第1~第3級アミン類、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物などをあげることができる。なかでもアンモニア、トリメチルアミンやトリエチルアミンなどの第3級アミンを用いることが帯電防止層の耐溶剤性を向上させることから好ましい。
【0029】
本発明における帯電防止層は、さらに硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤を含有することにより、基材フィルムとの密着性や塗膜の強度が向上しやすくなる。なかでも硬化剤として多官能アジリジン化合物を含有することがより好ましい。多官能アジリジン化合物を含有することにより、特に優れた硬化性を示す。
【0030】
本発明における多官能アジリジン化合物とは、分子中に少なくとも2つのアジリジニル基を有する化合物である。硬化性の点からは、多官能アジリジン化合物が少なくとも3つのアジリジニル基を有することが好ましい。
【0031】
多官能アジリジン化合物は、アジリジニルカルボン酸の多価アルコールエステルであることが好ましい。アジリジニルカルボン酸としては、例えば、3-(1-アジリジニル)プロピオン酸、3-(2-メチル-1-アジリジニル)プロピオン酸、3-(2-エチル-1-アジリジニル)プロピオン酸、3-(2-プロピル-1-アジリジニル)プロピオン酸、3-(2,3-ジメチル-1-アジリジニル)プロピオン酸などが挙げられる。3官能のアジリジン化合物としては、例えば、これらのアジリジニルカルボン酸のグリセリンエステルであるトリス[3-(1-アジリジニル)プロピオン酸]グリセロール、トリメチロールプロパンエステルであるトリス[3-(1-アジリジニル)プロピオン酸]トリメチロールプロパン、テトラメチロールメタンエステルであるトリス[3-(1-アジリジニル)プロピオン酸]テトラメチロールメタンなどが挙げられる。4官能のアジリジン化合物としては、例えば、これらのアジリジニルカルボン酸のペンタエリスリトールエステルであるテトラ[3-(1-アジリジニル)プロピオン酸]ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0032】
本発明において、前述のカルボキシラートアニオン基のモル数X(mol)と、アジリジニル基のモル数Y(mol)の関係は、X/Yを0.8~2.0とすることが帯電防止層の硬化性の点から好ましい。
【0033】
帯電防止層塗布時の溶剤は、好ましくは水、アルコール系、ケトン系を用いることができるが、塗工性を考慮しこれらの混合系を使用することが望ましい。
【0034】
帯電防止層の乾燥後塗布厚さは、好ましくは、0.02~0.3μm、より好ましくは0.03~0.2μm、さらに好ましくは0.04~0.1μmである。塗布厚さを0.02~0.3μmの範囲とすることで経済性良く帯電防止性能を発現しやすくすることができる。
【0035】
本発明の離型フィルムは、離型層を構成する樹脂中にメラミン樹脂を80質量%以上含有する。メラミン樹脂の含有量は、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が特に好ましい。離型層を構成する樹脂中にメラミン樹脂を80質量%以上含有することによって、キャスト製膜された樹脂フィルムと離型層との間に適度な密着性が付与されるので製膜時に樹脂フィルムの離型フィルムからの浮き上がりや膜剥がれが抑制でき、樹脂フィルム製膜後の樹脂フィルムの離型フィルムからの剥離性が良好となる。メラミン樹脂の含有量が、離型層を構成する樹脂中に80質量%未満となると、剥離不良や樹脂フィルムとの密着力低下の原因となる。
【0036】
離型層には、さらにメラミン樹脂以外の樹脂を含有することができる。例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂を含有することができる。
【0037】
離型層におけるメラミン樹脂以外の樹脂の含有量は、離型層を構成する樹脂中に20質量%以下であり、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、2質量%が特に好ましい。メラミン樹脂以外の樹脂を20質量%を超えて含有すると、樹脂フィルムキャスト製膜時の樹脂溶液の離型層上の流延性や密着性が低下するという不具合が発生する。
【0038】
メラミン樹脂は、メラミン化合物が重縮合したものである。本発明において好適に用いられるメラミン化合物としては、メチロール化メラミン、アルキルエーテル化メラミンが挙げられる。つまり、本発明におけるメラミン樹脂としては、メチロール化メラミン樹脂、アルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましい。離型層の膜強度を向上させ、離型層と基材フィルムとの密着性を向上させるという観点から、アルキルエーテル化メラミン樹脂がより好ましく、部分アルキルエーテル化メラミン樹脂がさらに好ましい。
【0039】
メチロール化メラミンは、例えば、メラミンまたはメラミン誘導体とホルムアルデヒドとの付加反応によって得られる。アルキルエーテル化メラミンは、例えば、メチロール化メラミンのメチロール基をアルコールによって部分的もしくは完全にエーテル化することによって得られる。アルキルエーテル化メラミンにおけるアルキルは炭素1~6が好ましく、炭素数1~4がより好ましい。
【0040】
メラミン誘導体としては、例えば、グアナミン、ベンゾグアナミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物などが挙げられる。
【0041】
エーテル化に用いられるアルコールとしては、炭素数1~6のアルコールが好ましく、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコールなどが挙げられる。
【0042】
メラミン化合物としては、上記したメチロール化メラミンおよびアルキルエーテル化メラミンが好ましく、これらの化合物は下記一般式(1)で表すことができる。
【0043】
【化1】
【0044】
式中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、メチロール基、またはアルコキシメチル基を表すが、そのうちの少なくとも1個はメチロール基またはアルコキシメチル基である。
【0045】
~Rのうちの3個以上がメチロール基またはアルコキシメチル基であることが好ましく、4個以上がメチロール基またはアルコキシメチル基であることがより好ましく、さらに5個以上がメチロール基またはアルコキシメチル基であることが好ましい。特に、R~Rの全てメチロール基および/またはアルコキシメチル基であることが好ましく、メチロール基とアルコキシメチル基とが混在することが最も好ましい。ここで、メチロール基とアルコキシメチル基とが混在するとは、メチロール化メラミンがアルコールによって部分的にエーテル化されていることを意味する。ここで、アルコキシメチル基(-CHOR)のアルコキシ基(OR)としては、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基が挙げられる。これらの中でも炭素数1~4のアルコキシ基がより好ましい。アルコキシメチル基(-CHOR)は、メチロール基(-CHOH)をアルコールによってエーテル化することによって得られる。アルコールとしては前述したように炭素数1~6のアルコールが好ましく用いられる。上記一般式(1)に含まれるメラミン化合物としては、R~Rの1~6個がメチロール基であるメチロール化メラミン、R~Rの1~6個がアルコキシメチル基であるアルキルエーテル化メラミン、およびR~Rの1~5個がメチロール基でかつ1~5個がアルコキシメチル基である部分アルキルエーテル化メラミンである。上記メラミン化合物の中でも、R~Rの全てがメチロール基であるメチロール化メラミンが部分エーテル化された部分アルキルエーテル化メラミンが特に好ましい。さらに、部分アルキルエーテル化メラミンのアルキルとしては炭素数1~6が好ましく、1~4がより好ましい。特にブチル基が好ましい。
【0046】
部分アルキルエーテル化メラミンのエーテル化度は、10~95%が好ましく、15~90%がより好ましく、20~80%が特に好ましい。ここで、エーテル化度は、エーテル化されたメチロール基とエーテル化されていないメチロール基の総モル量に対するエーテル化されたメチロール基のモル量の比率である。エーテル化度は、例えばエーテル化するためのアルコールの添加量を調整することによって制御することができる。上記した部分アルキルエーテル化メラミンを用いて形成された離型層は、樹脂フィルムのキャスト製膜時の離型層上の樹脂溶液の流延性が良好なものとなりやすく、また樹脂フィルムと離型層との間に適度な密着性が付与されやすいため製膜時に樹脂フィルムの離型フィルムからの浮き上がりや膜剥がれが抑制されやすく、かつ樹脂フィルム製膜後の離型フィルムからの剥離性がさらに良好なものとなりやすいため、好ましい。また、離型層の硬度が高くなりやすいため、耐熱性や耐溶剤性の点からも好ましい。
【0047】
上記したメラミン化合物としては、例えば、(株)三羽研究所の“ATOM BOND(登録商標)”RP-50、DIC(株)の“スーパーベッカミン(登録商標)”L-105-60、同J-820-60、同J-821-60、同J-1090-65、同J-110-60、同J-117-60、同J-127-60、同J-166-60B、同J-105-60、同G840、同G821、三井化学(株)の“ユーバン(登録商標)”20SB、同20SE60、同21R、同22R、同122、同125、同128、同220、同225、同228、同28-60、同2020、同60R、同62、同62E、同360、同165、同166-60、同169、同2061、住友化学(株)の“スミマール(登録商標)”M-100、同M-40S、同M-55、同M-66B、日本サイテックインダストリーズの“サイメル(登録商標)”303、同325、同327、同350、同370、同235、同202、同238、同254、同272、同1130、(株)三和ケミカルの“ニカラック(登録商標)”MS17、同MX15、同MX430、同MX600、ハリマ化成(株)のバンセミンSM-975、同SM-960、日立化成(株)の“メラン(登録商標)”265、同2650Lなどが挙げられる。
【0048】
離型層を形成するための塗布液には、酸触媒を含有することが好ましい。酸触媒は、メラミン化合物の重縮合を促進することができる。酸触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。酸触媒を含有する場合の酸触媒の含有量は、メラミン化合物100質量部に対して、1~30質量部の範囲が好ましく、2~20質量部の範囲がより好ましく、3~15質量部の範囲が特に好ましい。
【0049】
離型層には、イオン伝導型の帯電防止剤、界面活性剤などを含有することができる。
【0050】
本発明の離型フィルムは、離型層の表面粗さ(Sa)が10nm未満である。離型層の表面粗さ(Sa)は、7nm未満がより好ましく、5nm未満が特に好ましい。下限は、特に限定されないが、0.1nm程度である。離型層の表面粗さ(Sa)を10nm未満にすることによって、離型フィルムの離型層上に樹脂溶液を流延してキャスト製膜されて作製される樹脂フィルムの平滑性を目的とする範囲にすることができる。
【0051】
離型層の表面粗さ(Sa)は、ISO 25178-3.2(2010)に準じて、菱化システム製非接触表面・層断面形状測定システムVertScan R5300GL-Lite-ACを、対物レンズ50倍を用いて、1mm角の測定面積に設定し測定した表面粗さのことをいう。
【0052】
離型層の表面粗さ(Sa)を10nm未満にする方法は、特に限定されないが、例えば、
(i)表面の平滑性が高い基材フィルムを用いる、
(ii)離型層の塗布面が均一になるように塗布形成する、
(iii)離型層には実質的に粒子(フィラー)を含有させない、
(iv)離型層の厚みを比較的大きくして基材フィルムの表面性の影響を小さくする、
などが挙げられる。
【0053】
上記(i)としては、例えば、粒子(フィラー)の含有量が少ない基材フィルムを用いる態様が挙げられる。
【0054】
上記(ii)は、離型層の塗布液の固形分濃度や溶媒組成などを調整することによって行うことができる。例えば、離型層の塗布液の固形分濃度としては、0.5~10質量%が好ましく、2~7質量%がより好ましい。離型層の塗布液の溶媒組成としては、例えば、異なる種類の溶媒を2種以上併用することが好ましい。溶媒の種類としては、例えば、ケトン類、アルコール類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、環式炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。好ましい例としては、ケトン類と芳香族炭化水素類の併用が挙げられる。
【0055】
上記(iii)としては、例えば、離型層には平均粒子径が200nm以上の粒子(フィラー)は実質的に含有させないことが挙げられる。ここで、実質的に粒子を含有させないとは、離型層内の粒子含有量が5質量%未満のことをいう。
【0056】
上記(iv)としては、例えば、離型層の厚み(乾燥厚み)は150~500nmが好ましく、200~300nmがより好ましい。
【0057】
離型層の表面粗さ(Sa)を10nm未満とするためには、上記した(i)~(iv)の2以上を組み合わせることが好ましく、3以上を組み合わせることがより好ましく、全ての要件を組み合わせることが特に好ましい。
【0058】
本発明の離型フィルムは、離型フィルムの離型層を有する側の面である離型層面と粘着テープとの剥離力が、1.0~5.0N/18mmであることが好ましい。前記剥離力は、1.5~3.0N/18mmであることが特に好ましい。離型層面と粘着テープとの剥離力が、好ましい範囲であることによって、樹脂フィルムのキャスト製膜工程において、離型層とキャスト製膜された樹脂フィルムが適度に密着しやすくなり、キャスト製膜時に離型フィルムからの樹脂フィルムの浮き上がりや剥がれが抑制されやすくなり、かつ樹脂フィルム製膜後の樹脂フィルムの離型フィルムからの剥離性が良好となりやすい。
【0059】
本発明において、離型層面と粘着テープとの剥離力とは、離型層の表面にアクリル系粘着テープ(日東電工(株)製のNo.31B)の粘着面を自重5kgのゴムローラーで押さえながら一往復させて貼り合わせ、室温(23±5℃)で1時間放置後、引張り試験機(株)にて、300mm/分の速度で、粘着テープ側を180°に引き剥したときの剥離力のことをいう。
【0060】
本発明の離型フィルムの離型層面と粘着テープとの剥離力を好ましい範囲にする方法としては、例えば、離型層を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を80質量%以上含有させ、メラミン樹脂としてアルキルエーテル化メラミン樹脂を用いることによって、好ましくは部分アルキルエーテル化メラミン樹脂を用いることによって上記範囲とすることができる。
【0061】
離型層の厚みは、150~500nmであることが好ましく、200~300nmであることがより好ましい。離型層の厚みが、150nm以上であると、樹脂フィルムに対する剥離力が十分に小さくなりやすく、良好な離型フィルムが得られやすい。また、離型層の厚みが、500nm以上であると平面性や乾燥性が向上し、外観塗布ムラや加熱工程での熱ジワが発生しにくくなる。
【0062】
本発明の離型フィルムは、離型層がメラミン樹脂を樹脂全体に対して80質量%以上含有し、かつ離型層の表面粗さ(Sa)が10nm未満であることがより好ましい。かかる構成を有することによって、樹脂フィルムのキャスト製膜工程における樹脂溶液の離型層上の流延性が良好となりやすく、樹脂フィルムを均一に製膜しやすくすることができる。これによって、目的とする平滑性を有する樹脂フィルムが得られやすくなる。
【0063】
本発明の離型フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する。離型層は、基材フィルムの片面のみの設けられていてもよいし、両面の設けられていてもよいが、片面のみに設けられていることが好ましい。
【0064】
本発明における離型層は、例えば、上記メラミン化合物を含有する塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥・加熱することによって得られる。離型層を形成するための塗布液の塗布は、一般的なコーティング方式を利用することが出来る。例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、リップコート、ダイコート、マイクログラビアコート、マイヤーバーコート、多段リバースコートなどの塗布方式が挙げられる。離型層を塗布後の乾燥・加熱は、通常オンラインで連続的に実施される。乾燥・加熱工程は、例えば、50~100℃で予備乾燥し、100~160℃で加熱することが好ましい。予備乾燥時間は10~100秒、加熱時間は10~100秒が適当である。
【0065】
本発明の離型フィルムにおいて、基材フィルムの一方の面にのみ基材フィルム側から順に帯電防止層および離型層を有し、離型フィルムの離型層を有さない側の面である非離型層面の表面粗さ(Sa)が5~30nmであることが好ましい。非離型層面の表面粗さ(Sa)が5nm以上であると搬送性が向上しやすくなり、キズ等の欠点が発生しにくくなる。また、非離型層面の表面粗さ(Sa)が30nm以下であるとフィルムの表面粗度が粗くなりすぎず、後工程において搬送性不良等の不具合が生じにくくなる。非離型層面の表面粗さを上述の範囲にする方法としては、例えば、二酸化ケイ素や酸化チタンなどの粒子(フィラー)を基材フィルム中含有させる方法が挙げられる。基材フィルム中の粒子(フィラー)の含有量は、0.001~5質量%であることが好ましい。
【0066】
本発明の離型フィルムにおいて、離型フィルムの離型層を有する側の面である離型層面をPETフィルムに圧着させた後、前記離型フィルムを剥離させた直後の、前記離型層面の帯電量(以下、単に剥離後の帯電量という場合がある)が-1.5~1.5kVであることが好ましい。剥離後の帯電量が、-1.5kV未満または1.5kVを超えると剥離帯電が発生しやすくなり、樹脂フィルムの欠陥が生じやすくなったり、作業効率が低下する場合がある。剥離後の帯電量を上述の範囲にする方法としては、例えば、帯電防止層の乾燥後塗布厚さを調整する方法が挙げられる。帯電防止層の塗布厚さは、好ましくは、0.02~0.3μm、より好ましくは0.03~0.2μm、さらに好ましくは0.04~0.1μmである。塗布厚さを上述の範囲とすることで経済性良く帯電防止性能を発現しやすくすることができる。
【0067】
本発明において、剥離後の帯電量とは、離型層面と二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 タイプ名:#188 U48)を、自重5kgのゴムローラーで押さえながら3往復させて圧着させた後、離型フィルムを剥離する。離型フィルムを剥離した直後の離型層面の帯電量を電位計(シムコジャパン(株)製 FMX-003)を用い、23±2℃、60±10%RHの条件下で測定した電位のことをいう。
【0068】
本発明の離型フィルムは、樹脂フィルムのキャスト製膜用工程フィルム(支持フィルム)、セラミックコンデンサーのグリーンシート成形用工程フィルム、粘着シートの保護フィルム、あるいは感光性樹脂層(フォトレジスト層)の支持基材や保護フィルムとして適用することができ、特に、樹脂フィルムのキャスト製膜用工程フィルム(支持フィルム)として好適である。樹脂フィルムのキャスト製膜用工程フィルム(支持フィルム)として、例えば、層間絶縁シート製造工程用などの高い平滑性が求められる光学用樹脂フィルムのキャスト製膜に好適である。すなわち、本発明の離型フィルムは、層間絶縁シート製造工程用離型フィルムとして用いられることが好ましい。
【0069】
本発明の離型フィルムを用いてキャスト製膜される樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミド樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、セルロースアシレート樹脂フィルム、環状ポリオレフィン樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、メタクリル樹脂フィルム、ポリウレタン樹脂フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、ポリイミド樹脂フィルム、セルロースアシレート樹脂フィルム、環状ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルムのキャスト製膜に好適である。これらの樹脂フィルムは、単一膜で構成されていてもよいし、2層以上の多層積層構成であってもよい。
【実施例0070】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下に、実施例、比較例で用いた評価方法及び測定方法を示す。
【0071】
[測定方法および評価方法]
(1)表面粗さ(Sa)の測定
離型層面及び非離型層面を菱化システム製非接触表面・層断面形状測定システムVertScan R5300GL-Lite-ACで対物レンズ50倍を用いて、1mm角の測定面積に設定しISO 25178-3.2(2010)に準じて測定した。
【0072】
(2)剥離力の測定
離型フィルムの離型層表面にアクリル系粘着テープ(日東電工(株)製のNo.31B)の粘着面を自重5kgのゴムローラーで押さえながら一往復させて貼り合わせ、室温(23±5℃)で1時間放置後、エー・アンド・デイ製引張り試験機(RTG-1210)にて、300mm/分の速度で、粘着テープ側を180°に引き剥したときの剥離力を測定した。
【0073】
(3)剥離後の帯電量測定
離型層面とPET(東レ(株)製の#188U48)を、自重5kgのゴムローラーで押さえながら3往復させて圧着させた後、離型フィルムを剥離した。離型フィルムを剥離した直後の離型層面の帯電量を、シムコジャパン製FMX-003を用い、23±2℃、60±10%RHの条件下で電位測定した。
【0074】
(4)基材密着性の測定
離型フィルムの離型層表面に粘着テープ(ニチバン(株)製の405テープ)を貼り付け、粘着テープ側を180°に引き剥がし、離型層の脱落を目視で確認し、離型層の脱落が無ければ〇、脱落がある場合は×とした。
【0075】
(5)帯電防止層、離型層厚みの測定方法
離型層面を浜松ホトニクス社製Optical NanoGauge膜厚計(C13027-11)を用いて測定した。
【0076】
(6)樹脂フィルムの製膜性試験方法
<樹脂組成物Aの作製>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製 828US)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製 YX4000H)20部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製 YL7760)10部、ホスファゼン樹脂(大塚化学(株)製 SPH-100)3部、及びフェノキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製 YL7553BH30)10部を、MEK60部に加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製 HPC-8000-65T)30部、フェノール系硬化剤(DIC(株)製 LA-3018-50P)16部、ベンゾオキサジン化合物(JFEケミカル(株)製 ODA-BOZ)3部、硬化促進剤として4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)4部、微粉砕シリカ110部を混合し、樹脂組成物Aを作製した(以下、樹脂組成物Aとする)。
【0077】
<製膜性試験用サンプルの作製>
上記で作製した樹脂組成物Aを、乾燥後の樹脂組成物A層の厚さが30μmとなるよう、離型フィルムの離型層表面にアプリケーターにて均一に塗布し、100℃で3分間乾燥することによりエポキシ樹脂フィルムを作製した。
【0078】
<判定方法>
1)樹脂フィルムの製膜性
樹脂フィルムの製膜性は、樹脂フィルムの均一性、平滑性により判定した。
製膜性試験用サンプルを蛍光灯反射目視にて観察し、塗布ムラ及びハジキが無い場合を均一で平滑性の高い樹脂フィルムとして〇とし、塗布ムラ又はハジキが有る場合を×とした。
【0079】
2)樹脂フィルムの離型フィルムからの剥離性
樹脂フィルムの離型フィルムからの剥離強度を、エー・アンド・デイ製引張り試験機(RTG-1210)にて、300mm/分の速度で、離型フィルム側を180°に引き剥したときの剥離強度を測定した。剥離強度が0.01~0.6N/18mmである場合を剥離性が良好として〇、剥離強度が0.6~1.5N/18mmである場合を△、1.5N/18mmを超えた場合を、剥離性が不良として×とした。なお、剥離強度が0.01N/18mm未満であると、樹脂フィルムの離型フィルムからの浮き上がりや膜剥がれが発生しやすくなる。
【0080】
3)離型フィルム剥離後の樹脂フィルムの表面状態
樹脂フィルムを離型フィルムから剥離した後、離型フィルムから剥離した側の樹脂フィルム表面を菱化システム製非接触表面・層断面形状測定システムVertScan R5300GL-Lite-ACにて対物レンズ50倍を用いて、1mm角の測定面積に設定しISO 25178-3.2(2010)に準じて測定した。測定値が100nm以下の場合、表面状態を〇、測定値が100nmを超えている場合、樹脂表面状態を不良として×とした。剥離後の樹脂フィルムの表面状態が良好(○)であると、外観検査がし易くなる。
【0081】
[実施例1]
バインダーとしてメラミン樹脂を70質量%含有する水溶液(中京油脂(株)製 P795)0.7質量部、導電性高分子としてポリチオフェン系導電性高分子である、ポリスチレンスルホン酸(PSS)でドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)0.5質量%を含む水溶液(中京油脂(株)製 S948)2質量部をイオン交換水、イソプロピルアルコール(IPA)混合溶液(7/7質量部)に混合し帯電防止層塗工液1を作製した。
【0082】
熱硬化性樹脂であるメラミン化合物(三羽研究所(株)製 RP-50、固形分50質量%)1質量部、トルエン、アノン、メタノール(4.5/3.6/0.9)混合液9質量部を混合した溶液に、硬化剤であるDEPクリヤ(和信化学製)0.1質量部を混合し、離型層塗工液1を作製した。なお、各実施例、比較例において、メラミン樹脂含有量質量(固形分%)は、離型層塗工液中のメラミン化合物の固形分質量を分子とし、メラミン化合物の固形分質量及びその他成分の固形分質量の合計(メラミン化合物、イオン伝導型であるコルコートN103X及び硬化剤の固形分質量の合計)を分母として算出した。
【0083】
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 “ルミラー”(登録商標) R41)に帯電防止層塗工液1を乾燥後の塗布厚さが50nmとなるようにワイヤーバーNo.3で塗布し135℃で20秒乾燥硬化した後、連続して離型層塗工液1を塗布厚さが300nmとなるようにワイヤーバーNo.5で塗布し140℃で30秒乾燥硬化し離型フィルムを得た。
【0084】
[実施例2]
実施例1において離型層塗工液1の代わりに、熱硬化性樹脂であるメラミン化合物(三羽研究所(株)製 RP-50、固形分50質量%)1質量部、トルエン、アノン、メタノール(4.5/3.6/0.9)混合液9質量部を混合した溶液に、イオン伝導型であるコルコートN103X(コルコート(株)、固形分2質量%)1質量部及び硬化剤であるDEPクリヤ(和信化学製)0.1質量部を混合して作製した離型層塗工液2を用いた以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0085】
[実施例3]
実施例1において厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 “ルミラー”(登録商標) R41)の代わりに、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 “ルミラー”(登録商標) R80)を使用した以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0086】
[実施例4]
実施例1において帯電防止塗工液1の代わりに、バインダーとしてメラミン樹脂を70質量%含有する水溶液(中京油脂(株)製 P795)0.036質量部、導電性高分子としてポリチオフェン系導電性高分子である、ポリスチレンスルホン酸(PSS)でドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)0.5質量%を含む水溶液(中京油脂(株)製 U690)3.5質量部をイオン交換水、イソプロピルアルコール(IPA)混合溶液(9.8/9.8質量部)に混合した帯電防止層塗工液2を使用した以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0087】
[実施例5]
実施例1において帯電防止塗工液1の代わりに、バインダーとしてメラミン樹脂を70質量%含有する水溶液(中京油脂(株)製 P795)0.018質量部、導電性高分子としてポリチオフェン系導電性高分子である、ポリスチレンスルホン酸(PSS)でドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)0.5質量%を含む水溶液(中京油脂(株)製 W787)2.1質量部をイオン交換水、イソプロピルアルコール(IPA)混合溶液(9.8/9.8質量部)に混合した帯電防止層塗工液3を使用した以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0088】
[比較例1]
実施例1において帯電防止塗工液1を塗布及び乾燥を行わない以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0089】
[比較例2]
実施例1において離型層塗工液1の代わりに、熱硬化性樹脂であるメラミン化合物(三羽研究所(株)製 RP-50、固形分50質量%)1質量部、トルエン、アノン、メタノール(4.5/3.6/0.9)混合液9質量部を混合した溶液に、イオン伝導型であるコルコートN103X(コルコート(株)、固形分2質量%)10質量部及び硬化剤であるDEPクリヤ(和信化学製)0.1質量部を混合して作製した離型層塗工液3を用いた以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0090】
[比較例3]
実施例1において厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 “ルミラー”(登録商標)R41)の代わりに、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 “ルミラー”(登録商標)S28)を使用し、帯電防止塗工液1を塗布及び乾燥を行わない以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0091】
[比較例4]
イオン伝導型であるコルコートN103X(コルコート(株)、固形分2質量%)40質量部、MEK/IPA(30/30)混合液60質量部を混合した帯電防止層塗工液4を使用した以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0092】
[評価]
上記で作製した実施例および比較例の離型フィルムについて、上述の測定方法および評価方法に従って評価した。その結果を表1に示す。
【0093】
【表1】